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あきと【1】」(2006/01/14 (土) 04:41:50) の最新版変更点

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「りくにぃ」 りくがランドセルの中身を明日の時間割に入れ替えていると、 弟のあきとが部屋に入ってきた。 「おまえ、ちゃんとノックしろよ」 「りくにぃ、練習つきあってよ」 あきとは、兄の咎めなどどこ吹く風といった様子だ。 「練習…?」 「うん」 「キャッチボールか?」 「うぅん」 「じゃぁ何だよ」 弟の考えが読めずに、りくの声にわずかな苛立ちがこもる。 あきとは後ろ手でドアを閉め、答える。 「お医者の練習」 「お医者…?」 手を止めてあきとの方に向き直ったりくは、 不思議な生き物でも見るような目で弟をみつめる。 「お前、4年生にもなってお医者さんごっこがしたいのか…?」 「違うよ!」 呆れたような、馬鹿にしたようなりくの口調に、 あきとは頬を紅潮させる。 「ごっこじゃなく、練習!俺、医者になるんだ!」 「医者ぁ?あきとが?」 「そうだよ!」 りくは自信満々に胸を張っている弟に近づき、頭をグリグリと小突く。 「ちゃんと勉強しなきゃ医者にはなれないんだぞ」 「うるさいなぁ!もう、いいから早くそこに座ってよ!!」 あきとは焦れてバタバタと腕を振りまわして喚く。 「はいはい」 気の短い弟をからかうのが楽しいりくは、しかし、 これ以上苛めると本格的に癇癪を起こしそうな気配を感じ、黙って従うことにした。 りくがベッドに腰かけると、あきとはその向かいに椅子を持ってきて座った。 ご丁寧に首からはおもちゃの聴診器をさげている。 「はい、どこが悪いですか?」 「え?…えーっと…その、お腹が痛いです」 それを調べるのが医者じゃないだろうか、と思いながらも、 りくは大人しく弟につきあう。 「それでは、服をまくってください」 「はい」 シャツをたくし上げると、あきとが聴診器をりくの胸に当てる。 ヒヤッとしたその硬質な感触に、りくの肩がわずかに跳ねる。 「……」 「ほかに痛いところはありませんか?」 「…いいえ」 あきとは真剣な顔つきで、ピタピタと聴診器を当てていく。 しかし、顔が近いため、かすかに肌に息がかかり、 りくは徐々に居心地が悪くなってきていた。 「それでは、服を脱いでそこに横になってください」 「へ?」 一通り診察モドキをした後言われた言葉が、りくは一瞬理解できなった。 どうせすぐに飽きるだろう、そう高をくくっていたのだ。 「もういいだろう」 「まだだよ、これだけじゃ何の病気かわかんないじゃん!」 しかし、りくの予想に反して、あきとの「お医者の練習」は本気だった。 「いやだよ」 「なんで?」 「だって…恥ずかしいだろ…?」 りくはうつむいてぼそぼそと答える。 「変なりくにぃ。いつも一緒にお風呂入ってるのに、なんで恥ずかしいの?」 不思議そうにそう言って、あきとは、りくの顔を覗き込もうとする。 事実、お互い裸など見慣れているのだが、 小5にもなって弟とお医者さんごっこしているという状況のせいか、 それとももっと他の理由のためか、 りくは服を脱ぐのが妙に気恥ずかしかった。

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