「最後のページ【1】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

最後のページ【1】」(2006/01/14 (土) 08:10:39) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

覚悟や――決意、のようなものを込めてその部屋の前に立った。 いつものように一度だけ深呼吸。管理された清潔さや、新緑の萌える香りと相反する薬品の臭いを体に浸透させる。 これは俺なりの儀式だ。この扉の向こう、閉ざされた世界で毎日俺を待ち続けるアイツに会う為の、礼儀でもある。 「うし、行くか」 克己の言葉を呟いて、重く分厚い引き戸の取っ手を掴んだ。 …ひんやりした感触と、蛍光灯を受けて鋭く輝くそれが、俺が今日初めての来訪者であることを無言で告げた。 (いつも、ひとりぼっちだから、ね。本当に嬉しいんだよ) 静かな廊下にアイツの声が聞こえたような気がして、俺は扉を開け放った。 顔には微笑を。哀しみはこの胸に。 これは、たった二人きりで常識や道徳に立ち向かった兄弟の思い出、その最後のページ。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー