「知也【1】」(2006/01/14 (土) 14:17:44) の最新版変更点
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<h2>知也(1)</h2>
<p align="right">著者不明</p>
<p>「あ……兄貴、何するんだよ……」<br>
<br>
<br>
<br>
それは冬の終わりのことだ。<br>
まだ俺が高校生で、大学受験を控えて腐っていた頃、俺は一つの罪を犯した……。<br>
まだ当時小学生だった弟は生意気盛りで、<br>
受験に神経質になっている俺は小馬鹿にされる、<br>
そんな日々がすぎていた。<br>
<br>
「またD判定なんだって~? 兄貴そんなんじゃ大学落ちるんじゃねーの?」<br>
<br>
模試の結果を持って笑う弟は、俺をからかうことに喜びを感じているようだった。<br>
成績優秀なあいつにしてみれば、受験だ何だと苛立っている俺が可笑しくて仕方ないのだろう。<br>
けれど、俺にしてみれば、そんな弟の嘲り一つも今は酷い苛立ちに変わっていった。<br>
<br>
「……うるせーよ」<br>
「はーあ。俺の方が兄貴よりなーんでもできるのになー。<br>
兄貴は私立の大学行くんだろ?そのせいで俺は中学公立なんだぜ?」</p>
<p>「……」<br>
<br>
俺のことを害虫か何かとしか思っていない弟。<br>
そんな奴に一泡吹かせてやりたい。<br>
受験のストレスも積もっていた俺は、自然とそう考えるようになっていた。<br>
<br>
「おい、お前、いい加減にしろよ」<br>
<br>
胸ぐらを掴みあげると、一瞬あいつの目が驚きに見張られた。<br>
けれどもそれはほんの一瞬の迷いであったかのように、<br>
すぐいつもの生意気な光がその目に戻る。<br>
<br>
「な……なんだよ。兄貴の癖に、粋がってんじゃねーよ」<br>
<br>
この生意気な光を恐怖に染められたら、どんなに気持ちがいいのだろう。<br>
この強気な口に、許しを請われたら、どんなに気持ちがいいのだろう。<br>
そう思うと、もう、止める事なんてできなかった。</p>
<p>
俺は、胸ぐらを掴んでいた手を離し、弟をにらみつけた。<br>
弟は俺なんか怖くないとでも言うように、その目でにらみ返してくる。<br>
<br>
もう、どうとでもなれ。<br>
俺は弟の体を部屋に引きずり込んで、ドアに鍵を掛けた。<br>
<br>
「何のつもりだよ」<br>
<br>
弟も、普段と違う俺の様子に気づいたのか、その声にいつもの力は無い。<br>
少し怯えるように俺から距離を取って、こちらを睨んでいる。<br>
殴られるとでも思っているのだろう、<br>
その小さな体が強ばっているのが分かった。<br>
<br>
殴るなんて、そんな簡単に済ませるもんか。<br>
暴力で屈させようとしたところで、ずる賢いこいつは、母親にでもいいつけるだろう。<br>
それならば、こいつが絶対誰にも言えないような方法で、懲らしめてやるだけだ。</p>
<h2>知也(1)</h2>
<p align="right">著者不明</p>
<p>「あ……兄貴、何するんだよ……」<br>
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それは冬の終わりのことだ。<br>
まだ俺が高校生で、大学受験を控えて腐っていた頃、俺は一つの罪を犯した……。<br>
まだ当時小学生だった弟は生意気盛りで、<br>
受験に神経質になっている俺は小馬鹿にされる、<br>
そんな日々がすぎていた。<br>
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「またD判定なんだって~? 兄貴そんなんじゃ大学落ちるんじゃねーの?」<br>
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模試の結果を持って笑う弟は、俺をからかうことに喜びを感じているようだった。<br>
成績優秀なあいつにしてみれば、受験だ何だと苛立っている俺が可笑しくて仕方ないのだろう。<br>
けれど、俺にしてみれば、そんな弟の嘲り一つも今は酷い苛立ちに変わっていった。<br>
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「……うるせーよ」<br>
「はーあ。俺の方が兄貴よりなーんでもできるのになー。<br>
兄貴は私立の大学行くんだろ?そのせいで俺は中学公立なんだぜ?」</p>
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<p>「……」<br>
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俺のことを害虫か何かとしか思っていない弟。<br>
そんな奴に一泡吹かせてやりたい。<br>
受験のストレスも積もっていた俺は、自然とそう考えるようになっていた。<br>
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「おい、お前、いい加減にしろよ」<br>
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胸ぐらを掴みあげると、一瞬あいつの目が驚きに見張られた。<br>
けれどもそれはほんの一瞬の迷いであったかのように、<br>
すぐいつもの生意気な光がその目に戻る。<br>
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「な……なんだよ。兄貴の癖に、粋がってんじゃねーよ」<br>
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この生意気な光を恐怖に染められたら、どんなに気持ちがいいのだろう。<br>
この強気な口に、許しを請われたら、どんなに気持ちがいいのだろう。<br>
そう思うと、もう、止める事なんてできなかった。</p>
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俺は、胸ぐらを掴んでいた手を離し、弟をにらみつけた。<br>
弟は俺なんか怖くないとでも言うように、その目でにらみ返してくる。<br>
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もう、どうとでもなれ。<br>
俺は弟の体を部屋に引きずり込んで、ドアに鍵を掛けた。<br>
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「何のつもりだよ」<br>
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弟も、普段と違う俺の様子に気づいたのか、その声にいつもの力は無い。<br>
少し怯えるように俺から距離を取って、こちらを睨んでいる。<br>
殴られるとでも思っているのだろう、<br>
その小さな体が強ばっているのが分かった。<br>
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殴るなんて、そんな簡単に済ませるもんか。<br>
暴力で屈させようとしたところで、ずる賢いこいつは、母親にでもいいつけるだろう。<br>
それならば、こいつが絶対誰にも言えないような方法で、懲らしめてやるだけだ。</p>
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