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<h2>あきら(2)</h2> <p align="right">でるまえにいくぜ</p> <p>「ごちそうさまでした」<br> 「ごちでした」<br> もやしとピーマン炒めがのったラーメンを食べ終わり、食器を片付ける。<br> あきらは皿洗いを俺に押し付けてそそくさと2階へあがってしまった。<br> 「……はあ、前は『一緒に洗お』っていってくれたのに」<br> 自律しつつあることを嬉しく思う反面、寂しさもあった。<br> 気が付けば、もう洗うべき皿はなくなっていた。<br> ため息をまた一つついて、手を拭いてから2階に戻ろうとした時だった。<br> 「うわっ!!」<br> あきらの声と同時に何か硬いものが落ちる音がした。<br> 「なにやってんだあいつ」</p> <br> <p> 時計でも落としたんだろうか。しかしそれにしても音がでかすぎた。<br> 他に何かあっただろうか、と考えて一瞬先程までつかっていたゲーム機<br> が頭をよぎる。いやまさか、でももしそうなら―俺の半日が無駄になる。<br> 自然と階段を上る脚が早くなる。<br> 階段を上りきったとき、部屋から慌てて出てくるあきらと鉢合わせた。<br> 「どうした?」<br> 「え?いや、別にちょっとこけただけだよ。そんだけだよ。消毒してくるよ」<br> 不自然にそういって、階段を駆け下りていった。<br> 冷や汗が止まらない。手にじっとりと汗が染み出てくる。<br> 俺は最悪の事態を想定し、それに対する覚悟を決めて、部屋の中へ踏み込んだ。<br> 台の上から落ち、無残に破片をばらまいた元ゲーム機。<br> 暴れ狂ったように抜け落ちているコンセント。真っ暗な画面。<br> 俺の半日が無駄になった。</p> <br> <p>「あきらー」<br> 自分でもそうと分かるほど力の抜けた声がでた。<br> 1階に下りてきた俺の目に、マキロンを塗りたくるあきらが飛び込んできた。<br> 名前を呼ばれて一瞬ビクっとしたが、勇敢にも<br> 「なにー?今忙しいんだけど」<br> 平静を装った顔で。<br> 「くっ、はは」<br> あきらは、笑顔のまま肩を揺らす俺を不思議そうな顔で見ている。<br> 「おまえがよォォ、素直に謝ったんなら許してやろうと思ってたんだけどよォッ」<br> もうだめだ。一度兄の怖さを教えてやるしかない。<br> 「……そこ動くなよあきらァ」</p> <br> <p>一歩一歩、あきらの座っているソファーに近づく。<br> 「な、なんだよ!そりゃオレも悪かったかも知んないけど!」<br> 「いや、俺は悪くないだろ?」<br> 「げ、ゲームセーブもしないでだしっぱなしだったじゃんかぁ!」<br> 「いやその理屈はおかしい」<br> 「に、にいちゃんだってオレのおかしとかたべるじゃん!」<br> 「…その件については後ほど」<br> 「こ、こっちくんな!」<br> 耐えかねたあきらが弾かれた様にソファーから立ち上がった。<br> だが、今の俺が後ろを向いて逃げ出そうとする獲物を見逃すわけはなかった。<br> 後ろから両肩を掴んで手前に引き、ソファーに倒す。<br> そのまま背もたれをまたいで正面に回りこみ、両足をわきの下に抱える。<br> 「5分でゆるしてあげような」<br> 電気あんま大好き。</p>
<h2>あきら(2)</h2> <p align="right">でるまえにいくぜ氏</p> <p>「ごちそうさまでした」<br> 「ごちでした」<br> もやしとピーマン炒めがのったラーメンを食べ終わり、食器を片付ける。<br> あきらは皿洗いを俺に押し付けてそそくさと2階へあがってしまった。<br> 「……はあ、前は『一緒に洗お』っていってくれたのに」<br> 自律しつつあることを嬉しく思う反面、寂しさもあった。<br> 気が付けば、もう洗うべき皿はなくなっていた。<br> ため息をまた一つついて、手を拭いてから2階に戻ろうとした時だった。<br> 「うわっ!!」<br> あきらの声と同時に何か硬いものが落ちる音がした。<br> 「なにやってんだあいつ」</p> <br> <p> 時計でも落としたんだろうか。しかしそれにしても音がでかすぎた。<br> 他に何かあっただろうか、と考えて一瞬先程までつかっていたゲーム機<br> が頭をよぎる。いやまさか、でももしそうなら―俺の半日が無駄になる。<br> 自然と階段を上る脚が早くなる。<br> 階段を上りきったとき、部屋から慌てて出てくるあきらと鉢合わせた。<br> 「どうした?」<br> 「え?いや、別にちょっとこけただけだよ。そんだけだよ。消毒してくるよ」<br> 不自然にそういって、階段を駆け下りていった。<br> 冷や汗が止まらない。手にじっとりと汗が染み出てくる。<br> 俺は最悪の事態を想定し、それに対する覚悟を決めて、部屋の中へ踏み込んだ。<br> 台の上から落ち、無残に破片をばらまいた元ゲーム機。<br> 暴れ狂ったように抜け落ちているコンセント。真っ暗な画面。<br> 俺の半日が無駄になった。</p> <br> <p>「あきらー」<br> 自分でもそうと分かるほど力の抜けた声がでた。<br> 1階に下りてきた俺の目に、マキロンを塗りたくるあきらが飛び込んできた。<br> 名前を呼ばれて一瞬ビクっとしたが、勇敢にも<br> 「なにー?今忙しいんだけど」<br> 平静を装った顔で。<br> 「くっ、はは」<br> あきらは、笑顔のまま肩を揺らす俺を不思議そうな顔で見ている。<br> 「おまえがよォォ、素直に謝ったんなら許してやろうと思ってたんだけどよォッ」<br> もうだめだ。一度兄の怖さを教えてやるしかない。<br> 「……そこ動くなよあきらァ」</p> <br> <p>一歩一歩、あきらの座っているソファーに近づく。<br> 「な、なんだよ!そりゃオレも悪かったかも知んないけど!」<br> 「いや、俺は悪くないだろ?」<br> 「げ、ゲームセーブもしないでだしっぱなしだったじゃんかぁ!」<br> 「いやその理屈はおかしい」<br> 「に、にいちゃんだってオレのおかしとかたべるじゃん!」<br> 「…その件については後ほど」<br> 「こ、こっちくんな!」<br> 耐えかねたあきらが弾かれた様にソファーから立ち上がった。<br> だが、今の俺が後ろを向いて逃げ出そうとする獲物を見逃すわけはなかった。<br> 後ろから両肩を掴んで手前に引き、ソファーに倒す。<br> そのまま背もたれをまたいで正面に回りこみ、両足をわきの下に抱える。<br> 「5分でゆるしてあげような」<br> 電気あんま大好き。</p>

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