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著者不明
「あ……兄貴、何するんだよ……」 それは冬の終わりのことだ。 まだ俺が高校生で、大学受験を控えて腐っていた頃、俺は一つの罪を犯した……。 まだ当時小学生だった弟は生意気盛りで、 受験に神経質になっている俺は小馬鹿にされる、 そんな日々がすぎていた。 「またD判定なんだって~? 兄貴そんなんじゃ大学落ちるんじゃねーの?」 模試の結果を持って笑う弟は、俺をからかうことに喜びを感じているようだった。 成績優秀なあいつにしてみれば、受験だ何だと苛立っている俺が可笑しくて仕方ないのだろう。 けれど、俺にしてみれば、そんな弟の嘲り一つも今は酷い苛立ちに変わっていった。 「……うるせーよ」 「はーあ。俺の方が兄貴よりなーんでもできるのになー。 兄貴は私立の大学行くんだろ?そのせいで俺は中学公立なんだぜ?」
「……」 俺のことを害虫か何かとしか思っていない弟。 そんな奴に一泡吹かせてやりたい。 受験のストレスも積もっていた俺は、自然とそう考えるようになっていた。 「おい、お前、いい加減にしろよ」 胸ぐらを掴みあげると、一瞬あいつの目が驚きに見張られた。 けれどもそれはほんの一瞬の迷いであったかのように、 すぐいつもの生意気な光がその目に戻る。 「な……なんだよ。兄貴の癖に、粋がってんじゃねーよ」 この生意気な光を恐怖に染められたら、どんなに気持ちがいいのだろう。 この強気な口に、許しを請われたら、どんなに気持ちがいいのだろう。 そう思うと、もう、止める事なんてできなかった。
俺は、胸ぐらを掴んでいた手を離し、弟をにらみつけた。 弟は俺なんか怖くないとでも言うように、その目でにらみ返してくる。 もう、どうとでもなれ。 俺は弟の体を部屋に引きずり込んで、ドアに鍵を掛けた。 「何のつもりだよ」 弟も、普段と違う俺の様子に気づいたのか、その声にいつもの力は無い。 少し怯えるように俺から距離を取って、こちらを睨んでいる。 殴られるとでも思っているのだろう、 その小さな体が強ばっているのが分かった。 殴るなんて、そんな簡単に済ませるもんか。 暴力で屈させようとしたところで、ずる賢いこいつは、母親にでもいいつけるだろう。 それならば、こいつが絶対誰にも言えないような方法で、懲らしめてやるだけだ。
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