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インフルエンザ氏
「あー、今日あいつと映画見る約束したけど無理っぽいな…」朝から咳が止まらない、起きあがるとダルイ…。「完璧風邪じゃん…」 遼はふらふらした手つきで、今日映画を見に行く約束をした中学からの親友である裕幸にメールを打つ。 『ごめん、俺風邪引いちゃって今日行けそうにないわ… 体が熱い(~Q~;)』 「はいはい送信っと」3分もしないうちにお返事メールが帰ってきた。 『マジかよ!?大丈夫?俺見舞い行くわ!』はぁ?何考えてんのこいつ…、風邪移るじゃん、ばか? 『いいって!お前に風邪移したら大変だし、だいたい、うちに来るには電車乗らないとダメだろ?』と、推し進める俺 『何言ってんだよ、大事な親友が寝込んでるっつーのに…それにバカは風邪引かないって言うし(笑)』 イヤイヤ、笑えないって…。ゆっくりさせてよ。 『そーゆーワケで今からそっち行くから!待ってろよ♪』 と、分け解らないうちに裕幸の訪問が決定してしまった。
俺と裕幸が知り合ったのは中学の頃、同じ部活だったからで、毎日毎日くっついてはケンカしたりで…周りから見たら微笑ましい光景だったのかもしれない。そんな俺らは先輩に可愛がられていた。 自分でもあの頃を思い出すと戻りたくなる。 受験の時、俺の志望校は地区で一番レベルが高いところで、裕幸の学力では到底無理なはずだったけど、あいつはどうしてもお前と同じ高校に行きたいと言って猛勉強した。その結果晴れて二人とも同じ高校に入ったのである。 しかし間もなく両親の都合で海外へ引っ越さなければならなくなった。しかし俺は猛反対し、結果、おばあちゃん家に残ることに。
「遼ー。きてやったぞー」 「うわっ!!勝手に人ん家入ってくるなよ!ビックリするじゃん…」 「つーか、ここ呼び鈴ないし、田舎者はこれだから困っちゃうね」 裕幸は勝ったも同然といったような口振りで言う。 「う、うる ゴホッゴホせー!!」 咳が邪魔して言い返そうとしても貧弱そうな口調になる。 「お前辛そうだな、熱はあんのか?」 「まだ計ってない…でも、熱いかな。」 そういうと裕幸は遼の前髪をそっと掻き分けて手のひらを当ててきた。 「どう?」遼は軽い口調で聞いた。 「んー、わからん…」 やっておいてそれはないよと言った遼の表情、実は見るからに熱っぽいということは裕幸にもわかっていた。熱でトロ~とした表情を見せる遼に裕幸は愛おしさを覚えたのである。『これなら抵抗できないな』という一文が頭のなかでスクロールしていく。 「遼、でこじゃ分からんから上脱げ」 『親友関係崩壊』、『学校でホモ扱い』といった脳内警告はちゃんと発信されたはずだが、とうとうENTERキーを押してしまった。
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