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著者不詳
おやつを食べて一息ついたそのタイミングで、妖精がなにか耐えかねたように切り出した。 「おにーさん、暖房、つよくない?」 そうか? 設定温度は23度。冬の暖房ってこんなもんだと思うんだが。 「この室温、ぼくにとっては、かなり高温なんだよ。だから、おねがい。下げて?」 「断る。寒いのはキライだ。そんなに寒いのが好きなら、ひとりで外に行って来い」 「おにーさんのイジワル! …えっとぉ、ぼく、暖房に当たってばっかりいるとね、脂が浮いちゃうんだよ」 ・・・。 「は? 脂?」 なんで? 訝しげにするオレに、さっきまで食べてたチョコのパッケージを突きつける妖精。何? 読めって? 「高温でやわらかくなったチョコレートは冷えて固まると白くなることがあります(ファットブルームといいます)。これはチョコレートの中の油脂分であり、召し上がっても身体に差し障りはありませんが、風味は劣ります」 ふうん? ファットブルームねぇ? 「わかった? おにーさん。ファットブルームがおきちゃうんだよ」 冗談だろ? そこまでおまえはチョコと一緒なのか。 「そうなったらもうタイヘンでね? ベトつき肌&乾燥肌のわがまま肌になっちゃってもうヒドイんだから」 そんなこと力説されてもな…… 「だーかーらぁ、暖房は切るー」ぷちっ っあー! バカ! このバカ!
……。…………。寒い。 「寒い、ね、おにーさん……」 オマエも寒いのかよ。思いっきり震えてんじゃん。 「ねぇ、寒いから、ぎゅってして?」 「ファットブルームは?」 「お口で溶けて手で溶けない」 ……。M&M'sか? 「わかったよ。ほら、こっち来い」 わーい、とパタパタ駆け寄ってくるチョコ妖精。幸せそうな面しやがって。 さて、妖精ごときじゃ寒いのはどうにもならん。布団でもかぶるか。 あ、今日は見かけないと思ったら、こんなとこに隠れてたのか。悪魔。まぁいいや。 こらバカ!妖精! 布団に入ったからってはしゃぐんじゃない! っこら、ソコは……! やめ……
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