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著者不詳
貴司の不意打ちに、もう俺も顔を引き締めているのはムリだった。 抱き寄せていた手を離し、そっと口元を押さえる。顔が熱いのが判る。 「そっか。……俺もだ」 それが、そのときできた精一杯の言葉だった。 「くす」「ははは」 二人とも恥ずかしさでおかしくなってて、笑いがこみ上げた。 そんな貴司の笑顔をおれはかけがえのないものだって思えた。 これを手放すなんてムリだ。 「いこっか」 「うん」 はたから見てどうみえるだろう?トイレから手をつないで出てくる兄弟。 ま、まわりからどう思われても全然気にしないし。顔は赤いけど。 いつか理性を超えてしまうだろう。そしてまた貴司を傷つけてしまうかもしれない。 それでも、俺はこの手を離せないだろう。決して離せないだろう。
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