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著者不明
……それは6年位前。俺がまだ中3だったころのことだ。 生徒がクラスの枠を離れて、ある程度自由に調べ学習をするという授業があったんだ。 が、そんな授業、中学生にとってみれば休み時間も変わらない。 調べ物のひと段落ごとにふらついて雑談を繰り広げるような、なんかいい感じのヌルいムードが漂っていた。
さて、まぁそんな雰囲気、俺も当然適当にヒマを作ってはフラついていたわけだ。 やや過疎気味の大教室の隅で、ぼんやりと、昼の一番眠い時間をすごしていた。 まったり、ひたすらまったり。ああ調べ物に戻んのめんどくせぇ……。 しかし、俺のまったりタイムには敵がいたのだった。
そいつは常に死角から襲ってくる。足音を立てずに、唐突に。 問答無用でうしろからハグ。 うわあ。なんだこれ???と思うのも束の間、ぱっと開放される。 それが、最初。
そいつはそれ以来、何度も「イタズラ」を繰り返してきた。 ただのハグだったりすることもあれば、横抱きに抱えられたり、 あるときには机に押し倒されて制服(学ランだった)のボタンをはずされたり、 耳に息を吹きかけられたり…… いろいろ、と。
そんな「イタズラ」がある程度続いたころ。もはや俺もそれが半ば日常的トラブルとして受け止め始めていたころ。 始まりと同じく、唐突に終わってしまった。 あー、なんだろ。安全になったのは確かだ。でも、なんか寂しい。確かに、寂しかった。 そいつ曰く「イタズラしないのが新しいイタズラ」とのことだったが、なんのことやら。 あったことは、それまでだった。
来年、俺たちは20になる。 あいつはいま、どうしてるんだろう。彼女を作ったんだろうか。それとも、彼氏を作っているんだろうか。 成人式で会ったら、今度はこっちからちょっかいをかけてやろうかと、思う。
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