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「僕…知ってるんだよ?僕がお風呂に入ってる時に、お兄ちゃん、覗いてるでしょ」
戸惑いと興奮、絶望や諦観や…自分はこれほどまでに豊かな感情の持ち主であっただろうかと思わせるほどの
種々雑多な感情が入り混じり、信之は立ち眩みに襲われた。それでも嫌われたくない、という気持ちが一番大きいようで、弟の目を見られずに居る。
「あれは……その、違うんだよ、尚人…俺は別に、疚しい気持ちで……」
しどろもどろになりながら最善の言い訳を模索する信之に、弟の尚人は優しく問い掛ける。
「ねえ、お兄ちゃん?……僕と、したい?」
それは思いもよらぬ言葉。心の底に沈めた禁忌の箱の蓋を開く呪文。
「な…何言ってるんだよ、お前は!」
そこでようやく尚人を真正面から見据えた信之は、目の前の弟の変化に気付いた。
「僕は…いいよ?……お兄ちゃんが欲しいなら…僕の全部をあげる。…ここも……ここも、全部好きにしていいんだよ……お兄ちゃん」
甘美な言葉。淫蕩な仕草。夏用の薄い寝間着を着た尚人が、その体に艶かしく指を這わせている。
――信之はそれだけで、己に屈した。……彼が尚人の誘惑を跳ね除けるには、余りにも時間と経験が足りなかった。
「わ……もう、痛いよ、お兄ちゃん……」
ベッドに倒れ込む尚人の瞳に半ば見下すような色が混じっていたことを、信之は知らない。