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「あっくん」と呼ばれるのは久しぶりだった。
1年ほど前から、兄は「あっくん」と呼ぶことも、
夜あきとと一緒に寝ることもなくなった。
あきとは、子ども扱いを卒業したことが嬉しい反面、それがひどく淋しかった。
だから、もっと呼んで欲しくて、あきとは次々に瞼や頬めがけて、
キスをしたり鼻を擦りつけたり舐めたりしてみた。
「あ、…あき、あっくん…!」
あきとの唇が触れるたびに、りくは息を詰まらせ、
いやいやをするように首を振る。
あきとよりも少し長めの髪がはらはらと額や耳にかかり、
真っ赤に染まった耳が綺麗だったので、ぱくっと唇で噛んでみた。
「ひぁっ!?な…なに?…や、め」
「もっと呼んでっ」
「…え…?」

ずっと胸に溜まっていた淋しさをぶつけるように、
あきとはりくの耳にむしゃぶりつく。
「あっくんって、言って」
「あっ…あっくん」
口に含んだ耳たぶを、舌でなぞる。
「もっと」
「っは…あっ…あっくん」
っぴちゃ…ちゅっ…と、湿った音がやけに大きく部屋に響いて、
家の前を走り回る子どもたちの喚声をかき消していく。
「もっと」
「…あ、ぅ…あっくん」
あきとは耳から離れ、りくの胸に顔をうずめる。
頬をすりつけるようにグリグリと顔を動かす。
「ふふふふふ」
「あ、あっくん…くすぐったいっ…」
りくの胸はすべすべしていて、温かくて、気持ちが良かった。
「うふふ」
胸に頭を乗せたままりくの方を向くと、目が合った。
相変わらず瞳がゆらゆらと揺らめいている。
「りくにぃ、大好き」
暗がりに慣れて広がったりくの瞳孔が、キュッと縮まる。
そして、また徐々に広がり黒目いっぱいに溢れそうなその瞳に、
あきとは、そのまま吸い込まれてしまいそうな気がした。
りくの唇がスローモーションのようにゆっくり動く。
「あっくん、大好き」
あきとはその言葉を聞き終える前にりくに抱きついた。