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準備室に入りシュウ君が内側から鍵をかける。静寂の中でカチャンという音がやけにあたりに響く。
たった今訣別した彼等が後を追ってくる様子は無い。
ボクらはもうずっと無言だった。言葉は無くても握り合った手と手からシュウ君の気持ちが流れてくる。
心を通じ合わせるには傍にいるだけでいいんだ・・・もうずっと離れたくない。
少し照れくさそうに後ろ髪をいじりながらシュウ君が口を開く。
「今まで、ごめんな。もっと早くああすれば良かったのにオレ怖くって出来なかったんだ。」
「ごめんな」
そんな事ないよ、謝らなくっていいのに。ボクはずっと感謝してるのに。
でも何て言っていいか判らない。やっと首を横に振って、口下手な自分の性格を呪う。
「もっとこっち、よりなよ」
うん、と頷いてそろそろと近づく。シュウ君の左手が伸びてボクの髪に触れる。
まるで赤ちゃんを抱く女の人みたいにボクを傷つけないよう、壊さないように、優しく、撫でる。
もう判ってた。シュウ君がどうしてココにボクを呼んだのか。
「なぁ、ユキト・・・ずっと言いたかった事があるんだ」
眼をそらさずじっと続きを待つ。シュウ君がゆっくりと深呼吸をしてから言った。
「好きだよ、ユキト。」

ずっと胸の奥で繰り返し夢想していた台詞。
また声が出ない、涙が零れそうになるのを必死で堪えて何度も頷く。好きだよ、ボクもずっと・・・
シュウ君の右手がボクの背中に周りそのまま抱きしめられる。
誰かに守られてるってこんなにも心地良いんだ。視界がシュウ君でいっぱいになる。
「このままさ・・・いい・・・?」
ぎゅ、っと両腕の力が強くなってシュウ君の広い胸の中に引き寄せられる。
この言葉なら答えられる。返事はずっと前から決まってたから。
「うん、ボクは大丈夫だよ・・」
掃除の時間、頭を撫でられながらいつも密かに願ってた空想。これから、全部現実になるのかな・・・
全身の力を抜いて、このままボクの全部をシュウ君にゆだねようと思った。




      • カチコチという時計の音だけが聴こえる・・・