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部屋に帰ると、「へんなの」がいた。

講義を終えて、一人暮らしの寂しい部屋に帰る。
あれ? なにかおかしい。違和感がある。そう、部屋の奥に何か……
いる。
その「何か」は、少年だった。窓際においてあるベッドに腰掛けて、差し込む夕日を浴びながら、脚をぶらぶらさせている。
しかも満面の笑みをこっちに向けてくる。うわ、超かわいい。
「やっとかえってきましたねー?」
まだ幼さが残る声で、そう声をかけてくる。ああ、帰ると声が返ってくる暮らしなんて、もう1年ぶりくらいか。なつかしい。
……いや、そうじゃなくてだな。
「おまえ、誰? てか、なんでウチにいるわけ? カギは?」
「? いや、おにーさん、何言ってんのかよくわかんないです。それより、ただいま、は?」
顔に似合わず、肝が据わってるらしい。
「ああ、ただいま」
律儀にあいさつ返すあたり、何やってんだろう。オレ。
ちょっと泣きたくなった。

「えっとぉ、僕は、要するに妖精さんです」
「ちょっと待ってろ。病院と警察とその他諸々の機関に連絡するから」
もはやオレが通報されないためには、先手を打つより他にない。そういう確信があった。
「おにーさん、ぼくのこと信じてないんですね?」
いや、信じろというほうが無理があると思う。
「まぁ、どこに連絡とってもらっても、無駄ですけどね。ぼく、戸籍とかありませんし」
妖精ですから、だそうだ。なんじゃそりゃ。
しかしオレも曲がりなりにも大学生、妖精さんですよなんて言われて、はいそうですか、ってワケにはいかない。
そういうものはアタマの中だけで楽しむものだ。子供相手で心苦しいが ……ちょっと、本気になろうか。
「少年。冗談はいいかげんにしようか? なあ?」
「おにーさん、アタマだいじょぶ? ぼく、冗談言ってないよー?」
んのクソガキ……っ。

「オレの負けだ。信じよう。」
にらみ合いを20分位続けた後(といっても、にらんでるのは俺だけで、自称妖精はそ知らぬ顔でにこにこしてただけだったのだが)、結局折れたのはオレだった。
……。いや、顔を見つめてたら萌えちゃった、とか、そんなんじゃないよ?
「で、お前は何の妖精なの?」
「えっとですねー、ぼくはぁ、チョコレートの妖精なのです」
ああ、確かにそろそろそういう季節だな。うん。もうすぐ2月だし。 ……って、なんで納得してるんだろうか。いや、もうどうでもいいか?
「ふうん? チョコの妖精さんね? で、なんでこの部屋に湧いて出たわけ?」
「あ、ヒトをムシみたいに言うなんてヒドイです!」
オレにとっちゃ「突然現れた正体不明」だから同じなんだよ。そんなこと言っても仕方がないから言わないけど。オレの思いをヨソに「妖精」は続ける。
「おにーさんには、ぼくのやさしさがわかんないんですか?」
「やさしさ?」理解に苦しむ。
「そうですよぉ! ちっともモテなくて今年もまたゼロ個記録を伸ばしそうなおにーさんのためにこうしてぼくが……」
余計なお世話だ。帰れ。
また泣きたくなった。