※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

糸冬了(1)

委員長

 放課後。いつもの様にいじめられる糸冬了を、俺はだまってみていた。
それは、傍観者としてではない。いじめの主犯格として、教室の自分の机に座っていた。
 了をいじめだしたのは……ごく最近のことだ。
それも、クラスの男子が「糸冬って名前さ、駄洒落だよな。ダッセー。」と彼をからかっているのを見つけ、
最近いじめに飢えていた俺は、つい手を出したというわけだ。
 しかし、俺が手を出したのは他にがある。
 彼がからかわれたそのとき、俺は被害者の反抗を始めてみた。
「てめぇ。ぶっ飛ばすぞ……!」
 彼は普段喋らなかった。転校してきたときの簡単な挨拶も、
クールすぎるほどに黙って席に着いてしまったので、先生から少しあっただけだった。
授業中当てられても黙るだけなので、親を呼ばれていたこともあったほどだ。
「なっ……。じょ、冗談だって。なにキレてんだよ。」
 ギロリと睨み付ける目、初めて聞く声、その全てにもう1人は逃げ出した。
そう、それこそが俺の本当の手をつけた理由……のはずだった。


 今も、俺の手下どもと了のいじめ……というよりも喧嘩に近いものを眺めていた。
正直言って、了は強い。
「おいおい、お前ら使えんなぁ。ん? 1対3で互角とか…………。なぁ、了くん。俺とさしで……ね?」
 手下の1人が俺の言葉に口を挟もうとしたが、俺は軽々と制した。
言葉が終ると了はより反抗的な目で俺を睨みつけてきた。
「よしっ。それじゃぁ、お前ら帰れ!」
 俺は少しの笑いを堪えて、手下どもに手を振った。


 少し流れる沈黙が俺らの気持ちを高ぶらせる。
誰もいない教室で、そして、誰もこない教室で好きあっている、
もしくはそれ以上の感情を持っている俺らが2人っきりだという事だけで、十分なムードだった。
「今日も……ごめんね?」
 俺の言葉が静かに沈黙を破った。何も言わない了を見て、
僕はできるだけ優しく、彼の肩に両腕をまわした。
「ちょっっっ、やめろよ!!」
 ぎゅっと力を入れた瞬間に了が口を開いた。そして、今まで雰囲気が崩れる。
 思わず俺は笑ってしまった。
「いいじゃん。俺、こういう、何か、学園ドラマっぽい展開好きだ――。」
「だまれ。」
 遮って了が言い放つ。
「了くーん。俺、その素直じゅないとこ好きだよー。」
 今の俺キモいな、と思いつつ続けた。いつも了の前ではこんな感じだ。
かなり教室とのギャップが激しいことは自覚していた。


 了の性格……かなり、俺のタイプだ。
素直じゃなくて、それでもって、稀に顔を真っ赤にして素直になったり、何気に俺にメロメロだったり。
その全てに俺は惚れきっていた。
「正直言って、キモい。」
 更に了が言い放った。
「もう、素直じゃないなぁ。」
 俺は了に抱きついた……いや、飛びついた。
「やめろってっ! ていうか、声聞こえるからっ!」
 クールな了くんは俺たちの為に、先生が来るのを気にしているんだな。と、勝手に妄想し、そのまま答えた。
「ダイジョブだって、担任は会議だし……他の先生もだいじょぶだろ?」
 心で「たぶん」と呟いて、机に了を押し倒した。