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チョコ妖精(5)

著者不詳

部屋に帰ると「へんなの」が増えてた。

あー、なんだソレ。またちまいのが増えたなオイ。
「どこからソレ連れてきた」
「えっとぉ……橋の下?」

それは一月くらい前。突然俺は「チョコの妖精」と同居することになった。
全身チョコ風味のそいつ・少年/外見年齢12歳/実年齢約200歳は、カワイイ顔をして案外淫乱……いや、違う。そうじゃなくてだな。ともかく、オレの生活を阻害し放題阻害した。
食事は余分に作らされるし、こんなのが部屋にいるなんて、知られるわけにも行かない。毎日戦々恐々だ。
で、それが「増えた」。
仮にも人間の外見をしてるソレを「捨てて来い」と言えるほど、オレは道徳心を捨ててない。仕方無しに話を進める。
「で、今度は何なんだ?」
「…『悪魔』だってさ」
あくま。悪魔ですか。ああそうですか。まあそういうこともあるかもね。妖精もいるし。あはは。はぁ……。


「然り。我は『悪魔』である。役目は『幸福退散』、能力は『関係の切断』、対象は『人間』である」
……。
さて、やっぱり病院に行ってこようかな。疲れがたまってるのかもしれない。
「逃げるでない、青年」
「いやだ。オレはそろそろ精神科に行ってくる」
よし、ハッキリ言ってやったぞっ! しかし、そんな達成感に満悦してもいられないらしい。左側から抗議の声が上がる。
「ちょっとぉ! おにーさん、なんでそんなこと言うのぉ!? まさかあの、ぼくとの『熱い一日』を忘れたとでもっ!?」
「いや、あれも多分幻覚妄想の類で、オレの脳神経が作り出した幻影だからさ」
っていうか、あの時間帯、記憶おぼろげなんだけど。
「おにーさん、独我論の類は他人に語った瞬間に偽になるんだよ? だから、その主張は無駄無駄無駄ー。拒否します」
なんだそれ。
「それにぃ、ほら、小さい子を困らせちゃいけないでしょお?」
「小さい子って、どうせまた外見年齢と実年齢が一致してないんだろ? 今度は悪魔だからな。世界と同年齢だったりするんだろ?」
しかし、悪魔少年はちょっと困ったように首を振る。
「青年。肩書きだけで物を判別しようとするでない。我は、いわば『生まれたて』である」


「…『生まれたて』?」
「然様。この世に在ることを許されて、然程時間がたっておらん。まだ赤子のようなものよ。 …といっても、御主ら人間とは尺度が異なるだろうがな」
はぁ、そうですか。
「で、実年齢、おいくつ?」
80とかか。
「生まれて、8年である」
やっつかよ。小学生じゃないか。まさかそこまでとは……
「実に3日前に、実体、すなわちこの体を獲得したばかりである。然るに、これが最初の仕事というわけだ」
よろしくたのむぞ、と握手を求められる。
「ああ、よろしくな」
つい握手を返すあたり、オレも律儀なものだ。 ……ん?握手?「よろしくな」?
 相手 は 悪魔 だぞ ?


「うふふ♪ よかったねぇ、『悪魔』くん。これで最初のお仕事が始められるね」
「労い、感謝する。ここまで道程、貴公の助けによるところ甚だ大きい。重ね重ね、感謝申し上げる」
目の前で超常存在が2人、なにやら会話を繰り広げているが、しかしそんなことは知ったことではない。
オレはもはや呆然とするしかなかった。
『人間』の『関係を切断』して『幸福退散』する『悪魔』と『よろしく』することに、してしまったのだ。
つまり、どういうことか?
「青年。困っているようだな? ふふん。小気味良い。もっと困るがいいわ。今後貴様は、友人も失い、恋人も作れずに、一人寂しく短い余生を送るのだ」
残念だったな、と、悪魔は不適に笑う。
「ん? ってことは、おにーさんがもはやマトモにコミュニケーション取れる知り合いは、僕しかいないってことかな?」
やったぁ、と、妖精は無邪気に笑う。
「あは、あはははははははは……」
オレは、空虚に笑う。笑う。あはははは。