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赤い目(2)

防空壕ってどんくらい深いんだろう氏

俺は役に立たないあんどんを叫びを交えながら力一杯投げ捨て(この時も彼は面白そうに笑っていた)、壕の入り口に戻った。
どのくらいの時間が経ったのかはわからないが、外の空襲は止んでいた。
空には、消えかかった飛行機雲が3つ。
彼らの戦闘機が何人乗りかは知らないが、こんな田舎に飛行機を3機も寄越す米軍がおかしく、俺は空に向かって苦笑いをした。
彼はそんな俺を不思議そうに見つめる。
俺は彼を抱き上げ、一緒に空を見ようと目で伝えた。
彼は素直に飛行機雲を目で辿る。
俺は目前にある色素の薄い(茶色がかった)髪を見て、彼の生い立ちに疑問を持った。
彼はふもとの教会から来たと言った。
ふもとの教会…そんなもの、俺の記憶にはなかったのだ。
「なあ、お前」
「なぁに?」
目の大きな、可愛い顔立ちがこちらを向く。
「教会って、どこにあったんだ?俺、知らないんだけど」
彼は急に目をきょろきょろさせた。
戸惑っているようだ。
「大丈夫、何聞いても怒ったりしないからさ」
俺が笑いかけると、彼は少し微笑んで、斜め下を見ながら話だした。
「僕の教会は、ふもとの村の外れにあるの。だから、村に住んでる人も知らないかもしれない。神父様は、人に会わないひとだったから…」
「どうして?神父様は何か悪いことでもしてたのか?」
「ううん」
彼は首を振って、更に頭を下げた。
ほとんどうなだれていると言っていいような姿勢だ。
「神父様は…僕をかばってたの。僕がいじめられるといけないからって…」
「お前がいじめられる?何故?」
「僕の…僕の目が、いけないんだって…おとうさまもおかあさまも、みんな連れていかれて…」
そう言う彼の声は淡々としている。
「目、見せてみな?」
俺は下を向いている彼を促した。

「なあ、俺はいじめないから」
今俺の両手は彼の体を抱いて支えている。
彼の顎を持ち上げるには説得しかなかった。
「見せてくれたら、俺、お前とずっと一緒にいてやるからさ」
果たしてこんなセリフが説得につながるのか。
俺は自身を笑った。
しかし。
「…本当?」
彼はなびいたのだ。
「うん、本当、俺嘘吐かない」
すかさず言い足す。
良いぞ、彼の顔がこちらを向く。
……………。
「…普通の目じゃねえか」