※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

俺の部屋のパイプベッドは、二人で寝るには狭い。
二人、と言っても、断じて彼女と一緒に寝ているだとかそんなシアワセな狭さではない。
七歳年下の弟である高良が、最近怖い夢をみるだとかで「兄ちゃんと一緒に寝ていい?」と
部屋を訪ねてきたのだ。追い返すわけにもいかず、取り敢えず布団に入れてやったのだが、
やっぱりというかなんというか、狭い。
高良がまだ小さいおかげでギリギリ落ちずに済んでいるけれど、布団は三分の一しか使えないので
寒い。高良が風邪を引くよりはマシ、と念じて寒さに耐えているが、おかげで目が冴えて眠れない。
天井をにらんでいると、もぞもぞと隣で毛布のかたまり(布団だけではなく毛布まで奪われた、というかやった)が動いた。
「……兄、ちゃん」
「…ん、起きちゃったか?」
「…………」
「…寝言、か」
小さな寝息と一緒に上下する高良の胸に、起こしてしまったわけではないと知って安堵する。
細い髪が、寝返りに合わせてサラリと揺れた。淡く甘い匂いが鼻をくすぐって、訳もなくどきり、と心臓が胸を叩く。
香水を使っているわけがないから、匂いの正体はきっとシャンプーだろう。同じものを使っているはずなのに、
こんなにも違うものだろうか。母親に似て髪の硬い俺とは正反対の、やわらかな毛先を何とはなしに見つめる。
「……寒ィ…」
昨日、この地域では珍しく雪が降った。その続きのように、今夜もひどく冷え込む。
布団を高良に譲ったままでは、本当に風邪を引きそうだ。
「…まあ、俺の布団に入ってくるお前が悪いんだよな」
ひとりごちて、高良をぎゅっと抱き寄せた。子供特有の、少し高めの体温が俺の全身にじわじわと広がっていく。
頬にふれるさらさらの髪の感触に満足して、もう一度ぎゅっと抱きしめてから、俺も眠りに落ちた。