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「しまったなぁ」
 寒風吹きすさぶ中、僕は一人つぶやいた。
 家の鍵を忘れてきて、締め出されてしまったんだ。
 お母さんが帰ってくるのは遅いし、それまでどうしようかととぼとぼ歩いていると、
 道のど真ん中で突っ立っているきーちゃんに出会った。
「きーちゃん、何してるの?」
 ぼんやり空を見上げていたきーちゃんに声をかける。
「ん、ゆーちゃんか。雲の形が変わってくのを見てたんだ」
「こんなところで…寒くないの?」
「小松フォークリフト型だった雲が、豊田自動織機のフォークリフトに変わっていくのが面白かったものでつい」
「そ、そう…」
 幼稚園の頃からの付き合いだけど、いまだにきーちゃんが分からないときがある。
「確かに寒くなってきた。風もきついし」
「あ、雪だ」
 頭の上は晴れているのに、ちらちらと雪が舞い始めた。遠くの空に広がってる雲から風で飛んできたのかな。
「まずい。吹雪いてきた」
 きーちゃんが深刻そうな顔で言う。……吹雪いて?
「このままだと遭難してしまう」
「こんなとこで遭難なんてしないよー」
「雪山を舐めるなー!」
「ええー?」
 どうやらきーちゃんは、雪山遭難ごっこを始めたみたいだった。唐突になりきりごっこを始めるのはきーちゃんの癖だ。
「縦走路から外れたのかもしれない。窪地の積雪は危険だ。早くビバークするところを見つけないと」
 やけに設定が凝っている。
「ぐずぐずしてると死んじゃうよ」
 そう言ってきーちゃんはとっとこ歩き出した。仕方なく後をついていく。