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「……呆れた。兄様、まさかノエさんの服を全部僕に作らせるおつもりだったんですか」
採寸後、私の部屋。机の上に積み重ねた金貨の数を見て、溜息混じりにルークが呟いた。
「心算も何も、私はその為にルークを呼んだのだが……」
思わぬ反応に目を丸くする私に追い撃ちをかけるように、言葉を続ける。
「あのですね。衣服を一着、生地から起こして作るのにどれだけ時間が掛かると思ってるんですか。
 確かに全部ウチの店に作らせてもらえれば、ウチにとってはこの上なく有り難いです。ですがその間、ノエさんを
 ずっとガウン姿のまま生活させるおつもりですか?……そんなのは、駄目です」
駄目……確かに、駄目ではある。あのガウンは一着しかないものだし、何よりも私が望む生活に支障をきたす恐れがある。
有態に言えば、少々刺激が強すぎるのだ。……各々方、どうか、獣を見るような目で見ないで欲しい。私は真剣なのだ。
「ふむ、ではどうすればいい?」
「兄様が信用してくださるのなら……僕が支度金をお預かりして、街へ行きます」
短く区切られた言葉。灼眼には爛々と輝く強い意志と、ほんの少しの恐れが内在している。

……ルーク。親愛なる我が友人よ。私は歳が若いからといって君を軽んじたことなど一度もない。
君はよくやってくれている。たった独りこの屋敷に暮らす私の心が荒むのを防いだのは、他ならぬルーク、君の存在なのだぞ。

――言葉で説明するのは何となくむず痒いような気がしたので、ルークの頭を乱暴に撫でた。
一瞬だけ身を硬くしたルークは、私の行為を好意的に受け取ったようで、両手の指先を組んで忙しなく動かしている。

ふと、思った。
私はルークの頭を撫でるのが好きだが、撫でられている間、ルークはさぞ暇なのではなかろうか。