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「うあぁっ…!」
ついに捕まった。僕は全力疾走中に後からシャツをつかまれて倒れ込んだ。もう逃げられない。
その瞬間、僕の心を支配したのは、恐怖と絶望と羞恥心、そして後悔。
「約束は守ってもらうからな!」
僕の視界のなかで、陽に灼けた男の子が僕を見下ろしてそういった。ヒロ。僕のクラスメートで小学6年生。
普段は学校の野球部で活躍している。すこし癖のある髪を短めに刈ったヒロが口元を歪ませている。
こういうヒロの表情をなんて言うんだろう。シギャクテキ?
いつもなら整った感じのする彼のほっそりとしたあごも、今の僕にはひどく攻撃的に見える。
「………」
むしあつい夏の公園のグラウンドに座り込んで、僕はなにも言えなかった。
あまりにも高まった緊張のせいかなのかぼやけてしまった視界に、今度は二人の人影が入り込んできた。
二人もやっぱり僕のクラスメートだ。その片方は不満そうな表情を、もう片方は期待に満ちた表情を僕に向けている。
それぞれが、僕が途中で逃げ出したことへの怒りと、これから起こることへの好奇心の現れなんだと僕は思った。
三対一。これで僕が逃げ出すチャンスは完全に失われた。これから僕の身に起こることを想像して、僕は心の底から後悔した。
もし全力疾走でなんとかヒロから逃げ切れていれば。もしこの賭けに負けていなかったら。
いや、野球部のヒロの足に僕が勝てるわけは最初からなかったし、このカケだって勝てる保証はなかったんだ。
僕がそもそもこんなゲームに参加していなければこんな恥ずかしい目に遭うことは…
ぐらり。両うでを痛いぐらいにつかまれてひっぱられ、僕ははっとした。
心の中に今までに感じたことのないほどの苦い感情が広がった。僕がどんなに後悔しても目の前の現実ってものは変わらないんだ。
両脇のクラスメートが僕を立ち上がらせ、「目的」の方向へ向けた。公園のすみにあるコンクリート造りでタイルばりの四角い建物が見える。
公園におとずれた人が用を足す為だけにあるそれは、今日、僕の為の監房に、なる。

きっかけは些細なできごとだった。僕ら四人は近所の公園に集まっていた。
「ここの遊具でいつものように鬼ごっこ。ただし…」
普通の遊びに飽きたヒロたちが、賭けを思いついたんだ。
「…一番最後に鬼だった人は、トイレでシコってもらいまーす!」
公園の時計でながい針が0分の所に来るまで鬼ごっこをして、最後まで鬼だった子がトイレで…
…他の三人が見ている前でマスターベーションをする。そういうことらしい。
本気なの…?と思ったけど、本気らしい。ヒロが、異存はないね?と一応確認を取る。
僕は…正直あまり乗り気じゃない。もちろん僕はマスターベーションというものを、したことはある。
初めてそれを知ったのは、合宿で一緒になった中学生から話を聞いた時だった。
できない。他の人にそんなところを見せるなんて。一人でもあんなに悪いことをしたような気分になるのに…
でも…今ヒロ達に僕が反対したら?クラスメートの反論が思い浮かぶ。
「それじゃあ、俺ら3人だけで遊ぶから、お前は好きにすれば?」「みんなの前でしたくないんだったら、鬼にならなければいいんだよ。」
何故か、あんなに嫌悪感があった僕の心が、賭けに参加する方に急激に傾き始めていた。
大丈夫。実際にしなきゃいけないのは四人にひとり。僕は鬼ごっこには自信があるし、それこそ本当に鬼にさえならなければ全く問題無い。
その時は、勝手に三人でトイレにでも何にでも入ってればいいんだ。それに…ちょっとだけエッチなことにも興味があるし、その時はその時だし…
「それで、お前もやるんだな?」
聞かれた。
「あ…、うん。僕、やる。」
答えた。