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「~~~…♪」
 夜明けの星が消え行くように、アリアが締めくくられる。
 歌が終わっても会場は静まったままだった。やがて、ぱらぱらと拍手が起きると、すぐに割れんばかりの歓声が沸き起こった。
 彼らが絶賛しているのは、もちろんリノだ。
「リノもスランプから抜け出したようですわね」
 いつの間にか初老の女性が私の隣に立っていた。
「あ、校長」
「むしろ前よりとても素晴らしいわ。技巧も情感のこめ方も数段上。
 高音域が出にくくなりつつあるのもうまくカバーしてる。あなたの指導のおかげよ。ただねぇ」
 校長が意味ありげに私を見る。
「どうも神の愛への感謝というよりは、年上の男性を慕う乙女のような感じなのよね」
「は、はは……」
「今後もリノを導いてあげてくださいますわね。……でも、あんまりヘンなことまで教えちゃダメよ」
 ほほほと笑う校長。さすがというかなんと言うか……怖ろしい人だ。
「ほら、あなたを見てるわよ」
 壇上のリノが私に向かって小さく手を振っていた。うなずき返してやると、うれしそうに微笑む。
 その笑顔の中に、無限の未来が見えた。