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「さて…と」
リオを見送ると俺はくっ付いてるロアに目を向ける。
目が合うとニコニコと笑ってみせた。元よりかなり人懐っこい性格なのだろう。
「そうだな…まずは頂きますとご馳走様、あとは…」
1人でロアに言葉を教えるというのはそう簡単な事ではなかった。
一番の問題はその言葉の意味を教える事だ。身振り手振り、時には自信ないが図で…
挫けそうになる事数え切れぬほど。それでも少しずつロアは言葉を覚えていった。
気が付くと夕方になっていた。扉が開く音がする。
「あーおかえり。なんとか間に合ったか…」
「リオ、おかえ…り…なさ…い」
俺が背中をポンとたたくと少し詰りながらも間違えずに覚えた言葉を使うロア。
リオは驚いたようにこちらを見ていた、
会話も出来ないのに短時間で覚えさせるなんて無理だと思っていたようだ。
「リオー、こう言われたら何て答えるんだ?」
「あ、はい。只今帰りました」
こういう習慣なんて無かったのだろうか、少し恥ずかしそうにリオは答えた。
ロアは返答が帰ってきたのが嬉しかったのか満面の笑みを浮かべる。
「もうこんな時間か…、すぐ晩飯作るから待ってろ」
時計は既に7時をまわっていた。

「何か手伝いましょうか」
「そうだな…って何だロア?包丁あぶねぇって」
台所の端から声がかかり、何を頼もうか考えているとロアが腕を引っ張る
「どうやら彼も手伝いたいようですね」
「分かった、分かったから手離せ」
リオがそれを伝えると腕が開放される。そして目を輝かせてこちらを見ていた。
結局出来上がった料理と食器を運ぶ事を2人に頼むと
テキパキと行動する二人のお陰で早く準備が出来た。席につく。
「はい、それではご一緒に」
『いただきます』
食事が進む。ロアは朝の教訓を得てスプーンとフォークだ。
見た所リオと同じくらいの年齢なのだがロアは見た目以上に幼く見える。
気になって聞いてみた。
「なぁ、実は2人って年離れてるのか?」
「正確な事は分かりませんが…私も彼も物心ついた時から一緒に居ましたので、そう離れているとは思いません」
「なるほど…あとさ、なんでロアの事は名前で呼ばないんだ?」
そこが一番気になっていた。リオは昨日出会ってから一度もロアの名前を呼んではいない。
「前にも言いましたが本来私たちには名前が有りません。ですから意味も無い。
 つまり呼ぶ必要を余り感じません。」
淡々と理由が語られる。確かに自分ともう1人しか居ない世界で言葉も存在しなければ
呼ぶ必要は無いのかもしれない。だがここはそんな所じゃない。少なくとも俺を合わせ3人だ。
「なるほど、だけどこれからはロアの事も名前で呼ぶように、ここは2人だけじゃないんだ」
「それもこの地の文化ですか?」
「文化と言えるか良く分かんねぇけど…そうだな、この家のルールだと思えば良い」
「…わかりました。善処します」
こうして夕食は一つの家庭ルールの誕生と取り留めの無い会話で過ぎていった。
少しぎこちない気はするが…こういう生活も悪くない。