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今日は泥団子を投げつけられた。昨日は石だったから、それに比べればマシだと思った。
あいつらが僕を目の敵にする理由はわかってる。……僕が、混血の子だからだ。
同年代の子供達は、その明度に違いはあっても金髪——僕の髪は、鴉みたいに真っ黒。
目だって赤い。……僕は、あいつらのあの真っ青な目が嫌いだ。
帰り道はいつだって独りぼっち。山の向こうに落ちていく夕陽が目に沁みて、何だか少し、胸が苦しい。
「少年、何を泣いている」
突然、声が聞こえた。僕に向けられたのかどうか、辺りを見回すと、畦道に男の人が立っていた。
男の人は僕の方を見ていない。それでもそう声を掛けたのは、きっと見ていたからだろう。
「……泣いてなんかいません」
知らない人に見られた恥ずかしさと苛立ちで、僕はそっぽを向く。
「……そうか。私の見間違えのようだな」
男の人は素っ気無く呟くと、言葉を続けた。
「ところで少年、名を何と言う?」
僕は、自分の名前が嫌いだ。
混血の子、赤眼の不吉な鴉の癖に、名前だけは紳士みたいだな、なんてからかわれるから。
「……言いたくありません。見ず知らずの人に名前を教えたくありません」
——後になって振り返ってみれば、僕はこの時なんて失礼な事を言ってしまったんだ、と自分を叱りたくなる。
「ふむ、では自己紹介をしよう。私は——」


これは、僕の大切な思い出。
兄様と僕が初めて出会った、あの夕焼けの記憶。