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僕はどうしてしまったんだろう。
見ず知らずの人に自分の名前を明かして、その人に名前を褒められただけでこんなに泣いてしまって。
……恥ずかしい。自己嫌悪で潰れそうだ。
でも男の人は優しい笑顔のまま、僕の頭を撫でてくれている。…この胸の苦しさは、いつものとは違うような気がした。
「僕……学校で、虐められて……みんなに、お前は混血の子だって、莫迦にされて……」
溢れ出す言葉を堰き止めるには、男の人は優しすぎる。だから節操もなく、こんな、他人が聞けば迷惑でしかない話を聞いてもらってる。
男の人は黙ったままだ。
「……僕だって、みんなと一緒がよかった……!髪の毛も、目も…みんなと一緒の色だったら、虐められないのに……!」
男の人の手が、そっと離れた。それが寂しくて、俄かに顔を見上げてしまう。
「ではルーク、問おう。君は、自分を生んだ父君や母君を恨んでいるかね?」
なんて事を訊くんだろう、と思った。
ただでさえ混乱してぐちゃぐちゃになって、涙でびしょびしょになってどろどろな僕の頭は質問の答えを用意できない。
「……訊き方を変えよう。その艶やかな黒髪と、燃えるような灼眼を誇りに思ったことは無いのかね?」
……この人は絶対に意地悪だ。そんな訊き方って無い。
朝、鏡の前に立つ時。寝癖でくしゃくしゃになった髪を梳く時。僕は多分、一日の中でその時だけは上機嫌なんだ。
目だってそうだ。燃えるような灼眼、とこの人は言ったけど、僕は赤が好きだ。まるでルビーみたいだ、なんて思うのは、ちょっと陶酔しすぎなんだろうか。
「……少なくとも私は、君の容姿をおかしいとは思わない。……寧ろ、羨ましいくらいだ」
逆光に眩まされていた滲む視界の中で、男の人は悲しそうに笑った。

……この人は絶対に意地悪だ。そんな笑顔って無い。