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夢は、潜在的無意識が具現化したものであるという。
抑圧された願望や欲望、無視していた不安や恐怖が想像力の衣を纏い、心象世界として構築される——ならば。
「御主人様?お茶が入りましたよ〜♪一息吐かれてみてはどうです?」
実に快活に笑う、金髪碧眼の、少年とも少女とも見て取れる人物。
ああ、これは夢なのだな、と冷静に俯瞰視する私とは別の、登場人物としての私がそれに応えて微笑む。
「今日はダージリンか……随分気が利くようになったな」
私の背中越しに世界を視る私。
白い靄が掛かった世界はところどころ歪に捻じ曲がり、繋がりは失せ、恐らくはあの扉の先には何もないであろう。
「はいっ。もうお仕事中にカモミールを出すようなヘマはしませんよー♪」
二人は顔を見合わせて笑っている。それは何とささやかな幸せに満ちた風景だろう。ささやかで、春霞の様に儚い風景。
私は夢の中で願う。誰一人私を知覚し得ぬこの夢の中で強く願う。
愉しそうに笑うこの人物、金髪碧眼の、少年とも少女とも見て取れる人物——ノエの笑顔が、本当に曇りの無いものになることを。
「御主人様?」
ノエが、私を見る。
ノエの向いに座って何事かを喋りながら紅茶を愉しむ私ではなく、心象世界の俯瞰者として空気に溶け合う私を視る。
——その目を見た瞬間、夢の中にあって、脳の奥の奥の方が冷たくなった。
(ケダモノ/ドウセ僕ヲ/犯ス為ニ/買ッタンダロウ)
あの美しい碧眼ではない。それは赤。燃えるような、誰かのような美しい赤ではなく、濁った、濁った赤。
伽藍洞な瞳。それは虚。私は悲鳴を噛み殺す。視線が私を離さない。

夢から目覚めようと足掻くのは、この上なく辛いものだ。それは常に我々には制御出来得ぬ事象であるからだ。
誰か。誰か。この悪夢を終わらせてくれ——