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ラメの入りまくった赤と青のタキシード。
この格好だって僕らの成長にあわせて毎年毎年作り替えなければならない。
身長と一緒に僕の心も変わっていた。
はじめのうちは誉められたり感動されたりするのが快感だった。
いろんなところに行けるのも楽しかった。
だけどそんなことも負担になって、今では決めゼリフを言うのも恥ずかしい。
もう来年には中学生なのに。
「どうして辞めるなんて言うの?」
舞台袖で弟が不安気な声を出す。
「何度もいわせんなよ。」
僕もこれぐらいの頃はまだ仕事が楽しくて仕方がなかった。
一つしか違わないアキもそうなんだろう。
「僕と一緒にするのがいやなんでしょ。」
「誰もそんなこと言ってない。」
アキはいまにも泣きそうな顔になる。
本番前の今泣かせるわけには行かない。
「ほら、泣くなよ。」
いつも僕の後ろでヘラヘラと踊っているアキからは考えられない。
僕の蝶ネクタイにその小さな鼻を押しつけると、まるで猫のように体をすり寄せてくる。
「辞めるなんて言わないで。」
「どうしたんだよ、アキらしくない。」
「お兄ちゃん。ぼく、お兄ちゃんがいるからこの仕事やってるんだよ。」

終わり