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しまった、と思った時にはもう遅い。後悔は先に立たないって言葉があるけど、僕はそれを痛感していた。
……正直言うと、見惚れてしまっていた、という気持ちの方が先立ったのだけど、それよりも何よりも、逡巡は打算で打ち消された。
恐る恐る、兄様の顔を盗み見る。……ああ、悪い予感的中。こんな兄様の顔を見るのは初めてだ。
本当に凄いモノ——感情の受け皿から溢れる衝撃を受けた時、人が取る行動は二つに分かれる。
一つは、笑い。それに比べて小さな自分という存在が、それでも人間でありたいと思うから、きっと人は笑うんだろう。
もう一つは——今の僕たちみたいに、黙ってしまう、というもの。……どんな言葉も、それが“凄い”事であるという事実は飾れないから。
“凄い”もの、というのは、その存在自体が完成されている。——僕たち部外者は、恐々とそれを眺めることしかできないんだ。

恥ずかしそうに俯きながら、上目遣いで僕らの反応を窺う、ノエさん。
——ああ、駄目だ、駄目です。きっと兄様は、そういうのに弱い筈。

(……一応、僕だって試着したんですよ?)
兄様はきっとこういう服が好きだろうな、なんて考えが甘かった。……着るのは、僕じゃなかったんだから。

これなら、石や泥団子を投げつけられた方がまだマシだ、と思った。