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智(1)

著者不明

「ほら、智、ホットポー淹れてきてやったぞ」
智が横になっているベッドサイドにホットポーを置いて、顔を覗き込んだ。
「・・ん、にぃ、さんきゅ」
熱のせいか、少し上気した頬がはんなりと愛らしく、潤んだ瞳に弟とはいえドキリとさせられる。
「ほらよっ」
俺はその思いを打ち消そうと、身体を起こすのを手伝ってやる。
「ほんと、智ってば、とーちゃんとかーちゃんがいないときばっかり具合悪くなるよな」
春になれば中学生になるってのに、少年然とした姿は二次性徴なんてどこ吹く風だ。
「面倒ばっかかけて、ごめん」
「気にすんなって、俺のかわいい弟だからな、面倒でもなんでもないさ」
殊勝にも視線を落としてシュンとする智の頭をクシャクシャとなでてやる。
「どれ、熱はさがったかな?」
智の前髪を掻きあげ、おでこをつけて熱の具合を確かめようと顔を近づけたとき、
伸ばされた両手が俺の頭を挟み込んだ。
「ん?ど・」
(うした?)そう続けようとした俺の唇を柔らかな感触がついばむ。
目の前には目をギュっと閉じた智の顔があって、不意を疲れた俺は身動きもできず、
『こんなにやわらかくて、あったかいのは熱のせいかな』なんてことを考えていた。


いったいどれだけ経ったろう、智の前髪を押さえた手がすっと汗ばみはめた頃
俺の頭から両手が離された。
「・・・・ごめんっ」
やっと聞き取れるくらいの声で謝ったさとしは再び横になり頭から布団をかぶってしまった。
「にぃ、ごめん、僕どうかしてた、ホントごめん、頼む忘れて」
くぐもった智の声がわめきつづける。
「マジ僕どうかしてる、ハハハ、風邪の菌が脳にまでまわったみたい、頼む忘れて・・」
「ストップ、ストップ、ストップ」
放っておけばずーっとわめき続けそうな智を遮る。
「どうしたって言うんだ、急に」
「はぁ~」
布団越しに盛大なため息が聞こえたあと、ひょっこりと目まで頭を出した。
「ごめんなさい。きしょく悪かった?」
「いや、きしょくわるくは無かったが、正直びっくりした」
俺は相変わらず智の前髪を掻き揚げた位置に手を浮かせたまま、見下ろすかっこだ。
「ぶっちゃけ、俺、にぃのこと、その、好き、みたいなんだ」
「・・・ぶっちゃけすぎだな」
俺のつぶやきに一瞬目を見開いた智は顔の両脇で布団をつかんでいた手を離し顔を覆った。
「そうだよね、兄弟だし、僕男の子だしね、気持ち悪いよね」
両手の隙間からか自嘲気味な、今まで聴いたことも無い智の声がもれ聞こえてくる。