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シナリオ


本編

「そんな傷でよくこんな所まで逃げてこれたわね。でも、それももう終わりにしましょう」
あたしはそれがいるであろう暗がりに向かって冷たく言った。
すると、暗闇が答える。
「良く脆弱な人間の身でありながら、私をオイツメタ。しかし、私はマケナイ。お前を殺して、また人間どもを喰い物にシテヤル。」
雲の切れ目から月明かりがその暗闇を照らす。
映し出されたのは身の丈3メートルは超える巨大な物の怪だった。
あたしはそれを知っている。
最近、この街にやってきて人間を喰い殺しているという魔に属する物、すなわち『魔物』だ。
それはゆっくりと構えをとるとあたしに襲いかかってきた。

(戦闘に入る)

「頑張ったようだけれど、それもいよいよ、お仕舞いよ。観念なさい」
あたしは短機関銃を魔物に向けた。
「ま、マテ。もう二度とお前の前に現れない事を約束シヨウ。この地には近寄ラナイ。だから、この場は見逃シテクレ」
魔物は懇願したけれど、あたしは気にせずに言い返した。
「あたし、魔物の言い分を聞いてやる気はないの。ごめんなさいね」
シュパパパパパパパパ
軽快な音と共に銃口から無数の弾が発射される。
弾丸はすでに傷ついた魔物の体をあざけるように弄ぶ。
トリガーを戻すと同時にあたりはまた静寂に包まれた。
完全に物とかしたそれを確認して、あたしはその場を後にした。

あたしは街を歩く。
ブローカーの元へ報酬を受け取るために。
ブローカーというのはあたしのような魔物狩りを生業にしている人と魔物の退治を依頼するクライアントの架け橋となる人の事だ。
そういえば、あまりにも当たり前の事なので、言っていなかったけど、この世界は魔物がたまに現れて、人間を喰い殺したり、繁殖の媒体にしたりと色々と悪事を働いている。
あたしがうまれる前は科学万能の時代と呼ばれ、すべての神秘を駆逐したような風潮があったらしいけど、最近はその風潮が少しずつ見直されて、世間では魔物の存在が再認識されるに至っている。
あたしはここで角を曲がるとブローカーの元へと歩みを進めた。

報酬を受け取ったあたしは誰もいない家に帰り着く。
すでに疲れていたので、あたしはそのままベッドに倒れ込んだ。
そこであたしは夢を見た。

はらり
あたしの指先から髪の毛を離す。
あたしの足下には髪の毛がたくさん落ちている。
プチッ
あたしは髪の毛を抜く。
はらり
抜いた髪の毛を離す。
あいつはママがあたしの事を捨てて逃げたなんて言ってたけど、そんな事ない。
ママはあたしの事を愛してるのだもの。
あいつは嘘つきだ。
あたしはあいつのいるこの家でママを待っていよう。
お湯をかけられたり、引きづりまわされたりするけど、ママを待ち続けよう。
だって、ママはあたしがこの家にいないとあたしの事みつけられないのだから。
それまではあいつと暮らさないと。
プチッ
はらり
プチッ
はらり

朝、目を覚ましたあたしは支度を済ませるとブローカーの元へ向かった。

そして依頼を受けたあたしは電車で30分かけて目的地のここにやってきた。
だけど、あたしはこの依頼にあまり乗り気ではなかった。
ゴミさえ落ちていないゆとりのない風景。
廃れた農具小屋かと思われるような粗末な家々。
道のあちこちに座り込んでいる酒浸りの浮浪者。
目を伏せて通り過ぎる身重の少女。
この街は絶望に包まれていた。
でも、あたしが乗り気でないのは街が頽廃しているからじゃない。
なぜなら、ここは・・・どうやら打ち合わせの場所に着いたようだ。
あたしは依頼主が待つ酒場へと入っていった。
依頼主はまだ来ていないみたいだ。
あたしは壊れた椅子に腰を下ろすと店の店主に金を渡し待たせてもらう事にした。
薄暗い酒場でただじっと待つ。
すると、川の流れる音が聞こえる。
あたしがよく知っている音だ。
目を閉じる。
ここは何もかもが昔のまま。
この街にいると思い出す。
あたしが昔ここで住んでいた記憶を。
キィぃ
扉がきしんだ音がしたかと思うと一人の男が入ってきた。
どうやら依頼主のようだ。
マントに身を包んだその男はきつい香水の匂いをさせていた。
「君が例の退治屋か」
「はい、ベントプラテリックモーからきたベビーです」
ベントプラテリックモーとは今回の仕事をくれたブローカーの名前だ。
「そうか。早速だが、件の魔物についてだが」
酒場の店主が男の顔を見る。
男はしらじらしく咳払いをすると、嫌に含みのある態度で話し始めた。
「魔物は1時から3時頃にかけて、現れている。徘徊するだけの時もあれば、人に手を出す事もある。凶暴な奴だ。その魔物を退治して欲しい。君にしかできない大役だが、頑張って欲しい」
酒場の店主がもう我慢できないといった様子でにやついた視線をあたしにぶつける。
男も酒場の店主同様、含み笑いをした様子であたしを見る。
この依頼の不信感が一気に高まる。
この二人はあたしを担いで何かしようとしているんじゃないだろうか。
それとも、単にあたしが女で子供だから、侮っているだけなのか。
相手の心意をうかがうために疑問をぶつけてみる事にした。
「こちらからも少し質問したい事があるのですが、よろしいですか?」
あたしはあくまで丁寧に聞いた。
「まあ、どうぞ」
にやつく店主。
欺瞞に満ちた男の目。
あくまで態度を変えない相手に嫌な気持ちで一杯になったけど、気にしない振りをして聞いた。
「世間からすれば、ここは隔離された場所です。誰がどうなったとしても見ないふりをするのが普通です。どうして、あなたはお金を払ってまでここの人たちを助けようとするのですか?」
あたしは自分に驚いた。
こんな事を聞こうなどとは思っていなかったのに、口が勝手な事をしゃべり出したからだ。
そんなあたしの心情など知るよしもない男は変わらない不誠実な態度で応答した。
「ふむ、まあ、強いて言えば、気の毒だったのかな。そう、この街の人が気の毒だったと思ったからかな」
男の後ろで背を向けて肩を笑わせている店主と含み笑いをやめない男。
どう見ても担がれている。
この依頼は危険だと普通の人は思うだろう。
そんな状況にありながら、あたしは「この街の人が気の毒」という言葉に冷静でいられないほど夢中になった。
この人はこの街の人を哀れんでいる。
誰もこの街の人たちの不幸を分かってくれる人がいないと思っていた。
この人は惨めな境遇を認めたんだ。
あたしはこの人はいい人なのかも知れないと思い始めた。
嫌な態度なのもあたしが女だから気取っている様子がそう見えただけなのかも知れない。
酒場の店主の笑いもあたしの服装がどこか変だったからなのかも知れない。
すべてはあたしの勘違いだったのかも知れない。
そんな風に思い始めた。
その後の男との会話は決して楽しいものではなかったけど、あたしは男の言葉を信じて言われるままに従う事にした。
必要な話が終わり、その場を去ろうとした男は思い出したように振り返った。
「ところで今夜はこの酒場の二階で魔物を待つといい。ここは街の中心近くにあって、どこで魔物が現れても駆けつけやすいだろうからね」
彼はあたしの事を気遣ってくれた。
やっぱりだ。
あたしの思った通りこの人はいい人だったんだ。
今の会話でこれまでの態度がすべて腑に落ちたわけではなかったけど、あたしはあえてそういったところを意識しないで彼はあたしに好意的に話をしてくれたと思う事にした。
彼に同意したあたしは礼を述べると、彼が去るまで見守ってから店主の元に歩いていった。
あたしの目を見ようともしない酒場の店主にお金を払うと二階あがり、魔物が現れる夜に備えて準備を始めた。
サブマシンガンのメンテナンスを終えたあたしは仮眠をとる事にした。
両目を閉じ、体を休める。
どんどん眠くなる。
思っていた以上に疲れているようだ。
少し眠ろう。
数時間も眠れば、気分もよくなるはず。
そう思い、あたしは眠らないように引き締めていた意識をゆるめた。
そして、あたしは夢を見た。

あたしはパン屋で働いた帰りに廃墟に寄った。
なるべく家には帰りたくない。
そんなあたしはいつも遠回りして家に帰るようにしている。
何もない廃墟。
いつもは鳥さえいない閑散とした所だけど、今日は違った。
銃を手に殺気立つ男とそれを前に悠然と構える魔物がいた。
見つからないように瓦礫の裏に隠れる。
あたしは魔物という物を始めて目にした。
裂けた口は三日月型、目は蛇さえにらみ殺しそうなほど鋭い。指先には長い爪が生え、背には痙攣しているかのように激しく動く翼があった。
すると、男が動く。
銃口を魔物に向けると連射する。
軽い音が聞こえると、銃弾が魔物に激しく当たった・・・ように見えた。
だけど、それはあたしの見間違いだった。
気づいたときには魔物はさっきいた場所から少し離れた位置に移動していた。
一瞬だった。
あたしには何が起きたのか分からなかったが魔物の恐ろしさは分かった。
あの男は殺される。
そして、もしあたしがここにいる事が見つかったら、あたしも殺される。
あたしは固唾を飲んで、魔物があの男だけで満足するように願った。
男は銃を連射しながら、後退する。
銃を連射する事で魔物を自分に近づけないようにして、隙あらば逃げだそうとしていたんだと思う。
だけど、決着は一瞬で付いた。
魔物は恐ろしい速さで男に迫ると、その爪で男の喉をかっさばいた。
男は血を流しながら、どうっと倒れた。
魔物は倒れている男にかがみ込むと、喰らった。
骨などもろともしないようにガツガツ喰らった。
あっという間に男は魔物の中に収まった。
男の体は何も残らなかった。
魔物は男を食べ終わって、満足したのかあさっての方角へ飛んでいった。
あたしはしばらく動かなかった。
魔物がまだこの近くにいて、他の獲物を探していたりしないかと、とても恐ろしかった。
だけど、そんな中あたしは見逃さなかった。
あの男が持っていた銃がその場に残されている事を。
あの銃を売れば、きっとお金になる。
あたしは魔物への恐怖心と銃が誰かに持って行かれないかという不安を抱えながら、ひたすら時期がくるのを待った。
もういいだろうという位待って、あたしは恐る恐る前に出て辺りを見回した。
大丈夫、誰もいない。
あたしは辺りを警戒しながら、銃の元へ向かった。
あたしは銃を掴むと、脱兎のごとく廃墟を駆け抜けた。
やった!やってやった!!
廃墟を通り抜け人の気配がある所へでると達成感で一杯になった。
あたしは銃を隠さずに持っている事に気づいて、服の中へ差し込む。
銃は重くて服から落ちそうになるが、あたしは両手を組んでいる振りをして服の中の銃を抱え込む。
このまま家に帰ったら、あいつが銃を取り上げるだろう。
それはだめだ。
あいつになんか渡さない。
あたしは家への帰り道から逸れると銃を墓所へ埋めに行った。
あたしが銃を埋め終わるとあたりはすっかり暗くなっていた。
あいつはあたしの帰りが遅いから、怒り狂っている事だろう。
あいつはあたしにひどい事をするに違いない。
でも、それはいつもの事だ。
何もしていなくてもあいつはあたしを虐めにくるのだから。
あたしはできるだけすました様を装って家に帰った。
あいつはテーブルの上に座って酒を飲んでいた。
あいつがあたしに近寄る。
笑顔で。
何かいつもらしからぬ不気味さを感じて、恐怖のあまり身動きができなくなった。
あいつはあたしの手を引くと部屋の奥へと連れて行った。

「畜生!!!あいつめ!!あの畜生め!!!!チクショウ!!チクショウメ!!!!あの畜生めが!!!!あの畜生めが!!!!!!」
あたしは自分の部屋でさっきあいつがした仕打ちへの恨み言を吐き付ける。
「許さない!!!許さない!!!!!あの畜生め!!!!!!」
あいつは隣の部屋でいびきをかいて眠っている。
許さない。許さない。許さない!!!!!
あたしは服の乱れもそのままに部屋を飛び出した。
墓所へ行くと銃を掘り起こし、家へと駆け戻る。
奥の部屋をバンッと力任せに押し開けると、あいつがいびきをかいて寝ている姿が目に入った。
あたしは怒りで目の前がくらくらした。
そして、あたしは---------。

はっと目を覚ます。
体中が冷たい汗でびっしょりだ。
気持ちの整理が付く暇もなく、階下で何か物音が聞こえた気がした。
あたしは無理矢理に意識を音の聞こえた方へ向けた。
      • ギィ・・・ギィ・・・ギィ
確かに聞こえた!
階下に何かいる。
あたしは物音を立てないようにそっとベッドをでると枕の下に入れていたサブマシンガンを取り出した。
気配を悟られないようにゆっくり静かに深呼吸をする。
体のだるさを取ると慎重に部屋のドアを開けた。
床を軋ませないように細心の注意を払って歩を進める。
見えた!
魔物が階下であたりの様子をうかがっている。
人がいないか探しているようだ。
まだあたしには気づいていない。
あたしは静かに銃口を魔物に向けると、トリガーを引いた。
シュパパパパパパ
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