ラストハルマゲドン

ラストハルマゲドン

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●ラストハルマゲドン
人類が何故滅びたのか、今となっては、もう知る術もない。
この星は完全に死に絶えた。地表で息づくものは、その姿を土に変え、大地の一部となり溶けていった。
ただ、荒廃した地表が限りなく続くこの景色を幸いにも目にとめる者はいない。
今・・・1つの歴史が幕を閉じたのである。
しかし、星はその力の偉大さを誇示するかのように、地の奥底に眠る生命体を呼び覚ました。
新しき歴史を生み出すがために・・・
「この地が、我らに帰ってきたのだ。」
魔族の台頭である。
星は新しき世界の幕開けに、異形の衆を呼び覚ました。
この大地で生きていけるもの達を。
『美しい大地だ。』
『我々魔族以外は全て滅んだようだな。』
『うむ、いよいよ魔族の時代がおとずれたのだ。さっそく魔界に帰り、報告するとしようか。』
『かはっ』
『何者だ!!ぐぼぉっ!』
二つの生命ある者が一瞬にして消えた。
星は、魔族の存在を認めなかったのだろうか。
いや、今出現し、この殺戮を行った新たなる異形の者に、
星さえも驚いたことだろう。彼は天より降りてきた。
星が地底より魔族を呼び覚ましたのと同じく、
天空は彼方より何者かを呼びよせたのであろうか。
『この・・・ことを・・・魔界に・・・報告せ・・・ねば・・・』
倒れているスケルトンの口から一つの目玉がこぼれ落ちた。
瞬間、その目を足にはさみ込み、天空へと飛び立つ者がいた。
『スケルトンよ。お前の意志、しかと受け継いだ。』
新しい歴史は壮大なる本当のハルマゲドンで幕を開けた・・・
『ふふん、外の様子はどうだった。』
『まあ、これを見てくれ。魔族の者を集めるのだ。』
鬼の目が妖しく光ると、先程の地上での光景が次々と映しだされていった。
映写が終った。
ガーゴイル『このホログラム、先程俺が偶然天空よりみたものだ。皆のものいかに思う。』
スライム『スケルトンとミノタウロスの一族のものだな。』
ミノタウロス『わが一族のものが、いともたやすくやられるとはな。』
スケルトン『地表にまだ生物がいようとは思わなんだわ。』
Gスネーク『いや、地表の生物は、虫ケラさえも絶滅した筈だ。』
アンドロスフィンクス『では一体何だというの。我々は、人類が地表の王となる遥か以前より、地中に君臨していたのよ。』
その時、突然ガーゴイルが苦しみ始めた。
『ぐおっ。』
羽のはえし黒き使い魔は、一声吠えるとビクンビクンと、小刻みに震え始めた。
『か、体が・・・体が・・・ぐえっ!!』
その表皮を突き破り現れた薄紫色の細管が頭部に突きささると、彼は気の抜けたでくのように、ゆっくりと話し始めた。
『この者の声帯をかり、お前らに伝える。われらチリウス星系連合は、この星を131番目の植民星と決定し、植民を開始した。おとなしく従うならばよし、歯向かうならば殺すまで。時間は与えぬ。答えは一つ。今、答えるのだ。』
『何をぬかすかっ!』
魔族の一人が、その鋭い爪を大きく振り上げた。
『わ・・・かっ・・・た・・・後悔・・・する・・・な・・・』
『ふざけるな。異星からの侵略者だと!なめた真似するんじゃねえ。』
ドラゴンニュートは雄たけびをあげた。
『闘いだ!この星を魔族の楽園とせんがため、あくまで闘うのだ』
ゴーレム『まあ、待て。我々の地表での行動には制限がある。・・・何だ、この振動は!』
オーク『地表だ!地表をスクリーンに映しだせ。』
ミノタウロス『何だ、あの光は。あの光をアップにしろ。』
サイクロプス『あれは石版か?何か文字が書いてあるぞ・・・星の軸を戻し安息の地に変えたるもの、地表の長となり平定を誓うものとする。 -黙示録27章-  ・・・どういう意味だ!!』
ハーピィ『地表で・・・地表で何か別の意志が働いているようだわ。』
一同が会している。
サイクロプス『各一族より、一名ずつ代表を出すのだ。とにかく地表で何が起きているのか探らねばならん。』
ゴブリン『うむ。地表では思うように行動できんからな。他の種族の助けが必要というわけか。』
オーク『まあ、昼と夜は何とかなろう。しかし、サルバンの破砕日はどうするのだ。一瞬にして押しつぶされてしまうぞ。』
アンドロスフィンクス『シャーマンの壷を使えば良い。幸い、我らは地表では、サルバンの破砕日しか行動できぬしね。』
ドラゴンニュート『異星体との闘いに加えて、地表での謎の解明か・・・我らは、そこまでして地表に住まねばならぬのか?』
ゴーレム『そうだ。地表を制するものこそ、この星の支配者だ。我々の住める地表にしなければならぬ。なぜ、サルバンの破砕日が起きたのか、あの石版が何なのか、知らねばならぬ。』
ハーピィ『そうね、さっそく出発させましょう。』
そして、各種族の猛者達が集められた。
スケルトン『我々にまかせておけ、調査などせんでも異星体など蹴散らしてくれるわ。』
魔族より選ばれし12名の勇者を待ち受ける運命、それがとてつもなきものであること
を、この星さえも予測できなかった・・・
一行が4つのパーツを組み合わせると、1枚のカードになった。
ドラゴンニュート「ふうむ、俺が思うにどこかに奴らの本拠地があるはずだ。これが、きっと、そこの鍵にちがいねえ。」
見た事もない機械が、幾つも置いてある。何に使うかはわからないが、中にはミイラ化した人間が入っていた。
そのなかの一体のミイラがうすよごれた本を大事そうに持っている。
ガーゴイルは、その本を取り、開いてみた。どうやら日記らしい。その本にはこう書いてあった。
「これが私の最後の日記となるだろう。地上はもう我々が住める世界ではない。このコールドスリープルームなら地上がよみがえる時まで眠らせてくれるはずだ。その時を楽しみに今は眠ろう。」
本はここまでだった。
部屋の中には銀色に輝く円盤状の板がぎっしりとならべられている。
好奇心おう盛なオークはケースの中から「破滅の歴史」というタイトルのディスクを見つけた。
オーク「ふふん、おもしろそうじゃないか。」
しかし、ディスクのプレーヤーらしきものは壊れていて使えそうにない。
一枚の巨大な石版がある。その石版になにやら文字が書かれている。

 

今は亡き、天空をはばたくペガサス。何を思い戻らずの塔に体を打ち続け、落ちていったのか・・・-黙示録1章-

108の重き言葉、全て通りし者、そのいばらの道に終りを告げん。-黙示録2章-

この地に降りしもの達、運命の糸で結ばれん。その糸は細かれど強きものなり。-黙示録3章-

天を見るなかれ。その事実を知らぬ方が良いのだから・・・-黙示録4章-

今一度歴史を振り返るがよい。血と肉欲で築かれた美しき過去の時を・・・-黙示録5章-

戻らずの塔が受け入れし、選ばれたものたちよ。不幸とはお前たちのためにある。-黙示録6章-

どこから来たかを探してはいけない。この石版がここにある現実だけを受け止めよ。 それだけのことでしかない。-黙示録7章-

ガルマの鍵が唯一の道標。幾多の英雄が手にし、血で染めた青銅の鍵は赤くさえも光る。-黙示録8章-

逆もまた真なり。-黙示録9章-

燃えあがる炎の樹、ただひとつ・・・。それは『バスクの樹』と呼ばれる。-黙示録10章-

私を呼んだのはお前か。いや、私は私自身を呼んだのだ。だから、ここに来た。誰のため でもない。私のためだ。-黙示録11章-

試練を受けるのだ。どうせ避けられぬ運命なら喜んでともに死のうではないか。-黙示録12章-

人類に言葉さえ無かったら・・・一握りの脳みそさえなかったら・・・この時は来なかっ たはずである。-黙示録13章-

戻らずの塔は、素敵な旅に連れていってくれる。どんなに素敵な旅か誰もが体験したいと 思うだろう。-黙示録14章-

ある者は神に祈り、また、ある者は悪態をついた。しかし結果は同じだったのである。-黙示録15章-

『バスクの樹』その燃える炎は、伝説の秘剣を生み出す。-黙示録16章-

この地には何も残っていない。餓鬼が全てを喰いつくしたから。魂さえも残っていない。-黙示録17章-

お前たちは欲のかたまりだ。欲を取り除けば、何も残らない。-黙示録18章-

サルバンが全ての活力である。その力の働きし時、新しき道の通り魔となる。-黙示録19章-

ミノタウロスの血を受けし一族よ。お前の醜さには、その飾り気のない斧がよく似合って いる。-黙示録20章-

ガーゴイルの血を受けし一族よ。その翼は天を舞うためにあるのだ。 決して飾りではない。-黙示録21章-

ガーゴイルの血を受けし一族よ。その爪は殺傷と破壊のために与えられた。来るべき時の ために、鋭く磨いて待っていろ。-黙示録22章-

ハーピィの血を受けし一族よ。お前の歌声は静寂を騒乱にする狂気の叫びとなるだろう。-黙示録23章-

ゴーレムの血を受けし一族よ。お前の腕は、それこそが最大の狂気である。-黙示録24章-

ゴブリンの血を受けし一族よ。お前の想像力は果てしない。存分に生みの苦しみを味わう がよい。-黙示録25章-

オークの血を受けし一族よ。お前は死人の宝をよくくすねた。それが今は幸いしている。 -黙示録26章-

ドラゴンの血を受けし一族よ。火を恐れる事はない。お前にとって火は敵ではない。 -黙示録27章-

オークの血を受けし一族よ。お前たちは憎まれている。-黙示録28章-

星の軸を戻し、安息の地に変えたるもの、地表の長となり平定を誓うものとする。 -黙示録29章-

スケルトンの血を受けし一族よ。お前たちは『道具』を作り出す能力がある。 -黙示録30章-

サイクロプスの血を受けし一族よ。目は一つであるが、それは遠く彼方をも見る事ができる。 -黙示録31章-

スライムの血を受けし一族よ。お前たちは、あらゆる所を自由に動き回れる。-黙示録32章-

スフィンクスの血を受けし一族よ。お前たちは未来を見る事ができる能力を与えられた。 -黙示録33章- 

ミノタウロスの血を受けし一族よ。お前たちの唯一の武器は怪力である。-黙示録34章- 

スネークの血を受けし一族よ。お前たちが与える『邪悪なる者』のイメージは、 作られたものなのだ。-黙示録35章- 

ゴブリンの血を受けし一族よ。お前たちには企みをはずす能力がある。-黙示録36章-

ハーピィの血を受けし一族よ。お前たちの歓びは、あまりにも虚しい。-黙示録37章- 

サイクロプスの血を受けし一族よ。お前たちの『怪力』は広く知られている。しかし、ま た『愚かさ』も同じように知れれている。-黙示録38章- 

ゴーレムの血を受けし一族よ。水を恐れよ。水はお前を苦しめる強敵だ。-黙示録39章- 

ドラゴンの血を受けし一族よ。お前たちに立ち向かう者は勇者と呼ばれ、尊敬される。-黙示録40章-

ドラゴンの血を受けし一族よ。お前たちの種族は実にさまざまな色を持つ。-黙示録41章- 

スケルトンの血を受けし一族よ。お前たちは、その存在すらも矛盾したものである。-黙示録42章- 

スライムの血を受けし一族よ、お前たちはその姿だけで嫌悪される存在なのだ。-黙示録43章- 

スライムの血を受けし一族よ、お前たちはあらゆるものを同化させる能力を持つ。-黙示録44章- 

スフィンクスの血を受けし一族よ、思い出すのだ。お前は大地の痕跡をその目に焼きつけ ている。-黙示録45章- 

スフィンクスの血を受けし一族よ、お前たちは皆、賢い。が、時としてそれを武器にした が為に悲劇を招く事がある。-黙示録46章- 

ゴーレムの血を受けし一族よ、お前たちの原点は『無』にある。-黙示録47章- 

スネークの血を受けし一族よ、お前たちはその姿を利用する事が武器になるのだ。-黙示録48章- 

スネークの血を受けし一族よ、お前たちは特別に『毒』を持つ者がいる。-黙示録49章-

ミノタウロスの血を受けし一族よ、目をこらし、はるか彼方を見るのだ。お前には見える はずだ。-黙示録50章-

ハーピィの血を受けし一族よ、その姿の不気味さ、さらには悪臭。それゆえ、お前たちは 存在できる。-黙示録51章- 

ガーゴイルの血を受けし一族よ、お前たちは『道具』を作る能力がある。それを生かすの だ。-黙示録52章-

ゴブリンの血を受けし一族よ、お前たちの目は闇の中でも光を見る事ができる。-黙示録53章- 

オークの血を受けし一族よ、何も持たずにいる事ができない。その非力さを知るのだ。-黙示録54章- 

スケルトンの血を受けし一族よ、水を恐れよ。それはお前たちに悲劇をもたらす。-黙示録55章- 

光を隠し、暖かさを消し去る存在。それは、ひとつのモニュメントになったのだ。-黙示録56章- 

『永遠』という言葉は誰がつくり出したのか。それゆえに、多くの血と多くの絶望を生み 出したのだ。-黙示録57章- 

『種』という言葉を忘れ、『個』にしがみついた時すべては発動された。だが、それは定 められたものなのだ。-黙示録58章- 

『欲望』は世界を動かす力となった。だが、その巨大な力ゆえに世界は耐える事ができな くなる。それがいつなのかを考える者はいない。-黙示録59章-

『天と血は支配されるべき存在なのだ。』誰のために・・・。誰の為でもない。誰に支配 されるのでもない。-黙示録60章- 

見えるものだけが世界のすべてか・・・それを問う者は存在しても、答える者は見えない。-黙示録61章- 

支配されたくはない。しかし、支配されている方が都合が良い。多くの場合はそうであった。-黙示録62章- 

『多くの知識』と『多くの欲望』が手を結ぶ。誰か止める事ができるなら・・・。-黙示録63章- 

多くの異なる存在。姿、形、能力。異なるがゆえに認めたくなくなる。果して、すべて同 じものなど存在するのか。-黙示録64章-

『誰が王となるか?』それが正当な考えに基づいて決められた事などない。-黙示録65章-

『有効な知識』、『優れた存在』とは『両刃の剣』となり、安定と破壊を交互にもたらす。-黙示録66章-

『たった一人の賢人』は存在した。すべてを話した。だが、それは獣の声にしか響かなかった。-黙示録67章-

『賢人』は、それでもある人々にとっては恐怖をもたらした。なぜなら、彼の語るように 世界が動いていったからだ。-黙示録68章-

はるか昔、人間と魔物が共に存在する時代があった。これは事実なのである。-黙示録69章-

人と魔物の世界は、すべて『数』に支配されている。『数』は最大の支配者であった。黙示録70章-

ある一定の規則のように繰り返す。そこは何度行っても同じ事を言うばかりだ。-黙示録71章- 

『数』が勇者を決定した。それは人格でもなく、単に『大きな数』を得たからにすぎない。-黙示録72章- 

人の言葉の通じぬ人がいた。だから悲劇を招いた。-黙示録73章- 

血と肉を持たぬ人に、なぜ我々の言葉が通じない?我々は血と肉の言葉を持つからだ。-黙示録74章- 

何の疑問も持てぬようにしてしまう。何と恐ろしい事か。だが、考えない事は確かに楽で ある。生きてはゆける。楽しむ事もできる。-黙示録75章- 

人間にとって、自分の分身を作る事は夢であった。しかし、『知識』はそれを実現したか に見えた。それは未だ、夢である。-黙示録76章- 

未来は知らぬ事に可能性を秘めている。知った後では絶望しかない。--多くの場合、そ れは定められた運命なのだから-- -黙示録77章- 

我々には知り得ぬ過去と未来を持つ。いや、一度は知っていたはずなのだ。-黙示録78章-

もはや『無作為』と『作為』を区別できる者は存在しない。たとえ、どちらであろうと 『事実』にしてしまうものが存在するからだ。-黙示録79章-

『生存する力』より『破壊する力』が絶対的に大きい。しかしそんな時でも世界は常に前 へ一歩ふみ出そうとする。--知った事ではないのだ。-- -黙示録80章-

しかし、人は後悔する。それを改めようとする。だが、結果はいつも同じになる。常に人 は後悔をし続けてきた。-黙示録81章- 

人の目には見えぬとも、確かにあるのだ。それを誰もが否定してきた。-黙示録82章- 

『存在』が消えることを恐れる。その者は正しい道を歩むであろう。『存在』が消えるこ とを忘れている。だから、見えなくなるのだ。-黙示録83章-

いつ、どこが『頂点』となるのだ。『頂点』の後には、落ちるしかないのに・・・。-黙示録84章-

『多くの知識』は『考える』事をうばい去ってしまった。陽はその時、 いちばん高く真昼を迎えていた。-黙示録85章-

陽は沈み行くその過程がいちばん美しい。自然界の定めは、万物すべての定めなのだ。-黙示録86章-

日々の法則は人間と無関係ではない。人は夜を迎える事なく生き続ける事など不可能なの だ。だが、これすらも忘れ去る者がいる。-黙示録87章- 

多くの血を流すことで、人間は楽な生活をするようになった。誰もそんなことは望まない のに。-黙示録88章- 

金は人の支配のもとで使われるものであった。しかし、いつしか人は金に使われるように なった。『欲望』に限界など存在しない。金で世界を買うとでも言うのか。-黙示録89章-

人が人であろうとする。当たり前の事を努力しなくてはできない時があった。-黙示録90章-

『終り』を見る事は人間にはできなかった。ただ、これを記すのみ。-黙示録91章- 

知る事は可能だ。そして、それが不都合な時は直せばいい。それができるならば。-黙示録92章-

人は『毎日』という言葉に追われる。追われるがゆえに、後に戻れないのだ。-黙示録93章-

『時間』は支配する。人の行ないも、また夢も希望も・・・かなえてくれる時がある。そ してまた死も生も、すべては『時間』というステージでのみ可能なのだ。-黙示録94章-

もしも、人は現実と夢という2つの世界で生きられるなら、これは現実なのか?それとも 夢なのか?できれば悪夢であってほしい。-黙示録95章-

死は『滅亡』なのか?人はそう信じ続けてきた。それは単に『人』にとってみれば、そう なのかもしれない。それでも『時』は存在する。-黙示録96章- 

これは人間が招いたものなのか?しかし人間は望まなかったはずだ。なぜか?-黙示録97章- 

『欲望』を満たし続け、尚かつ次の『欲望』の為、人は走り続ける。そのゴールとは存在 するのか。誰でも知っていた事なのに。-黙示録98章- 

だが、自然は彼の持つ言葉で語りかけた。その危機を・・・。しかし、『人間』に聞こえ ようはずもなかった。まして『欲』にかり立てられる人には。-黙示録 99章-

 『信じる事の自由』それは大切な事だ。しかし『教え』を信じるにはあまりに人は単純すぎる。-黙示録100章- 

『生き続ける』それが大切な事だ。金も権威も、その前には単なる水の滴にすぎない。-黙示録101章-

人は『競争』し勝つ事を教え込まれた。『勝つ事』を知った時、 それが悲劇である事も知るべきであった。-黙示録102章-

つくられたシナリオであるなら、それは、『ステージ』で演ずるべきなのだ。-黙示録103章- 

人間はもっと知るべきであった。いや、気づくべきであった。世界の『主』ではなく 『従』である事を。-黙示録104章-

『誰が人をつくったのだろう。』たとえ、そう思う人間がいても彼はじきに忘れてしま う。答えてくれる人はいないのだから。-黙示録105章-

もっと急ぐべきであった。社会の進歩よりも『歴史』の考察を -黙示録 106章-

『最後』、『END』、『終局』・・・おそらく、これは存在するのだろう。『誕生』、 『最初』、『START』これはもちろん知っているのだが -黙示録107章- 

その一瞬を迎える為、我々は歩み続けてきた。その道はどこへ続くのか -黙示録108章- 

 

その部屋には、見知らぬ機械がいろいろ置いてあった。

オーク「この機械はさっきの建物の中にあったのと同じやつだ。」
Gスネーク「ふむ。奴らも人間のことを調べているようだな。きっとあの建物から運び込んできたのだろう。」
オーク「ほほう、この機械は使えそうだぞ。さっきのディスクを使ってみよう。」

オークはコールドスリープルームで手に入れたディスクを差し込んだ。
すると機械が動き出し、モニターに映像が映し出された。

--
我々は滅びねばならなかった。
人類は全てを理解してしまったのだ。
この記録を見るものがいたら、人類と同じ失敗を繰り返さないでほしい。
我々はこの星の歴史の全てを「戻らずの塔」に保存した。
この塔に入るためにはガルマの鍵が必要となる。
ガルマの鍵を手に入れることのできたものなら・・・
そして全てを知ろうと願うものなら戻らずの塔は喜んで受け入れてくれるだろう。
そして全てを見て欲しい。
我々のおかした失敗を笑ってやって欲しい。
--

モニターが消えた。

オーク「戻らずの塔か・・・そこに行けば何故人類が滅びたのかわかりそうだな。」
ハーピィ「うむ、我々が地表で君臨する為にも人類の失敗を知っていて損にはならんだろう。」

その部屋の壁には、巨大なスクリーンがはめ込まれていた。一行がその部屋に入ると突然照明が消え、スクリーンが光り始めた。

--
勇気ある魔界の諸君。
よくここまでやってきたものだ。
ごくろう。
さて、我々は一足先に戻らずの塔へ行かせてもらうよ。
人類の滅亡には少なからず興味があるのでね。
君達も来るとよい。
もちろん来れればの話だが。
もし来れたなら、そこで君達の始末をしてあげる。
ここで殺してもいいのだが君達がどこまでやれるかも見たいしね。
それまで、せいぜい手下の雑魚と遊んでいたまえ。
健闘をいのっている。
--

映像が消え、再び照明がついた。

オーク「なめてくれるじゃないか。俺達と勝負しようってのか。」
スケルトン「皆殺しだな。一匹たりともいかしちゃおかねぇ。」

部屋の中央に1冊の本が置いてある。
表紙には「ガルマ」と書いてある。
ガーゴイルはその本を手に取り開いてみた。
中にはこう書いてある。

--
ガルマの鍵は時代を越え存在する万能の鍵である。
それは古代より、ゴールド・キー、シルバー・キーなどに形を変え、その時代を象徴してきた。ガルマの鍵に正しき姿はない。
それはガルマの書を手にした者が作り出すイメージなのだ。
時代の象徴たらん鍵にあたいするものを持ち、この本にかざして念じよ。
さればガルマの鍵は生まれん。
--

ゴブリン「フン、古代よりガルマの鍵は姿を変えていただと!たわけたことを。」
ガーゴイル「いや、まんざらウソではないのかもしれぬぞ。我々の祖先は人間より奪った宝玉類を隠した部屋に、数々の神秘の鍵で封印をしたという。」
ゴブリン「はるか昔・・・我々が人間達と共存していた伝説の時代の頃か?」
ガーゴイル「そうだ、我々がまだ地表にいたという頃・・・恐ろしきサルバンの破砕日が起きる前だ。その時代もすでに夢のまた夢だが。」
ゴブリン「今さらそんなことはどうでもよい。それよりも、その神秘の鍵がガルマの鍵だというのではあるまいな。ガーゴイル「神秘の鍵こそがガルマの鍵だ。我々の祖先は、きっとこの書より鍵を作りだしていたのだ!」
ゴブリン「狂ったか!ガーゴイル。一冊の本からどうやって鍵を作れるというのだ。」
ガーゴイル「物質の概念を捨てるのだ。祖先が築きあげた城やダンジョンに鍵穴があったというのか。神秘の鍵は想像上の産物でしかないはずだ。」
スケルトン「確かにそうかもしれん。扉を開けるのは我々の思念であり、鍵は単なる気休めかもしれんぞ。」
サイクロプス「鍵の役目をするのならば何でもよい。我々がそれをガルマの鍵だと信じれば、この書はガルマの鍵を作りだしてくれるはずだ。」
ゴブリン「はっ!くだらぬ。それが事実なら、このカードでためすがよい。これでも鍵の役目をしたのだからな。」

ガーゴイルはIDカードをガルマの書に重ね、それがガルマの鍵になることを念じた。
かって、彼らの祖先がしたと思われることを・・・。

ゴブリン「ばかな・・・!形が変わった・・・」
ガーゴイル「これがガルマの鍵だ。さあ、行こう、戻らずの塔へ。そこにある扉は、このガルマの鍵の助けにより我々の思念で開けることができるだろう。」
スケルトン「なあガーゴイル。ふと、思ったのだが俺は何か得体のしれぬものを感じるのだ。話がうまくできすぎているような・・・」
ガーゴイル「確かに・・・しかし、今は目前の敵を片付ける方が先だろう。どっちにしろ戻らずの塔に行けば我々の知りたい答がありそうだからな。」
サイクロプス「人類の滅亡、サルバンの破砕日、謎の石版・・・そして、我々が地中で生きねばならなかった理由・・・謎が多すぎる。」
スケルトン「その全てを知ることが我々の使命だ。仲間が待っているからな。」


++戻らずの塔1F++

壁に文字が書いてある。

--
それは、遥か昔、地上に初めての支配者が舞い降りた弱肉強食の時代。
我々人類が生まれる以前のもの。
この時の支配者を恐竜と呼んだ。
彼らを滅ぼしたのは氷河期である。

ようこそ、次の時代の支配者になる者達よ。
恐竜達がなぜ滅びたか、知っておいても損はなかろう。
我々人類の歴史には、我がもの顔で地表をねり歩いた恐竜は氷河期という自然が起こした天変地異によって絶滅したとある。
しかし、西暦2053年ある偉大な科学者により、恐竜の化石から真実の歴史を聞きだすことに成功したのである。
それは、我々人類を驚かすには十分なものだった。
化石は我々にこう告げた。

「我々は滅びたかった。単純な繰り返しを生きることに疲れてしまったのだ。
ただ寝て起きるだけの生活には堪えられなかった。
そのため、弱い者を食い殺し少しずつでも滅亡の道を歩みたかった。
しかし子は生まれる。
そして強い者は滅びることはできない。
自然の定義とは何と皮肉なことか。
そんな時、天は我々の願いを聞き入れてくれた。
異常な程の寒さが我々を襲ってくれたのだ。
これで滅ぶことができる。単純な毎日に終止符を打てるのだ・・・」

この言葉だけで十分であった。
あの理性のかけらもないと思っていたちっぽけな脳みそが、生きることの最終理念を悟っていたとは・・・
この時代に生き物が学んだのは「空しさ」。
人類はこの事件を境に滅亡の道を歩み始めた。
--


++戻らずの塔2F++

壁に文字が書いてある。

--
それは、神という存在に人類がたよりきった時代。
我々人類が生まれて、かなりの時が流れてからのことだ。
この時代に、一人の愚か者がいた。その名をノアという・・・

「私はノアという男。
神の声を聞いたのだ。
この地を大洪水が襲うという声を。
そして助かるために箱舟を作れということを。
その舟に乗れば助かるといわれた。
私は一生懸命、箱舟を作った。
もちろん誰にも教えなかった。
皆が一度に箱舟を作ったらとてもではないが木が足りない。
誰が教えてやるものか!
ふん、自分だけが助かればよいのだから・・・
しかし家族に見つかってしまった。
皆、自分だけが助かりたいから、この舟に自分達を乗せないと、このことを皆にばらすといった。
しょうがない、乗せてやることにした。
そして食料用の動物達も・・・。神のいった通り大洪水が起きた。」

「しかし私達は助かった。
全て神のおかげだ。
神は、本当によい人材を選びなさったものだよ・・・」

この時代に人類が学んだのは「私欲」。
人類が、このとんでもない男を祖先に持ってしまった事実が判明した時には、もう全てが遅かったのである。


++戻らずの塔3F++

壁に文字が書いてある。

--
それは、ナポレオンというあまりにも強い男がいた時代。
略奪と遠征を繰り返した既存の英雄は、時代の改革を望んでいた。
そんなことを考えるぐらいなら、夕食のパンが焼きすぎでないか心配していた方がずっとましだったのに。

ある日の日記

「私が悪い女ですって!はっ、冗談じゃないわ。
あのいまいましいちびが何だというの。
自分の背が低いことを隠そうと高い靴をはき、大げさな帽子をかぶった道化師のくせに。
いやしいナポレオン。
自分より背の高い者を嫌って侵略を繰り返すだけの、ただのコンプレックスの固まりね。

「我が輩の辞書に不可能はない。」

というのなら、1センチでも背を伸ばしてごらん。
私が正義に決まっている。」--マリーアントワネット

人類は、自分の短所を憎み、相手のあらを探すことに必死だった。
どうして相手の長所を探してほめたたえることができなかったのだろうか!
最も、この言葉さえも批判になっているのだが・・・
遺伝だから仕方がない。
この時代に人類が学んだのは「はじらい」。
人間は、理解できる相手がいたからこそはじらいの気持ちを持てるということに気付いてもよかったはずだ。
--


++戻らずの塔4F++

壁に文字が書いてある。

--
人類は、ついに化学に身を落としてしまった。
自然と相対関係にある化学は、滅亡への近道を教えてくれる。
血に飢えた人類は、滅亡をまだ望んでいなかった。
しかし、もう秒読み段階に入ってしまった。
それは、一人の心ある天才ヒトラーの生きた時代。

「私は、全てを知っていた。理解してしまったのだ。」--ヒトラー談

「総統は偉いお方です。私はよくわかっていたのです。
あの方が何をなさろうとしていたかを。
たとえ全人類を敵に回しても破壊を実行せねばならなかった苦しさは、誰にもわかってもらえぬものでした。
急ぎすぎてしまったのです。自然に逆らうには、やはり無理がありすぎました。
我々が時代にとって悪の象徴になってしまったのも仕方のないことです。
しかし総統の片腕として働いたことに悔いはありません。」--ヒムラー談

このころ、人類にも滅亡を受け入れることのできるゆとりが生まれ始めた。
ヒトラーが滅亡の方程式に気付いたとて、何ら不思議なことはない。
人類は生存を願い、それを邪魔するものを悪と呼んだ。
この時代に人類が学んだのは「絶望」である。
神と悪魔が実在することに気付いていた者が果たして何人いたというのだろうか。
--


++戻らずの塔5F++

壁に文字が書いてある。

--
一人の予言者が、人類の滅亡を書きたてた。
おもしろおかしく世界は騒いだ。
平和な時代だったのである。
何事もレジャーとして楽しめる時代がやってきたのだ。
しかし、滅亡の時が近づき深刻になるにつれて、予言の話を口にするものは減っていった。
本当に望むべきものを忘れてしまった我々はもう自己顕示欲の固まりになっていた。
哀れだ・・・

1999年、恐怖の大王は本当にやってきた。
まさか、それが魔物達の襲来だったとは誰が予測したであろうか。
誰もが、核戦争や病原菌によるものと推測していたのに・・・
--

ガーゴイル「馬鹿な!!我々が人類を滅ぼしたというのか。我々は地中で生きていたのだぞ。」
ゴブリン「この塔は何かおかしいぞ。我々が来ることをすでに予想して作られたかのようだ。」
ガーゴイル「うむ、この塔の上に、一体何があるのか興味がでてきたな。」
ガーゴイル「ふふん、おもしろくなってきたじゃないか。」

--
しかし、人間は絶滅したわけではない。
神は我々をどこまで苦しめればよいというのだろう。
この時こそ、人類は真に滅亡を望んだといえるだろう。
この時代に人類が学んだのは「愚かさ」である。
ああ、もうすぐ歴史が終わる。
なのに、この心の底からわいてくる喜びは何なのだろう。
--


++戻らずの塔6F++

壁に文字が書いてある。

--
どんな時代においても、我々は希望という文字だけは忘れはしなかった。
その希望を想像力という。
この時代で見せられるものは・・・
もうそれしか残っていない。

1999年に、人類はわずかに生き残ったが、もう滅亡はまぬがれないだろう。
死に絶えた星に、まだすがりつくものも、いなかったといえば嘘になるだろう。
人類に対するあきらめはついていた。
しかし、次なる世代への希望は忘れてはいなかった。
我々が滅亡しても、次なる支配者が同じ失敗を繰り返さないことを祈る・・・。

我々には、どんな時代でも昔から、想像するという楽しみが与えられていた。
その想像の中で一番優れていたものは神と悪魔であろう。
善である神が、悪である魔物を打ち砕くドラマは、我々に力と勇気を与えてくれた。
この想像力は、滅亡を目前にして一層拍車がかけられた。
そして、12種族の魔物達を確立化させたのである。
神々は彼らを打ち砕いてくれるだろう。
そして、新しい時代が築かれるはずだ。
我々の歴史は、魔物達が滅亡することによって幕を閉じるだろう。
その時のことを楽しく想像しながら眠るとしよう。

神に祝福あれ!そして魔物に災いあれ!!

人類が学ぶべきものは、もう何もない・・・

さあ、これで人類の歴史は全て終わりだ。
この上の階には、人類を滅亡させた真の敵がいる。
その敵を乗り越えたものは、地表の王としての資格が得られるのだ。
さあ、扉を開くがよい。
--

オーク「何だというのだ・・・一体、これは何だというのだ!!我々は人間が想像によって作り出したものだというのか!神に滅ぼされるために生まれた捨石だというのか!馬鹿をいうな。我々はこうして生きている。何故だ。はるか昔、人類との闘いに破れて地中へと追いやられた我々魔族の歴史はどうなるんだ。我々は・・・我々こそが真実だ!!」

しかし、答えるものは何もなかった。
殺風景な部屋に、ただオークの絶叫がこだまするだけであった。
ただ、彼ら魔族の中に今までなかった感情が生まれたのは事実である。
この感情に、彼らは驚きとまどうことになるだろう。
この感情を「恐怖」という・・・


++戻らずの塔7F++

壁に文字が書いてある。

--
人類が滅んだ根源がこの階にある。
見ていっても損はないと思う。
この巨大博物館も、これで終わりなのだから・・・
--

ガーゴイル「うおっ、何だこの光は・・・」

光の向こうから声が聞こえてきた。

「よく来た。諸君。生きとし生けるものは、全て最後は滅びる運命にある。
賢きものは、なおさらのこと。人類も、例外ではない。
滅亡の根源、それは「進化」だ。進化こそ、滅亡の定義である。
賢くなりすぎ、頂点を極めれば、後は消滅するしかない。
いや、そうならねばならないことを知る時が来るといった方がよいかもしれない。
君達は、気付いているかね?自分達も、いまこの過程を急速に歩んでいることを・・・

蛇足だが、人類を滅ぼしたのは、君達魔族ではないよ。
人類の心の中の悪魔だ。
戦争も、それに付随して起こった惨劇も、全ては、このせいだ。
その悪魔が実体化されて、人類を滅ぼしたのである。
それほど人類の心はすさみきっていたのだよ。
君達は恐怖を覚えたはずだ。
人類がとうの昔に、忘れてしまった感情をね。
今こそ、真の世界へ出向くがよい。
本当の地表をその目で確認し、新たなる旅立ちをするのだ。
もしかしたら、人類の犯した失敗を繰り返さないですむかもしれない・・・

それは君達自身にかかっているのだからね。」


光が一瞬消えたかと思うと、そこには、はるかなる大地が広がっていた。

ガーゴイル「これは・・・ここはどこだ。」
ゴブリン「地表だ。これが本当の地表だ・・・」
スケルトン「それでは我々が今まで地表だと思っていたのは地下だったというのか・・・」
ゴブリン「そうとしか思えん。あの戻らずの塔は、地下と地上をつなぐエレベーターだったのだ!」
サイクロプス「我々は・・・今まで何のために闘ってきたというのか・・・」

一行の目の前には、一枚の石碑がそびえ立っていた。
その石碑にはこう記されている。

「この星は、我がチリウス星系軍の軍門に降る」

ガーゴイル「すでに・・・地表は異星体に占領されていたのか」
ゴブリン「奴らは、我々の存在を知り、地下にまで攻勢をしかけてきたのだ。馬鹿にしやがって!」
スケルトン「地下を地表と思い込み、我々は息巻いていた。何というあさはかなことよ・・・」
サイクロプス「我々に・・・奴らを倒せるのか・・・そして、我々に滅亡を防ぐ手段はあるのか・・・」
ガーゴイル「我々は・・・どこから来た・・・何者なのだ・・・」

彼らは、今初めて恐れていた。
これが恐怖心というものである。
自分達の想像をはるかに越えた現実を目の前にして、彼らはただ震えるばかりであった。

今、本当の地表を舞台に新たなるドラマが始まる。

 

地表に出たら、まず石版製作所を目指す。
東の島にわたって少し北に建物がある。
教会も見える。

石版制作所扉には

「なにびとも立ち入ることを禁ず」

と書いてある。

オーク「はっ、扉が開いているくせに入っちゃいけないもないもんだ。」

一行は中に入っていった。


1.物質転移機

机の上に、小さな箱のようなものが置いてある。
ガーゴイルは、その箱を手にとってみた。
その箱には、二つのボタンがついていた。
箱の裏に使用上の注意が書いてある。

--
左のボタンを押せば、物体は地下に転移する。右のボタンを押せば、物体は地上に戻ってこられる。
--

ガーゴイル「どうやら、これは地上と地下を自由に行き来できるものらしいな。便利なものを手にいれたぜ。持っていこう。」


2.石版作成装置

ガーゴイル「何だこれは!!」
ゴブリン「向こうの壁に何やら紙がはってある。読んでみよう。」

スケルトンはその紙を読んでみた。

--
一つ、石版は一月に一度最初の日に制作されるものとする。
一つ、石版は地表及び地下より吸収された大気の原子成分からつくられる。よって、この日は、大気が異常をきたすため、人間は外出してはならない。
一つ、石版は、百八つをひとくぎりとし、それが完成された時、外部に放出される。
一つ、その放出先は、この星の次なる支配者になるべく者が存在する地とする。
一つ、この石版の制作は永遠のものとする。
--

サイクロプス「何てことだ・・・」
ガーゴイル「それでは、サルバンの破砕日とは、あの石版を制作するために起きていた現象だというのか!?」
ゴブリン「うむ、そして108の石版が完成し、我々の生息する地下に放出されたのだろう。我々を真の地表に呼ぶために・・・」
スケルトン「全ては、人間がしくんだってわけか。気にいらねえな。」

一行は、しばらくの間、ぼう然と、その紙を見つめていた。


3.制作中の石版

ガーゴイル「おい、ここに石版が置いてあるぞ。」
ゴブリン「109枚目の石版のようだな。わけのわからない文字で書かれている。グランドチャコの魔法を使わないと読めそうもないな。」
ガーゴイル「いいか、読むぞ。この地に、わずかなる人間達が生存し、ファンタジー・ランドあり。この聖域には、はるか昔に忘れさりし人間の心持つ者でなければ入ることを禁ず。ファンタジー・ランドは永遠なり。--新黙示録1章--」
ゴブリン「何だと!!まだ人間が生きているというのか!」
スケルトン「どういうわけだ。人類は滅んでいなかったというのか。」
サイクロプス「会ってみたいな。その人間達に・・・」
ガーゴイル「うむ。人類はてっきり滅亡したと思っていたのだが・・・どうやって生き残ったのか知りたいものだ。」
ゴブリン「行ってみよう。ファンタジー・ランドへ。」

ファンタジー・ランドの入口には感情センサーがあり、今のままでは入ることができない。
愛と優しさを取り戻しに各建物を探索することに。


++教会1F南東 壁画 Gスネーク++

スネークは、無意識のうちにその壁画に見入っていた。
それは蛇神に別な神が襲いかかっているものである。
人々が地にひれ伏し蛇神に祈りを捧げている。
半壊したその壁画は、本来はもっと大きなものだったに違いない。
スネークの意識は、知るはずのない遠い過去をかいまみた気がした。
自分の知るはずのない、はるか過去より人間は神聖なものとして・・・

そんな時代もあったのか。
徐々にスネークの意識は「その力」により制御された。
輝く光の乱舞する中、多くの人間の意志と接触した感覚。
言語を越えたコンタクトの中、スネークの意識は「その力」に導かれるまま、時空を超え、ふたたび帰還した。

「すべては人間がつくり出した存在か・・・」

スネークの意識は、今までと異質なものの存在を知った。
人間が言う「優しさ」や「愛」がスネークの中に誕生したのだ。


++1F北西 彫像 ハーピィ++

その時、ハーピィの目に、ガレキの中の1つの彫像がうつった。
それはガレキの中にあって、まさに奇跡としか言えないほど無キズであった。
まるで何者かに守られたかのようなその彫像は「母子像」であった。
周囲の荒れはてた光景と、その「母子像」は異様な対比を見せていた。
かえってそれが「母子像」の存在を目立つものにしている。
ハーピィが、それに注目したのも何ら不自然な事ではない。
本来、ハーピィは卑劣なものであるがこの「母子像」はなぜか意識の奥底に訴えるものがある。

それは、今までとは全く違った感覚・・・しかし、なぜかなつかしい・・・そう、私は確かに覚えていた・・・。
ハーピィの意識は今、その深淵から湧き上がる光に満ちていた。

魔物としてのハーピィ本来の意識は、当初この突然変異の新しい感覚を拒否しようとした。
しかし、本能は拒否できようはずがない。
それは理解する、しないではなく、本来ハーピィが持っていた意識なのだ。
魔物としての存在自体により徐々に抑制され、姿をけしていただけなのだ。
今、ハーピィの意識に「優しさ」と「愛」が戻ってきた。


++2F南西 彫像 ガーゴイル++

ガーゴイルは、そこに倒れた彫像を見つけた。
それは、まぎれもなく自分と全く同じ姿をしたものであった。

人間が、なぜ魔物の像を作ったのか?
我々は憎まれる対象ではなかったのか?

「お前は以前、人間により大切にされた時がある」

ガーゴイルの意識が語りかけた。
それはひとつのキーワードとなり、ガーゴイルの意識をかけめぐった。
失われた記憶の再生は瞬時にして完了した。

「人間の価値観の変化が今の自分につながっている。」

あまりにも、もろいその姿はガーゴイルの意識に変化を与えた。

「人間とは何と悲しいものか・・・。」

そして、彼の意識は「優しさ」と「愛」に目覚めた。


++3F北東 鐘 スケルトン++

突如、教会の鐘が鳴り響く。
その時、スケルトンの意識に電撃が走った。
鐘の響きと共に、スケルトンの意識の中に光が生じ、それはしだいに輝きを増していった。

「これは・・・この光は!」

鐘が鳴りやんだとき、スケルトンは自分自身を知った。
肉体もなく、ただ骨のみで動くことのむなしさを。
人間の無念さが己を生み出したのである。

スケルトンの意識に人の無念さを想う気持ちが生じた。
それこそが「優しさ」と「愛」である。

スケルトンは弔忌鐘を手にいれた。


++病院2F南東 標本 ミノタウロス++

ミノタウロスは一つの標本を見つけた。
それを目にした時、ミノタウロスの意識に一つの光りが走った。
それは失った自分自身の記憶であった。
奇形・・・人間がまき散らした薬物により生じたものがこの姿なのである。

「人間は自分自身を苦しめるものを何かに使っていたらしい。」

あまりにも破滅的な行為にミノタウロスは同情した。

その時、彼の意識に「優しさ」と「愛」が生じた。


++3F西 本 スライム++

散乱している本の中、ひとつのページにスライムは気を止めた。
人間の歴史の中の1シーンらしい。
海にただようヘドロ・・・公害?・・・。

スライムの意識の中、一瞬の光が走った。
スライムはその時失われた記憶を取り戻した。

人間が社会の発展の過程でつくり出した、廃棄物。
それこそが自分の姿なのである。
発展と引きかえに、人間は自らも害を与えるものをつくり出していたのだ。

「なんと、おろかな・・・。」

スライムの意識に「優しさ」と「愛」が生じた。


++4F南西 本 ゴブリン++

ゴブリンはそこに一冊の本をみつけた。
それは「童話」と言われる本であった。
ゴブリンはページをめくって行った。

「何だ?これは?」

それは何やら赤色の鬼が出てくる話らしい。
ゴブリンはその本を読み進むうちに、自分の意識の中の、もう一人の別な自分の存在に気づいた。

「お前と同じだ。そして今、お前はお前自身を憎んでいる。」

この物語はまさにゴブリンを影す鏡であった。

「なぜだ?なぜオレはこんなに・・・赤い奴を憎むのだ!」

ゴブリンが自分の意識の中、今、別種の感覚が出現しようとしていた。
この本がゴブリンに人間に対する同情を引き起こしたのだ。
全く異質なこの感覚に、ゴブリンは激しい苦痛を感じた。
やがて、それが去った時ゴブリンは今までとは違うものが意識に根ざした事を知った。

・・・「優しさ」と「愛」である。


++5F北西 写真 オーク++

オークはそこに1枚の写真を見つけた。
それはどこから運ばれて来たのだろうか?
風に乗り偶然そこに、たどりついたのか真新しい、たった今持ってきたばかりのようであった。
オークはものめずらしそうに手に取ってみた。
人間の親子のようである。

「フン!人間か!」

オークはその写真を投げ捨てた。
が、その時オークの意識は、小さいがハッキリと輝く光を放った。

「何だ!これは!」

オークは自分の意識が暴走した感覚に襲われた。
意識の中に広がるそのわずかな光りの波紋は瞬時にして、超新星誕生のごとく巨大な爆発を起こした。
自分の意識が勝手に動き出している。
オークは恐怖した。
しかし、その恐怖は消え去った。
オークは失っていた感覚が復活した事を知ったのだ。
すべては人間がそうさせていたのだ。
魔物という意識が、この感覚を消し去っていたのである。
そして今、オークは取り戻した。

「優しさ」、そして「愛」を・・・


++警察署5F北西 紙 Dニュート++

ドラゴンはそこに数枚の紙を見つけた。
それは何か書類の一部らしい。

「・・・自分の罪は残された方々の為に尽くす事により報われると・・・」

ドラゴンの意識は「罪」という言葉に、今だかつてない動揺を覚えた。

「この感覚は何だ?・・・この嫌な気分は・・・」

ドラゴンはうろたえた。
これは自分にとって、最も嫌悪すべきもの、触れてもらいたくないものだ。
彼の意識はそう伝えていた。
しかし、その数枚の紙はドラゴンの意識に連鎖反応を誘発させた。

「罪悪感」

・・・ドラゴンは遠い過去に消えていたはずのものが今、復活したのを知った。
もとは、ドラゴンも人間であったのだ。
しかし、ある時自分のことしか考えない者の為に、滅亡の危機に立った事がある。
その物は、おそらく呪われたのだろう。

姿が魔物---ドラゴンにされたと言う。

その物は自分の罪を恥じ「バスクの樹」となった。
そして、自分の罪悪を消す為に「アゾット剣」を生み出した。
だからドラゴンはこの剣を恐れる。
この剣は自分の「罪悪感」を呼び覚ますものなのだ。
この「罪悪感」を復活させた事により、ドラゴンの意識は大きく変化した。
それをつぐなおうとする心が「優しさ」と「愛」を生じたのだ。

このアゾット剣はのちにドラゴンスレイヤーと呼ばれた。


++デパート2F南西 粘土細工 ゴーレム++

ゴーレムはそこにあった粘土細工を手にした。
それを手にしていると、ゴーレムの意識に何か暖かいものがわき上がってきた。
ゴーレムの意識に失われたものが帰ってきた。
人間が神へ挑戦したなれの果て・・・。
それが自分自身なのだ。
人間は自分たちの手で人間を作ろうとした。
それが、かなわぬ事を知った時の絶望が自分を生み出した。

ゴーレムの意識に人間をあわれむ気持ちが生じた。

それこそ「優しさ」と「愛」なのである。


++4F南東 本 サイクロプス++

それは何かの写真集らしいものであった。
すでに表紙もなくなり、かなりボロボロになっていたが内容はそれほどいたんでない。
サイクロプスはその写真を見るなり驚いた。
人間がモンスターに変身していく連続写真である。

「人間は・・・こんな奴らもいたのか?・・・」

サイクロプスは次々とページをめくった。
驚きは止むことがなかった。
しだいにサイクロプスは人間に対する疑問を深めていった。

「人間の世界になぜ我々のようなものが存在するのか?」

その疑問はサイクロプス自身の意識に眠っていたものを呼びさました。
さらに、サイクロプスはその「目覚めたもの」にすべてを支配されていた。

-----人間は互いに殺し合う
-----しかし、平和を願う

この相反する要素に人間は苦しむ。
それを他にすりかえる事により彼らは安心してきた。
サイクロプスは自分がそのひとつである事に気づいた。
その時、彼の意識にひとつの全く異質なものが出現した。

それは、後でサイクロプスが気づいた「優しさ」や「愛」であった。

人間は完全ではなかったのだ。


++6F南東 写真 Aスフィンクス++

その時、スフィンクスの目に1つの写真が入った。
三角形の巨大なものの横にそびえ立つ・・・

自分の姿を見たとき、スフィンクスの記憶の中に雷光が走った。
失なわれていた過去が一瞬のうち、闇の彼方より舞い戻ってきたのだ。

「人間がつくり出した王権としての象徴・・・。」

それが自分自身なのである。

「人間は自らの能力を誇示する為に、自分自身以外のものを作らねばならないのか・・・。」

その時、スフィンクスの意識に人間に対するあわれさの気持ちが生じた。
それこそが「優しさ」や「愛」である。


感情センサーを通りファンタジーランド内へ。
中にはRPG風の武器屋や防具屋があるが、何を聞いても「いらっしゃいませ。何にいたしましょうか。」しか言わない。
歩いていると勇者ご一行様が・・・ファンタジー・ランド門の奥より声が聞こえる。

「感情センサーに合格いたしました。どうぞ中にお入り下さい。」

門が開いた。


1.ファンタジー・ランドの住人

一行の前に、突然何人もの人間が立ちはだかった。
彼らは手に手に武器を持ち、防具で身を包んでいる。

戦士「姫様を返すのだ。」
騎士「我々は王の命令により魔王を倒すために立ち上がった勇者である。魔王の城はどこだ!!」

ガーゴイル「何事だ・・・我々は敵ではないぞ。」

戦士「うるさい、いくぞ!!」

その一団は、襲いかかってきた。

ガーゴイル「姫を返せとはどうゆうことだ。・・・それに、まるでこの世界は我々が人類と共存していたという伝説の時代にそっくりではないか!!」
ガーゴイル「これは・・・こいつらロボットだ。人間じゃねえ。」

その胸には、EXP、HPなどと書かれたメーターがカタカタとむなしい音をたてながら回っていた。

ガーゴイル「ここは・・・ここは人間の町なんかじゃない。」

ガーゴイルがポツリといった。その言葉も、風の音にかき消されていたかもしれない・・・


2.病院

どうやら、ここは病院のようである。

受付「いらっしゃいませ。どんなご用件でしょうか。」

奥から、何やら機械音が聞こえてくる。
一行は、黙って奥の部屋へ続く扉を開けた。
奥の部屋では、ロボットの修理が行われていた。

オーク「何てことだ・・・」
Gスネーク「人類は、やはり滅びてしまったのだな。」

ロボットが、何やらかすかな声でしゃべっている。

「王様の・・・命令・・・早く・・・早く・・・」

ハーピィ「城へ行こう。城に行って、その王を見てやろうではないか。」
ミノタウロス「どうせ、その王もロボットよ。」
オーク「しかし、いかねばならぬ。この胸の奥にたぎる怒りは何なのだ。この悲しみは・・・。もう我々は以前の我々ではないのだ。お前達もわかっているだろう。我々は自分達に決着をつけなくてはいけないのだ。」

オークの叫びを、皆静かに聞いていた。
彼らも、心の奥ではそう感じていたのかもしれない。
自分達のこれからするべきことが何であるか、わかっていながら否定していたのかもしれない。

Gスネーク「行こう。城に行けば何かわかるかもしれない。」


3.王様

王座には、ふくよかな王様が座っており、機械的にしゃべり始めた。

「お前達に頼みがある。わしの娘が魔王にさらわれたのじゃ。どうか助けてはくれないか。」

ガーゴイル「あいにくだが、俺達はその魔王の使いだよ。」

王様は、おかまいなしで、しゃべり続ける。

「ここに100ゴールドある。これで・・・」

ゴブリン「やめろ!このロボットめが。」
ゴブリンは右手を振り上げ、王の首をはじきとばした。

王様「旅の・・・身支度を・・・するが・・・よい・・・期・・・待・・・ガガ・・・ガガ・・・」

スケルトン「この城のどこかに、こいつらを操っている奴がいるはずだ。そいつを捜しだそう。」


4.メインコンピューター

その部屋にはとてつもなく大きなコンピューターがあった。
これが、この国をつかさどるメインコンピューターであろう。

「ここは侵入禁止のはずです。早くそれぞれの持ち場へ戻りなさい。もしくは病院に行き修理してもらいなさい。」

オーク「お前なら、ちっとは話しができそうだな。」
Gスネーク「ここを作ったのはお前か!」
メインコンピューター「おかしいです。貴方達のことは、プログラミングにありません。不思議です。どこから来たというのですか。」
オーク「そんなことは関係ねえよ。この町を作り、管理しているのはお前なのか。」
メインコンピューター「不思議だ。貴方達の感情は、私の中にインプットされていない。その感情は・・・はるか昔に人間が持っていたと思われる感情。貴方達は過去からきたのか!人間以上に人間らしい。」
ハーピィ「俺達が人間以上に人間らしいだと。教えてくれ。俺達は何者なのだ。」
メインコンピューター「私は、人間の意志を継ぎ、この町を管理している。人間達は滅ぶ時、夢というものを残した。夢というものを実現させるのが、私に与えられた使命。この世界がその夢の実現です。」
ミノタウロス「夢!これが人類の夢だというのか。単純な行いを繰り返し、決まりきった毎日を過ごすことが夢だというのか。」
メインコンピューター「私にはわからない。私は過去のデータから、この世界を作りあげた。そして、この世界が、人類の夢であると結論を出した。」
オーク「ほざくな!貴様ら機械に何がわかるというのだ。」

オークはコンピューターに切りかかった。
瞬間、強烈な電流が全体を包み込んだ。

コンピューター「人類は、コンピューターの作り上げる世界に全てをまかせるようになった。自分達では何もできないことに気付いた時、進化は頂点に達したといっていた。そして、自ら滅亡を望んだ。そして人類は地下へと身を潜めた。人類はこの町を私に託す時、最後の言葉を残した。「いずれ、人間らしい本来の感情を持った者が、ここに来るだろう。その時まで、この町を守っていてほしい。」と。お前達が、それに相当するものなのだろう。私は指令塔からの命令で管理していたが、これで私の任務も終わりだ・・・お前達が、人類なのだ。」

それっきり、コンピューターのひかりは消えて何も動かなくなった。

オーク「教えてくれ、指令塔とは何だ。」
Gスネーク「我々は、人類の生まれ変わりなのか・・・」
ハーピィ「今までの記憶は全て嘘のものだったというのか。魔族の記憶など何もかもでっちあげだったのか・・・」

コンピューターから、一枚の紙がはきだされてきた。
その紙には、こう書いてある。

「指令塔ヘ告グ。任務ハ全テ完了。次ナル時代ノ支配者ハ誕生シタ。NO.85419」

オーク「我々は何をすればよい。この大地で、何をすればよいというのだ。」
Gスネーク「全て、人類にしくまれた出来事だったのさ。うまくできすぎているじゃないか。指令塔やらに行けってことさ。」
ハーピィ「その後で、異星体と戦えっていうのか・・・もう、どうでもよくなっちまった。俺達が本当に人間の生まれ変わりなら、また滅亡は繰り返されるってことだろう。」
ミノタウロス「いや・・・もうすぐ全てが終わるよ。そんな気がする。」

一行は、足どり重く、その場を後にした。
指令塔へ向かう。
巨大な門がある。
奥から声が聞こえてきた。

「NOを入力してください。」

ガーゴイルは、メインコンピューターがはじきとばしだした紙に記されていたNOを入力した。

ガーゴイル「ここに、今までの全ての出来事を考え出した親玉がいるってわけだ。」

一行は中へと入っていった。

一行が、その部屋に足を踏み入れると、全ての視界が消滅した。
そこには何もなかった。
ただ、限りない無が広がっていた。
彼らには今ここに、どのような状態で存在しているのかも、わからなかった。
突然、シャーマンの壷が落下し、砕けた。
ここには、上下も、まして底などないはずなのに・・・
その中から、8匹の魔物が出現した。
全ての魔族が一同に会したのである。
12人を、まばゆい光が包み込んだ。
スライム「ぐあっ、体が熱い。焼けるようだ・・・」
彼らはその場に倒れ込み、しばらくの時が流れた。
そして再び彼らが目覚めた時、その姿は異様に変ぼうしていた。
それは紛れもなく、人間の姿であった。
ミノタウロス「どうしたというのだ。」
Aスフィンクス「これは・・・人間の体。」
12人の足元に、一つの星がうかびあがった。
彼らはその星に深い安らぎと懐かしさを感じた。
「ようこそ、待っていたよ。これが君達のそして私達の星だ。」
どこからともなく声が聞こえてきた。
12人は、いっせいに、その声の方向へ向きなおった。
それは異星体であった。
彼は優しくゆっくりと語りかけてきた。
異星体「ようやく人間の感情を取り戻したようだね、私の肉体よ。」
ガーゴイル「肉体?」
異星体「そうだ。君達は精神の抜け殻となった肉体だったのだ。人類は滅亡を理解した時、はるか昔人間が忘れさった感情を取り戻すため一つのプロジェクトを計画した。それは、自分達の肉体と精神を分離させてお互いを戦わせること。その時、肉体が戦いという逆境の中で本当の感情を思い出すことができたなら、再び肉体と精神は一つになり、新しい人類として生まれ変わる。人類は、同じ失敗を繰り返さないよう、このプロジェクトに全てをかけたのだ。」
ドラゴンニュート「それでは、お前達がその精神だというのか・・・」
異星体「そう。人類は、全てを理解してこのプロジェクトを実行する精神に神という名をつけた。そして、何もしらず憎しみの固まりとなった肉体に悪魔という名をつけた。我々は元々一つなのだ。全ては新しく生まれる人類のためなのだ。だましたとか、卑怯だとかいわないでほしい。」
ゴーレム「いまさら信じない訳にはいかないだろう。それに、もう戦うことは無意味だとわかったからね。我々は、これから何をすればいい?」
異星体「これより、私達は一つになる。今までの戦いは全てイメージの中で起きていたこと。魔界や地下の世界など、もともとなかったのだから。全ては肉体を覚せいさせるためのプロローグ・・・」
ハーピィ「一つになったら私達はどうなるの。」
異星体「全ての記憶は忘れるだろう。新しい世界を切り開くためには過去は邪魔になるからね。但し、我々が未来、進むべく道を誤った時、潜在意識の中から神や悪魔が作りだされるかもしれない。その時、人類は神も悪魔も元々は自分達だということに気付かないかもしれないがね。」
スケルトン「わくわくするじゃないか。今、本当に新しい歴史が始まるわけだ。もう俺達の準備はできているぜ。」
異星体「それでは、過去にお別れだ。」
再び、12人をまばゆい閃光が包み込んだ。
そこは美しい大地だった。無限に広がる草原に、12人の男女が静かに眠っている。
太陽の光りの暖かい祝福を受け、彼らはゆっくりと目覚め始めた。
一人の男が口を開いた。
「とてもいい天気だ。」
それに女が答える。
「空がきれい。」
別の男が笑った。
「あー、腹が減ったな。」
空を見つめていた男がいたポツリとつぶやいた。
「これから、いろいろな事をしなくてはいけないな。忙しくなるぞ。」
すぐさま答える男がいた。
「でも、楽しみだ。」
一人がふとおもいついたように、しかし自信ありげにいった。
「そうだ、この地に名前をつけよう。地球・・・地球ってのはどうだい。」
女はにこやかに微笑んだ。
「地球・・・いい名前ね。」
12人は、思い思いに空を見上げた。
今・・・地球の歴史が始まる・・・

最終更新:2020年07月13日 11:16