LONGESTCAPERUNNER

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<p><strong>LONGESTCAPERUNNER</strong></p> <p>part44-271~280,282~291</p> <hr /><dl><dt>271 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:26:56 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>未解決から「御茶ノ水電子製作所」制作の同人ゲーム「LONGESTCAPERUNNER」のストーリーを。<br /><br /> 二人の主人公の視点を自由に交代しながらストーリーを進める形式で、<br /> 「デュアルサイト シティアドベンチャーゲーム」だそうです。<br /><br /> 私がプレイしたのはブラウザ上でできるウェブ版です。<br /> 他にダウンロード版があるみたいだけど、たぶん内容は同一だと思います。<br /><br /> このゲームには、人死にを多く出しまくってストーリーを進めた場合に到達するバッドエンドと、<br /> 極力殺さず、命が助かる可能性がある人は全員助けて進めた場合に到達するトゥルーエンドがあるらしいです。<br /> でも間違って序盤にトゥルーエンドに向かうフラグを潰した状態でセーブしちゃったので、<br /> もうあえて、死ぬ可能性がある人を全員死亡させて進めて、バッドエンドルートを書きます。<br /> 読んでて「なんでこんなにあっさり人死にまくってんの?」とか「展開が不自然」とか<br /> 思う人が居るかもしれないけど、そういった理由なのでご了承を。<br /><br /></dd> <dt>272 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:28:57 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>※注意※<br /> このゲームには長崎市の実在の地名・施設名が、外見も名前も地図上の位置もそのまま出てきているらしいんですが<br /> 【ストーリーはフィクションであり、実際のそれとは一切関わりありません】。当たり前ですが一応。<br /> 念のためこのスレの書き込みの中ではなるべく具体名を伏せたり、伏せ字を入れて書きます。<br /><br /><br /> ※登場人物※<br /> 高菜 志穂:主人公その一。お気楽な変人少女だが、実は人の死をほとんど意に介しない異常性格。<br />        チャイニーズマフィア「林東会」から宝物“葬王”を強奪する。<br /> 上代 惟志:大学生。志穂の彼氏。志穂とともに林東会から“葬王”を強奪した。<br /> 林 健:ジーンズショップ店主の青年。父親が華僑二世の密輸商だったため、華僑の裏事情に詳しい。<br />     店の赤字で借金がかさみ、店の常連の惟志に“葬王”の強奪計画をもちかけた。<br /> 咲村 葵:健の恋人。彼女も健の強奪計画に協力している。<br /><br /> 陶 世劾:主人公その二。林東会のメンバーで、黒スーツ姿の痩せた男。拳銃の扱いに自信がある。<br />       林東会の「大人」の地位を継ぐために、奪われた“葬王”を追う。<br /> 庚大人:林東会の指導者「大人」の地位にある、冷厳な老人。本名は庚 良東。<br /> 庚 文啓:林東会のメンバー。庚大人の孫で、まだ若いが頭が切れて威勢もいいと評判の実力者。<br />       そのため、後継者に選ばれた陶世劾に嫉妬している。射撃がへたくそ。<br /> 白:中華街で料理店を営む老華僑。庚大人の昔馴染みで、情報通。世劾とも親しい。<br /><br /></dd> <dt>273 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:29:51 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>==プロローグ==<br /><br /> 西暦2000年、物語の舞台は長崎市――。<br /><br /><br /> ある日、中華街の中華料理店で行われていた、福建マフィア「林東会」の小会合。<br /> そこに青年と少女の二人組が乱入し、そこにいたマフィアたちに銃を突きつけていた。<br /> その二人組は、マフィアたちが運び屋から受けとろうとしていた<br /> 「老華僑の至宝、“葬王”」という兎の置物を奪ってその場から去った。<br /><br /> スクーターに二人乗りして逃走する二人組、少女「高菜 志穂」と青年「上代 惟志」は強奪の成功に喜びあう。<br /><br /></dd> <dt>274 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:31:06 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>==陶世劾サイト==<br /><br /> それから一時間ほどして。林東会の長崎における拠点である中華風の旅亭において、<br /> 林東会の主要メンバーである男「陶 世劾」は、<br /> 奪われた宝物“葬王”の奪還を林東会の指導者「庚大人」から命じられていた。<br /><br /> 庚大人は世劾の実力を評価しており、自分の「大人」の地位を継ぐ者として世劾を指名しているのだが、<br /> 個人の実力のみでは組織の維持はできないとも考えていた。<br /> 必要なのは周囲からの人望。そのためには大人の地位を受け継ぐ「儀式」を行う事が重要であり、<br /> “葬王”とはその儀式に使われる宝物だったのだ。<br /> 新たな「大人」となるため、世劾は“葬王”を自分の手で取り戻さねばならない。<br /><br /> また、その儀式には“葬王”とともに“灰律”という青銅製のプレートのような物も使用されるのだが、<br /> “葬王”の奪還に加え、長崎市にあるはずだが行方が分からなくなっている4枚の“灰律”も<br /> 在り処を調べ、集めてくるようにという奇妙な指示も庚大人から下された。<br /> 世劾は“葬王”が奪われたことやこの“灰律”集めすら儀式の一部であるかのように感じ始めていた。<br /><br /> 福建から博多に死ぬような思いで流れ着いた、ただのチンピラだった世劾を拾ってくれた庚大人。<br /> 今では林東会の重鎮にまで登りつめた世劾は、近々その庚大人の後継者になろうとしているのだ。<br /> こんな事でつまづくわけにはいかない、すぐにガキどもを捕まえ、後悔させてやる、と心に決める。<br /><br /></dd> <dt>275 :<a href="mailto:sage"><b>ゲーム好き名無しさん</b></a>:2009/03/09(月) 08:31:58 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>強奪犯の行方は、林東会の情報網であっさりと判明した。<br /> 市の中心部にあるアーケード街に位置する雑居ビルの、華僑三世の青年「林 健」が<br /> 店主をしている小さな店にあの二人組が逃げ込んだという情報が入ってきたのだ。<br /> 世劾は一人でその店に片を付けに行くつもりだったが、庚大人の孫「庚 文啓」が<br /> 自分の部下を引き連れ、無理矢理ついてくる。<br /> 文啓は林東会の中でも有数の実力者であり、自分を差し置いて次期「大人」に指名された<br /> 世劾を目の敵にしていて、このように何かと世劾に突っかかってくるのだ。<br /><br /> しかたなく文啓やその部下と一緒に店に踏み込む世劾。<br /> 店内には情報どおり強奪犯の青年と少女が居り、それに加え店主である林とその女かと思われる若い男女も居た。<br /> 慌てた様子で銃を手に取った青年だが、世劾は自分の拳銃で素早く青年の腹を撃ち、昏倒させる。<br /> しかし少女の方は予想外の身軽な動きで文啓の部下の銃弾から身をくぐってあっという間に裏口から逃げおおせ、<br /> 林やもう一人の女も、文啓が「殺しちまったら尋問できない」との余計な考えで世劾の腕を押さえたおかげで<br /> 取り逃してしまった。「最初から足を撃つつもりだった。邪魔しやがって・・・」と苛つく世劾。<br /><br /> 仕方なく、世劾は少しでも手がかりを得るべく倒れた青年の体を探る。すると財布から、<br /> この市にある大学の学生証が出てきた。この青年は「上代 惟志」と言う名前でその大学の教育学部の学生らしい。<br /> その時、外から人のざわつきが聞こえてきた。さっきの騒ぎを聞きつけた野次馬が店の前に集まってきたようだ。<br /> 店の入り口には「本日閉店」の張り紙が貼ってあるので入ってまではこないかも知れないが、長居はできない。<br /> 文啓は、「ここからは俺のやり方でやる」と言い放って部下達とともにとっとと姿を消してしまった。<br /> 世劾も急いで裏口から抜け出す。<br /><br /><br /> 他に手がかりも無いため、仕方なく上代の通っていた大学へと足を運ぶ世劾。<br /> 学生数人に上代について聞いてみたところ、上代は大学にあまり来なくなっていた事や<br /> 「高菜 志穂」という有名な変な女と付き合っていた事を聞くことができた。<br /> さらに高菜の友人だという女からプリクラを見せてもらい、高菜が強盗の片割れだと確認した世劾は、<br /> その女から高菜の住んでいるアパートの住所を聞き出してすぐにその住所の場所へ移動し、部屋に踏み込む。<br /> しかし中には高菜は居らず、先んじてここを突き止めた文啓が皮肉げに笑って立っていた。<br /> 文啓は、高菜はここに戻ってはいないということだけを世劾に教え、こちらを馬鹿にして立ち去っていく。<br /> 探しても特に手がかりも見つからず、世劾も立ち去ることにする。<br /> 上代のアパートにも行ってみるが、やはりこの部屋からも手がかりは何も見つからなかった。<br /><br /></dd> <dt>276 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:34:08 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>==高菜志穂サイト==<br /><br /> 志穂・健・健の彼女の「咲村 葵」、の三人は、葵のマンションで今後の事について話し合っていた。<br /> 惟志がやられたことや素性がばれた事に動揺している健と葵だが、志穂は<br /> 「いーじゃん。モノはあるんだしコレを売っちゃってぱーっとグアムでもサイパンでも・・・。」<br /> と能天気に喜んでおり、全く気落ちしていない。<br /> しかし健は、この“葬王”だけじゃなく“灰律”も揃えてクライアントに渡さないといけないことになった、と言い、<br /> そんなに甘くないと志穂に釘を刺した。ちなみにクライアントが誰なのかについては口を閉ざしている。<br /><br /> 「ていうかこの“葬王”ってなんなのー?」といまさら聞いてくる志穂に、林は昔の偉い人が持っていた<br /> 権力の象徴で、いつの時代でもそういうものを欲しがる奴が居る、と語る。<br /> だが、“葬王”とセットになる、“灰律”という青銅製のプレート4枚は数十年前に一度集められたっきりで、<br /> そのときに老華僑の四つの大家に預けられ、その後は誰も行方を確かめていない。<br /> その家系も、伝えられているのは「郭」「琢」「茗」「岳」の四つの名前のみで、<br /> 家の消息も既に不明、具体的にどこの誰なのか分からなくなってしまっているらしい。<br /> 今回の事件を起こす前に前もって健と惟志が調べたが、やっと一人の名前と居場所が分かっただけだった。<br /> 市の観光スポットになっている石造りのアーチ橋「眼鏡橋」の近くにある公園<br /> 「中島川公園」で、アイスの露店を出している「琢春」という人らしい。<br /> 「住所はよく憶えてねぇ」などと曖昧な事を言う健に葵は呆れるが、<br /> そもそも調べるのは惟志の担当だったので詳細は惟志だけ知っていたのだ。<br /> 会いに行くにはその露店に行くしかないようだ。<br /><br /> その時、志穂はなんとなくテレビをつけてみる。<br /> テレビではちょうど健の店でのことに関するニュースが流れており、その中には<br /> 惟志が死亡していたという内容もあった。健は動揺してテレビを消す。<br /><br /> 比較的現実的な健は、「このヤマはやめた方がいい。考えてみろ。死にたくねぇだろ?」と言い始める。<br /> しかしそう言われて「考えてみた」結果、志穂の出した結論は<br /> 「人生冒険だよね!後悔だけでこれからの人生送りたくないし。私やるぜー」という<br /> 楽観的で前向きというか無思慮で猪突猛進なものだった。<br /> 「じゃ葵も」と葵もそれにノリで賛同するが、健は<br /> 「じゃあ止めないけど、素性が割れてる俺は隠れるぞ」とあくまで消極的だ。<br /> 健は取引の時間や、取引予定の場所が長崎市を一望できる山「稲佐山」であることなどを志保たちに教え、<br /> 店から逃げるときに拾ったという惟志の拳銃を志穂に渡すと、<br /> 取引のそのときまでの間、どこかに姿を消すために出て行った。<br /> 志穂と葵は“灰律”を手分けして探す事にし、志穂は中島川公園の琢春、葵はその他の人を探すために動き出す。<br /><br /></dd> <dt>277 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:36:25 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>さっそく中島川公園にやってきた志穂。いくつかあるアイスの露店のうちの一つからアイスを買い、<br /> 売り子のおばさんと話をする。とりあえず名前を聞いてみると、その人が琢春さんだった。<br /> なんと一人目で当たりだ。しばらく世間話をしたり、志穂の珍妙な思い出話を披露して面白がらせたりした後、<br /> 「石版みたいなもの」をねだってみると、「これのことかい?」と小さなプレート“灰律”を出し、<br /> なんともあっさりと「私が持っていてもしょうがないし、お嬢ちゃんにあげるよ」と渡してくれた。<br /> 数十年放っておかれただけあって、“灰律”の重要性は失伝してしまっているのかもしれない。<br /><br /><br /> とりあえずなんとなく疲れたので自分の家に戻ってみることにする。<br /> すると、家の中から暗い色のスーツ姿の目つきの悪い男たちがぞろぞろと出てきた。<br /> 「マッフィーたちの追っ手だ!」、と気づいた志穂は急いで身を隠す。<br /> しばらくすると、家からはさらに一人のマフィアが出てきた。<br /> 惟志を撃った奴だ・・・と気づく志穂だが、悔しいが今はどうしようもない。<br /> 出て行ったとはいえ、しばらくはこのあたりから離れることにする。<br /><br /></dd> <dt>278 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:37:40 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>==陶世劾サイト==<br /><br /> “葬王”の奪還はもちろんだが、“灰律”も集めなくてはならない。<br /> それに強奪犯たちも、“葬王”を狙ったという事は“灰律”にも近づく可能性がある。<br /> 世劾は“灰律”のありかについて詳しいことを聞くために、中華街にある、冒頭で強盗たちの襲撃があった<br /> あの中華料理店にやってきた。この店の老主人「白」は庚大人と同じ釜の飯を食った仲の老華僑であり、<br /> “葬王”や“灰律”についても詳しいはずだからだ。<br /><br /> しかしそれらの事を聞く前に、もしかすると犯人の一味らしい「林 健」の事も<br /> 華僑どうしの縁で知っていないかと聞いてみると、「親父同様のろくでなしじゃ」と吐き捨てた。<br /> 健の父どころか祖父の時代から知っているらしいが、語るのも嫌といった様子であまり喋ってはくれなかった。<br /> ついでに文啓の事を話題に出すと、文啓の悪口を言う世劾に苦笑しながらも、<br /> 「わしもあいつのやり方はあまり好きになれん、あいつは力に溺れるタイプじゃ」と批評した。<br /> もっと自分を抑える道を知っていれば庚大人も後継者選びで苦労しなかっただろうに、としきりに残念がっている。<br /> 世劾は「現実はこんなもんだ」と言ってそれをあしらい、白は「お前の口癖じゃな」と笑った。<br /><br /> 本題の“灰律”の件について彼に詳しく聞いてみると、数十年も前の事だから記憶が曖昧だといいながらも、<br /> 「四枚の“灰律”は四つの華僑の家に別々に預けられている」ということと、<br /> 「歓楽街「思案橋」で占いの店を出しているルシオラという女性」と<br /> 「中島川公園でアイスの露店を出している琢春という女性」がそれぞれ<br /> その家の人間のはずだ、という事を思い出してくれた。<br /><br /> 白に礼を言って外に出ると、嫌な気配を感じる。<br /> 辺りを観察してみると、文啓の手下の一人がこちらをうかがっていた。<br /> 監視でもしているのか?と気を悪くする世劾だが、特に何かをしてくるわけでもないので放っておく事にする。<br /><br /><br /> さっそく、教えてもらった思案橋の占い屋に向かう。<br /> 華僑の店らしく中華風の占い屋に入ると、チャイナドレスを着た幼い子供が現れて、<br /> 「お客さん、死相が出てるよ」と世劾に話しかけてきた。<br /> 占いに来たんじゃない、ルシオラとに会いに来たというと、その子供は自分がルシオラだと名乗った。<br /> 子供が苦手な世劾は内心毒づきながら、“灰律”についての話を切り出す。<br /> すると突然口調が変わり、「“葬王”の儀式が始まるのか。庚大人は引退か。聞いていないが」と遠い目で呟いた。<br /> それは一瞬の事で、すぐに元の子供っぽい口調に戻ったが、見た目や普段の態度どおりの人間ではないようだ。<br /> 話していないはずの文啓の行動のことまで言い当て、しかも文啓を昔から知っているかのようなことを言う。<br /> 「不思議なガキだ・・・」と、底知れなさを感じる世劾。<br /><br /> とりあえず「“灰律”を持っているのか?」と聞くと、すぐに奥の部屋からプレートを持ってきて、<br /> 「はい、あげる」と軽く渡してきた。<br /> 当然、世劾は“灰律”を見るのは初めてだが、どう見ても安物の、どうってことないプレートだ。<br /> こんなものに振り回されている事にため息をつく世劾。<br /><br /></dd> <dt>279 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/09(月) 08:39:30 ID:cTdv5T0m0</dt> <dd>ついでに、「最近の林東会の動きについて知らないので教えて」とルシオラに問われたので、<br /> “葬王”や“灰律”が必要になった経緯を話してやる。<br /> 「ほう・・・通りで気が乱れていた。しかし帰すべき所に全ては帰す・・・」<br /> とまた例の口調になり独り言を呟くルシオラ。だがやはりすぐに元の口調に戻り、<br /> 「おじさんは後継者としては庚大人の後継者としては合格だね、目を見れば分かるもん」、とも褒めてくれた。<br /><br /> まあ用件は済んだので礼を言って店を出ようとすると、ルシオラが「・・・来る」と呟いた。<br /> その瞬間、銃を持った男二人が店に乱入し、「“灰律”を渡してもらいましょうか、陶大兄」と脅してくる。<br /> どうやら文啓の手下たちのようだ。素直に渡すわけにはいかない世劾も拳銃を抜いた。<br /> 二対一だが、上代を一発でしとめたように世劾の拳銃の腕は確かだった。<br /> 相手の銃撃を床を転がって避けながらあっさりと一人の眉間に当て、<br /> 仲間の死に動揺したもう片方の肩と両足も撃ちぬき、戦闘不能にする。<br /> 「もう大丈夫だぞ」と言いながら振り返ると、ルシオラは血を流して倒れている。<br /> 流れ弾が胸に当たったらしく手遅れのようだ。だが、不思議と顔には笑みが浮かんでいた・・・。<br /><br /> 世劾は生き残った方の男に向かい、これは文啓の差し金なのかと確認する。<br /> 文啓の手下は命乞いをしながらそれを肯定し、さらに世劾から問い詰められた末に、<br /> 今回の強奪事件そのものも文啓が黒幕だと白状した。<br /> 世劾が後継者として指名された事が気に食わなかったため、それをぶち壊そうとしているらしい。<br /> 色々と聞き出して用無しになった男に「アリガトよ」と言って撃ち殺して、世劾は文啓をどうするか考える。<br /> 大人に真相を報告してもいいが、手ぶらで戻るのは格好がつかない。<br /> なにより、こちらを騙した代償を文啓に支払わせなくてはいけない・・・。<br /> ふと、幼くして命を落としたルシオラを見やる。「別に同情も詫びもしない。世の中とはこんなもんだ」<br /> とだけ一人ごち、占いの店を後にした。<br /><br /><br /> ルシオラの店に襲撃があったと言う事は、白から聞きだした“灰律”の家系二人のもう片方である、<br /> 琢春のもとにも文啓の手が回っているかもしれない。<br /> 世劾は中島川公園に向かい琢春のアイス露店を探すが、どの露店なのか知らないためなかなか見つからない。<br /> 無駄に時間が経ち、諦めかけたところで、公園の端の方で何かの騒ぎが起こっている事に気づく。<br /><br /> 見ると、アイス屋の女と黒スーツの男が何か激しく口論しているようだ。琢春と、文啓の手下だろうか。<br /> と、その時、激昂した黒スーツは何と人目のある中にもかかわらず突然拳銃を引き抜き、女に向けて発砲した。<br /> 女は崩れ落ち、周囲の悲鳴を聞いて自分がやってしまった大事に気づいたのか、男は大慌てで逃げ去った。<br /> 女は苦しそうにあえいだ後、唇を震わせ、「世の中こんなものさね」と、<br /> 奇しくも世劾の口癖のような言葉を呟いて事切れた。当然、突然の殺人事件に、周囲の野次馬は大騒ぎだ。<br /> 世劾は「こんな状況に巻き込まれるわけにはいかない、“灰律”の事は後で確かめればいい事だ」と判断し、<br /> 足早にその場を立ち去った。<br /><br /> しかし、興奮したとはいえ衆目のど真ん中で発砲するとは、あの文啓の手下は相当焦っているようだ。<br /> いや、手下たちが失敗した事を知った文啓本人が、大人に企みが露見する事を恐れて焦っているのかも知れない。<br /><br /></dd> <dt>282 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:00:10 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==高菜志穂サイト==<br /><br /> 葵と落ち合う場所として前もって決めていた、大波止埠頭という波止場の近くにある、最近完成したばかりの<br /> ショッピングモール「夢彩●」へとやってきた志穂。葵を探すが、まだ来ていないのかなかなか見つからない。<br /> しばらく探してやっと葵を見つけるが、遠くから彼女に声をかけようとしたまさにその時、<br /> 見た事のあるマフィアの若い男(文啓)が葵に近づいて行くのに気づいて焦る。<br /> しかしそいつは、葵を捕まえるでもなく話しかけ始めた。志穂は驚いて「あおい!」と呼びかける。<br /> しかし男は志穂を見ると突然「ん、てめえは!」と商業施設の中にもかかわらず銃を抜き、<br /> 声を荒げて必死で追ってきた。葵と志穂は命からがら全力で走り、何とか逃げ切る。<br /><br /> 逃げ切った先で、志穂は葵を問い詰める。<br /> どうして敵のあいつと話していたのか。あいつは敵なのに!動揺して混乱している志穂。<br /> だが葵は、顔を憶えてなかったからあの人がマフィアだなんて気づかなかった、<br /> きっと話しかけて誘い出して襲うつもりだったのね、と言い、志穂に「ありがとう」とお礼を言う。<br /> 志穂は「そうだったのか」とあっさり安心した。そして「じゃあ助けたお礼に」と葵に3万円を要求した。<br /><br /> そんなごたごたの後、葵は「思い出した事がある」と、自分たちが通っている大学の民俗学か何かの先生<br /> 「郭 海民」の事を話題に出す。その郭先生は華僑出身の人だし、“灰律”について何か知っているかも・・・。<br /> 志穂はそれを聞いて、さっきまでの危機や葵への疑念をあっさりと忘れたかのように元気よく<br /> 郭先生の元に向かうと宣言し、葵とまた別行動を始めた。<br /><br /><br /> 大学に着き、郭先生の研究室を訪ねる志穂。けっこうイイ人そうで、志穂の変な言動も面白がってくれる。<br /> そして志穂が「“灰律”の在り処とか知ってる?」と先生に聞くと、<br /> 「もちろん知ってますよ。だって僕が持ってますから。」とあっさり答えた。<br /> 「ちょーだいちょーだい!」とあのアイス屋のおばさんの時のようにねだってみる志穂。<br /> するとやはりこの人も、「なんだ、これが欲しいの。はい、あげますよ」とタダであっさりくれた。<br /><br /> 「そういうガラクタはここにいっぱいあって、増える一方で困ってたんだ」<br /> と語る先生。やはりこの“灰律”の価値については伝えられていないのだろうか?<br /> 「うひゃあ!いやったー!ラキィィ!どんなもんだー!」と大喜びの志穂。<br /><br /></dd> <dt>283 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:01:05 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>ちなみに「郭ちゃんはなんでこれ持ってたの?」と聞いてみると、<br /> 「家に代々伝わってきたものなんですよ。研究に使えるかと思って、こちらに移したんです」<br /> との事だった。そういえば「郭」という名字は健が言っていた、<br /> “灰律”を預かっている四つの華僑の家の名前の中にあったはずだ。<br /> そんなのもらってもいいの?と改めて聞いてみるが、<br /> 「気にしないでください。僕にはもう必要のないものですから。」との返事だった。<br /><br /> “灰律”について他に知らないかと聞いてみると、他の“灰律”の場所は残念ながら知らないとの事。<br /> だが、“灰律”の意味についてを頼んでもいないのに語ってくれる。<br /><br /> ――“灰律”とは、「周易 繁辞」という書物によれば陰陽における万物の形であるという。<br /> ――陰陽剛柔の四つから成り、世界のすべてをその四つが現す。<br /> ――対して、“灰律”と対になる“葬王”はインド神話からきたと考えられている。<br /> ――“葬王”は兎の形をした置物だが、インド神話で葬王は兎の支配者だから兎を象られているのだろう。<br /> ――そういった理由から、“灰律”は老華僑が渡来したこの土地で「万物を手にする事」の象徴とされ、<br /> ――“葬王”は万物を手にしたうえで「老華僑たちの支配者となる事」の象徴とされたと・・・<br /><br /> 「ぐーぐー」<br /><br /> ――ですから君の持っているようなものが作られたわけです。<br /> ――しかしこんなものは結局過去の因習でしかないんですよ。古い権威にすがり付いているだけでね・・・<br /><br /> この先生の場合、別に失伝したわけではなく、伝えられてきた内容に共感できないため<br /> 価値を見出していない、ということだったようだ。<br /> 小難しい話だったので志穂は居眠りをしてしまい、まともに聞いていなかったが。<br /><br /> 手に入れるべきものは手に入れたので、郭先生に別れを告げ、志穂は大学を後にした。<br /><br /></dd> <dt>284 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:08:03 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==陶世劾サイト==<br /><br /> これまで聞いた“灰律”を持つ人間に関する情報を使い果たしたため、白がさらに何か思い出していないかと<br /> またあの中華料理店に足を運ぶ。<br /> 残念ながら白は何も新しい事は思い出してはいなかったが、たまたま食事に来ていた劉という白の仕事仲間が<br /> “灰律”という言葉を聞きつけて話に加わってきた。劉が言うには、あの大学の郭という教授が<br /> “灰律”を受け継ぐ家の人間だという話を聞いた事があるらしい。<br /> なんでも、長崎の華僑でも一、二を争う古い家柄なんだそうだ。<br /> 情報のお礼に劉に食事をおごり、世劾は大学へ向かう。<br /><br /><br /> 大学の郭の研究室を訪ねた世劾だが、誰も居なかった。<br /> 留守なのかと思い、待たせてもらおうと入るが、そこで机の陰に血を流して倒れている男の死体を発見する。<br /> 「おそらくこの男が郭なのだろうが・・・文啓の仕業だろうか?それともあのガキどもか・・・」<br /> 首を刃物で切り裂かれているこの手口から、殺しに手馴れた者の仕事なのは間違いないようだ。<br /> ともかく誰かに見られるとまずい状況であり、世劾は早々に大学から退散した。<br /><br /><br /> 行くあてがないため、仕方なく多くの人が集まる長崎駅に来てみた世劾。<br /> なんとはなしに駅周辺のロータリーを眺めていると、部下を引き連れた文啓が立っているのを見つけた。<br /> 今顔をあわせるのはまずいと身を隠して相手の様子をうかがうと、何かを携帯電話で話していた文啓は<br /> 満足げな笑みを浮かべると、部下たちとともに車に乗って去って行った。<br /> 何か収穫があったらしい。とすれば、こちらもうかうかはしていられない。<br /> 焦る世劾は、今のところ一番の情報源となっている白のもとにもう一度向かう事にする。<br /><br /><br /> 白の店で彼に会うと、さすがの情報通と言うべきか、思案橋で世劾が文啓の手下たちを返り討ちにした事や<br /> そればかりか強奪事件の黒幕が文啓であるという事実まで情報を仕入れていた。<br /> さらに、先ほど文啓が何かを受け取るために稲佐山に向かった、という重要な話も教えてくれた。<br /> 世劾は白に礼を言い、「今夜にでも一杯おごらせてもらうぜ」と言って店を去ろうとする。<br /><br /> しかしその時、白は世劾を呼び止めて「・・・世劾。大勢死んだか・・・?」と聞いてきた。<br /> 普段の白とは違う雰囲気に戸惑う。<br /> 「赤の他人が何人死のうが、ワシには関係ない。だが、身内からはなるべく死人を出したくはない・・・」<br /> と今更な事を言ってくる白に、世劾は<br /> 「こうなった以上、自分と文啓のどちらかが死ぬしかない、そいつは庚大人も御承知のはずさ」<br /> と答える。<br /> だが白は「庚大人」という言葉を聞いて、「・・・そいつはどうかのう」と言った。<br /> 不思議に思い、世劾がその発言の真意を問うと、白は重い口調で語りだした。<br /><br /></dd> <dt>285 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:14:43 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>この騒ぎの中で判明した事だが、文啓が今回の事件を起こした動機としては世劾への妬みだけではなく、<br /> 上海マフィアの老舗「四拝幣」との取引を裏で目論んでいるせいもあったのだという。<br /> “葬王”の儀式を行って「大人」となった者自身が推し進めでもしない限りそんな取引はできない。<br /> 福建マフィアの名誉を泥を塗るような行為でもあるからだ。<br /> そんなことになる事を庚大人も恐れていた・・・。<br /><br /> そこまで聞いて世劾は不思議に思う。「庚大人が恐れていた」という事は<br /> 庚大人は文啓の持っていた「四拝幣」との取引の計画に気づいていたのか?<br /> しかし白は「そうだったらまだマシだったんじゃが」とため息をつき、その世劾の疑問を否定した。<br /> 庚大人は誰かが「四拝幣」と繋がっている事は知っていたがそれが誰なのかは掴めなかったのだ。<br /> そして、<br /> 「・・・これ以上はワシに言わさんでくれ。察しはつくじゃろう?・・・まあ、1つだけ言っておこう。<br />  庚の奴とは古い付き合いだが、引退するなんて話はとんと聞いたことがない」<br /> という白の言葉を聞いて考えを巡らせ、全てを悟った世劾の頭は真っ白になった。<br /><br /> 引退するという話を昔馴染みには全くしていない。<br /> つまり、引退するという話は最初から本気ではない。<br /> 「四拝幣」と繋がっている「誰か」とは次期「大人」の地位に近い世劾か文啓のどちらかだろうと、<br /> 庚大人には予想がついたはずだ。<br /> しかしどちらなのかという決め手は全く掴めず、それぞれにまともに聞いても正直に答えるはずも無い。<br /> そんな状況で確実に尻尾を出させるにはどうすればいい?<br /> 例え嘘でも後継者を決めてしまえば、どちらがその「誰か」にせよ動きを見せるはずだ・・・。<br /> 庚大人は、そう考えたに違いない。そしてこの茶番劇が始まった。<br /> 天涯孤独の世劾にとってたった一人の肉親とも言える庚大人は、世劾を疑い、騙し、利用したのだ。<br /><br /> いや、世劾だけではなく今回の事件に関わった人間全てが、庚大人の手のひらの上で踊っていたのだろう。<br /> 今回の事件で殺された奴はとんだ殺され損だ・・・いや、殺されるのに損も得も無いが。<br /> と妙に可笑しい気分になり自然と笑いがこみ上げてくる世劾。<br /> 笑いながら、「あんたは最初から知っていたんだろう?」と白に問いかけた。<br /> 「殺すかね、ワシを」と覚悟しているようなことを言う白に、世劾は<br /> 「なぜ殺されるかもしれないとまで思っていながらこの事を話したりした?」とさらに問う。<br /> 「老害って言葉があるじゃろ?庚の奴にも、いい加減その事を悟って欲しくてな」<br /> 「・・・なるほど」<br /><br /> 白の答えに満足した世劾は、最後の質問をぶつける。<br /> 庚大人の本心を知っており、今こうしているようにその事を世劾に伝える気もあったなら、<br /> なぜ白は世劾の“灰律”探しを手伝ったのか?集めても無駄な事だと知っていたのに。<br /> 「・・・“灰律”の一枚が岳という家に伝わっている事は知っておった。」<br /> 「岳」。庚大人の亡くなった奥方の姓だ。要するに、“灰律”の一枚は庚大人のもとにあるのだろう。<br /> 世劾が“灰律”を集めていけばいずれその事実に突き当たる。そして自ずと庚大人の真意に気づく・・・。<br /> そう考えた白は、他人から告げられるよりも世劾本人に気づかせようと、手助けしていたのだろう。<br /><br /> 「悪いが、一杯おごるのは明日にしてくれ。今日はこれからもう一仕事ありそうだ。」<br /> それだけ言い、世劾は白の店を出た。白は何も言わずにそれを見送った。<br /><br /></dd> <dt>286 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:16:43 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==高菜志穂サイト==<br /><br /> “灰律”を2つ集め、これで半分集まった。しかしもう何の情報も持っていない志穂は、<br /> 健が「“灰律”の持ち主の情報集めは惟志の担当だった」と言っていた事を思い出し、<br /> 惟志の家に手がかりが無いか捜索する事にする。<br /> 惟志の家の中を漁っていると、ベッドの下からメモがされた紙切れが出てきた。<br /> 内容は断片的だが、「依頼人→?・林が情報を握りすぎてる」とか、<br /> 「健は何か隠してる?・要確認!・裏あり?」など、健を疑っているような文章が並んでいた。<br /> だが、志穂は「よくわかんないや」との一言で済ませてしまった。<br /><br /> そうこうしているうちに、取引の時間になってしまう。<br /> “灰律”はすべて集まりはしなかったが、仕方がないので取引の場所である稲佐山に向かうことにする。<br /><br /><br /> 稲佐山に着いた頃には、すっかり日も暮れていた。<br /> 健たちを探してあちこちをうろうろすると、野外音楽堂で健と葵を発見する。<br /> しかし、その周りはマフィア三人が取り囲んでいた。<br /> 慌てて、拳銃を抜いて健のもとに駆けつけてマフィアたちを撃とうとする志穂。<br /> しかしなぜか健はそれを止め、「この人たちは敵じゃない。大事な取引相手なんだからな」と言う。<br /> 志穂は「コイツら惟志を撃って、私達も殺そうとしたんだよ・・・なにかおかしいじゃん!」と大混乱。<br /> そんな志穂に葵は「志穂、早く“灰律”を出して」と促した。<br /><br /> そこに「内輪揉めは後にしてくれ」と言って、あの夢彩●で会ったマフィアの男(文啓)が割って入った。<br /> その男は、捨て駒の女にはそろそろ死んでもらうぜ、と笑う。<br /> やるかぁ、と志穂も銃を構えるが、葵が志穂に向けて銃を突きつけた。<br /> 「・・・志穂、おとなしくして。」<br /> 「え、それ銃?もしか私を狙ってんの?」<br /> 「おとなしくしてれば、痛くないよ。多分ね」<br /> 「えっ、葵、ちょったんま・・・」<br /> 「バイバイ。志穂」<br /><br /> ぱん!ぱん!<br /><br /> しかし、銃声が響いた後に倒れたのは葵だった。<br /> え?もしかして、私が葵を撃ったの?と、無意識に反撃したため混乱中の志穂。<br /> 呆れたマフィアの男は「仲間内で何やってんだか。殺すってのは・・・こうやるんだよ!」<br /> と部下二人とともに志穂に銃を向けるが、志穂は混乱しすぎて逃げる事もできない。<br /><br /> だが、そこにさらに乱入者が現れた。<br /> 突然、マフィアに向かって銃を構えて現れた男は、惟志を撃ったあのマフィア(世劾)だった。<br /><br /> え?マフィアも仲間割れ?とさらに混乱を深める志穂。<br /><br /></dd> <dt>287 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:20:22 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==陶世劾サイト==<br /><br /> 稲佐山に到着し、あの強奪犯たちと取引しているであろう文啓を探す世劾。<br /> その時どこか近くで響いた銃声を聞きつけ、そちらの方向へ向かう。<br /><br /> すると、あの強奪犯の女「高菜 志穂」が銃を構え、「林 健」は顔を青くして倒れた自分の女を介抱し、<br /> 文啓とその部下二人が高菜だけを取り囲んでいるという妙な場面に出くわした。<br /> 状況からして、さっきの銃声は倒れている女を高菜が撃ったと言うことだろうか。<br /><br /> 文啓たちが高菜に向かって銃を向けるのを見た世劾は、銃を持って突入し、<br /> 文啓の部下たちが驚愕している隙をついてあっという間に二人とも射殺した。<br /> 激昂した文啓は闇雲に銃を乱射してきたが、元々射撃が下手な文啓の腕では<br /> 世劾に命中させることはできない。あっさりと世劾に肩を撃たれて銃を取り落としてしまった。<br /><br /> 文啓は血の流れる肩を押さえながら、憎憎しげに世劾と会話する。<br /> “葬王”の強奪を依頼したのが自分である事や、「四拝幣」と繋がっている事も悪びれもせずに認めた。<br /> 「もう飽きたんだよ俺は。朽ち果てた庚家にも、こんなせまっくるしい場所にも!」<br /> などと吐き捨てている。<br /> そんな会話の最中、突然文啓が横に飛びのくと、その陰から、<br /> 隠しておいたらしい最後の文啓の手下が飛び出してきて発砲してきた。<br /><br /> 不意を突かれたがギリギリで飛びのいたせいか世劾から銃弾は外れ、逆に世劾の銃弾は<br /> その手下の眉間をきっちり捉えた。しかし文啓は林の中に逃げ込んだらしく、見失ってしまった。<br /> 昔から悪運だけは強い奴だ、と毒づいた世劾は、残った二人を見やる。<br /><br /><br /> その二人の態度は対照的だった。<br /> 男は尻餅をついて恐怖に震えている。一方、女はおかしいほど平然とした顔で突っ立っていた。<br /><br /> 高菜だけが文啓に始末されかけていたさっきの状況からして、この女は林に騙されて利用され、<br /> 捨て駒にされかけたと言ったところなんだろう。<br /> 「お前には色々してやられたが、結局俺たち二人ともが間抜けだったわけだ」<br /> と話しかけると、「ちくしょー!!私の銭はー!?」と叫びだした。<br /> どういう娘なんだこいつは?と高菜の変人ぶりに呆れる世劾。<br /><br /> 一方、震えている林。この男には自分をはめたその代償をきっちり払ってもらうことにする。<br /> 銃を頭に向けると顔面蒼白になり命乞いをしてくるが、高菜はそれを見て「情けな!!」と呆れている。<br /> 「人が死ぬなんて知らなかった」だの「俺は文啓さんに逆らえなかっただけなんだ」だのと<br /> 泣き喚いている林に銃を向け、「殺ってもいいんだろ?」となんとなく高菜に聞いてみる。<br /> 高菜の答えは「やっぱずりぃ奴は情けなく死ななくちゃねぇ。最後あたりでついでみたいにあっけなく」<br /> と言うよく分からんものだった。それに苦笑し、引き金に手をかける。<br /> 恐怖のあまり「なんで俺がこんな目に!」と絶叫する林だが、<br /> 「理由なんかあるわけないだろ」と言い放って世劾は林の額に発砲した。<br /> そう、理由なんかない。世の中こんなもんだ。<br /><br /></dd> <dt>288 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:23:17 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>次に、高菜志穂を撃つかどうか考える世劾。<br /> しかし、こいつと俺はこの茶番劇で同じ間抜けを演じた縁だ、と考え、今はやめておく事にする。<br /> 「これからどうするんだ?俺は今から行くところがあるんだが」と高菜に聞いてみると、<br /> 「一攫千金の夢は諦めん!こうなりゃやけくそじゃー、兄ィについていきまっせー!」<br /> と相変わらず妙な事を言っている。世劾は苦笑し、「好きにすればいい」と言った。<br /><br /><br /> 世劾は、高菜と二人で庚大人の部屋を訪れていた。ボディーガードも居らず一人のようだ。<br /> 世劾から高菜が強奪犯の一人だと聞かされても、そして銃を突きつけられても庚大人は<br /> 全く驚いた様子を見せない。それどころか完全に平然とした様子で<br /> 「その選択は正しい。さすがはワシの見込んだ男だ」と世劾を賞賛した。<br /> 世劾が「俺はあなたを尊敬しています。それはこれからも変わらないつもりです」<br /> と別れの言葉を告げると、庚大人は<br /> 「そいつはうれしい。ああ、そうだ、これを渡しておかんとな」と言って、<br /> 懐から最後の“灰律”を取り出した。<br /> 「ありがとうございます」そう礼を言って世劾が引き金にかかった指に力を込めたその時・・・<br /><br /> 背後のドアが突然開け放たれる音が響いた。<br /> 世劾は本能的に横に飛びのき、素早く相手に向かって引き金を引く。<br /> 銃声が二発とどろき、額に穴の開いた文啓が床に倒れた。<br /> 「・・・あばよ。兄弟」<br /> しかし、そう言った世劾も次の瞬間自分の体の異変に気づき、倒れた。<br /> 庚大人も高菜も無言で世劾を見つめている。<br /> 文啓の弾など俺に当たるわけがない、なぜだ、なんだこれは・・・。と疑問に思う世劾。<br /> しかし世劾は撃たれた胸を押さえながら微笑み、薄れゆく意識の中呟いた。<br /> 「・・・理由なんかないよな」<br /><br /></dd> <dt>289 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:24:22 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==高菜志穂サイト==<br /><br /> 「邪魔もんも消えたし、お宝ちょーだい。動いたら撃っちゃうぜー」と、<br /> 死体二つを前にして表情も変えずに庚大人に銃を向けて脅迫する志穂。<br /> 大人はあっさりと灰律を志穂に渡し、「こんな状況で逆らうほどガキではないよ」と言う。<br /> 「世劾の奴なら平気で君の言葉を無視しただろうがな」<br /> 「でもあっけなく死んじゃったじゃん。私は生き残ってるよ?」<br /> 「・・・大したお嬢さんだ」<br /> 褒められて得意になったのか、結局最後は私がはっぴーでごーじゃすな人生を送るのだぁ、と<br /> 一人で盛り上がっている志穂。しかし庚大人は<br /> 「一度血塗られた道に足を踏み込んでしまった者が果たして幸せをつかめるかどうか」<br /> と、そこに水を差した。至宝を持って逃げたとなれば林東会からの追っ手がかかりつづけるのだ。<br /> 「間違いなくこれからの君に安穏の時は無い」と警告する大人。<br /><br /> しかし志穂は「それもいいかな。でんじゃーな人生もあり。んじゃね。」と言って部屋から・・・<br /> 出ようとしたが、思い出したように急に振り向き、<br /> 「忘れてた。これ、さっき褒めてくれたお礼ねー。お釣りは要らないよ」<br /> と言って庚大人の額に発砲した。<br /> そして、死体が一つ増えて三つになった部屋からさっさと出て行った。<br /><br /></dd> <dt>290 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:25:41 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>==エピローグ==<br /><br /> 刑事たちは、庚大人たちの死体を見ながら頭を抱えていた。<br /> 今日だけでむやみやたらと死体が出ており、ついには福建マフィアの「大人」である、<br /> この庚良東までがやられたのだ。<br /> 刑事たちは福建マフィアと四川マフィアの抗争が原因だと誤解していた。<br /><br /> そこに若い刑事が駆け込んできて、「またホトケが出ました!」と報告する。<br /> 頭を抱えて報告の続きを促すと、死体の状況を読み上げ始めた。<br /> 「中華街のど真ん中で銃撃戦があり、黒服の男が数人と・・・」<br /> そこまで聞いて刑事たちは「やはり林東会と四拝幣の抗争か・・・」<br /> とぼやき始める。だが、報告には続きがあった。<br /><br /> 「・・・それと身元不明の若い女性が1人。」<br /><br /><br /><br /> FIN<br /><br /></dd> <dt>291 :<a href="mailto:sage"><b>LONGESTCAPERUNNER</b></a>:2009/03/10(火) 02:27:28 ID:zIiT3WLM0</dt> <dd>これでLONGESTCAPERUNNER終了です。<br /><br /> 最初に書いたように、これはバッドエンドルートを突き進んだ場合なので<br /> 出るキャラ出るキャラほとんどが死亡というひどいストーリーになってますが、<br /> トゥルーエンドでは誰も死なないハッピーエンドらしいです。<br /><br /></dd> </dl>

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