ドラッグオンドラグーン2 -封印の紅、背徳の黒-

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<p> <strong>ドラッグ・オン・ドラグーン2<br></strong>&gt;&gt;16-296~298・305・307・347~350・491~495、&gt;&gt;17-355~364・366~367</p> <hr> <dl> <dt><a href="menu:296">296</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/28(火) 03:19:50 ID:Slm5F/Iw</font></dt> <dd><a href="http://jumpres/read.cgi/gamerpg/1118229538/271"></a><a href= "http://jumpres/271">&gt;&gt;271</a><br> 了解、それでは……<br> <br> ノウェ:本編の主人公。竜・レグナに育てられていたところを封印騎士団長オローに拾われる。<br> マナ:聖女と呼ばれる少女。彼女との出会いから、ノウェの運命は動き出す。<br> レグナ:ノウェの父を自負する竜。ノウェ以外の人間に打ち解けることが無い。<br> エリス:ノウェの幼馴染であり、封印騎士団においてはノウェの先輩。密かにノウェを想う。<br> ユーリック:数年前に封印騎士団を脱退し、失踪中。ノウェにたいして剣の稽古をつけていた。<br> ジスモア:現封印騎士団団長。騎士団内に於いて圧政を敷き、その地位を不動のものとしている。<br> カイム:前作の主人公。18年前、世界崩壊の危機から世界を救った英雄。その後、消息を絶っていた。<br> アンヘル:カイムとともに世界を救った竜。戦いの後、カイムのために世界の封印の礎となる。<br> <br> <br> 物語は前作におけるAエンディング(アンヘルエンド)から18年後の世界が舞台。<br> <br> <br> 一章&lt;前兆&gt;<br> <br>  竜に育てられ、竜語を解し、竜を駆る少年騎士、ノウェ。<br>  彼を育てたブラックドラゴン、レグナと共に封印騎士団に属する彼らはその出自から異端の存在だった。<br> <br>  あるとき、ノウェ達は騎士団が直接管理している"明命の直轄区"においてモンスターが大量発生したとの報を受ける。<br>  団長ジスモアの命を受け、直轄区のモンスターを幼馴染、エリスと共に駆除していくノウェは、そこに人間の姿を見る。<br>  助けてくれと願うその男の話を聞こうとしたノウェを、エリスが鬼の形相でとめる。<br> 「人が居るなんて俺は聞いてないぞ」<br> 「その者は18年前の帝国軍の生き残り! この地の"封印の鍵"に命をささげる殉教者なのです」<br> 「殉教者? 強要される殉教に何の意味が!」<br> 「18年前に世界を破滅に導こうとした罪を、鍵に命をささげることによって購うのです。これはかれらのためでもあるのです、ノウェ」<br>  釈然としないものを感じながら、モンスターを駆除しつくしたノウェはその地を後にする。<br> 「封印騎士団など滅びてしまえ!」<br>  男の罵声を、その背に浴びながら。<br> <br> <a name="a297"></a></dd> <dt><a href="menu:297">297</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/28(火) 03:20:53 ID:Slm5F/Iw</font></dt> <dd>二章&lt;聖女&gt;<br> <br>  それから数日後、二人は騎士団長ジスモアから"気炎の直轄区"に異変が生じたこと、<br>  "気炎の鍵"の守護者ザンポとともに異変の正体の調査を命じられる。<br>  ノウェは気炎の直轄区に於いて、前回と同じ、死ぬことにしか価値を見出されず苦しむ人々の姿を見る。<br>  一向は"鍵"の保管されている遺跡の前に辿り着いた。<br> 「この中が危険かどうか、おまえらがはいってたしかめてこい~」<br>  直轄区連隊長ザンポの無慈悲な言葉に、身をすくめる人々。<br> 「私は魔術の心得があります。私が中に」<br>  そんな中、一人の少女が名乗り出る。少女は人々から"マナ"と呼ばれていた。<br>  自分たちが危ない目にあわずにすむ、とザンポは大喜びでマナを気炎の遺跡に送り出す。<br> <br>  数十分もしたころ、遺跡の中から轟音が響いた。<br> 「しまった! あの女、まさか……!」<br>  血相を変えて、ザンポは遺跡の中に飛び込んでゆく。慌てて追うノウェとエリス。<br>  遺跡の最深部で二人、そしてザンポが見たものは、今まさに鍵を破壊せんとするマナの姿だった。<br> 「やめろッ! それを破壊されたら、ぼくは……畜生、おなかすいたなー」<br> 「……かわいそうに。貴方は契約の代償として味覚を差し出し、食べ物を受け付けなくなったそうですね」<br> 「うるさい! ぼくの前で食べ物の話をするなッ! 殺してやる!」<br>  封印の間の扉は閉ざされ、ノウェとエリスは部屋の外に放り出されてしまう。<br>  そこへ突然、マナを聖女と担ぐ反乱軍が攻め込んできた!<br> 「俺にはあんたたちと戦う理由は無い! 剣を下げてくれ!!」<br>  ノウェの叫びもむなしく、反乱軍は抵抗を止めることはなく、程なくして彼らは鎮圧された。<br> 「ザンポ殿が心配です。封印の間に戻りましょう」<br> <br>  しかし、再び封印の間が開いたときにノウェとエリスが見たのは、破壊された気炎の鍵と、<br>  討ち果たされたザンポの姿。<br> 「これでいい、ここの人たちは解放される……」<br>  激昂したエリスはマナを捕え、遺跡の一室に押し込めた。<br> <br> 「何故、あんなことをしたんだ?」<br> その日の夜、ノウェはマナを尋ねた。<br> マナは言う。騎士団が動く裏でどれほどの人々が苦しめられているか。<br> 鍵を維持するために騎士団が得ているものは何か、泣いているのは誰か?<br> 「君は、何も知らないの」<br> しかし―――とノウェが聞き返そうとしたところで、間にエリスが割って入る。<br> 「反逆者の戯言など聞いてはいけません!」<br> エリスは、マナに対する敵意を隠さなかった。<br> <br> 聖都にマナを輸送する途中にマナをとりかえさんとする反乱軍の襲撃にあいながらも、<br> マナは聖都に送られ、反逆者として処刑されることとなった。<br> 当日。執行人はエリスであった。<br> 斬首と火炙りどちらがいいかと問うエリスに対して、より「苦しむ方法で」マナは短く答えた。<br> 満足げな笑みを浮かべると、エリスは手にしたたいまつを磔にされたマナに向けて放った。<br> エリスが「さよなら」と言ったのとマナの足元の薪に火がついたのはほぼ同時で。<br> <br> <br> 爆発音の後、マナが忽然と消えてしまったのもまたすぐ同時だった。<br> <br> <br> 騎士団、そしてノウェは必死でマナを追跡するも、すんでのところで逃してしまう。<br> ジスモアから帰還命令が出され、ノウェはそのすぐ後にジスモア直々に呼び出しを受けた。<br> <br> 「前々から貴様とは、一度じっくりと話をしてみたかったのだ」<br> <br> <a name="a298"></a></dd> <dt><a href="menu:298">298</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/28(火) 03:41:05 ID:Slm5F/Iw</font></dt> <dd>三章&lt;離反&gt;<br> <br> <br> ジスモアの部屋に招かれたノウェは、まず飲めというジスモアに従いグラスの中の酒を煽る。<br> 「竜の子……か、やはりお前はどこかオローに似ておるな。例えば、その眼……」<br> ジスモアの話を聞いているノウェの視界がわずかにぶれる。錯覚か? 考える間も無く、体から力が抜けてゆく。<br> 「ようやく効いてきたか。オローと同じ杯で煽る酒の味はどうだ?」<br> 動けないノウェを前に、ジスモアは語りだす。信頼され、部下から慕われていた前団長オローを妬んでいた事、<br> 今のノウェと同じように毒酒を煽らせ、暗殺したこと。着実に力をつけ始めているノウェが邪魔なこと。<br> 「あんたが、父さんをッ……!」<br> ジスモアによって止めが刺されようとしたそのとき、ノウェの体に変化が起きた。<br> 人のものとは思えない力がノウェの体内に沸き起こり、毒で痺れる体をものともせずに<br> 切りかかってきたジスモアを退け、逆にその腕を切り落とす!<br> 「ノウェ、何をしているの!?」<br> 遅れて聖都に帰還したエリスが、報告のためにジスモアの部屋を訪ねてきたのはそれと同時だった。<br> 何が起こったのか理解できないエリス。ノウェもまた、自分の体の変化に戸惑っている。力はもう消えていた。<br> 「くッ……反逆だ! ノウェを捕えよ!」<br> ジスモアの声で我を取り戻すノウェ。包囲される室内。考えるより早く、ノウェは部屋から飛び出した。<br> 「窓から逃げたぞ! 追えッ!!」<br> 再び毒に意識を奪われ、朦朧としながら屋上―――レグナの居場所を目指すノウェ。<br> かつての仲間達を切り伏せながら、ノウェはなんとか出口まで辿り着く。<br> 「待って、ノウェ!」<br> その先にエリスが立ちふさがる。エリスは言う。今ならまだ間に合う、ジスモアに許しを請えと。<br> 「ノウェ……約束も、忘れてしまったの……?」<br> <br> 約束、か。ノウェは思い出す。数年前、エリスの様子がおかしかったあの日。<br> 「ノウェ、私は"女"になったの。もうあなたと同じにはいられないの……この意味が、わかる?」<br> そうだ、俺はあの時"自分がエリスを守ってやる"と言った。それは約束、約束だと。<br> <br> 「ごめん、エリス……約束、守れそうにないや」<br> <br> <br> 「騒々しいな、なにか仕出かしたのか? 小僧」<br> 屋上で、レグナはいつものように悠々と振舞っていた。顔色が悪いようだが、悪いものでも拾って食ったか?<br> 「そこまで子供じゃないさ……聞いてくれレグナ。俺はもうここには居られない……どこか遠くへ逃げないと」<br> なに、ここでの生活はわしには少々窮屈だったと、レグナはノウェを乗せ、空へと飛ぶ。<br> 「まずはここから離れねばなるまいな」<br> <br> <br> 迫り来る追っ手。逃げる竜騎士、ひとり―――<br> <br> <br> <br> 以下次号<br> <br></dd> <dt><a href="menu:305">305</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/06/28(火) 16:52:08 ID:peIFxjuT</font></dt> <dd><a href="http://jumpres/read.cgi/gamerpg/1118229538/298"></a><a href= "http://jumpres/298">&gt;&gt;298</a><br> DOD2職人の方へ。<br> ケチつけるわけではないけど、飲んだのは酒じゃなくて水。字幕では清水。<br> 闘いに出向くオローに飲ませた&ハンチが用意したことからも<br> 酒ではないと思うよ。<br> <br></dd> <dt><a href="menu:307">307</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/28(火) 20:23:25 ID:Slm5F/Iw</font></dt> <dd><a href="http://jumpres/read.cgi/gamerpg/1118229538/305"></a><a href= "http://jumpres/305">&gt;&gt;305</a><br> 確認したら確かに清水でした。ごめんなさい。<br> やっぱりリプレイしながら書くことにしようorz<br> <br></dd> <dt><a href="menu:347">347</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/30(木) 22:46:09 ID:B0c9gujV</font></dt> <dd>四章&lt;逃亡&gt;<br> <br> <br>  展開されていた騎士団の包囲網を突破し、"石の街"に逃げ延びたノウェ。<br>  魔物に襲われている商人の隊商を救ってくれたなら秘密の抜け道を使って逃がしてくれるという<br>  住人の依頼を受け、ノウェは見事にこれを果たす。<br>  約束どおり、商人たちはノウェたちを聖都の勢力圏外まで逃がしてくれた。<br> 「……これから、どうすればいいんだ……」<br>  途方にくれるノウェに、レグナは自分たちの故郷に還ることを提案する。<br> 「……そうだな、俺たちの家に……向かおう」<br>  既に展開されていた騎士団の追撃部隊を尻目に、ノウェとレグナはかつての彼らの故郷<br> "忘れられた遺跡"に降りていった。<br> <br> 「なつかしいな……昔、このあたりでよく遊んだよ」<br>  おまえはワシを真似て飛ぶ練習をしていたな、とレグナが笑う。<br> 「あのころ、俺にはこの遺跡とレグナだけが世界の全てだった。他の人間なんて知らなかったからな。<br>  俺も大きくなったら、羽根が生えてドラゴンになるんだと思っていた……」<br>  そんな折、この遺跡に侵入してきたのがオロー率いる旧封印騎士団だった。<br>  団員たちは竜と話すノウェを畏怖し、剣に手をかけるものも少なくなかったがオローがそれを止めた。<br>  オローはレグナに申し出た。この子は人間である。人には人としての親が必要だ。私が父親となり、この子を連れてゆく、と。<br>  竜は、なるほど、それも道理であると答えた。<br> 「だがワシも行くぞ。人の親は人にしか出来ぬが、同様に竜の親は竜にしか出来ぬ」<br> <br>  ほどなくして騎士としての教育を受けるようになったノウェは、いつのまにか救世主などと呼ばれるようになった。<br>  もっとも、それは神官クラスの人間など地位の高いものが人知れずそう呼んでいるだけで、<br>  ノウェの耳に直接入ってくる自分の評判といえば、いつだって"竜の子"―――悪魔の子と評されているらしいということだった。<br>  ノウェ自身、救世主などと呼ばれることに不満を感じていた。一度などその呼称をめぐって先輩団員と言い争ったことまで有る。<br> 「救世主なんて呼ばないでください……俺は、そんな大したものじゃないんです!」<br> <br> 「ふん、この岩は人間によって作られたものぞ……だが、何のために?」<br>  自分たちの通り道が、人間の仕掛けによって塞がれていることにレグナとノウェは一抹の不安を感じた。<br>  しかし、それももうすぐ終わる。彼らがかつて寝床としていた景色は、もうすぐ見えてくるのだ。<br> 「結局、俺たちの居場所はここにしかない、か……」<br> <br> 「小僧はここで一休みしておれ。ワシは上から怪しいものが無いか見てくる」<br>  つくなりレグナはそういい残して、空にその身を躍らせた。<br>  体中に疲労が張り付いているノウェはそれを見届けると、ゆっくりと遺跡の門を開いた。<br>  そこに、かつてすごしていた安息の日々があることを信じて。<br> <br> <a name="a348"></a></dd> <dt><a href="menu:348">348</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/30(木) 22:48:07 ID:B0c9gujV</font></dt> <dd> 「おそかったなノウェ……貴様らの企みなど見通しておるわッ!」<br>  遺跡の中に踏み込んだノウェを出迎えてくれたのは、ジスモア率いる封印騎士団だった。既に先を越されていたのだ。<br> 「ぐっ……レグナ……はまだ帰ってこない……ここから出なければ!」<br>  騎士団が向かってくる。どうやら、別に生かして捕えてくれるつもりは無いようだ。<br>  ノウェは、剣を抜いた。<br> <br>  封印騎士団司令官の顔色は、時間を追うごとに暗く沈んでいった。<br> 「こんな、ばかな……われら騎士団の精鋭がノウェごときに鎧袖一触だとッ!?」<br>  どれほどまでに追い詰めても、<br>  ノウェの体に騎士団の剣が届くことは無いかのように思えた。<br>  その奮戦ぶりは、正しく鬼神と言えたであろう。今また重装騎兵が吹き飛ばされるのが見えた。<br> 「ええいッ何をやっている! 相手はたかが一人だぞ! そんなことで―――」<br>  落雷のような音に、彼の激はかき消された。<br> <br>  実のところ、ノウェも限界だった。<br>  度重なっている疲労、ここ数日のうちに彼を襲った心痛は確実に彼の体力を蝕んでいたのだ。<br>  ましてや、この人数……そろそろ覚悟を決めるか、とノウェは考えていた。<br> 「こっちです、早く!」<br>  だから、最初にその姿を見たときに、彼が何を思ったかは想像に難くない。<br> 「マナ……? いや、まさか……」<br> 「こっちです! 私の言うとおりに進んでください!」<br>  流されるまま、ノウェはその声にしたがっていく。道中にはマナの魔法によるものか、<br>  頭上から雷が降り注いでいる。しかし迷っている暇は無い!<br>  騎士団の包囲網は突破したものの、背後からは追っ手が迫ってきている。<br> 「飛ぶんだ!」<br>  追い詰められたマナとノウェは、崖の上から自らその身を投げる。<br> 「レグナーーーーーーッ!!」<br>  マナの体を掴みながら、ノウェは渾身の力で叫ぶ。空気の震える音が聞こえた。<br>  次の瞬間、二人の体は青い翼に包まれていた。<br> 「ありがとう……助けて、くれたんですね」<br>  君も助けてくれたんだ。おあいこだ、とノウェは答えた。<br>  上に逃げるしかなかろう、というレグナの提案を受け入れ、<br>  ノウェたちはさらに谷の奥へと進んでいく……<br>  そこでは、またしても魔術師を中心とした伏兵が待ち伏せていた。<br> 「わたしの魔術を見せてあげます!」<br>  マナの助けを借りて急場は何とかしのいだものの、<br>  実質的にノウェたちは袋のねずみだったのである。<br> 「この様子では上を目指すのは自殺行為といえような」<br>  マナが口を挟んだ。この近くにはわたしたちの隠れ家があり、そこは騎士団にはまだ割れていない、と。<br> <br> <br>  そもそもマナがここにいたのは、この近くに「封印の鍵」を守る直轄区があり、<br>  それを破壊に行く途中でたまたまあの場所に居合わせたのだという。<br>  ノウェは、それについていくことを申し出た。<br>  レグナは何も言わなかったが、マナはそれを一旦は断る。しかし、ノウェは食い下がった。<br> 「きみには二度も助けてもらったし、気炎の直轄区で君が言っていた"真実"を俺も知りたいんだ」<br> <br> <a name="a349"></a></dd> <dt><a href="menu:349">349</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/30(木) 22:50:33 ID:B0c9gujV</font></dt> <dd>「目を開けて、お願い……」<br>  追っ手の追撃を振り切って、直轄区の近く"砂の村"に降り立ったノウェ。<br>  一人の女性がうずくまって泣いている。その腕には、やせこけた幼子が抱かれている。<br>  やせこけている……というより、あれは。<br> 「この村は昔は水の恵みの為に肥沃な土地であったそうです……<br> "鍵"が置かれてからは、このようなことになってしまいましたが」<br>  マナは、女性のほうを見て続ける。<br> 「この人たちが、騎士団の隠している真実です。<br>  聖都周辺の住民を守るため、たまたま直轄区の近くに暮らしていた民のことなど何も考えない」<br> 「そのために、小さな子供までが……教えてくれマナ、どうすれば彼らを助けられるんだ!」<br> 「この村に水がなくなったのは"鍵"のために川の源流に水門を建造したからです。<br>  鍵が無くなれば、また水がこの土地に戻ってくるはずです」<br> <br> <br> 「の、ノウェだ、ノウェが来たぞッ!!」<br>  鍵を守る水上砦を目指し、護衛兵士を蹴散らしながらノウェたちは枯れた川を上流に駆けてゆく。<br>  戦いの途中、ノウェはマナに尋ねた。何故、戦っているのか?<br>  自らの命を危険にさらしてまで戦っている理由は何か?<br> 「わたしは、全ての人々に平等な平和が欲しいのです。<br>  わたしが戦うことで、それを少しでも与えることが出来るのであれば……」<br> 「……マナは信念があって戦ってるんだな。……羨ましいよ」<br> <br> <a name="a350"></a></dd> <dt><a href="menu:350">350</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/06/30(木) 22:52:35 ID:B0c9gujV</font></dt> <dd>  水上砦の内部、封印の間の中心に、小さな水瓶が鎮座していた。<br> 「この水瓶が……封印の鍵?」<br> 「この中に、何十年分という水の恵が詰まっているのです。こんな、鍵なんかを守るために……!」<br>  そこへ、砦の主でありこの封印の守護者でもある連隊長、ハンチが姿を現した。<br> 「ここじゃ狭いから表へ出ろ! ……って、感じですよう、え、へへへ」<br> <br>  砦の外部で、ハンチは語った。自分は魔物との"契約者"であること、<br>  昔、水に溺れた際に"契約"したこと。そして……<br> 「お父上と同じ水の味はどうでした? ノウェさん……」<br> 「なんだって? あの毒は、あんたが……そうなのか?」<br> 「そうですよう、ジスモア団長閣下はぁ、実はわたしには頭が上がらないんですう、<br>  あ、これ内緒ですからね、誰にも言っちゃ、だめですよう」<br> 「……あんたも、オロー殺しに加担してたのか……だったら、許しはしない!」<br> 「ああ怖い怖い、そんな怒った顔も、オロー団長に似てますねえ、血も繋がっていないのに。<br>  ま、わたしはケルピーちゃんと一緒にあなたがたを片付けさせてもらいますからぁ」<br>  ハンチの呼応にこたえ、水門にたっぷりと溜まっている水から彼女の契約者、"ケルピー"が姿を現した!<br> 「わたしの契約の代償はぁ、"魅力"ですけどぉ……なにか?」<br> <br>  レグナの炎を封じる魔術師との連携、そして水を氷に、氷を刃にと変幻自在に"水"を操るハンチに苦戦しながらも、<br>  ノウェの怒りをのせたレグナの灼熱の炎がケルピー、ハンチを包み込むまでにそう時間はかからなかった。<br> <br> <br> 「ああ、痛い、痛い、痛い、嫌、死ぬのは嫌、死ぬのは嫌ですう……助けて、助けてくださいよう……<br>  ……昔はこうじゃなかった……みんな、わたしを、ほんとうにかわいがってくれた……どうして、いつから、こんな……」<br> <br> <br> 「守護者がなくなったことで、鍵も破壊されました。<br>  もうすぐ、この村にも水の恵が戻るでしょう」<br>  砂の村に戻ったマナは、少しだけ安堵の表情を浮かべた。<br> 「それで、マナはこれからどうするんだ? また、鍵を壊しに行くのか?」<br> 「はい。今の私は、そのために生きて、戦っていますから……」<br> <br> 「だったら、俺もそれを手伝うよ。どの道帰るところはないし、<br>  俺の力で、人々が助かるのなら……」<br> <br> 第四章 終<br> 以下次号<br> <br></dd> <dt><a href="menu:491">491</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/07/11(月) 21:54:53 ID:wBeYGXvy</font></dt> <dd>5章 &lt;仲間&gt;<br> <br> <br>  マナによれば、元封印騎士団で、腕が立つと有名な男-仮面の男-が<br>  どこかに潜伏しているのだという。その男から情報を得るために、<br>  まずは大陸一人の集まる街"錆の街"を目指すことになったマナとノウェ。<br>  封印騎士団の追撃を受けながらも、二人は錆の町に到着する。<br> <br> <br>  錆の街には既にノウェたちの手配書が届いているらしく、二人は街中で<br>  盗賊まがいの賞金稼ぎから襲撃を受ける。<br>  これを軽くいなしたノウェたちは街の教会でマナを慕う協力者と接触、<br>  街の裏路地に向かうが、そこで賞金稼ぎに囲まれてしまう。<br>  人数と手段にうんざりしながらノウェは剣を構える。その時だった。 <br> <br> 「年頃の男女をよってたかっていじめるのは感心しねえぜ」<br> <br>  突如現れた体格のいい男の頭には、仰々しい鉄仮面がかぶさっていた。<br> 「なんだテメエは! 邪魔するんなら一緒にぶっ殺してやるぜ!」<br> 「ほー そいつぁ願ったりかなったりだ」<br>  仮面の男は上着をはだけさせ、素肌を賞金稼ぎたちに晒す。その瞬間、賞金稼ぎたちの顔が青ざめた。<br> 「ば……化け物!」<br>  賞金稼ぎは血相を変えて逃げていく。<br> 「化け物、ね……まぁ、大して外れちゃいない」<br> <br> <br> 「あんたが、仮面の男か?」<br>  騒動が落ち着いたところで、ノウェは男に訊いた。<br>  男はそれに答えずに、ノウェとマナをまじまじと見つめている。<br> 「……おまえ、もしかしてノウェか?」<br>  まだ名乗っていないのに自分の名前が出てきたことにノウェは少しだけ警戒を強める。<br> 「おっと、こいつをかぶってちゃわからんか」<br>  言って、男は素顔を二人に晒した。ノウェは、あっと声を上げる。<br> 「ユーリック! ユーリックじゃないか! 久しぶりだなぁ!」<br> <br>  男はかつてオロー率いる封印騎士団に身をおき、ノウェとも親しかった男ユーリックであったのだ。<br> 「積もる話もあるんだが、まずはここを抜け出さないとな」<br>  気づけば、三人の周りでは、武装した封印騎士団が包囲を狭めているところだった。<br> <br> <br>  ユーリックとともに、封印騎士団を蹴散らしながら街の外へ向かう三人。<br>  そして、街の出口でマナが何かに気づく。<br> 「……カイ……ム」<br>  街を包囲する封印騎士団に混じって、男は、その隻眼で刺すようにこちらを見つめている。<br> 「怖い……赤い竜……カイム……嫌……!」<br> 「マナ? どうしたんだ、しっかりしろ」<br>  ノウェがマナの異変に気づく。ユーリックも口を挟んだ。<br> 「チッ あいつはこの界隈で有名な"隻眼の男"だ。ハチ合わせるたぁついてねえ」<br>  迷っている暇はなかった。一向はレグナの背に乗り、追撃をかわして安全圏へ―――<br> <br>  道すがら、ノウェはユーリックに今までのいきさつを話した。封印騎士団を抜けたこと、<br>  マナとともに"封印"を破壊するたびをしていること。<br>  すると、ユーリックは二人に手を貸してくれるという。驚きを隠せない二人だったが<br>  その申し出を断る理由もなく、ユーリックの提案で近くの直轄区"光城砦"に進路を向ける。<br> <br> <a name="a492"></a></dd> <dt><a href="menu:492">492</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/07/11(月) 21:56:19 ID:wBeYGXvy</font></dt> <dd>  光城砦には、すでに封印騎士団による厳戒態勢がしかれていたものの、<br>  ユーリックの助けもあり三人は光城砦最深部"封印の間"に辿り着く。<br>  そこにはこの地の封印の鍵"聖宝玉"が安置されていた。<br>  と、そこへ守護者「ヤハ」が姿を現した。<br> 「ユーリック……ようやく私の元へ戻る気になりましたか」<br> 「フン、今のお前とは顔も合わせたくなかったんだがな」<br> 「変わりませんねユーリック、そんなあなたを、わたしは……おっと」<br>  ヤハは、契約を結んだ魔物"ノーム"を召還する。<br> 「この宝石……美しいでしょう、私のように……この輝きを、あなた方は奪おうというのですよ!」<br> <br> <br> <br>  分裂ノームの集団戦法、合体ノームの怪力に戦慄を覚えながら、<br>  一向は長い戦闘の末ノームを下す。<br> 「……負けましたか」<br> 「朽ちない輝きなんてないさ。昔のお前なら、それくらいすぐに理解できたろうに」<br> 「ゴフッ……そうかもしれません、しかし、あなたの手にかかって死ぬのなら、わたしは……」<br>  聖宝玉は砕け、ヤハは息を引き取った。<br>  ユーリックは語った。昔はこんな奴じゃなかった、いい友人だったはずなのに……と。<br> <br> <br>  光城砦は攻略したものの、次の直轄区についてはヒントすらない状況。<br>  情報を得るために、一向は再び錆の街へと降り立つ。<br>  街の情報屋は、町で威張り散らす賞金稼ぎを懲らしめてくれたなら、直轄区の情報を教えてもいいと言う。<br>  街に侵入してきた封印騎士団ごと賞金稼ぎを一掃してのけた一行は、情報に従い聖都近くに進路をとった。<br> <br> <a name="a493"></a></dd> <dt><a href="menu:493">493</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/07/11(月) 21:57:24 ID:wBeYGXvy</font></dt> <dd>6章 &lt;暗雲&gt;<br> <br> <br> 「ネタを持ってる奴はここらにいるって言ったよな?」<br> 「……ユーリック、誰もいないみたいだぞ」<br>  情報屋の助言に従い、ノウェはかつてマナを追って訪れたことのある地を再び踏んでいた。<br> 「誰もいないなどということはないわ! ノウェ、やっと見つけましたよ!!」<br>  突如、一向はエリス率いる封印騎士団の伏兵に囲まれる。罠だったかとユーリックは舌打ちした。<br>  レグナの助けをかりながら、かつてない騎士団の大群を一向は退ける。<br> 「ノウェ、その女は18年前世界を危機に陥れた魔性の女なのよ!」<br> 「ウソだッ! マナが、そんなはずはない!」<br> 「本当よ! わたくしは騎士団の資料をすべて調べたのですから!」<br> <br>  大群に押されるままに、一向は空へと逃げ出す。その機逃がさじとばかりに、戦闘飛空挺を駆り出す騎士団。<br> 「ヒュウ、戦闘艇かよ! エリスのやつ本気らしいな」<br>  本気のエリスとて、空の覇者たるドラゴンとまともに向き合って勝ち目はない。<br>  艇は動力部を引き裂かれ、ゆっくりと速度を落としていく。<br> <br> 「ノウェ! 目を覚ましなさい! その女は……くっ、堕ちる!」<br> <br>  近くの街に降り立ったノウェは、マナを問い詰める。<br> 「彼女の言っていたことは本当です。わたしは、自分の中に過去を閉じ込めておくこともできなかった。<br>  今まで助けてくれてありがとう、ノウェ……さようなら」<br>  そういい残し、マナは走り去っていく。ノウェはその後を追うこともできずに、呆然とその場に立ち尽くしていた……<br> <br> <br> 次回 7章&lt;慟哭&gt;<br> <br> <a name="a494"></a></dd> <dt><a href="menu:494">494</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/07/11(月) 22:39:18 ID:wBeYGXvy</font></dt> <dd>第七章 &lt;慟哭&gt;<br> <br> <br>  マナを失い、目的を失ってしまったノウェ。<br>  ユーリックの提案に従い、とりあえず"明命の直轄区"に向かうことにした。<br> 「行方不明の守護者様も戻ってきてるかもしれないしな」<br>  と、ユーリックは笑った。<br> <br> <br>  明命の直轄区でノウェは、"隻眼の男"にとらわれたマナを発見する。<br>  マナの怯えように尋常ならざるものを感じたノウェは、マナの救出を決意する。<br>  ユーリックは隻眼の男"カイム"は俺に任せろという。マナはカイムが呼んだのか騎士団に連行されているところだった。<br> 「マナを失ったら、俺はッ……!」<br>  群がる封印騎士団を切り伏せ、ノウェは直轄区内をかけまわる。<br>  しかし騎士団の陽動作戦が功を奏し、マナは飛空挺で連れ去られてしまう。<br> <br>  レグナを駆り、マナを追跡するノウェ。マナを乗せた艇は聖都に降りていったようだ。<br>  ノウェとユーリックはそれを見届けると、すぐさま聖都に侵入する。<br> 「マナ! どこにいるんだ、マナ!!」<br> 「ちょっと静かにしてろ、敵が来ちまう」<br>  切り伏せた敵の一人を問い詰め、マナはジスモアが連れて行った旨を聞き出したノウェは<br>  一目散に怨敵ジスモアの部屋を目指す。<br> <br> 「騒々しいな。ノック位したらどうだ」<br>  ノウェ、ユーリックが部屋に飛び込んできたときも、騎士団長ジスモアはあくまでその高圧的な態度を崩そうとはしなかった。<br>  マナを返せといきまくノウェをジスモアは鼻でせせら笑う。<br> 「そんなことより自分の心配をしたらどうだ? ここでオローと同じ場所に送ってやろうというのだよ」<br> <br> <br>  騎士団長ジスモアの他を圧倒する剣技を、ノウェは紙一重で交わし、あるいは受けていく。<br> 「どうした? まだまだオローの足元にも及ばんぞ」<br>  あるいはジスモアの罵声を受けながら、ノウェは全力で足掻き、ジスモアに会心の一太刀を浴びせることに成功する。<br>  そのとき、城内に鐘の音が響いた。不適に笑うジスモア<br> 「あの音が気になるかノウェ。あの鐘が12回……つまりあと11回鳴ったときがあの女の処刑時刻だ。<br>  止められるか? ノウェ。あの女は城内のどこかにいるのだぞ」<br> 「くっ……」<br>  マナを引き合いに出されてはノウェは反論できず、ジスモアをにらみつけながらノウェは部屋を後にした。<br> <br>  またも切り伏せた敵を問いただし、マナが地下牢にいること、地下牢の場所を聞き出したノウェは<br>  果たしてその場所でマナと再会する。<br> 「マナ! 助けに来たよ!!」<br> 「ノウェ……? まさか、どうして……?」<br> 「感動の再会は後にしときな。今はここをずらかろうぜ」<br> <br> 「んじゃ、改めて明名の直轄区に向かうとするか。……気合入れて行こうぜ!」<br> 「マナは……これから何があっても俺が絶対に守って見せるから」<br> 「ユーリックも明名の直轄区へ……本当に、本当にそれでいいのね……」<br> <br>  一向は、あらためて明名の直轄区に降り立つ。守護者がいないとされる直轄区ではあるが、<br>  今は"封印の間"を目指すほかない。<br>  途中"命をささげる"三つの部屋の仕掛けに身を削りながら、一向は明名の直轄区、封印の間に辿り着く。<br> <br> <a name="a495"></a></dd> <dt><a href="menu:495">495</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグ・オン・ドラグーン2◆l1l6Ur354A</a></b></font> <font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size= "2">2005/07/11(月) 22:40:30 ID:wBeYGXvy</font></dt> <dd>  封印の間には、既にカイムが入り込んでいた。身構えるノウェ。<br> <br> 「ちょっと待った。あいつの狙いはこの俺だ。二人は下がっていてくれ」<br> 「どうして?」<br> 「明名の直轄区の鍵"聖花"の守護者がユーリック……あなただからですね」<br> 「……。まいったなぁ。種明かしは自分でさせてもらいたかったぜ」<br> <br>  驚くノウェに、ユーリックは自らの"罪"を語る。ノウェの父オローがカイムに殺された事件、<br>  あの現場にユーリックも居合わせていたこと、そこでユーリックはカイムによって死を免れない重傷を負ったこと、<br>  死を恐れるユーリックの前に契約を求める魔物"死神"が現れたこと、その代償としてユーリックは"死なない体"を得たこと……<br> <br> 「ノウェ……いいことを教えてやる。この地で俺が死ぬと、死神が俺の身体に入り込んで蘇生させる。<br> 死神と俺が一体化している時、それが俺の"本当に"死ねる好機だ。ノウェ……わかってるな?<br> この時を逃してくれるなよ? 俺が死ねば"鍵"も壊れる。おまえ達の進む道はこれしかないんだよ」<br> <br> 「駄目だ……ユーリックは仲間だ! 仲間を見捨てることはできない……カイムは俺が倒す!」<br> 「お、おい……!」<br> <br>  かつて世界を救った英雄、カイム。彼の繰り出す技はどれもノウェの創造を凌駕するすさまじいものだった。<br>  封印の鍵である聖花が捧げられるその部屋で、ノウェはカイムを全力で戦い、そして……<br> <br> 「やった……ついに、倒したぞ……!」<br> <br>  カイムが片ひざを付いたことでノウェは安堵し、緊張が急激に弛緩した。<br>  その機を狙ったものだったか、はたまたその驚異的な回復力をもってしてか、<br>  どうあれすぐさま飛び掛ってきたカイムに対してのノウェの反応は絶望たるものだった。<br>  やられる―――ノウェは死を覚悟した。<br> <br>  そこに、割って入ったのがユーリックだった。<br>  カイムの斬撃からノウェをかばって―――というよりは、ユーリック自身がそれを望んで―――ユーリックの体は、カイムの剣で蹂躙されてゆく。<br>  ユーリックが、体に取り付いた死神ごと切り裂かれつくしてから、ユーリックはとん、とカイムの体を押した。<br>  斬られながらもユーリックはカイムを崖に追い詰めていたのだ―――カイムは崖の下へと姿を消した。<br>  同時に、ユーリックの体も崩れ落ちた。<br> <br> 「やれやれ。もうちょっと落ち着いて話したかったんだがな……」<br> 「だめだ! 逝くな、ユーリック!!」<br> 「無茶言うなよ。人間生きる意味が罪を乗り越えるためだとすれば、俺はもう……じゅうぶんなんだ……。<br> ……ま、次はあの世でオロー団長にしごかれとくさ。はは……じゃあな……」<br> <br>  ノウェの腕の中で、ユーリックは息を引き取った。同時に、部屋に安置されていた聖花が静かに燃え始め、その姿を消してゆく。<br> <br> <br>  明命の鍵は壊された。残る封印はひとつ……<br> <br> <br> 次回 八章 &lt;波動&gt;<br> 今日はここまで。<br> <br></dd> <dt><a href="menu:355">355</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 01:53:35 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>第八章&lt;覇道&gt;<br> <br> <br>  最後の封印の鍵は"天時の塔"にあるという。ノウェとマナは最後の鍵を破壊すべく、レグナの背に乗る。<br> <br>  天時の塔上空で、騎士団の砲撃によりレグナは負傷してしまう。塔からはかなり離れたところで降ろされてしまう二人。<br> 「相手は二人!! 大群で囲めばどうということは無い!!」<br>  団員の声が響く。雲霞の如く押し寄せる敵。二人はそれに臆することなく、血路を開くために走る。<br> <br> 「鬼神の如き強さ……た、たかが二人にッ!!」<br> <br>  二人の奮戦に、この地域でも虐げられていた人々が立ち上がる。人々とともに戦う二人は、ついに天時の塔にたどりつく。<br> <br>  塔の中で待っていたのはエリスと、そしてジスモアだった。俄然、投降しろというエリス。<br>  ノウェの耳にその言葉は入らない。目の前に親の仇、ジスモアがいる、ジスモアが何事か喋っているが、それももう聞こえない。<br> 「ジスモアッ!!」<br>  人と思えぬ速さで切りかかるノウェ。ジスモアは一瞬たじろぐも、エリスを楯に身をかわす。<br> 「!! ……エリスッ!?」<br>  最後まで使える部下だった、とジスモアは塔の奥に去っていく。呆然とするノウェ。<br> 「ノウェ……わたしはもう何も言いません……鍵はこの塔の最上階にあります」<br> 「喋るな……傷が開く」<br> 「いつもそうだった……優しいノウェ、そんなあなたを、わたしは……」<br>  エリスは静かに目を閉じた。もう、息をしていなかった。<br> <br> <br>  塔の奥に通じる扉には鍵をかけられてしまった。なすすべなく外に出た二人を、傷のいえたレグナが出迎えた。<br>  先ほどの傷の礼とばかりに塔備え付けの砲台に復讐すると、二人を天時の塔上部まで導いた。<br> 「わしに出来るのはここまでだ。あとは小僧、おぬしの力で切り開け」<br>  塔の中に侵入した二人は、そこで神官長セエレと出会う。今なら間に合う、鍵を壊すのを辞めろ迫るセエレ。<br>  相手にしない妹、マナ。<br> 「……騎士団を蝕む毒は、神官にまで及んでいましたか」<br> 「違う! 騎士団の利権とかそういう話をしているんじゃないんだ! 世界が終わってしまうんだよ!!」<br> 「セエレ……いつもそうなのね。自分は何もせず、ただ見ているだけ……」<br> 「マナ! 待ってよ、僕の話を聞いて!!」<br> <br>  セエレ直属騎士団の妨害にあいながら、ついに最上階、封印の間にたどりついた二人。<br>  二人を出迎えたのは、巨大な砂時計と、異形と化したジスモアの姿だった。<br>  人でなくなったジスモアの圧倒的な力を、ノウェはすんでのところで切り伏せる。<br> <br> 「グ……その眼だ、オローと同じ眼……俺を哀れみの心で見ている、惨めになる眼だッ」<br> 「終わりだな、ジスモア……」<br> 「終わり? ハハハ、確かにそうだ! 鍵を壊すのだろう? 俺の思い通りにならぬ世界など、貴様にくれてやる!」<br>  自ら砂時計に拳を打つジスモア。砂時計から砂があふれ出す。<br> 「そして思い知れ! お前が何をしたのか! これから何が起こるのか……フフフ、フハハハハハハ!!!」<br>  崩れ始める塔。塔ではない、地面が揺れているのか? 脱出する二人。<br> <br>  レグナの力を借り、塔の外に避難した二人は、そこで神官長セエレの姿を見る。<br> 「神官長、ご無事でしたか」<br>  駆け寄るノウェだったが、セエレの表情は暗かった。<br> 「封印が解けてしまった……このままでは世界が終わってしまう。マナ……君は、なんてことを」<br> 「……どういうこと?」<br> 「すべて本当のことだったってことさ。封印の鍵を維持するためには生贄が必要だったのも本当、<br>  生贄の帝国軍の人たちは本当の意味で殉教者だったんだよ。君はまた、18年前と同じ事をしてしまったんだ」<br> 「うそ……わたし、わたしは……」<br> <br>  同じころ、何処からともなく現れた赤い龍が、世界を次々と火の海に沈めていった。<br>  その瞳には理性のかけらも見ることは出来ず、ただ、人間に対する憎悪だけが―――<br> <br> <a name="a356"></a></dd> <dt><a href="menu:356">356</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 01:55:28 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>第9章&lt;復活&gt;<br> <br> <br>  赤い龍の姿を見咎めたレグナたちは、その追撃を決意する。<br> 「なんという疾さよ……ッ!」<br>  追いすがるレグナでさえ驚嘆の声を上げる。<br>  凄まじい怨嗟と攻撃をかいくぐりながら赤い龍に追いすがるうち、<br>  赤い龍はとある城へと降り立つ。<br>  そこは、かつて世界に再び封印が施された場所であるという。<br>  レグナは赤い龍に既に理性は無い。<br>  ただ、アンヘルという名前だけは聞き取ることが出来たと言う。<br> <br>  城の中庭に降り立った赤い龍を、ノウェは単身追ってゆく。<br>  やっとの思いで城の中庭に出ると、そこには龍のほかに先客が居るようだった。<br> 「やっぱり、あんたもいたのか。カイム」<br>  赤い龍を見る。うなり声を上げてはいるものの、今は落ち着いているようだ。<br>  倒すなら今しかないと、剣を構えるノウェ。<br> 「……!」<br>  カイムが無言でノウェを制す。と、アンヘルの首を、優しくなでてやる。<br> 「……ダレダ……オマエ……アタタカイ……ナツカシイ、コノ……」<br> 「カイムッ!」<br> 「ヴォオオオオオオオオ!!」<br>  突如覚醒したアンヘルが、再び空へと舞い上がる。ノウェを庇うようにとびすさったカイムは、腕を負傷してしまう。<br> 「く……レグナ!」<br> <br> <br> 「小僧。アンヘルを打ち落とすぞ」<br>  ノウェの心には迷いがあった。ノウェには、ある予感があった。<br>  魔物の死は契約者の死である。当然、アンヘルを倒せばカイムも死ぬ。<br>  ……カイムは、もしかしてアンヘルのために戦っていたのでは?<br>  ノウェの頭からは疑問が尽きない。<br> 「小僧。カイムからの伝言だ。……生意気にもわしに念を飛ばしてきおった」<br> 「カイムが?」<br> 「"アンヘルを打ち落とせ"」<br> 「……」<br> 「"それが、アンヘル自身のためだ"……と。さて、どうする?」<br> <br> <br>  決意が固まったとて、封印戦争の勇士たる赤気流を倒すというのは容易なことではない。<br>  幾度となく死を覚悟しながら、それでもカイムは、アンヘルを倒すことに成功する。<br>  城の中庭に、力なく落ちていくアンヘル。<br> <br> <br> 「カイム……」<br>  命の付きかけているアンヘルを、同じく命の付きかけているカイムが迎える。<br> 「お前……苦しむわしの声を、幾度となく聞いたのであろう」<br> 「……」<br> 「わしを救うためと、お前は戦っていたのであろう……お前と再び見えるときを、わしは、とても楽しみにしておったのに……」<br>  みなまで言わせぜ、カイムはアンヘルを優しく撫でる。二人の体が炎に包まれる。<br> 「もう、よいのか?」<br>  カイムは微笑んで応える。舞い上がる炎。<br>  赤き龍と、隻眼の剣士は、ゆっくりとこの世から姿を消していった。<br> <br> <a name="a357"></a></dd> <dt><a href="menu:357">357</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 01:56:27 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>第10章&lt;崩壊&gt;<br> <br> <br>  それを見届けると、ノウェは聖都に進路をとった。<br> 「カイムは、アンヘルにもう一度会いたかっただけなのか」<br> 「くだらぬ。人間ごときに心を許すからああいうことになる」<br> 「レグナ?」<br> 「さて、蟲が沸きおった。落とされるなよ小僧」<br> <br>  ノウェが聖都に来た理由。<br>  セエレなら事態を収拾する術を知っているかもしれないという期待感からだったが、<br>  それはセエレの不在という形であっさりと裏切られた。<br> 「あはは、みんな、みんな終わっちゃう」<br>  罪の意識からか、マナは塔での出来事以来壊れてしまっている。かといって置いていく事も出来ない。<br>  ……できるものか。<br> <br>  城から脱出する折、ノウェは見たこともない魔物が出現している様を目撃する。<br> 「これから、どうなってしまうんだ、世界は……」<br> <br>  マナは足手まといだから置いて行けと言うレグナにも耳を貸さず、ノウェは再び空へ―――<br> <br> <a name="a358"></a></dd> <dt><a href="menu:358">358</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 01:58:07 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>第11章&lt;神話&gt;<br> <br> <br> 世界を変える力がほしいともらすノウェに、レグナは"古の墓標"と呼ばれる場所を目指すことを提案する。<br> 「竜族に伝わる"種の書"……それが、真実を知るための鍵だ」<br> 真実を知り、力を得るためならばと、ノウェはそれを承諾した。<br> <br> 古の墓標では守り神"アークドラゴン"に襲い掛かられる。<br> ドラゴンに襲われるという経験に戸惑いながら、レグナたちは古の墓標の深部を目指して進んでゆく。<br> 「みんな、みんな燃えちゃうよ、おわりって、おしまいってことだよね?」<br> マナは相変わらずだ。<br> <br> 古の墓標の中で、ノウェは種の書の声を聞く。<br> ドラゴンが、かつて神と呼ばれる存在に位置していたこと。<br> そして、それを現在の神に追われたこと。<br> 封印戦争のその顛末をドラゴンの先祖は予見していたこと。<br> そこから"真人類"と呼ばれる人間が生まれること。<br> "真人類"こそがドラゴンを再び神の座に返り咲かせる存在なのだということ。<br> <br> そして、"真人類"がノウェ自身だということ。<br> <br> 「あの話を聞いたことが強さになるのか? レグナ、俺は力を得たのか?」<br> 「お前は力を何だと心得る? 本当に気付かぬか?」<br> 墓標の内部から脱出したノウェたちは、封印騎士団の飛行船を目撃する。<br> アークドラゴンに襲われているようだ。<br> 見過ごすわけにも行かない、ノウェたちは飛行船を援護する。<br> 飛行船は墓標に着陸した。<br> 「……エリス?」<br> 飛行船から出てきたのは、天時の塔で落命したはずのエリスだった。夢ではないかと疑うノウェを、エリスは一喝する。<br> 「あのような場所で死んでしまう私ではありません!」<br> エリスが生きていた。こんなに嬉しいことはない……が、こうなるとマナのことがもう見過ごせない。<br> ここにきてマナの精神状態はさらに危ういものになっている。<br> ノウェは願う。マナを守れる強さを。マナを救う力を。<br> <br> <br> 「……ここは?」<br> 如何なる奇跡によるものか、ノウェはマナの精神の内部へと導かれていた。<br> "愛して、愛して……愛してくれる?"<br> そこでノウェは、マナの生い立ちに付きまとう闇を目の当たりにする。<br> 他人のぬくもりを、愛を求めてやまない少女。<br> ノウェは叫ぶ。俺が君の居場所になる、君はここに居ていいんだ、と。<br> その刹那、彼女の心に巣食う"闇"が、具現化して襲い掛かってきた。<br> 「マナを返してもらう!」<br> 「できぬ。我が血肉なり」<br> <br> 「おのれ、オノレ、オノレレレレレ」<br> 何度か精神を侵食されかけながら、ノウェはマナの闇を打ち払う。<br> 「わたし、いいの? ここにいても、いいの?」<br> 心の中のマナが問いかける。ノウェの応えは決まっている。<br> おいで、俺が君の居場所になる―――<br> <br> <br> その一部始終を見ていたエリスは、わたしも腹を決めた、と語る。<br> ここにいないセエレは"約束の地"と呼ばれる場所で何かしら準備をしているのだという。<br> それをなすことが出来れば、世界を再び封印することが出来るのだと。<br> ノウェたちも、そこに向かうことにする。<br> <br> <a name="a359"></a></dd> <dt><a href="menu:359">359</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:03:05 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>第12章&lt;終焉&gt;<br> <br> <br>  異形どもの攻撃をかいくぐりながら、約束の地へと到達したノウェたち。<br>  エリスたちとともに行動しようとするノウェを、レグナが制する。<br>  選ばれし人間であるノウェには他にやるべきことがある。他の人間などどうでもいい、とレグナは切り捨てた。<br> <br> <br>  以下、エンディングAルート<br> <br> <br>  レグナの考えを否定するノウェ。<br> 「それは竜族の意思かもしれないが、俺の意思ではない。お別れだな、レグナ」<br>  力ずくでもノウェを導こうとするレグナは強攻策に出る。ノウェを炎に沈めて従わせようというのだ。<br>  レグナの繰り出す火炎を交わしながら、ノウェはレグナに一太刀を浴びせる。<br> 「フフフ……忘れておったわ。ハエも叩けば煩いことを」<br>  だが人の身の悲しさよ、空からの火炎にはなすすべもあるまい! レグナは空に舞い上がり、火炎の目標をこちらにとる。<br>  来る------その初撃を、セエレ率いるゴーレムが防ぐ。セエレは人の間で伝わる伝説を語る。<br>  伝説の中、ドラゴンが神にならんとする一説。それが、いままさにこのときなのだと。<br>  言い終わらぬうちから、東西、すべての空を覆い尽くすほどのドラゴンが、レグナのもとに集まってくる。勝ち誇るレグナ。<br> <br> <br>  レグナの火に吹き飛ばされるノウェ。駆け寄るマナ。<br> 「ずっと、救世主だなんて言われるのが嫌だった」<br>  痛みをこらえ、立ち上がるノウェ。<br> 「皮肉だな……今はただの人間なんていわれるのがこんなにも悔しい。なれるものなら、救世主になりたいと思ってる……」<br>  そっと口付けるノウェとマナ。瞬間、ノウェの"覚醒"が始まる。<br> <br> <br>  ノウェは、空を舞っていた。青き髪、翼の変わりに背負うは竜族の紋章。<br>  人間の姿を残しながら、その力は人も、契約者さえもはるかに凌駕しているような。<br>  人でない、しかし竜でもない姿。それは、紛うことなき"真人類"の姿ではなかったか。<br> 「来るか、ノウェ!」<br>  刃、あるいは牙を交えながら、ノウェは叫ぶ。<br> 「レグナ! あんたは俺を真人類として利用するためにしか育ててなかったのか! 俺は、あんたを親だと思っていたのに!!」<br> 「くだらぬ! ひとごときに心を許すから赤き竜のような恥ずべき末路を迎えるのだ! 我らと共に来い、ノウェ!」<br> <br> 「レグナああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」<br> 「ノウェェェェェーーーーーーッ!!」<br> <br>  ノウェの最後の一太刀が、レグナの体を貫いた。<br>  種の書は絶対ではなかったのか、と困惑するレグナ。<br> 「知らなかったか? 子は親を超えるんだ。いつの時代でも、どんな生物でも、そうなんだ」 <br>  くだらぬ、と言い残し、レグナの体は地面に堕ちてゆく。<br> <br> 「さよなら、レグナ。今まで育ててくれて、ありがとう」<br> 「倒した相手に礼か? フ……間抜けた奴よ。"父"に、似た、な……」<br> <br> <br>  ノウェはエリスたちの元に戻った。集まったドラゴンたちは、予言が違ったことを見届けると何処へなりと去っていった。<br>  しかし、崩壊していく世界は埋められない。途方にくれるノウェを前に、エリスは言った。自分が、封印の女神になると。<br>  訊けば、エリスが封印の女神の候補だという話はずいぶん前から決まっていたのだという。女神になるということは<br>  自らの"女"を捨てることと同義であり、エリスはノウェには切り出せずに居たのだ。<br>  それではまた、この繰り返しになってしまうと食い下がるノウェ。しかし、それ以外に世界を元に戻す手立ても見当たらない。<br> <br> 「ノウェ、あなたと騎士団で過ごした時間、本当に楽しかった。私のすべてだった。<br>  私を救うというのは、世界を救うというのと同じことになるの。だから、悲しまないで」<br> <br> <a name="a360"></a></dd> <dt><a href="menu:360">360</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:05:49 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd> 数日後。空は青さを取り戻し、魔物の姿もなくなった。<br> エリスは、全身に女神の烙印を施されると、神殿の奥へと姿を消した。<br> 「世界は平和を取り戻した、と人は言うのでしょうか?<br>  世界は再び、神の鎖で縛られたに過ぎません」<br>  一人の女性と人生を犠牲にして成り立つ平和など、とマナは歯噛みする。<br> 「でも、是が今の俺たちに出来る最良の選択なんだ」<br> 「そうですね……でも私たちにはまだ未来があります。<br>  エリスが普通の女性として戻ってこられる日を、私は待っています」<br> <br> <br> "異なる結末を望む者は険しい道を歩む"<br> <br> <a name="a361"></a></dd> <dt><a href="menu:361">361</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:07:35 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>エンディングBルート<br> <br> <br>  レグナの申し出を突っぱねるノウェだったが、エリスが封印の女神になろうとしていること、<br>  竜族の目論見がうまくいけば封印の女神の必要がなくなるという言葉に心が揺らぐ。<br> 「神がいなくなれば、そもそも封印がどうしたという話でもなくなるのだ。封印をつかさどっているのは、つまるところ神なのだから」<br> 「それが本当なら、やってみる価値はあるかもしれない」<br> <br>  レグナに連れて行かれた先は、約束の地の奥深く、そこには巨大な"卵"のような物体が鎮座していた。<br>  骨の棺、レグイナはそう言った。この神の創造物を逆手にとって、ノウェを覚醒させるのだと。<br> 「なんて禍々しい……これは、人をゆだねるべきものではない」<br> エリスが思わず洩らす。<br> 「さよう。これは本来この世に存在するべきものではない。神の玩具が、神への尖兵を生み出すというわけよ」<br> <br> <br>  棺を"起こす"ために棺と戦闘を始めるノウェとレグナ。<br>  棺の秘める圧倒的な力の片鱗を垣間見ながらも、<br>  二人は棺の破壊に成功する。<br>  が……棺の中から生まれた光球が、エリスの体を捉える!<br> 「まずい! あれに飛び込め、レグナ!」<br>  エリスは動けない。レグナも間に合わない、万事休すか……?<br>  そこへ、エリスを押しのけて身代わりになる姿。<br> 「わたし……そう、わたしは、このために……神様」<br> 「マナッ!?」<br>  マナを包み込んだ光球はそのままマナごとはるか上空へと消え去った。<br> 「あの女、私を庇って……わたしは、殺そうとまでしたのに? あの女を……どうして?」<br> 「レグナ! 追えるか?」<br> 「上か、やむをえん、捕まっておれ!」<br> <br> <a name="a362"></a></dd> <dt><a href="menu:362">362</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:09:50 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>  上空に出たノウェは、そこで神の兵と化したマナを見る。<br>  その姿は神々しく、しかし、個々のパーツはマナを思わせる何かを持っていた。<br> 「マナ! マナ、判るか!!」<br> 「無駄だ小僧、やるしかない……やらねば、喰われるのはわしらぞ」<br> <br> "マナ"の容赦のない攻撃を前にも、ノウェは退かない。ここでマナを失っては、自分は、何のために?<br> <br>  幾度とない攻撃に、"マナ"の動きが止まる。止めを刺そうとするレグナ。<br> 「俺には……俺には出来ないッ!!」<br>  絶望するノウェ。出来るはずがない、マナを、俺が……<br> (ノウェ……)<br>  ふいに、頭の中に響いてくる声。ノウェは顔を上げる。そこに、マナがいる気がしたから。<br> (これが私の運命だったの、ノウェ。だから、君は生きて)<br> 「まさか……待て、マナ、駄目だぁッ!」<br> (さようなら、ノウェ。君に逢えて、よかった)<br>  漏れ出す光。飛散する"マナ"の姿。おそらく自爆したのだろう。<br> 「恐ろしい女よ……"神"を欺きおった……」<br> <br> <br>  地上に降りたノウェを、エリスは待っていた。<br> 「あの女に助けられた……わたしは、あの女を憎んでいたのに……やはり、私が女神になってさえいれば!」<br>  そんなことを言うな、とノウェは諌める。マナは自分の使命を全うして逝った。自分たちが生きているのは、まだやるべきことがあるからなのだ。<br> 「然り。神との戦いもまだ始まったばかりぞ。まだ玩具を壊した段階に過ぎぬ」<br> <br> <br>  ドラゴンは、神竜族としての歴史を忘れず、血の記憶を尊んで生きてきた。そして、神という存在をも凌駕しようとしているわ。<br>  真人類という強力な武器を携えて。<br> 「世界が神という鎖から解き放たれるためなら、俺は武器にだってなるさ」<br>  ……マナの死をかけた願いは、本当にそこにあったのかしら。今となっては、もうわからないけれど。<br>  私たちに残されているのは戦。その、戦いの荒野だけ。<br> <br> <br>  ラストシーン。レグナ・ノウェ率いるドラゴンの軍勢が、空の果てめがけて進軍している。そこには、エリスの姿もある。<br>  進む先には神の軍勢、異形の軍隊が待ち構えている―――<br> <br> <br> "異なる結末を望む者さらなる困難の道を歩む"<br> <br> <a name="a363"></a></dd> <dt><a href="menu:363">363</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:12:42 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>エンディングCルート<br> <br> <br> (まずエンディングBルートに準拠し、骨の棺と戦う。<br>  が、マナは飲み込まれず、光球を防ぐことに成功する。<br> その後エンディングAルートの流れを通ってレグナと戦闘。<br>  これが終わるまでの流れは上記と変わらない)<br> <br> <br>  父という存在を超え、神をも打ち破り、マナたちの元に還ってきたノウェ。もう女神にならなくてもいいと喜ぶエリス。<br> 「神も竜もいない、まったく新しい時代の幕開けですね。それが明るい世界になるか、業火に沈むかは、ぼくたち次第ですが」<br>  まっさらな世界を共に始めようというマナ。割ってはいるエリス。言い争う二人。<br> 「マナはぼくにあんな笑顔を見せてくれない。羨ましいですね」<br> 「大丈夫ですよ、新しい未来は今から作っていくんですから」<br> <br>  封鎖された直轄区、復旧されていく世界がボイスキャストと共に映し出されていく。<br>  そのラスト、丘の上で、ノウェとマナが手を繋いで立っている。<br> <br> <br>  何処までも広がる草原。その上を、ドラゴンの影が滑ってゆく。<br>  カメラは上空を見上げるが、そこには吸い込まれそうな青空だけが―――<br> <br> <br> THE END<br> <br> <a name="a364"></a></dd> <dt><a href="menu:364">364</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">ドラッグオンドラグーン2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:16:47 ID:sVZXG4IS</font></dt> <dd>以上でした。レスも期間も長くなって申し訳ない。<br> Bルート序盤が多分確実に間違ってるのでどなたか保管のお願いしたい次第。<br> 3週目のセーブデータしか残ってないんだよおおおおorz<br> <br> <br> ていうか一個でいいから新宿ルートみたいなド級の電波がほしかったなあ。<br> Bルートイラネ。エリス救済にしてももう少しひねってほしかった。<br> Cルートも大半のデモが使いまわしだしなぁ。<br> <br></dd> <dt><a href="menu:366">366</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:32:41 ID:E8RSEJn6</font></dt> <dd>DOD2の人乙<br> <br> 前作でブラックドラゴンで飛び去った人(名前忘れた)は出てこないの?<br> <br> <a name="a367"></a></dd> <dt><a href="menu:367">367</a> <font color="forestgreen"><b><a href= "mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font> <font color="#808080" size="2">2005/08/11(木) 02:37:46 ID:EzoYeCR4</font></dt> <dd>(イウヴァルト+フリアエ)×再生の卵=ノウェ<br> <br></dd> </dl>

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