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<p><strong>DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~</strong><br />
part12-47~58,652~661、part13-170~178、part14-318~325,504~509,511~513、part19-692~700,716</p>
<hr /><dl><dt><a>47</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:38:03ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>アバチュー2逝きますよ…続くんで一回ごとに短いver入れますよ…<br /><br /><a name="a48"></a></dd>
<dt><a>48</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:42:19ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>プロローグ<br /><br />
森の中の小道を子供たちの一団が駆けていく。<br />
「シエロ、ヒート、あんまり走ると危ないぞ」<br />
最後尾の二人にその更に後ろから保護者らしい若者が声をかけたが、ヒートと呼ばれた金髪の少年は、<br />
一旦は立ち止まったものの、「だって、サーフとセラが先行っちゃうんだ」と言うが早いか、<br />
ドレッドヘアの少年の後を追って走っていってしまう。<br /><br />
苦笑しながらその後姿を見守る青年に、おとなしく腕を引かれていた少年が、<br />
潅木の葉を摘みながら問いかけた。<br />
「ねぇフレッド、葉っぱは何からできてるの?」髪の色こそ違うものの、<br />
思慮深そうな眼差しは「誰か」を思い起こさせる。<br />
情報…、と言いかけたフレッドは、しかしすぐに「みんなの想いで出来ている」と言いなおす。<br />
人は世界が何で出来ているのか探ろうとする余り、それを単に情報としか定義できなくなったが、<br />
本当はこの森も人も全て同じ、みんなの想いで出来ているのだと。<br /><br />
自分たちを構成する、受け継がれた想いの循環。子供には難解すぎる話に<br />
困惑顔の少年と、その脇の茶色の髪の少女の肩を優しく抱きながら、フレッドは<br />
かつて世界が死にかけていた時のことを思い出していた。<br />
黒い太陽に支配され地獄と化したこの星に、それよりもっと過酷な地獄、<br />
お互いが喰らい合わなければ生きていけない世界から、彼らが現れたときのことを。<br /><br /><a name="a49"></a></dd>
<dt><a>49</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:44:31ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>テーブルの下で、片耳だけ銀色をした黒猫が顔を洗っている。<br />
廃墟化したアパートの一室。<br />
「じゃあ、ガラクタだらけのここがニルヴァーナだって言うの?」<br />
アルジラの問いに、窓の外を油断なく窺いながらゲイルが頷いた。<br />
彼らが目指していた「天上の楽園」ニルヴァーナは、実際に辿り着いてみれば<br />
人を石化させる黒い太陽と降り止まぬ銀の雨の違いを除けば、<br />
彼らが以前居たジャンクヤードと大して違いのない、荒廃した世界だった。<br /><br />
両方の世界をつなぐ門の崩壊の影響でバラバラにニルヴァーナに飛ばされた彼らたち六人のうち、<br />
サーフ、アルジラ、ゲイルは幸いお互いめぐり合うことが出来たがヒートとシエロ、それにセラの行方が<br />
未だに知れない。まずは彼らの知るべき全ての情報を握るセラを探すことをゲイルが提案する。<br />
そのためには今、彼らを狩るためにこの地下街一帯を占領している謎の白い装甲服の集団を<br />
何とかしなければならない。<br /><br />
この世界のことについてまるきり無知なサーフ達に、アルジラが道中で白服から助け出した少年、<br />
フレッドとその友人が呆れ顔で説明するには、あの白服は奇病を最初に発見した「マルゴ・キュビエ」率いる<br />
「カルマ協会」の兵隊で、最近悪魔の力を手に入れた彼らは人間を狩り、餌にするために<br />
沖合いの「カルマ・シティ」からやってくるのだという。<br />
奇妙なことにそんな残虐な真似をしていながらなぜか彼らは人類の救世主を自称しているらしい。<br /><br />
セラたちはそこに囚われているかも知れない。<br />
カルマシティへの進入経路を知る人物に心当たりがあるというフレッドに、<br />
ゲイルは同じくカルマ協会に囚われているフレッドの仲間の救出と引き換えにその人物への紹介を頼む。<br />
「騙そうとしてるんじゃないだろうな。大人は当てにならない」とフレッドは疑いの目を向けたが、<br />
同じ協会と戦うという戦士同士の交渉に子供と大人の違いが関係あるのかとゲイルが言うと、<br />
彼の答えに好感を持ったらしく、その人物、ロアルドの元への道案内を約束してくれた。<br /><br />
地下街の北。今にも崩れそうな大扉に向かって悪魔が体当たりを繰り返している。<br />
その背中にフレッド達は「いつまでも好き勝手やってんじゃねーぞ!」と威勢のいい罵声を浴びせたくせに、<br />
カルマ兵たちが振り返るとすかさず背後のサーフ達の影に隠れてしまう。<br />
「この子調子いいわね。シエロみたい」<br />
アルジラが顔をしかめ、サーフ達は敵に向かって足を踏み出した。<br /><br />
大扉の内側で扉に頬を張り付かせ、外からの合図に耳をすませていた少女が顔を輝かせた。<br />
フレッド達が協会をやっつけたという少女の言葉を言下に否定したものの、<br />
レジスタンスの男は脇の銀髪の男に物問いたげな視線を向ける。<br />
懐から取り出したウイスキーケースの中身をあおると、銀髪の男は<br />
「どうせいつかは破られる」と投げやりに呟き、扉の方へ顎をしゃくった。<br />
無数の銃が向けられる中、大扉がゆっくりと開いていく。<br />
やがて現れたサーフ達を見て、捕らえた奴の仲間ではないか、と<br />
副官らしき鳥打ち帽の男に耳打ちされた銀髪の男は一つ頷くと、侵入者たちの方へ進み出た。<br /><br /><a name="a50"></a></dd>
<dt><a>50</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:46:34ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>シエロを保護しているという銀髪の男、ロアルドに従って、<br />
レジスタンス組織「ローカパーラ」のアジトにやってきたサーフ達。<br />
アジト奥の一室。<br />
ロアルドがアルジラのグラスに酒を注ぐ手は、細かく震えていた。<br />
フレッドの父親の死後、以来父親の友人だった自分が彼の後見人をつとめているという<br />
ロアルドの話をさえぎって、ゲイルがシエロはどこだ、と切り口上に尋ねる。<br />
協会のスパイかと思ったので別室に控えてもらっている、と含みありげに答えて<br />
ロアルドは結局サーフ達をシエロに引き合わせることはなく、<br />
かわりに彼は初めて飲む酒にむせるアルジラに、あきれたような溜息をついた。<br />
「とても、作り物には見えないな」<br /><br />
彼の奇妙な言葉をいぶかる一行に、ロアルドは驚愕の事実を語る。<br />
サーフ達はテクノシャーマン…セラが協会の命令により作り出したプログラムで、<br />
協会は同じくセラに作らせたコンピュータ上の仮想空間…ジャンクヤードで彼らをお互いに争わせ、<br />
勝ち残った最も優れたAIをチップに変え、兵士の脳にインプラントするつもりだったと言うのだ。<br />
その技術は神の知恵を盗んで作られたものだという。<br />
「神?」おうむ返しに問うアルジラに、ロアルドは「神」を発見した人物について説明する。<br /><br />
二十世紀末…今から三十年ほど前から注目されだした異常現象。<br />
突然変異病原体の蔓延、異常気象、環境ホルモンによる生態系の破壊、そしてキュヴィエ症候群…<br />
約十年前、全ての異変が太陽から光にまぎれて降り注ぐ情報のせいだと看破した天才がいる。<br />
国際環境保健機構に所属していたジェナ・エンジェル。<br />
彼女の発見、それは太陽が巨大な情報集積体であり、太古の昔から地球環境に影響を与え続けてきた、<br />
いわば地球生物にとっての神であるということの発見に他ならなかった。<br /><br />
ロアルドが示したモニター上のエンジェルの写真にもサーフ達は驚かされる。<br />
集合写真の中にいる、国際環境保健機構時代のエンジェル。<br />
眼鏡をかけた金髪の青年の隣で柔らかく微笑んでいる彼女は、<br />
彼らがこの世界に来ることになったきっかけを引き起こした女性。あの教会塔の上で<br />
己の力を誇示するかのようにジャンクヤードを消去し、更に彼らの生存を楯に<br />
何事かをセラに強請していた女だった。<br /><br /><a name="a51"></a></dd>
<dt><a>51</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:48:12ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>彼女が発見したその「神の知識」がなぜ戦闘用強化AI等というものに利用されているのか。<br />
人はどんな知識や情報も殺し合いの道具に使う生き物だ。<br />
神の降らす災厄から逃れる為に設立されたカルマ協会もその例外ではなく、<br />
神と交信し、その情報を引き出せる電脳の巫女、テクノシャーマンを作り出した協会は、<br />
その軍によって歪んだ力で、更にサーフ達"煉獄の子"を生み出した。<br /><br />
セラを守ろうとしたサーフ達の感情は単なる創造主を保護するプログラム、<br />
セラのサーフ達に対する感情は芸術家が優れた完成品に抱く愛着のようなものに過ぎない。<br />
嘲るように言うロアルドの言葉を「嘘だ!」アルジラの叫びが断ち切る。<br />
怒りで悪魔化しかけた彼女を見て、ロアルドの脇に控えていた副官アディルが腰の銃に手を伸ばす。<br />
それを素早く見咎めたゲイルがアルジラを鋭く制止。<br />
我に返り、ソファに腰を下ろしたアルジラを横目にゲイルは話の先を促した。<br /><br />
情報の出所は協会内部にいる協力者。<br />
情報の真偽は彼から送られてきた悪魔化ウイルス…複雑な波動を持つ電磁波を試射された者が、<br />
サーフ達同様悪魔の力を得たことから明らかだという。<br /><br />
更に畳み掛けるようにロアルドは語る。五年前…突然太陽が黒化し、人を石に変える存在になった日に、<br />
何が起こったか知りたくはないか、と。<br />
続いて彼はモニター上にある人物のデータを映し出した。<br />
ジャンクヤードを作り出したアスラ計画の責任者、テレンス・E・ベック大佐。<br />
五年前の「神が狂った日」に死んだ彼はまるで人相は違うが、かつてサーフ達がこの現実で死んだ、<br />
実在した人間だと断言した、「ジャンクヤードのバロン・オメガ」だという。<br /><br />
現実で死んだはずの人間が仮想空間にいる謎、彼とサーフ達の因縁。<br />
その全てを知っているのはテクノシャーマンだと、更に焚きつけるロアルドを、<br />
回りくどい言い方はよせ、とゲイルが冷たく睨んだ。<br /><br /><a name="a52"></a></dd>
<dt><a>52</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:49:20ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>要するにロアルドたちの狙いはテクノシャーマン、セラの身柄だった。<br />
世界を元に戻す為、サーフ達にセラを協会から奪還しろというのだ。<br />
保護していると言いながらシエロに会わせようとしないのは、彼を人質として利用しようとしていたからだった。<br />
「足りないな」ゲイルが鼻で笑い、続いて先刻の話に出てきた悪魔化する力を得た人間の同行を要求すると<br />
「我々に化物になれというのか!?」とアディルが叫んだ。<br />
その言葉と態度にゲイルの目つきが鋭くなる。<br /><br />
「本音が出たな。…俺はお前たちに来いとは言っていない」<br />
低い声に、ロアルドとアディル、二人が目を見張った。<br />
アディルの嫌悪もあらわな態度からして、悪魔化の力を得たのはロアルドでもアディルでもない。<br />
その人間をこの場に連れて来ないという事は、何か特別な理由がない限り、<br />
ローカパーラの中にも居ないということになるし、そういう者がいるのかどうかは分からないが<br />
協会側の、まだウイルス感染していない人間を捕らえて試射した様子でもないらしい。<br /><br />
ゲイルは別にわざわざ新たに「化物」を作れと言った訳ではない。<br />
悪魔化できる人間…つまり化物が既にこのアジトにいるようなことを匂わせたにもかかわらずの、<br />
アディルのこの言葉…それはつまり…<br />
「殺したな」<br /><br /><a name="a53"></a></dd>
<dt><a>53</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:50:55ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>「本当かよ…ロアルド!?」<br />
ゲイルの断罪を聞いたフレッドの非難の視線にロアルドは動揺し、<br />
いつ自我をなくすか分からない、仕方なかったと言い訳のように言う。<br />
それを見て、お前たちは誇りとは無縁のようだ、と吐きすてたゲイルに、<br />
「AI風情が何をぬかすか!」<br />
激昂したアディルがついに銃口を向けたが、ゲイルの言葉は止まらなかった。<br /><br />
彼らに生まれた感情ゆえに、人食いの化物となった彼らのこれまでの道程は、より壮絶なものとなった。<br />
ゲイルにはそれが、作られたもの、ただのプログラムの産物だなどと、<br />
到底認められるものではなかったのだ。<br />
更に生きる為、自分自身の力で戦って来た彼らを「AI風情」と嘲り、「化物」と恐れる目の前の人間は、<br />
卑怯にも人質を取ってゲイル達に戦いを脅迫し、自分自身の力で戦うことを放棄したばかりか<br />
仲間さえも実験台に使って「化物」に変え、殺したのだ。<br /><br />
「これがニルヴァーナの人間か。ルーパが報われん」<br />
遣り切れなさに目を伏せたゲイルの肩にサーフが手を置いた。<br />
「そうだな、お前の考えているとおりだ…条件を飲もう」<br />
頷くとゲイルは立ち上がり、軽蔑の視線でロアルドたちを一瞥すると、<br />
セラ奪還の道を探して仲間達と共に部屋を出て行く。<br />
あくまでロアルド達の為ではなく、サーフ達とセラ、フレッドの為に。<br />
なすすべなくそれを見送っていたフレッドが、燃えるような目でロアルドを睨みつける。<br />
ロアルドは目をそらし、グラスの中身を一息に飲み干してテーブルに叩き付けた。<br /><br /><a name="a54"></a></dd>
<dt><a>54</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:53:39ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>無機質な白い部屋の中、ビープ音が規則正しく流れている。<br />
モニターに向かう医療作業員たち。<br />
移動式の生命維持装置の水中にマスクを付けられた全裸のセラが横たわっている。<br />
エンジェルとマダム・キュヴィエがガラス壁の外からそれを眺めていた。<br /><br />
「もう五年も経ったのね。あんなに小さかったのに」と痛ましげに言うキュヴィエに<br />
「中身はまだ七歳の子供です」エンジェルがそっけなく返す。<br />
サーフ達を失ったせいで頑なに従うことを拒否するセラを服従させるため、<br />
前部前頭葉の切除…思考、感情の除去手術を行うと言うエンジェルにキュヴィエが問う。<br />
エンジェル自身の精子と卵子から生まれた実の娘だから、セラを憎んでいるのかと。<br />
否定するエンジェルに、最近のあなたは全てを憎んでいるのではないかと心配になる、というキュヴィエ。<br />
エンジェルは片手をあげて見せて、確かに自分は変わったが、まだ人間を見捨てたわけではないと返した。<br /><br />
「ならいいの。手術は必要ありませんよ」<br />
言って踵を返すキュビエの背に、驚いたエンジェルが<br />
「ニルヴァーナ計画を先送りするのですか」<br />
責めるような声をかけると同時に、装甲服姿の協会の警備部長が駆け込んできた。<br /><br />
息せき切って説明するところによると、内部情報の漏洩が発覚したという。<br />
内通者の特定を全力で進めているが、どこまで情報が漏れたかもまだはっきりしない状態らしい。<br />
「まぁ。困ったものねぇ」<br />
言いながら背後のエンジェルに意味ありげな視線をよこすと、<br />
警備部長と共にキュヴィエは部屋を出て行った。閉まった扉を睨みつけながらエンジェルが呟く。<br />
「ばれたのはいい。だが、手術が必要ないとはどういうことだ」<br />
その時、かすかな鈴の音が響いた。<br />
はっとしてエンジェルは振り返ったが、そこには誰もいなかった。<br /><br /><a name="a55"></a></dd>
<dt><a>55</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:55:51ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>ローカパーラが内通者から得た侵入経路の情報に従って、<br />
サーフ達は今は使われていない海底ケーブルの通路を通り、カルマシティ内、<br />
捕虜収容所の真下まで来ていた。<br />
通路の終点で落ち着かなげに待っていた、協会の制服を着た男…<br />
ロアルドたちの言っていた内通者は、何故かサーフ達の姿を見て驚いた様子だったが、<br />
ゲイルに先を促されると彼らが取るべき作戦を説明し始めた。<br />
捕虜を解放し、その混乱に乗じて協会本部ビルにいるセラを奪取しろというのである。<br /><br />
ただ反乱を起こしても烏合の衆の捕虜ではすぐに鎮圧されてしまう。<br />
指揮は誰が取るのかとアルジラが問うと、思わぬ所から返事が返ってきた。<br />
「指揮は、ローカパーラが取ろう」<br />
一同が振り返ると、背後のドアからロアルドとフレッド、アディル、それに<br />
「おひさ」シエロが入ってくるところだった。<br />
目を見開くアルジラにロアルドが左手の甲を突きつける。<br />
「これでイーブンだろう」<br />
そこには彼女たちと同じ、悪魔に変じる力を持つもの特有の痣…アートマが刻まれていた。<br /><br />
ロアルドの陰から得意げにフレッドが姿を現す。<br />
あの後、彼はロアルドを、誇りを失ったものは悪魔以下だと散々にののしり、<br />
その酔いを覚まさせたのだった。<br />
罪滅ぼしもしなきゃならん、というロアルドを、アルジラは自分たちを協会に売る気ではないかと疑うが、<br />
ロアルドは自分がサーフ達に同行する、信用できなければいつでも殺していいとまで言い切る。<br />
彼の纏っているコートの左腕にはフレッドの帽子と同じ、<br />
サーフ達のトライブ「エンブリオン」のトライブカラーがペイントされていた。<br />
それでもまだ疑念の晴れないアルジラとは対照的に、ゲイルは「目を見ればわかる、というやつだ」<br />
ロアルドのことを信じることにしたらしい。<br /><br /><a name="a56"></a></dd>
<dt><a>56</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:57:08ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>収容所へ向かう階段を昇って行くサーフ達を見送った後、内通者の男は階段の陰に身を潜め、<br />
辺りを窺いながら無線機を取り出した。<br /><br />
「無線は使うなといったはずだ」<br />
協会本部。一人きりの広い室内にエンジェルの冷たい声が響いた。<br />
だが直後に冷静な声は驚きに跳ね上がる。<br />
「バカな。容れ物などなかったはずだ。データのまま出てきたとでも…」<br />
その時、エンジェルの脳裏を巨大な卵形をした施設の記憶が横切る。<br /><br />
しばしの沈黙の後、いつもの落ち着きを取り戻した彼女は部下に計画続行を命じる。<br />
「連中」にセラを奪還させるという計画を。<br />
無線を切った後、エンジェルは引き出しからリボルバー式の拳銃を取り出した。<br />
シリンダーを開くと六連式の銃倉の中には一発しか弾が残っていない。シリンダーを元に戻し、<br />
「そういうことか」銃を眺めながらエンジェルは一人ごちた。<br /><br />
「まったく、食えない婆さんだ…それでこそ、出し抜く甲斐もある」<br />
銃を片手に窓際へ歩み寄ったエンジェルは<br />
「こんな作り物…」<br />
邪悪な太陽の光から護られた外の景色を憎憎しげに睨みつけ、窓ガラスを殴りつけた。<br /><br />
続きます…まだロナウド加入…orz<br /><br /><a name="a57"></a></dd>
<dt><a>57</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:58:20ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>今回のあらすじ。<br />
1の最後でバラけた仲間。サ、ゲ、アがいきなり合流してる。<br />
セラ探す為アルジラが助けたフレッド少年がテロ組織ローカパーラに案内。<br />
江口保護ってるっちゅーロカパリーダーロアルド(アル中)が1のネタばらし。<br />
サーフ達はセラ(外見十六、七、実年齢七歳。エンジェルの娘。これはよそで分かる)が<br />
協会に言われて作った現実の兵士に乗っける為の戦闘プログラム。ジャンクヤードもプログラム。<br />
でもベック大佐現実にいるしサーフ達もいるって言うし謎知るにはセラ探さなきゃで<br />
ロカパ(リーダー始め皆悪魔嫌い)もセラが欲しいから江口人質で<br />
おまーらでセラ協会から拉致ってこいや言われてゲイルぶち切れ。<br />
でも言うとおりカルマシティの収容所下まで行ったらロアルド合流。<br />
フレッドに怒られて酔い覚めたんだってさ。そんで何か悪魔に変身できるようになってる。インドラ。<br /><br />
後エンジェル(ふたなり)は協会のボスのばーさん裏切ってるぽい。以上。<br /><br /><a name="a58"></a></dd>
<dt><a>58</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0319:02:17ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>あーすまん。上のベック大佐いるしサーフ達もいるっていうし、は訂正。<br />
ベック大佐現実にいたし(もう死んでるけど)<br />
サーフ達もいたって言うし(でも大佐おまえらも死んだって言ってた)<br /><br /></dd>
<dt><a>652</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:14:58ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>分岐があると知り分岐探して一ヶ月…すっかり新作じゃなくなってましたごめんなさい。<br />
しかも今回分では分岐の結果出てませんダブルごめんなさい。<br /><br />
んでは行きますアバタールチューナー2-。最後にまとめ蟻ですよ…<br />
ああ後分岐は最後面罵ーに関係すると思われるものしか出してません。でわそゆことで。<br /><br />
捕虜収容所に潜入したサーフ達だったが、牢入り口に足を踏み入れるなり収容所の所長に出くわしてしまう。<br />
戦おうとするも所長のクヴァンダが使う「惑いの墨縄」を受け、サーフ達は手もなく捕らえられてしまった。<br />
反乱を成功させるには、あの所長を何とかしなくてはならない。<br /><br />
先に潜入していたローカパーラ構成員により、驚くべき事にこの収容所が捕虜を収容するだけではなく、<br />
人肉缶詰に加工する為の工場でもあることが判明する。<br />
手引きを受けて牢から脱出したサーフ達は、牢内の他の構成員たちの協力を受けて、<br />
狂死した監視員の腐肉を使った缶詰を作り、それを食べて弱ったクヴァンダを倒した。<br /><br />
開放の喜びに沸く捕虜収容所。<br />
ゲイルは地面に座り込んでいるフレッドの傍に歩み寄っていく。<br /><br />
「子供じゃないからな…仲間がどうなったか、わかってるよ」<br />
肩に手を置かれ、フレッドはぽつりと呟いた。その手には血まみれの帽子が握られている。<br />
手の甲で涙を乱暴に拭って立ち上がったフレッドは、ワークパンツのポケットから小さな本を取り出した。<br />
「こんな葉っぱ、何の役にもたちゃしねぇじゃねぇか」<br /><br />
ページの間に挟まれていたのは、一本のオリーブの小枝。<br />
何気なく背後から覗き込んだゲイルの顔色が変わる。<br />
「誇り高い男になれ」夢で見た、居るはずもない息子にそうことづてて斃れた男が、<br />
同時にこうも言っていたのだ。<br />
その子は、オリーブの葉を持っているはずだ、と。<br /><br /><a name="a653"></a></dd>
<dt><a>653</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:16:30ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>死んだ父親に貰ったという平和の小枝を睨みつけて、フレッドは叫ぶように言った。<br />
「こんなのがあったってダメなんだ!…早く大人になって力をつけなきゃ」<br />
父親の形見を投げ捨てようと振りかぶった小さな手は、<br />
「フレッド」次の瞬間ゲイルの大きな手に掴みとめられた。<br /><br />
「ルーパ…父親からの伝言だ」<br />
しかし、続いてゲイルの口から出てきたのは、ルーパが残したものとは違う言葉だった。<br />
「おまえの父親は素直な子になって欲しいと望んでいた」<br /><br />
「親父を知ってるのか!?」<br />
振り向いたフレッドに、ゲイルは一言一言、噛んで含めるように「父親の伝言」を伝える。<br />
「その涙は誇りに思え。いいんだ、子供で」<br />
だが、今のフレッドにはその言葉こそが必要だった。<br />
涙を堪えきれなくなったフレッドはゲイルに飛びつき、堰を切ったように泣き始める。<br /><br />
アディルたちが起こした混乱に乗じてサーフ達は協会本部へ乗り込んだ。<br />
が、妙な事に警備兵の姿が見えない。誘い込まれているらしい事はわかったが、<br />
何にせよセラ奪還の為に先に進むしかない。上階へ上ると協会の特殊部隊が襲い掛かってくるが、<br />
途中で逃げ遅れた協会職員を捕まえて聞き出すと、彼らの行動は独断による暴走だろうという。<br /><br />
上層階ヘリポートで特殊部隊のキラーエリート、「トリブヴァーナ」の三人組に遭遇。<br />
一旦は叩き伏せたものの、上の階にまでしつこく追いすがってくる三人組。<br />
言葉の端々から察するに、どうも誰かに対するライバル心ゆえの行動らしい。<br />
再度トリブヴァーナを撃退。<br />
「あの連中、一体何と自分たちを比べている」といぶかしむゲイル。<br /><br /><a name="a654"></a></dd>
<dt><a>654</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:19:39ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>協会本部上層部、医務室。<br />
セラが入っていた生命維持装置を覗き込むサーフ達。だが装置の中は空っぽだ。<br />
その時、「セラなら、もういねぇ」<br />
唸るような低声が背後からかかった。<br /><br />
「なんだ、まだ懲りねぇ…」振り向きかけたシエロの鼻先を掠め、投げつけられた白服が地面に落ちる。<br />
ローカパーラに情報を流していた、あの協会職員だ。<br />
開かれたドアの前に険しい表情で立っているのは、<br />
行方不明だったエンブリオンメンバーの最後の一人、ヒートだった。<br /><br />
「ヒート、一体…」アルジラの問いかけを振り払うようにヒートは腕をふるい、火球を投げつける。<br />
咄嗟にアルジラを庇って地面に伏せるサーフ。<br />
突然の凶行に唖然としながらも、ロアルドはヒートのまとう禍々しさに秘められた悲しみを看破する。<br />
「血迷ったか!」<br />
ゲイルが静止しようと飛びかかったが「俺はまともだ!」腕一本で弾き飛ばされた。<br />
訳がわからず、困惑するサーフたちの背後でモニターが点灯し、<br />
「その子は私たちに協力してくれるそうですよ」マダム・キュビエの姿が映し出された。<br /><br />
キュビエは語る。「余りありがたくない理由で」サーフ達はセラにとって特別だった。<br />
だからヒートは彼女の元に帰ってきたのだと。<br />
そしてキュビエとローカパーラを共倒れさせる為にエンジェルが内通者の裏で糸を引いていた事、<br />
エンジェルがセラの父親であり、母親でもある生みの親だという事実を告げる。<br /><br />
そして明かされるキュビエの目的。<br />
人類は滅びに向かっている。だから人の種を未来に残す為、ジャンクヤードの実験で手に入れた<br />
悪魔化ウイルスを使って、環境に適応し、キュビエ症候群にかかる事のない悪魔の体を手に入れる。<br />
意識の完全な悪魔化はセラの歌によって防ぎ、人肉工場で安定した食糧供給を実現、<br />
そして協会の保つ秩序の元で生きる価値があるものとそうでない者を選別し、<br />
管理されたチューナーの社会、ニルヴァーナを築こうというのだ。<br /><br />
「貴方たちも帰っていらっしゃい。無用な殺し合いや、飢えに苦しむことのない、平穏な暮らしを約束しましょう」<br /><br /><a name="a655"></a></dd>
<dt><a>655</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:21:16ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「ひとつはっきりした…ここはニルヴァーナなんかじゃない」<br />
人を人とも思わぬマダムの提案に、ゆるゆると起き上がりながらゲイルが低い声を押し出す。<br /><br />
マダムの言う「ニルヴァーナ」は、彼の思うそれとはいわば対極に位置する代物だった。<br />
誰もが悲しまずに生きていける世界、誰もが楽しく暮らせる、仲間が争わずに済む世界。<br />
それこそが彼の信じるニルヴァーナだったから。<br />
「俺は、誇りに賭けてお前たちと戦う。自分の意思でだ!」宣戦布告のように指を突きつけるゲイルに<br />
「仕方ありませんね…」マダムは溜息をつき、「秩序を乱すバグの処理」をヒートに命じる。<br /><br />
背後のドアが開き、入ってきた警備員の一群を背に、<br />
ヒートはサーフを睨み付けて猛々しい唸り声を上げる。<br />
「もう、あの時のようにはいかねぇ…本気で来い、サーフ!」<br /><br />
戸惑いながらもヒートを退けるサーフ達。ヒートは一同の前から姿を消す。<br />
「お前は俺が必ず食らってやる!」という呪いの言葉を残して…<br /><br />
ヒートの裏切りの衝撃から醒めやらぬまま、追っ手から逃れてサーフ達は上階へと上る。<br />
最上階で彼らを待っていたのは、彼らがこちらの世界へ来るきっかけとなった人物、エンジェルだった。<br />
彼女は驚くサーフ達にジャイロの鍵を渡し、セラがラボにいる事を告げる。<br />
この奇妙な行動の理由を尋ねるゲイルに、<br />
エンジェルは「連中に任せていては過ちを繰り返すだけだ」と、<br />
セラ救出に関するこの「貸し」に対する見返りとしてマダムの抹殺を依頼する。<br /><br />
彼女の目論見。<br />
つまるところそれは全ての人間を悪魔化させ、お互いに食らいあう弱肉強食の「混沌」を作る事によって<br />
究極の進化を導き、生きる意味を知る「解脱」者を作ろうという事だった。<br /><br />
彼女の言わんとすることを的確に先回りして言い当てるゲイルを、エンジェルが忍び笑う。<br />
流石随一の論理回路を持つアスラ、副作用さえなければ、と。<br />
悪魔に侵された、その副作用として人間性を得たコンピュータプログラム。<br />
こんな気の利いたジョークがあろうか?<br /><br /><a name="a656"></a></dd>
<dt><a>656</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:22:24ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「それで、お前の企みにもセラが必要と言うことか」<br />
またしても正鵠を得たらしいゲイルの発言に<br />
「頭が働き過ぎるのも困りものだな。詮索はそれぐらいにしておけ」<br />
不機嫌そうに呟いてエンジェルが背を向ける。<br />
その脳裏には、彼によって呼び起こされた、ある記憶が浮かんでいた。<br /><br />
朱に染まる世界。血塗れの青年が息も絶え絶えに語りかけている。<br />
「ジェナ…誰も、恨むな…」<br />
彼を膝に抱いた彼女は、泣きながら震える声で懇願している。<br />
「一人にしないで。お願いよ、デイビッド…!」<br /><br />
警戒音にゲイルがハッと顔を上げる。<br />
マダム派の兵士にエンジェル派の防衛線が突破されたとの無線に<br />
「行け、ぐずぐずするな」物思いから醒めたエンジェルが肩越しに背後を振り返り、硬い声を投げた。<br /><br />
飛び去っていくジャイロを見つめ、エンジェルは満足そうに語りかけた。<br />
「行くがいい、セラの愛しい喰奴(クラウド)たちよ」<br />
セラを求める以上、彼らはエンジェルの思うがままだ。<br />
野望に満ちた視線が、ふと首にかかった指輪に落ちる。<br /><br />
ジャンクヤードが消滅したあの時。<br />
崩壊のショックに呆然と座り込むのみだった彼女に差し伸べられた、ゲイルの手。<br />
まっすぐに自分を見つめる彼の、その手を取った自分の手を見つめ、<br />
しかしエンジェルは詮無いことを、と言わんばかり、静かに首を振る。<br />
そんな彼女の背後でドアが乱暴に開かれた。<br /><br />
先頭の協会兵が反乱罪に対する「処分」を告げ、次いで一斉に向けられる武器。<br />
一旦は背を向けたまま両手を上げたエンジェルだったが、すぐにその肩は小刻みに震え始める。<br />
「誰があのウイルスを、構成したと思っている?」<br />
嘲笑混じりに言いながらエンジェルは振り向き、胸元のアートマ「メイルシュトロウム」を<br />
見せ付けるように彼らの眼前に晒した。<br /><br /><a name="a657"></a></dd>
<dt><a>657</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:24:41ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>ミサイルが上空を飛ぶジャイロに向かって飛んでいく。<br /><br />
暗転の後。<br />
撃墜されはしたものの、サーフ達は墜落までに何とかセラのいる「EGG施設」を擁する<br />
「ラボルーム・研究施設群」に辿り着いていた。<br /><br />
地下へ地下へと進んだサーフ達の背後に荒い息と共に立つ者がいる。<br />
ここにまで追いかけてきた「トリブヴァーナ」の一人、「三仕官・地」だった。<br />
一人きりの彼を不審に思い、他の仲間の行方を尋ねるシエロ。<br />
獰猛な笑みで答える「地」の口元が血に染まっている。<br />
「仲間を、喰ったのか…?」<br />
愕然とシエロは呟き、アルジラが思わず口元を押さえた。<br /><br />
自分たち人間が作り物に負けることなど、あってはならない。その為ならば仲間も本望だろう、という<br />
続く「地」の言葉がシエロを激怒させる。<br />
「てめえが、仲間なんていうんじゃねぇよ」<br />
シエロの周りに巻き起こった風をちらと見やり、ゲイルは「地」に問いかけた。<br />
仲間を喰らい、何を受け継いだのかと。<br /><br />
石化したサンプルを砕き、「力を」と答えた「地」にゲイルは首を振った。<br />
怒りに燃えるシエロが大股に「地」へと歩み寄っていく。<br />
「気の毒だ。俺たちはそれ以上のものを継いできた…貴様は、絶対にシエロには勝てん」<br /><br />
「これで勘弁しといてやる。どこへでも行っちまえ」<br />
「地」から奪ったラボのカードキーをひらひら振りながら、シエロが吐き捨てた。<br />
膝を折り、何故だと問いかける「地」を振り返るシエロ。<br />
「喰うだけが強くなる事じゃねぇんだ」<br />
そういい残してシエロは崩れ落ちる彼の元を去る。<br /><br />
「地」に止めは刺さない。<br />
仲間の事を考えながら生きられるとこまで生きる、それが「地」が背負ってしまった業だから。<br /><br /><a name="a658"></a></dd>
<dt><a>658</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:26:28ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>研究室の資料を探る中、ロアルドが疑問を口にする。<br />
エンジェルの目指す淘汰による「悟り」。それは言葉を変えれば「滅び」なのではないか、と。<br /><br />
途中、研究施設の内部で厳重に封印されたガラスの塊を発見。怯える研究員が言うには、<br />
その巨大生物の名は「メーガナーダ」。五年前「ヴァルナ」と共に発現した最凶の喰奴だという。<br /><br />
殺すしかなかったヴァルナと違い、何とか封印できたメーガナーダとEGGから得た情報を使って、<br />
エンジェルは悪魔化ウイルスを構成したのだった。<br />
更に詳しく五年前に起こった事件の事を聞き出そうとするサーフに、逃げ腰だった研究員が<br />
「お前が一番よく知っているんじゃないのか!?」と声を荒げた。<br />
そこの仲間と同じ顔をした同僚を喰い殺したお前が、と。<br /><br />
その後ろでモニターに流れる神話のデータベースを見ていたアルジラが、何故か顔を青ざめさせている。<br />
「メーガナーダ…魔王ラーヴァナの子、雷の精にして不死なる者。もうひとつの名を…冗談でしょ」<br /><br />
地下三十階、「EGG施設」。部屋と呼ぶには巨大すぎる室内に鎮座する、<br />
無数のケーブルに繋がれた巨大な卵。<br />
中央の通路を駆けて行くサーフ達を、監視所からマダムが無言で見つめている。<br />
その張り出したひさしの上。銀の瞳を瞬かせる片耳だけ色の違う黒猫の姿があった。<br /><br />
自分を呼ぶ声に、EGG内のプールから救い出されたセラは目を覚ました。<br />
気づくと懐かしい顔たちが自分を心配そうに見守っている。<br />
「サーフ!」とりわけ彼女が心を砕いていた銀の髪の青年を間近に認めたセラは、<br />
思わずその身体にしがみつき、硬く目を閉じた。<br />
「生きていたのね。私、みんな消えちゃったって」「喜ぶのは後だ」<br />
嬉しげに囁いたセラの言葉を、緊張したゲイルの声がさえぎった。<br />
彼の視線を追って振り向く一同。<br />
視線の先、彼らがやって来たドアが気密音と共に閉じ、そこに立っていたのは…。<br /><br /><a name="a659"></a></dd>
<dt><a>659</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:28:24ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「ヒート」不思議そうに問いかけるセラ。<br />
その時、辺りにマイクを通して、マダムの声が響き渡った。<br />
「セラフィータ、私に従いなさい」マダムの声は、諭すように訴える。<br />
巫女として神と人々の心を鎮める義務を果たし続けるならば、サーフ達は無事に帰すと。<br />
その間にも通路の両端でぶつかり合うサーフとヒートの視線。<br />
高まった緊張に押し出されるようにヒートが駆け出す。<br />
「待ちなさい!」慌てたマダムの制止も彼を押し止める事は出来ない。<br /><br />
戸惑うセラをゲイルに託し、立ち上がったサーフはまっしぐらに駆け寄ってくるヒートから<br />
少女の裸身を隠すように、その前に立ちふさがった。<br />
二人の距離が見る間に縮まる。<br />
背後に引かれたヒートの指が、一瞬で巨大な鉤爪を備え―――。<br />
ひさしの上で黒猫が力なく耳を伏せ、うちしおれて身を伏せた。<br />
鈴の音が響く。<br /><br />
ヒートに胸板を貫かれたサーフは、しかしながら彼をさいなんでいるに違いない<br />
激痛に耐えるような素振りさえ見せず、ただ黙ってかつての戦友を見下ろしている。<br />
「なぜ、避けねぇ」ヒートの問いに、微かに開いたサーフの唇が応えを返す。<br />
(ここで「仲間…だからだ」と「セラは…渡せない」の二択アリ)<br />
そのままサーフは不意を突かれたヒートのトライブスーツの胸元を掴み、有無を言わさぬ力で<br />
あとずさって行く。<br /><br />
自失したまま見守る全員の前で、彼らは開いたままだったEGG装置の扉を踏み越え、<br />
直後に高々と水音が上がり…「いやぁぁぁ―――!!」セラの悲鳴が周囲の空気を切り裂いた。<br /><br /><a name="a660"></a></dd>
<dt><a>660</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:29:40ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>見開かれた黒い瞳の奥で崩れ落ちる、ヒートと瓜二つの、しかし髪の色が違う白衣姿の青年。<br />
数歩離れたところから倒れる彼を眺めている黒髪の青年はサーフとそっくり同じ顔で、<br />
でもその頬に浮かんでいる微笑の邪悪さは、はっきり別人だと確信させるに足る程で…<br />
その光景を見ているのは今より幾分幼い容貌のセラ。<br />
視界を覆いつくすほどの生体ケーブルに囲まれて、<br />
だが破滅の引き金となった光景をはっきりと見てしまった証拠に、<br />
その眼差しは痛い位の驚愕と悲しみに支配されている…。<br /><br />
地響きを立てて作動していく巨大な装置。中に配されていたパラボラアンテナは一方向のみを向いている。<br />
黒猫が鈴の音と共に顔を上げ、頭上を見上げた。<br />
「は、HAARPが勝手に動いています」「馬鹿な、ケーブルに繋がれてもいないのに」<br />
上擦り声の報告を受け、マダムは顔を覆っていた手を下ろした。<br />
開かれた回線が映し出されるモニターは、同時にこちらからの有り得ない送信値を示している。<br /><br />
「五年前」を遥かに凌駕する量のある「情報」。それが、アラスカの施設を通して黒い太陽へと送信された後。<br />
都市中のありとあらゆる物が情報の光と化して渦を巻き、天へと昇り始める。…太陽に喰われているのだ。<br /><br />
悲鳴を上げて逃げ出した研究員を他所に、マダムはただ呆然とモニターに映る、<br />
喰われていく世界を見つめていた。<br /><br />
血臭に満ちた執務室。窓の外を振り仰いだエンジェルが僅かに口元を歪めて破滅の情景を眺めている。<br /><br />
絶え間なく鳴り響く警戒音。EGGに向かって駆け出すアルジラの腕を、ゲイルが掴みとめる。<br />
「退くぞ!」怒鳴りつける横顔に「サーフが!」アルジラは悲鳴のような声を叩きつけて抗う。<br />
「サーフは死んだ!」言い切って顔を伏せるゲイルに目を見開くアルジラ。<br />
「俺たちを生かすために死んだんだ!」断言するなりゲイルはショックに気を失い、<br />
ぐったりとなってしまったセラの身体を抱え上げる。<br /><br />
そんなたわ事は信じない。信じたくない。去っていく背中に目を閉じたアルジラは、<br />
しかしどうする事も出来ず、突き上げて来る想いから逃れるように顔を振ると、<br />
いらえのないEGGの水面に向かって、あらん限りの声でサーフの名を呼ぶのだった。<br /><br /><a name="a661"></a></dd>
<dt><a>661</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:32:40ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>今回のまとめ。<br /><br />
捕虜収容所(兼人肉工場)のボス(ウマ)にハアハア言われながらおっかけっこした挙句ゲリらせて倒したよ。<br />
でもつかまってたフレッドの親友とっくの昔に缶詰に。<br />
慰めようとしたゲイルはフレッドが1で出てたルーパの息子だって気づいたけど<br />
子供の無力に打ちひしがれる今の彼に「誇り高い男になれ」っつー父からの伝言は死者に鞭なんで<br />
「素直な子に。子供でいい」とウソ伝言。でも結果的にはこれでおk。<br /><br />
協会本部で協会のボス、マダムキュビエとモニタ越しに出くわす。<br />
マダムの主張=人間には存在価値があるのとないのがいるから<br />
協会が決めた価値ある人間を悪魔化させて、キュビエ病(石化病)から守ったるよ<br />
(悪魔化すると石化しない)んで価値ない人間=人肉工場で餌に。<br />
凶暴化したらセラの歌=これぞ協会の下の秩序ある理想郷(゚д゚)ウマー つまりロウ?(なのか?)<br />
出来るかそんなんゴルァすると裏切ってマダム側に付いたヒートけしかけて来る。<br /><br />
戦闘勝って(ヒート逃げた)上の階行くとエンジェルがセラの居場所教えてくれて<br />
そこまで行くためジャイロまで用意してくれてて代わりにマダムのタマ取ってこんかいゴルァ言われる。<br />
エンジェルの主張=この世は弱肉強食ですよ上からもらった秩序なんてイランですよ<br />
みんな悪魔化させてバトロワりますよ混沌ですよ。したら勝ち残った=進化した一番強いのが悟り開いて<br />
「解脱」れるよ(゚д゚)ウマー。(要するにカオス…なのか?)<br />
こっちの言う事も聞いてられるかゴルァ思うもののいつの間にかマダム派とエンジェル派が内乱になって<br />
ここにも飛び火してきて他に手もないんでジャイロくれ→脱出。でも途中で落とされた。<br />
けどセラいる施設にはしっかり着いてた。<br /><br />
EGG施設でついにセラと再会。でもそこに待ってたマダムが「セラフィータおとなしく巫女りなさい」<br />
んでまた襲ってきたヒートにサーフわざと胸グサー→ヒート「なぜだ」に二択で答えて<br />
サーフヒート道連れにEGGの中へサヨウナラ。セラ「イヤーーー」で気絶。<br />
記憶の中でヒートそっくりな人がぶっ倒れてサーフがそれ見ながら邪悪ニヤリ。<br />
現実ではアラスカのHAARP施設が勝手に作動した後地球の情報が光の渦と化して太陽にごちそうさま。<br />
マダム(゚д゚)ポカーン エンジェル(・∀・)ニヤニヤ<br />
ゲイル「サーフは死んだ!俺たちを生かす為に死んだんだ!」アルジラ「サーフぅぅぅぅ!」次回に続く。<br /><br />
いじょ。続きは三四日後にでも。<br /><br /></dd>
<dt><a>170</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:50:16ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>アバチュー続き。<br /><br />
ゲイルたちが去った後、EGG施設内。<br />
サーフ達が消えたプールの前で悲嘆にくれるマダムの姿があった。<br />
「なんという、これで人類もお仕舞…」<br />
近づく足音にも気づかず、くずおれ、両手で顔を覆った彼女の後頭部に銃口が押し付けられる。<br /><br />
乾いた銃声と同時に彼女が掛けていたサングラスが眉間から真っ二つに割れ、<br />
そのまま水中に前のめりに落ち込んだマダムから流れ出した血が、水面をじわじわと赤く染めていく。<br />
その様子を見るのも汚らわしいと言わんばかりにそっぽを向いたまま、<br />
エンジェルは柳眉を振るわせ吐き捨てた。<br />
「貴女は他人の心の機微に疎すぎる…人の歴史など、とうの昔に終わっていたのにっ…!」<br /><br />
「なんだってんだよ…!こんなの…ちっとも楽しくねーよ!」<br />
仲間同士で殺しあう、ありうべからざる事態に苛立ちを押さえられないシエロ。<br />
掛ける言葉をなくしてフレッドが背後のゲイルたちを振り返る。<br /><br />
ゲイルはロアルドに、恐らくタイムリミットであろう、太陽の光が本格的にシティに降り注ぐ<br />
日の出までにいまだ送信を続ける施設を止める手立てを尋ねた。<br />
EGGを壊そうと身を翻したアルジラを「それでは神を元に戻せなくなる」<br />
制止したロアルドは、「エネルギーの供給を止めれば、神のコピーといえど止まるだろう」と<br />
EGGに電力を供給している動力プラントの破壊を提案する。<br /><br /><a name="a171"></a></dd>
<dt><a>171</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:51:55ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>パワープラントはマダム亡き後、協会の支配権を完全に把握したエンジェルにより封鎖されていた。<br />
隔壁制御の為のパネルを破壊している兵士を倒したものの、<br />
この先の通路も同じ手段で破壊されているだろうことを予期して思案に暮れる一同。<br /><br />
その時ロアルドが、パネルの前へと進み出た。<br />
「破壊された回路に変わる何かが、断たれた電気情報を結べばいい。たとえば…」<br />
事も無げに言ったその左手のアートマが、眩い光を宿す。<br />
彼が左手を割れたパネルの内部に突っ込むのと同時に生じた、耳を聾せんばかりのノイズと、<br />
アートマが導いたかのような閃光が一旦室内を満たして消えた、一拍の後。<br />
地響きと共に、硬く閉ざされていた隔壁が開き始めた。<br /><br />
「すげえ」マヌケな姿勢で振り返ったまま、シエロは感嘆の声を漏らし、<br />
アルジラが低く口笛を吹き鳴らす。<br />
「"開け"という私の意志を、信号に乗せてみた」<br />
腕を端末から引き抜きながら種明かしをするロアルドに、<br />
「悪知恵だけじゃなくて、機転もきくのね」腕を組んだアルジラは、揶揄する風な声を投げた。<br /><br />
が、「手厳しいな」とロアルドが両手を広げると、<br />
「誉めてるの。…ちょっと見直したわ」彼女は優しげなウインクを返す。<br />
思いもしなかった相手の意外な言葉にロアルドは苦笑すると、照れたように視線を外して俯いた。<br />
「私のアートマは、ライトニングボルト…これぐらいなんともないさ」<br />
その様子を見やりながら、ゲイルがぽつりと一人ごちる。<br />
「なるほど"情報"か…電気信号も情報ならば、人の意思もまた然り…<br />
僅かだが、神とやらが見えてきたな」<br /><br /><a name="a172"></a></dd>
<dt><a>172</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:53:36ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>先行するロアルドらの後詰として奮闘する、アディル達ローカパーラに手を焼く協会兵。<br />
苦戦の報告を受けたエンジェルは<br />
「ローカパーラ(世界を守る神々)だけに、か」<br />
意味深な呟きを漏らした後、研究施設内のメーガナーダの開封を命じる。<br /><br />
「またとない相手だ。神話になぞらえて葬ってやれ」というエンジェルに、<br />
「あれ」ではテクノシャーマンをも殺してしまうのでは、と解脱を遂げられぬ可能性を恐れ、逡巡する兵士。<br />
しかしエンジェルの私を信じろ、必ずお前たちを導くという力強い言に、<br />
兵士はすぐに迷いを捨て、飛び出していった。<br />
その後姿を見送ったエンジェルは、周囲の兵に聞こえぬ小声で独白する。<br />
「無駄な事を。あの娘が望んでいる以上、もう止まりはしない。放っておいても長くはないが…」<br /><br />
幾つもの隔壁を開き、道を急ぐゲイルたち。<br />
その時ロアルドの腰で無線機が音を立てる。<br />
「アディルか。どうした」「神よ…なんだこいつは」<br />
回線の向こうに問いかけたロアルドの耳に届いた、アディルの震え声。<br />
次いで響く絶叫に「アディル、おいアディル!」慌てて呼びかけたロアルドは、<br />
彼に応えるノイズ交じりの不気味な声を聞く。<br />
「イン…ドラ…」<br /><br />
防衛線を「何かとんでもない奴」によって突破された事を悟ったロアルドは、<br />
さっき通り過ぎてきたばかりの隔壁を踏み越え、コンソールの前に立った。<br />
不安げな声を掛けるフレッドに<br />
「大丈夫だ。悪知恵には長けている。せいぜい引きずり回してやるさ」<br />
閉まり始めた隔壁の向こうからロアルドは硬い笑みを投げ、踵を翻す。<br /><br />
「ロアルド」その背中に、アルジラが声を掛けた。<br />
「エンブリオンの色は、敗北に染まらない。だから…」<br />
トライブカラーが染め抜かれたコートの左袖を振って彼女の言葉に応えるロアルドの後姿は、<br />
隔壁に遮られてすぐに見えなくなった。<br /><br /><a name="a173"></a></dd>
<dt><a>173</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:55:15ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>制御室。キーボードの上をでたらめに這い回るゲイルの指。<br />
迷った挙句ボタンの一つを押してみる。<br />
それで落ちたのは残念ながら施設の電源ではなく室内の光源だ。<br />
切り替わった非常灯の照らす薄暗い部屋の壁のモニターが瞬き、<br />
何の影響も受けていないアンテナの様子を映し出す。<br /><br />
「ムダよ。あれは神のコピーだもの。本当は、人間が作るエネルギーなんか必要じゃないんだわ」<br />
冷え冷えとした声が脇から掛かった。いつの間にか気絶から目覚めていたセラだ。<br />
「どうすれば止まるの」<br />
進み出たアルジラが強い調子で訊くが、セラは無言で首を振るだけだ。<br /><br />
状況を誰よりも把握している人物の言に、途方に暮れるゲイルたち。<br />
その時、「フレッド、聞こえてるか」ワークパンツのポケットから響いた問いかけに、<br />
フレッドは目を見開き、ポケットから無線機を引っ張り出した。「ロアルド!」血の跡が転々と続く通路。<br />
足を引きずりながら、送信は止まったかと尋ねるロアルド。<br />
「ダメだ。止まらないよ」こみ上げた涙で声を揺らすフレッドを<br />
「諦めるな!」と叱り付けるロアルドの声もまた、語尾が不明瞭に乱れている。<br />
ただしこちらは、感情のせいでなく跳ね上がる呼吸の為だ。<br /><br />
「まだ何か、手があるはずだ」<br />
新たな血の跡を残しながら、ロアルドはふらふらと曲がり角の陰に身を隠した。<br />
ぎこちなく壁に預けた背中に、次第に大きくなる振動が伝わってくる。<br />
居場所を尋ねるゲイルに応えず、加勢に向かおうとするアルジラを<br />
「無駄だ」にべもなく遮り、壁の向こうを振り返ったロアルドは、<br />
血塗れた腹を抑えた震える手のひらを、喘ぐが如く開閉させた。<br /><br />
「今の我々では…束になっても奴に敵わない」<br />
絶望的な事実を平板な声で告げる耳元に、地響きを伴った巨大な生き物の足音と、<br />
彼がその身に宿した雷帝の名を呼ばわる声が近づいてくる。<br />
「イン…ドラ…」<br />
うんざりしたように目を閉じ、首を戻したロアルドは、薄目の向こうに非常灯の点ったドアを見つけて<br />
目を見開いた。ややあって、荒い呼吸を会心の笑みで押さえつけ、<br />
わななく腕をあげた彼は無線機に語りかける。<br />
「…最後の悪知恵を思いついた」<br /><br /><a name="a174"></a></dd>
<dt><a>174</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:56:51ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>最後の悪知恵。それは動力プラントを暴走させ、追跡者ごと心中しようというものだった。<br />
早く逃げろと言い残し、不帰を覚悟した一石二鳥の計画を実行せんと、<br />
再びよろめきながら歩き出したロアルドを、泣きながら止めるフレッド。<br />
そんなかつての親友の息子に、ロアルドは静かに語り出した。<br />
「フレッド。君に、謝らなくちゃならん」<br /><br />
フレッドの父、グレッグが死んだのは自分のせい。臆病者の自分の責任だと。<br />
寄りかかるようにモニターに手を着き、振り絞るようにして光を生んだ手刀で回線を繋ぐ。<br />
「親友を見捨て…今まで…おめおめ生きてきた」<br />
やがて開いた扉の中によろばい入る彼の背後に、通路一杯を塞ぐほどの巨体を揺らし、<br />
メーガナーダが現れた。<br />
「ちっぽけな…価値のない命を守る為にね」<br /><br />
インドラジット…インドラを倒す者、という別名を持つ怪物の足音を背後に従え、<br />
べったりと血が染み付いた無線機を捨てたロアルドは、部屋の奥へと覚束ない歩みを進めた。<br />
奥の手すりに取りすがり、何度か深呼吸して息を整える。<br />
その向こうに広がるのは巨大な室内発電施設だ。<br /><br />
「カルマってやつは…巡り巡って、最後には…自分の所に還ってくる」<br />
これまで唾棄すべき他人の死を語るように、暗く皮肉げだった彼の声が、<br />
死に場所と決めたそこを覗き込んだその時、初めて感情の波にひび割れた。<br />
「今度は俺の番ってことだよな…グレッグ」<br />
逆光に照らされたロアルドの顔は、後悔するようであり、諦観したようであり、<br />
今なお許しを乞うようでもあり、それでいてなお、どこか安らぎを得たようでもあった。<br /><br /><a name="a175"></a></dd>
<dt><a>175</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:58:09ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>血の跡を踏んで近づくメーガナーダと、手すりにもたれたまま動かないロアルド。<br />
二つの光景を移すモニターの間におろおろと視線をさまよわせていたフレッドは、<br />
出し抜けに身を翻すと出口に向かって駆け出した。<br />
だが右手をあっさりとシエロにつかまれ、引き戻される。<br /><br />
敵う相手ではないと諭されながら、「放せよ!」それでもなお体をよじり、抗うフレッド。<br />
その様子を見て、ひざまずいたアルジラが、現実を見るまいとでもするかのように<br />
再び目を閉じてしまっていたセラの肩を強く揺すった。<br />
「見なさい、アンタの為に、皆命を張ってるのよ」<br />
効果がないと見るや、「ちゃんと見て!正気に戻らないと許さないわ」<br />
今度は両手で肩を掴み、更に強い力で揺すりつける。<br />
だが、大きく体を揺すられながらも、セラは固く閉じたままの瞳を開かない。<br /><br />
「お願いだから、戻ってよ…」<br />
取る術をなくしたアルジラは、反応のないセラの頭を掻き抱くようにして抱え込んだ。<br />
零れ落ちた涙がセラの頬を濡らす。涙は透明な雫となって弾け、そして…。<br />
セラの右頬に、サーフの物と同じ、ウォータークラウンのアートマが出現した。<br /><br />
自分の身体に生じた、不思議な感触に目を開いたセラが、恐る恐る右頬のあざを確かめる。<br />
アートマは指先が触れるに従って光を生じ、光は急速にその光量を増す。<br />
「サーフ?」セラは光に問いかける。<br />
「サーフなんだね…」<br />
片手は頬に触れたまま、身を伏せた彼女の瞳から零れ落ちた涙の雫が、床に点々と染みを作った。<br />
「ごめんね、サーフ」<br />
消えていく光、しかし確かにセラにはサーフの力が受け継がれていた。<br />
「ごめんね…」泣き続けるセラを痛ましそうな顔で見守っていたアルジラだったが、<br />
それはほっとしたような苦笑に取って代わる。もう大丈夫。これでいい、とでも言うような。<br /><br /><a name="a176"></a></dd>
<dt><a>176</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:59:50ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>涙を拭ったセラは、これまでと違った強い表情で自分をEGGに連れて行ってくれ、と懇願した。<br />
彼女が狂わせてしまった、神と再び話してみるというのだ。<br />
セラの決意に満ちた言葉を受け、アルジラはロアルド救出とメーガナーダ打倒の為、<br />
ここに残る事を申し出る。<br />
一人じゃ無理だ、と当然の懸念をシエロが発するが、アルジラは<br />
「あたしを誰だと思ってんの」と笑い、応じない。<br /><br />
「また、後でね」場違いなほど明るい表情でウインクするアルジラを、<br />
ゲイルは生真面目に唇を引き結んで見つめていたが、彼女が何かいいたげに真摯な目線で見返すと<br />
「ああ…行くぞ」一つ頷いて一同に呼びかけた。<br />
シエロが唇を噛み、フレッドは無言で帽子を被り直す。喉が詰まったような表情で目を伏せるセラ。<br />
アルジラの視線の意味を、誰もが口に出さずとも理解していた。<br /><br />
「お前に俺が理解した、ただ一つの事を伝えておこう」<br />
部屋を出る前、セラにゲイルが語りかける。<br />
「命とは、つながり巡るものだ。生きる者は皆、己を支えてくれた他の命に報いる義務がある。<br />
避けられない戦いがあるだろう。倒さねばならない敵もいるだろう。<br />
そして、いつかはお前が敗れる時が来る。<br />
だが、誰も恨むな。おまえ自身を含め、誰ひとりもだ」<br /><br />
プラント脱出の為、通路を進むセラ達に、生き残った最後のプラント警備兵が襲い掛かってきた。<br />
右頬に指を這わせ、セラはかつて彼女を支えてくれた、今はもう居ない大事な人に向かって語りかける。<br />
「命は、繋がり巡るもの…サーフ、私、もう逃げないよ」<br /><br /><a name="a177"></a></dd>
<dt><a>177</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1018:00:48ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>発電施設前通路を全力で駆けてきたアルジラは、血の跡を追って室内に飛び込み、目を見張る。<br />
血の海の中に横たわるロアルド。<br />
その上に覆いかぶさって彼の血を啜っているのは、羽のような甲殻と、無数の口を持つ巨獣。<br />
遅すぎた全てに、絶望の吐息を漏らしたアルジラだったが、それはすぐにたぎるような怒りと化して<br />
眼前の敵に向かう。<br />
喉も裂けよとばかりに雄叫びを上げながら、アルジラはメーガナーダの元へ駆け出していった。<br /><br />
無人になった制御室にビープ音が響く。室内の非常灯が異常を告げて瞬いていた。<br />
スパークを散らす発電施設。<br />
女神プリティヴィーへと姿を変えたアルジラが、手摺に叩きつけられた。<br />
ぐにゃりと曲がった鉄の棒から震える身体を起こそうともがくが、僅かに背中が離れた途端、<br />
残酷なまでの勢いで伸びた、あぎとを持つ腕に再度手摺に磔にされる。<br /><br />
牛とも虎ともつかぬ声で唸る化物に首筋を押さえつけられながら、<br />
「電気が好物なんでしょ…インドラジット」彼と同じく人外のものへ変じたアルジラは<br />
ごろごろと篭った声で問いかけた。<br />
鉤爪を備えた左腕を鞭のように解いて長く伸ばし、<br />
「この街全部の電気…たんとおあがり!」<br />
電力最大開放レバーを引こうとした途端、それはメーガナーダの口の一つに噛み潰される。<br />
アルジラの絶叫と共に、一度はレバーに掛かった腕が力なく床に落ちた。<br /><br />
が、それと入れ違いに伸ばされた、彼女の物とはまた別の腕がある。<br />
手の甲にライトニングボルトのアートマを刻んだ、人間の腕。<br />
そこに居たのは、いまわの際の力を振り絞って、痙攣する体を<br />
必死にコンソールの上に押し上げるロアルド。<br />
アルジラのほうを振り返り、死相の浮き出た横顔に、精一杯の笑みを刷く。<br />
メーガナーダに圧し掛かられたプリティヴィーの顔に、アルジラの微笑が重なり、<br />
頷くと同時にその首が折られる。<br />
それを見届けたロアルドは崩れ落ちるようにレバーを引き…どこからか、鈴の音が響いた。<br /><br /><a name="a178"></a></dd>
<dt><a>178</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1018:02:15ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>今回のまとめ。マダム、エンジェルによりシボン。<br />
EGGアンドHAARP止める為動力プラントへ。ロアルド隔壁破りに大活躍。<br />
エンジェルがEGGに封じられてたメーガナーダの封印解いて、メガはロアルド追って来るんで<br />
ロアルド残り、アルジラの涙でなんでかセラにサーフの力移る。<br />
みんな脱出した後アルジラロアルド助けに行ったけど結局二人でメガナダと心中。<br />
ゲイルの走りは重そうです。以上。<br /><br /></dd>
<dt><a>318</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:02:23ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>ヴァルケンじゃなくて俺が行きますよ…<br />
てことでアバチュー2いきます<br /><br />
セラたちは燃えさかる発電施設から脱出し、再びEGG施設へと向かう。<br />
だが二度目に足を踏み入れたそこは、先刻のそれとは全く異なった様相を呈していた。<br />
薄暗い室内。壁面の至る所に黒い影が生まれ、影の中で触手に絡め取られた<br />
かつての職員たちが狂った呟きを漏らしている。<br />
通路と通路の間は次元を超越して繋がり、以前記憶していた道順がまるで用を成さない。<br /><br />
セラによると神の情報が漏れ、この空間を構成する情報そのものが変質してしまったせいらしい。<br />
「EGGに何かあったのかもしれない」と不安げに言うセラに、<br />
「これも神の成せる業か」眉を顰めたゲイルはそもそも神とはどういうものなのかと問いかける。<br />
しかしセラ自身にもそれはよく理解できてはおらず、<br />
とても大きな存在としか言いようがないのだという。<br />
神と話すと言ってもそれは普通のものとは違い、彼女はただ包まれて、感じるだけだなのだと。<br /><br />
「それが、対話だと?」更に問うゲイルに、<br />
人間のような明確な意思があるのかどうかもわからない、とセラは俯いてしまう。<br />
「マジですか。そんなんで説得とかできんのかよ」シエロが頭を抱えた。<br />
しかし顔を上げたセラはシエロを透き通るような瞳で見つめ、ぽつりと呟く。<br />
「でも、暖かかった」<br /><br />
神が世界を消そうとしている事と、人がこれまで生きてきた事は、無関係ではない筈。<br />
人が何か大切な事に気付いていないから…。恐る恐る、シエロがセラの言葉を繋ぐ。<br />
「呆れられた?」それにかすかに頷くセラ。<br />
「そこに神の意思と交渉の余地を感じるというわけか」<br />
ヤケに物分りのいいゲイルをシエロがからかう。<br />
「お得意の"理解不能だ"はどうしたんだ、ブラザー」<br />
それに静かに応えるゲイルの瞳は、黒く濁った通路の先を見つめていた。<br />
「理解できない事は、感じるしかない…あいつらの死を、無駄にしないためにもな」<br /><br /><a name="a319"></a></dd>
<dt><a>319</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:03:57ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>地下三十階に達したセラ達を、異様な巨大植物のような悪魔が待ち受ける。<br />
EGG施設と一体化し、悪魔「ヴリトラ」となったヒートだった。<br />
「最強の力を手に入れた、後はお前を喰らうだけだ」<br />
未だに彼女に対する妄執を剥き出しにする彼の前にセラが進み出る。<br />
それで気が済むならそうすればいい、でもその前に神と話を、と懇願する彼女を<br />
「神は俺だ」と遮るヒート。<br />
「そうじゃなくて……」悲しげに首を振るセラの前にゲイルとシエロが進み出る。<br />
「もういい、セラ」「そうだな。ゆっくり話そうや、ブラザー。お前さん好みの方法でさ」<br /><br />
始まった戦いの最中、何故かヒートは自らの攻撃や弱点を教え、セラ達を導くような奇妙な行動を取る。<br /><br />
戦闘の衝撃に激しく振動するEGG施設。<br />
内部プールの底にサーフが横たわっている。その枕元に黒猫がすたすたと歩み寄った。<br />
「セラの命を繋いできた水が、君を救った。起きられるはずだよ」<br />
尻尾をくねらせながら、優しい青年の声でサーフを促す。<br />
うっすらとサーフが瞼を開くと、立ち上った自らの呼気の泡に霞んで、<br />
プールの天井に浮かぶマダムの死体が見えた。<br /><br />
そのまま神に還ってしまえば楽かもしれない。<br />
でも、縁を結んだ人たちへの責任を果たさなくてはならないはず。<br />
諭すような言葉にぼんやり振り向けば、揺れる視界の向こうに片耳だけが銀色の黒猫の姿が映った。<br />
シュレディンガー。そう名乗った猫は、<br />
この世界には、存在を表す情報が必要だから、と瞳を光らせた。<br />
「この世の全ては、情報によって成立している。その点は、人も君も僕も、この世界だって同じさ」<br />
輝きを増すその怪しい金の光の中にサーフは包み込まれていく。<br /><br />
「神はその始原であり終着点。輪廻の輪そのものだ。<br />
悟りとは、それを理解した先に見えるもの…何が一番大切かを感じることなんだ」<br />
気が付くと月の上に浮かび、遥かに地球を俯瞰している。<br />
「そのために世界があり、君がいる。今は理解できなくとも、ね」<br />
星の海の中に座り、猫が言った。「さて、今は君が知りたい事を見せてあげよう」<br />
ここなら、それができる。そう呟くと猫は頭上の星々を見上げた。<br /><br /><a name="a320"></a></dd>
<dt><a>320</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:04:49ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>歩道橋の欄干に手を掛けてEGGを見ている白衣のサーフの背に、<br />
同じく白衣のヒートがイラ付いた声を投げつける。<br />
「いつまでこんな実験に手を貸すつもりだ、<br />
あんな水に浸かっていなければ、生きるすらできない子供を…」<br />
辛そうに顔を伏せるヒートを見やりもしないまま、サーフが彼をあざ笑う。<br />
「だからお前は僕に勝てない」<br /><br />
驚きに見開かれ、次いで憎しみに歪められるヒートの瞳の前で、<br />
「人の道とやらにとらわれて、真の偉業を成した奴がいるか。<br />
人が知りたければ腹を裂く。心が知りたければ心を壊す。そうやって科学はここまで来た」<br />
分かっていない愚か者にしたり顔で講釈をぶってやりながら、サーフは通路の中央に歩み寄った。<br /><br />
ストレッチャーに乗せられた幼いセラが、<br />
アルジラそっくりの金髪の看護婦によってそこを通りかかろうとしていた。<br />
サーフに向かって意味ありげな、艶めいた流し目を送るアルジラ。<br />
ストレッチャーが彼の前で止まると、瞳を開いたセラは力ない声で囁き、弱弱しい笑みを浮かべる。<br />
「セラ、今日は2分もお日様とお話しできたよ…」<br />
「よくがんばったね」優しく言うサーフの頬にあるのは、先刻までの邪悪さがウソのような、<br />
いかにも優しげなほほえみだ。<br /><br />
「10分お話しできたら…お船に乗せてくれるんでしょ」<br />
無邪気な問いかけにヒートは思わず拳を握り締めるが、<br />
「約束だからね」サーフはにっこりと頷き、セラの髪を撫でる。<br />
彼の豹変振りを露とも知らず、天にも昇るような喜びを表すセラを見るに耐えかね、<br />
ヒートは荒々しく顔を逸らすとその場を立ち去っていった。<br />
怯えた表情でそちらに目を遣り、セラが呟く。「あのお兄ちゃん…怖い」<br /><br /><a name="a321"></a></dd>
<dt><a>321</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:06:06ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>晴れ渡る海。どこまでも続く砂浜の波打ち際には、何故か無骨な戦艦が浮かんでいる。<br />
浜辺でビーチボールに興じるサーフ、セラ、ヒート、アルジラ、そしてシエロら五人。<br />
セラのパスを受け、シエロの顔面に強烈なスパイクを見舞うサーフ。<br />
たまらずシエロは尻餅をつき、ガッツポーズするサーフにはしゃいだセラが飛びつくが、<br />
彼女の姿は本来の幼女のものではなく、何故か彼と同じくらいの年頃だ。<br /><br />
怒り狂ったヒートがボールを投げつけ、顔でそれを受けたサーフが砂浜にひっくり返る。<br />
楽しそうに笑うアルジラ、シエロ。ヒートも笑っている。誰一人声をあげないおかしな世界で。<br />
彼らの髪は、セラを除きどういう訳か現実の彼らとは違う奇妙にハデな色をしている。<br /><br />
「本物そっくりの仮想空間ですって?」驚愕するマダムの声。<br />
エンジェルの声が応える。<br />
「我々も知らぬ間に、19号が作っていました。完璧な自我を持つ、人格プログラムすら…」<br />
驚嘆する様子の二人にサーフが吐き捨てる。<br />
「おママゴトの箱庭ですよ。くだらない感傷と自慰の産物だ。ヘドが出る」<br />
画面には彼の言葉を象徴するように、砂の城が映し出されていた。<br /><br />
「素晴らしい」見せられた映像を前に、ベック大佐は感嘆の息を吐いた。<br />
早速利用プランを練らせよう、と左右のエンジェル、マダムに目をやる彼を、<br />
「待ってください」ヒートの上げた声が遮った。<br />
「あの子のストレスはもう限界まできてるんだ、老化速度もどんどん早くなってる。<br />
これ以上負担をかけるべきじゃない」悲痛な様子のヒートに眉を寄せたベックは、暫しの後に顔を上げ、<br />
「どうなのかね」前方に向かって意味ありげに問い掛ける。<br />
その視線の先、鼻で笑い、振り返ったサーフが朗らかとさえ言える声で事も無げに応えた。<br />
「問題ありませんよ、ベック大佐」<br />
息を呑んだヒートは驚愕と怒りに最早瞬きもできないまま、その背中を見つめる事しかできなかった。<br /><br /><a name="a322"></a></dd>
<dt><a>322</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:07:34ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>EGG施設、プールの内部。何本ものコードに繋がれ、眉を寄せ、眼を閉じている幼いセラ。<br />
規則的な機械音と共にオペレーターが報告する。<br />
「サンサーラのデータ循環システムにエラー発生。コード8081454。ステージ2から5、ダウンします」<br />
その声に反応したようにセラがかすかに悲鳴をあげ、小さな身体をぐんと弓なりにそらせた。<br />
これ以上は危険だと上擦った声で進言するオペレーターを苛立たしげに遮り、<br />
「まだ耐えられるはずだ」とサーフは活性剤の投与を命令する。<br /><br />
外部ボルトが押し込まれ、再び悲鳴を上げたセラは、見開いていた瞳を硬く閉じ、<br />
チューブを通して与えられる激しい痛みに必死で耐えた。<br />
「聞こえるかい、セラ。もう少しの辛抱だ」<br />
そんな彼女に更なる無理を強いる為、偽りに満ちた励ましを与えるサーフに「もうたくさんだ!」<br />
ついに我慢の限界に達したヒートがモニターの中の少女から眼を逸らし、銃を突きつけた。<br />
室内に控えていたアルジラが目を見張り、驚いたオペレーターが背後を振り返りながら立ち上がる。<br />
その際誤ってボタンが押され、プール内のセラの前に室内の画像が映し出された。<br />
しかしサーフはそれに気付かない。<br /><br />
マイクから顔を離し、彼本来の醒めた笑みを見せながら傍らのヒートを振り返る。<br />
「今さら奇麗事を言うなよ」その声もまたセラの元に届けられていた。<br />
「お前だって神を知りたくて、このプロジェクトに参加したはずだ」<br />
セラは訝しそうにその状況を見つめ、サーフはそうと知らず今まで積み上げてきた彼女の信用を<br />
自らの手でぶち壊していった。<br />
「セラが死ねば次の子供、次の子供が死ねばその次の子供に代わるだけだ」<br /><br />
だだっ広い執務室。大きな机に肘をつき、エンジェルがその上に苦悶するように顔を伏せている。<br />
「お互い、無駄な事に労力を使うのはやめにしないか。僕はお前を買っているんだ」<br />
突きつけられた銃が目に入らないかのように、親しげにサーフは語りかけた。<br />
「まったく大したヤツだよ…」それを昏い眼差しで睨みながら、<br />
「どんな人間の心も好き勝手に操れると思うな!」<br />
ヒートは胸のうちに渦巻く積年の怒りが具現化したかのような声を叩きつける。<br />
しかし、「そうでもないさ」友の言葉をサーフは厭らしく瞳を歪めて嘲った。<br /><br /><a name="a323"></a></dd>
<dt><a>323</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:08:39ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>銃声が立て続けに響く。<br />
思いもしていなかった襲撃者に目を見開きながら、ヒートは床に崩れ落ちていく。<br />
アルジラが震える手で構える銃の銃口からはいまだ薄く煙が立ち昇っていた。<br />
倒れたヒートの足元に悠々とした足取りで歩み寄ったサーフが、零れ落ちた銃を拾い上げる。<br />
それをヒートの目の前でからかうように振りながら<br />
「簡単だろ?」サーフは笑みを浮かべ、首を振った。<br />
「どこを押せばどうなるか、人間の心なんて、こいつと同じだ」<br />
その目が不意に、狂気じみたものに支配される。<br />
「僕は神の力を手に入れる。みんな、道具だ」<br /><br />
傲然と言い放った彼の耳に、その時かすかな泣き声が届いた。<br />
ハッとして目をやると、音声ランプが赤く点滅している。<br />
モニターを見ながら立ち上がったサーフの背後で扉が開き、ベック大佐が部屋に入ってくる。<br />
彼もまた瞠目し、モニターを見つめた。<br />
次第に大きくなるビープ音。一杯に見開いた目でこちらを見つめてセラがすすり泣いていた。<br />
耐え切れなくなったように目を閉じて顔を背ける。水中に、見えない筈の涙がはらはらと零れた。<br />
プール内を囲む、全てのランプが点灯する。<br />
何かが急激に力を増していくような轟音とともに光は光度を増し、EGGの全ての施設が光に包まれた。<br /><br /><a name="a324"></a></dd>
<dt><a>324</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:09:34ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>静寂に沈むプールの中。水底でサーフが呆然と目を見開いている。<br />
「彼女の哀しみが、神を狂わせた」<br />
震える手を上げ、顔を覆う。悪夢の光景が、視界の中で瞬いていた。<br />
「溢れ出た情報に侵され、悪魔となったあの男は」<br />
血の海の中に浮かぶ、かつては人間だった部品たちの真ん中で、<br />
赤く染まった化物が雄叫びを上げている。<br />
「周りの者を喰い散らし、やっとのことで、殺された」<br />
そのビジョンを追い払おうとでもするかのように、頭を抱えて必死に首を振るサーフに、<br />
淡々とただ事実のみを述べる黒猫。その背後に歩み寄った者がある。<br /><br />
「5年、彼女はここで心を閉ざした」<br />
白衣姿の人影は、膝をついたサーフの背中に語り掛けた。<br />
「無残な地獄に変えられた楽園と、ただ、君たちの夢を見ながら」<br />
瞬きをし、振り返ったサーフに白衣のヒートは寂しげな微笑を浮かべた。<br />
「君たちの人格は、確かに彼女が我々に求めた物かもしれない」<br />
立ち上がったサーフに歩み寄ると、彼はそのまま、<br />
その身を金色の残像に変えてサーフの身体をするりとすり抜けた。<br />
「だが」<br />
振り向いたサーフに目線を送り、ヒートは一転確信に満ちた口調で断言する。<br />
「今は違うはずだ」<br /><br />
強い目でそれを見返すサーフの後ろ、不意に澱のような黒い泡塊が立ち上り、<br />
「みつけたぞ!」白衣のサーフが現れた。<br />
「僕に一体何をした!?」<br />
怨嗟の声を上げながら手を伸ばす彼の脇に、いつの間にか金色の霧が沸き起こり、<br />
「セラ…」その中から迷うようにふらふらと、浜辺のサーフが歩み出る。<br /><br />
「セラはどこ?」覚束ない視線にサーフが唇を噛み、<br />
「俺たちはもう死んでいるんだ」ヒートはかつての友に静かな声を掛ける。<br />
「今はただ、情報の循環に身を任せ、"時"を待つしかない」<br />
しかし、諭すような言葉は白衣のサーフには受け入れられなかった。<br />
「ウソだ。俺は死んでなどいない。神の、神の力を手に入れたんだそ!?」<br />
喚く姿が悪魔「リアルヴァルナ」に変わり、<br />
「セラ…どこ…」その傍らで海辺のサーフが悪魔「フェイクヴァルナ」に身を変えて、<br />
辺りを心細そうに見回している。<br /><br />
「さあ」ヒートの体が渦を巻く炎に包まれ、<br />
「君を縛る亡霊を倒し、自由になれ。そして…」<br />
その中から悪魔「アグニ」が現れた。<br />
目を閉じたサーフの頬で、「ウォータークラウン」のアートマが輝き始める。<br />
「もう一人の俺を開放してやってくれ」囁くようなヒートの訴えに、目を上げたサーフは小さく頷いた。<br /><br /><a name="a325"></a></dd>
<dt><a>325</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 短いバージョン ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:12:40ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>すまん今回あまり省略できませんでした…。<br />
んじゃまとめ。<br />
二度目のEGGは噴出した神の情報で異界化してる。地下でEGGと一体化したビオランテヒートと対決。<br />
「俺が神」とか言ってる割に何故か倒す為のアドバイスくれる。<br />
「そうじゃねぇだろ」とか「次得意技行くぞ」<br />
とか「最初に手やんないと胴体に攻撃出来ねぇだろ」みたいなの<br /><br />
ある程度戦うとEGG内で猫がサーフに過去のネタバラシ。<br />
実は現実のサーフは悪人で、セラ(幼女)をムリヤリ頑張らせる為優しくしていた。<br />
人間的にまともだった現実のヒートがそれに怒ってるのをセラ「あのお兄ちゃん怖い」と勘違い。<br /><br />
セラが作った仮想現実を、ベック大佐の命令の元、<br />
何かに応用させる為更なるムリをゴリ押しするサーフ。<br />
結果弱ったセラをまだこの上頑張らせようとするサーフにヒートがついにブチ切れ。<br />
サーフ銃で撃って実験止めようとする。<br />
その際アクシデントで全部セラに筒抜けになってるのに気付かず<br />
サーフ「どうせ使い捨てだろ」と本性ブチまけ。<br />
「どんな人間も思い通りになると思うな」つってヒートが撃とうとするけど<br />
脇から看護婦だったリアルアルジラ(サーフが誘惑済み)に撃たれてバタンキュー。<br />
その後サーフの<br />
「思い通りになってんじゃん、てかお前らも銃と一緒。つか道具。俺神の力ゲットするし」<br />
でセラが耐えらんなくなって暴走。運悪く部屋に入ってきたベック大佐もろともEGGドカン。<br /><br />
んで回想終わり。<br />
ショック受けてるサーフにリアルヒート(霊?)が<br />
「最初はセラが作った彼女の願望どおりの人格をプログラムしたに<br />
過ぎない存在だったかも知んないけど、今は違うだろ?」<br />
その後湧いて出たリアルサーフとフェイクサーフ(セラが最初にプログラムした<br />
浜辺の仮想空間にいた、優しいだけのセラなしだと何にも出来ない存在)とバトル。以上。<br /><br />
後小ネタ。仮想現実に作った砂の城は1で出てた遊園地ディスティニーランドの城。<br />
エンジェルが居ただだっ広い執務室=序盤に出てくる協会本部のエンジェルの部屋と同じ。<br />
それと猫の声はサーフと一緒です。<br /><br /></dd>
<dt><a>504</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:27:16ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>アバチュ2続き行きます。<br /><br />
「まだだ。まだ足りねぇ」<br />
ヴリトラは長い腕を半ばから切断されてもなお、腕はもちろん、<br />
四つのあぎとを持った首も共に振りたて、暴れ続けた。<br />
と、突然その腹が縦一文字に切り裂かれ、血が溢れ出す。<br />
「な、なんだ?」後ずさるシエロ。<br />
溢れる血の量は急激にその量を増し、滝のように血を迸らせる傷口の中から<br />
ヴァルナが姿を現した。口々にサーフの名を呼び、セラとゲイルも驚きと喜びの表情を見せる。<br /><br />
腕を切り取られても戦い続けようとしたヴリトラだったが、腹を内部から切り裂かれては<br />
流石にたまらず、一際大きな叫びを上げると橋の上に前のめりに突っ伏す。<br />
もうもうと上がる血煙が薄らいでいくと、そこには人の姿に戻ったサーフが立っていた。<br />
「兄貴なのか」シエロは喜びに顔を輝かせるが、血煙が更に薄らぐにつれ、サーフの側にもう一人、<br />
蹲る人影があることが明らかになる。<br /><br />
「やはり…お前か」<br />
割かれた腹を押さえ、荒い息をつきながらヒートはサーフを睨み上げた。<br />
「お前があの程度で死ぬわきゃねぇよな」<br />
そのイメージ元となった金髪の青年の理知的な口調とはまるで違う、野卑とさえいえる口振りで<br />
憎憎しげな言葉を投げてくるヒートに、サーフは厳しい表情を向ける。<br />
「お前なら、俺のここがわかるはずだ」<br />
ぼたぼたと血を滴らせつつヒートはゆっくりと立ち上がり、振り返ったサーフに己の胸を指し示した。<br />
(ここで「ああ…」と「……」の二択)<br /><br />
「決着をつけようぜ。始まりの、あの場所でな」<br />
低い声で言うヒートの体が、緑色の輝きに縁取られる。<br />
光の粒子となって消える前に彼が見上げた視線の先を追い、サーフが振り向くと、<br />
オペレーター室のガラス窓が室内に生まれた緑の光をかすかに反射させていた。<br /><br /><a name="a505"></a></dd>
<dt><a>505</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:28:43ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「やめて二人とも!」<br />
歩き出したサーフの背中に、セラが悲痛な声を掛ける。<br />
「悪いのは全部私なの。二人が戦うことなんて…」<br />
泣き出しそうになりながらサーフに追いすがろうとしたセラの前に、<br />
「やらせてやろうぜ。思う存分さ」<br />
シエロが両手を開いて飛び出した。その目元には、微かに涙が滲んでいる。<br />
「戦うことでしか、自分を確認できない者もいる。戦うことが救いになる時もある…行かせてやれ」<br />
背後からの静かなゲイルの声に、セラは最早無言でサーフを見送ることしか出来なかった。<br /><br />
オペレーター室の扉を開いたサーフは何気なく足元に視線を落とし、直後驚きに目を見開いた。<br />
床にぶちまけられた血の道標、それが示した窓辺のオペレーターチェアの足元には<br />
更に大量の血が溜まり、小さな池を作っていた。<br />
「遅ぇじゃねぇか…寝ちまうとこだったぜ」<br />
その言葉どおり夢の中にいるような弱弱しい声の元に慌てて駆け寄り、<br />
背もたれに身体を預けた男の惨状を確認する。<br /><br />
「悪いが、お前とのケリは持ち越しだ」<br />
下半身をじっとりと血に染めて、億劫そうに目を開けたヒートはそう呟くと再び目を閉じ、<br />
ぐったりと座席に寄りかかったが<br />
「俺はお前に殺られたんだ…わかってるな!?」<br />
出し抜けに血塗れの手を伸ばしてサーフの胸倉を捕まえると、意外な程の力で揺すり上げてきた。<br />
悲しげな顔でただサーフはヒートの顔を見返す。<br />
(「わかったから、もう何も言うな…」と「なぜなんだヒート」の二択)<br /><br />
サーフの言葉を聞いたヒートは握り締めた手から力を抜き、今度はその指を突きつけてきた。<br />
「セラが気に病むといけねぇ…もう、放すんじゃねぇぞ」<br />
神妙な顔で頷くサーフの姿がまだ見えているのかどうか。<br />
「俺は…俺の意思で戦い…負けたんだ」<br />
睨みつけた視線を落とした後、ヒートはぼんやりと視線をさまよわせながら<br />
途切れ途切れに言葉を繋いでいたが、<br />
「悔いは…ねぇ…」<br />
不意に満足そうに微笑むと、がくりと首を落とした。<br />
同時に左腕―ファイアーボールのアートマが刻み込まれている―が、座席の横に力なく垂れ下がる。<br />
どこからか、微かに鈴の音が鳴った。<br /><br />
オペレーター室のドアが開いて、ヒートを抱きかかえたサーフが部屋の中から出てくる。<br />
駆け寄り、口元を押さえて涙を流すセラも、鼻を啜り、しゃくりあげるシエロも、<br />
ふと視線を床で耳を垂れる猫に向け、沈痛な表情で目を伏せたゲイルも、<br />
かつての仲間を見送る彼らの誰もが無言のままだった。<br /><br /><a name="a506"></a></dd>
<dt><a>506</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:29:55ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「色々あってさ。機械、ぶっ壊れちまったんだ。悪ぃな、フレッド」「じゃあ…」<br />
肩を抱くシエロにフレッドは震える声を向けたが、<br />
「まだ手があるわ」<br />
それをセラの静かな声が遮った。<br />
「昔は、ここからずっと離れた施設で実験をしていたの。その施設が生きていれば…」<br />
「どうやってそこまで行く。もう時間がない」<br />
当然の懸念を述べたゲイルにセラは飛行機の使用を提案、そうすればギリギリ間に合うらしい。<br /><br />
「地球を元に戻してもらうわ。直接太陽に乗り込んで、説得してみる」<br />
昂然と顔を上げた彼女の目は、かつて無いほど強い決意の色を示していた。<br />
そんな事が出来るのか、というシエロ、太陽に自分の情報を送り込む。<br />
やったことはないがという彼女に、帰りの手段はあるのかとゲイルが問う。<br />
「帰ってはこれないわ。だから、私一人で行く。私の責任だもの」<br />
何もかもを受け入れたような、穏やかな表情で答えるセラに、ゲイルは無言で顔をしかめた。<br />
これ見よがしに脇に進み出ると、悩ましげに腕を組んで頭を垂れる。「傷ついた」<br /><br />
「え?」声色は普段と変わらない平坦な感じなのに、いかにも芝居がかった仕草に<br />
セラがきょとんと瞬きをした。<br />
「俺の交渉術は当てにされていないらしい」<br />
天を振り仰ぐとちらりとセラに流し目をやる。<br />
「いつもムッツリしてたわりにゃ、密かに自信満々だったってかぁ?」<br />
おどけた仕草で肩をすくめたシエロが、ちちちっ、とゲイルに突きつけた人さし指を振った。<br />
「ヘリクツばっかじゃダメダメ。こう、ノリノリに攻めるのはどうよ。ラテンのリズムっての?」<br />
言いながら既にその足元はサンバダンサー紛いのステップを踏んでいる。<br /><br />
見ていられないと言わんばかりに呆れて帽子を下げるフレッドに構わず、<br />
ついに両手を上げて尻まで振り出したシエロを<br />
「怒らせるだけだと思うが」<br />
ゲイルの冷たい声がぶった切った。<br />
「あんだぁ?じゃあ、どっちが先に神さん落とすか、勝負しようぜ!」「いいだろう」<br />
ムッとした顔で肘をぶつけてきたシエロにしかめ面のままゲイルは勝手な約束をさっさと取り決め、<br />
唖然としているセラに<br />
「つーわけで、俺ら三人の特等席もよろしく」<br />
有無を言わさぬ口調でシエロが言い放った。<br />
サーフがそっとセラの肩に手を置き、彼の顔を振り仰いだセラの目がたちまち涙で一杯になる。<br />
「みんな…ありがとう」<br />
涙を拭うセラに、シエロは照れた様に鼻の下を擦るのだった。<br /><br /><a name="a507"></a></dd>
<dt><a>507</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:32:26ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>この後フィールド会話でリアルシエロについての記述アリ。<br />
でも、研究員による<br />
「テクノシャーマン計画が軌道に乗るまではテレパスによる接触実験も行われていて、<br />
何人もの能力者が狂死した。南米から来た明るい少年にシャーマン候補の一人(セラ?)が懐いてた。<br />
そこの彼(シエロ)みたいなドレッドだった」というような一文だけ。<br />
これ以外にシエロの生前の姿(?)についての情報はありません。哀れなり江口…。<br /><br />
あとセラは折角作ったサーフ達のデータをジャンクヤード(大佐が言ってた利用プラン)を作る時、<br />
消せとエンジェルに命じられたが出来なかった(それでジャンクヤードにコピッた?)<br />
前作はジャンクヤードでウイルス実験が行われる事を知ったセラがそれを止める為強制ダイブ、<br />
エンジェルは消させたはずの彼らがそこにいたので驚いたが、彼らをジャンクヤードに閉じ込め、<br />
セラに言う事を聞かせようという考えを実行しようとした結果ああなったのらしい。<br /><br />
「ハイ、お前さんはここまで」<br />
サーフ達の後に続いて空港のエントランスに入ろうとしたフレッドの前に、<br />
シエロが大きく手を広げて通せんぼをした。<br />
「なんでだよ」拳を振り上げて抗議するフレッドに<br />
「他にやることあんだろ」シエロは指を突きつけ、戻ってきたゲイルが諭すように言った。<br />
「カルマ協会の支配は終わる。意味は、わかるな」<br /><br />
目を伏せ、黙り込んでしまったフレッドに、更にゲイルは彼にこれまで告げることのなかった真実を話す。<br />
ジャンクヤードに転生したフレッドの父親を殺したのは、自分だと。<br />
しかしフレッドは既にその事をロアルドから聞かされ、知っていた。<br />
けれども彼はゲイルを恨んだりはしていないと言う。<br />
「皆は、大事なことを教えてくれた。オレたち、ずっと仲間だよな?」<br />
一旦は目元を隠すように下げた帽子を再び上げ、ゲイルをまっすぐに見つめたフレッドの瞳には<br />
溢れんばかりの涙が溜まっていた。<br />
彼の問いかけに優しい笑みを見せるセラとサーフ。シエロは頭の後ろで手を組みウインクを返す。<br />
「ああ、仲間だ」言ってゲイルは右手を差し出し、フレッドと別れの握手を交わした。<br /><br />
「そいじゃ行きますか。でっかい花火、ぶち上げにさ」<br />
伸びをして言ったシエロの言葉を合図に、彼らは空港へ向かって再び歩き出す。<br />
その背に小さく手を振るフレッド。<br />
その動作は次第に大きくなり、フレッドは振り返ることなくエントランスに消えて行くサーフ達に向けて、<br />
力いっぱい手を振り続けた。<br /><br /><a name="a508"></a></dd>
<dt><a>508</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:34:15ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>空港ではエンジェル直属の精鋭たちが待ち受けていた。<br />
彼らを退けつつ、又EGG施設から出てしまった事により急激な成長(老化)に苛まれ、<br />
またそれを抑える薬(減速剤)もない為に次第に衰弱していくセラを支え、<br />
サーフ達は航空機のハンガーを目指す。<br /><br />
格納庫にたどり着く直前エンジェルが現れ、遂に自ら彼らの前に立ち塞がった。<br />
今は争っている場合ではないとセラが説得を試みるが、<br />
エンジェルはセラの命を永らえさせる減速剤の完全破棄を宣告。<br />
「無様に老いさらばえるよりその姿のまま骸を晒したほうがマシとは思わないか」<br />
娘にかけるものとも思えぬエンジェルの言葉に激怒したシエロは<br />
「お前も死ぬってのが、わかんねーのか!」<br />
と声を荒げるが、ゲイルが前に進み出し、彼を制止するように手を広げた。<br />
「承知の上だろう。行け」<br /><br />
戸惑ったセラが「でも」と声を上げる。しかしサーフに促され、ゲイルを心配そうに見つめながらも<br />
彼女はゆっくりと歩き出した。脇を通り過ぎる際<br />
「勝負、おあずけか?」<br />
少しだけ立ち止まって、シエロが戦友の背中に問いかけた。<br />
「また今度だな」<br />
振り返らずに答えたゲイルにシエロは僅かに目を伏せて<br />
「不戦勝にしといてやるよ、ブラザー」<br />
片手を上げ、彼もまた振り向かずに歩き出した。<br />
「すまんな、ブラザー」<br />
今だ目の前の相手から視線を外さぬまま、静かにゲイルが応えを返す。<br /><br />
「私か移動手段を破壊するとは考えなかったのか!」<br />
その時、唐突に上がったエンジェルの叫びに、シエロは思わず足を止めかけたが、<br />
「ブラフだ、行け!」懸念をかき消すゲイルの力強い声に背を押され、<br />
こくりと一つ頷くとサーフ達と共に駆け出していった。<br />
「賢しいな。なぜそう言える」尋ねたエンジェルに<br />
「この街に、死ぬと分かっている命令に従う者などいない」<br />
答えたゲイルは彼女に呼びかける。そろそろ目を覚ましたらどうだ、と。<br /><br /><a name="a509"></a></dd>
<dt><a>509</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:36:42ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「どういう意味だ」<br />
眉を寄せるエンジェルにゲイルは諭すように言った。<br />
「デイビッドは、人を導けと言ったはずだ」<br />
ハッと目を見開くエンジェルに、ゲイルは更に強い声で畳み掛ける。<br />
「怨念は捨てるんだ、ジェナ!」<br />
その姿が彼女の記憶の中にいる、金髪の青年とオーバーラップした。<br /><br />
燃え上がる炎に照らされて、血塗れの青年が途切れ途切れに歌声を紡いでいる。<br />
切羽詰った声が遠くで喚く。<br />
キュヴィエ患者の隔離病棟がやられたんだよ、ああそうだ、怪我人が大勢出てるんだぞ!?<br />
CDCなんか待ってられるか、いいから早く救急車を回せ、ちくしょう、無知なテロリストどもめ…<br />
炎が爆ぜ、ガラスの割れる音。しかし何も彼女には聞こえない。<br />
「ジェナ…誰も、恨むな…」<br />
膝の上に横たわっている彼の弱弱しい声以外、何も。<br /><br />
「一人にしないで…お願いよ、デイビッド…!」<br />
硬く石化した彼の手を取り、エンジェルは涙声で懇願する。<br />
彼を運び出した際に付いたものだろうか。彼と同じように血がこびりついた彼女の顔を見上げ、<br />
微笑みながら囁くデイビッドの青い目には、一杯に涙が溜まっている。<br />
「お前さんなら、治療法を、見つけられる…光に、なれるよ…」<br />
言い終わると同時に彼の体から全ての力が抜け落ち、閉じられた瞼から涙が溢れた。<br /><br /></dd>
<dt><a>511</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:39:10ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「馬鹿な、お前があの人であるはずがない!」<br />
愕然と声を上げるエンジェルの手は、ありありとわなないていた。<br />
「だが、デイビッドはここにいる」<br />
ゲイルは自らの胸を示し、語りかける。<br />
その声は先程の一喝が嘘のような、すっかり落ち着いた物に戻っていた。<br /><br />
死者の情報は神へ還るのだから、神から生まれた自分達に彼らの魂が宿っても不思議ではない、<br />
そう諭すゲイルの言葉にエンジェルは駄々をこねる子供のように首を振る。<br />
「嘘よ、あの人は愚かな人間たちに殺された!キュヴィエ症候群は伝染しない。なのに…」<br />
「彼は幸福だった」<br />
これまでの男性的な、冷酷とさえ言える口調をかなぐり捨て、完全な「女」になって<br />
取り乱すエンジェルを、ゲイルの静かな声が遮った。<br /><br />
「身体は滅んでも、想いを受け継ぐ者がいる」<br />
手を広げ、彼が一歩を踏み出すと、「やめろ!」エンジェルは腕で顔を覆い、慌てて飛び下がった。<br />
怯えきった表情で見つめる彼女に、<br />
「彼は、自分の研究と人を…お前を愛していた」<br />
言いながら、ゲイルはなおも近づいていく。だが。<br />
「戯言を言うな!」混乱の極地に達したエンジェルが右腕だけを悪魔化させ、その腹を貫いた。<br />
しかしゲイルは僅かに吐いた血の跡を唇の端に残しつつも<br />
何事もなかったかのように彼女の肩を優しく抱き…びくんと顔を上げたエンジェルの目の前で、<br />
自らもまた右腕だけを悪魔の物に変えると彼女の背にまでそれを突き通した。<br />
重なった影が、床に崩れ落ちる。<br /><br />
「私に付き合って、死ぬつもり…」<br />
震える身体を僅かに起こし、自分を掻き抱いた男の安らかな死に顔に<br />
エンジェルは息も絶え絶えに問いかけた。<br />
「データの、くせに…」<br />
呟いて、その胸に頬を寄せるように倒れこんだ彼女の瞳から光る物が一筋、零れ落ちた。<br />
鈴の音が聞こえる。<br /><br /><a name="a512"></a></dd>
<dt><a>512</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:40:08ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「しつけぇなぁ」<br />
ジェット機の脇を悪魔「ディアウス」に姿を変えて飛んでいたシエロは、背後を振り返り、舌打ちを漏らした。<br />
エンジェル派の戦闘機が三機、雲の中から姿を現しつつあった。<br />
「兄貴!」叫んでシエロはサーフに向けて顎をしゃくる。<br />
硬い表情でサーフは頷き、事態に気付かずサーフからシエロに視線を移したセラが、<br />
何気なく後ろを振り返って慌てて首を返し、機内モニターを覗き込んだ。<br />
レーダーに映る敵影を認め、機外のシエロに何か声を掛ける。<br />
この機体には兵装が付いていない。とすれば、彼が取るだろう手段は一つしかなかった。<br /><br />
「泣いてばっかじゃブスになるぜ。スマイル、スマイル!」<br />
泣きながらいやいやをするセラにシエロはおどけた素振りで左右に首を傾げたが、<br />
「…ほんとのニルヴァーナで会おうぜ」<br />
その後一転、彼は寂しげな口調で呟くと羽を翻し、敵へと向かって飛び去った。<br /><br />
戦闘機からミサイルが発射される。<br />
「絶対ぇ、行かせねぇぞ!」<br />
叫びながらシエロは翼を打ち振った。<br />
追いすがるミサイルを全て引き剥がし、その羽で戦闘機の主翼を切り裂く。<br />
衝撃で片翼を失ってもシエロはまだ飛び続けた。<br />
二機目を同じように撃墜し、機銃を撃ちかけた三機目の胴体にそのまま特攻をかける。<br />
全身から血を吹き出させたその姿が爆炎の中に掻き消え、<br />
レーダーから「WARNING」の赤文字が消えた。<br /><br />
しゃくりあげるセラと唇を噛み、俯くサーフを乗せてジェット機はHAARP施設へ向け、飛んでいく。<br />
また、鈴の音が鳴った。<br /><br /><a name="a513"></a></dd>
<dt><a>513</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 短いバージョン ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:41:43ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>まとめ。サーフ復活。人間に戻ったヒートと決着をつけるかと思いきや<br />
ヒートはビオランテ化してた時にサーフに中から腹切り裂かれてたので<br />
「もうセラ放すんじゃねぇぞ」とか言いながら死。<br /><br />
その後太陽に直接自分らの情報送って「話をつける」事にする。<br />
片道切符だが何だかだあってみんなで行く展開に。<br />
太陽に情報を遅れる施設HAARP(在アラスカ)に行く為空港へ。<br />
そこでフレッド置き去り。その時ゲイルが親父を殺したのは自分と告白するけど<br />
ロアルドに聞かされて知ってた。けど大事な事教えてくれたんで恨んでないそうです。<br /><br />
空港でエンジェル出現。ゲイルが足止めになってエンジェルと心中。<br />
結局彼女を動かしてたのは恋人(キュヴィエ病だった)を無知なテロリストに殺された怨念だった。<br />
ゲイルが恋人の記憶を持ってるのは、死人の情報が太陽に戻りその後何故かゲイルに宿ったから。<br />
(1のジャンクヤードの人とかもそう)<br />
ジェット機飛ばしたけどエンジェル派の生き残りがしつこく追ってきたのでシエロも足止めで死。以上。<br />
次で終わります。<br /><br /></dd>
<dt><a>692</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:26:10ID:///foK9i</font></dt>
<dd>アバチュー2行きます。太陽でエンジェルを探しまくり力尽きてました。<br />
(確か母としてセラを誇りに思うみたいな文があったはずなのだがどうしても見つからなかった<br />
もし知ってる人いたらホロー頼みます)<br /><br />
長々待たせた挙句無駄に長々しいので<br />
(書いてる本人さっぱりシナリオの意味が分からんくて略せんかったすまない)<br />
もしも途中でスレの寿命が来たら狂おしくごめんなさい。<br />
母さんスレ立て出来ないのでその時は誰かエロい人次スレヨロシクメカドック。<br /><br /><a name="a693"></a></dd>
<dt><a>693</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:27:27
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>HAARP施設内。<br /><br />
正面モニターの明りのみの薄暗い中、セラの白い指がキーボードの上をぎこちなく這う。<br />
要求されたパスワードを入力すると、僅かな作動音と共に照明が灯り、<br />
左右のモニタも息を吹き返した。<br />
「よかった…生きてる」<br />
消え入るような声で呟いた直後、セラの体がぐらりと傾いだ。<br />
慌てて差し伸べたサーフの腕の中で、セラがか弱いながらも決然とした声で囁き、<br />
強い目で彼を見上げる。<br />
「心配しないで…早くしないと間に合わないわ」<br /><br />
何本ものコードを生やしたバイザーを手にしたセラはシートに腰を下ろし、<br />
「今から、私たちの情報を神の元へ送るわ」<br />
かすかな笑みを浮かべた。<br />
こくりとサーフが頷くと、セラはバイザーを被り、背もたれに体重を預ける。<br />
彼女の足元に跪き、肘掛けの上の左手をサーフは両手でそっと包み込んだ。<br />
それを更にセラの右手がきゅっと軽く握り締める。<br />
「サーフ…今まで、本当にありがとう」<br />
バイザーに隠れて表情は定かではなかったが、<br />
セラの声が震えていたのは、衰弱によるものだけでは決してなかった。<br /><br />
パラボラアンテナの位置がゆっくりと調節されていく。<br />
昇りつつある太陽の不吉な影に焦点が合うと、<br />
施設内の全てのアンテナから照射されたレーザーが、光の帯となって雲の上を駆けていった。<br /><br />
限度を超える出力に耐えかねたアンテナが次々と火を噴く。<br />
火炎の舌に舐め尽された施設内で、情報転送に伴う苦痛にもがき苦しむセラを、<br />
サーフは静かに見守っていた。<br />
愛する人が力尽き、がくりと首を垂れるのを見届けると、<br />
サーフの姿もまた、炎の中に崩れ落ちていく…。<br /><br />
光の竜巻が渦を巻いて天へ昇っている。<br />
いや、これは太陽に根こそぎ絞り尽くされつつある地球上全ての生き物達の「情報」だ。<br />
太陽光の汚染をまだ何とか免れている地上の一端で小さな明りが瞬き、<br />
二つの流星が飛び出した。情報体に昇華したセラとサーフだ。<br />
地上の惨状を見下ろした二人は、すぐにやるべき事を求めて遥か上空に視線を移した。<br />
「神の情報に押し流されないように、気をしっかり持って」<br />
差し出されたセラの手を取り、サーフは光の竜巻の根元…太陽の内部へと飛び込んでいった。<br /><br /><a name="a694"></a></dd>
<dt><a>694</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:28:57
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>太陽の中を走る通路を飛翔するサーフとセラ。<br />
余りの熱に耐えかねて、セラは目の前に手をかざし、顔を背けていたが、<br />
熱がやわらぐのを感じて閉じていた瞳を開けてみると、<br />
彼女の身体はサーフに抱きしめられ、守られていた。<br />
普段あまり表情を見せない彼が、腕の中の彼女を見下ろして穏やかに微笑する。<br />
その暖かな笑みを見たセラもまた、満ち足りた笑顔を彼に向け、<br />
硬く身を寄せ合った二人は更なる上昇を続けた。<br />
だが、行く手を遮って吹き上がる炎の柱を何とかかわしつつ飛び続けたものの、<br />
直後に壁のように太い火柱が吹き上がり、マトモに突っ込んでしまう。<br />
すると思わず目を閉じた二人の体が光に溶けて、その中から一人の少女が出現した。<br /><br />
銀色の瞳、右が銀髪、左が黒髪、額に二ツ首のアートマを持った、少年にも見える<br />
中性的な少女は通路を更に飛んでいく。<br />
それから僅かもしないうち、彼女の体から光の粒子が分離して、<br />
更にいくつもの人影が姿を現した。<br /><br />
彼女が左右に目をやると、向けられた驚きの表情に、それぞれの嬉しげな笑顔が返ってきた。<br />
かつて同じ時間をすごした、もういなくなってしまったとばかり思っていた大切な人たち。<br />
アルジラ、ロアルド、シエロ、ゲイル、そしてヒート。<br />
ジナーナやルーパ、マダムにエンジェル、デイビッドの姿もある。<br />
我知らず滲んだ、歓喜の涙に震える声で少女は高々と叫んだ。<br />
「みんな……!わかるよ、私たちは、二人ぽっちじゃない!」<br /><br /><a name="a695"></a></dd>
<dt><a>695</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:30:34
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>皆が少女を先導するように高空を飛んでいく。<br />
見上げた先には、黒々とした空間がその口を開けて待っていた。<br /><br />
そこは「ニルヴァーナ」…太陽であるにもかかわらず、<br />
満天の星が輝き、かなたに星雲の陽炎を望む不思議な場所だった。<br />
彼女の周囲にはらはらと降る銀の光は、桜の花びらを思わせる。<br />
辺りを見回し、見下ろすと、光を湛える白蓮がほのかに明るく照らす地上で<br />
仲間たちが彼女を待っている。<br />
「みんな…」嬉しそうに呟くと、彼女は下降し、彼らの元に駆け寄った。<br /><br />
「よくここまで来たね、セラフ」<br />
銀の瞳の、片耳だけ白い黒猫が、首の二つの鈴を鳴らして彼女に語りかけた。<br />
「セラフ?私は…」<br />
怪訝そうに言葉を返そうとした彼女は、「自分の姿を見てごらん」とシュレディンガーに促され、<br />
今更のようにその体の変化に気が付いた。<br />
少女ではなく少年でもなく、また同時にその両方でもある自分の肉体を見回しているセラフに<br />
黒猫が説明する。<br />
「君たち二人の想いが一つになった時、君は完全な人間として生まれ変わった。<br />
今はまだ、サーフとセラ、二人の意識が残っているが、いずれそれも一つになる」<br />
「わたしとサーフが、一つに…」<br />
理解できるような出来ないような、そんな表情で相手の言葉を反芻するセラフに<br />
「君の旅も、もうすぐ終わる。人の無限の可能性を、神に示すんだ」<br />
耳をひくつかせた黒猫はそう言って、背後を振り返る。「大切な仲間たちと一緒にね」<br />
「あなたは一体…」<br />
膝を折って尋ねるセラフが尋ねると<br />
「もうすぐわかる」意味深にシュレディンガーは長い尻尾を振り、<br />
「意識の翼を広げてごらん。君に感じられないことなんてないはずだよ」<br />
言い残すと光の粒になって、消えた。<br /><br />
アルジラが一歩を踏み出し、立ち上がったセラフに微笑む。「行きましょう」<br />
「行くぞ」「行こうぜ」左右から、ゲイルとシエロが声を掛けた。<br />
笑みを返し、セラフは頷いたが、その時ふと、傍らから自分を見つめる赤い瞳に気付いて眉を曇らせる。<br />
「ヒート…」<br /><br />
ロアルドが仲間になる場合<br />
ヒートはかつての彼とはまるで違った、澄んだ瞳で優しく笑うとくるりと踵を返し、<br />
背後にいたロアルドの肩を後ろから軽く突き飛ばした。<br />
押し出され、たたらを踏んだロアルドが驚いた顔で振り返ると、にやりと片頬を吊り上げて左手を上げる。<br />
「行ってこい」<br />
「不器用な男だな、君は」<br />
呆れ混じりに呟いて、ロアルドはセラフたちへ向き直った。<br /><br />
ヒートが仲間になる場合<br />
無言のままのヒートの肩を、誰かが叩いた。<br />
振り向くとそこにはロアルドが立っている。<br />
「君たちにしか、できん仕事だ」<br />
地上にいた時と少しも変わらない、冷静でいながら暖かい、大人の男然とした声でそう言って、<br />
ロアルドは思い切りよくヒートの背中をどんと押した。<br />
無理からにセラフ達の前へと突き出されたヒートは一瞬憤慨したようにロアルドの方を振り返ったが、<br />
今だ言葉を無くしたままのセラフの表情に気がつくと、仕方が無いな、とでも言いたげに首をすくめて、<br />
「そんな顔すんな。俺が守ってやるよ」<br />
どこかガキ大将のような悪戯っぽい笑みを浮かべた。<br />
これまでに見たことがない笑顔。でもこれが彼本来の表情なのだろう。<br />
それを目にしたセラフの顔が、ぱあっと明るくなる。<br /><br /><a name="a696"></a></dd>
<dt><a>696</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:32:55
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>同行を決めた仲間たちを見回すセラフに、彼らが力強く頷いた。<br />
それに応えてセラフもこくりと頷き返す。<br /><br />
アルジラの隣からジナーナが、ゲイルの脇からルーパがそれぞれ踏み出すと、<br />
セラフの肩に手を置いた。セラフと視線を交わすと、二人はお互いが遺志を託した相手を振り返る。<br />
ジナーナはアルジラを。ルーパはゲイルを。<br />
そして二人は光になり、それぞれの相手の中に消えた。<br />
「ジナーナ…ルーパ…」<br />
彼らのぬくもりが残る両肩を抱きしめ、セラフは目を閉じ、囁いた。<br /><br />
瞳を開き、顔を上げるとそこにはエンジェルが立っている。<br />
「エンジェル…」沈んだ声のセラフに「私の負けだ」静かに言って、<br />
彼女は両のてのひらでふわりとセラフの頬を包み込んだ。<br />
「行きなさい、セラ、サーフ」<br />
慈母の微笑を浮かべると、エンジェルもまた光の粒に身を変えて、セラフと一つになった。<br />
(1の選択肢やデータコンバート、或いは2の選択肢次第で<br />
このイベントは発生しない場合があります。これ以降三人にちなんだ技を使えるようになる)<br /><br />
この後「太陽」の表面をウロつき、記憶が完全復活したらしいルーパに<br />
ロアルドとフレッド助けた礼を言われたり、シエロに<br />
「せっかく気合入れておっ死んだのに」と照れられた上に<br />
「シエロビーム出せば死ななくて済んだかも…」と謎の超必殺技の事で悔やまれたり<br />
ヒートに「その姿も悪かねぇぜ…行ってこい、セラ、サーフ」と体よく追っ払われたり、<br /><br />
(仲間だと「俺が最期に言ったこと、ちゃんと実践してるみてぇだな、サーフ<br />
くっつき過ぎな気がしねぇでもねぇが、まぁその姿も悪かねぇ…」と<br />
ボケなのか皮肉なのかようわからん事を言われた後<br />
「もう噛み付いたりしねぇから安心しな、セラ」と意味ありげに言われる。<br />
ロアルドだとこれ以上戦うのが余程イヤなのか「本来なら私の出る幕じゃないんだが」の<br />
残りたい未練タラタラトークか「私は少々疲れた…高みの見物と洒落込ませてもらうよ…」の<br />
真っ白に燃え尽きる寸前の人臭全開トークの二択)<br />
何故か来ていたマダムに勝手に未来を託されたりした後、太陽内へ。<br /><br />
セラフは○ルトラマンとエヴ○が結婚して出来た子供がゲイラカイトに弟子入りしたみたいな<br />
「アルダー」に変身して戦います。相手は懐かしの1の中ボスたち四人、プラスメガナダ。<br />
途中でリアルジラに<br />
「仕方なかったのよ…彼がサーフを殺そうとするから…だから私…<br />
本当はあの娘のことも気味が悪くて嫌いだった…でも、サーフのために私…<br />
ああ…私…なんてことを…」とか鬱になる告白をされつつ進んでいくと、<br />
「計り知れないほど巨大な情報のうねりを感じる」場所があり、それに身を任せるとラストバトル。<br /><br /><a name="a697"></a></dd>
<dt><a>697</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:35:38
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>「これが、神…」瞳を見開き、セラフが呆然と呟いた。<br />
彼女たちが見つめる先には、眩い光の粒子が生む渦に包まれ、<br />
青い稲光を発する奇怪な物質が浮いている。<br /><br />
「お願い、地球を元に戻して」<br />
人の大脳によく似たその姿に、セラフは懸命に訴えかけた。<br />
「悪いのは私なの…人は、いっぱい過ちを犯すわ。これからも繰り返すかもしれない。<br />
でも、必死に生きてるの。お願い、滅ぼさないで」<br /><br />
すると、彼女の声に応えるかのように、「神」は体を中心から開き、その内部をさらけ出した。<br />
「神」の中に詰まっていた混沌が一息に広まり、辺りを包んでいく。<br />
更に混沌の中心に、光が生まれた。眩さに両腕で顔を覆ったセラフの前に、<br />
いくつもの偶像を組み合わせたかのような、異様なモノが現れた。<br />
偶像の口が開く。一拍の後、セラフの脳内に稲妻が走り、彼女は思わず額を押さえた。<br />
「え…?」届いた声に戸惑い、問い返すセラフ。「自分と戦えって…」<br />
彼女の呟きに合わせるかのように像は唇を動かし終えると、<br />
バイザーに似た一つきりの目を無機質に光らせた。<br /><br />
凄まじいエネルギーを吹き上げながら「神」の体が崩れていく。<br />
断末魔だろうか、その唇が放つ情報の竜巻の中にセラフたちは飲まれる。<br />
が、それは何らの苦しみをもたらすものではなく、<br />
仲間達はただやり遂げた穏やかな表情をセラフに向けて、流れの中へと消えていく。<br />
彼らに静かに頷いたセラフもまた、極彩色の光の内に飲み込まれた。<br /><br />
セラフの中を、無数の光景が駆けていく。<br />
それは有史以来人類が何度となく繰り返してきた哀しみの歴史。終わる事の無い戦争のイメージ。<br /><br />
うっすらと目を開くと、混沌の中に浮いている。<br />
「ようやくわかった…神が何なのか…世界が何なのか…」<br />
小さく囁く彼女に、幾つものセラフが重なり、一つになる。<br />
「私はあなた…あなたは私…」<br />
内側から自らを突き上げる感情に、彼女はかすかな声を震わせる。<br />
「あなたは世界…世界は私…そして…一番大切なのは…」<br />
言い知れぬ後悔に、彼女は小さく身体を丸めた。<br />
「私たち、なんて愚かだったんだろう…こんな簡単な事に気づかなかった」<br />
溢れ出た涙の粒はきらきらと輝き、今なお太陽へと吸い取られつつある情報の一つに変じていく。<br />
「たった一言…たった一言の"情報"だけでよかったのに…」<br /><br />
「一番尊いものを、見つけたようだね」<br />
セラフの隣に緑光が瞬き、シュレディンガーが現れた。<br />
「この世界での、私たちの役目は終わったようだ」<br />
そう言うと、猫の姿は光の塊になる。<br />
それは長く伸び、人の形になると光はその足元から湧き上がるように消えて、<br />
残ったのはセラフそっくりの人影だった。<br /><br /><a name="a698"></a></dd>
<dt><a>698</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:38:03
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>「この先僕たちは、色々な世界を目にすることになる…<br />
でも、ここで得たものを忘れなければきっと上手くやっていけるさ」<br />
セラフによく似た少女の声で、彼は優しく頷いて、手を伸ばした。<br />
「人は、変われるの?」<br />
「気がつけば」<br />
心細げに差し出したセラフの手を「もう一人のセラフ」がしっかりと握った。<br />
「大丈夫。みんなも直に追いかけてくる…僕たちを結ぶ言葉は、一つなのだから」<br />
「セラフ」が確信に満ちた口調で囁くと、二人の姿は光になって、消えた。<br /><br />
夜が明けていく。<br />
不安そうな顔に曙光の最初の一筋を受けたフレッドはしばらくぽかんとしていたが、<br />
頬を照らす暖かさに気付くと思わず涙ぐんだ。<br />
「太陽が…太陽が元に戻ったぞ!」<br />
両手を突き上げ、飛び跳ねるフレッドの叫びに、<br />
窓辺の女性が昇る朝日をこわごわと待ち受けるが、びくりと身をすくめた彼女に<br />
光が何の害も及ぼさない事を知って、太陽と自分を嬉しげにあたふた交互に見比べる。<br />
オーバーオールの少女が微笑みながら空を見つめ、地上は人々の喜びの声に充たされた。<br />
「太陽が元に戻った」そのことのもう一つの意味を思い、フレッドは俯き、泣き続けていたが、<br />
すぐに拳で乱暴に目元を拭い、まっすぐに前を見上げる。<br />
カルマ協会の支配は終わった。これから自分には、やることがある。だから。<br /><br /><br />
「ゲイル、置いてくぞ!」<br />
森の中。過去を回想していたフレッドは、その声で現実に引き戻された。<br />
「待ってよ!行こう、ジェナ」<br />
ヘッドギアをつけた金髪の少年が、ミニスカートのトライブスーツを着た<br />
栗色の髪の少女の手を取り、赤毛の少年のマントの背中を追って、走り出した。<br /><br />
(そう、オレたちの旅は始まったばかりだ)<br />
穏やかに微笑み、フレッドは少年達の後を大きなストライドでゆっくりとついて歩く。<br /><br />
(願わくば、あんたたちと同じ名を持つあの子たちが、幸せでありますように)<br />
その心の声が聞こえたとでも言うのか?<br />
「大丈夫よ」<br />
不意に栗毛の少女が振り返り、にっこりと笑った。<br />
フレッドは一瞬驚きに目を見張ったが、やがてかすかに笑うと<br />
彼もまた彼女たちの後に続き、森の小道を駆け出した。<br />
彼らの姿を、豊かに茂る木々の上から眩く光る太陽が見下ろしていた。<br /><br /><a name="a699"></a></dd>
<dt><a>699</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2(早送りバージョン)</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:39:23ID:///foK9i</font></dt>
<dd>総まとめ。<br />
実は1の世界は仮想空間でした。現実は太陽が化石光線出す死の世界。<br />
ゲイル除く1のパーティーメンバーは太陽と唯一交信できるスーパー少女セラ(七歳)が<br />
現実の知り合いに似せて作り上げた(でも本物とは顔以外似もつかない)プログラム。<br />
取りあえずヒート以外はあっちゅー間にそろい、新キャラロアルドとカルマ「協会」から<br />
セラを奪還…しようと思ったらヒートが裏切ってた。<br />
セラ奪還なるもサーフがヒートと相打ちで戦線離脱。<br />
ショックでセラが作動させた太陽発狂加速装置を止める為次々とみんなシボン。<br />
復活したサーフとセラも自らを情報化して直接太陽に乗り込む為に死。<br /><br />
でもこの世界は全部が情報で出来てて、太陽は死んだ人の情報を吸い上げ<br />
転生体として地上に戻すファンタジー物質なのでみんな太陽で普通に再会。<br />
その途中サーフとセラが合体してセラフになる。<br />
太陽と戦った後セラフはこれまでの狂言回しだった猫<br />
(変身してもう一人のセラフに)とどっかいく。<br />
留守番してた、これまで仲間のマスコット的存在だった1のルーパの息子が<br />
成長しててサーフ達に似た子供となごんで終。<br /><br /><a name="a700"></a></dd>
<dt><a>700</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:42:44ID:///foK9i</font></dt>
<dd>以上でございます。待っててくれた人約束より遅くなって御免です。<br />
後半年以上も放置して申し訳ないでした。では。<br /><br /></dd>
<dt><a>716</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/22(木)15:45:58ID:KazZ+xMR</font></dt>
<dd>アバチュの人&怖い話しの人乙<br /><br />
しかしゲームであれだけ気色悪かったセラが書き手が好意的なだけで<br />
3倍増しくらいにまともなヒロインだ。心底乙。<br />
ちなみにエンジェルタンの「誇りに思う」の台詞は三廻輪廻を習得できない<br />
場合のみに聞ける台詞らしい。<br /><br /><br /></dd>
</dl>
<p><strong>DIGITAL DEVIL SAGA ~アバタール・チューナー2~</strong><br />
part12-47~58,652~661、part13-170~178、part14-318~325,504~509,511~513、part19-692~700,716</p>
<hr /><dl><dt><a>47</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:38:03ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>アバチュー2逝きますよ…続くんで一回ごとに短いver入れますよ…<br /><br /><a name="a48"></a></dd>
<dt><a>48</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:42:19ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>プロローグ<br /><br />
森の中の小道を子供たちの一団が駆けていく。<br />
「シエロ、ヒート、あんまり走ると危ないぞ」<br />
最後尾の二人にその更に後ろから保護者らしい若者が声をかけたが、ヒートと呼ばれた金髪の少年は、<br />
一旦は立ち止まったものの、「だって、サーフとセラが先行っちゃうんだ」と言うが早いか、<br />
ドレッドヘアの少年の後を追って走っていってしまう。<br /><br />
苦笑しながらその後姿を見守る青年に、おとなしく腕を引かれていた少年が、<br />
潅木の葉を摘みながら問いかけた。<br />
「ねぇフレッド、葉っぱは何からできてるの?」髪の色こそ違うものの、<br />
思慮深そうな眼差しは「誰か」を思い起こさせる。<br />
情報…、と言いかけたフレッドは、しかしすぐに「みんなの想いで出来ている」と言いなおす。<br />
人は世界が何で出来ているのか探ろうとする余り、それを単に情報としか定義できなくなったが、<br />
本当はこの森も人も全て同じ、みんなの想いで出来ているのだと。<br /><br />
自分たちを構成する、受け継がれた想いの循環。子供には難解すぎる話に<br />
困惑顔の少年と、その脇の茶色の髪の少女の肩を優しく抱きながら、フレッドは<br />
かつて世界が死にかけていた時のことを思い出していた。<br />
黒い太陽に支配され地獄と化したこの星に、それよりもっと過酷な地獄、<br />
お互いが喰らい合わなければ生きていけない世界から、彼らが現れたときのことを。<br /><br /><a name="a49"></a></dd>
<dt><a>49</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:44:31ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>テーブルの下で、片耳だけ銀色をした黒猫が顔を洗っている。<br />
廃墟化したアパートの一室。<br />
「じゃあ、ガラクタだらけのここがニルヴァーナだって言うの?」<br />
アルジラの問いに、窓の外を油断なく窺いながらゲイルが頷いた。<br />
彼らが目指していた「天上の楽園」ニルヴァーナは、実際に辿り着いてみれば<br />
人を石化させる黒い太陽と降り止まぬ銀の雨の違いを除けば、<br />
彼らが以前居たジャンクヤードと大して違いのない、荒廃した世界だった。<br /><br />
両方の世界をつなぐ門の崩壊の影響でバラバラにニルヴァーナに飛ばされた彼らたち六人のうち、<br />
サーフ、アルジラ、ゲイルは幸いお互いめぐり合うことが出来たがヒートとシエロ、それにセラの行方が<br />
未だに知れない。まずは彼らの知るべき全ての情報を握るセラを探すことをゲイルが提案する。<br />
そのためには今、彼らを狩るためにこの地下街一帯を占領している謎の白い装甲服の集団を<br />
何とかしなければならない。<br /><br />
この世界のことについてまるきり無知なサーフ達に、アルジラが道中で白服から助け出した少年、<br />
フレッドとその友人が呆れ顔で説明するには、あの白服は奇病を最初に発見した「マルゴ・キュビエ」率いる<br />
「カルマ協会」の兵隊で、最近悪魔の力を手に入れた彼らは人間を狩り、餌にするために<br />
沖合いの「カルマ・シティ」からやってくるのだという。<br />
奇妙なことにそんな残虐な真似をしていながらなぜか彼らは人類の救世主を自称しているらしい。<br /><br />
セラたちはそこに囚われているかも知れない。<br />
カルマシティへの進入経路を知る人物に心当たりがあるというフレッドに、<br />
ゲイルは同じくカルマ協会に囚われているフレッドの仲間の救出と引き換えにその人物への紹介を頼む。<br />
「騙そうとしてるんじゃないだろうな。大人は当てにならない」とフレッドは疑いの目を向けたが、<br />
同じ協会と戦うという戦士同士の交渉に子供と大人の違いが関係あるのかとゲイルが言うと、<br />
彼の答えに好感を持ったらしく、その人物、ロアルドの元への道案内を約束してくれた。<br /><br />
地下街の北。今にも崩れそうな大扉に向かって悪魔が体当たりを繰り返している。<br />
その背中にフレッド達は「いつまでも好き勝手やってんじゃねーぞ!」と威勢のいい罵声を浴びせたくせに、<br />
カルマ兵たちが振り返るとすかさず背後のサーフ達の影に隠れてしまう。<br />
「この子調子いいわね。シエロみたい」<br />
アルジラが顔をしかめ、サーフ達は敵に向かって足を踏み出した。<br /><br />
大扉の内側で扉に頬を張り付かせ、外からの合図に耳をすませていた少女が顔を輝かせた。<br />
フレッド達が協会をやっつけたという少女の言葉を言下に否定したものの、<br />
レジスタンスの男は脇の銀髪の男に物問いたげな視線を向ける。<br />
懐から取り出したウイスキーケースの中身をあおると、銀髪の男は<br />
「どうせいつかは破られる」と投げやりに呟き、扉の方へ顎をしゃくった。<br />
無数の銃が向けられる中、大扉がゆっくりと開いていく。<br />
やがて現れたサーフ達を見て、捕らえた奴の仲間ではないか、と<br />
副官らしき鳥打ち帽の男に耳打ちされた銀髪の男は一つ頷くと、侵入者たちの方へ進み出た。<br /><br /><a name="a50"></a></dd>
<dt><a>50</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:46:34ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>シエロを保護しているという銀髪の男、ロアルドに従って、<br />
レジスタンス組織「ローカパーラ」のアジトにやってきたサーフ達。<br />
アジト奥の一室。<br />
ロアルドがアルジラのグラスに酒を注ぐ手は、細かく震えていた。<br />
フレッドの父親の死後、以来父親の友人だった自分が彼の後見人をつとめているという<br />
ロアルドの話をさえぎって、ゲイルがシエロはどこだ、と切り口上に尋ねる。<br />
協会のスパイかと思ったので別室に控えてもらっている、と含みありげに答えて<br />
ロアルドは結局サーフ達をシエロに引き合わせることはなく、<br />
かわりに彼は初めて飲む酒にむせるアルジラに、あきれたような溜息をついた。<br />
「とても、作り物には見えないな」<br /><br />
彼の奇妙な言葉をいぶかる一行に、ロアルドは驚愕の事実を語る。<br />
サーフ達はテクノシャーマン…セラが協会の命令により作り出したプログラムで、<br />
協会は同じくセラに作らせたコンピュータ上の仮想空間…ジャンクヤードで彼らをお互いに争わせ、<br />
勝ち残った最も優れたAIをチップに変え、兵士の脳にインプラントするつもりだったと言うのだ。<br />
その技術は神の知恵を盗んで作られたものだという。<br />
「神?」おうむ返しに問うアルジラに、ロアルドは「神」を発見した人物について説明する。<br /><br />
二十世紀末…今から三十年ほど前から注目されだした異常現象。<br />
突然変異病原体の蔓延、異常気象、環境ホルモンによる生態系の破壊、そしてキュヴィエ症候群…<br />
約十年前、全ての異変が太陽から光にまぎれて降り注ぐ情報のせいだと看破した天才がいる。<br />
国際環境保健機構に所属していたジェナ・エンジェル。<br />
彼女の発見、それは太陽が巨大な情報集積体であり、太古の昔から地球環境に影響を与え続けてきた、<br />
いわば地球生物にとっての神であるということの発見に他ならなかった。<br /><br />
ロアルドが示したモニター上のエンジェルの写真にもサーフ達は驚かされる。<br />
集合写真の中にいる、国際環境保健機構時代のエンジェル。<br />
眼鏡をかけた金髪の青年の隣で柔らかく微笑んでいる彼女は、<br />
彼らがこの世界に来ることになったきっかけを引き起こした女性。あの教会塔の上で<br />
己の力を誇示するかのようにジャンクヤードを消去し、更に彼らの生存を楯に<br />
何事かをセラに強請していた女だった。<br /><br /><a name="a51"></a></dd>
<dt><a>51</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:48:12ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>彼女が発見したその「神の知識」がなぜ戦闘用強化AI等というものに利用されているのか。<br />
人はどんな知識や情報も殺し合いの道具に使う生き物だ。<br />
神の降らす災厄から逃れる為に設立されたカルマ協会もその例外ではなく、<br />
神と交信し、その情報を引き出せる電脳の巫女、テクノシャーマンを作り出した協会は、<br />
その軍によって歪んだ力で、更にサーフ達"煉獄の子"を生み出した。<br /><br />
セラを守ろうとしたサーフ達の感情は単なる創造主を保護するプログラム、<br />
セラのサーフ達に対する感情は芸術家が優れた完成品に抱く愛着のようなものに過ぎない。<br />
嘲るように言うロアルドの言葉を「嘘だ!」アルジラの叫びが断ち切る。<br />
怒りで悪魔化しかけた彼女を見て、ロアルドの脇に控えていた副官アディルが腰の銃に手を伸ばす。<br />
それを素早く見咎めたゲイルがアルジラを鋭く制止。<br />
我に返り、ソファに腰を下ろしたアルジラを横目にゲイルは話の先を促した。<br /><br />
情報の出所は協会内部にいる協力者。<br />
情報の真偽は彼から送られてきた悪魔化ウイルス…複雑な波動を持つ電磁波を試射された者が、<br />
サーフ達同様悪魔の力を得たことから明らかだという。<br /><br />
更に畳み掛けるようにロアルドは語る。五年前…突然太陽が黒化し、人を石に変える存在になった日に、<br />
何が起こったか知りたくはないか、と。<br />
続いて彼はモニター上にある人物のデータを映し出した。<br />
ジャンクヤードを作り出したアスラ計画の責任者、テレンス・E・ベック大佐。<br />
五年前の「神が狂った日」に死んだ彼はまるで人相は違うが、かつてサーフ達がこの現実で死んだ、<br />
実在した人間だと断言した、「ジャンクヤードのバロン・オメガ」だという。<br /><br />
現実で死んだはずの人間が仮想空間にいる謎、彼とサーフ達の因縁。<br />
その全てを知っているのはテクノシャーマンだと、更に焚きつけるロアルドを、<br />
回りくどい言い方はよせ、とゲイルが冷たく睨んだ。<br /><br /><a name="a52"></a></dd>
<dt><a>52</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:49:20ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>要するにロアルドたちの狙いはテクノシャーマン、セラの身柄だった。<br />
世界を元に戻す為、サーフ達にセラを協会から奪還しろというのだ。<br />
保護していると言いながらシエロに会わせようとしないのは、彼を人質として利用しようとしていたからだった。<br />
「足りないな」ゲイルが鼻で笑い、続いて先刻の話に出てきた悪魔化する力を得た人間の同行を要求すると<br />
「我々に化物になれというのか!?」とアディルが叫んだ。<br />
その言葉と態度にゲイルの目つきが鋭くなる。<br /><br />
「本音が出たな。…俺はお前たちに来いとは言っていない」<br />
低い声に、ロアルドとアディル、二人が目を見張った。<br />
アディルの嫌悪もあらわな態度からして、悪魔化の力を得たのはロアルドでもアディルでもない。<br />
その人間をこの場に連れて来ないという事は、何か特別な理由がない限り、<br />
ローカパーラの中にも居ないということになるし、そういう者がいるのかどうかは分からないが<br />
協会側の、まだウイルス感染していない人間を捕らえて試射した様子でもないらしい。<br /><br />
ゲイルは別にわざわざ新たに「化物」を作れと言った訳ではない。<br />
悪魔化できる人間…つまり化物が既にこのアジトにいるようなことを匂わせたにもかかわらずの、<br />
アディルのこの言葉…それはつまり…<br />
「殺したな」<br /><br /><a name="a53"></a></dd>
<dt><a>53</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:50:55ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>「本当かよ…ロアルド!?」<br />
ゲイルの断罪を聞いたフレッドの非難の視線にロアルドは動揺し、<br />
いつ自我をなくすか分からない、仕方なかったと言い訳のように言う。<br />
それを見て、お前たちは誇りとは無縁のようだ、と吐きすてたゲイルに、<br />
「AI風情が何をぬかすか!」<br />
激昂したアディルがついに銃口を向けたが、ゲイルの言葉は止まらなかった。<br /><br />
彼らに生まれた感情ゆえに、人食いの化物となった彼らのこれまでの道程は、より壮絶なものとなった。<br />
ゲイルにはそれが、作られたもの、ただのプログラムの産物だなどと、<br />
到底認められるものではなかったのだ。<br />
更に生きる為、自分自身の力で戦って来た彼らを「AI風情」と嘲り、「化物」と恐れる目の前の人間は、<br />
卑怯にも人質を取ってゲイル達に戦いを脅迫し、自分自身の力で戦うことを放棄したばかりか<br />
仲間さえも実験台に使って「化物」に変え、殺したのだ。<br /><br />
「これがニルヴァーナの人間か。ルーパが報われん」<br />
遣り切れなさに目を伏せたゲイルの肩にサーフが手を置いた。<br />
「そうだな、お前の考えているとおりだ…条件を飲もう」<br />
頷くとゲイルは立ち上がり、軽蔑の視線でロアルドたちを一瞥すると、<br />
セラ奪還の道を探して仲間達と共に部屋を出て行く。<br />
あくまでロアルド達の為ではなく、サーフ達とセラ、フレッドの為に。<br />
なすすべなくそれを見送っていたフレッドが、燃えるような目でロアルドを睨みつける。<br />
ロアルドは目をそらし、グラスの中身を一息に飲み干してテーブルに叩き付けた。<br /><br /><a name="a54"></a></dd>
<dt><a>54</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:53:39ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>無機質な白い部屋の中、ビープ音が規則正しく流れている。<br />
モニターに向かう医療作業員たち。<br />
移動式の生命維持装置の水中にマスクを付けられた全裸のセラが横たわっている。<br />
エンジェルとマダム・キュヴィエがガラス壁の外からそれを眺めていた。<br /><br />
「もう五年も経ったのね。あんなに小さかったのに」と痛ましげに言うキュヴィエに<br />
「中身はまだ七歳の子供です」エンジェルがそっけなく返す。<br />
サーフ達を失ったせいで頑なに従うことを拒否するセラを服従させるため、<br />
前部前頭葉の切除…思考、感情の除去手術を行うと言うエンジェルにキュヴィエが問う。<br />
エンジェル自身の精子と卵子から生まれた実の娘だから、セラを憎んでいるのかと。<br />
否定するエンジェルに、最近のあなたは全てを憎んでいるのではないかと心配になる、というキュヴィエ。<br />
エンジェルは片手をあげて見せて、確かに自分は変わったが、まだ人間を見捨てたわけではないと返した。<br /><br />
「ならいいの。手術は必要ありませんよ」<br />
言って踵を返すキュビエの背に、驚いたエンジェルが<br />
「ニルヴァーナ計画を先送りするのですか」<br />
責めるような声をかけると同時に、装甲服姿の協会の警備部長が駆け込んできた。<br /><br />
息せき切って説明するところによると、内部情報の漏洩が発覚したという。<br />
内通者の特定を全力で進めているが、どこまで情報が漏れたかもまだはっきりしない状態らしい。<br />
「まぁ。困ったものねぇ」<br />
言いながら背後のエンジェルに意味ありげな視線をよこすと、<br />
警備部長と共にキュヴィエは部屋を出て行った。閉まった扉を睨みつけながらエンジェルが呟く。<br />
「ばれたのはいい。だが、手術が必要ないとはどういうことだ」<br />
その時、かすかな鈴の音が響いた。<br />
はっとしてエンジェルは振り返ったが、そこには誰もいなかった。<br /><br /><a name="a55"></a></dd>
<dt><a>55</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:55:51ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>ローカパーラが内通者から得た侵入経路の情報に従って、<br />
サーフ達は今は使われていない海底ケーブルの通路を通り、カルマシティ内、<br />
捕虜収容所の真下まで来ていた。<br />
通路の終点で落ち着かなげに待っていた、協会の制服を着た男…<br />
ロアルドたちの言っていた内通者は、何故かサーフ達の姿を見て驚いた様子だったが、<br />
ゲイルに先を促されると彼らが取るべき作戦を説明し始めた。<br />
捕虜を解放し、その混乱に乗じて協会本部ビルにいるセラを奪取しろというのである。<br /><br />
ただ反乱を起こしても烏合の衆の捕虜ではすぐに鎮圧されてしまう。<br />
指揮は誰が取るのかとアルジラが問うと、思わぬ所から返事が返ってきた。<br />
「指揮は、ローカパーラが取ろう」<br />
一同が振り返ると、背後のドアからロアルドとフレッド、アディル、それに<br />
「おひさ」シエロが入ってくるところだった。<br />
目を見開くアルジラにロアルドが左手の甲を突きつける。<br />
「これでイーブンだろう」<br />
そこには彼女たちと同じ、悪魔に変じる力を持つもの特有の痣…アートマが刻まれていた。<br /><br />
ロアルドの陰から得意げにフレッドが姿を現す。<br />
あの後、彼はロアルドを、誇りを失ったものは悪魔以下だと散々にののしり、<br />
その酔いを覚まさせたのだった。<br />
罪滅ぼしもしなきゃならん、というロアルドを、アルジラは自分たちを協会に売る気ではないかと疑うが、<br />
ロアルドは自分がサーフ達に同行する、信用できなければいつでも殺していいとまで言い切る。<br />
彼の纏っているコートの左腕にはフレッドの帽子と同じ、<br />
サーフ達のトライブ「エンブリオン」のトライブカラーがペイントされていた。<br />
それでもまだ疑念の晴れないアルジラとは対照的に、ゲイルは「目を見ればわかる、というやつだ」<br />
ロアルドのことを信じることにしたらしい。<br /><br /><a name="a56"></a></dd>
<dt><a>56</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:57:08ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>収容所へ向かう階段を昇って行くサーフ達を見送った後、内通者の男は階段の陰に身を潜め、<br />
辺りを窺いながら無線機を取り出した。<br /><br />
「無線は使うなといったはずだ」<br />
協会本部。一人きりの広い室内にエンジェルの冷たい声が響いた。<br />
だが直後に冷静な声は驚きに跳ね上がる。<br />
「バカな。容れ物などなかったはずだ。データのまま出てきたとでも…」<br />
その時、エンジェルの脳裏を巨大な卵形をした施設の記憶が横切る。<br /><br />
しばしの沈黙の後、いつもの落ち着きを取り戻した彼女は部下に計画続行を命じる。<br />
「連中」にセラを奪還させるという計画を。<br />
無線を切った後、エンジェルは引き出しからリボルバー式の拳銃を取り出した。<br />
シリンダーを開くと六連式の銃倉の中には一発しか弾が残っていない。シリンダーを元に戻し、<br />
「そういうことか」銃を眺めながらエンジェルは一人ごちた。<br /><br />
「まったく、食えない婆さんだ…それでこそ、出し抜く甲斐もある」<br />
銃を片手に窓際へ歩み寄ったエンジェルは<br />
「こんな作り物…」<br />
邪悪な太陽の光から護られた外の景色を憎憎しげに睨みつけ、窓ガラスを殴りつけた。<br /><br />
続きます…まだロナウド加入…orz<br /><br /><a name="a57"></a></dd>
<dt><a>57</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0318:58:20ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>今回のあらすじ。<br />
1の最後でバラけた仲間。サ、ゲ、アがいきなり合流してる。<br />
セラ探す為アルジラが助けたフレッド少年がテロ組織ローカパーラに案内。<br />
江口保護ってるっちゅーロカパリーダーロアルド(アル中)が1のネタばらし。<br />
サーフ達はセラ(外見十六、七、実年齢七歳。エンジェルの娘。これはよそで分かる)が<br />
協会に言われて作った現実の兵士に乗っける為の戦闘プログラム。ジャンクヤードもプログラム。<br />
でもベック大佐現実にいるしサーフ達もいるって言うし謎知るにはセラ探さなきゃで<br />
ロカパ(リーダー始め皆悪魔嫌い)もセラが欲しいから江口人質で<br />
おまーらでセラ協会から拉致ってこいや言われてゲイルぶち切れ。<br />
でも言うとおりカルマシティの収容所下まで行ったらロアルド合流。<br />
フレッドに怒られて酔い覚めたんだってさ。そんで何か悪魔に変身できるようになってる。インドラ。<br /><br />
後エンジェル(ふたなり)は協会のボスのばーさん裏切ってるぽい。以上。<br /><br /><a name="a58"></a></dd>
<dt><a>58</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/02/0319:02:17ID:S4fhrNov</font></dt>
<dd>あーすまん。上のベック大佐いるしサーフ達もいるっていうし、は訂正。<br />
ベック大佐現実にいたし(もう死んでるけど)<br />
サーフ達もいたって言うし(でも大佐おまえらも死んだって言ってた)<br /><br /></dd>
<dt><a>652</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:14:58ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>分岐があると知り分岐探して一ヶ月…すっかり新作じゃなくなってましたごめんなさい。<br />
しかも今回分では分岐の結果出てませんダブルごめんなさい。<br /><br />
んでは行きますアバタールチューナー2-。最後にまとめ蟻ですよ…<br />
ああ後分岐は最後面罵ーに関係すると思われるものしか出してません。でわそゆことで。<br /><br />
捕虜収容所に潜入したサーフ達だったが、牢入り口に足を踏み入れるなり収容所の所長に出くわしてしまう。<br />
戦おうとするも所長のクヴァンダが使う「惑いの墨縄」を受け、サーフ達は手もなく捕らえられてしまった。<br />
反乱を成功させるには、あの所長を何とかしなくてはならない。<br /><br />
先に潜入していたローカパーラ構成員により、驚くべき事にこの収容所が捕虜を収容するだけではなく、<br />
人肉缶詰に加工する為の工場でもあることが判明する。<br />
手引きを受けて牢から脱出したサーフ達は、牢内の他の構成員たちの協力を受けて、<br />
狂死した監視員の腐肉を使った缶詰を作り、それを食べて弱ったクヴァンダを倒した。<br /><br />
開放の喜びに沸く捕虜収容所。<br />
ゲイルは地面に座り込んでいるフレッドの傍に歩み寄っていく。<br /><br />
「子供じゃないからな…仲間がどうなったか、わかってるよ」<br />
肩に手を置かれ、フレッドはぽつりと呟いた。その手には血まみれの帽子が握られている。<br />
手の甲で涙を乱暴に拭って立ち上がったフレッドは、ワークパンツのポケットから小さな本を取り出した。<br />
「こんな葉っぱ、何の役にもたちゃしねぇじゃねぇか」<br /><br />
ページの間に挟まれていたのは、一本のオリーブの小枝。<br />
何気なく背後から覗き込んだゲイルの顔色が変わる。<br />
「誇り高い男になれ」夢で見た、居るはずもない息子にそうことづてて斃れた男が、<br />
同時にこうも言っていたのだ。<br />
その子は、オリーブの葉を持っているはずだ、と。<br /><br /><a name="a653"></a></dd>
<dt><a>653</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:16:30ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>死んだ父親に貰ったという平和の小枝を睨みつけて、フレッドは叫ぶように言った。<br />
「こんなのがあったってダメなんだ!…早く大人になって力をつけなきゃ」<br />
父親の形見を投げ捨てようと振りかぶった小さな手は、<br />
「フレッド」次の瞬間ゲイルの大きな手に掴みとめられた。<br /><br />
「ルーパ…父親からの伝言だ」<br />
しかし、続いてゲイルの口から出てきたのは、ルーパが残したものとは違う言葉だった。<br />
「おまえの父親は素直な子になって欲しいと望んでいた」<br /><br />
「親父を知ってるのか!?」<br />
振り向いたフレッドに、ゲイルは一言一言、噛んで含めるように「父親の伝言」を伝える。<br />
「その涙は誇りに思え。いいんだ、子供で」<br />
だが、今のフレッドにはその言葉こそが必要だった。<br />
涙を堪えきれなくなったフレッドはゲイルに飛びつき、堰を切ったように泣き始める。<br /><br />
アディルたちが起こした混乱に乗じてサーフ達は協会本部へ乗り込んだ。<br />
が、妙な事に警備兵の姿が見えない。誘い込まれているらしい事はわかったが、<br />
何にせよセラ奪還の為に先に進むしかない。上階へ上ると協会の特殊部隊が襲い掛かってくるが、<br />
途中で逃げ遅れた協会職員を捕まえて聞き出すと、彼らの行動は独断による暴走だろうという。<br /><br />
上層階ヘリポートで特殊部隊のキラーエリート、「トリブヴァーナ」の三人組に遭遇。<br />
一旦は叩き伏せたものの、上の階にまでしつこく追いすがってくる三人組。<br />
言葉の端々から察するに、どうも誰かに対するライバル心ゆえの行動らしい。<br />
再度トリブヴァーナを撃退。<br />
「あの連中、一体何と自分たちを比べている」といぶかしむゲイル。<br /><br /><a name="a654"></a></dd>
<dt><a>654</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:19:39ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>協会本部上層部、医務室。<br />
セラが入っていた生命維持装置を覗き込むサーフ達。だが装置の中は空っぽだ。<br />
その時、「セラなら、もういねぇ」<br />
唸るような低声が背後からかかった。<br /><br />
「なんだ、まだ懲りねぇ…」振り向きかけたシエロの鼻先を掠め、投げつけられた白服が地面に落ちる。<br />
ローカパーラに情報を流していた、あの協会職員だ。<br />
開かれたドアの前に険しい表情で立っているのは、<br />
行方不明だったエンブリオンメンバーの最後の一人、ヒートだった。<br /><br />
「ヒート、一体…」アルジラの問いかけを振り払うようにヒートは腕をふるい、火球を投げつける。<br />
咄嗟にアルジラを庇って地面に伏せるサーフ。<br />
突然の凶行に唖然としながらも、ロアルドはヒートのまとう禍々しさに秘められた悲しみを看破する。<br />
「血迷ったか!」<br />
ゲイルが静止しようと飛びかかったが「俺はまともだ!」腕一本で弾き飛ばされた。<br />
訳がわからず、困惑するサーフたちの背後でモニターが点灯し、<br />
「その子は私たちに協力してくれるそうですよ」マダム・キュビエの姿が映し出された。<br /><br />
キュビエは語る。「余りありがたくない理由で」サーフ達はセラにとって特別だった。<br />
だからヒートは彼女の元に帰ってきたのだと。<br />
そしてキュビエとローカパーラを共倒れさせる為にエンジェルが内通者の裏で糸を引いていた事、<br />
エンジェルがセラの父親であり、母親でもある生みの親だという事実を告げる。<br /><br />
そして明かされるキュビエの目的。<br />
人類は滅びに向かっている。だから人の種を未来に残す為、ジャンクヤードの実験で手に入れた<br />
悪魔化ウイルスを使って、環境に適応し、キュビエ症候群にかかる事のない悪魔の体を手に入れる。<br />
意識の完全な悪魔化はセラの歌によって防ぎ、人肉工場で安定した食糧供給を実現、<br />
そして協会の保つ秩序の元で生きる価値があるものとそうでない者を選別し、<br />
管理されたチューナーの社会、ニルヴァーナを築こうというのだ。<br /><br />
「貴方たちも帰っていらっしゃい。無用な殺し合いや、飢えに苦しむことのない、平穏な暮らしを約束しましょう」<br /><br /><a name="a655"></a></dd>
<dt><a>655</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:21:16ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「ひとつはっきりした…ここはニルヴァーナなんかじゃない」<br />
人を人とも思わぬマダムの提案に、ゆるゆると起き上がりながらゲイルが低い声を押し出す。<br /><br />
マダムの言う「ニルヴァーナ」は、彼の思うそれとはいわば対極に位置する代物だった。<br />
誰もが悲しまずに生きていける世界、誰もが楽しく暮らせる、仲間が争わずに済む世界。<br />
それこそが彼の信じるニルヴァーナだったから。<br />
「俺は、誇りに賭けてお前たちと戦う。自分の意思でだ!」宣戦布告のように指を突きつけるゲイルに<br />
「仕方ありませんね…」マダムは溜息をつき、「秩序を乱すバグの処理」をヒートに命じる。<br /><br />
背後のドアが開き、入ってきた警備員の一群を背に、<br />
ヒートはサーフを睨み付けて猛々しい唸り声を上げる。<br />
「もう、あの時のようにはいかねぇ…本気で来い、サーフ!」<br /><br />
戸惑いながらもヒートを退けるサーフ達。ヒートは一同の前から姿を消す。<br />
「お前は俺が必ず食らってやる!」という呪いの言葉を残して…<br /><br />
ヒートの裏切りの衝撃から醒めやらぬまま、追っ手から逃れてサーフ達は上階へと上る。<br />
最上階で彼らを待っていたのは、彼らがこちらの世界へ来るきっかけとなった人物、エンジェルだった。<br />
彼女は驚くサーフ達にジャイロの鍵を渡し、セラがラボにいる事を告げる。<br />
この奇妙な行動の理由を尋ねるゲイルに、<br />
エンジェルは「連中に任せていては過ちを繰り返すだけだ」と、<br />
セラ救出に関するこの「貸し」に対する見返りとしてマダムの抹殺を依頼する。<br /><br />
彼女の目論見。<br />
つまるところそれは全ての人間を悪魔化させ、お互いに食らいあう弱肉強食の「混沌」を作る事によって<br />
究極の進化を導き、生きる意味を知る「解脱」者を作ろうという事だった。<br /><br />
彼女の言わんとすることを的確に先回りして言い当てるゲイルを、エンジェルが忍び笑う。<br />
流石随一の論理回路を持つアスラ、副作用さえなければ、と。<br />
悪魔に侵された、その副作用として人間性を得たコンピュータプログラム。<br />
こんな気の利いたジョークがあろうか?<br /><br /><a name="a656"></a></dd>
<dt><a>656</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:22:24ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「それで、お前の企みにもセラが必要と言うことか」<br />
またしても正鵠を得たらしいゲイルの発言に<br />
「頭が働き過ぎるのも困りものだな。詮索はそれぐらいにしておけ」<br />
不機嫌そうに呟いてエンジェルが背を向ける。<br />
その脳裏には、彼によって呼び起こされた、ある記憶が浮かんでいた。<br /><br />
朱に染まる世界。血塗れの青年が息も絶え絶えに語りかけている。<br />
「ジェナ…誰も、恨むな…」<br />
彼を膝に抱いた彼女は、泣きながら震える声で懇願している。<br />
「一人にしないで。お願いよ、デイビッド…!」<br /><br />
警戒音にゲイルがハッと顔を上げる。<br />
マダム派の兵士にエンジェル派の防衛線が突破されたとの無線に<br />
「行け、ぐずぐずするな」物思いから醒めたエンジェルが肩越しに背後を振り返り、硬い声を投げた。<br /><br />
飛び去っていくジャイロを見つめ、エンジェルは満足そうに語りかけた。<br />
「行くがいい、セラの愛しい喰奴(クラウド)たちよ」<br />
セラを求める以上、彼らはエンジェルの思うがままだ。<br />
野望に満ちた視線が、ふと首にかかった指輪に落ちる。<br /><br />
ジャンクヤードが消滅したあの時。<br />
崩壊のショックに呆然と座り込むのみだった彼女に差し伸べられた、ゲイルの手。<br />
まっすぐに自分を見つめる彼の、その手を取った自分の手を見つめ、<br />
しかしエンジェルは詮無いことを、と言わんばかり、静かに首を振る。<br />
そんな彼女の背後でドアが乱暴に開かれた。<br /><br />
先頭の協会兵が反乱罪に対する「処分」を告げ、次いで一斉に向けられる武器。<br />
一旦は背を向けたまま両手を上げたエンジェルだったが、すぐにその肩は小刻みに震え始める。<br />
「誰があのウイルスを、構成したと思っている?」<br />
嘲笑混じりに言いながらエンジェルは振り向き、胸元のアートマ「メイルシュトロウム」を<br />
見せ付けるように彼らの眼前に晒した。<br /><br /><a name="a657"></a></dd>
<dt><a>657</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:24:41ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>ミサイルが上空を飛ぶジャイロに向かって飛んでいく。<br /><br />
暗転の後。<br />
撃墜されはしたものの、サーフ達は墜落までに何とかセラのいる「EGG施設」を擁する<br />
「ラボルーム・研究施設群」に辿り着いていた。<br /><br />
地下へ地下へと進んだサーフ達の背後に荒い息と共に立つ者がいる。<br />
ここにまで追いかけてきた「トリブヴァーナ」の一人、「三仕官・地」だった。<br />
一人きりの彼を不審に思い、他の仲間の行方を尋ねるシエロ。<br />
獰猛な笑みで答える「地」の口元が血に染まっている。<br />
「仲間を、喰ったのか…?」<br />
愕然とシエロは呟き、アルジラが思わず口元を押さえた。<br /><br />
自分たち人間が作り物に負けることなど、あってはならない。その為ならば仲間も本望だろう、という<br />
続く「地」の言葉がシエロを激怒させる。<br />
「てめえが、仲間なんていうんじゃねぇよ」<br />
シエロの周りに巻き起こった風をちらと見やり、ゲイルは「地」に問いかけた。<br />
仲間を喰らい、何を受け継いだのかと。<br /><br />
石化したサンプルを砕き、「力を」と答えた「地」にゲイルは首を振った。<br />
怒りに燃えるシエロが大股に「地」へと歩み寄っていく。<br />
「気の毒だ。俺たちはそれ以上のものを継いできた…貴様は、絶対にシエロには勝てん」<br /><br />
「これで勘弁しといてやる。どこへでも行っちまえ」<br />
「地」から奪ったラボのカードキーをひらひら振りながら、シエロが吐き捨てた。<br />
膝を折り、何故だと問いかける「地」を振り返るシエロ。<br />
「喰うだけが強くなる事じゃねぇんだ」<br />
そういい残してシエロは崩れ落ちる彼の元を去る。<br /><br />
「地」に止めは刺さない。<br />
仲間の事を考えながら生きられるとこまで生きる、それが「地」が背負ってしまった業だから。<br /><br /><a name="a658"></a></dd>
<dt><a>658</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:26:28ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>研究室の資料を探る中、ロアルドが疑問を口にする。<br />
エンジェルの目指す淘汰による「悟り」。それは言葉を変えれば「滅び」なのではないか、と。<br /><br />
途中、研究施設の内部で厳重に封印されたガラスの塊を発見。怯える研究員が言うには、<br />
その巨大生物の名は「メーガナーダ」。五年前「ヴァルナ」と共に発現した最凶の喰奴だという。<br /><br />
殺すしかなかったヴァルナと違い、何とか封印できたメーガナーダとEGGから得た情報を使って、<br />
エンジェルは悪魔化ウイルスを構成したのだった。<br />
更に詳しく五年前に起こった事件の事を聞き出そうとするサーフに、逃げ腰だった研究員が<br />
「お前が一番よく知っているんじゃないのか!?」と声を荒げた。<br />
そこの仲間と同じ顔をした同僚を喰い殺したお前が、と。<br /><br />
その後ろでモニターに流れる神話のデータベースを見ていたアルジラが、何故か顔を青ざめさせている。<br />
「メーガナーダ…魔王ラーヴァナの子、雷の精にして不死なる者。もうひとつの名を…冗談でしょ」<br /><br />
地下三十階、「EGG施設」。部屋と呼ぶには巨大すぎる室内に鎮座する、<br />
無数のケーブルに繋がれた巨大な卵。<br />
中央の通路を駆けて行くサーフ達を、監視所からマダムが無言で見つめている。<br />
その張り出したひさしの上。銀の瞳を瞬かせる片耳だけ色の違う黒猫の姿があった。<br /><br />
自分を呼ぶ声に、EGG内のプールから救い出されたセラは目を覚ました。<br />
気づくと懐かしい顔たちが自分を心配そうに見守っている。<br />
「サーフ!」とりわけ彼女が心を砕いていた銀の髪の青年を間近に認めたセラは、<br />
思わずその身体にしがみつき、硬く目を閉じた。<br />
「生きていたのね。私、みんな消えちゃったって」「喜ぶのは後だ」<br />
嬉しげに囁いたセラの言葉を、緊張したゲイルの声がさえぎった。<br />
彼の視線を追って振り向く一同。<br />
視線の先、彼らがやって来たドアが気密音と共に閉じ、そこに立っていたのは…。<br /><br /><a name="a659"></a></dd>
<dt><a>659</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:28:24ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>「ヒート」不思議そうに問いかけるセラ。<br />
その時、辺りにマイクを通して、マダムの声が響き渡った。<br />
「セラフィータ、私に従いなさい」マダムの声は、諭すように訴える。<br />
巫女として神と人々の心を鎮める義務を果たし続けるならば、サーフ達は無事に帰すと。<br />
その間にも通路の両端でぶつかり合うサーフとヒートの視線。<br />
高まった緊張に押し出されるようにヒートが駆け出す。<br />
「待ちなさい!」慌てたマダムの制止も彼を押し止める事は出来ない。<br /><br />
戸惑うセラをゲイルに託し、立ち上がったサーフはまっしぐらに駆け寄ってくるヒートから<br />
少女の裸身を隠すように、その前に立ちふさがった。<br />
二人の距離が見る間に縮まる。<br />
背後に引かれたヒートの指が、一瞬で巨大な鉤爪を備え―――。<br />
ひさしの上で黒猫が力なく耳を伏せ、うちしおれて身を伏せた。<br />
鈴の音が響く。<br /><br />
ヒートに胸板を貫かれたサーフは、しかしながら彼をさいなんでいるに違いない<br />
激痛に耐えるような素振りさえ見せず、ただ黙ってかつての戦友を見下ろしている。<br />
「なぜ、避けねぇ」ヒートの問いに、微かに開いたサーフの唇が応えを返す。<br />
(ここで「仲間…だからだ」と「セラは…渡せない」の二択アリ)<br />
そのままサーフは不意を突かれたヒートのトライブスーツの胸元を掴み、有無を言わさぬ力で<br />
あとずさって行く。<br /><br />
自失したまま見守る全員の前で、彼らは開いたままだったEGG装置の扉を踏み越え、<br />
直後に高々と水音が上がり…「いやぁぁぁ―――!!」セラの悲鳴が周囲の空気を切り裂いた。<br /><br /><a name="a660"></a></dd>
<dt><a>660</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:29:40ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>見開かれた黒い瞳の奥で崩れ落ちる、ヒートと瓜二つの、しかし髪の色が違う白衣姿の青年。<br />
数歩離れたところから倒れる彼を眺めている黒髪の青年はサーフとそっくり同じ顔で、<br />
でもその頬に浮かんでいる微笑の邪悪さは、はっきり別人だと確信させるに足る程で…<br />
その光景を見ているのは今より幾分幼い容貌のセラ。<br />
視界を覆いつくすほどの生体ケーブルに囲まれて、<br />
だが破滅の引き金となった光景をはっきりと見てしまった証拠に、<br />
その眼差しは痛い位の驚愕と悲しみに支配されている…。<br /><br />
地響きを立てて作動していく巨大な装置。中に配されていたパラボラアンテナは一方向のみを向いている。<br />
黒猫が鈴の音と共に顔を上げ、頭上を見上げた。<br />
「は、HAARPが勝手に動いています」「馬鹿な、ケーブルに繋がれてもいないのに」<br />
上擦り声の報告を受け、マダムは顔を覆っていた手を下ろした。<br />
開かれた回線が映し出されるモニターは、同時にこちらからの有り得ない送信値を示している。<br /><br />
「五年前」を遥かに凌駕する量のある「情報」。それが、アラスカの施設を通して黒い太陽へと送信された後。<br />
都市中のありとあらゆる物が情報の光と化して渦を巻き、天へと昇り始める。…太陽に喰われているのだ。<br /><br />
悲鳴を上げて逃げ出した研究員を他所に、マダムはただ呆然とモニターに映る、<br />
喰われていく世界を見つめていた。<br /><br />
血臭に満ちた執務室。窓の外を振り仰いだエンジェルが僅かに口元を歪めて破滅の情景を眺めている。<br /><br />
絶え間なく鳴り響く警戒音。EGGに向かって駆け出すアルジラの腕を、ゲイルが掴みとめる。<br />
「退くぞ!」怒鳴りつける横顔に「サーフが!」アルジラは悲鳴のような声を叩きつけて抗う。<br />
「サーフは死んだ!」言い切って顔を伏せるゲイルに目を見開くアルジラ。<br />
「俺たちを生かすために死んだんだ!」断言するなりゲイルはショックに気を失い、<br />
ぐったりとなってしまったセラの身体を抱え上げる。<br /><br />
そんなたわ事は信じない。信じたくない。去っていく背中に目を閉じたアルジラは、<br />
しかしどうする事も出来ず、突き上げて来る想いから逃れるように顔を振ると、<br />
いらえのないEGGの水面に向かって、あらん限りの声でサーフの名を呼ぶのだった。<br /><br /><a name="a661"></a></dd>
<dt><a>661</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/0106:32:40ID:mTSrM8dy</font></dt>
<dd>今回のまとめ。<br /><br />
捕虜収容所(兼人肉工場)のボス(ウマ)にハアハア言われながらおっかけっこした挙句ゲリらせて倒したよ。<br />
でもつかまってたフレッドの親友とっくの昔に缶詰に。<br />
慰めようとしたゲイルはフレッドが1で出てたルーパの息子だって気づいたけど<br />
子供の無力に打ちひしがれる今の彼に「誇り高い男になれ」っつー父からの伝言は死者に鞭なんで<br />
「素直な子に。子供でいい」とウソ伝言。でも結果的にはこれでおk。<br /><br />
協会本部で協会のボス、マダムキュビエとモニタ越しに出くわす。<br />
マダムの主張=人間には存在価値があるのとないのがいるから<br />
協会が決めた価値ある人間を悪魔化させて、キュビエ病(石化病)から守ったるよ<br />
(悪魔化すると石化しない)んで価値ない人間=人肉工場で餌に。<br />
凶暴化したらセラの歌=これぞ協会の下の秩序ある理想郷(゚д゚)ウマー つまりロウ?(なのか?)<br />
出来るかそんなんゴルァすると裏切ってマダム側に付いたヒートけしかけて来る。<br /><br />
戦闘勝って(ヒート逃げた)上の階行くとエンジェルがセラの居場所教えてくれて<br />
そこまで行くためジャイロまで用意してくれてて代わりにマダムのタマ取ってこんかいゴルァ言われる。<br />
エンジェルの主張=この世は弱肉強食ですよ上からもらった秩序なんてイランですよ<br />
みんな悪魔化させてバトロワりますよ混沌ですよ。したら勝ち残った=進化した一番強いのが悟り開いて<br />
「解脱」れるよ(゚д゚)ウマー。(要するにカオス…なのか?)<br />
こっちの言う事も聞いてられるかゴルァ思うもののいつの間にかマダム派とエンジェル派が内乱になって<br />
ここにも飛び火してきて他に手もないんでジャイロくれ→脱出。でも途中で落とされた。<br />
けどセラいる施設にはしっかり着いてた。<br /><br />
EGG施設でついにセラと再会。でもそこに待ってたマダムが「セラフィータおとなしく巫女りなさい」<br />
んでまた襲ってきたヒートにサーフわざと胸グサー→ヒート「なぜだ」に二択で答えて<br />
サーフヒート道連れにEGGの中へサヨウナラ。セラ「イヤーーー」で気絶。<br />
記憶の中でヒートそっくりな人がぶっ倒れてサーフがそれ見ながら邪悪ニヤリ。<br />
現実ではアラスカのHAARP施設が勝手に作動した後地球の情報が光の渦と化して太陽にごちそうさま。<br />
マダム(゚д゚)ポカーン エンジェル(・∀・)ニヤニヤ<br />
ゲイル「サーフは死んだ!俺たちを生かす為に死んだんだ!」アルジラ「サーフぅぅぅぅ!」次回に続く。<br /><br />
いじょ。続きは三四日後にでも。<br /><br /></dd>
<dt><a>170</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:50:16ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>アバチュー続き。<br /><br />
ゲイルたちが去った後、EGG施設内。<br />
サーフ達が消えたプールの前で悲嘆にくれるマダムの姿があった。<br />
「なんという、これで人類もお仕舞…」<br />
近づく足音にも気づかず、くずおれ、両手で顔を覆った彼女の後頭部に銃口が押し付けられる。<br /><br />
乾いた銃声と同時に彼女が掛けていたサングラスが眉間から真っ二つに割れ、<br />
そのまま水中に前のめりに落ち込んだマダムから流れ出した血が、水面をじわじわと赤く染めていく。<br />
その様子を見るのも汚らわしいと言わんばかりにそっぽを向いたまま、<br />
エンジェルは柳眉を振るわせ吐き捨てた。<br />
「貴女は他人の心の機微に疎すぎる…人の歴史など、とうの昔に終わっていたのにっ…!」<br /><br />
「なんだってんだよ…!こんなの…ちっとも楽しくねーよ!」<br />
仲間同士で殺しあう、ありうべからざる事態に苛立ちを押さえられないシエロ。<br />
掛ける言葉をなくしてフレッドが背後のゲイルたちを振り返る。<br /><br />
ゲイルはロアルドに、恐らくタイムリミットであろう、太陽の光が本格的にシティに降り注ぐ<br />
日の出までにいまだ送信を続ける施設を止める手立てを尋ねた。<br />
EGGを壊そうと身を翻したアルジラを「それでは神を元に戻せなくなる」<br />
制止したロアルドは、「エネルギーの供給を止めれば、神のコピーといえど止まるだろう」と<br />
EGGに電力を供給している動力プラントの破壊を提案する。<br /><br /><a name="a171"></a></dd>
<dt><a>171</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:51:55ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>パワープラントはマダム亡き後、協会の支配権を完全に把握したエンジェルにより封鎖されていた。<br />
隔壁制御の為のパネルを破壊している兵士を倒したものの、<br />
この先の通路も同じ手段で破壊されているだろうことを予期して思案に暮れる一同。<br /><br />
その時ロアルドが、パネルの前へと進み出た。<br />
「破壊された回路に変わる何かが、断たれた電気情報を結べばいい。たとえば…」<br />
事も無げに言ったその左手のアートマが、眩い光を宿す。<br />
彼が左手を割れたパネルの内部に突っ込むのと同時に生じた、耳を聾せんばかりのノイズと、<br />
アートマが導いたかのような閃光が一旦室内を満たして消えた、一拍の後。<br />
地響きと共に、硬く閉ざされていた隔壁が開き始めた。<br /><br />
「すげえ」マヌケな姿勢で振り返ったまま、シエロは感嘆の声を漏らし、<br />
アルジラが低く口笛を吹き鳴らす。<br />
「"開け"という私の意志を、信号に乗せてみた」<br />
腕を端末から引き抜きながら種明かしをするロアルドに、<br />
「悪知恵だけじゃなくて、機転もきくのね」腕を組んだアルジラは、揶揄する風な声を投げた。<br /><br />
が、「手厳しいな」とロアルドが両手を広げると、<br />
「誉めてるの。…ちょっと見直したわ」彼女は優しげなウインクを返す。<br />
思いもしなかった相手の意外な言葉にロアルドは苦笑すると、照れたように視線を外して俯いた。<br />
「私のアートマは、ライトニングボルト…これぐらいなんともないさ」<br />
その様子を見やりながら、ゲイルがぽつりと一人ごちる。<br />
「なるほど"情報"か…電気信号も情報ならば、人の意思もまた然り…<br />
僅かだが、神とやらが見えてきたな」<br /><br /><a name="a172"></a></dd>
<dt><a>172</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:53:36ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>先行するロアルドらの後詰として奮闘する、アディル達ローカパーラに手を焼く協会兵。<br />
苦戦の報告を受けたエンジェルは<br />
「ローカパーラ(世界を守る神々)だけに、か」<br />
意味深な呟きを漏らした後、研究施設内のメーガナーダの開封を命じる。<br /><br />
「またとない相手だ。神話になぞらえて葬ってやれ」というエンジェルに、<br />
「あれ」ではテクノシャーマンをも殺してしまうのでは、と解脱を遂げられぬ可能性を恐れ、逡巡する兵士。<br />
しかしエンジェルの私を信じろ、必ずお前たちを導くという力強い言に、<br />
兵士はすぐに迷いを捨て、飛び出していった。<br />
その後姿を見送ったエンジェルは、周囲の兵に聞こえぬ小声で独白する。<br />
「無駄な事を。あの娘が望んでいる以上、もう止まりはしない。放っておいても長くはないが…」<br /><br />
幾つもの隔壁を開き、道を急ぐゲイルたち。<br />
その時ロアルドの腰で無線機が音を立てる。<br />
「アディルか。どうした」「神よ…なんだこいつは」<br />
回線の向こうに問いかけたロアルドの耳に届いた、アディルの震え声。<br />
次いで響く絶叫に「アディル、おいアディル!」慌てて呼びかけたロアルドは、<br />
彼に応えるノイズ交じりの不気味な声を聞く。<br />
「イン…ドラ…」<br /><br />
防衛線を「何かとんでもない奴」によって突破された事を悟ったロアルドは、<br />
さっき通り過ぎてきたばかりの隔壁を踏み越え、コンソールの前に立った。<br />
不安げな声を掛けるフレッドに<br />
「大丈夫だ。悪知恵には長けている。せいぜい引きずり回してやるさ」<br />
閉まり始めた隔壁の向こうからロアルドは硬い笑みを投げ、踵を翻す。<br /><br />
「ロアルド」その背中に、アルジラが声を掛けた。<br />
「エンブリオンの色は、敗北に染まらない。だから…」<br />
トライブカラーが染め抜かれたコートの左袖を振って彼女の言葉に応えるロアルドの後姿は、<br />
隔壁に遮られてすぐに見えなくなった。<br /><br /><a name="a173"></a></dd>
<dt><a>173</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:55:15ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>制御室。キーボードの上をでたらめに這い回るゲイルの指。<br />
迷った挙句ボタンの一つを押してみる。<br />
それで落ちたのは残念ながら施設の電源ではなく室内の光源だ。<br />
切り替わった非常灯の照らす薄暗い部屋の壁のモニターが瞬き、<br />
何の影響も受けていないアンテナの様子を映し出す。<br /><br />
「ムダよ。あれは神のコピーだもの。本当は、人間が作るエネルギーなんか必要じゃないんだわ」<br />
冷え冷えとした声が脇から掛かった。いつの間にか気絶から目覚めていたセラだ。<br />
「どうすれば止まるの」<br />
進み出たアルジラが強い調子で訊くが、セラは無言で首を振るだけだ。<br /><br />
状況を誰よりも把握している人物の言に、途方に暮れるゲイルたち。<br />
その時、「フレッド、聞こえてるか」ワークパンツのポケットから響いた問いかけに、<br />
フレッドは目を見開き、ポケットから無線機を引っ張り出した。「ロアルド!」血の跡が転々と続く通路。<br />
足を引きずりながら、送信は止まったかと尋ねるロアルド。<br />
「ダメだ。止まらないよ」こみ上げた涙で声を揺らすフレッドを<br />
「諦めるな!」と叱り付けるロアルドの声もまた、語尾が不明瞭に乱れている。<br />
ただしこちらは、感情のせいでなく跳ね上がる呼吸の為だ。<br /><br />
「まだ何か、手があるはずだ」<br />
新たな血の跡を残しながら、ロアルドはふらふらと曲がり角の陰に身を隠した。<br />
ぎこちなく壁に預けた背中に、次第に大きくなる振動が伝わってくる。<br />
居場所を尋ねるゲイルに応えず、加勢に向かおうとするアルジラを<br />
「無駄だ」にべもなく遮り、壁の向こうを振り返ったロアルドは、<br />
血塗れた腹を抑えた震える手のひらを、喘ぐが如く開閉させた。<br /><br />
「今の我々では…束になっても奴に敵わない」<br />
絶望的な事実を平板な声で告げる耳元に、地響きを伴った巨大な生き物の足音と、<br />
彼がその身に宿した雷帝の名を呼ばわる声が近づいてくる。<br />
「イン…ドラ…」<br />
うんざりしたように目を閉じ、首を戻したロアルドは、薄目の向こうに非常灯の点ったドアを見つけて<br />
目を見開いた。ややあって、荒い呼吸を会心の笑みで押さえつけ、<br />
わななく腕をあげた彼は無線機に語りかける。<br />
「…最後の悪知恵を思いついた」<br /><br /><a name="a174"></a></dd>
<dt><a>174</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:56:51ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>最後の悪知恵。それは動力プラントを暴走させ、追跡者ごと心中しようというものだった。<br />
早く逃げろと言い残し、不帰を覚悟した一石二鳥の計画を実行せんと、<br />
再びよろめきながら歩き出したロアルドを、泣きながら止めるフレッド。<br />
そんなかつての親友の息子に、ロアルドは静かに語り出した。<br />
「フレッド。君に、謝らなくちゃならん」<br /><br />
フレッドの父、グレッグが死んだのは自分のせい。臆病者の自分の責任だと。<br />
寄りかかるようにモニターに手を着き、振り絞るようにして光を生んだ手刀で回線を繋ぐ。<br />
「親友を見捨て…今まで…おめおめ生きてきた」<br />
やがて開いた扉の中によろばい入る彼の背後に、通路一杯を塞ぐほどの巨体を揺らし、<br />
メーガナーダが現れた。<br />
「ちっぽけな…価値のない命を守る為にね」<br /><br />
インドラジット…インドラを倒す者、という別名を持つ怪物の足音を背後に従え、<br />
べったりと血が染み付いた無線機を捨てたロアルドは、部屋の奥へと覚束ない歩みを進めた。<br />
奥の手すりに取りすがり、何度か深呼吸して息を整える。<br />
その向こうに広がるのは巨大な室内発電施設だ。<br /><br />
「カルマってやつは…巡り巡って、最後には…自分の所に還ってくる」<br />
これまで唾棄すべき他人の死を語るように、暗く皮肉げだった彼の声が、<br />
死に場所と決めたそこを覗き込んだその時、初めて感情の波にひび割れた。<br />
「今度は俺の番ってことだよな…グレッグ」<br />
逆光に照らされたロアルドの顔は、後悔するようであり、諦観したようであり、<br />
今なお許しを乞うようでもあり、それでいてなお、どこか安らぎを得たようでもあった。<br /><br /><a name="a175"></a></dd>
<dt><a>175</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:58:09ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>血の跡を踏んで近づくメーガナーダと、手すりにもたれたまま動かないロアルド。<br />
二つの光景を移すモニターの間におろおろと視線をさまよわせていたフレッドは、<br />
出し抜けに身を翻すと出口に向かって駆け出した。<br />
だが右手をあっさりとシエロにつかまれ、引き戻される。<br /><br />
敵う相手ではないと諭されながら、「放せよ!」それでもなお体をよじり、抗うフレッド。<br />
その様子を見て、ひざまずいたアルジラが、現実を見るまいとでもするかのように<br />
再び目を閉じてしまっていたセラの肩を強く揺すった。<br />
「見なさい、アンタの為に、皆命を張ってるのよ」<br />
効果がないと見るや、「ちゃんと見て!正気に戻らないと許さないわ」<br />
今度は両手で肩を掴み、更に強い力で揺すりつける。<br />
だが、大きく体を揺すられながらも、セラは固く閉じたままの瞳を開かない。<br /><br />
「お願いだから、戻ってよ…」<br />
取る術をなくしたアルジラは、反応のないセラの頭を掻き抱くようにして抱え込んだ。<br />
零れ落ちた涙がセラの頬を濡らす。涙は透明な雫となって弾け、そして…。<br />
セラの右頬に、サーフの物と同じ、ウォータークラウンのアートマが出現した。<br /><br />
自分の身体に生じた、不思議な感触に目を開いたセラが、恐る恐る右頬のあざを確かめる。<br />
アートマは指先が触れるに従って光を生じ、光は急速にその光量を増す。<br />
「サーフ?」セラは光に問いかける。<br />
「サーフなんだね…」<br />
片手は頬に触れたまま、身を伏せた彼女の瞳から零れ落ちた涙の雫が、床に点々と染みを作った。<br />
「ごめんね、サーフ」<br />
消えていく光、しかし確かにセラにはサーフの力が受け継がれていた。<br />
「ごめんね…」泣き続けるセラを痛ましそうな顔で見守っていたアルジラだったが、<br />
それはほっとしたような苦笑に取って代わる。もう大丈夫。これでいい、とでも言うような。<br /><br /><a name="a176"></a></dd>
<dt><a>176</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1017:59:50ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>涙を拭ったセラは、これまでと違った強い表情で自分をEGGに連れて行ってくれ、と懇願した。<br />
彼女が狂わせてしまった、神と再び話してみるというのだ。<br />
セラの決意に満ちた言葉を受け、アルジラはロアルド救出とメーガナーダ打倒の為、<br />
ここに残る事を申し出る。<br />
一人じゃ無理だ、と当然の懸念をシエロが発するが、アルジラは<br />
「あたしを誰だと思ってんの」と笑い、応じない。<br /><br />
「また、後でね」場違いなほど明るい表情でウインクするアルジラを、<br />
ゲイルは生真面目に唇を引き結んで見つめていたが、彼女が何かいいたげに真摯な目線で見返すと<br />
「ああ…行くぞ」一つ頷いて一同に呼びかけた。<br />
シエロが唇を噛み、フレッドは無言で帽子を被り直す。喉が詰まったような表情で目を伏せるセラ。<br />
アルジラの視線の意味を、誰もが口に出さずとも理解していた。<br /><br />
「お前に俺が理解した、ただ一つの事を伝えておこう」<br />
部屋を出る前、セラにゲイルが語りかける。<br />
「命とは、つながり巡るものだ。生きる者は皆、己を支えてくれた他の命に報いる義務がある。<br />
避けられない戦いがあるだろう。倒さねばならない敵もいるだろう。<br />
そして、いつかはお前が敗れる時が来る。<br />
だが、誰も恨むな。おまえ自身を含め、誰ひとりもだ」<br /><br />
プラント脱出の為、通路を進むセラ達に、生き残った最後のプラント警備兵が襲い掛かってきた。<br />
右頬に指を這わせ、セラはかつて彼女を支えてくれた、今はもう居ない大事な人に向かって語りかける。<br />
「命は、繋がり巡るもの…サーフ、私、もう逃げないよ」<br /><br /><a name="a177"></a></dd>
<dt><a>177</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1018:00:48ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>発電施設前通路を全力で駆けてきたアルジラは、血の跡を追って室内に飛び込み、目を見張る。<br />
血の海の中に横たわるロアルド。<br />
その上に覆いかぶさって彼の血を啜っているのは、羽のような甲殻と、無数の口を持つ巨獣。<br />
遅すぎた全てに、絶望の吐息を漏らしたアルジラだったが、それはすぐにたぎるような怒りと化して<br />
眼前の敵に向かう。<br />
喉も裂けよとばかりに雄叫びを上げながら、アルジラはメーガナーダの元へ駆け出していった。<br /><br />
無人になった制御室にビープ音が響く。室内の非常灯が異常を告げて瞬いていた。<br />
スパークを散らす発電施設。<br />
女神プリティヴィーへと姿を変えたアルジラが、手摺に叩きつけられた。<br />
ぐにゃりと曲がった鉄の棒から震える身体を起こそうともがくが、僅かに背中が離れた途端、<br />
残酷なまでの勢いで伸びた、あぎとを持つ腕に再度手摺に磔にされる。<br /><br />
牛とも虎ともつかぬ声で唸る化物に首筋を押さえつけられながら、<br />
「電気が好物なんでしょ…インドラジット」彼と同じく人外のものへ変じたアルジラは<br />
ごろごろと篭った声で問いかけた。<br />
鉤爪を備えた左腕を鞭のように解いて長く伸ばし、<br />
「この街全部の電気…たんとおあがり!」<br />
電力最大開放レバーを引こうとした途端、それはメーガナーダの口の一つに噛み潰される。<br />
アルジラの絶叫と共に、一度はレバーに掛かった腕が力なく床に落ちた。<br /><br />
が、それと入れ違いに伸ばされた、彼女の物とはまた別の腕がある。<br />
手の甲にライトニングボルトのアートマを刻んだ、人間の腕。<br />
そこに居たのは、いまわの際の力を振り絞って、痙攣する体を<br />
必死にコンソールの上に押し上げるロアルド。<br />
アルジラのほうを振り返り、死相の浮き出た横顔に、精一杯の笑みを刷く。<br />
メーガナーダに圧し掛かられたプリティヴィーの顔に、アルジラの微笑が重なり、<br />
頷くと同時にその首が折られる。<br />
それを見届けたロアルドは崩れ落ちるようにレバーを引き…どこからか、鈴の音が響いた。<br /><br /><a name="a178"></a></dd>
<dt><a>178</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">05/03/1018:02:15ID:puwsjkWn</font></dt>
<dd>今回のまとめ。マダム、エンジェルによりシボン。<br />
EGGアンドHAARP止める為動力プラントへ。ロアルド隔壁破りに大活躍。<br />
エンジェルがEGGに封じられてたメーガナーダの封印解いて、メガはロアルド追って来るんで<br />
ロアルド残り、アルジラの涙でなんでかセラにサーフの力移る。<br />
みんな脱出した後アルジラロアルド助けに行ったけど結局二人でメガナダと心中。<br />
ゲイルの走りは重そうです。以上。<br /><br /></dd>
<dt><a>318</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:02:23ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>ヴァルケンじゃなくて俺が行きますよ…<br />
てことでアバチュー2いきます<br /><br />
セラたちは燃えさかる発電施設から脱出し、再びEGG施設へと向かう。<br />
だが二度目に足を踏み入れたそこは、先刻のそれとは全く異なった様相を呈していた。<br />
薄暗い室内。壁面の至る所に黒い影が生まれ、影の中で触手に絡め取られた<br />
かつての職員たちが狂った呟きを漏らしている。<br />
通路と通路の間は次元を超越して繋がり、以前記憶していた道順がまるで用を成さない。<br /><br />
セラによると神の情報が漏れ、この空間を構成する情報そのものが変質してしまったせいらしい。<br />
「EGGに何かあったのかもしれない」と不安げに言うセラに、<br />
「これも神の成せる業か」眉を顰めたゲイルはそもそも神とはどういうものなのかと問いかける。<br />
しかしセラ自身にもそれはよく理解できてはおらず、<br />
とても大きな存在としか言いようがないのだという。<br />
神と話すと言ってもそれは普通のものとは違い、彼女はただ包まれて、感じるだけだなのだと。<br /><br />
「それが、対話だと?」更に問うゲイルに、<br />
人間のような明確な意思があるのかどうかもわからない、とセラは俯いてしまう。<br />
「マジですか。そんなんで説得とかできんのかよ」シエロが頭を抱えた。<br />
しかし顔を上げたセラはシエロを透き通るような瞳で見つめ、ぽつりと呟く。<br />
「でも、暖かかった」<br /><br />
神が世界を消そうとしている事と、人がこれまで生きてきた事は、無関係ではない筈。<br />
人が何か大切な事に気付いていないから…。恐る恐る、シエロがセラの言葉を繋ぐ。<br />
「呆れられた?」それにかすかに頷くセラ。<br />
「そこに神の意思と交渉の余地を感じるというわけか」<br />
ヤケに物分りのいいゲイルをシエロがからかう。<br />
「お得意の"理解不能だ"はどうしたんだ、ブラザー」<br />
それに静かに応えるゲイルの瞳は、黒く濁った通路の先を見つめていた。<br />
「理解できない事は、感じるしかない…あいつらの死を、無駄にしないためにもな」<br /><br /><a name="a319"></a></dd>
<dt><a>319</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:03:57ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>地下三十階に達したセラ達を、異様な巨大植物のような悪魔が待ち受ける。<br />
EGG施設と一体化し、悪魔「ヴリトラ」となったヒートだった。<br />
「最強の力を手に入れた、後はお前を喰らうだけだ」<br />
未だに彼女に対する妄執を剥き出しにする彼の前にセラが進み出る。<br />
それで気が済むならそうすればいい、でもその前に神と話を、と懇願する彼女を<br />
「神は俺だ」と遮るヒート。<br />
「そうじゃなくて……」悲しげに首を振るセラの前にゲイルとシエロが進み出る。<br />
「もういい、セラ」「そうだな。ゆっくり話そうや、ブラザー。お前さん好みの方法でさ」<br /><br />
始まった戦いの最中、何故かヒートは自らの攻撃や弱点を教え、セラ達を導くような奇妙な行動を取る。<br /><br />
戦闘の衝撃に激しく振動するEGG施設。<br />
内部プールの底にサーフが横たわっている。その枕元に黒猫がすたすたと歩み寄った。<br />
「セラの命を繋いできた水が、君を救った。起きられるはずだよ」<br />
尻尾をくねらせながら、優しい青年の声でサーフを促す。<br />
うっすらとサーフが瞼を開くと、立ち上った自らの呼気の泡に霞んで、<br />
プールの天井に浮かぶマダムの死体が見えた。<br /><br />
そのまま神に還ってしまえば楽かもしれない。<br />
でも、縁を結んだ人たちへの責任を果たさなくてはならないはず。<br />
諭すような言葉にぼんやり振り向けば、揺れる視界の向こうに片耳だけが銀色の黒猫の姿が映った。<br />
シュレディンガー。そう名乗った猫は、<br />
この世界には、存在を表す情報が必要だから、と瞳を光らせた。<br />
「この世の全ては、情報によって成立している。その点は、人も君も僕も、この世界だって同じさ」<br />
輝きを増すその怪しい金の光の中にサーフは包み込まれていく。<br /><br />
「神はその始原であり終着点。輪廻の輪そのものだ。<br />
悟りとは、それを理解した先に見えるもの…何が一番大切かを感じることなんだ」<br />
気が付くと月の上に浮かび、遥かに地球を俯瞰している。<br />
「そのために世界があり、君がいる。今は理解できなくとも、ね」<br />
星の海の中に座り、猫が言った。「さて、今は君が知りたい事を見せてあげよう」<br />
ここなら、それができる。そう呟くと猫は頭上の星々を見上げた。<br /><br /><a name="a320"></a></dd>
<dt><a>320</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:04:49ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>歩道橋の欄干に手を掛けてEGGを見ている白衣のサーフの背に、<br />
同じく白衣のヒートがイラ付いた声を投げつける。<br />
「いつまでこんな実験に手を貸すつもりだ、<br />
あんな水に浸かっていなければ、生きるすらできない子供を…」<br />
辛そうに顔を伏せるヒートを見やりもしないまま、サーフが彼をあざ笑う。<br />
「だからお前は僕に勝てない」<br /><br />
驚きに見開かれ、次いで憎しみに歪められるヒートの瞳の前で、<br />
「人の道とやらにとらわれて、真の偉業を成した奴がいるか。<br />
人が知りたければ腹を裂く。心が知りたければ心を壊す。そうやって科学はここまで来た」<br />
分かっていない愚か者にしたり顔で講釈をぶってやりながら、サーフは通路の中央に歩み寄った。<br /><br />
ストレッチャーに乗せられた幼いセラが、<br />
アルジラそっくりの金髪の看護婦によってそこを通りかかろうとしていた。<br />
サーフに向かって意味ありげな、艶めいた流し目を送るアルジラ。<br />
ストレッチャーが彼の前で止まると、瞳を開いたセラは力ない声で囁き、弱弱しい笑みを浮かべる。<br />
「セラ、今日は2分もお日様とお話しできたよ…」<br />
「よくがんばったね」優しく言うサーフの頬にあるのは、先刻までの邪悪さがウソのような、<br />
いかにも優しげなほほえみだ。<br /><br />
「10分お話しできたら…お船に乗せてくれるんでしょ」<br />
無邪気な問いかけにヒートは思わず拳を握り締めるが、<br />
「約束だからね」サーフはにっこりと頷き、セラの髪を撫でる。<br />
彼の豹変振りを露とも知らず、天にも昇るような喜びを表すセラを見るに耐えかね、<br />
ヒートは荒々しく顔を逸らすとその場を立ち去っていった。<br />
怯えた表情でそちらに目を遣り、セラが呟く。「あのお兄ちゃん…怖い」<br /><br /><a name="a321"></a></dd>
<dt><a>321</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:06:06ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>晴れ渡る海。どこまでも続く砂浜の波打ち際には、何故か無骨な戦艦が浮かんでいる。<br />
浜辺でビーチボールに興じるサーフ、セラ、ヒート、アルジラ、そしてシエロら五人。<br />
セラのパスを受け、シエロの顔面に強烈なスパイクを見舞うサーフ。<br />
たまらずシエロは尻餅をつき、ガッツポーズするサーフにはしゃいだセラが飛びつくが、<br />
彼女の姿は本来の幼女のものではなく、何故か彼と同じくらいの年頃だ。<br /><br />
怒り狂ったヒートがボールを投げつけ、顔でそれを受けたサーフが砂浜にひっくり返る。<br />
楽しそうに笑うアルジラ、シエロ。ヒートも笑っている。誰一人声をあげないおかしな世界で。<br />
彼らの髪は、セラを除きどういう訳か現実の彼らとは違う奇妙にハデな色をしている。<br /><br />
「本物そっくりの仮想空間ですって?」驚愕するマダムの声。<br />
エンジェルの声が応える。<br />
「我々も知らぬ間に、19号が作っていました。完璧な自我を持つ、人格プログラムすら…」<br />
驚嘆する様子の二人にサーフが吐き捨てる。<br />
「おママゴトの箱庭ですよ。くだらない感傷と自慰の産物だ。ヘドが出る」<br />
画面には彼の言葉を象徴するように、砂の城が映し出されていた。<br /><br />
「素晴らしい」見せられた映像を前に、ベック大佐は感嘆の息を吐いた。<br />
早速利用プランを練らせよう、と左右のエンジェル、マダムに目をやる彼を、<br />
「待ってください」ヒートの上げた声が遮った。<br />
「あの子のストレスはもう限界まできてるんだ、老化速度もどんどん早くなってる。<br />
これ以上負担をかけるべきじゃない」悲痛な様子のヒートに眉を寄せたベックは、暫しの後に顔を上げ、<br />
「どうなのかね」前方に向かって意味ありげに問い掛ける。<br />
その視線の先、鼻で笑い、振り返ったサーフが朗らかとさえ言える声で事も無げに応えた。<br />
「問題ありませんよ、ベック大佐」<br />
息を呑んだヒートは驚愕と怒りに最早瞬きもできないまま、その背中を見つめる事しかできなかった。<br /><br /><a name="a322"></a></dd>
<dt><a>322</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:07:34ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>EGG施設、プールの内部。何本ものコードに繋がれ、眉を寄せ、眼を閉じている幼いセラ。<br />
規則的な機械音と共にオペレーターが報告する。<br />
「サンサーラのデータ循環システムにエラー発生。コード8081454。ステージ2から5、ダウンします」<br />
その声に反応したようにセラがかすかに悲鳴をあげ、小さな身体をぐんと弓なりにそらせた。<br />
これ以上は危険だと上擦った声で進言するオペレーターを苛立たしげに遮り、<br />
「まだ耐えられるはずだ」とサーフは活性剤の投与を命令する。<br /><br />
外部ボルトが押し込まれ、再び悲鳴を上げたセラは、見開いていた瞳を硬く閉じ、<br />
チューブを通して与えられる激しい痛みに必死で耐えた。<br />
「聞こえるかい、セラ。もう少しの辛抱だ」<br />
そんな彼女に更なる無理を強いる為、偽りに満ちた励ましを与えるサーフに「もうたくさんだ!」<br />
ついに我慢の限界に達したヒートがモニターの中の少女から眼を逸らし、銃を突きつけた。<br />
室内に控えていたアルジラが目を見張り、驚いたオペレーターが背後を振り返りながら立ち上がる。<br />
その際誤ってボタンが押され、プール内のセラの前に室内の画像が映し出された。<br />
しかしサーフはそれに気付かない。<br /><br />
マイクから顔を離し、彼本来の醒めた笑みを見せながら傍らのヒートを振り返る。<br />
「今さら奇麗事を言うなよ」その声もまたセラの元に届けられていた。<br />
「お前だって神を知りたくて、このプロジェクトに参加したはずだ」<br />
セラは訝しそうにその状況を見つめ、サーフはそうと知らず今まで積み上げてきた彼女の信用を<br />
自らの手でぶち壊していった。<br />
「セラが死ねば次の子供、次の子供が死ねばその次の子供に代わるだけだ」<br /><br />
だだっ広い執務室。大きな机に肘をつき、エンジェルがその上に苦悶するように顔を伏せている。<br />
「お互い、無駄な事に労力を使うのはやめにしないか。僕はお前を買っているんだ」<br />
突きつけられた銃が目に入らないかのように、親しげにサーフは語りかけた。<br />
「まったく大したヤツだよ…」それを昏い眼差しで睨みながら、<br />
「どんな人間の心も好き勝手に操れると思うな!」<br />
ヒートは胸のうちに渦巻く積年の怒りが具現化したかのような声を叩きつける。<br />
しかし、「そうでもないさ」友の言葉をサーフは厭らしく瞳を歪めて嘲った。<br /><br /><a name="a323"></a></dd>
<dt><a>323</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:08:39ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>銃声が立て続けに響く。<br />
思いもしていなかった襲撃者に目を見開きながら、ヒートは床に崩れ落ちていく。<br />
アルジラが震える手で構える銃の銃口からはいまだ薄く煙が立ち昇っていた。<br />
倒れたヒートの足元に悠々とした足取りで歩み寄ったサーフが、零れ落ちた銃を拾い上げる。<br />
それをヒートの目の前でからかうように振りながら<br />
「簡単だろ?」サーフは笑みを浮かべ、首を振った。<br />
「どこを押せばどうなるか、人間の心なんて、こいつと同じだ」<br />
その目が不意に、狂気じみたものに支配される。<br />
「僕は神の力を手に入れる。みんな、道具だ」<br /><br />
傲然と言い放った彼の耳に、その時かすかな泣き声が届いた。<br />
ハッとして目をやると、音声ランプが赤く点滅している。<br />
モニターを見ながら立ち上がったサーフの背後で扉が開き、ベック大佐が部屋に入ってくる。<br />
彼もまた瞠目し、モニターを見つめた。<br />
次第に大きくなるビープ音。一杯に見開いた目でこちらを見つめてセラがすすり泣いていた。<br />
耐え切れなくなったように目を閉じて顔を背ける。水中に、見えない筈の涙がはらはらと零れた。<br />
プール内を囲む、全てのランプが点灯する。<br />
何かが急激に力を増していくような轟音とともに光は光度を増し、EGGの全ての施設が光に包まれた。<br /><br /><a name="a324"></a></dd>
<dt><a>324</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:09:34ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>静寂に沈むプールの中。水底でサーフが呆然と目を見開いている。<br />
「彼女の哀しみが、神を狂わせた」<br />
震える手を上げ、顔を覆う。悪夢の光景が、視界の中で瞬いていた。<br />
「溢れ出た情報に侵され、悪魔となったあの男は」<br />
血の海の中に浮かぶ、かつては人間だった部品たちの真ん中で、<br />
赤く染まった化物が雄叫びを上げている。<br />
「周りの者を喰い散らし、やっとのことで、殺された」<br />
そのビジョンを追い払おうとでもするかのように、頭を抱えて必死に首を振るサーフに、<br />
淡々とただ事実のみを述べる黒猫。その背後に歩み寄った者がある。<br /><br />
「5年、彼女はここで心を閉ざした」<br />
白衣姿の人影は、膝をついたサーフの背中に語り掛けた。<br />
「無残な地獄に変えられた楽園と、ただ、君たちの夢を見ながら」<br />
瞬きをし、振り返ったサーフに白衣のヒートは寂しげな微笑を浮かべた。<br />
「君たちの人格は、確かに彼女が我々に求めた物かもしれない」<br />
立ち上がったサーフに歩み寄ると、彼はそのまま、<br />
その身を金色の残像に変えてサーフの身体をするりとすり抜けた。<br />
「だが」<br />
振り向いたサーフに目線を送り、ヒートは一転確信に満ちた口調で断言する。<br />
「今は違うはずだ」<br /><br />
強い目でそれを見返すサーフの後ろ、不意に澱のような黒い泡塊が立ち上り、<br />
「みつけたぞ!」白衣のサーフが現れた。<br />
「僕に一体何をした!?」<br />
怨嗟の声を上げながら手を伸ばす彼の脇に、いつの間にか金色の霧が沸き起こり、<br />
「セラ…」その中から迷うようにふらふらと、浜辺のサーフが歩み出る。<br /><br />
「セラはどこ?」覚束ない視線にサーフが唇を噛み、<br />
「俺たちはもう死んでいるんだ」ヒートはかつての友に静かな声を掛ける。<br />
「今はただ、情報の循環に身を任せ、"時"を待つしかない」<br />
しかし、諭すような言葉は白衣のサーフには受け入れられなかった。<br />
「ウソだ。俺は死んでなどいない。神の、神の力を手に入れたんだそ!?」<br />
喚く姿が悪魔「リアルヴァルナ」に変わり、<br />
「セラ…どこ…」その傍らで海辺のサーフが悪魔「フェイクヴァルナ」に身を変えて、<br />
辺りを心細そうに見回している。<br /><br />
「さあ」ヒートの体が渦を巻く炎に包まれ、<br />
「君を縛る亡霊を倒し、自由になれ。そして…」<br />
その中から悪魔「アグニ」が現れた。<br />
目を閉じたサーフの頬で、「ウォータークラウン」のアートマが輝き始める。<br />
「もう一人の俺を開放してやってくれ」囁くようなヒートの訴えに、目を上げたサーフは小さく頷いた。<br /><br /><a name="a325"></a></dd>
<dt><a>325</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 短いバージョン ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/11(月)21:12:40ID:jc/bdplF</font></dt>
<dd>すまん今回あまり省略できませんでした…。<br />
んじゃまとめ。<br />
二度目のEGGは噴出した神の情報で異界化してる。地下でEGGと一体化したビオランテヒートと対決。<br />
「俺が神」とか言ってる割に何故か倒す為のアドバイスくれる。<br />
「そうじゃねぇだろ」とか「次得意技行くぞ」<br />
とか「最初に手やんないと胴体に攻撃出来ねぇだろ」みたいなの<br /><br />
ある程度戦うとEGG内で猫がサーフに過去のネタバラシ。<br />
実は現実のサーフは悪人で、セラ(幼女)をムリヤリ頑張らせる為優しくしていた。<br />
人間的にまともだった現実のヒートがそれに怒ってるのをセラ「あのお兄ちゃん怖い」と勘違い。<br /><br />
セラが作った仮想現実を、ベック大佐の命令の元、<br />
何かに応用させる為更なるムリをゴリ押しするサーフ。<br />
結果弱ったセラをまだこの上頑張らせようとするサーフにヒートがついにブチ切れ。<br />
サーフ銃で撃って実験止めようとする。<br />
その際アクシデントで全部セラに筒抜けになってるのに気付かず<br />
サーフ「どうせ使い捨てだろ」と本性ブチまけ。<br />
「どんな人間も思い通りになると思うな」つってヒートが撃とうとするけど<br />
脇から看護婦だったリアルアルジラ(サーフが誘惑済み)に撃たれてバタンキュー。<br />
その後サーフの<br />
「思い通りになってんじゃん、てかお前らも銃と一緒。つか道具。俺神の力ゲットするし」<br />
でセラが耐えらんなくなって暴走。運悪く部屋に入ってきたベック大佐もろともEGGドカン。<br /><br />
んで回想終わり。<br />
ショック受けてるサーフにリアルヒート(霊?)が<br />
「最初はセラが作った彼女の願望どおりの人格をプログラムしたに<br />
過ぎない存在だったかも知んないけど、今は違うだろ?」<br />
その後湧いて出たリアルサーフとフェイクサーフ(セラが最初にプログラムした<br />
浜辺の仮想空間にいた、優しいだけのセラなしだと何にも出来ない存在)とバトル。以上。<br /><br />
後小ネタ。仮想現実に作った砂の城は1で出てた遊園地ディスティニーランドの城。<br />
エンジェルが居ただだっ広い執務室=序盤に出てくる協会本部のエンジェルの部屋と同じ。<br />
それと猫の声はサーフと一緒です。<br /><br /></dd>
<dt><a>504</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:27:16ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>アバチュ2続き行きます。<br /><br />
「まだだ。まだ足りねぇ」<br />
ヴリトラは長い腕を半ばから切断されてもなお、腕はもちろん、<br />
四つのあぎとを持った首も共に振りたて、暴れ続けた。<br />
と、突然その腹が縦一文字に切り裂かれ、血が溢れ出す。<br />
「な、なんだ?」後ずさるシエロ。<br />
溢れる血の量は急激にその量を増し、滝のように血を迸らせる傷口の中から<br />
ヴァルナが姿を現した。口々にサーフの名を呼び、セラとゲイルも驚きと喜びの表情を見せる。<br /><br />
腕を切り取られても戦い続けようとしたヴリトラだったが、腹を内部から切り裂かれては<br />
流石にたまらず、一際大きな叫びを上げると橋の上に前のめりに突っ伏す。<br />
もうもうと上がる血煙が薄らいでいくと、そこには人の姿に戻ったサーフが立っていた。<br />
「兄貴なのか」シエロは喜びに顔を輝かせるが、血煙が更に薄らぐにつれ、サーフの側にもう一人、<br />
蹲る人影があることが明らかになる。<br /><br />
「やはり…お前か」<br />
割かれた腹を押さえ、荒い息をつきながらヒートはサーフを睨み上げた。<br />
「お前があの程度で死ぬわきゃねぇよな」<br />
そのイメージ元となった金髪の青年の理知的な口調とはまるで違う、野卑とさえいえる口振りで<br />
憎憎しげな言葉を投げてくるヒートに、サーフは厳しい表情を向ける。<br />
「お前なら、俺のここがわかるはずだ」<br />
ぼたぼたと血を滴らせつつヒートはゆっくりと立ち上がり、振り返ったサーフに己の胸を指し示した。<br />
(ここで「ああ…」と「……」の二択)<br /><br />
「決着をつけようぜ。始まりの、あの場所でな」<br />
低い声で言うヒートの体が、緑色の輝きに縁取られる。<br />
光の粒子となって消える前に彼が見上げた視線の先を追い、サーフが振り向くと、<br />
オペレーター室のガラス窓が室内に生まれた緑の光をかすかに反射させていた。<br /><br /><a name="a505"></a></dd>
<dt><a>505</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:28:43ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「やめて二人とも!」<br />
歩き出したサーフの背中に、セラが悲痛な声を掛ける。<br />
「悪いのは全部私なの。二人が戦うことなんて…」<br />
泣き出しそうになりながらサーフに追いすがろうとしたセラの前に、<br />
「やらせてやろうぜ。思う存分さ」<br />
シエロが両手を開いて飛び出した。その目元には、微かに涙が滲んでいる。<br />
「戦うことでしか、自分を確認できない者もいる。戦うことが救いになる時もある…行かせてやれ」<br />
背後からの静かなゲイルの声に、セラは最早無言でサーフを見送ることしか出来なかった。<br /><br />
オペレーター室の扉を開いたサーフは何気なく足元に視線を落とし、直後驚きに目を見開いた。<br />
床にぶちまけられた血の道標、それが示した窓辺のオペレーターチェアの足元には<br />
更に大量の血が溜まり、小さな池を作っていた。<br />
「遅ぇじゃねぇか…寝ちまうとこだったぜ」<br />
その言葉どおり夢の中にいるような弱弱しい声の元に慌てて駆け寄り、<br />
背もたれに身体を預けた男の惨状を確認する。<br /><br />
「悪いが、お前とのケリは持ち越しだ」<br />
下半身をじっとりと血に染めて、億劫そうに目を開けたヒートはそう呟くと再び目を閉じ、<br />
ぐったりと座席に寄りかかったが<br />
「俺はお前に殺られたんだ…わかってるな!?」<br />
出し抜けに血塗れの手を伸ばしてサーフの胸倉を捕まえると、意外な程の力で揺すり上げてきた。<br />
悲しげな顔でただサーフはヒートの顔を見返す。<br />
(「わかったから、もう何も言うな…」と「なぜなんだヒート」の二択)<br /><br />
サーフの言葉を聞いたヒートは握り締めた手から力を抜き、今度はその指を突きつけてきた。<br />
「セラが気に病むといけねぇ…もう、放すんじゃねぇぞ」<br />
神妙な顔で頷くサーフの姿がまだ見えているのかどうか。<br />
「俺は…俺の意思で戦い…負けたんだ」<br />
睨みつけた視線を落とした後、ヒートはぼんやりと視線をさまよわせながら<br />
途切れ途切れに言葉を繋いでいたが、<br />
「悔いは…ねぇ…」<br />
不意に満足そうに微笑むと、がくりと首を落とした。<br />
同時に左腕―ファイアーボールのアートマが刻み込まれている―が、座席の横に力なく垂れ下がる。<br />
どこからか、微かに鈴の音が鳴った。<br /><br />
オペレーター室のドアが開いて、ヒートを抱きかかえたサーフが部屋の中から出てくる。<br />
駆け寄り、口元を押さえて涙を流すセラも、鼻を啜り、しゃくりあげるシエロも、<br />
ふと視線を床で耳を垂れる猫に向け、沈痛な表情で目を伏せたゲイルも、<br />
かつての仲間を見送る彼らの誰もが無言のままだった。<br /><br /><a name="a506"></a></dd>
<dt><a>506</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:29:55ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「色々あってさ。機械、ぶっ壊れちまったんだ。悪ぃな、フレッド」「じゃあ…」<br />
肩を抱くシエロにフレッドは震える声を向けたが、<br />
「まだ手があるわ」<br />
それをセラの静かな声が遮った。<br />
「昔は、ここからずっと離れた施設で実験をしていたの。その施設が生きていれば…」<br />
「どうやってそこまで行く。もう時間がない」<br />
当然の懸念を述べたゲイルにセラは飛行機の使用を提案、そうすればギリギリ間に合うらしい。<br /><br />
「地球を元に戻してもらうわ。直接太陽に乗り込んで、説得してみる」<br />
昂然と顔を上げた彼女の目は、かつて無いほど強い決意の色を示していた。<br />
そんな事が出来るのか、というシエロ、太陽に自分の情報を送り込む。<br />
やったことはないがという彼女に、帰りの手段はあるのかとゲイルが問う。<br />
「帰ってはこれないわ。だから、私一人で行く。私の責任だもの」<br />
何もかもを受け入れたような、穏やかな表情で答えるセラに、ゲイルは無言で顔をしかめた。<br />
これ見よがしに脇に進み出ると、悩ましげに腕を組んで頭を垂れる。「傷ついた」<br /><br />
「え?」声色は普段と変わらない平坦な感じなのに、いかにも芝居がかった仕草に<br />
セラがきょとんと瞬きをした。<br />
「俺の交渉術は当てにされていないらしい」<br />
天を振り仰ぐとちらりとセラに流し目をやる。<br />
「いつもムッツリしてたわりにゃ、密かに自信満々だったってかぁ?」<br />
おどけた仕草で肩をすくめたシエロが、ちちちっ、とゲイルに突きつけた人さし指を振った。<br />
「ヘリクツばっかじゃダメダメ。こう、ノリノリに攻めるのはどうよ。ラテンのリズムっての?」<br />
言いながら既にその足元はサンバダンサー紛いのステップを踏んでいる。<br /><br />
見ていられないと言わんばかりに呆れて帽子を下げるフレッドに構わず、<br />
ついに両手を上げて尻まで振り出したシエロを<br />
「怒らせるだけだと思うが」<br />
ゲイルの冷たい声がぶった切った。<br />
「あんだぁ?じゃあ、どっちが先に神さん落とすか、勝負しようぜ!」「いいだろう」<br />
ムッとした顔で肘をぶつけてきたシエロにしかめ面のままゲイルは勝手な約束をさっさと取り決め、<br />
唖然としているセラに<br />
「つーわけで、俺ら三人の特等席もよろしく」<br />
有無を言わさぬ口調でシエロが言い放った。<br />
サーフがそっとセラの肩に手を置き、彼の顔を振り仰いだセラの目がたちまち涙で一杯になる。<br />
「みんな…ありがとう」<br />
涙を拭うセラに、シエロは照れた様に鼻の下を擦るのだった。<br /><br /><a name="a507"></a></dd>
<dt><a>507</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:32:26ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>この後フィールド会話でリアルシエロについての記述アリ。<br />
でも、研究員による<br />
「テクノシャーマン計画が軌道に乗るまではテレパスによる接触実験も行われていて、<br />
何人もの能力者が狂死した。南米から来た明るい少年にシャーマン候補の一人(セラ?)が懐いてた。<br />
そこの彼(シエロ)みたいなドレッドだった」というような一文だけ。<br />
これ以外にシエロの生前の姿(?)についての情報はありません。哀れなり江口…。<br /><br />
あとセラは折角作ったサーフ達のデータをジャンクヤード(大佐が言ってた利用プラン)を作る時、<br />
消せとエンジェルに命じられたが出来なかった(それでジャンクヤードにコピッた?)<br />
前作はジャンクヤードでウイルス実験が行われる事を知ったセラがそれを止める為強制ダイブ、<br />
エンジェルは消させたはずの彼らがそこにいたので驚いたが、彼らをジャンクヤードに閉じ込め、<br />
セラに言う事を聞かせようという考えを実行しようとした結果ああなったのらしい。<br /><br />
「ハイ、お前さんはここまで」<br />
サーフ達の後に続いて空港のエントランスに入ろうとしたフレッドの前に、<br />
シエロが大きく手を広げて通せんぼをした。<br />
「なんでだよ」拳を振り上げて抗議するフレッドに<br />
「他にやることあんだろ」シエロは指を突きつけ、戻ってきたゲイルが諭すように言った。<br />
「カルマ協会の支配は終わる。意味は、わかるな」<br /><br />
目を伏せ、黙り込んでしまったフレッドに、更にゲイルは彼にこれまで告げることのなかった真実を話す。<br />
ジャンクヤードに転生したフレッドの父親を殺したのは、自分だと。<br />
しかしフレッドは既にその事をロアルドから聞かされ、知っていた。<br />
けれども彼はゲイルを恨んだりはしていないと言う。<br />
「皆は、大事なことを教えてくれた。オレたち、ずっと仲間だよな?」<br />
一旦は目元を隠すように下げた帽子を再び上げ、ゲイルをまっすぐに見つめたフレッドの瞳には<br />
溢れんばかりの涙が溜まっていた。<br />
彼の問いかけに優しい笑みを見せるセラとサーフ。シエロは頭の後ろで手を組みウインクを返す。<br />
「ああ、仲間だ」言ってゲイルは右手を差し出し、フレッドと別れの握手を交わした。<br /><br />
「そいじゃ行きますか。でっかい花火、ぶち上げにさ」<br />
伸びをして言ったシエロの言葉を合図に、彼らは空港へ向かって再び歩き出す。<br />
その背に小さく手を振るフレッド。<br />
その動作は次第に大きくなり、フレッドは振り返ることなくエントランスに消えて行くサーフ達に向けて、<br />
力いっぱい手を振り続けた。<br /><br /><a name="a508"></a></dd>
<dt><a>508</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:34:15ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>空港ではエンジェル直属の精鋭たちが待ち受けていた。<br />
彼らを退けつつ、又EGG施設から出てしまった事により急激な成長(老化)に苛まれ、<br />
またそれを抑える薬(減速剤)もない為に次第に衰弱していくセラを支え、<br />
サーフ達は航空機のハンガーを目指す。<br /><br />
格納庫にたどり着く直前エンジェルが現れ、遂に自ら彼らの前に立ち塞がった。<br />
今は争っている場合ではないとセラが説得を試みるが、<br />
エンジェルはセラの命を永らえさせる減速剤の完全破棄を宣告。<br />
「無様に老いさらばえるよりその姿のまま骸を晒したほうがマシとは思わないか」<br />
娘にかけるものとも思えぬエンジェルの言葉に激怒したシエロは<br />
「お前も死ぬってのが、わかんねーのか!」<br />
と声を荒げるが、ゲイルが前に進み出し、彼を制止するように手を広げた。<br />
「承知の上だろう。行け」<br /><br />
戸惑ったセラが「でも」と声を上げる。しかしサーフに促され、ゲイルを心配そうに見つめながらも<br />
彼女はゆっくりと歩き出した。脇を通り過ぎる際<br />
「勝負、おあずけか?」<br />
少しだけ立ち止まって、シエロが戦友の背中に問いかけた。<br />
「また今度だな」<br />
振り返らずに答えたゲイルにシエロは僅かに目を伏せて<br />
「不戦勝にしといてやるよ、ブラザー」<br />
片手を上げ、彼もまた振り向かずに歩き出した。<br />
「すまんな、ブラザー」<br />
今だ目の前の相手から視線を外さぬまま、静かにゲイルが応えを返す。<br /><br />
「私か移動手段を破壊するとは考えなかったのか!」<br />
その時、唐突に上がったエンジェルの叫びに、シエロは思わず足を止めかけたが、<br />
「ブラフだ、行け!」懸念をかき消すゲイルの力強い声に背を押され、<br />
こくりと一つ頷くとサーフ達と共に駆け出していった。<br />
「賢しいな。なぜそう言える」尋ねたエンジェルに<br />
「この街に、死ぬと分かっている命令に従う者などいない」<br />
答えたゲイルは彼女に呼びかける。そろそろ目を覚ましたらどうだ、と。<br /><br /><a name="a509"></a></dd>
<dt><a>509</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:36:42ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「どういう意味だ」<br />
眉を寄せるエンジェルにゲイルは諭すように言った。<br />
「デイビッドは、人を導けと言ったはずだ」<br />
ハッと目を見開くエンジェルに、ゲイルは更に強い声で畳み掛ける。<br />
「怨念は捨てるんだ、ジェナ!」<br />
その姿が彼女の記憶の中にいる、金髪の青年とオーバーラップした。<br /><br />
燃え上がる炎に照らされて、血塗れの青年が途切れ途切れに歌声を紡いでいる。<br />
切羽詰った声が遠くで喚く。<br />
キュヴィエ患者の隔離病棟がやられたんだよ、ああそうだ、怪我人が大勢出てるんだぞ!?<br />
CDCなんか待ってられるか、いいから早く救急車を回せ、ちくしょう、無知なテロリストどもめ…<br />
炎が爆ぜ、ガラスの割れる音。しかし何も彼女には聞こえない。<br />
「ジェナ…誰も、恨むな…」<br />
膝の上に横たわっている彼の弱弱しい声以外、何も。<br /><br />
「一人にしないで…お願いよ、デイビッド…!」<br />
硬く石化した彼の手を取り、エンジェルは涙声で懇願する。<br />
彼を運び出した際に付いたものだろうか。彼と同じように血がこびりついた彼女の顔を見上げ、<br />
微笑みながら囁くデイビッドの青い目には、一杯に涙が溜まっている。<br />
「お前さんなら、治療法を、見つけられる…光に、なれるよ…」<br />
言い終わると同時に彼の体から全ての力が抜け落ち、閉じられた瞼から涙が溢れた。<br /><br /></dd>
<dt><a>511</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:39:10ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「馬鹿な、お前があの人であるはずがない!」<br />
愕然と声を上げるエンジェルの手は、ありありとわなないていた。<br />
「だが、デイビッドはここにいる」<br />
ゲイルは自らの胸を示し、語りかける。<br />
その声は先程の一喝が嘘のような、すっかり落ち着いた物に戻っていた。<br /><br />
死者の情報は神へ還るのだから、神から生まれた自分達に彼らの魂が宿っても不思議ではない、<br />
そう諭すゲイルの言葉にエンジェルは駄々をこねる子供のように首を振る。<br />
「嘘よ、あの人は愚かな人間たちに殺された!キュヴィエ症候群は伝染しない。なのに…」<br />
「彼は幸福だった」<br />
これまでの男性的な、冷酷とさえ言える口調をかなぐり捨て、完全な「女」になって<br />
取り乱すエンジェルを、ゲイルの静かな声が遮った。<br /><br />
「身体は滅んでも、想いを受け継ぐ者がいる」<br />
手を広げ、彼が一歩を踏み出すと、「やめろ!」エンジェルは腕で顔を覆い、慌てて飛び下がった。<br />
怯えきった表情で見つめる彼女に、<br />
「彼は、自分の研究と人を…お前を愛していた」<br />
言いながら、ゲイルはなおも近づいていく。だが。<br />
「戯言を言うな!」混乱の極地に達したエンジェルが右腕だけを悪魔化させ、その腹を貫いた。<br />
しかしゲイルは僅かに吐いた血の跡を唇の端に残しつつも<br />
何事もなかったかのように彼女の肩を優しく抱き…びくんと顔を上げたエンジェルの目の前で、<br />
自らもまた右腕だけを悪魔の物に変えると彼女の背にまでそれを突き通した。<br />
重なった影が、床に崩れ落ちる。<br /><br />
「私に付き合って、死ぬつもり…」<br />
震える身体を僅かに起こし、自分を掻き抱いた男の安らかな死に顔に<br />
エンジェルは息も絶え絶えに問いかけた。<br />
「データの、くせに…」<br />
呟いて、その胸に頬を寄せるように倒れこんだ彼女の瞳から光る物が一筋、零れ落ちた。<br />
鈴の音が聞こえる。<br /><br /><a name="a512"></a></dd>
<dt><a>512</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:40:08ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>「しつけぇなぁ」<br />
ジェット機の脇を悪魔「ディアウス」に姿を変えて飛んでいたシエロは、背後を振り返り、舌打ちを漏らした。<br />
エンジェル派の戦闘機が三機、雲の中から姿を現しつつあった。<br />
「兄貴!」叫んでシエロはサーフに向けて顎をしゃくる。<br />
硬い表情でサーフは頷き、事態に気付かずサーフからシエロに視線を移したセラが、<br />
何気なく後ろを振り返って慌てて首を返し、機内モニターを覗き込んだ。<br />
レーダーに映る敵影を認め、機外のシエロに何か声を掛ける。<br />
この機体には兵装が付いていない。とすれば、彼が取るだろう手段は一つしかなかった。<br /><br />
「泣いてばっかじゃブスになるぜ。スマイル、スマイル!」<br />
泣きながらいやいやをするセラにシエロはおどけた素振りで左右に首を傾げたが、<br />
「…ほんとのニルヴァーナで会おうぜ」<br />
その後一転、彼は寂しげな口調で呟くと羽を翻し、敵へと向かって飛び去った。<br /><br />
戦闘機からミサイルが発射される。<br />
「絶対ぇ、行かせねぇぞ!」<br />
叫びながらシエロは翼を打ち振った。<br />
追いすがるミサイルを全て引き剥がし、その羽で戦闘機の主翼を切り裂く。<br />
衝撃で片翼を失ってもシエロはまだ飛び続けた。<br />
二機目を同じように撃墜し、機銃を撃ちかけた三機目の胴体にそのまま特攻をかける。<br />
全身から血を吹き出させたその姿が爆炎の中に掻き消え、<br />
レーダーから「WARNING」の赤文字が消えた。<br /><br />
しゃくりあげるセラと唇を噛み、俯くサーフを乗せてジェット機はHAARP施設へ向け、飛んでいく。<br />
また、鈴の音が鳴った。<br /><br /><a name="a513"></a></dd>
<dt><a>513</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2 短いバージョン ◆l1l6Ur354A</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/04/27(水)07:41:43ID:/V89YLVg</font></dt>
<dd>まとめ。サーフ復活。人間に戻ったヒートと決着をつけるかと思いきや<br />
ヒートはビオランテ化してた時にサーフに中から腹切り裂かれてたので<br />
「もうセラ放すんじゃねぇぞ」とか言いながら死。<br /><br />
その後太陽に直接自分らの情報送って「話をつける」事にする。<br />
片道切符だが何だかだあってみんなで行く展開に。<br />
太陽に情報を遅れる施設HAARP(在アラスカ)に行く為空港へ。<br />
そこでフレッド置き去り。その時ゲイルが親父を殺したのは自分と告白するけど<br />
ロアルドに聞かされて知ってた。けど大事な事教えてくれたんで恨んでないそうです。<br /><br />
空港でエンジェル出現。ゲイルが足止めになってエンジェルと心中。<br />
結局彼女を動かしてたのは恋人(キュヴィエ病だった)を無知なテロリストに殺された怨念だった。<br />
ゲイルが恋人の記憶を持ってるのは、死人の情報が太陽に戻りその後何故かゲイルに宿ったから。<br />
(1のジャンクヤードの人とかもそう)<br />
ジェット機飛ばしたけどエンジェル派の生き残りがしつこく追ってきたのでシエロも足止めで死。以上。<br />
次で終わります。<br /><br /></dd>
<dt><a>692</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:26:10ID:///foK9i</font></dt>
<dd>アバチュー2行きます。太陽でエンジェルを探しまくり力尽きてました。<br />
(確か母としてセラを誇りに思うみたいな文があったはずなのだがどうしても見つからなかった<br />
もし知ってる人いたらホロー頼みます)<br /><br />
長々待たせた挙句無駄に長々しいので<br />
(書いてる本人さっぱりシナリオの意味が分からんくて略せんかったすまない)<br />
もしも途中でスレの寿命が来たら狂おしくごめんなさい。<br />
母さんスレ立て出来ないのでその時は誰かエロい人次スレヨロシクメカドック。<br /><br /><a name="a693"></a></dd>
<dt><a>693</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:27:27
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>HAARP施設内。<br /><br />
正面モニターの明りのみの薄暗い中、セラの白い指がキーボードの上をぎこちなく這う。<br />
要求されたパスワードを入力すると、僅かな作動音と共に照明が灯り、<br />
左右のモニタも息を吹き返した。<br />
「よかった…生きてる」<br />
消え入るような声で呟いた直後、セラの体がぐらりと傾いだ。<br />
慌てて差し伸べたサーフの腕の中で、セラがか弱いながらも決然とした声で囁き、<br />
強い目で彼を見上げる。<br />
「心配しないで…早くしないと間に合わないわ」<br /><br />
何本ものコードを生やしたバイザーを手にしたセラはシートに腰を下ろし、<br />
「今から、私たちの情報を神の元へ送るわ」<br />
かすかな笑みを浮かべた。<br />
こくりとサーフが頷くと、セラはバイザーを被り、背もたれに体重を預ける。<br />
彼女の足元に跪き、肘掛けの上の左手をサーフは両手でそっと包み込んだ。<br />
それを更にセラの右手がきゅっと軽く握り締める。<br />
「サーフ…今まで、本当にありがとう」<br />
バイザーに隠れて表情は定かではなかったが、<br />
セラの声が震えていたのは、衰弱によるものだけでは決してなかった。<br /><br />
パラボラアンテナの位置がゆっくりと調節されていく。<br />
昇りつつある太陽の不吉な影に焦点が合うと、<br />
施設内の全てのアンテナから照射されたレーザーが、光の帯となって雲の上を駆けていった。<br /><br />
限度を超える出力に耐えかねたアンテナが次々と火を噴く。<br />
火炎の舌に舐め尽された施設内で、情報転送に伴う苦痛にもがき苦しむセラを、<br />
サーフは静かに見守っていた。<br />
愛する人が力尽き、がくりと首を垂れるのを見届けると、<br />
サーフの姿もまた、炎の中に崩れ落ちていく…。<br /><br />
光の竜巻が渦を巻いて天へ昇っている。<br />
いや、これは太陽に根こそぎ絞り尽くされつつある地球上全ての生き物達の「情報」だ。<br />
太陽光の汚染をまだ何とか免れている地上の一端で小さな明りが瞬き、<br />
二つの流星が飛び出した。情報体に昇華したセラとサーフだ。<br />
地上の惨状を見下ろした二人は、すぐにやるべき事を求めて遥か上空に視線を移した。<br />
「神の情報に押し流されないように、気をしっかり持って」<br />
差し出されたセラの手を取り、サーフは光の竜巻の根元…太陽の内部へと飛び込んでいった。<br /><br /><a name="a694"></a></dd>
<dt><a>694</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:28:57
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>太陽の中を走る通路を飛翔するサーフとセラ。<br />
余りの熱に耐えかねて、セラは目の前に手をかざし、顔を背けていたが、<br />
熱がやわらぐのを感じて閉じていた瞳を開けてみると、<br />
彼女の身体はサーフに抱きしめられ、守られていた。<br />
普段あまり表情を見せない彼が、腕の中の彼女を見下ろして穏やかに微笑する。<br />
その暖かな笑みを見たセラもまた、満ち足りた笑顔を彼に向け、<br />
硬く身を寄せ合った二人は更なる上昇を続けた。<br />
だが、行く手を遮って吹き上がる炎の柱を何とかかわしつつ飛び続けたものの、<br />
直後に壁のように太い火柱が吹き上がり、マトモに突っ込んでしまう。<br />
すると思わず目を閉じた二人の体が光に溶けて、その中から一人の少女が出現した。<br /><br />
銀色の瞳、右が銀髪、左が黒髪、額に二ツ首のアートマを持った、少年にも見える<br />
中性的な少女は通路を更に飛んでいく。<br />
それから僅かもしないうち、彼女の体から光の粒子が分離して、<br />
更にいくつもの人影が姿を現した。<br /><br />
彼女が左右に目をやると、向けられた驚きの表情に、それぞれの嬉しげな笑顔が返ってきた。<br />
かつて同じ時間をすごした、もういなくなってしまったとばかり思っていた大切な人たち。<br />
アルジラ、ロアルド、シエロ、ゲイル、そしてヒート。<br />
ジナーナやルーパ、マダムにエンジェル、デイビッドの姿もある。<br />
我知らず滲んだ、歓喜の涙に震える声で少女は高々と叫んだ。<br />
「みんな……!わかるよ、私たちは、二人ぽっちじゃない!」<br /><br /><a name="a695"></a></dd>
<dt><a>695</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:30:34
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>皆が少女を先導するように高空を飛んでいく。<br />
見上げた先には、黒々とした空間がその口を開けて待っていた。<br /><br />
そこは「ニルヴァーナ」…太陽であるにもかかわらず、<br />
満天の星が輝き、かなたに星雲の陽炎を望む不思議な場所だった。<br />
彼女の周囲にはらはらと降る銀の光は、桜の花びらを思わせる。<br />
辺りを見回し、見下ろすと、光を湛える白蓮がほのかに明るく照らす地上で<br />
仲間たちが彼女を待っている。<br />
「みんな…」嬉しそうに呟くと、彼女は下降し、彼らの元に駆け寄った。<br /><br />
「よくここまで来たね、セラフ」<br />
銀の瞳の、片耳だけ白い黒猫が、首の二つの鈴を鳴らして彼女に語りかけた。<br />
「セラフ?私は…」<br />
怪訝そうに言葉を返そうとした彼女は、「自分の姿を見てごらん」とシュレディンガーに促され、<br />
今更のようにその体の変化に気が付いた。<br />
少女ではなく少年でもなく、また同時にその両方でもある自分の肉体を見回しているセラフに<br />
黒猫が説明する。<br />
「君たち二人の想いが一つになった時、君は完全な人間として生まれ変わった。<br />
今はまだ、サーフとセラ、二人の意識が残っているが、いずれそれも一つになる」<br />
「わたしとサーフが、一つに…」<br />
理解できるような出来ないような、そんな表情で相手の言葉を反芻するセラフに<br />
「君の旅も、もうすぐ終わる。人の無限の可能性を、神に示すんだ」<br />
耳をひくつかせた黒猫はそう言って、背後を振り返る。「大切な仲間たちと一緒にね」<br />
「あなたは一体…」<br />
膝を折って尋ねるセラフが尋ねると<br />
「もうすぐわかる」意味深にシュレディンガーは長い尻尾を振り、<br />
「意識の翼を広げてごらん。君に感じられないことなんてないはずだよ」<br />
言い残すと光の粒になって、消えた。<br /><br />
アルジラが一歩を踏み出し、立ち上がったセラフに微笑む。「行きましょう」<br />
「行くぞ」「行こうぜ」左右から、ゲイルとシエロが声を掛けた。<br />
笑みを返し、セラフは頷いたが、その時ふと、傍らから自分を見つめる赤い瞳に気付いて眉を曇らせる。<br />
「ヒート…」<br /><br />
ロアルドが仲間になる場合<br />
ヒートはかつての彼とはまるで違った、澄んだ瞳で優しく笑うとくるりと踵を返し、<br />
背後にいたロアルドの肩を後ろから軽く突き飛ばした。<br />
押し出され、たたらを踏んだロアルドが驚いた顔で振り返ると、にやりと片頬を吊り上げて左手を上げる。<br />
「行ってこい」<br />
「不器用な男だな、君は」<br />
呆れ混じりに呟いて、ロアルドはセラフたちへ向き直った。<br /><br />
ヒートが仲間になる場合<br />
無言のままのヒートの肩を、誰かが叩いた。<br />
振り向くとそこにはロアルドが立っている。<br />
「君たちにしか、できん仕事だ」<br />
地上にいた時と少しも変わらない、冷静でいながら暖かい、大人の男然とした声でそう言って、<br />
ロアルドは思い切りよくヒートの背中をどんと押した。<br />
無理からにセラフ達の前へと突き出されたヒートは一瞬憤慨したようにロアルドの方を振り返ったが、<br />
今だ言葉を無くしたままのセラフの表情に気がつくと、仕方が無いな、とでも言いたげに首をすくめて、<br />
「そんな顔すんな。俺が守ってやるよ」<br />
どこかガキ大将のような悪戯っぽい笑みを浮かべた。<br />
これまでに見たことがない笑顔。でもこれが彼本来の表情なのだろう。<br />
それを目にしたセラフの顔が、ぱあっと明るくなる。<br /><br /><a name="a696"></a></dd>
<dt><a>696</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:32:55
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>同行を決めた仲間たちを見回すセラフに、彼らが力強く頷いた。<br />
それに応えてセラフもこくりと頷き返す。<br /><br />
アルジラの隣からジナーナが、ゲイルの脇からルーパがそれぞれ踏み出すと、<br />
セラフの肩に手を置いた。セラフと視線を交わすと、二人はお互いが遺志を託した相手を振り返る。<br />
ジナーナはアルジラを。ルーパはゲイルを。<br />
そして二人は光になり、それぞれの相手の中に消えた。<br />
「ジナーナ…ルーパ…」<br />
彼らのぬくもりが残る両肩を抱きしめ、セラフは目を閉じ、囁いた。<br /><br />
瞳を開き、顔を上げるとそこにはエンジェルが立っている。<br />
「エンジェル…」沈んだ声のセラフに「私の負けだ」静かに言って、<br />
彼女は両のてのひらでふわりとセラフの頬を包み込んだ。<br />
「行きなさい、セラ、サーフ」<br />
慈母の微笑を浮かべると、エンジェルもまた光の粒に身を変えて、セラフと一つになった。<br />
(1の選択肢やデータコンバート、或いは2の選択肢次第で<br />
このイベントは発生しない場合があります。これ以降三人にちなんだ技を使えるようになる)<br /><br />
この後「太陽」の表面をウロつき、記憶が完全復活したらしいルーパに<br />
ロアルドとフレッド助けた礼を言われたり、シエロに<br />
「せっかく気合入れておっ死んだのに」と照れられた上に<br />
「シエロビーム出せば死ななくて済んだかも…」と謎の超必殺技の事で悔やまれたり<br />
ヒートに「その姿も悪かねぇぜ…行ってこい、セラ、サーフ」と体よく追っ払われたり、<br /><br />
(仲間だと「俺が最期に言ったこと、ちゃんと実践してるみてぇだな、サーフ<br />
くっつき過ぎな気がしねぇでもねぇが、まぁその姿も悪かねぇ…」と<br />
ボケなのか皮肉なのかようわからん事を言われた後<br />
「もう噛み付いたりしねぇから安心しな、セラ」と意味ありげに言われる。<br />
ロアルドだとこれ以上戦うのが余程イヤなのか「本来なら私の出る幕じゃないんだが」の<br />
残りたい未練タラタラトークか「私は少々疲れた…高みの見物と洒落込ませてもらうよ…」の<br />
真っ白に燃え尽きる寸前の人臭全開トークの二択)<br />
何故か来ていたマダムに勝手に未来を託されたりした後、太陽内へ。<br /><br />
セラフは○ルトラマンとエヴ○が結婚して出来た子供がゲイラカイトに弟子入りしたみたいな<br />
「アルダー」に変身して戦います。相手は懐かしの1の中ボスたち四人、プラスメガナダ。<br />
途中でリアルジラに<br />
「仕方なかったのよ…彼がサーフを殺そうとするから…だから私…<br />
本当はあの娘のことも気味が悪くて嫌いだった…でも、サーフのために私…<br />
ああ…私…なんてことを…」とか鬱になる告白をされつつ進んでいくと、<br />
「計り知れないほど巨大な情報のうねりを感じる」場所があり、それに身を任せるとラストバトル。<br /><br /><a name="a697"></a></dd>
<dt><a>697</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:35:38
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>「これが、神…」瞳を見開き、セラフが呆然と呟いた。<br />
彼女たちが見つめる先には、眩い光の粒子が生む渦に包まれ、<br />
青い稲光を発する奇怪な物質が浮いている。<br /><br />
「お願い、地球を元に戻して」<br />
人の大脳によく似たその姿に、セラフは懸命に訴えかけた。<br />
「悪いのは私なの…人は、いっぱい過ちを犯すわ。これからも繰り返すかもしれない。<br />
でも、必死に生きてるの。お願い、滅ぼさないで」<br /><br />
すると、彼女の声に応えるかのように、「神」は体を中心から開き、その内部をさらけ出した。<br />
「神」の中に詰まっていた混沌が一息に広まり、辺りを包んでいく。<br />
更に混沌の中心に、光が生まれた。眩さに両腕で顔を覆ったセラフの前に、<br />
いくつもの偶像を組み合わせたかのような、異様なモノが現れた。<br />
偶像の口が開く。一拍の後、セラフの脳内に稲妻が走り、彼女は思わず額を押さえた。<br />
「え…?」届いた声に戸惑い、問い返すセラフ。「自分と戦えって…」<br />
彼女の呟きに合わせるかのように像は唇を動かし終えると、<br />
バイザーに似た一つきりの目を無機質に光らせた。<br /><br />
凄まじいエネルギーを吹き上げながら「神」の体が崩れていく。<br />
断末魔だろうか、その唇が放つ情報の竜巻の中にセラフたちは飲まれる。<br />
が、それは何らの苦しみをもたらすものではなく、<br />
仲間達はただやり遂げた穏やかな表情をセラフに向けて、流れの中へと消えていく。<br />
彼らに静かに頷いたセラフもまた、極彩色の光の内に飲み込まれた。<br /><br />
セラフの中を、無数の光景が駆けていく。<br />
それは有史以来人類が何度となく繰り返してきた哀しみの歴史。終わる事の無い戦争のイメージ。<br /><br />
うっすらと目を開くと、混沌の中に浮いている。<br />
「ようやくわかった…神が何なのか…世界が何なのか…」<br />
小さく囁く彼女に、幾つものセラフが重なり、一つになる。<br />
「私はあなた…あなたは私…」<br />
内側から自らを突き上げる感情に、彼女はかすかな声を震わせる。<br />
「あなたは世界…世界は私…そして…一番大切なのは…」<br />
言い知れぬ後悔に、彼女は小さく身体を丸めた。<br />
「私たち、なんて愚かだったんだろう…こんな簡単な事に気づかなかった」<br />
溢れ出た涙の粒はきらきらと輝き、今なお太陽へと吸い取られつつある情報の一つに変じていく。<br />
「たった一言…たった一言の"情報"だけでよかったのに…」<br /><br />
「一番尊いものを、見つけたようだね」<br />
セラフの隣に緑光が瞬き、シュレディンガーが現れた。<br />
「この世界での、私たちの役目は終わったようだ」<br />
そう言うと、猫の姿は光の塊になる。<br />
それは長く伸び、人の形になると光はその足元から湧き上がるように消えて、<br />
残ったのはセラフそっくりの人影だった。<br /><br /><a name="a698"></a></dd>
<dt><a>698</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:38:03
ID:///foK9i</font></dt>
<dd>「この先僕たちは、色々な世界を目にすることになる…<br />
でも、ここで得たものを忘れなければきっと上手くやっていけるさ」<br />
セラフによく似た少女の声で、彼は優しく頷いて、手を伸ばした。<br />
「人は、変われるの?」<br />
「気がつけば」<br />
心細げに差し出したセラフの手を「もう一人のセラフ」がしっかりと握った。<br />
「大丈夫。みんなも直に追いかけてくる…僕たちを結ぶ言葉は、一つなのだから」<br />
「セラフ」が確信に満ちた口調で囁くと、二人の姿は光になって、消えた。<br /><br />
夜が明けていく。<br />
不安そうな顔に曙光の最初の一筋を受けたフレッドはしばらくぽかんとしていたが、<br />
頬を照らす暖かさに気付くと思わず涙ぐんだ。<br />
「太陽が…太陽が元に戻ったぞ!」<br />
両手を突き上げ、飛び跳ねるフレッドの叫びに、<br />
窓辺の女性が昇る朝日をこわごわと待ち受けるが、びくりと身をすくめた彼女に<br />
光が何の害も及ぼさない事を知って、太陽と自分を嬉しげにあたふた交互に見比べる。<br />
オーバーオールの少女が微笑みながら空を見つめ、地上は人々の喜びの声に充たされた。<br />
「太陽が元に戻った」そのことのもう一つの意味を思い、フレッドは俯き、泣き続けていたが、<br />
すぐに拳で乱暴に目元を拭い、まっすぐに前を見上げる。<br />
カルマ協会の支配は終わった。これから自分には、やることがある。だから。<br /><br /><br />
「ゲイル、置いてくぞ!」<br />
森の中。過去を回想していたフレッドは、その声で現実に引き戻された。<br />
「待ってよ!行こう、ジェナ」<br />
ヘッドギアをつけた金髪の少年が、ミニスカートのトライブスーツを着た<br />
栗色の髪の少女の手を取り、赤毛の少年のマントの背中を追って、走り出した。<br /><br />
(そう、オレたちの旅は始まったばかりだ)<br />
穏やかに微笑み、フレッドは少年達の後を大きなストライドでゆっくりとついて歩く。<br /><br />
(願わくば、あんたたちと同じ名を持つあの子たちが、幸せでありますように)<br />
その心の声が聞こえたとでも言うのか?<br />
「大丈夫よ」<br />
不意に栗毛の少女が振り返り、にっこりと笑った。<br />
フレッドは一瞬驚きに目を見張ったが、やがてかすかに笑うと<br />
彼もまた彼女たちの後に続き、森の小道を駆け出した。<br />
彼らの姿を、豊かに茂る木々の上から眩く光る太陽が見下ろしていた。<br /><br /><a name="a699"></a></dd>
<dt><a>699</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">アバタールチューナー2(早送りバージョン)</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:39:23ID:///foK9i</font></dt>
<dd>総まとめ。<br />
実は1の世界は仮想空間でした。現実は太陽が化石光線出す死の世界。<br />
ゲイル除く1のパーティーメンバーは太陽と唯一交信できるスーパー少女セラ(七歳)が<br />
現実の知り合いに似せて作り上げた(でも本物とは顔以外似もつかない)プログラム。<br />
取りあえずヒート以外はあっちゅー間にそろい、新キャラロアルドとカルマ「協会」から<br />
セラを奪還…しようと思ったらヒートが裏切ってた。<br />
セラ奪還なるもサーフがヒートと相打ちで戦線離脱。<br />
ショックでセラが作動させた太陽発狂加速装置を止める為次々とみんなシボン。<br />
復活したサーフとセラも自らを情報化して直接太陽に乗り込む為に死。<br /><br />
でもこの世界は全部が情報で出来てて、太陽は死んだ人の情報を吸い上げ<br />
転生体として地上に戻すファンタジー物質なのでみんな太陽で普通に再会。<br />
その途中サーフとセラが合体してセラフになる。<br />
太陽と戦った後セラフはこれまでの狂言回しだった猫<br />
(変身してもう一人のセラフに)とどっかいく。<br />
留守番してた、これまで仲間のマスコット的存在だった1のルーパの息子が<br />
成長しててサーフ達に似た子供となごんで終。<br /><br /><a name="a700"></a></dd>
<dt><a>700</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/21(水)02:42:44ID:///foK9i</font></dt>
<dd>以上でございます。待っててくれた人約束より遅くなって御免です。<br />
後半年以上も放置して申し訳ないでした。では。<br /><br /></dd>
<dt><a>716</a><font size="+0"><b><a href="mailto:sage">名無しさん@お腹いっぱい。</a></b></font><font color="#8080FF" size="2">sage</font><font color="#808080" size="2">2005/12/22(木)15:45:58ID:KazZ+xMR</font></dt>
<dd>アバチュの人&怖い話しの人乙<br /><br />
しかしゲームであれだけ気色悪かったセラが書き手が好意的なだけで<br />
3倍増しくらいにまともなヒロインだ。心底乙。<br />
ちなみにエンジェルタンの「誇りに思う」の台詞は三廻輪廻を習得できない<br />
場合のみに聞ける台詞らしい</dd>
</dl><dl><dd>opのフレッドの台詞より引用</dd>
</dl><p>「昔から人は考えてきた。世界は何で出来ているのか。オレたちは何者なのかってね。</p>
<p>分子や原子が見つかり、もっと小さな素粒子が見つかり、</p>
<p>それより、もっともっと元を辿って、人はそれを情報としか定義できなくなった</p>
<p>この森も君も、元は同じ。全てはみんなの想いで出来ている。</p>
<p>想いは受け継がれ、元来たところへ還り、やがて…(生まれ変わる…だと思います)」</p>