「MISSINGPARTS the TANTEI stories」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<strong>MISSINGPARTS the TANTEI stories</strong><br>
part31-133~182<br>
<hr width="100%" size="2">
133 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:13:46 ID:D3Bd+twf0
<dl class="thread">
<dd>第1話 鳴らないオルゴール<br>
<br>
1日目<br>
えーっと、まず、自己紹介からかな。俺は、真神恭介(まがみ きょうすけ)。23歳。駆け出しの探偵だ。<br>
探偵とかって言うとなんだかカッコイイ感じがするだろうけど、<br>
実際のところ、まだ浮気の調査とか猫探しだとかしかやった事が無い。<br>
幼いころ両親を交通事故で亡くして、祖父の手によって育てられたが、最近、その祖父も亡くなったので、<br>
実家を引き払い、思い切ってこの遠羽(とおば)に引っ越してきたばかりだ。<br>
6月上旬のある朝。いつもの通り、ひとりきりのマンションで目覚ましに起こされ、探偵事務所へ歩いていく。<br>
鳴海探偵事務所。所長の鳴海誠司は腕利きの探偵だと評判で、遠方からも依頼が来るという。<br>
俺が遠羽に引っ越してきた理由は、誠司所長が居たからだ。<br>
推理小説に出てくるような、そんな名探偵が実在したら・・・そんな淡い期待を抱いていた。<br>
だけど依頼をするべく鳴海探偵事務所を訪れたら、誠司所長は失踪中で居ないという。<br>
事務員として働いていた所長の娘、京香さんは、訪ねて来た俺を半ば強引に所員にしてしまった。<br>
俺の方も、就職先もまだ決まっていなかったし、探偵になれると聞いてまんざらでもなかった。<br>
だがそれは少し甘い考え方だった。事務所には依頼があまり来ず、いつも貧乏しているのだった・・・。<br>
事務所の窓を下から見上げる。ブラインドが上がっている。京香さんは来ているな。<br>
事務所のドアを開ける。<br>
鳴海京香さん。失踪中の父に代わり、所長代理として事務所を預かっている。<br>
俺より4つ年上だが、もっと若く見える。しっかりしてそうでどこか抜けてる人だ。<br>
今日も依頼が無ければ、自主的に資料整理ということになりそうだ。<br>
京香さんは表のポストに郵便物を取りに行き、怪訝そうな顔をして戻ってきた。<br>
真神くん、東公園の側に「セクンドゥム」っていうアンティークショップがあるの知ってる?、<br>
開いてるんだか閉まってるんだか解らない、やる気の無さそうな店よ、と京香さんは不快そうに言う。<br>
知ってますと答えると、帰りでいいから、この手紙を届けてくれない?とエアメールを差し出された。<br>
間違って届いたものらしい。<br>
<br></dd>
<dt>134 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:14:34 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>その日の帰り、まだ日が高いうちに、セクンドゥムへ向かった。<br>
ちょうど、高校生くらいの少女と、男性のふたり組みが店から出てきたところだ。<br>
店内に入って驚く。まだ日が高いのにカーテンが閉めきってあって、薄暗い。<br>
店の奥で猫の鳴き声がする。その方に目を凝らすと、すっと女性の姿があらわれる。<br>
まるで、猫が女性に変身したかのように見えた。だが、それは目の錯覚だった。黒猫が姿を現す。<br>
つり目の、気だるそうな女性。長い黒髪が印象的だ。年は京香さんぐらいだろうか。<br>
この人がこの奇妙な店の店主らしい。吸血鬼みたいな印象を受けた。<br>
ヘルちゃん、お店に出てきたらダメでしょ、と猫を叱る。<br>
ヘルちゃんって?と疑問に思うと、ヘルシングだからヘルちゃんよと彼女は言う。<br>
吸血鬼にとってヘルシングは天敵なのではないか?と思ったが黙っておく。<br>
要件を済まそうと、エアメールを女性に渡す。<br>
あたしも「ナルミ」だからね、あ、苗字じゃなくて名前よ、「月嶋成美」っていうのと彼女は自己紹介する。<br>
なるほど、宛名にはアルファベットで「NARUMI」としか書いてないから、間違ったのか。<br>
京香とは「腐れ縁」ってやつなの、と成美さんは言う。<br>
京香さんと成美さんは旧知らしいが、仲はそんなに良くないらしい。<br>
あんた、あの子のところにいるの・・・どうしてあんなところで働く気になったの?と成美さんが聞くので、<br>
俺は自分が探偵事務所に入った経緯を話す。<br>
両親は交通事故で亡くなったが、その事故には不審な点があったと、だいぶ後になってから祖父から聞いた。<br>
公式では、両親を跳ねたトラックは運転ミスで事故を起こしたとなっているが、<br>
そのトラックのブレーキパイプは故意に切断されていたという。<br>
俺は交通事故の調査を所長に依頼しようとしていたのだ。<br>
ふと、成美さんの胸元に目が行く。<br>
そこには、金の鎖に吊るされた、雫のような形の、赤い宝石が静かに輝いていた。<br>
自分が長い間探しているものにそっくりだ。<br>
そのペンダントを譲ってくれませんかと頼んでみる。<br>
成美さんは自分のだからいやだと断る。逆に、何故そんなものをほしがるのかと訊ねる。<br>
母の形見なんです、と答える。<br>
残された母さんの写真に、そのペンダントを着けているのが何枚かあるし、<br>
それに自分でも、母さんがそのペンダントを持っているのを覚えている。<br>
きっと事故に遭った当日も身に付けていたに違いないが、現場からは見つからず、<br>
また、遺品をどんなに探しても見つからなかった。<br>
譲ってもらえないのなら、同じのを探してほしいと頼んでみる。<br>
ペンダント自体は宝石的な価値はあまりないが、アンティークだからそれなりの値段はすると成美さんは言う。<br>
成美さんが電卓を叩いて見せた金額は、事務所の安月給ではとても・・・という金額だった。<br>
お金はいいから、この店でバイトしない?と、成美さんは雑用係として店で働く事を提案する。<br>
一応事務所の正社員だし・・・と断ろうとするが、強引な成美さんに押し切られてしまった。<br>
京香さんになんて説明すればいいんだろう、と後ろめたい気持ちになったが、<br>
だが、諦めかけていた母さんのペンダントへの道筋が出来たことは確かだ。<br>
早速仕事を押し付けられる。成美が指差したその先に、セクンドゥムの名が印刷されてある紙袋が置いてある。<br>
中にはオルゴールが入っている。先ほどすれ違ったふたり連れが置いていったものだろう。<br>
近所に柏木というジジイが住んでいるので、そこまで運んでほしいとのこと。<br>
何故自分で行かないのかと訊くと、明るいのやだ、と一言。<br>
まだ日が高いから出歩きたくないのだという。ますます吸血鬼じみてきた。<br>
<br></dd>
<dt>135 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:15:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>柏木邸はすぐに見つかった。門の前に老人が居る。この人が柏木さんらしい。<br>
紙袋を手渡すと、柏木老人はすぐに事情を悟ったようだ。<br>
またか。あの横着者が。・・・鑑定には時間がかかると伝えてくれ、と老人は言う。<br>
セクンドゥムに帰り老人の言った事を伝えてから、家路についた。<br>
公園を横切る。突然、雨が降り出す。<br>
と、女性の悲鳴が聞こえてきた。植木に囲まれた人目につかない一角に、<br>
セクンドゥムから出てきたふたりが立っていた。少女の方は、黒い覆面をかぶった男に、後ろから組み付かれている。<br>
覆面の男は手にナイフを光らせ、少女に向けている。<br>
話している言葉から、少女と男は兄妹だと言うことがわかった。<br>
俺はとっさに助けに入った。妹は無傷で助かったが、兄は犯人のナイフで腹を切られた。<br>
だが命に別状は無さそうだ。覆面男は逃げていった。<br>
兄は救急車で運ばれていった。<br>
俺と妹は警察に連れて行かれ、別々の部屋で事情聴取された。<br>
日付けも変わろうかという頃にやっと開放される。警察署の前に妹が待っていた。<br>
彼女が白い杖を持っていることに気付く。目が不自由だったのだ。<br>
彼女は「嘉納潤」と名乗った。兄は「嘉納浩司」というらしい。<br>
浩司さんは幸い、浅い傷で済んだので、入院せずに済むだろうとのことだ。<br>
助けてくれたお礼がしたい、と潤ちゃんは言うので、携帯電話の番号を教える。<br>
兄妹は身寄りが無く、木原家にお世話になっているとのことだ。<br>
いかにも執事ですと言わんばかりの人物が潤ちゃんを迎えに来た。<br>
お前にも迎えが来てるぞ、と刑事さんに言われた。そこには見覚えの無い男が居た。<br>
年は俺と同じくらいか。髪を短く刈り込んだ、チンピラ風の男。親しげに話し掛けてくる。<br>
男は哲平と名乗ったが、やはりそんな男は知らない。だがその場では知ってる振りをして、警察署を後にした。<br>
哲平は俺を、柏木老人の家へと連れてきた。哲平は柏木邸で居候をしているそうだ。<br>
そして座敷には柏木老人と成美さんが待っていた。<br>
哲平たちは柏木老人をご隠居と呼ぶ。ご隠居は成美さんの鑑定の師匠なんだそうだ。<br>
なぜオルゴールを自分で鑑定しないのかと成美さんに聞いてみたが、<br>
自分では難しすぎるし、面倒くさいとの答え。<br>
酒に弱い成美さんは酔いつぶれて眠ってしまった。<br>
成美さんは日光に弱い体質らしいので、暗いうちに送らなければ、と哲平は言う。<br>
哲平とふたりで成美さんを車に乗せ、セクンドゥムへ送ってから、やっと家に帰った。<br>
<br></dd>
<dt>136 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:18:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br>
携帯電話にさっそく浩司さんから電話がかかってきた。夕食に招待されることになる。<br>
探偵事務所に行き、京香さんに、セクンドゥムの雑用係になってしまったことを話す。<br>
ペンダントのことや両親の事故のことは京香さんには一通り話してあったので、<br>
それなら、ということで許可をとりつけた。<br>
昼過ぎに木原邸に向かう。その大きさに圧倒されてしまう。絵に書いたような、白亜の殿堂という感じの屋敷だ。<br>
あの有名な木原グループの社長、木原権三の邸宅なだけのことはある。<br>
もっとも、権三は最近亡くなってしまったが。<br>
潤ちゃんと浩司さんが出迎えてくれた。ふたりに木原邸を案内される。<br>
木原邸に今住んでいるのは、権三の妻和江、その息子の充(みつる)、嘉納兄妹、<br>
そして執事と住み込みのお手伝いさん。大きい家の割りに淋しい家族構成だ。<br>
中庭で線の細い、神経質そうな青年に会う。充くんだ。大学生だという。<br>
充くんは俺に、何だか気に食わないような態度を示す。<br>
中庭を過ぎ、離れへやってきた。グランドピアノが置いてある。<br>
潤ちゃんがピアノを披露する。素人が聞いても見事だと思う。最近、潤ちゃんに、海外留学の話があるらしい。<br>
潤ちゃんの才能を見抜いた人が、外国で本格的にピアノを学んでみないかと誘っているそうだ。<br>
だが、木原グループの重役についている浩司さんは、会社を辞めて潤ちゃんについて行くわけにもいかないし、<br>
かと言って潤をちゃん一人にするのは心配だし、迷っているのだと言う。<br>
離れを後にして中庭に戻ってきた。<br>
二人に、セクンドゥムに置いていったオルゴールのことを聞いてみる。<br>
あのオルゴールは兄妹の母の形見だが、譲り受けた時にはもう鳴らなくなっていたとのこと。<br>
そして、なんとか直らないものかと鑑定に出したという。オルゴールを直す事に協力するとふたりに約束する。<br>
潤ちゃんは、この事を正式に探偵事務所に依頼したいと言う。<br>
兄妹は早くに父を亡くし、母に育てられてきたが、その母も亡くなったので途方に暮れていたところ、<br>
権三に拾われたのだという。それから、10年ほど、ふたりは充くんと兄弟のように仲良く育ったという。<br>
だが、最近、充くんとはギクシャクしているらしい。<br>
そんな会話を立ち聞きしている人物を、視界の隅に発見する。あのシャツは充くんだ。<br>
夕食の時間になり、屋敷の人々と俺は食堂に集合するが、何だか冷たい空気が漂っている。<br>
終始無言のまま食事を終えた。<br>
<br>
3日目<br>
ご隠居に、オルゴールのことを聞いてみる。<br>
オルゴールが鳴らないのは、部品が足りないからだそうだ。<br>
だが今はどの部品が足りないのかまでは解らないらしい。<br>
夜、突然携帯電話が鳴り出す。成美さんからだ。スピリットというバーに呼び出された。<br>
行ってみると、成美さんはお気に入りのカクテルを舐めるように飲んでおり上機嫌だ。<br>
テキーラサンセットというカクテル。サンライズでなくサンセットなところが成美さんらしい。<br>
マスターにオルゴールの話をしてみる。部品がなんとか見つからないものかと。<br>
まぁ、焦らないことですよ、人が作った物なら、人の力でどうにかできないものではないでしょう、<br>
とマスターは言う。<br>
気が付くと自宅に居た。どうやって帰ってきたのか思い出せない。<br>
俺は成美さんと同様、酒に弱く、酔うとすぐ記憶が飛んでしまうのだ。<br>
まぁ無事に帰ってきたことだし、良しとしよう。<br>
<br>
4日目<br>
今日は京香さんと一緒に木原邸に足を運ぶ。<br>
潤ちゃんが正式に依頼したいと言うので、依頼書を書いてもらうためだ。<br>
潤ちゃんの部屋で話を聞く。<br>
権三氏が亡くなった後、遺書を管理していた弁護士から、嘉納兄妹宛ての謎の包みを受け取ったとのこと。<br>
権三氏はその包みを、これが本当の遺産だと言っていたとのこと。<br>
包みの中にはカセットテープが入っていた。早速聞いてみたが、数十秒の短いピアノ曲だ。何を意味するのだろう?<br>
離れに行ってみると、ピアノの音が聞こえてきた。<br>
潤ちゃんほどではないにしろ、なかなか上手いと思った。覗いてみると、充くんが弾いている。<br>
充くんは突然、狂ったように指を鍵盤に叩きつけた。不協和音が鳴り響く。<br>
聞いてませんでしたという顔で離れのドアを開ける。<br>
僕の指は、曲を忘れてしまったんですよ・・・と、謎の言葉を残し、充くんは去っていった。<br>
帰りにセクンドゥムへ寄ってみる。あのオルゴールが高価なものだったら、<br>
オークションで売り買いされた記録が残っているだろうから、それで何か解るかもしれない、<br>
調べてみると成美さんは言う。<br>
<br></dd>
<dt>137 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:19:22 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br>
昨日はとても、何か話し掛けられるような状態ではなかったが、今日は機嫌が良いようなので<br>
充くんに話を聞くことにする。<br>
あのカセットテープに入っていた短い曲は、充くんが弾いたものとのこと。<br>
権三が手書きの楽譜を持ってきて、それを弾いたとのこと。<br>
また、浩司さんは自分に対して何かを隠しているとも言う。どうにかして誤解を解きたいという。<br>
さらに充くんは懐かしそうに話す。<br>
屋敷の近くに廃工場があって、子供の頃はそこで浩司さんと仲良く遊んだとのこと。<br>
廃工場に行ってみた。壁に落書きが残されていた。「ひみつきち」そう書かれていた。<br>
それから、充くんと浩司さんの誤解を解くべく奔走する。完全に元通りと言うわけにはいかないが、<br>
なんとか誤解は解けたようだ。<br>
そして、潤ちゃんに会う。今夜、セクンドゥムへ浩司さんと共に訪れると言う。<br>
夜、成美さんと共に、セクンドゥムで待っていると、兄妹がやってきた。<br>
成美さんは、店のパソコンを立ち上げ、調査した結果を見せる。<br>
あのオルゴールはキルジェの作品である。キルジェは有名なオルゴール作家。<br>
オルゴールの曲は自分が作曲したオリジナル曲で、作品は一曲につき一点しか作られない。<br>
つまり、全てが一点もの。曲の題名がそのまま作品名となっている。<br>
そしてあのオルゴールは、「明日から始めよう」という作品なのだそうだ。<br>
最後にオークションで買い取ったのは、木原権三となっている。<br>
兄妹の母が権三の知り合いだとは知らなかったと二人は言う。<br>
また、オルゴールがそんなに高価なものだということも。<br>
キルジェについて書かれているホームページに、MIDIでオルゴールの音色を再現したものが掲載されている。<br>
早速「明日から始めよう」を再生してみる。<br>
この曲、聞いたことがある。あのカセットテープの曲と同じだ。<br>
あ、これ、こっちの方の音のほうが綺麗・・・?ピアニストならではの耳のよさを持った潤ちゃんが言う。<br>
オルゴールの音色の方が、カセットテープの曲より、<br>
シンプルで綺麗な音色だ。むしろ、カセットテープの方が余計な音を足しているようだと言う。<br>
どの音が余計なのかは帰ってからカセットテープをよく聞いてみるとのこと。<br>
<br></dd>
<dt>138 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:20:08 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>6日目<br>
屋敷の離れで潤ちゃんと浩司さんが楽譜と格闘していた。どうやら何が足された音符か判明したようだ。<br>
全部で8つの音が足されている。こんな時はやっぱり、暗号だと疑うべきだろう。<br>
いろはや五十音、アルファベッドなどを音階に当てはめて読んでみるが、<br>
どれも正解ではないらしい。<br>
浩司さんが何かを決断したように立ち上がる。書斎へ行こう、と言う。<br>
権三氏が使っていた書斎へと行く事にする。<br>
潤ちゃんも立ち上がりかけたがそれを制し、離れに残るよう言う。<br>
書斎は静かだった。難しそうな本がたくさんあるのは普通だが、変わった作り付けの植木鉢が特に目を引く。<br>
一通り調べてみたが、音符の解読に役に立ちそうな物は何も無い。<br>
こんな人気の無い所へ連れてくるのは何か別の目的があるのだと悟る。<br>
実は、潤は権三の本当の娘なんだ、と浩司さんが言う。<br>
浩司さんの父は浩司さんが生まれた後、すぐに亡くなってしまい、母は権三の愛人になったとのこと。<br>
だが、子供が出来たと解った途端、母は身を引き、権三の前から姿を消した。<br>
母の死後になってやっと居所を突き止めた権三は、二人を引き取ったのだという。<br>
夕食の時間です、と執事が呼びに来た。浩司さんと俺は食堂へ降りる。<br>
そういえば、潤ちゃんを離れに置き去りにしてしまった。離れに向かうが、潤ちゃんの姿は無い。<br>
屋敷中探すがやっぱり居ない。また離れに戻ると、戸口に潤ちゃんが現れた。<br>
あのときのように、後ろから組み付かれ、ナイフを向けられている!<br>
そのナイフはあのときと同じナイフだ。そう、あの覆面の男は、充くんだった。<br>
充くんと潤ちゃんは宵闇に消えた。二人はどこに行っただろうと考える。そうだ、廃工場!<br>
急に走ったので傷口が開いてしまった浩司さんを残し、俺はひとりで廃工場へ向かう。<br>
廃工場の中に入り、慎重に奥へと進んでいく。<br>
使われなくなって放置されている機械が並ぶ奥に、人の気配がする。<br>
その方向に進んでいくと、充くんがナイフを構え立っていた。<br>
少し離れた所に潤ちゃんが寝かされている。<br>
俺は充くんを説得する。好きだったのに、妹だったなんて、と充くんは言う。<br>
どうやら、書斎での話を聞かれていたらしい。そして、発作的にこのような行動に・・・。<br>
充くんはまだナイフを振りかざして襲ってくるようなそぶりを見せる。<br>
灯油を撒いた、これで火をつければおしまいさ、と充くんは言う。<br>
そして、左手でポケットを探っている・・・ライターを出そうとしているのだ。<br>
よせ、こんな所で一緒に死んで何になる?死んでから潤ちゃんにどんな顔を合わせるつもりだ?<br>
諦めず、なおも説得を続ける。やがて、行けよ、と充くんはナイフを下ろして言う。<br>
急いで潤ちゃんを抱きかかえる。良かった。気絶しているだけのようだ。息がある。<br>
そして一目散に出口へ走る。・・・まさか?<br>
工場を出たところで身を伏せる。<br>
背後で、灯油に引火したとは思えないほどの大爆発が起こる。<br>
これでは、充くんは、もう助からないだろう。<br>
潤ちゃんが意識を取り戻し、身を起こす。真神さん、あの、ここは?と訊くので、<br>
秘密基地だよ、と答えた。<br>
近くの病院に潤ちゃんと俺は運ばれた。<br>
幸い、ふたりとも怪我は対した事は無い。ただ、潤ちゃんは精神的なショックが大きいだろう。<br>
じゃあ、わたしの本当のお父様は?と潤ちゃんが聞いてくるので、権三さんだよと答える。<br>
充さんがわたしのお兄様?と聞くと、執事が口を挟んだ。<br>
いいえ、充様は潤様とは血が繋がっておりません、とのこと。<br>
執事が言うには、充くんは和江夫人と愛人の間に出来た子だということだ。<br>
なんという皮肉・・・。<br>
<br></dd>
<dt>139 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:21:00 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>7日目<br>
木原邸のリビングに関係者一同が集合している。<br>
今度こそ、暗号を解かなくては。<br>
テーブルの上にオルゴールについて、そして音符についての関係資料を広げる。<br>
ふぅん。「明日(あす)から始めよう」って言うのか、この曲は、と誰かが資料を見て言う。<br>
そうか、明日は「あした」とも「あす」とも読める。ずっと「あした」と読むと思っていた。<br>
潤ちゃんは「あす」と聞いてピンと来たようだ。ドイツ語の音階だと、As(アス)という音があるらしい。<br>
As音から、ABC・・・とアルファベットに置き換える。すると、「NISI UEKI」という文字列になった。<br>
西の植木・・・たぶん、書斎のあの作り付けの植木鉢だ。<br>
書斎へ行き、植木鉢の奥の壁を調べると、木を張り合わせたような跡がある。<br>
叩いてみると空ろな音がする。そこをこじ開けると、ビニール袋に入った3冊のノートが出てきた。<br>
これは・・・裏帳簿だ、浩司さんが愕然として言う。<br>
木原グループの不正が載っている帳簿だ。ある意味、遺産かな。<br>
でも、これは浩司さんには役に立つだろうけど、潤ちゃんには、何か無いのか?と思い、<br>
もう一度ビニール袋を検めてみた。細い、金属の棒が出てきた。<br>
<br>
半月後。<br>
浩司さんは裏帳簿の内容をすべて公開した後、責任を取る形で辞任してしまった。<br>
そして、潤ちゃんは海外留学に行く事になり、浩司さんはついて行くことになった。<br>
俺は空港に見送りに来たところだ。紙袋から小さな木の箱を取り出し、潤ちゃんの手のひらに乗せてやる。<br>
そっと蓋を開けると、「明日から始めよう」が流れ出した。<br>
最後に出てきた金属の棒は、足りない部品だったのだ。たちどころにオルゴールは直った。<br>
潤ちゃんはオルゴールを抱きしめて、言う。ありがとう、お父様。<br>
To Be Continued<br>
<br></dd>
<dt>140 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:07:48 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>第2話 赤いカメオ<br>
<br>
1日目<br>
7月の土曜日のある朝。<br>
自宅近くの繁華街、とおば東通りを歩いていると、女の子の悲鳴が聞こえた。<br>
見ると、ショートカットの高校生くらいの女の子が困った顔で立ち尽くしている。<br>
持っていた紙袋の底が破けてしまったので、路上にモノをぶちまけたようだ。<br>
俺はぶちまけたモノを一緒に拾ってやることにした。<br>
事務用品にお菓子、そして化粧品のようなもの。これはあまり縁が無いので解らないな。<br>
とりあえず、拾ったモノを上着にくるんで探偵事務所まで行く事にする。<br>
事務所で新しい紙袋をもらい、詰めなおし、女の子に渡す。<br>
女の子にとても感謝される。彼女は唯(ゆい)と名乗った。<br>
唯ちゃんは、とおば東通りの先、天狗橋を渡り、手を振って元気に帰っていった。<br>
お昼は行きつけのインターネットカフェ「サイバリア」で食べる事にする。<br>
俺に声をかけるのは、サイバリアの名物店員、奈々子だ。<br>
奈々子は典型的なイマドキの女子高生といった感じである。<br>
奈々子は、今は都市伝説のサイトが面白いと教えてくれた。<br>
午後にセクンドゥムに顔を出すと、スーツを着た中年の男が怒ったように店を出て行くところだった。<br>
成美さんはなにやら悪戯っぽい笑みを浮かべている。<br>
その手には楕円形のカメオのブローチが握られている。<br>
ブローチを見せてもらった。赤の地に白く、貴婦人の横顔が浮き出るように彫刻されたものだ。<br>
よく見ると、貴婦人の胸元のところに小さなくぼみがある。<br>
「そこに宝石が嵌るはずよ。宝石が無いから、価値はそれほどないわね」<br>
なるほど。宝石があったら、貴婦人が首飾りを着けているように見えるな。<br>
先ほどの男は、それは呪いのカメオだとか何とか騒いでいたが、<br>
成美さんは、そんなことは真に受けず二束三文の値段でブローチを買い取ったらしい。<br>
成美さんが言うには、こういうのは詐欺師がよくやる手だという。<br>
呪いのカメオだとか言って上手い具合に芝居して、ブローチを手元に残しながらお金だけ貰ってしまうのだという。<br>
どうやら成美さんは、さっきの中年男を詐欺師と勝手に決め付けているらしい。<br>
ブランド物のネクタイを締めて、身なりが良さそうだったからとのこと。<br>
もしあの男が詐欺師なら、ブローチを取り返しに来るのでは、と成美さんは言う。<br>
そして、もう一人、午前中にも、若いメガネをかけた男がカメオのブローチをを探しに来たとのこと。<br>
今日だけで二人もカメオに関わる人物が現れた。これは本格的に何かあると成美さんは睨んだようだ。<br>
都市伝説として語られている、手に入れると不幸に会うという呪いの赤いカメオ。<br>
それがこの街のどこかで目撃されたか、あるいは、今手にしているこれが呪いのカメオかも・・・?<br>
呪いのカメオなら、それには赤い宝石が嵌っているはずだ。<br>
成美さんは、呪いのカメオを手に入れるか、あるいはこのカメオに嵌っている宝石を探すようにと俺に命じる。<br>
何でそんな物騒なもの欲しがるのかと訊ねると、成美さんは面白そうだから、と一言。<br>
夜、帰宅してからパソコンを立ち上げ、メールをチェックする。<br>
奈々子からメールが来ていた。話題の都市伝説のサイトのURLを教えてくれた。<br>
試しに見てみることにする。<br>
なになに、天狗橋に男の幽霊が出る・・・か。<br>
呪いのカメオの事は特に書いていなかった。<br>
<br></dd>
<dt>141 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:08:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br>
お昼には少し早い時間に探偵事務所の前に行くと、奈々子が待ち伏せていた。今日は日曜日だっけ。<br>
奈々子は両手にビニール袋をぶら下げていた。駅前のバーガー屋だ。<br>
京香さんと一緒に食べようという。事務所に入り、三人でバーガーを食べる。<br>
テレビをつけるとお昼のニュースをやっている。<br>
―今朝、人気アイドルの美幸さん(18)が、スターライツビルの駐車場で死亡しているのが発見されました。<br>
―美幸さんは、屋上から転落したと見られ、警察では自殺とみて捜査しています。遺書などは見つかっていません。<br>
テレビには気の強そうな女の子の映像が映し出されている。<br>
俺と京香さんは解らないのでポカンとしていたが、奈々子は驚いた表情だ。<br>
美幸ちゃんが自殺なんて嘘だよ。自殺なんかする子じゃない、と奈々子は言う。<br>
美幸ちゃんは、歌番組TRY×FLY(トライバイフライ:略してトラバイ)に出ているアイドルだ。<br>
アイドルと言ってもデビュー前である。視聴者の投票でアイドルデュオユニットを選出しようという、<br>
トラバイの人気企画で最終選考に残ったうちのひとりである。<br>
美幸ちゃんの他に、一番人気の明日香ちゃん、補欠合格の唯ちゃんと三人の中からふたりが選ばれてデビューとなる。<br>
そして、最終投票の結果がもうすぐ出るというときに、美幸ちゃんは死んだ・・・。<br>
美幸ちゃんはもともと、そこそこ人気があったが、最近、唯ちゃんの人気が上がってきたところだという。<br>
もしかしたら落ちるかも知れない。プライドが高い美幸ちゃんはそれが嫌だったのかな、とのこと。<br>
でも、自殺するなんて――。<br>
<br>
3日目<br>
セクンドゥムへ行くと、成美さんが退屈そうな顔をしている。<br>
まだ詐欺師はカメオを取り返しに来ないとのこと。<br>
午後にサイバリアに行くと、哲平と奈々子が意気投合している場面に遭遇する。<br>
ふたりとも、三人の中では美幸ちゃんが一番好きなのだという。<br>
早速ネットでは美幸ちゃんの死に対して様々な噂が飛び交っている。<br>
補欠合格した唯ちゃんが美幸ちゃんを突き飛ばしたなどと書いているひどい掲示板もあった。<br>
泣き虫の唯ちゃんに、美幸ちゃんは辛く当たっていたという。それを恨みに思って・・・ということらしい。<br>
俺は三人のことを何も知らなかったので、とりあえずネットで調べてみる。<br>
一番人気の明日香ちゃん(18)は、とびきりの美少女だ。他の二人とは違うオーラが出ている。<br>
補欠合格の唯ちゃん(16)は妹系キャラといった、守ってあげたくなる感じの少女だ。<br>
そう言えば、スターライツビルはここから歩いても行けるようなところにある。<br>
唯という名前・・・昨日会ったあの女の子か?と思ったが、どの画像を見ても、あの子とは別人のように思える。<br>
そして、美幸ちゃん。気が強そうな女の子だ。実際気が強いのだと奈々子が言う。<br>
選考に落ちても、別の道で頑張ってほしかった、<br>
落ちたとしてもアイドルの道が完全に閉ざされたわけではないのだから・・・と哲平は残念そうに言う。<br>
事務所に帰ると、珍しく依頼が来ていると京香さんが言う。スピリットで待ち合わせだそうだ。<br>
夜、京香さんと一緒にスピリットに行く。<br>
依頼人は亀山という男。<br>
スターライツプロ所属の、あのトラバイの人気企画の三人(Sユニットと呼ばれている)のマネージャーだ。<br>
美幸ちゃんの死は自殺ということで片付けられたが、納得出来ないので調べてほしいとのこと。<br>
また、最近、スターライツビルに女の幽霊が出るという噂があるので、それも調べてほしいそうだ。<br>
明日、スターライツビルに行くことになった。<br>
<br></dd>
<dt>142 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:09:14 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>4日目<br>
事務所で京香さんと落ち合ってからスターライツビルへ向かう。<br>
スターライツビルは天狗橋のさらに向こうの、7階建てのビルだ。<br>
1階の受付の女性に来意を告げると、亀山さんが現れた。<br>
亀山さんにビル内部を案内される。スターライツプロは都心のビルに本社機能を移しており、<br>
このビルももうすぐ引き払われるので閑散としている。<br>
その空き部屋にSユニットの三人を住み込みさせ、<br>
日常生活に密着したドキュメンタリータッチの番組内容にしたのがウケた原因らしい。<br>
1階は受付と事務所と待合室、2階にはSユニットの三人の部屋、3階から上はほとんど使っていない。<br>
7階に会議室があり、そして屋上。<br>
エレベーターで7階まで行った後、階段を上って屋上へ出る。<br>
美幸ちゃんが飛び降りたと思われる場所には、靴がきちんと揃えてあったそうだ。<br>
それが警察が自殺と断定した理由だ。今、その場所には風化しそうなチョークの跡が残るだけ。<br>
誤って転落することも考えられなくはないが、手すりは低くない。<br>
2階へ降りて美幸ちゃんの部屋を調べる。生前のままにしてあるらしいが、特におかしい所は無い。<br>
1階へ戻り、事務所へ行く。専務の橘さんが居るので挨拶するが、<br>
探偵と聞くと橘専務はあからさまに嫌そうな顔をする。<br>
待合室はSユニットの女の子たちがテレビを見たりくつろいだりする場所だ。テレビとソファが置いてある。<br>
受付に戻ってきた。受付に座っているのは事務を担当している長井という女性だ。<br>
このビルにはSユニットの女の子たちと亀山さん、長井さんと、不在がちな橘専務しか居ないらしい。<br>
美幸ちゃんが倒れていたという駐車場に行く。消えそうなチョークの跡。ちょっと血痕も残っている。<br>
そこにはたくさんの花束が置かれている。<br>
またビル内に入る。女の子たちが住んでいるせいもあって、普段から出入り口は施錠されているそうだ。<br>
事件当日も、部外者が侵入したとは考えられない。<br>
事務所に戻るとSユニットの二人が帰ってきた。<br>
明日香ちゃんは実物も美人だ。そして、唯はやはり、あのとおば東通りで会った女の子だった。<br>
唯ちゃんは普段は普通に見えるが、衣装を着てカメラの前に立つと別人になるのだという。<br>
そういうギャップも人気の一因かもな。<br>
関係者一同が揃ったところで、事件当日のことを聞く。<br>
橘専務は当日は朝から不在で、帰ってきたときはもう美幸ちゃんが死んだ後だったとのこと。<br>
唯ちゃんは当日、買出しに行っていたとのこと。とおば東通りで会ったのは買出しの途中のことだったのだ。<br>
そして、事件の少し前に、屋上で美幸ちゃんと会っていたとのこと。<br>
何か怒ったような様子ではあったが、悩んでいるとかそんな様子は無かったそうだ。<br>
明日香ちゃんは高所恐怖症なので、屋上へは撮影の時に一ヶ月前に行ったのが最後だそうだ。<br>
幽霊のことも聞いてみる。明日香ちゃんは見たことがないと言う。<br>
唯ちゃんは、ときどき、白い人影をみると言う。髪が長くて美幸ちゃんのようだと。<br>
話が終わって事務所を出るとき、唯ちゃんに声をかけられる。<br>
美幸ちゃんは自殺するような人じゃない。確かに、辛く当たられたりもしたが、<br>
それを恨んだりしていない。むしろ感謝している、美幸ちゃんの死の真相を解明してほしい、と唯ちゃんは言う。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>143 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:11:07 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br>
今日は一人でスターライツビルにやって来た。<br>
ビル内に入るとものものしい雰囲気だ。<br>
長井さんに話を聞くと、なんと昨日の夜、待合室に幽霊が出たとのこと。<br>
待合室で亀井さん、長井さん、唯ちゃんと明日香ちゃんと4人でテレビを見ていたところ、<br>
突然テレビのチャンネルがメチャクチャに変わり、その後部屋の照明が突然消え、<br>
怖くなって待合室から逃げ出したところ、白い人影を見たという。<br>
だれかの悪戯か?待合室に行き、テレビやリモコン、照明も調べてみたが、おかしなところは無い。<br>
橘専務は不在だったので他の4人に聞き込みをしたが有力な証言は得られなかった。<br>
誰かが嘘をついている。<br>
その後、また屋上に行ってみると、小さな赤いガラス片を発見する。<br>
宝石のようにも見えなくは無いが、このように砕けているところをみるとやはりガラスだろう。<br>
ハンカチに包んで持っておくことにする。<br>
駐車場にも行ってみた。すると美幸ちゃんが倒れていたチョークの跡より少し離れた所に、<br>
何かピンク色のものが落ちていることに気付く。拾い上げると、綺麗な花模様がついている。<br>
自分では何だか解らなかったが、これはつけ爪だと長井さんが指摘した。<br>
事務所に行くと橘専務が帰ってきていた。全員にガラス片とつけ爪を見せる。<br>
どうやらつけ爪は美幸ちゃんのものらしい。皆がこのつけ爪を美幸ちゃんがつけているのを見たことがあると言う。<br>
ガラス片については何も得られなかった。アクセサリーの一部のようだとは言っていたが。<br>
ビルを後にしてサイバリアに行き奈々子に会う。<br>
つけ爪を見せてみると、とおば東通りの端にリューヌというネイルサロンがあると教えてくれた。<br>
リューヌの前に行ってみた。「レディースオンリー」の看板がある。<br>
女性に同伴を頼まないとダメらしい。誰に頼もう?京香さん?それとも・・・。<br>
<br>
6日目<br>
探偵事務所に行き、京香さんにこれまでのことを報告する。<br>
思い切って京香さんにリューヌへの同行をお願いすると、京香さんは気が進まない様子だ。<br>
京香さんはそういうところに行くと、勧められたものを断りきれなくて、<br>
結局たくさん買ってしまうことになってしまうから行きたくないのだと言う。<br>
何か勧められたらひとつだけ買いましょう、必要経費ということで、と言って納得してもらう。<br>
京香さんとリューヌに入って店員につけ爪を見せると、確かにこの店で作ったもののようだという答え。<br>
だが、今は担当者が不在なので本当にこの店の物なのか、美幸ちゃんのものなのかは解らないとのこと。<br>
また出直そうと思っていると、京香さんがマニキュアを次から次へと勧められているところだった。<br>
ひとつだけ買ってリューヌを出る。黒い、どこかで見たような包装だ。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>144 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:11:54 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>7日目<br>
今日はトラバイの撮影があるというので、亀井さんと一緒にテレビ局へ行く。<br>
テレビ局は電車で都心方向に数時間行った所にある。<br>
Sユニットの企画は主にスターライツビル内での撮影なので三人が局へ行く事はあまり無いというが、<br>
スタジオに居る司会者やスタッフたちは皆Sユニットのことを心配してくれている。<br>
企画は突然中断されてしまったので視聴者からも反響が多いそうだ。<br>
そのうち明日香ちゃんと唯ちゃんの二人でデビューする事になるのだろうとは思うが、<br>
それがいつになるのかはまだ未定のままだ。<br>
それと、気になる噂を耳にする。<br>
大門寺局長からカメオのブローチを贈られた女性芸能人は売れるというジンクスがあるという。<br>
それは逆に、局長の愛人になれというメッセージでもあるかも、という人もいる。<br>
Sユニットの誰かがカメオを贈られたとかいう噂もある。<br>
そのブローチを実際に見た人も居た。カメオの貴婦人の胸元に緑色の宝石が嵌っているのだそうだ。<br>
成美さんのところにあるブローチと似てる・・・。<br>
局長に会って話を聞きたいところだが、今週に入ってから謎の失踪を遂げているという。<br>
<br>
8日目<br>
京香さんを伴ってスターライツビルへ向かう。<br>
事務所に行くと、橘専務が怒っていた。幽霊騒ぎなんてくだらないというので、<br>
もう犯人はだれだか解っている、解決してみせると反論する。<br>
もちろんそれはハッタリだが、ある程度は目星が付いている。<br>
女の子たちはレッスン中ということで不在だった。<br>
申し訳ないが唯ちゃんの部屋を調べさせてもらう事にする。<br>
ただ、実際に部屋に入って作業をするのは京香さんだが。<br>
唯ちゃんの部屋には電子レンジやホットプレートが置いてあった。部屋で自炊しているらしい。<br>
そして洋服ダンスのな中ら、白い衣装と長い髪のかつらが・・・。<br>
唯ちゃんの部屋で細工を施し、レッスンから帰ってきた女の子たちと亀山さん、長井さんを待合室へ集め、<br>
幽霊騒ぎのとき起こったことを再現してみせる。<br>
そう、それは唯ちゃんの仕業だったのだ。唯ちゃんは、美幸ちゃんの死の真相を解明してほしい一心で、<br>
このようなことをしたのだという。<br>
唯ちゃんはポケットから何かを取り出した。銀のペンダントだ。<br>
これは、美幸ちゃんがいつも大切に持っていたというペンダントだ。<br>
事件当日、2階の廊下に落ちていたのを拾ったのだという。<br>
事件の直前、美幸ちゃんに会ったときに返そうと思っていたが返せずに、<br>
それ以降ずっと持ち歩いているそうだ。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>145 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:13:30 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>9日目<br>
明日香ちゃんのダンスシューズの底に赤いガラス片が刺さっているのを、唯ちゃんが発見する。<br>
ハンカチにくるんだものと形を合わせると、確かに合う。<br>
このガラス片が落ちていたのはビルの屋上だ。<br>
明日香ちゃんは高所恐怖症だから、最近は屋上に行ってないと言っていなかったか?<br>
明日香ちゃんを問い詰めると、たしかに事件当日、屋上で美幸ちゃんと会ったと言う。<br>
そして揉み合いになったとも。明日香ちゃんは最近長袖の服を着ている。<br>
袖を上げると、傷跡があった。美幸ちゃんのつけ爪で付けられた傷だ。<br>
美幸ちゃんが転落したあと、つけ爪は明日香ちゃんが全部剥がしたとのことだが、<br>
落ちたときに剥がれた一枚だけは回収されなかった。それが駐車場で発見された。<br>
だが、揉み合いになったのは認めるが、自分が突き落としたのではないと明日香ちゃんは主張する。<br>
高所恐怖症の明日香ちゃんがわざわざ屋上まで行かなくてはならなかった理由を聞いてみる。<br>
それは美幸ちゃんにカメオの件で呼び出されたからだと。<br>
噂どおり、大門寺局長は明日香ちゃんにカメオを贈っていたのだった。<br>
事件当日の前日、突然局長がスターライツビルにやってきて、<br>
7階の会議室で明日香ちゃんと密会したのだと言う。<br>
そのとき局長は、Sユニットの企画は出来レースで、<br>
明日香ちゃんと美幸ちゃんが合格する予定になっていると話した。<br>
だが、最近唯ちゃんの人気も上がっていることだし、<br>
気が強くて扱いにくそうな美幸ちゃんを落そうか、などと言う。<br>
そして会議室を出た後、カメオをふと見ると、宝石の色が赤くなっていた。<br>
これが呪いのカメオなのかと驚いて、明日香ちゃんはカメオを廊下に落としてしまった。<br>
局長は、そのカメオは気味が悪いから手放す、そのうち新しいのを買ってやるとか言って<br>
カメオを拾って持って行ってしまったとのこと。<br>
翌日、その密会の内容を聞いていた美幸ちゃんは屋上へ明日香ちゃんを呼び出した。<br>
美幸ちゃんは、自分が選考に漏れるのは一向に構わないが、出来レースは、不正は許さないと言う。<br>
美幸ちゃんは明日香ちゃんに、小さな赤い宝石を見せる。<br>
呪いのカメオに嵌っていた宝石かと思って明日香ちゃんはびっくりする。<br>
揉み合った末、明日香ちゃんは宝石を奪うが、すぐにガラスで出来たダミーだと解る。<br>
悔しくなった明日香ちゃんはガラスを足で踏みつけた。そのときガラスが砕けて靴に刺さったのだ。<br>
不正の証拠であるカメオは人に頼んで探してもらっているので、それが見つかり次第、<br>
不正を公表すると美幸ちゃんは言う。<br>
明日香ちゃんはその後、何もせずに屋上を後にしたとのこと。<br>
だが証拠は揃いすぎていた。明日香ちゃんは逮捕されてしまう。<br>
橘専務も参考人という事で警察に連れて行かれた。<br>
スターライツビルには報道陣が押し寄せると思うので、もう居られないだろう。<br>
唯ちゃんたちや京香さん、何故か成美さんも加わり、皆でご隠居の家に泊まることになった。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>146 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:15:27 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>10日目<br>
ふと気になった事があり、唯ちゃんから美幸ちゃんが大切にしていたという銀のペンダントを借りる。<br>
平べったいペンダントヘッドをよく見ると、継ぎ目があるのがわかる。そこに爪を差し込むと・・・開いた。<br>
そこには写真が入っていた。ロケットペンダントだったのだ。<br>
メガネの繊細そうな青年が映っている。反対側を見てみると、「SHINYA」と小さく彫ってある。<br>
「しんや」という人なのか。<br>
唯ちゃんは、しんやという名前に聞き覚えがあると言う。<br>
美幸ちゃんは、たまに電話でしんやという人と話していたと唯ちゃんは言う。<br>
セクンドゥムにカメオを探しに来た男と特徴が似ているので成美さんにロケットを見せると、<br>
この男のようだが写真が小さくて詳しい事はわからないと言う。<br>
こうやって写真を持ち歩くということは、美幸ちゃんと彼は付き合っていたか何かかな?<br>
なんとかして彼に会えないものかと思案する。<br>
何気なくテレビを見ると、ワイドショーの時間だった。<br>
まだ容疑がかかっているだけなのに明日香ちゃんが犯人扱いされていた。<br>
そうだ、彼もこうしてテレビを見ているに違いない。<br>
そして、美幸ちゃんに犯人が逮捕されたことを報告しに行くのでは・・・?<br>
哲平と一緒にスターライツビルに走る。駐車場に、メガネの青年が居た。<br>
青年は何故か逃げるので哲平と二人で追いかけ、捕まえた。そう、彼が「進也(しんや)」くんだ。<br>
進也くんを、唯ちゃんが待っている東公園へ連れて行き、話を聞く。<br>
進也くんは、カメオを探す事を美幸ちゃんに頼まれていたこと、<br>
そしてセクンドゥムにもカメオを探しに来た事を認めた。<br>
ふたりはやっぱり付き合っていたが、美幸ちゃんがスターライツビルに住むようになってからは電話ぐらいしかしていないらしい。<br>
美幸ちゃんは、唯ちゃんに辛く当たるのは唯ちゃんのためだから、本当は嫌だけど仕方ないと言っていたそうだ。<br>
そして、最終選考に漏れたなら、また進也くんと一緒に映画でも見たいね、とも。<br>
やはり、美幸ちゃんは選考に漏れるのが嫌だとか、そんな理由で自殺するような人ではないのだ。<br>
唯ちゃんは進也くんに、銀のペンダントを渡す。<br>
美幸ちゃんが大切にしていたものだと判ると、進也くんはペンダントをぎゅっと握り締める。<br>
進也くんは首から同じデザインのペンダントを外して、唯ちゃんに手渡す。<br>
美幸ちゃんの笑顔は唯ちゃんが持っていたほうがいいと、進也くんは言う。<br>
唯ちゃんはそっとペンダントを首にかけた。泣き出しそうだが気丈にも涙を堪えていた。<br>
ここで泣いたら、また美幸ちゃんに怒られてしまうから、と。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>147 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:16:48 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>11日目<br>
そういえば成美さんのところにカメオを売りに来た男、あれは大門寺局長ではないのか?<br>
セクンドゥムへ行き、店のパソコンで局長の画像を探してみる。<br>
自分も会っているので覚えているはずだが、記憶があいまいだ。<br>
成美さんは局長に間違いないと言う。そうすると、この宝石の無いカメオが呪いのカメオ?<br>
明日香ちゃんは、7階の会議室を出た後ブローチを落としたと言っていた。<br>
きっと、その拍子に宝石が外れてしまったのだ。<br>
まだ誰も拾っていなければ、そこにまだ宝石はあるはず・・・。<br>
成美さんにカメオを借り、スターライツビルに向かう。<br>
7階の廊下で宝石を探す。唯ちゃんも一緒に探してくれたおかげで、割とすぐに見つかった。<br>
綺麗な緑色の宝石だ。カメオの開いている穴にピッタリと収まった。<br>
あとは、またリューヌに行って確かめなくては。今回は奈々子に同行を頼む事にする。<br>
担当者はまた不在だったが、つけ爪が美幸ちゃんのものだったという事が判明した。<br>
そして、つけ爪が出来上がったのは事件当日の朝で、取りに来たのは美幸ちゃん本人ではなく、<br>
ショートカットの女の子だったことも判った。<br>
あの朝、唯ちゃんと一緒に拾い上げた物を思い出してみる。<br>
事務用品にお菓子、そして化粧品のようなもの――黒い包み、あれはこの店の包装だ。<br>
探偵事務所に行って考えを整理する。<br>
関係者たちは全員、あのつけ爪を見た事があると言っていた。<br>
だが、ひとりだけ見る事が出来なかったはずなのに、見たと言っている人が居る。<br>
当日不在にしていたという橘専務だ。<br>
後で美幸ちゃんの死体を見たとしても、明日香ちゃんがもうつけ爪を剥がした後だ。見るのは不可能だ。<br>
でも見ているという事はつまり、当日、美幸ちゃんと会っていたという事だ。<br>
警察に確認したところ橘専務は、事情聴取を終え、先ほど釈放されたとのこと。<br>
京香さんと一緒にスターライツビルへ急ぐ。もう日は暮れていた。<br>
受付の所に亀山さんが倒れていたが、大した怪我ではないようだ。<br>
橘専務が酒瓶を片手に、唯ちゃんを追いかけていったとのこと。<br>
唯ちゃんと橘を探しながらビルを上へのぼり、屋上へ着く。<br>
唯ちゃんの悲鳴が聞こえた。橘は半分に割れた酒瓶の切り口を唯ちゃんに向けている。<br>
時間稼ぎに事件のことを追及すると、橘は口を割る。<br>
局長が明日香ちゃんにカメオを贈ったことも、出来レースも全部知っていたと言う。<br>
局長と明日香の密会も、橘がお膳立てしたものだと言う。会話の内容も知っていた。<br>
そして、口封じのため自殺と見せかけて美幸ちゃんを殺したのも橘だった。<br>
屋上で美幸ちゃんを突き飛ばしてから、靴をきちんとそろえて置いたのだと言う。<br>
何気なくポケットからカメオを取り出して見ると、宝石が赤くなっていた。<br>
橘の注意が唯ちゃんから逸れたときに、唯ちゃんは逃げ出した。<br>
逆上して、橘が瓶を振り上げ、襲い掛かってくる。驚いてカメオを落としてしまった。<br>
そのとき、バタンと音がして、屋上の入り口のドアが開いた。そこには、白い服で長い髪の女性が立っている。<br>
あれは、唯ちゃんが持っていた、幽霊の衣装だな。<br>
遠くて顔がよく判らないが、きっと、京香さんが化けているのだろう、と思った。<br>
女性はつかつかと橘に歩み寄る。橘は、美幸ちゃんに似ている姿を見てすっかり動揺し、後ずさりする。<br>
女性は橘を手すりのところまで追い詰めた。そして、ふたりの体がフワリと浮いたかと思うと、<br>
手すりを乗り越え、駐車場へ落ちた。<br>
京香さんが落ちた?と思い、慌てて下を見たが、そこには橘の死体があるだけで、白い服の女性は消えていた。<br>
後から遅れて京香さんが屋上にやって来た。<br>
すると、あの女性は――。<br>
<br></dd>
<dt>148 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:17:47 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd><br>
それから何週間かたったある日の夜。<br>
関係者一同はスピリットに集まっていた。未成年の奈々子まで来ている。<br>
亀山さんも来たがっていたが、忙しいので来られないという。<br>
奈々子と哲平で都市伝説の話題になった。あの、天狗橋に幽霊が出るとかいうあの話だ。<br>
ふたりが言うには、幽霊はスーツ姿の男でブランド物のネクタイを締めているという。<br>
都市伝説というにはちょっと具体的過ぎると思っていると、何かをふと思い出す。<br>
そう、失踪しているという局長に特徴が酷似している。<br>
成美さんが怪しいと問い詰めると、噂を流したのは自分だと認めた。<br>
だってあの詐欺師、カメオを取りに来ないから詰まらなかったんだもんとのこと。<br>
だから詐欺師じゃないって。あのカメオを本当に呪いのカメオだと思って手放したかったんだろうが。<br>
結局、あれ、本物の呪いのカメオだったのに、恭介ったら失くしちゃうんだもん、と成美さんが言うが、<br>
それには返す言葉も無い。<br>
あの後、ビルの屋上で落としたカメオを探してみたが、どんなに探しても見つからなかった。<br>
(あのカメオに嵌っていた宝石は、アレキサンドライトだと思われる)<br>
テレビを見ていた奈々子が始まるよ~と皆に声をかける。そこにはひとりきりで歌う唯ちゃんの姿が映っていた。<br>
明日香ちゃんはいろいろあった責任を取るように引退してしまったのだ。<br>
そのせいもあって、唯ちゃんのデビューが予定より繰り上がったそうだ。<br>
どこかで聞いてくれてる明日香ちゃん、そして天国で応援してくれている美幸ちゃんのために、唯ちゃんは歌う。<br>
その胸元には銀のロケットが光っていた。<br>
To Be Continued<br>
<br>
<br></dd>
<dt>149 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:44:37 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>第3話 託されたペーパーナイフ<br>
<br>
1日目<br>
いつものように目を覚ます。もう終戦記念日か。<br>
朝のニュースを見ていると哲平が訪ねてきた。<br>
昨夜、柏木邸の郵便受けに紙袋が入っていたとのこと。<br>
差し出されたそれは何の変哲もない紙袋だった。中には殴り書きのメモとペーパーナイフが入っていた。<br>
ペーパーナイフは、全体は銀色で柄のところは龍の形をしており、青い宝玉が嵌っている。<br>
一応骨董品になるのかな。メモには、哲平宛てに、<br>
このペーパーナイフを誰にも知られずに、しばらく預かってほしいということが書かれていた。<br>
差出人は亮太という、哲平の舎弟だという。<br>
昔、哲平が不良たったとき、ふたりでよくでつるんでいたらしいが、今はどこに居るかも判らないらしい。<br>
亮太の写真を見せてもらう。ご隠居の所に居候してからは会ってないらしく、写真も2年前のものだが、<br>
髪型などが変わってなければ今も変わらない姿だろうという。<br>
亮太が何かヤバいことに巻き込まれているらしいので協力してほしいと哲平は言う。<br>
どうせ暇だし協力することにする。ペーパーナイフを紙袋に戻し、上着の内ポケットに入れた。<br>
夜になったら、ふたりがつるんでいたという枕ヶ碕(まくらがさき)へ行ってみようという約束をして<br>
哲平と別れた。夕方、天狗橋で哲平と合流してから枕ヶ碕へ向かう。<br>
枕ヶ碕は天狗橋から南へ行った地域で、治安の悪い場所として有名である。<br>
枕ヶ碕に着いた。潰れた店や廃屋が並んでおり、人影はまばらである。<br>
潮のにおいが海が近いことを教えてくれる。<br>
しばらく行くと、三人の不良たちが少年に絡んでいる場面に出くわす。<br>
カツアゲか?と思い哲平は止めに入る。隙を見て少年は逃げ出す。<br>
だぶだぶの人民服を着て帽子を被っている少年だ。中国人?<br>
少年は俺にぶつかり転倒する。帽子が脱げ、黒髪が滝のようにこぼれ落ちる。<br>
そう、よく見ると女の子だった。彼女は片言の日本語で「涼雪(リャンスェ)」と名乗った。<br>
大学生で日本に留学してきているという。何故こんな危険な所に来たのだと聞くと、人を探しているという。<br>
ここからさらに南に行った遠羽埠頭の倉庫街を散歩していたとき、夕立に遭い雨宿りをしていると、<br>
亮太のような人が通りかかり、傘を貸してくれたという。<br>
写真を見せてみると、確かにその人は亮太だという。<br>
不良たちはどうなったかと思い見ると、哲平と意気投合していた。哲平が枕ヶ碕に居た頃の後輩だという。<br>
俺も三人とすぐに打ち解ける。鼻ピアスのタカ、ロン毛のエイジ、バンダナのヒロヤ。<br>
立ち話もなんだからというので行きつけだというバーに行くことになる。<br>
女の子をこんなところに置いていけないので、涼雪も連れて行くことにする。<br>
涼雪を見ると、黒髪はすでに帽子の中にしまわれていた。<br>
バーには「ハードラック」という看板が出ている。<br>
中に入るとびっくりする。枕ヶ碕にあるとは思えないほど雰囲気のいい店だ。<br>
サミーという陽気な黒人がマスターだ。<br>
不良三人組に亮太のことを聞きこみする。亮太のことは知っているが、今の居所は不明だという。<br>
彼女に電話するから、と言ってヒロヤは店を出て行った。しばらくすると、慌てた様子で帰ってきた。<br>
店の裏のドブ川に人が死んでいるとのこと。サミーに警察への通報を頼み、ドブ川の死体を検分する。<br>
スーツ姿の男だが、普通のサラリーマンには見えない。首に細いワイヤーのようなものが巻かれている。<br>
自殺かと思ったが首に防御創がある。上方をみると剥き出しの鉄骨があった。<br>
投げ縄のようにワイヤーを男の首に掛け、鉄骨に吊って殺したのだと推理する。<br>
そしてその後、犯人はワイヤーを回収したかったが、回収できなかったようだ。<br>
<br></dd>
<dt>150 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 20:51:03 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>サイレンの音が近づいてきた。ハードラック店内に戻ると、氷室刑事と森川刑事が現れた。<br>
氷室さんは、誠司所長が昔刑事だったときの後輩だ。森川は氷室さんの部下の若い刑事。<br>
若いといっても俺より4、5歳年上だが。<br>
森川は俺が居るのを見ると不快な顔をする。森川は探偵が嫌いらしく、顔を合わせるといつも口げんかになってしまう。<br>
それから、ハードラック店内で一同は事情聴取される。<br>
すっかり遅くなってからようやく開放される。俺と哲平は涼雪を家まで送っていくことにする。<br>
天狗橋から北の方へ進み、さらに山の手にしばらく歩くと、高層マンションに着く。<br>
「グランパレス江榮(こうえい)」である。江榮海運公司という中国の貿易会社が持っているというマンションだ。<br>
会長の張(チャン)もここに住んでいるらしい。屋上にはヘリポートがあるとか。<br>
巨大なエントランスには、丸眼鏡をかけ、だらしなく伸びた髪を無造作に束ねた、温和そうな男が立っていた。<br>
涼雪はその男に威(ウェイ)おじさまと呼びかける。身寄りのない涼雪の保護者なのだそうだ。<br>
威さんが江榮海運公司に勤めているのでここに住むことになったらしい。<br>
涼雪は、部屋番号は4011だからと言い残して帰っていった。<br>
帰る途中で、成美さんから呼び出しがかかったのでセクンドゥムへ向かう。<br>
成美さんは風邪を引いているようだ。とても辛そうで放っておけない。<br>
こういうときにはご隠居の所へ連れて行くのがいいとは思うが、町内会の慰安旅行だとかで不在だ。<br>
そうだ、暇な人が居る、と思い京香さんに電話をかける。<br>
事情を話すと、怒った様子だがすぐに来てくれるらしい。<br>
京香さんがやってくると、成美さんは二階の部屋へ連れて行かれた。<br>
この様子だとしばらくは付きっきりじゃないとだめだと京香さんは言う。<br>
探偵事務所は、どうせ依頼もないだろうからしばらく閉めておくことにし、<br>
俺が一日一回、留守電をチェックすることになった。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>151 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 20:58:25 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br>
とにかくいろんな人に亮太の写真を見せて聞き込みをする。<br>
諏訪弁護士の事務所に行ってみることにする。諏訪さんは誠司所長の学生時代からの知り合いで、<br>
今までも何かとお世話になっている人だ。<br>
諏訪さんに写真を見せると、ちょっと考えてから、見たことがあるような気がすると言った。<br>
サイバリアに行き奈々子にも写真を見せてみたが、知らないという。<br>
哲平と待ち合わせて遠羽埠頭へ行くことにする。<br>
枕ヶ碕で涼雪とばったり会う。今日は女の子の格好だ。髪はきっちり束ねて三つ編みにしている。<br>
一緒に埠頭に行くことになった。枕ヶ碕を通り抜けて海の方へ。<br>
倉庫街には使われていない倉庫がある。扉が開いているので中を覗くと、<br>
不良たちの溜まり場になっているらしくゴミや花火の残骸が散らばっていたりする。<br>
奥に扉がある。今は使われてないが冷凍室のようだ。<br>
ふとそこに人の気配がするのでよく調べてみると、生意気そうな少年が現れた。<br>
涼雪が「紫宵(ツーシャオ)」と驚いたように呼びかける。こいつが張の孫だという。<br>
金持ちの孫だというので何かと威張り散らしている。一緒にグランパレス江榮に帰ることにする。<br>
俺と哲平はそのまま涼雪の部屋に招かれ、夕食をご馳走になることになった。<br>
4011、つまり40階の部屋だ。41階から上は全て張の住居だという。<br>
この広いマンションの部屋に威と二人暮しだという。<br>
威さんが夕食の支度をしている間、涼雪に話を聞く。<br>
亮太が貸してくれたという傘を見せてもらうが、普通のビニール傘で、手がかりにはなりそうにない。<br>
涼雪が会ったのは本当に亮太だったのかは不明のままだ。<br>
ハードラックが開店する時間なので今日も行ってみることにする。<br>
哲平が、今日はヤバいんじゃないかとかなんとか言っていると、派手な格好の男が入ってきた。<br>
その男をみて哲平はギョッとする。彼は大仰に、スツールではなくカウンターに腰掛け、足を組む。<br>
なるほど、哲平が嫌がっているのも理解できる。彼は所謂オカマというヤツなのだ。<br>
彼の本名は「恵美(しげよし)」というのだが、「エミー」と呼ばないと怒られるらしい。<br>
そして、エミーはこう見えても有能な情報屋なのだという。<br>
エミーに亮太のことをいろいろ聞いてみる。<br>
亮太は暴力団の青島組と関わりがあるのではという噂があるらしい。<br>
思い切ってペーパーナイフのことも聞いてみた。<br>
ペーパーナイフだということはぼかして、単に骨董品だと言った。<br>
するとエミーは何かをサラサラとメモに書いてこちらへ差し出す。<br>
ヤバい品を取り引きしている裏サイトのアドレスとパスワードだという。<br>
早速裏サイトにアクセスしてみることにする。サイバリアなどの人目に着く所ではだめなので、<br>
俺の自宅に二人で向かう。<br>
裏サイトの掲示板の書き込みを、ペーパーナイフで検索をかけると、1件見つかった。<br>
その書き込みを見てみると、なんと、このペーパーナイフを探しているという書き込みだった。<br>
形状も合ってるし青い宝玉のことも書いてある。<br>
300万円で買うというが、このナイフにそんな価値があるとは思えない。<br>
哲平と相談の結果、カマをかけてみることにする。鞘がついているやつなら見たことがある、と返事をする。<br>
実物には鞘がないことを知っているか知らないかで、相手がどこまで解っているか見極められるだろう。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>152 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:05:58 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>3日目<br>
氷室さんから連絡が入る。ドブ川の絞殺体は青島組幹部の男だという。<br>
青島組といえば、組長が同じようにワイヤーで絞殺されたばかりだ。<br>
亮太に関係があるかも、と思い、ドブ川にまた行ってみようということになる。哲平と二人で向かう。<br>
ドブ川には先客が居た。スーツをだらしなく着た、とぼけた感じの眼鏡の男だ。<br>
名刺を受け取るとフリーライターの柴田と書いてある。<br>
その名前に見覚えがあった。両親の交通事故のことを独自に調べていたときに出てきた名前。<br>
毎朝新聞の記者で、その交通事故の記事を書いた人だ。だが、柴田が書いた記事は何故か差し替えられ、<br>
実際に新聞に載ったのは別の人が書いた記事だった。<br>
俺は柴田さんに、毎朝新聞に居たことはあるかと聞くが、柴田さんは否定する。<br>
とにかく詳しく話を聞きたいので、一緒にサイバリアに行って昼飯でも食いましょうということになり、<br>
とおば東通りまでやってくると、京香さんが通りかかった。<br>
成美さんの具合などのことを話して京香さんと別れると、柴田さんはどこかに消えてしまっていた。<br>
仕方なく哲平とふたりでサイバリアに入る。奈々子がランチセットを持ってきた。<br>
グラタンにスイカのトッピングというとても合わない組み合わせだ。これは合わないだろと奈々子に言うと、<br>
昨日来た人は同じメニューをおいしそうに食べていったよ、と言う。それは写真の男、亮太だという。<br>
夜にハードラックに行き、不良三人組に聞き込みをする。<br>
数日前に駅前の映画館で見たという人が居るらしい。<br>
そして昨日、とおば東通りで見たという人も。きっと、サイバリアを出た後だろう。<br>
エイジの携帯電話にメールが届く。メールを読んでから、エイジはそわそわした様子で店を出て行った。<br>
それからしばらく待っていたが、エイジは帰ってこなかった。<br>
<br>
4日目<br>
昼にサイバリアで哲平と待ち合わせる。そこへタカもやってきた。<br>
昨日の夜、店を出て行ってから、エイジと連絡が取れないとタカは言う。<br>
哲平が電話をかけたら出るかも知れないな、と言うと、哲平はエイジの携帯電話に電話をかける。<br>
相手が出たとたん、哲平が動揺しだす。電話を切ってから、哲平は搾り出すような声で言う。<br>
氷室さんが出て、上遠羽(かみとおば)で、変死体が見つかった、と。<br>
哲平とタカと共に上遠羽へ向かう。<br>
上遠羽は北の方の地域で畑や田んぼが残っている所だ。山道に入っていくと氷室さんが待っていた。<br>
またお前らかという表情の森川もいる。<br>
そして、さらに奥には、異様な光景があった。エイジの死体が、大きい木に縛り付けられている。<br>
触らないように注意すれば死体を検分しても良いと氷室さんは言う。森川は不服そうだったが。<br>
左胸に刺し傷があり、それが死因のようだ。別の場所で刺されてから、この木に縛り付けられたらしい。<br>
その後、警察署に連れて行かれ、事情聴取される。<br>
エイジの死因はやはり胸を刺されたことによる失血死らしいが、一度刺されたあともう一度刺されているらしい。<br>
一度目は普通に刃物で、二度目は、氷のようなもので。つららかそんなようなものだ。<br>
昨日、エイジの携帯電話に届いたメールは、亮太の携帯電話から送信されたものだった。<br>
現段階では亮太が一番疑わしい。<br>
事情聴取が終わって警察を出ると、知らずに涙が滲んできた。<br>
きっとエイジも喜んでいる、エイジなんかが死んでも、泣くような人は居ないから、と哲平は言う。<br>
だが、今は泣いている場合ではない。それ以上泣くのを堪える。<br>
そのとき、京香さんから電話がかかる。<br>
今セクンドゥムに居るが、俺あてに女の子が訪ねてきているという。きっと涼雪だ。<br>
セクンドゥム店内に入る。成美さんはだいぶ元気になったようだ。<br>
涼雪たちと他愛も無いことを話していると気がまぎれる。<br>
京香さんと成美さんがいつものように喧嘩を始めたので、涼雪があきれていた。<br>
やがて、もう迎えが来る時間だと涼雪が言うので、涼雪と店の外で迎えを待つ間、少し話す。<br>
店の横に黒くて高そうな車がやってくる。涼雪はその車に乗って帰っていった。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>153 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:10:04 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br>
哲平と一緒に枕ヶ碕へ行くと、暴力団の組員らしき男たちがうろついている。<br>
哲平を見て鉄砲玉くずれなどと言う。<br>
天狗橋のところで紫宵と会う。一緒にサイバリアに行くことになった。<br>
奈々子だけでも騒々しいのに、紫宵も来ているのでもっとうるさい。<br>
どうやら紫宵は奈々子が気に入ったらしく、いろいろと話しかけていた。<br>
帰宅したあと裏サイトを見てみると、返事が返ってきていた。<br>
どうやら相手は鞘が存在しないことを知らないらしい。適当に返事をしておく。<br>
<br>
6日目<br>
その日の朝は携帯電話に起こされた。ディスプレイに氷室さんの名前が表示されている。<br>
悪い知らせだ、バンダナのヤツが殺されている、東公園へすぐ来てくれとのこと。<br>
今度はヒロヤか、何故あいつらが狙われなければならないのかと思いながら東公園へ急ぐ。<br>
公園はものものしい雰囲気に包まれていた。氷室さんが待っていた。<br>
殺されたのがヒロヤではないこと願った、その一縷の望みもあえなく消えうせる。<br>
公園の地面の上にヒロヤは寝かされており、埋めるでもなく、中途半端に土がかけられている。<br>
口の中には木の枝が差し込まれている。木の枝で何度も殴られて撲殺されたらしい。<br>
携帯電話にヒロヤを呼び出すメールが残されており、やはり今回も亮太の携帯電話から送信されている。<br>
柏木邸に行き、ヒロヤの死を哲平に伝える。<br>
そういえば昨日、組員に鉄砲玉くずれとか言われてたよな。気になったので聞いてみる。<br>
哲平は昔、青島組系列の中崎組の鉄砲玉だったという。<br>
そして敵対していた白虎会の幹部を撃つように命じられ、生まれて初めて銃を手にした。<br>
幹部に銃を向け、撃鉄を上げたが、哲平は打てなかった。<br>
そのまま白虎会に寝返ってしまった。その白虎会の幹部こそ、ご隠居だったのだ。<br>
そのときご隠居が旅行から帰ってきた。ひとりで何でも抱え込んで・・・と哲平を叱る。<br>
そこへ京香さんと成美さんも姿を現す。大事な事を黙っていたので京香さんに怒られた。<br>
セクンドゥムにペーパーナイフを探しているという客が来たら注意してくれと成美さんに頼んだ。<br>
もう抱え込むのはやめだ。警察にペーパーナイフを証拠品として提示する。<br>
取調室で氷室さんと話をする。エイジもヒロヤも現場は異様だった。<br>
恐らく見立て殺人だろう。あ、そういえば、木とか土とか、そして氷・・・。<br>
陰陽五行説?氷で刺されたエイジ、木で撲殺されたヒロヤ。<br>
木は土を克す。金は木を克す、か。(氷は冷たくて固いので金を表す)<br>
五行説、しかも五行相克だと思うと言うと、森川に馬鹿にされた。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>154 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:10:59 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>サイバリアに行くと、また紫宵が奈々子に話し掛けている。<br>
今日は紫宵の誕生日だそうで、グランパレス江榮でパーティーがあるらしい。<br>
それに奈々子が誘われたそうだ。俺も招待された。<br>
夜にサイバリアの前で待ち合わせて一緒に行こうということになった。<br>
自宅に帰り、一番フォーマルな服を引っ張り出して着替えてから、サイバリアに向かう。<br>
ドレスを着た奈々子は別人のようだ。まさに馬子にも衣装だなと言うが、奈々子は意味を知らないらしい。<br>
グランパレス江榮のエントランスには涼雪が待っていた。涼雪は青いチャイナドレスを着ている。<br>
グランパレス江榮の最上階がパーティー会場だ。偉そうな人がいっぱいで気おされてしまう。<br>
自分が場違いな所に居ると感じてしまう。奈々子は紫宵と楽しく会話している。<br>
そこへ涼雪が話し掛けてきた。こういう席は苦手かと涼雪が聞くので、素直に苦手だと答える。<br>
それなら抜け出しましょうということになり、ふたりでエレベーターに乗り、エントランスへ来る。<br>
外に出ると、向こうにヤバそうな奴らが居る。青島組の奴らだろうか。<br>
俺は涼雪の手を引き、エントランスの中へ駆け込む。<br>
エレベーターに乗ろうとするのを涼雪が制し、地下へと続く階段を下る。そこはワインセラーになっていた。<br>
涼雪はなんだか不安そうにしている。涼雪は狭くて暗いところが苦手だという。<br>
でもこのワインセラーはそんなには狭くもないし明るいから平気だと。<br>
涼雪は、自分はいらない子だったと衝撃的なことを言う。<br>
いたずらをすると、暗くて狭いところに閉じ込めらていたいたのでそれで怖くなったという。<br>
ある日、家に強盗が入り、両親は殺されたが、涼雪は閉じ込められていたので助かったとのこと。<br>
その後、施設に居たところを威さんに拾われたのだという。<br>
ふいに会話が途切れる。こういうとき、気の利いた事が言えないから、彼女とか居ないんだろうなぁ、と思う。<br>
あなたには怖いものはないのかと涼雪が訊く。大切な人が居なくなるのが怖いと答える。<br>
そう、突然事故死した両親のように。それが心因外傷(トラウマ)となって今も引きずりながら生きている。<br>
涼雪の両親はどんな人だったのと聞いてみるが、よく覚えていないらしい。<br>
ひとつだけ覚えていることは、母親が、涼雪が眠らないときに聞かせた子守歌があるということだ。<br>
どんな子守歌か聞きたいと言うと、中国語だから日本語の歌詞がわからないという。<br>
それでもいいから、と言うと涼雪は歌ってくれた。同じ節回しが4回繰り返され、歌が終わった。<br>
日本語訳にすると、「白い家の子供」という題名の歌らしい。<br>
白い家に子供が居た。まだ眠りたくないと子供は家から逃げ出す。<br>
そこで4人のおじいさんが家に帰りなさいと言うので家に帰った、という意味の歌詞なのだそうだ。<br>
森に行くと森のおじいさん、砂場に行くと砂のおじいさん、他に海と火のおじいさんが登場する。<br>
森に砂に海に火か。この順番は五行相克か?などと<br>
無意識のうちに事件のことを考えている自分に嫌悪感を覚える。<br>
威さんは涼雪の母にこの歌を教えられたとのことで、よく歌ってくれたそうだ。<br>
そこへ涼雪を呼ぶ声がする。威さんが探しに来たのだ。<br>
パーティー会場に戻った。帰る時間になると、涼雪が送ってくれることになった。<br>
ふたりきりで天狗橋の方へ歩いていく。涼雪の方を見て、なにか話し掛けようと思ったが、<br>
何を話していいのかが浮かばない。<br>
こういうとき、何を話したらいいのかわからないんだと正直に言う。情けないけど。<br>
すると涼雪は、恭介のそういう素直な所がいいねと言う。<br>
嘘をついて意味の無いことを話すより、黙っていたほうがいいと。<br>
実は自分も話すのが苦手だと涼雪も言う。涼雪と視線を交わしながら、心地よい沈黙のまま歩く。<br>
天狗橋に着いた。もう少し一緒に居たい気持ちを押さえて、涼雪に帰るように言う。<br>
涼雪は別れ難そうにしているが、威さんが心配するよと言い聞かせ、涼雪を帰した。<br>
とおば東通りを歩いていると成美さんと出くわした。もう外を出歩いてもいいくらいに回復したらしい。<br>
珍しくいい格好してるわねと成美さんは聞くので、パーティーの帰りだと答える。<br>
出番の終わった役者みたいな顔して、自分の役が終わってほっとしてるみたい、<br>
そんなに緊張するパーティーだったのかと成美さんが聞く。<br>
確かに緊張するパーティーだったけど、さっき俺が緊張してたのは別の理由だ。<br>
そしてその理由を成美さんはとっくに見抜いているらしい。<br>
まぁ誰だって春は来るもんだしね、とからかうように成美さんは言う。酔ってるな、成美さん。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>155 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:12:47 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>自宅に帰り、インターネットでさっき聞いた子守歌のことを調べてみることにした。<br>
世界の子守歌がいろいろ載ってるサイトに、原文と日本語訳も載っていた。<br>
子守歌の歌詞の日本語訳を紙に書き写しておく。<br>
<br>
7日目<br>
柏木邸に行き、子守歌の歌詞を哲平に見せる。<br>
確かに五行相克になっている。だが、「金」が見当たらない。<br>
最初の部分に出てくる、白い家が「金」を表してるのか?確かに、白は「金」を表す色だが。<br>
エイジやヒロヤをそれぞれ森や砂になぞらえているなら、最初に出てくる白い家が何も無いのはおかしい。<br>
もしかして、エイジの前に、見立て殺人は行われていたのかも?<br>
白い家とはどこだろう。エイジは「金」というか氷で克されていたから、<br>
氷に関係ある所か?だが、この暑いときに氷があるところって?<br>
そうだ、埠頭の倉庫に冷凍室があった。あそこなら夏でも氷があるだろう。<br>
無駄足になるかも知れないが確かめておいた方がいい。いや、確かめたい。哲平と共に倉庫に向かう。<br>
その倉庫の床の、冷凍室の前には、何かを引きずったような跡がある。<br>
嫌な予感を必死で振り払いながら、冷凍室の扉を開ける。白い冷気で何も見えなかったが、<br>
徐々に視界が開けていき、そしてそこには、亮太が死んでいた。<br>
あのドブ川の死体のように、ワイヤーかなんかで絞殺されたらしい。首に跡が残っている。<br>
流した涙が凍ったようで目が痛い。倉庫の外に出る。<br>
警察が来るまで哲平と海を眺めながら待った。<br>
いつものように取調室で事情聴取を受ける。<br>
帰りにスピリットに寄る。酔いつぶれてなにも考えずに眠りたい気分だった。<br>
酒に弱い自分の体質を、今回ばかりは有難いと思った。<br>
<br>
8日目<br>
目が覚めたら柏木邸だった。哲平が運んでくれたらしい。<br>
ご隠居が、ペーパーナイフについて判ったことがあるというので話を聞く。<br>
ペーパーナイフ自体には骨董的な価値はそれほど無いが、東アジア全域の密輸に関する権力の証なのだそうだ。<br>
なるほど。手に入ったら裏サイトに書き込んである300万なんてすぐ取り返せるな。<br>
それが青島組の手に渡った。青島組は密輸でのし上がっていった。ペーパーナイフのお陰で。<br>
そして、亮太が裏切ってそれを奪って逃げ、哲平に託した。<br>
青島組の組長も幹部も、亮太もペーパーナイフを探している犯人に殺された。<br>
エイジやヒロヤも同一犯だろう。たぶん、あの子守歌の見立てのためだけに殺されたのだ。<br>
五行相克でなく、子守歌に見立てているとしたら、犯人はだいぶ絞られるな。<br>
わざわざあの子守歌に見立てるという事は、涼雪の身近に居る人物が犯人だろう。<br>
警察署に、亮太の検死結果を聞きに行く。<br>
亮太は冷凍室に居たため、死亡推定時刻が特定できないとのこと。<br>
また、胃の内容物を調べたらおかしな組み合わせのものが出てきたとのこと。<br>
スイカとグラタン。6日前の夜、亮太がサイバリアで食べたメニューだ。<br>
サイバリアで食べたものが胃に残ってるうちに殺されたということは、<br>
エイジやヒロヤを殺したのもメールで呼び出したのも、亮太ではないということだ。<br>
真犯人が亮太から奪った携帯電話を使って呼び出したのだろう。<br>
一旦自宅に帰ると、何故か違和感を感じる。部屋の中のものが動かされている。<br>
そして、パソコンが立ち上げてある。デスクトップの真ん中にテキストファイルがある。<br>
「読者への挑戦」という名のファイルだ。開いてみる。<br>
そこには、「全ての手がかりは示された。犯人は誰か?」と書かれていた。<br>
<br></dd>
<dt>156 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:13:43 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>突然電話が鳴り出したのでびっくりした。成美さんからだ。<br>
今、店にペーパーナイフを探しているという客が居るとのこと。<br>
氷室さんに連絡すると、すぐにセクンドゥムへ森川を向かわせるという。<br>
セクンドゥムに向かう。客とは紫宵だった。店の2階で和やかにヘルシングと遊んでいる。<br>
焦って損した。すぐに森川が来た。やがて涼雪が紫宵を迎えに来た。<br>
涼雪に、ペーパーナイフについて何か聞いてないかと訊ねると、どこかで見たかも知れないという答え。<br>
森川に、今ペーパーナイフを持っていたらちょっと涼雪に見せてやってほしい、と頼むと、<br>
森川はしぶしぶ内ポケットからビニール袋に包まれたペーパーナイフを取り出した。<br>
涼雪がペーパーナイフを見て言う。鞘はどうしたの、と。<br>
もちろん鞘はもとから無い。このペーパーナイフに鞘があると思っているのはただ一人。<br>
裏サイトに書き込みをした人物だけだ。<br>
それに、ひとつ気になることがある。心のなかで否定し続けていた事実。<br>
今こそ、その事実と向かい合わなければいけない。<br>
最初に涼雪に会ったときと、今の涼雪の状態。かすかに感じる違和感。それは、そう、髪型が違うのだ。<br>
青島組の幹部の絞殺体には、回収出来なかったワイヤーが巻きついていた。<br>
初めて会ったとき、涼雪は、また髪を束ねて三つ編みにすることが出来なかったのだ。結ぶものが無かったから。<br>
あの時言っていた、亮太を探していたというのも、亮太に会って傘を借りたというのも全て嘘だ。<br>
涼雪があの日、枕ヶ碕に居た本当の理由は、別にある。<br>
パーティーの帰りに涼雪が言った言葉を思い出す。嘘をつくより黙っていた方がいい、あの言葉すらも嘘なのか。<br>
青島組の幹部を殺したのがきみじゃなかったら、その三つ編みをほどいて見せてくれ、<br>
ワイヤーを持っていないところを見せてくれと俺は涼雪に言う。<br>
すると、涼雪の顔からすっと表情が消えた。瞳から光が失われる。<br>
鮮やかな身のこなしで森川を蹴ると、森川はペーパーナイフを取り落とす。<br>
涼雪はペーパーナイフを拾って逃げた。行き先はきっとグランパレス江榮だろう。<br>
俺と哲平はグランパレス江榮へ向かう。<br>
エントランスで哲平に言う。どうか俺に涼雪を説得させてほしいと。<br>
涼雪はきっと自分がしていることが悪いことだと、心の底では感じているに違いない、<br>
でもああやって表情を消して、自分は悪く無いのだと思い込もうとしている。<br>
あのまま、心を閉ざしたまま捕まってしまっては、自分が悪いことをしたとも思わずに、<br>
たいした反省もせず、形だけの贖罪のあと、また罪を重ねることになるだろうと。<br>
やっぱりお前はお人好しだなと多少あきれた様子だが、哲平は承諾してくれた。<br>
こちらを招待でもしているように、エレベーターが待っていた。最上階のパーティー会場で止まる。<br>
あのときの華やかさは微塵も無い、薄暗い部屋に威が座っていた。<br>
普段見せている温和な印象はまるで無い。後ろには涼雪が表情を消したまま控えていた。<br>
作者はあなたですね、と言うと、威はニヤリと笑う。おかしくて笑っているのではない。嘲笑だ。<br>
ここまで自分を楽しませてくれたのは俺が初めてだ、と威は言う。<br>
ペーパーナイフを探すために江榮海運公司に入社し張に近づき、<br>
さらに涼雪を操って青島組の組長と幹部、そして亮太を殺した。<br>
亮太を殺したところで、子守歌を使って見立て殺人をすることを思いついた。<br>
亮太を白い家に見立てた冷凍室に置き、こちらの推理通り、エイジとヒロヤをメールで呼び出して殺した。<br>
やはり次はタカを殺すつもりだったらしいが、ヒロヤの時点で気づくとは見事だと威は俺を褒めた。<br>
見立てのためだけに平気で人を殺せるなんて・・・。<br>
<br></dd>
<dt>157 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:14:46 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>ひととおり種明かしをしたところで、ヘリコプターのプロペラの音が近づいてきた。<br>
威はヘリに乗って逃げる気だ。頭に血が上った哲平は威に飛びかかろうとするが、威に足を撃たれてしまう。<br>
結構血が出ているが哲平は掠っただけだから大丈夫、早く威を追えというので、<br>
閉まりかけた奥の扉をくぐりぬける。<br>
威は屋上への階段を悠々と上っていく。後から涼雪がついていく。<br>
階段の下に着いてから、涼雪に行くなと叫ぶ。涼雪と威はそこで立ち止まって振り返った。<br>
きみの犯した罪はとても重い、威について行かずに、罪を償ってほしいと涼雪に必死に訴える。<br>
こっちにおいで、と手を差し延べた。涼雪は階段を上るべきか下りるべきか悩んでいるようだ。<br>
威が冷たく言い放つ。涼雪はそちらには行かないと。<br>
自分はそちらには行けない、何故なら威おじさまが自分を必要としてくれているから、<br>
威おじさまに見捨てられたら、自分はまたいらない子に戻ってしまうと涼雪は言う。<br>
威は、長い時間をかけて少しずつ、涼雪に暗示をかけていったのだ。威に対する依存心が強くなるようにして、<br>
なんでも言うことを聞くような、人殺しも平気でするような娘に育て上げたのだ。<br>
威に対して吐き気がするほどの憎悪を覚えるが、今は涼雪をじっと見つめる。<br>
俺がいらない子になんてさせないからと強く言う。<br>
そのとき、涼雪の目に光が宿った。ゆっくりと表情が戻っていき、階段を下りかける。<br>
おかえり、と涼雪に言う。<br>
威は俺に向けて拳銃を構えて言う。ひとつ教えてあげましょう、私は涼雪の母親には会ったことがありません、と。<br>
子守歌に関する思い出は、すべて威が創作したものだったのだ。<br>
その程度でこんなに便利に育ってくれるなんてね、と威は言う。<br>
威が引き金を引く、その瞬間に涼雪は俺をかばうように飛び出した。<br>
目の前が真っ赤に染まる。羽根のようにゆっくりと落ちてくる涼雪を受け止めた。<br>
涼雪は胸の辺りを撃たれている。急所は外れているらしく、まだ息があるが、出血は止まらない。<br>
暗示が解けたから使い物にならないと思ったからなのか、<br>
威は涼雪を見捨ててそのまま悠然と屋上へと姿を消した。ヘリコプターの音が遠ざかっていく。<br>
恭介は優しいところがいいね、恭介はずっと生きていて、恭介のままで・・・と弱々しい声で涼雪は言う。<br>
うん、きみが覚えてるままの俺でいる、約束するよと答えると、<br>
涼雪は満足したように目を閉じ、最後の息を吐き出した。溢れる涙で何も見えなくなる。<br>
それからどのくらい経ったのか、氷室さんに呼びかけられて、正気にかえった。<br>
白いシーツに頭まで包まれた涼雪が、担架に乗せられて運ばれていく。<br>
エントランスでは京香さんが待っていた。<br>
結局、威を逃がしてしまったとがっかりする俺に、京香さんはこんなことを言う。<br>
探偵には法的な制限が無いぶん、人の心の中だけにある事件だって解決できるとお父さんが言っていた、と。<br>
そう、最期に涼雪は救われたのだから。<br>
<br>
哲平の怪我はたいしたことないらしいが、全治二週間の診断を受け、入院するとことになった。<br>
涼雪の遺体は中国に送られ、両親と同じ場所に埋葬されることになったという。<br>
俺はハードラックに居た。墓参りに行こうにも遠すぎるよなぁとぼやいていたら、<br>
サミーに、距離なんて関係ない、どこに居ても祈りはとどくよと励まされた。<br>
タカからは、命の恩人だと言われ感謝された。<br>
自宅のマンションの前に柴田さんが待ち伏せていた。<br>
世代が代わろうとしている、気をつけろよ、と謎の言葉を残し、柴田さんは夜の闇に消えていった。<br>
To Be Continued<br>
<br></dd>
<dt>158 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:26:58 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>第4話 傷ついたテディベア<br>
<br>
1日目<br>
目の前が真っ赤に染まる。ゆっくりと落ちてくる彼女を受け止める。<br>
そして愛しい人は最後の息を吐き出して・・・。<br>
飛び起きる。またあの時の事を夢に見てしまった。お陰で最近よく眠れない。<br>
いや、彼女だけではない。あの事件ではたくさんの人が死んだ。<br>
何故助けられなかったのだろう、そう思うとやりきれない。<br>
午後から哲平のお見舞いに行こう。その前にサイバリアでお昼を食べて・・・。<br>
無理やり違うことを考えて気を紛らす。<br>
サイバリアに行くと、奈々子がいつもの調子で出迎えてくれた。<br>
そして、哲平のお見舞いに行きたいと言うので連れて行くことにする。<br>
哲平が入院しているのは、友凛(ゆうりん)病院という総合病院だ。<br>
外科の病室がある3階に行き、哲平の病室を訪ねるが不在だった。<br>
どこに居るのだろうと探すと、ナースステーションで美人の看護師さんたちと話している。<br>
松葉杖をついて、元気に歩き回っているようだ。大人しく寝てないと治らないぞ。<br>
3階の廊下に、熊のぬいぐるみが落ちているので拾い上げる。<br>
首に「LUKE」というタグが付いている。「ルーク」、それがこいつの名前かな。<br>
これはただのぬいぐるみじゃない。テディベアというヤツだ。よく見ると古そうだ。<br>
栗色の髪の小さい女の子が歩いてくる。足音がしないと思ったら裸足だった。<br>
あのね、るーくん返して、と話し掛けてきた。ルークはこの子のものなのか。<br>
返してあげると嬉しそうにルークを抱きしめる。<br>
朱原(あけはら)まどか、5歳ですと女の子は自己紹介する。<br>
まどかちゃんは、通りかかった師長さんに、スリッパを履きなさいと注意されている。<br>
パジャマを着ているので、入院患者なんだろうけど、どこの病室なのかな。<br>
金髪の女性がまどかちゃんを迎えに来た。この人がまどかちゃんの母親だ。<br>
4階には小児科の病室があり、そこに入院しているとのことだ。<br>
奈々子と一緒にまどかちゃんの病室を訪ねる。<br>
なるほど、まどかちゃんはハーフだから栗色の髪なのだ。母親はイギリス出身なのだそうだ。<br>
そして、まどかちゃんはイギリス生まれのテディベア、「るーくん」が大好きで、<br>
将来はるーくんのお嫁さんになるのだとか、<br>
父親が居るイギリスに一緒に行くのだとか言っている。「ルーク」だから「るーくん」らしい。<br>
まどかちゃんは自然気胸という病気なのだそうだ。病院で大人しく静養しなければならず、<br>
とても外国に行けるような状況ではない、と母親は話す。<br>
そろそろ面会時間が終わる頃だ。また来るよ、と言ってまどかちゃんの病室を後にして、1階へ下りる。<br>
待合室に通りかかると、奈々子が声を上げる。温和そうな男性が現れた。<br>
奈々子の担任の、池辺先生なのだそうだ。もうすぐ新学期なので、風邪を治そうと思って病院に来たらしい。<br>
一緒に帰ることになったが、池辺先生は、喫煙室に煙草を置いてきてしまったというのでしばらく待つことになる。<br>
だが、しばらく待っても来ないので喫煙室に行ってみることにする。<br>
怖そうな、医者の先生に、池辺先生が怒鳴られている。やっと池辺先生が出てきた。<br>
病院を出て天狗橋のところまで来ると、奈々子は、もうアルバイトの時間なのですぐ帰ると言う。<br>
池辺先生を駅まで送ってねと頼まれてしまった。先生と駅まで歩く。<br>
奈々子はちょっと変わってるけど、いい子でしょう、などと先生は言う。<br>
ええ、お互い苦労しますね、と言うと、先生も同意する。<br>
ここでいいですよ、買い物してから帰りますから、と言うので、池辺先生と駅前で別れた。<br>
携帯電話が鳴り、氷室さんに警察署に呼び出される。<br>
何故か取調室に通される。つまり、他の人に聞かれたくない話だということだ。<br>
上遠羽で男性の死体が見つかった、死後1年くらいで、年や背恰好が所長とよく似ている、と氷室さんは言う。<br>
上遠羽ってエイジが死んだ・・・、いや、そのことは今は考えないようにしなくては。<br>
死後1年って、誠司所長が失踪したのもそのくらいだったよな。<br>
誠司所長は、簡単に死ぬような人ではない、といつも思っていたが、<br>
こういうことを聞かされるとやっぱりショックだ。<br>
氷室さんは、時間がかかるが歯形の照合をしなければまだ所長だとは断定できないが、<br>
もしもの時は、気をしっかり持てと言う。でも、胸が締め付けられるような感じは拭えない。<br>
京香さんに話してしまえばこの苦しみを共有できるのに、とも思うが、<br>
やっぱりとても京香さんには言えないな。この事は、しばらくひとりで抱えていかなければならない。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>159 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:28:00 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>2日目<br>
目覚ましではなく携帯電話に起こされた。奈々子からだ。<br>
先生が、池辺先生が死んじゃった、などと言っている。<br>
とにかく、探偵事務所に行くから、と言って電話は切れた。<br>
インターネットのニュースを見ると、確かに載っている。<br>
昨日の夕方別れたあと、駅のホームで亡くなったらしい。<br>
探偵事務所に行くと、制服姿の奈々子が同級生と共に現れた。<br>
友凛学園、奈々子が通ってるとはとても思えない、お嬢様学校の制服だ。<br>
奈々子と同級生に話を聞く。池辺先生は、とても誰かの恨みを買うような人ではないし、<br>
生徒からの評判も良く、とても殺されるような理由は見当たらないとのことだ。<br>
京香さんがいつものようにやる気になっていて、協力してあげてと言う。<br>
まぁ、俺が先生と最後に会った人になるのかも知れないしな、と思い協力することにする。<br>
面会時間になったので友凛病院へ行く。<br>
今日は大人しく寝ている哲平と話していると、病室に陰気な医者が現れた。<br>
確か、昨日喫煙室で、池辺先生を怒鳴ってた医者だ。<br>
医者は哲平に、貴様、治す気がないのか、大人しく寝ていろと言ったのに、と言って去っていった。<br>
あの医者は外科担当の陣堂で、怖くて陰気な感じだけど腕はいいらしい。<br>
喫煙室で聞き込みをする。ほぼ毎日喫煙室に通っていて、昨日も池辺先生を見たという人に話を聞く。<br>
池辺先生と陣堂は喫煙室でぶつかって、陣堂が煙草の箱を床に落としてしまったので、<br>
池辺先生を怒鳴ったとのこと。その後、陣堂は落とした煙草を拾わずにそのまま出て行ったとのことだ。<br>
師長さんや看護師さんたちにもひととおり話を聞く。<br>
陣堂は変わってるけど、本当はいい人で、子供たちとは仲がいいらしい。<br>
院長室にも行ってみる。多々良院長の専門は外科だそうだ。<br>
3階の廊下でまどかちゃんに会う。またしても裸足だ。<br>
スリッパを履かなくていいのかいと聞くと、だって暑いからイヤだという答え。<br>
まどかちゃんを病室に送り届けてから、帰る。<br>
サイバリアに行き今日の調査を奈々子に報告する。<br>
学園の生徒たちに話を聞いた方がいいかな、と言うと、明日は始業式だから、<br>
終わる頃校門のところに来ればいいよ、と奈々子は言う。<br>
成美さんから電話がかかる。いつものようにスピリットに呼び出そうとしている。<br>
哲平が居ないのでひとりで成美さんの相手をしなければならない。<br>
気が進まないが行くことにする。まどかちゃんが持っているテディベアのことを話してみる。<br>
成美さんは「ルーク」という名前に聞き覚えがあると言う。<br>
そして酔いつぶれた成美さんを担いでセクンドゥムに連れて行く。<br>
酒に弱いふたりで飲もうというのがそもそも間違いだろ、<br>
所長かもしれない遺体のこととか、あの事件のことを夢に見たりとか、<br>
俺だって酔いつぶれて眠りたい気分なのに、と思う。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>160 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:29:11 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>3日目<br>
・・・ッ!<br>
悲鳴を上げそうになるのを堪えて起き上がる。またあの夢だ。いい加減勘弁してほしい。<br>
始業式が終わる頃を見計らって、友凛学園に行く。<br>
生徒たちに話を聞くが、やはり池辺先生が殺される理由が見当たらないとのことだ。<br>
声を掛けられたので振り向くと、氷室さんと森川が居た。森川がまたお前かと言う。<br>
池辺先生の事を調査していることを正直に話すと、これから理事長に話を聞くから一緒に行こうと言われた。<br>
理事長に話を聞いたが特に有効な情報は無かった。氷室さんたちと別れて病院へ行く。<br>
小児科の先生にまどかちゃんの病気の事などを聞いたりなどして、<br>
3階の廊下を通りかかると、まどかちゃんに会った。<br>
るーくんが居ないから一緒に探して、と頼まれた。<br>
るーくんと一緒に行動していたら、検査に行かなければならないので、陣堂にるーくんを預けたそうだ。<br>
それ以降、陣堂もるーくんも見当たらないのだという。<br>
お兄さんは探偵だから、捜し物は得意だよ、と言うとまどかちゃんはにっこり笑う。<br>
まどかちゃんの手を引き、るーくんを捜し歩く。裏庭の隅の芝生の上にるーくんは寝ていた。<br>
まとかちゃんはるーくんを抱き上げたが、あ、と気が付いて表情が曇る。<br>
右目が取れてなくなっている。るーくんが落ちていた辺りを探すが見つからなかった。<br>
まどかちゃんを病室に連れて行くが、表情が曇ったままだ。そうだ、成美さん・・・。<br>
お兄さんは熊のお医者さんを知っているから、そこへるーくんを連れて行ってあげる、と言うと、<br>
少し迷った後、まどかちゃんはるーくんを差し出してきた。<br>
不思議に思ったまどかちゃんの母親が熊のお医者さんって?と聞くので、<br>
アンティークショップをやっている知り合いが居て、と説明すると納得してくれた。<br>
そのとき、突然、悲鳴が聞こえたので行ってみる。<br>
3階の旧階段のところで陣堂が死んでいるとのこと。どうやら転落死のようだ。<br>
いつも使っている階段じゃなくて旧階段だから、<br>
あまり人も通りかからないので発見が遅れたらしい。<br>
しばらく待つと森川がやってきた。氷室さんは?と聞くと、俺は氷室さんのオマケじゃないよ、という答え。<br>
氷室さんは池辺先生の件を担当しており、別行動しているとの事だ。<br>
るーくんをセクンドゥムに連れて行く。るーくんを受け取った成美さんは、しばらくるーくんを眺めてから、<br>
首に付いたタグを見たりして、間違いない、ギリングの「ルーク」だわと言った。<br>
長いこと行方不明になっていたテディベアなのだそうだ。<br>
しかし、随分いとおしそうに眺めるんだな。きっと、ぬいぐるみとか好きなんだろうな。<br>
本人に言ったら否定されそうだけど。<br>
右目、治りますかと聞くと、同じ物が手に入るかどうか調べてみるとのこと。<br>
そうだ、ちょっと待っててと言って成美さんは店の奥に行き、しばらくして戻ってきた。<br>
るーくんの右目のところに包帯が巻かれている。<br>
今日のところは、これで治療中だと言っておきなさい、と成美さんは言う。<br>
<br>
4日目<br>
京香さんがまどかちゃんに会いたい言うので、一緒に病院に行くことになる。<br>
包帯の巻かれたるーくんをまどかちゃんに渡す。<br>
るーくん、治るよね、と、まどかちゃんが聞くので、大丈夫、治るよと答える。<br>
看護師さんたちが騒いでいるので行って話を聞くと、陣堂の遺体が霊安室から消えたと言う。<br>
病院を出て京香さんと別れる。<br>
サイバリアに行くと奈々子は居なかったが、諏訪弁護士が居た。<br>
諏訪さん、サボる時はいつもここだな。そして、犬が好きらしく、愛犬のサイトをいつも見ている。<br>
あとで秘書さんに怒られても知りませんよ。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>161 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:30:00 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>5日目<br>
今日も病院で聞き込みだ。陣堂の遺体はまだ見つかっていないらしい。<br>
夜、2階の廊下で、陣堂が踊っているのを見たと言う看護師さんが居る。<br>
ホラー映画じゃあるまいし。<br>
そういえば、この病院、幽霊が出るとかいう噂もあったな。事件とは関係なさそうだけど。<br>
2階の廊下へ行ってみたが、これと言って変わったところは無い。<br>
そこに森川が現れた。今日も氷室さんとは別行動らしい。<br>
仕方ないだろ、捜査課で一番若いんだから、と森川はぼやいていた。<br>
哲平の病室で陣堂先生の事を話していると、まどかちゃんが訪ねてきた。<br>
恭介はモテモテだな、いろんな女性に好かれて、と哲平がからかう。<br>
まどかちゃんみたいなのも居るじゃないか、と哲平が言うので、否定する。<br>
奈々子も居るし、とも言われるが、いや、あいつも数に入れないでくれと答えた。<br>
池内先生の件は氷室さんが担当しているんだっけ、話を聞いてみようと、警察署を訪ねる。<br>
氷室さんはいつものように、俺を取調室に連れて行く。<br>
池内さんの死因は中毒死らしい。唇の裏から毒物が検出されたとのこと。<br>
それは、やっぱり煙草が原因かな。煙草と言えば、喫煙室で陣堂に怒鳴られていたっけ。<br>
陣堂は煙草を落として、そのまま出て行ったんだよな。<br>
ということは、陣堂の煙草を池辺先生が拾って持って帰ったのかも。<br>
犯人が本当に殺したかったのは陣堂で、陣堂の煙草に毒を仕込んだが、<br>
それを池辺先生が吸ってしまったのだろう。<br>
警察署を出ると奈々子から電話だ。犯人、見つかった?と、とても直球な質問をされる。<br>
駅前で待ち合わせることにした。奈々子に陣堂の死体が踊る話をすると興味津々という様子だ。<br>
そうだな、今夜あたり病院に張り込むかな、と言ったら、奈々子は一緒に行くと言う。<br>
夜に病院の前で待ち合わせることにしてから別れた。<br>
自宅に帰り準備を済ませてから病院へ行く。奈々子は大きな荷物を持ってきていた。<br>
今日は友達の家に泊まることになってるから、とのこと。<br>
こっそりと哲平の病室まで行く。面会時間を過ぎても会いに来てくれるなんて嬉しいと哲平は冗談を言う。<br>
そのまま夜まで待ってから、2階の廊下に行く。<br>
奈々子は、ねぇ、どうしてあんまんには赤い印が付いてるの、などと脈絡も無い話をする。<br>
いつもより口数が多い。もしかして、怖いのかな。<br>
奈々子は突然絶句し、あれ、と言って指差す。その先には、陣堂が居た。<br>
踊るように四肢をクネクネ動かしながら、後ずさりするように廊下の角を曲がり、消えた。<br>
奈々子が叫び声を上げてしまう。誰かがこっちへ来そうだ。マズい。<br>
奈々子に哲平の病室に戻って待てと指示してから、身を隠す場所を探す。<br>
何も書かれていないドアがあった。たぶん物置だ。鍵が掛かってなかったのでそこに入る。<br>
ふっと、嫌悪感を催すような匂いが鼻を突いた。これは、腐臭だ。<br>
ぱっと見たところ、怪しい所はないように見えるが、床をよく見ると、<br>
赤黒い汚れ・・・多分血痕が付いているし、髪の毛も落ちているようだ。<br>
そうか、犯人はここに陣堂の遺体を隠しておいたのか。<br>
陣堂が踊ったように見えたあれは、犯人が陣堂の死体を担いで持ち出しているところだったのだ。<br>
廊下の足音が聞こえなくなったのを確認してから、物置を抜け出す。哲平の病室へ行こうとすると、<br>
まどかちゃんに会った。お互い、看護師さんたちに見つかってはマズい状況だな、こりゃ。<br>
一緒に哲平の病室へ行き、奈々子に、まどかちゃんを病室に連れて行って一緒に休めと指示する。<br>
俺は2階の物置に隠れて朝まで待つことにした。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>162 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:31:19 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>6日目<br>
朝になった。廊下ではちらほらと人の気配がする。もう外へ出ても大丈夫だろう。<br>
4階のまどかちゃんの病室へ行くと、まどかちゃんと奈々子が仲良く寝ていた。<br>
こうして見てみると奈々子は以外にも可愛いなと思った。学校に行く時間なので奈々子を起こすことにする。<br>
2階に戻る。昨夜、陣堂先生が移動していった廊下を調べる。陣堂先生は、確か、この角を曲がって・・・。<br>
そこには立入禁止と書いてあるドアがあった。どうやら手術室らしい。<br>
鍵が開いているので、誰も来ないうちに中に入る。<br>
手術台には、陣堂が寝かされていた。そしてその周りの床には、内臓が飛び散っている。<br>
とても直には見れないが、遺体は腹を割かれて内臓が引きずり出されているらしい。<br>
振り向くと、多々良院長が居たので、警察への通報を頼む。<br>
これ以上ここに居ると吐きそうなのであわてて手術室を出た。<br>
哲平の部屋で心を落ち着かせてから、2階の廊下に戻ると、氷室さんが居た。<br>
森川はどうしたのかと聞いてみると、遺体を見て2分でトイレに駆け込んだという。<br>
あれでも刑事かねぇ、と思う。射撃も下手だって聞いてるし。まぁ俺も人のことはあまり言えないが。<br>
物置に血痕らしきものがあると氷室さんに伝える。それから医者や看護師さんたちに一通り話を聞く。<br>
そうだ、るーくん、今日あたり治らないかな、と思い、まどかちゃんの病室へ行って、るーくんを預かる。<br>
セクンドゥムへ行く。いつもの通り、カーテンが締めてあり、暗い。ヘルシングの鳴き声がする。<br>
成美さん、居ますか、電気点けますよ、と声を掛けてから電気のスイッチを入れる。<br>
成美さんは高そうな年代物の椅子に物憂げに腰掛けていた。その姿は、美しい。<br>
美しいとは思うけど、恋愛感情とは結びつきそうもないんだよな。<br>
現実感が無いというか、もしかしたら既視感かも。<br>
ヘルちゃん、お店に出てきたらダメでしょ、と、<br>
初めて会ったときと同じセリフが聞こえて、現実に引き戻される。<br>
成美さんにるーくんを渡す。<br>
あと3日もすれば右目が届くというので、しばらくるーくんを成美さんに預けることにした。<br>
どうしたの、顔色が悪いわよ、と成美さんが訊くので、朝にグロいのを見ちゃって、と話す。<br>
男はダメね、血とかに弱くて、と言うので、今回は性別は関係ないと思いますと反論すると、<br>
成美さんは、あたし、血とか平気だもん、と言う。また吸血鬼みたいなこと言ってるし。<br>
胸元で赤い輝きを閃かせながら、吸血鬼かも知れない人は店の奥へ消えた。<br>
<br>
7日目<br>
警察署に行くと、また取調室に通された。<br>
氷室さんがビニール袋に入ったボタンのようなものを取り出す。陣堂のポケットに入っていたという。<br>
るーくんの右目だ。すると、殺される直前まで、陣堂はるーくんを持っていた事になるな。<br>
氷室さんと森川と、るーくんが居るセクンドゥムへ向かう。<br>
るーくんの左目と照合すると、確かに同じ物だと判る。<br>
るーくんが落ちていた所は、旧階段の下辺りだ。陣堂は、死ぬ直前までるーくんを持っていて、<br>
旧階段の窓からるーくんを投げ捨てたのだ。では、何故るーくんを手放す必要があったのだろうか。<br>
るーくんになにか秘密が?成美さんがるーくんを調べると、背中の縫い目の所に何か挟まっているとの事。<br>
成美さんの長い爪が何かを引っ張り出す。1cm四方ほどの小さいもの、マイクロフィルムだ。<br>
なるほど、陣堂はこのマイクロフィルムを犯人に渡すまいとして、るーくんに隠したのか。<br>
そして犯人は、陣堂がマイクロフィルムを持ってないと判ると、飲み込んだのかと思って、<br>
内臓を取り出して調べていたのか。<br>
<br></dd>
<dt>163 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:31:59 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>そうなると、まどかちゃんが危ない。氷室さんは、森川の車に乗ってすぐ病院へ向かえと言う。<br>
車内で森川とふたりきりになると、森川が口を開く。<br>
お前、京香さんに上遠羽の遺体のこと話したのか、と。<br>
まだ話してない、まだ所長だと決まったわけじゃないからと答える。だって、所長はそんな簡単に死ぬ人じゃない。<br>
森川は突然ブレーキを踏んで車を止めた。<br>
あの人に、そんな気休めばっかり言っているのか、本当に所長だったら、そのときはどうするんだよ、<br>
と森川は語気を荒げる。<br>
前から感じていたことが確信に変わる。森川は、もしかして・・・。<br>
あの死体が父親だったとき、京香さんがどれだけ悲しむと思ってるんだ、と森川は言う。<br>
なぁ、お前、もしかして、本気で惚れてんのか?だって変だろ、そんなにムキになるなんて、と訊いてみる。<br>
そのとき、氷川さんから無線が入る。上遠羽の遺体な、鳴海さんじゃなかった、と言って切れた。<br>
ほら、言っただろ、所長はそんな簡単に死ぬ人じゃないんだよ。思わず笑みがこぼれる。<br>
馬鹿じゃねぇの、お前が生き返らせたんじゃないだろ。俺の勝ちだ、ざまあみろ、などと<br>
森川と他愛ない言い合いをする。<br>
はは、そうか、違ったのか・・・と言って、森川は泣き出した。<br>
ありがとな、お前はお前なりに、京香さんのこと心配してくれてたんだな、と言うと、<br>
森川は涙を拭った。京香さんには絶対言うなよ、と焦ったように森川は言う。<br>
それからはなんだか照れくさくて、無言のまま車は友凛病院に着いた。<br>
まどかちゃんの病室に行くと、まどかちゃんは居ないという。<br>
森川と手分けしてまどかちゃんを探す。4階から旧階段を下りて、踊り場に着くと、<br>
階段の途中に、まどかちゃんを抱えた多々良院長を見つける。多々良はまどかちゃんにメスを突きつけている。<br>
3階に森川が現れ、銃を抜き多々良に向けて構えた。<br>
あなたが犯人ですね、マイクロフィルムも見つけましたよ、と多々良に言う。<br>
まどかちゃんを離せと言うが、多々良はもう正常な判断が出来そうに無いほど追い詰められていた。<br>
森川に銃を捨てさせろ、それとまどかちゃんを交換だ、と多々良が言うので、森川に銃を下ろすよう頼む。<br>
だが森川は下ろそうとはしない。なぁ、少しは俺の事信用しろよ、と言うと、やっと森川は銃を下ろす。<br>
だが多々良は、銃を捨てるまではダメだと言い張る。ここで取っておきを出す事にする。<br>
森川、お前、射撃下手だったろ、と森川に言うと、多々良はびっくりして森川を見た。<br>
今だ、と思い、多々良の死角から近づき、まどかちゃんを奪うことに成功する。<br>
森川はまた多々良に向かって銃を構えなおす。多々良は森川と逆方向、3階と4階の間の踊り場へ走り、<br>
窓へと身を躍らせ、落ちた。下は裏庭の芝生だったので、多々良は一命を取り留めたが、重体だという。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>164 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:32:52 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>奈々子と同級生たちは、依頼して良かったと、喜んでくれた。<br>
マイクロフィルムの中身には、不正な臓器移植の証拠が入っていたそうだ。<br>
多々良と、そして陣堂も不正に一枚噛んでいたらしいが、陣堂が裏切ろうとしていたらしい。<br>
不正が発覚してから、病院は大騒ぎ。入院患者は次から次へと転院していった。<br>
哲平も、完全には治ってないのに強引に退院してしまった。<br>
そして今日は、まどかちゃんが転院する日だ。京香さんと一緒に見送りに来た。<br>
よそ行きの服を着たまどかちゃんは、久しぶりに電車に乗るのだとはしゃいでいた。<br>
田舎の、もっと空気のいい病院に転院するという。<br>
右目の治ったるーくんをまどかちゃんに手渡す。陣堂のポケットに入ってた方は証拠品なので<br>
返してくれなかったので、成美さんが取り寄せた右目が付いている。<br>
あのね、大きくなったらお兄さんのお嫁さんになるの、<br>
るーくんがいいって言ってくれたから、と、まどかちゃんは言い出すのでびっくりする。<br>
そうか、俺は熊に認められましたか。って、何歳違うと思ってるんだ。<br>
いいじゃないの、まどかちゃんが18歳のとき、探偵さんは36、7でしょ、オイシイじゃない、<br>
などと看護師さんがからかう。<br>
京香さんを見ると、こんな小さな子の夢を壊したら承知しないわよ、と顔に書いてった。<br>
でも、こういうのって、そのときになったら、本人はきっと忘れてるものなんだよな、と思いながらも、<br>
わかった、待ってるよ、と返事をする。<br>
セクンドゥムに行って、成美さんにるーくんのお礼を言う。<br>
成美さんもお裁縫とかするんだ、と訊くと、るーくんの右目を縫ったのは柏木のジジイよ、という答え。<br>
ああ、やっぱりな。そんな事だろうと思った。<br>
それはそうと、顔色が良くなったわね、と成美さんが言う。そういえば、最近あの夢を見なくなったな。<br>
氷室さんから電話が入る。上遠羽の遺体は、元毎朝新聞の柴田という男なのだそうだ。<br>
柴田さんなら、先月会いましたけど、と言うと氷室さんは首を傾げる。<br>
あの柴田という男、何者なんだろう?<br>
To Be Continued<br>
<br>
<br></dd>
<dt>165 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:33:33 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>続きはまた明日ノシ<br>
<br></dd>
<dt>166 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:37:30 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>第5話 迷いの懐中時計<br>
<br>
1日目(9/15)<br>
・・・あ、そうか、夢か。珍しく、目覚ましが鳴る前に目を覚ます。<br>
雨が降っていて、そこに哀愁漂うメロディーが流れている、そんな夢だ。<br>
どんなメロディーだったかはよく思い出せない。<br>
テレビを見ていると、遠羽の港の近くに巨大なホテルが完成したとのニュースが流れた。<br>
全面ガラス張りの建物だ。天狗橋を渡って駅前を過ぎ、ずーっと歩いたところだな。<br>
併設されたイベントホールでは、来る9月30日に「Aim(アイム)」という<br>
チャリティーイベントが開催されるらしい。<br>
探偵事務所に出勤すると、嘉納兄妹からエアメールが来ていた。<br>
Aimで潤ちゃんがピアノを弾くことになったので、9月23日にふたりは日本に帰ってくるという。<br>
特に依頼も無いので、所長が残したファイルを整理することになる。<br>
こうしてみると並び順が滅茶苦茶な上にファイルのタイトルから内容が想定できないし、<br>
明らかに仕事とは関係無さそうなものも混じっているし、途方に暮れてしまう。<br>
失踪者リストのところに、何故か枕ヶ碕のバラバラ殺人の新聞の切抜きが挟んである。<br>
お父さんって、家でもこんな感じなのよ、本とか、滅茶苦茶な順番に並べてるけど、<br>
自分だけはどこに何があるか判ってるらしいのよ、お母さんが掃除できないって嘆いてたわ、と京香さんが言う。<br>
京香さんのお母さん、確か、清香(さやか)さんでしたよね、と確認してみる。<br>
そうよ、22年前に病死したって言うけど、病死しそうには見えないほど元気だったわ、<br>
時々、本当に病気だったのかと考えるの、と、伏目がちに京香さんは言う。<br>
清香さんの名前を聞くと心臓が跳ね上がる。先日、友達から偶然に清香さんの名前を聞いてしまった。<br>
友達と言っても、「SAKU」というハンドルネームしか知らない、チャット友達だけど。<br>
SAKUはハッカーで、時々調査に協力してもらっている。<br>
-鳴海清香っていう人が、22年前通り魔に刺されて死んだの、知ってる?<br>
SAKUからそんなメッセージが届いていた。<br>
同姓同名の別人であってほしい、と願う気持ちもあるけど、多分、間違いないだろう。<br>
氷室さんから電話が入り、警察署にちょっと来いと言うので事務所を出る。<br>
とおば東通りで奈々子に遭遇する。突然、携帯電話を奪われる。<br>
どのポケットに入っているか知っているらしい。鮮やかな手つきだったなぁと感心していると、<br>
奈々子はなにやら携帯電話をいじっている。<br>
ほら、いつも電子音でつまらないから、着メロ入れといてあげたよ、最近話題の曲、と言って、<br>
奈々子は携帯電話を返す。勝手に何するんだと思ったが、なかなかいいメロディーだ。<br>
というか戻し方がよく解らないので、しばらくそのままにするしかない。<br>
警察署の前で森川と、諏訪弁護士が何やら話していた。諏訪さんは忙しいからと言って早々に帰っていった。<br>
森川に、また証拠品かなんか隠してるんじゃないか、何せ前科があるからな、などと難癖を付けられる。<br>
また氷室さんに取調室に通される。上遠羽の遺体、柴田という元毎朝新聞の記者の事について話す。<br>
そして、7月に会った柴田と名乗る男がやっぱり怪しい、という結論になる。<br>
思い切って、氷室さんに清香さんの事を訊いてみることにする。<br>
所長が刑事を辞めたのは、清香さんの死が原因だったらしい。<br>
犯人と思われていた、大野という男は、証拠不十分で逮捕出来ないうちに、病死してしまったそうだ。<br>
久しぶりに諏訪さんの事務所に行ってみることにするが、やっぱり忙しそうだ。<br>
諏訪さんはAimのスポンサーの会社の顧問をやっているそうで、<br>
イベントが近いのでいつもより余計に忙しいらしい。早々に退散する。<br>
ご隠居の家で、夕食をごちそうになる。成美さんも来ていた。<br>
食事の後で成美さんが、アイスが食べたいと言い出した。<br>
しかも、メロディマートというコンビニにしかないオリジナル商品のやつだ。<br>
この辺りではメロディマートは数見町にしかない。遠いなぁ。<br>
でも成美さんは言い出したら聞かないので、仕方なく哲平とふたりで買いに行くことにする。<br>
メロディマートの前では、少年たちが喧嘩をしていて、店内に入れない状態だ。<br>
なんとかその場を収めると、その中に高校生くらいの少女が居るのに気付く。<br>
睦美(むつみ)と呼ばれたその少女は、<br>
助けてくれなんて言ってないのに余計な事するなと突っかかってきたが、<br>
連れの少年に諌められ、去っていった。<br>
アイスを買って柏木邸に帰るとだいぶ時間が経っていた。成美さんはすでに寝ていた。<br>
すっかり疲れきって帰宅する。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>167 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:38:12 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>2日目(9/16)<br>
朝、久しぶりにチャットツールを立ち上げると、SAKUはオンラインになっている。<br>
清香さんの死について、もっと知っている事はないかと訊いてみると、<br>
SAKUはわかった、調べておくと言ってくれた。<br>
探偵事務所に行って、今日もファイルの整理をする。<br>
京香さんが面白いファイルを見つける。植物の標本だ。なになに、上遠羽山から採取、か。<br>
近所で取れる雑草がいろいろとファイルしてある。<br>
ふと気になったので、所長のことをいろいろと京香さんに聞いてみる。<br>
所長が失踪した時に無くなっていた物は、大きい鞄と、自宅の本棚の、一部に入っていたもの。<br>
そこにはアルバムも含まれていたらしく、お陰で今でも俺は所長の顔を知らないのだ。<br>
日が暮れてから、成美さんから電話が入る。スピリットに居るので来いと言うので<br>
行こうとすると、京香さんが自分も行くと言うので連れて行くことにする。<br>
スピリットには哲平も居た。<br>
京香さんは成美さんに、私用で真神くんを呼び出すな、などと抗議しているが、<br>
成美さんはそれを無視して俺に声を掛ける。<br>
ペンダントを売ったことがある店と連絡が取れたから、と成美さんが言う。<br>
メモを渡された。「古刻堂(ここくどう)」。メールアドレスも書いてある。<br>
はっとして目を覚ます。二杯目の乾杯までは覚えているけど、やっぱり記憶が無い。<br>
成美さんは奥の方で寝ているから、哲平が担いで運んでいくと言うので、<br>
とりあえず京香さんとふたりで先にスピリットを出ることにする。<br>
地下にある店のドアを出て、階段を上り、路地に出ると、人が倒れているのが見える。<br>
その人の横に屈みこんでいる人が居る。暗くてよく判らないが男のようだ。<br>
男はこちらに気付くと突然逃げ出した。京香さんは男を追いかけ、走りだしたが突然止まり、<br>
何かを拾い上げてポケットに入れた。京香さんは元気が無さそうな様子で戻ってきた。<br>
追いかけようと思ったけど、ハンカチを落としちゃって、それで逃げられた、などと言い訳をしている。<br>
違う、京香さんが落としたんじゃなくて、逃げた男が落としたものを拾ったんだろう、<br>
と思ったが、京香さんは思う所があるらしいので何も言わない事にする。<br>
倒れている人を見るとやはり死んでいた。何故か白い手袋をしている男性だ。タクシーの運転手かな。<br>
いつものように警察に連れて行かれる。何も見ていないであろう、哲平と成美さんも連れて行かれる。<br>
京香さんは何か思いつめた表情をしている。森川が必要以上に京香さんを心配している。<br>
森川も頑張るよなぁと哲平が関心している。あれ、森川が、京香さんのこと好きだって話したっけ?<br>
疑問に思っていると哲平は、森川が京香さんを見る目が違うからわかると言う。へぇ、そんなものなのか。<br>
色恋沙汰は苦手だろ、好かれてるのに、気付かないでそのまま終わってるんじゃないのかと哲平は俺に言う。<br>
かなり痛いところを突かれた。いや、さすがにそんなことは無いと思う・・・多分。<br>
京香さんは具合が悪そうにしているので、仮眠室で休む事になった。<br>
事情聴取を受ける。何度も迷ったが、結局、京香さんが何か拾ったらしい事は言わなかった。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>168 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:38:55 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>3日目(9/17)<br>
氷室さんから話を聞く。被害者は波多野という男で、遠羽タクシーの運転手だそうだ。<br>
外はもうすっかり明るくなっていた。受付で女性陣を待つ。<br>
仮眠室から京香さんが起きてきた。いつもの調子とまではいかないが、元気になったらしい。<br>
そして成美さんも、寝ぼけながらも起きた。外にタクシーが呼んであるらしい。<br>
森川が、早く出ろと言いながら俺を外へ引っ張って行こうとする。<br>
それを見て成美さんは、突然叫び声を上げた。<br>
やめて、お父さんを連れて行かないで、などと喚きちらし、恐慌状態に陥ってしまう。発作を起こしたようだ。<br>
結局成美さんは仮眠室に逆戻りした。<br>
成美さんが明るいのが苦手なのって、肌が紫外線に弱いとか、<br>
そういうのだとばかり思っていたけど、精神的なものだったのか。<br>
いや、ただ明るいのが苦手なだけじゃなさそうだ。哲平の話も総合すると、<br>
明るい外へ誰かが連れて行かれるのがダメらしい。俺が連れて行かれる場面に反応したように。<br>
保護者はいないのか、と聞かれ、ご隠居を呼び出すことになる。<br>
みんなで成美さんを柏木邸に連れて行き、寝かせる。<br>
成美さんには、暗いところは安全で、明るいところは危険だという認識が擦り込まれてしまっている、<br>
とご隠居は言う。<br>
京香さんと探偵事務所に行く。事務所の前で、中学生くらいの少年がうろうろしている。<br>
少年を事務所の中に入れてソファに座らせる。<br>
京香さんは机のところに行き、ポケットから何か取り出すと、ぎこちない動作で引き出しに入れた。<br>
昨日拾った物だろう。俺は気付かない振りをしたが、京香さんが居ないときにこっそり確かめようと思った。<br>
少年は「波多野皐月(さつき)」と名乗った。あのタクシーの運転手の息子だと言う。<br>
警察署に行ったとき、ここを紹介されたのだそうだ。<br>
犯人をきっと捕まえてください、という皐月くんに対し、京香さんはいつものようにやる気になっている。<br>
でも、実働は全部自分に押し付けられるんだろうな・・・と思ったが、<br>
以外にも、京香さんは自分で調査すると言い出す。<br>
清香さんのことも調査しないといけないし、とりあえず探偵事務所を出る。<br>
しばらくすると、皐月くんと京香さんが出てきて、諏訪弁護士の事務所の方へ向かった。<br>
ふたりが戻ってこないのを確認すると、事務所に戻って、<br>
心の中で京香さんに謝りながら引出しを開ける。<br>
金色の深い輝き。蓋のついている懐中時計だ。指紋を付けないよう、ハンカチに包んで取り出す。<br>
蓋を開いて驚く。文字盤が二つあって、それぞれ違う時間を表示している。<br>
キャプテンウォッチとかいうヤツだ。少し迷ったが、デジカメで写真を撮ってプリントし、<br>
それを持って行くことにして、現物は元通り置いておくことにする。<br>
京香さんが戻って来ないうちに事務所を出る。<br>
警察署に行って、氷室さんに懐中時計の写真を見せてみると、見覚えがあるという。<br>
誠司所長が持っていたものに間違いないそうだ。あの時、逃げ出した男はやっぱり所長だったのか。<br>
だから京香さんは、所長が波多野を殺したと思って自分が調査すると言い出したのかも。<br>
夜、メロディマートの前で皐月くんを見かける。<br>
あのとき会った不良少女、睦美ちゃんの服の裾を引っ張りながら、<br>
お姉ちゃん、もう帰ろうなどと言っている。ふたりは姉弟だったのか。<br>
俺の顔を見るなり、睦美ちゃんはまた突っかかってくる。<br>
学校には行っているのかと聞くと、そんなもん行ってられるかと乱暴な答えが返ってきた。<br>
帰宅後、古刻堂さんに、ペンダントについての質問のメールを出しておく。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>169 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:40:02 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>4日目(9/18)<br>
探偵事務所に行くと京香さんは目の下にクマを作っていて、ふらふらしている。<br>
本人は大丈夫だと言うがどう見ても寝不足だろう。<br>
また迷惑をかける事になるが、ご隠居の家に連れて行って休ませることにした。<br>
ごめんねと京香さんは謝る。素直に自分に任せてくれればよかったのに。<br>
京香さんに昨日の調査について聞くが、成果が上がらなかったという。<br>
たとえば、遠羽タクシーの事務所に行って波多野について聞いてみるとか・・・、<br>
そういう事はちっとも考えつかなかったらしい。<br>
遠羽タクシーに行って聞き込みすることにする。<br>
そういえば、15日に、車内に忘れ物をした人がいたので、それを波多野は交番に届けたとのこと。<br>
忘れ物は事務所で預からずに交番に届けるらしい。<br>
近くの数見町交差点派出所に行ってみる。名刺を渡すと、警官は宇野巡査と名乗った。<br>
何故か俺のことを名探偵だと尊敬の眼差しで見ている。<br>
どうやら、この派出所の丸尾巡査が森川と知り合いらしく、そこから伝わったらしい。<br>
森川が自分のことを名探偵などと言うはずが無いので、どこかで間違って伝わってるな、<br>
まぁお陰で宇野巡査は協力的で助かるけど。<br>
丸尾巡査の件ですか?と宇野巡査は聞く。<br>
そういえば、15日に警官殺しがあったっけ。それがこの派出所なんだな。<br>
そうじゃなくて、忘れ物の事なんですが、と、最近どんな忘れ物が届けられたか聞く。<br>
最後は13日で、15日の記録なんてないですよ、と記録簿を見せてくれた。<br>
記録簿をよく見ると、15日の所に破り取られた跡がある。<br>
15日の事を聞いてみる。宇野巡査と丸尾巡査はその日の当番で、<br>
宇野巡査が見回りに行って帰って来たら、丸尾巡査が殺されていたとのことだ。<br>
きっと丸尾巡査を殺した犯人が、記録簿を破って、忘れ物を持ち去って行ったのだ。<br>
帰宅後、メールをチェックすると、古刻堂さんから返事が来ていた。<br>
25年前、骨董好きの若い男にペンダントを2つ売ったとのこと。<br>
もう少し調べれば誰に売ったのか判明するので、判りしだいまた連絡するとのことだ。<br>
そういえば、以前、成美さんに、あのペンダントは同じ物が10個あると教えられたっけ。<br>
2つ買うって事は、誰かとペアで着けようと思ったのかな。<br>
父さんはペンダントを持っていなかったので、きっと父さんが買ったわけじゃないだろうから、<br>
古刻堂さんが売ったのは、母さんが持っていたペンダントじゃないだろう。<br>
でも、ひとつ譲ってくれないかな、と思った。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>170 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:40:45 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>5日目(9/19)<br>
探偵事務所を下から見上げると、ブラインドが上がっていた。<br>
京香さんは元気になったようだ。今日は自分も調査に行くと言うので、<br>
一緒にまた遠羽タクシーの事務所へ行く。<br>
15日にタクシーに忘れ物をした人はどこへ行こうとしてたのか聞いてみたが、判らないと言う。<br>
そうだ、15日に波多野が乗っていたタクシーが車庫にありますよというので<br>
見せてもらうことになる。波多野が死んでからそのままだという。<br>
後部座席の足元に、雑草が落ちていた。京香さんが驚きの声をあげる。<br>
これ、お父さんのファイルにあった草だ、たしか上遠羽山で採取したって・・・。<br>
早速、上遠羽山へ向かうことになる。山のふもとに、タクシーの中に落ちていた草が群生していた。<br>
この辺りは、たしか、エイジが木に縛りつけられていた所だな。あの異様な現場がフラッシュバックする。<br>
何故か奥のほうが気になったので、行ってみると防空壕と思しきものがあった。<br>
そこから、嗅いだことのある匂いが漂ってきている。<br>
京香さんはここで待っていてくださいと言って、ひとりで防空壕に入り、<br>
積み上がった枯草の山の中を探るとスーツケースが出てきた。<br>
匂いが強くなり気分が悪くなる。これは、腐臭だ。<br>
スーツケースには鍵が掛かっていたが、抉じ開けると、中身はやはり死体だった。<br>
服装から男らしいという事だけは判るが、それ以上はとても確認できるような状態ではない。<br>
警察に通報すると、また氷室さんと森川が来た。<br>
森川に、なんでこんな所に京香さんを連れてきたんだと文句を言われたが、<br>
京香さんが自分で行きたいって言ったんだ、と言っても納得してくれそうにない。<br>
氷室さんから、被害者は行方がわからなくなっていた公安課の刑事だという事を教えてもらう。<br>
手口も同じだし、警官殺し、波多野殺しと同一犯だろう。<br>
そして、犯人は右利きであろうという事も教えてもらうと、突然京香さんは泣き出した。<br>
お父さんじゃなくて良かった、と。所長は左利きだったのか。<br>
また京香さんと一緒に柏木邸にお邪魔することになる。<br>
お父さんは危険な事を調査していたに違いない、そして誰も巻き込まないように、<br>
姿を消したに違いない、と京香さんは言う。<br>
それに、お母さんは病死じゃないでしょ、とも。<br>
清香さんは、通り魔に刺されて死んだ、犯人の大野という男は、病死したと、<br>
今までわかっていることを教える。<br>
誠司所長が調査していた、危険な事とは何か?<br>
それは、事務所のあの謎のファイルの山の中に眠っているに違いない。<br>
意を決して探偵事務所へ向かう。今日こそは、徹底的にやってやる。<br>
まず、調査と全く関係の無さそうなものを除き、残ったものをいくつかの分類に分ける。<br>
そして、この前見つけた意味の判らない謎の暗号のようなメモを見る。<br>
「M→A→Y→?」「Gが鍵か?」<br>
Aは青島組だということはすぐに判った。Mは枕ヶ碕かな。<br>
枕ヶ碕で失踪したという人のリストがあちこちのファイルにある。<br>
ジョンとかクロとか書いてあるので、犬か猫かそんなのかと思ってたけど、人間らしい。<br>
Yは友凛病院だろう。友凛病院に関する記述も多い。<br>
Gは木原剛三だ。剛三に関する記録がある。<br>
ええと、枕ヶ碕で失踪した人が青島組に拉致されて友凛病院に連れて行かれる?<br>
それを指示してたリーダーが木原剛三?<br>
そういえば、友凛病院といえば、多々良院長が探していたマイクロフィルム、<br>
あれには不正な臓器移植の証拠が記録されていたんじゃないっけ?<br>
失踪した人はきっとドナーになって、そして枕ヶ碕のバラバラの遺体に・・・。<br>
・・・繋がった。もはや一個人ではどうしようもないような巨大な組織が裏にあるのだ。<br>
それに、所長は立ち向かおうとしている。<br>
ああ、そうか、きっと誰かが、こうやってこのファイルの山を読み解くのを期待して、<br>
こんな暗号みたいなのにして残したのだ。<br>
そして、俺はついに辿り着いた。所長が期待した答えに。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>171 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:41:28 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>6日目(9/20)<br>
朝のニュースを見る。豪華客船アニバーサリー号がもうすぐ新遠羽港に就航するとのこと。<br>
アニバーサリー号はAimを主催する団体が持っているという船だ。<br>
あれに乗って潤ちゃんと浩司さんがやってくるって言ってたな。<br>
新遠羽港ってのは、イベント会場の近くの港だ。<br>
探偵事務所には京香さんと、氷室さんも居た。ふたりに、昨日読み解いた答えを教える。<br>
氷室さんは、これから波多野姉弟に聞き込みするから一緒に来いと言う。<br>
サイバリアで待ち合わせだという。<br>
あんなところでは話を聞くどころではないんじゃないかと悪い予感がしたが、<br>
案の定奈々子がうるさくて険悪なムードになってしまう。<br>
なんと、奈々子と睦美ちゃんは顔見知りなのだという。隣のクラスだもん、とのこと。<br>
睦美ちゃんもあのお嬢様学校に通ってるのか・・・。<br>
と、そんなことはさておき、睦美ちゃんに、波多野が殺される前のことを聞き出す。<br>
殺される前の晩、睦美ちゃんが部屋でMDを録音していると、波多野が部屋に入ってきて、<br>
今日、後部座席でこの曲がずっと鳴っててうるさかった、とそんな話をしたという。<br>
そのとき録音していたMDを持っているというので聴かせてもらうことにする。<br>
MDのラベルには、「Painful rain」と書いてあった。<br>
なるほど、題名の通り、悲しげなメロディーだ。<br>
これ、おじさんが若い時に流行った洋楽なんだよね、と氷室さんは言う。<br>
あ、どこかで聴いたことがあるな。携帯電話を取り出して、鳴らしてみる。<br>
テンポがぜんぜん違うが、同じ曲だ。<br>
それ、最近カバーされた方だろ?そっちはあんまり好きじゃない、と睦美ちゃんは言う。<br>
後部座席でずっと鳴っててうるさい、それは携帯電話の着メロではないか?<br>
そうか、忘れ物は携帯電話だったのだ。上遠羽山で公安の刑事を殺し、<br>
帰りのタクシーに携帯電話を忘れ、携帯電話は交番に届けられた。<br>
忘れ物に気付き、自分の携帯電話に電話をかけ、電話に出た警官を殺して取り戻し、<br>
そして忘れ物を知っているタクシーの運転手まで殺したのだ。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>172 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:42:42 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>7日目(9/21)<br>
朝、パソコンを立ち上げると、SAKUからメッセージが届いていた。<br>
-大野っていう男は、昭沢(あきさわ)という医者が、医療事故で死なせたことになっている。<br>
-昭沢は医師免許を剥奪され、その後闇医者をやっているらしい。<br>
-今、昭沢は枕ヶ碕に居るそうだ。<br>
所長は今どこに居るのだろう。やはり、フリーライターの柴田、彼が所長だろうな。<br>
毎朝新聞の柴田が殺されたのをいい事に、柴田になりすましているのだろう。<br>
初めて会ったとき、とおば東通りでばったり京香さんに会うと、柴田は消えていた。<br>
顔を知っている京香さんの前に出られなかったのだろう。<br>
自分や哲平は所長の顔を知らないと確信していたのだ。<br>
そこまでして立ち向かわなければいけないものって・・・。<br>
ポケットの中で「Painful rain」が流れ出す。テンポが速いが哀愁漂うメロディーはそのままだ。<br>
出てみると氷室さんからだ。話したいことがあるから、警察署の屋上に来いという。<br>
受付で顔見知り、とくに森川などに見つかってはマズいなぁと思いながらも、<br>
誰にも見咎められずに屋上まで行けた。なんだか今にも雨が降りそうないやな天気だ。<br>
氷室さんは、今回の一連の事件は内部の人間の犯行の可能性が高いと言う。<br>
携帯電話を取り戻すときも、タクシー運転手を殺すときも、刑事だと何かと都合がいい。<br>
氷室さんを呼びに、森川が来たが、俺が居るのを見て、なんでお前が居るんだよといつものように言う。<br>
突然、「Painful rain」が流れる。ゆったりとした哀愁漂うメロディー。<br>
森川は携帯電話を取り出す。着信ランプが光っている。誰かと話して、電話を切る。<br>
それ、「Painful rain」だろ?と訊くと、よく知ってるな、昔のバージョンなのにと森川は答える。<br>
まさか、森川が・・・?<br>
森川ぁ、15日の夜、お前の携帯電話に電話をかけたけど、出なかったときがあるよなぁ?と氷室さんは訊く。<br>
森川は、懐に手を入れ、拳銃を抜く。氷室さんも抜いたが、森川の方が一瞬早かった。<br>
森川が撃った弾は氷室さんの手の甲を掠めた。氷室さんは拳銃を落とす。<br>
夢中でその銃を拾って、森川に向け両手で構える。<br>
ああ、銃ってこんなに重いものなのか、森川のやつ、こんなものよく片手で撃つよなぁ、と思った。<br>
一連の事件の犯人は、やはり森川だったのだ。<br>
頭ではわかっているが、心はその事実を拒絶している。<br>
なんて現実感が無いんだろう。俺と、森川が銃を構えあってるなんて、<br>
こんなの、悪い夢を見ているとしか――。<br>
公安の刑事は織田県警本部長の不正を嗅ぎつけたので殺された。<br>
そして、他の人たちが殺された理由は、昨日推理した通りだ。<br>
邪魔するヤツは容赦しない、仕方ないが排除した、と森川は言う。<br>
織田県警本部長は、所長が立ち向かっている組織の一員だ。そして、森川も。<br>
組織は内部分裂しそうなのだという。柴田が、所長が言い残した、「世代が代わる」という言葉、<br>
あれは剛三が死んで新しいリーダーが生まれるという事か。<br>
お前、射撃が下手だなんて嘘だろう、でないと氷室さんに向けて撃てないよな、<br>
正確に手の甲を狙うなんて出来ないよな、本当は、撃ちたくないんだろと指摘すると、<br>
森川は、何を勝手に解釈してるんだ、と言う。<br>
じゃあ、どうして所長が生きていると判ったとき泣いたんだよ?と言うと、<br>
森川の顔にはっきりと動揺の色が見える。<br>
今まで、氷室さんも俺も、森川を疑うことなんか無かった。<br>
だが、所長が生きていると知ってからの森川は、簡単に足が付くようなミスばかりしている。<br>
それは、所長が死んでいることが心の拠り所だったからだ。<br>
初めから、京香さんの敵だと、結ばれぬ運命だと思っていたからこそ、<br>
森川は平気で殺人も出来るような人間になれたのだ。<br>
俺たちの組織が、京香さんの父親を殺した、そう思うと夜も眠れなかった、と森川は言う。<br>
森川は、ゆっくりと銃を下ろす。<br>
銃声が聞こえ、森川の左胸にパッと血が広がる。<br>
どこだと思って見渡すと、少し離れたビルの屋上に、見覚えのある顔、威が冷たく嘲笑を浮かべていた。<br>
威の部下がライフルを持っている。裏切りそうになったから撃ったのか。<br>
悔しがるこちらを尻目に、威と部下は悠然と去っていった。<br>
気をつけろ、組織、”パーツ”・・・それだけ言うと森川は死んだ。ちょうど雨が降り出す。<br>
「Painful rain」が耳の奥で鳴り出したような気がした。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>173 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 06:17:12 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>次の日、睦美ちゃんと皐月くんが、氷室さんと共に事務所を訪ねてきた。<br>
事件が解決したので、お父さんのお参りに行くそうだ。<br>
波多野が死んでいた路地に、みんなで行く。消えかけたチョークの跡に花を供えて手を合わせる。<br>
ヘンね、携帯電話のためだけに、罪の無い人たちを殺したと判ってるのに、<br>
森川くんのこと、嫌いになれないの、と京香さんは言う。<br>
氷室さんは俺に、あの組織に立ち向かうつもりか、と訊ねる。もちろんです、と答える。<br>
それじゃ、敵討ちといきますか、と氷室さんは言って、歩き出す。<br>
To Be Continued<br>
<br>
<br></dd>
<dt>174 :<a href="mailto://sage/"><b>名無しさん@お腹いっぱい。</b></a>:2007/06/15(金)
06:42:34 ID:VhzbzRAq0</dt>
<dd>ふらっと見に来ただけだが、すげー長いのが展開中だな…<br>
<br></dd>
<dt>175 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:09:34 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd><a href="http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1180167848/174"
target="_blank">>>174</a><br>
長いのは短くまとめられないからですorz<br>
殺人事件とか合計6件削ったけどこれだ<br>
まぁPS2ソフト2本分つーことで許してください<br>
<br>
最終話イクゾー!<br>
<br></dd>
<dt>176 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:10:38 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>第6話 追憶のペンダント<br>
<br>
1日目(9/23)<br>
探偵事務所の、所長が残したファイルの棚を眺めていた。<br>
京香さんに声をかけられるまで、5分ほどそのまま固まっていたらしい。<br>
しばらくして哲平と氷室さんが訪ねてきた。氷室さんは謹慎中にもかかわらず出歩いている。<br>
4人は、これから立ち向かうであろう巨大な組織、<br>
森川が命をかけて教えてくれた”パーツ”という組織の事を考える。<br>
”パーツ”では、トップの木原剛三が死んだせいで内部分裂が起きているらしい。<br>
今まで関わった事件から、”パーツ”に関係がありそうな人を探す。<br>
まず死んだ木原剛三に、青島組の組長、入院中の多々良院長、森川の話に出てきた織田県警本部長。<br>
たぶん威もそうだろう。一見無関係そうな事件が繋がっていたなんて。<br>
所長のメモにあった通り、不正な臓器移植と枕ヶ碕の失踪者が本当に関係があるとしたら・・・、と考え、<br>
まず失踪者を当たる事にする。それと、”パーツ”に関係がありそうなものをもっと調べなくては。<br>
後で哲平と柏木邸で落ち合うことにして、事務所を後にする。<br>
枕ヶ碕でどんな失踪者が居るかタカなどに聞き込みをし、夕方、柏木邸に向かう。<br>
門の外にご隠居が出てきた。黒い車が通りかかる。そして、銃声。<br>
ご隠居が撃たれてしまった。黒い車には、見覚えのある人物が乗っていた。威の部下だ。<br>
早く救急車をと思ったが、哲平は闇医者に連れて行くという。<br>
そういえば、前に無免許の昭沢という医者が枕ヶ碕に居たというのを聞いたことがあるのでそれを哲平に話す。<br>
哲平はご隠居と共にタクシーに乗り、闇医者のところへ向かった。<br>
セクンドゥムへ行き、成美さんにご隠居が撃たれた事を告げると、成美さんはまた発作を起こしてしまう。<br>
おじいちゃん助けて、などと言っている。<br>
とてもひとりにさせられる状態ではないので闇医者の元に連れて行く事にする。<br>
昭沢先生が居るところは、ボロアパートの一室で、とても治療をするところではないと思うが、<br>
とにかく奥の部屋で治療中とのことだ。手前の部屋で夜を明かす。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>177 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:12:09 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>2日目(9/24)<br>
昭沢先生が奥の部屋から出てきた。<br>
昭沢先生は22年前に、成美清香さんを殺した容疑者、大野を治療した医者だ。<br>
そのときのことを昭沢先生に詳しく聞く。<br>
大野は、盲腸で入院してきたという。別に、死ぬような病気ではなかった。<br>
無事に手術を終えたが、その日の夜、突然容態が悪化したというので駆けつけてみると、<br>
既に大野は死んでいたとのことだ。きっと、大野は誰かに殺されたのだと昭沢先生は言う。<br>
そして、その責任を問われ、医師免許を剥奪され、何者かに追われる日々が始まった。<br>
闇医者をしながら、各地を転々とし、そして7年前に枕ヶ碕に来た。<br>
大野を殺したのも、昭沢先生を追いかけているのも、きっと”パーツ”に違いない。<br>
哲平を残し、俺と成美さんは帰ることにする。成美さんをセクンドゥムに送る。<br>
探偵事務所に行くと留守電が入っていた。浩司さんからだ。<br>
そうだ、昨日帰ってくると言っていたっけ。京香さんと一緒にイベント会場へ行く事になった。<br>
イベント会場に併設されたホテルのロビーで嘉納兄妹に会う。<br>
京香さんは潤ちゃんと何やら話しこんでいるので、会場内をあちこち行ってみることにした。<br>
イベントホールに唯ちゃんと亀山さんが居る。唯ちゃんはイベントで歌うことになっているそうだ。<br>
スタッフ詰め所では意外な人物を見かける。睦美ちゃんと明日香ちゃんだ。<br>
睦美ちゃんは本当はやりたくないけど、少年課の刑事に勧められて手伝っているのだと言う。<br>
明日香ちゃんも元気なようだ。今はお手伝いだけど、いつか正式なスタッフになりたいと言っている。<br>
セクンドゥムへ帰って成美さんの様子を見る。成美さんは俺を見て、<br>
お父さん行かないで、などと言う。お父さんと間違えているらしい。幼児退行してるよ。<br>
帰宅後、メールをチェックすると古刻堂さんからメールが来ていた。<br>
ペンダントを買った人は「杉内和将」という人らしい。住所も判っているが、今はそこには住んでいないという。<br>
あのペンダントって、宝石としての価値はそんなにないらしいけど、<br>
一応アンティーク・ジュエリーって事になるよな、ということで少し調べてみることにする。<br>
アンティーク・ジュエリーは、一度台座に嵌めてしまった後は、外すときに宝石に傷が付いてしまうらしい。<br>
傷と言えば・・・と、机の脇に置いてある母さんの写真に目が行く。あのペンダントを着けて微笑んでいる写真。<br>
母さんが持っていたペンダントの宝石には、傷が付いていた事を思い出した。<br>
何故傷があるのかと訊ねた事があるのも覚えている。<br>
同じものが10個あるとしても、本当に母さんが持っていたものがどれだか判別できるなんて思わなかった。<br>
<br>
3日目(9/25)<br>
インターネットで杉内が住んでいた所を調べると、今はコンビニになっていた。<br>
「杉内和将」という名前で検索をかけると、杉内一家は24年前謎の失踪を遂げていることが判明した。<br>
チャットウィンドウを開くとSAKUがオンラインになっていたので呼び出す。<br>
ペンダントを買った杉内一家は失踪している事を話し、協力を仰ぐ。<br>
探偵事務所に行き、所長が残したファイルから失踪者のリストを引っ張りだして調べる。<br>
「杉内」という名前はどこかで見たと思ったが、やっぱりこのリストに載っていた。<br>
「杉内和将 31歳 妻・弥生 長女・音々」か。<br>
枕ヶ碕で聞いた失踪者の名前もいくつか載っている。<br>
夜、帰宅後に裏サイトを見てみる。あの、ペーパーナイフを探しているという書き込みに、<br>
レスが付いている。書いたのは威に違いない。寒気がする。落ち着け、俺。<br>
彼女の事を思い出しそうになる。心の一番奥に閉じ込めてあったそれを、もう一度仕舞い直す。<br>
心を落ち着けてからその書き込みを見る。そこには、「ゲームを続けましょう」と書いてあった。<br>
書き込まれた日付はご隠居が撃たれた日だ。やっぱりあれは威の差し金だったのか。<br>
<br>
4日目(9/26)<br>
昼頃、サイバリアに行くと、諏訪さんがまたサボっていた。<br>
また相変わらず愛犬のサイトを眺めている。そのサイトの犬の値段は高くて買えないが<br>
ついつい見てしまうのだと諏訪さんは言う。もうすぐイベントなのにサボってていいのかなと思う。<br>
帰宅後にメールをチェックするとまた古刻堂さんからメールが来ている。<br>
あのペンダントは、本物はひとつだけで、残りの9つは似せて作られた偽物だと言う。<br>
母さんが持っていたのが偽物だったとしても構わないのに、だって形見なんだし、と思う。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>178 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:13:15 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>5日目(9/27)<br>
探偵事務所に行くと、誠司所長が何食わぬ顔でテレビを見ていた。<br>
だらしなくスーツを着た眼鏡の男。やはり柴田が所長だったのだ。<br>
本物の柴田は所長と間違われて殺されたので、所長は柴田になりすまして行動していたとのこと。<br>
どこまで掴んでる?と所長に言われ、今まで調査した結果を報告する。<br>
そして、Aimが”パーツ”と関係ありそうだという事も。<br>
それを聞くと、所長は笑った。さすがは俺の弟子だ、と褒められた。いつから弟子になったんだろう。<br>
帰宅後にメールをチェックすると、SAKUからメールが来ていた。<br>
杉内一家の写真が手に入ったので添付するとのこと。<br>
開いてみて、我が目を疑う。あのペンダントを着け、娘を抱きながら微笑む女性、<br>
その顔は、母さんとそっくりだった。写真も残ってるし、自分でも覚えているので、間違うはずはない。<br>
自宅にはプリンターがないので、明日事務所でプリントしよう。<br>
その夜はなかなか寝付けなかった。<br>
<br>
6日目(9/28)<br>
ネットで失踪者のことを検索してみようとサイバリアに行く。<br>
所長のリストを見ると、あだ名と本名とどっちも載っているけど、あだ名で検索してみる。<br>
案の定、絞り込めなくて膨大な量のサイトが引っかかった。<br>
ジョンとかクロとかいう名前だから、犬のサイトが引っかかっている。<br>
開いてみると、いつも諏訪さんが見ている愛犬サイトだった。<br>
ふーん。やっぱり値段が高いなぁ。<br>
帰宅後、裏サイトを見てみる。<br>
ペーパーナイフの書き込みにレスが増えているので開くと、威からだった。<br>
いろいろな事が脳裏に浮かびそうになるのを必死で押し留める。<br>
ああ、どうしてこんな思い出し方しか出来ないんだろう。<br>
また挑戦状と称して、謎の長ったらしい暗号文が書かれている。その内容を手帳に書き写す。<br>
威の奴、今度は何を企んでいるのだろう。また眠れなくなくなるような事を・・・。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>179 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:14:08 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>7日目(9/29)<br>
探偵事務所に行くと、京香さんと所長が喧嘩していた。<br>
昨日見た、諏訪さんがよく見ていた愛犬サイトが気になったので、もう一度見てみる。<br>
犬の写真の側に、名前と犬種、そして産地を表す、Mという記号が併記されている。<br>
Mって、所長のメモにあった、枕ヶ碕を表す記号だったよな?<br>
犬の名前と失踪者リストをもう一度照らし合わせてみると、ほとんど一致する。<br>
犬種はよくわからないけど部位かなんかを表して、そしてこの法外な値段・・・。<br>
それが判ったとたん、眩暈に襲われる。<br>
これは愛犬サイトなどではない、臓器を売買するサイトなのだ――。<br>
ああ、そうか、諏訪さん、彼も”パーツ”に関わっているんだな。<br>
昨日裏サイトに書き込まれたレスのことも考えてみる。<br>
イベント当日に、威が、”パーツ”が、何かやらかそうとしている事は明らかだ。<br>
イベントは明日だ。今日から会場に行って警戒しよう。<br>
セクンドゥムに行き、杉内一家の写真を成美さんに見せることにする。<br>
その写真を見ると、成美さんの顔色がみるみる青くなる。<br>
まさか、そんな、嘘よ、などと言い、ひどく狼狽している。<br>
セクンドゥムを出て東公園を歩いていくと、成美さんの声がする。<br>
振り返ると、まだ日も高いのに、成美さんが走ってくる。<br>
成美さんはエアメールを差し出して、この手紙をお守り代わりに持っていきなさいと言う。<br>
その手紙は外国のとある財団からもらったもので、財団はペンダントのオリジナルを探しており、<br>
オリジナルがあれば、報酬は望みのままだとのこと。<br>
あのペンダントは、昔、ある貴族が妻の死を悼み、遺品のイヤリングをペンダントに作り変えたものなのだという。<br>
それが、世界にひとつしかないオリジナルで、盗難防止のためにダミーが9個作られた。<br>
それから貴族は没落し、オリジナルもダミーも散り散りになってしまったとのことだ。<br>
成美さんが何故そんな話をするのか不思議に思うが、成美さんは真剣だ。きっと何か意味があるのだろう。<br>
そのエアメールを受け取り、内ポケットに大切に仕舞った。<br>
成美さんをセクンドゥムへ連れて行き、2階の部屋に寝かせる。<br>
京香さんに電話をかけ、成美さんのことをお願いしてから、イベント会場へ向かう。<br>
イベント会場には、氷室さんに哲平、そしてタカまで借り出されていた。<br>
暗号文を読み返す。とりあえず、スタッフ詰め所に何かありそうだ。<br>
スタッフ詰め所を漁ると、段ボール箱から怪しい装置が出てきた。0~9までの数字のキーと、ランプが6つ付いている。<br>
表示された時間がどんどん減っていく。これは、時限爆弾?<br>
暗号文を見ると、これの他にも爆弾が6個仕掛けられているらしく、解除方法も4桁の数字を入力するというものらしい。<br>
氷室さんと哲平とタカに協力してもらい、暗号文を解き、7個の爆弾全てを解除することに成功する。<br>
しかし、暗号の答えが成美さんの年齢とか森川が死んだ日付とか探偵になってから調べた死体の数とか、<br>
自分にしか解けないようなのばかりとは、威も悪趣味と言うかなんというか・・・。<br>
ホッとした俺はスタッフ詰め所の床に寝転んだ。<br>
<br>
<br></dd>
<dt>180 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:19:10 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>8日目(9/30)<br>
唯ちゃんに起こされてびっくりする。スタッフ詰め所で寝てしまったらしい。<br>
探偵事務所に戻って所長に報告をしてから、またイベント会場に向かう。<br>
もうすぐイベントの午後の部が始まる時間だ。午後の部は潤ちゃんのピアノと、唯ちゃんの歌だな。<br>
ロビーに行くとスタッフがバタバタしているので事情を聞くと、<br>
アニバーサリー号が突然出港することになったとのこと。<br>
きっと威たちが、”パーツ”のメンバーが逃げるつもりなのだろう。<br>
そして安全なところへ逃げてから爆弾を爆発させるつもりだろう。まぁ爆弾は昨日全て解除したが。<br>
アニバーサリー号に乗り込むとしても、船内は敵だらけだろう。気を引き締めていかなければ。<br>
イベント会場の入り口には、京香さんと、なんと成美さんが居る。<br>
成美さんはサングラスに黒い日傘という重装備だけど、いつものように発作を起こすようなことも無いらしい。<br>
成美さん自ら行きたいと言ったそうだ。<br>
そろそろアニバーサリー号のところに行こうとすると京香さんが呼び止める。<br>
話しておきたい事があると言う。昨日、成美さんが話してくれたことだそうだ。<br>
成美さんが明るいところがダメな理由は、小さい頃監禁されたことがあるからだ。<br>
拉致されて、ずっと暗いところに閉じ込められていたらしい。<br>
そして、明るいところへ連れて行かれるときが死ぬ時なのだ。<br>
「連れて行かないで」と言うのはそのときの体験が元になっているらしい。<br>
お父さんが成美さんより先に連れて行かれてしまい、次は自分の番かと思い不安になっていたところ、<br>
白虎会がその監禁場所を襲撃し、成美さんは助かった。そして、ご隠居の手で育てられることになったそうだ。<br>
何をするつもりかわからないけど、頑張ってと京香さんに励まされた。<br>
アニバーサリー号の前までやってきた。まだタラップが下りている。<br>
そこには威が待っていた。森川とご隠居を撃った部下を従えている。<br>
あの船に乗れるのは”パーツ”のメンバーだけですよ、と威は言う。<br>
どんな事をされても”パーツ”になんか入るものか、と言い返す。<br>
その後、威を飽きさせないよう会話を続ける。出港の直前になってようやく威と部下が船に乗り込む。<br>
走って、岸を離れようとするタラップに必死に飛びつく。なんとか海に落ちずに済んだ。<br>
威の部下が撃とうと構えたが、威はそれを制して去っていってしまう。<br>
甲板には諏訪さんが待っていた。彼こそ、”パーツ”のニューリーダーだ。<br>
俺の両親を殺したのは諏訪さんだった。<br>
24年前、臓器移植のドナーとさせるべく、杉内一家を拉致したが、母親だけは逃げ出し、川に飛び込んだ。<br>
それから4年経った20年前、逃げ出した母親の居所を突き止めた。<br>
彼女は記憶喪失になっており、名前を変えていた。それが母さんだった。<br>
諏訪さんは、記憶を取り戻す前に母さんを殺そうとした。<br>
母さんだけ殺すつもりだったが父さんも巻き込まれて死んでしまったのだ。<br>
交通事故に見せかけて上手く殺したつもりだったが、毎朝新聞の柴田は、顔こそ見ていないが、<br>
諏訪さんが現場に居たところを見ていた。<br>
そして、事故を起こしたトラックには運転手の他に誰か乗っていたという記事を書いたが、<br>
その記事は差し替えられた。<br>
諏訪さんが何か投げてよこしたのでとっさにキャッチする。<br>
日の光を受ける赤い輝き。そして、宝石につけられたこの傷。間違いない、母さんのペンダントだ。<br>
諏訪さんはペンダントを触ってしまったので、指紋から身元が割れると思いやむなく持ち去ったが、<br>
このペンダントが失くなったからこそ、俺はここまで来たのだ。<br>
プロペラの音が聞こえてくる。威がヘリコプターに乗って逃げようとしている。<br>
諏訪さんは懐から大き目の拳銃を取り出して、ヘリに向けて撃った。ヘリは爆発して海に落ちた。<br>
そして、諏訪はその銃口をこめかみに当てる。罪を認めるには遅すぎる、と諏訪さんは言う。<br>
生きて罪を償ってください、威を撃ったのは罪の意識があったからでしょう、<br>
わざわざ俺の前であの愛犬サイトを何度も見せたのも、止めてほしかったからでしょうと説得する。<br>
諏訪さんは拳銃を持った手を下ろした。<br>
小型の船に乗った氷室さんたちがアニバーサリー号に追いついて来ていた。<br>
初めて、犯人が死なずに連行されるところを見たなと思った。<br>
最後に諏訪さんは言う。そのペンダントは財団が探しているオリジナルだと。<br>
<br></dd>
<dt>181 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:22:50 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>アニバーサリー号はすぐに港に戻った。結局、コンサート見れなかったな。<br>
イベント会場の前で京香さんや成美さん、哲平たちが待っていた。<br>
どう?あのお守り役に立ったでしょ、と成美さんが得意げに言う。<br>
諏訪さんから受けとったペンダントを成美さんに見せる。<br>
これがオリジナルだと言うと、成美さんは少し羨ましがったが、<br>
あたしにはお父さんのがあるからいいもんと言った。<br>
杉内一家の写真を取り出してしげしげと眺める。この人、やっぱり母さんだったんだ。<br>
そして、自分には姉も居たのだ。横から成美さんが写真を覗く。<br>
ね、その子はどう見てもあたしでしょと、母さんの腕の中で笑っている少女を指して成美さんは言う。<br>
そういえばつり目だよな・・・って、えっ?<br>
異父姉弟ってヤツか?と哲平が言うと、成美さんは否定する。<br>
だって、お母さんが、もうすぐお姉さんになるのよ、って言ってたもん、と成美さんは言う。<br>
じゃあ、「月嶋成美」って言うのは?と聞くと、偽名よ、柏木のジジイの別れた女房の名前だってさ、という答え。<br>
<br>
潤ちゃんと浩司さん、そして正式なスタッフになった明日香ちゃんは<br>
アニバーサリー号に乗り、日本を離れて行った。<br>
唯ちゃんは相変わらず頑張っているらしい。<br>
睦美ちゃんはたまには学校に行くようになったと聞いている。<br>
威はその後遺体が捜索されたが、片腕しか見つからなかったそうだ。<br>
ご隠居はまだ包帯を巻いてるけど順調に回復している。<br>
成美さんは徐々にだけど、昼間も外に出れるようになってきている。<br>
だが、我儘な性格は変わらない。相変わらず俺や哲平をこき使っている。<br>
俺もまだ変わらず「成美さん」と呼んでいる。だって、今さら「姉さん」なんて恥かしくて言えないよ。<br>
天涯孤独だと思ってたふたりが血の繋がりを見つけた、それだけで十分だ。<br>
いつか失う時が来ると考えると少し怖いけど、でも、もう大丈夫。そして、諦めかけていたペンダントもここにある。<br>
いや、ペンダントなんて、どんなに価値があろうとも、形見だとしても、今やオマケにしか過ぎないな。<br>
俺が本当に取り戻したかった「失くした欠片(ミッシングパーツ)」は、成美さんだったのだから。<br>
MISSING PARTS is Completed<br>
<br></dd>
<dt>182 :<a href="mailto://sage/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:23:46 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>ミッシングパーツ終了です~<br>
ありがとうございました</dd>
</dl>
<p><br>
<br>
おまけ 第3話アナザーエンド</p>
<p>(7日目より分岐)<br></p>
<p>俺は、哲平と一緒に子守歌の謎に取り組んだが、謎は解けなかった。<br>
数日後、タカが殺された。海岸線で、ずぶ濡れになり、消波ブロックの間に挟まりながら死んでいた。<br>
土に克された水の見立てだ。<br>
そして、次の日。住宅地で、威さんの秘書が死んでいるのが発見された。<br>
焦げた服を着ていて、溺死していた。水に克された火。<br>
俺はふと気がついて、遠羽市の地図を出して、4つの現場を書き入れてみた。<br>
上遠羽、東公園、海岸線、住宅地。<br>
すると、見えてきた。それぞれの現場を五芒星の頂点と見ると、5つ目の現場は・・・紫宵が隠れていたあの倉庫だ。<br>
急いで倉庫に向かった。中に入ると、異臭がする。これは、灯油か?<br>
そう思ったのも束の間、背後に人の気配がしたので振り返ると、火の点いた何かが飛んできた。<br>
すぐさま灯油に引火して、辺りは火の海に。逃げようとしたが、扉は外から鍵が掛けられたようで開かない。<br>
そうか、俺は今、火に克される金なんだ。そう思うと、死ぬことは不思議と怖くはなかった。<br>
END</p>
<strong>MISSINGPARTS the TANTEI stories</strong><br />
part31-133~182<br /><hr width="100%" size="2" />
133 :<a href="mailto:/"><b>ミッシパーツ the TANTEI stories</b></a>:2007/06/14(木)
18:13:46 ID:D3Bd+twf0
<dl class="thread"><dd>第1話 鳴らないオルゴール<br /><br />
1日目<br />
えーっと、まず、自己紹介からかな。俺は、真神恭介(まがみ きょうすけ)。23歳。駆け出しの探偵だ。<br />
探偵とかって言うとなんだかカッコイイ感じがするだろうけど、<br />
実際のところ、まだ浮気の調査とか猫探しだとかしかやった事が無い。<br />
幼いころ両親を交通事故で亡くして、祖父の手によって育てられたが、最近、その祖父も亡くなったので、<br />
実家を引き払い、思い切ってこの遠羽(とおば)に引っ越してきたばかりだ。<br />
6月上旬のある朝。いつもの通り、ひとりきりのマンションで目覚ましに起こされ、探偵事務所へ歩いていく。<br />
鳴海探偵事務所。所長の鳴海誠司は腕利きの探偵だと評判で、遠方からも依頼が来るという。<br />
俺が遠羽に引っ越してきた理由は、誠司所長が居たからだ。<br />
推理小説に出てくるような、そんな名探偵が実在したら・・・そんな淡い期待を抱いていた。<br />
だけど依頼をするべく鳴海探偵事務所を訪れたら、誠司所長は失踪中で居ないという。<br />
事務員として働いていた所長の娘、京香さんは、訪ねて来た俺を半ば強引に所員にしてしまった。<br />
俺の方も、就職先もまだ決まっていなかったし、探偵になれると聞いてまんざらでもなかった。<br />
だがそれは少し甘い考え方だった。事務所には依頼があまり来ず、いつも貧乏しているのだった・・・。<br />
事務所の窓を下から見上げる。ブラインドが上がっている。京香さんは来ているな。<br />
事務所のドアを開ける。<br />
鳴海京香さん。失踪中の父に代わり、所長代理として事務所を預かっている。<br />
俺より4つ年上だが、もっと若く見える。しっかりしてそうでどこか抜けてる人だ。<br />
今日も依頼が無ければ、自主的に資料整理ということになりそうだ。<br />
京香さんは表のポストに郵便物を取りに行き、怪訝そうな顔をして戻ってきた。<br />
真神くん、東公園の側に「セクンドゥム」っていうアンティークショップがあるの知ってる?、<br />
開いてるんだか閉まってるんだか解らない、やる気の無さそうな店よ、と京香さんは不快そうに言う。<br />
知ってますと答えると、帰りでいいから、この手紙を届けてくれない?とエアメールを差し出された。<br />
間違って届いたものらしい。<br /><br /></dd>
<dt>134 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:14:34 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>その日の帰り、まだ日が高いうちに、セクンドゥムへ向かった。<br />
ちょうど、高校生くらいの少女と、男性のふたり組みが店から出てきたところだ。<br />
店内に入って驚く。まだ日が高いのにカーテンが閉めきってあって、薄暗い。<br />
店の奥で猫の鳴き声がする。その方に目を凝らすと、すっと女性の姿があらわれる。<br />
まるで、猫が女性に変身したかのように見えた。だが、それは目の錯覚だった。黒猫が姿を現す。<br />
つり目の、気だるそうな女性。長い黒髪が印象的だ。年は京香さんぐらいだろうか。<br />
この人がこの奇妙な店の店主らしい。吸血鬼みたいな印象を受けた。<br />
ヘルちゃん、お店に出てきたらダメでしょ、と猫を叱る。<br />
ヘルちゃんって?と疑問に思うと、ヘルシングだからヘルちゃんよと彼女は言う。<br />
吸血鬼にとってヘルシングは天敵なのではないか?と思ったが黙っておく。<br />
要件を済まそうと、エアメールを女性に渡す。<br />
あたしも「ナルミ」だからね、あ、苗字じゃなくて名前よ、「月嶋成美」っていうのと彼女は自己紹介する。<br />
なるほど、宛名にはアルファベットで「NARUMI」としか書いてないから、間違ったのか。<br />
京香とは「腐れ縁」ってやつなの、と成美さんは言う。<br />
京香さんと成美さんは旧知らしいが、仲はそんなに良くないらしい。<br />
あんた、あの子のところにいるの・・・どうしてあんなところで働く気になったの?と成美さんが聞くので、<br />
俺は自分が探偵事務所に入った経緯を話す。<br />
両親は交通事故で亡くなったが、その事故には不審な点があったと、だいぶ後になってから祖父から聞いた。<br />
公式では、両親を跳ねたトラックは運転ミスで事故を起こしたとなっているが、<br />
そのトラックのブレーキパイプは故意に切断されていたという。<br />
俺は交通事故の調査を所長に依頼しようとしていたのだ。<br />
ふと、成美さんの胸元に目が行く。<br />
そこには、金の鎖に吊るされた、雫のような形の、赤い宝石が静かに輝いていた。<br />
自分が長い間探しているものにそっくりだ。<br />
そのペンダントを譲ってくれませんかと頼んでみる。<br />
成美さんは自分のだからいやだと断る。逆に、何故そんなものをほしがるのかと訊ねる。<br />
母の形見なんです、と答える。<br />
残された母さんの写真に、そのペンダントを着けているのが何枚かあるし、<br />
それに自分でも、母さんがそのペンダントを持っているのを覚えている。<br />
きっと事故に遭った当日も身に付けていたに違いないが、現場からは見つからず、<br />
また、遺品をどんなに探しても見つからなかった。<br />
譲ってもらえないのなら、同じのを探してほしいと頼んでみる。<br />
ペンダント自体は宝石的な価値はあまりないが、アンティークだからそれなりの値段はすると成美さんは言う。<br />
成美さんが電卓を叩いて見せた金額は、事務所の安月給ではとても・・・という金額だった。<br />
お金はいいから、この店でバイトしない?と、成美さんは雑用係として店で働く事を提案する。<br />
一応事務所の正社員だし・・・と断ろうとするが、強引な成美さんに押し切られてしまった。<br />
京香さんになんて説明すればいいんだろう、と後ろめたい気持ちになったが、<br />
だが、諦めかけていた母さんのペンダントへの道筋が出来たことは確かだ。<br />
早速仕事を押し付けられる。成美が指差したその先に、セクンドゥムの名が印刷されてある紙袋が置いてある。<br />
中にはオルゴールが入っている。先ほどすれ違ったふたり連れが置いていったものだろう。<br />
近所に柏木というジジイが住んでいるので、そこまで運んでほしいとのこと。<br />
何故自分で行かないのかと訊くと、明るいのやだ、と一言。<br />
まだ日が高いから出歩きたくないのだという。ますます吸血鬼じみてきた。<br /><br /></dd>
<dt>135 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:15:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>柏木邸はすぐに見つかった。門の前に老人が居る。この人が柏木さんらしい。<br />
紙袋を手渡すと、柏木老人はすぐに事情を悟ったようだ。<br />
またか。あの横着者が。・・・鑑定には時間がかかると伝えてくれ、と老人は言う。<br />
セクンドゥムに帰り老人の言った事を伝えてから、家路についた。<br />
公園を横切る。突然、雨が降り出す。<br />
と、女性の悲鳴が聞こえてきた。植木に囲まれた人目につかない一角に、<br />
セクンドゥムから出てきたふたりが立っていた。少女の方は、黒い覆面をかぶった男に、後ろから組み付かれている。<br />
覆面の男は手にナイフを光らせ、少女に向けている。<br />
話している言葉から、少女と男は兄妹だと言うことがわかった。<br />
俺はとっさに助けに入った。妹は無傷で助かったが、兄は犯人のナイフで腹を切られた。<br />
だが命に別状は無さそうだ。覆面男は逃げていった。<br />
兄は救急車で運ばれていった。<br />
俺と妹は警察に連れて行かれ、別々の部屋で事情聴取された。<br />
日付けも変わろうかという頃にやっと開放される。警察署の前に妹が待っていた。<br />
彼女が白い杖を持っていることに気付く。目が不自由だったのだ。<br />
彼女は「嘉納潤」と名乗った。兄は「嘉納浩司」というらしい。<br />
浩司さんは幸い、浅い傷で済んだので、入院せずに済むだろうとのことだ。<br />
助けてくれたお礼がしたい、と潤ちゃんは言うので、携帯電話の番号を教える。<br />
兄妹は身寄りが無く、木原家にお世話になっているとのことだ。<br />
いかにも執事ですと言わんばかりの人物が潤ちゃんを迎えに来た。<br />
お前にも迎えが来てるぞ、と刑事さんに言われた。そこには見覚えの無い男が居た。<br />
年は俺と同じくらいか。髪を短く刈り込んだ、チンピラ風の男。親しげに話し掛けてくる。<br />
男は哲平と名乗ったが、やはりそんな男は知らない。だがその場では知ってる振りをして、警察署を後にした。<br />
哲平は俺を、柏木老人の家へと連れてきた。哲平は柏木邸で居候をしているそうだ。<br />
そして座敷には柏木老人と成美さんが待っていた。<br />
哲平たちは柏木老人をご隠居と呼ぶ。ご隠居は成美さんの鑑定の師匠なんだそうだ。<br />
なぜオルゴールを自分で鑑定しないのかと成美さんに聞いてみたが、<br />
自分では難しすぎるし、面倒くさいとの答え。<br />
酒に弱い成美さんは酔いつぶれて眠ってしまった。<br />
成美さんは日光に弱い体質らしいので、暗いうちに送らなければ、と哲平は言う。<br />
哲平とふたりで成美さんを車に乗せ、セクンドゥムへ送ってから、やっと家に帰った。<br /><br /></dd>
<dt>136 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:18:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br />
携帯電話にさっそく浩司さんから電話がかかってきた。夕食に招待されることになる。<br />
探偵事務所に行き、京香さんに、セクンドゥムの雑用係になってしまったことを話す。<br />
ペンダントのことや両親の事故のことは京香さんには一通り話してあったので、<br />
それなら、ということで許可をとりつけた。<br />
昼過ぎに木原邸に向かう。その大きさに圧倒されてしまう。絵に書いたような、白亜の殿堂という感じの屋敷だ。<br />
あの有名な木原グループの社長、木原権三の邸宅なだけのことはある。<br />
もっとも、権三は最近亡くなってしまったが。<br />
潤ちゃんと浩司さんが出迎えてくれた。ふたりに木原邸を案内される。<br />
木原邸に今住んでいるのは、権三の妻和江、その息子の充(みつる)、嘉納兄妹、<br />
そして執事と住み込みのお手伝いさん。大きい家の割りに淋しい家族構成だ。<br />
中庭で線の細い、神経質そうな青年に会う。充くんだ。大学生だという。<br />
充くんは俺に、何だか気に食わないような態度を示す。<br />
中庭を過ぎ、離れへやってきた。グランドピアノが置いてある。<br />
潤ちゃんがピアノを披露する。素人が聞いても見事だと思う。最近、潤ちゃんに、海外留学の話があるらしい。<br />
潤ちゃんの才能を見抜いた人が、外国で本格的にピアノを学んでみないかと誘っているそうだ。<br />
だが、木原グループの重役についている浩司さんは、会社を辞めて潤ちゃんについて行くわけにもいかないし、<br />
かと言って潤をちゃん一人にするのは心配だし、迷っているのだと言う。<br />
離れを後にして中庭に戻ってきた。<br />
二人に、セクンドゥムに置いていったオルゴールのことを聞いてみる。<br />
あのオルゴールは兄妹の母の形見だが、譲り受けた時にはもう鳴らなくなっていたとのこと。<br />
そして、なんとか直らないものかと鑑定に出したという。オルゴールを直す事に協力するとふたりに約束する。<br />
潤ちゃんは、この事を正式に探偵事務所に依頼したいと言う。<br />
兄妹は早くに父を亡くし、母に育てられてきたが、その母も亡くなったので途方に暮れていたところ、<br />
権三に拾われたのだという。それから、10年ほど、ふたりは充くんと兄弟のように仲良く育ったという。<br />
だが、最近、充くんとはギクシャクしているらしい。<br />
そんな会話を立ち聞きしている人物を、視界の隅に発見する。あのシャツは充くんだ。<br />
夕食の時間になり、屋敷の人々と俺は食堂に集合するが、何だか冷たい空気が漂っている。<br />
終始無言のまま食事を終えた。<br /><br />
3日目<br />
ご隠居に、オルゴールのことを聞いてみる。<br />
オルゴールが鳴らないのは、部品が足りないからだそうだ。<br />
だが今はどの部品が足りないのかまでは解らないらしい。<br />
夜、突然携帯電話が鳴り出す。成美さんからだ。スピリットというバーに呼び出された。<br />
行ってみると、成美さんはお気に入りのカクテルを舐めるように飲んでおり上機嫌だ。<br />
テキーラサンセットというカクテル。サンライズでなくサンセットなところが成美さんらしい。<br />
マスターにオルゴールの話をしてみる。部品がなんとか見つからないものかと。<br />
まぁ、焦らないことですよ、人が作った物なら、人の力でどうにかできないものではないでしょう、<br />
とマスターは言う。<br />
気が付くと自宅に居た。どうやって帰ってきたのか思い出せない。<br />
俺は成美さんと同様、酒に弱く、酔うとすぐ記憶が飛んでしまうのだ。<br />
まぁ無事に帰ってきたことだし、良しとしよう。<br /><br />
4日目<br />
今日は京香さんと一緒に木原邸に足を運ぶ。<br />
潤ちゃんが正式に依頼したいと言うので、依頼書を書いてもらうためだ。<br />
潤ちゃんの部屋で話を聞く。<br />
権三氏が亡くなった後、遺書を管理していた弁護士から、嘉納兄妹宛ての謎の包みを受け取ったとのこと。<br />
権三氏はその包みを、これが本当の遺産だと言っていたとのこと。<br />
包みの中にはカセットテープが入っていた。早速聞いてみたが、数十秒の短いピアノ曲だ。何を意味するのだろう?<br />
離れに行ってみると、ピアノの音が聞こえてきた。<br />
潤ちゃんほどではないにしろ、なかなか上手いと思った。覗いてみると、充くんが弾いている。<br />
充くんは突然、狂ったように指を鍵盤に叩きつけた。不協和音が鳴り響く。<br />
聞いてませんでしたという顔で離れのドアを開ける。<br />
僕の指は、曲を忘れてしまったんですよ・・・と、謎の言葉を残し、充くんは去っていった。<br />
帰りにセクンドゥムへ寄ってみる。あのオルゴールが高価なものだったら、<br />
オークションで売り買いされた記録が残っているだろうから、それで何か解るかもしれない、<br />
調べてみると成美さんは言う。<br /><br /></dd>
<dt>137 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:19:22 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br />
昨日はとても、何か話し掛けられるような状態ではなかったが、今日は機嫌が良いようなので<br />
充くんに話を聞くことにする。<br />
あのカセットテープに入っていた短い曲は、充くんが弾いたものとのこと。<br />
権三が手書きの楽譜を持ってきて、それを弾いたとのこと。<br />
また、浩司さんは自分に対して何かを隠しているとも言う。どうにかして誤解を解きたいという。<br />
さらに充くんは懐かしそうに話す。<br />
屋敷の近くに廃工場があって、子供の頃はそこで浩司さんと仲良く遊んだとのこと。<br />
廃工場に行ってみた。壁に落書きが残されていた。「ひみつきち」そう書かれていた。<br />
それから、充くんと浩司さんの誤解を解くべく奔走する。完全に元通りと言うわけにはいかないが、<br />
なんとか誤解は解けたようだ。<br />
そして、潤ちゃんに会う。今夜、セクンドゥムへ浩司さんと共に訪れると言う。<br />
夜、成美さんと共に、セクンドゥムで待っていると、兄妹がやってきた。<br />
成美さんは、店のパソコンを立ち上げ、調査した結果を見せる。<br />
あのオルゴールはキルジェの作品である。キルジェは有名なオルゴール作家。<br />
オルゴールの曲は自分が作曲したオリジナル曲で、作品は一曲につき一点しか作られない。<br />
つまり、全てが一点もの。曲の題名がそのまま作品名となっている。<br />
そしてあのオルゴールは、「明日から始めよう」という作品なのだそうだ。<br />
最後にオークションで買い取ったのは、木原権三となっている。<br />
兄妹の母が権三の知り合いだとは知らなかったと二人は言う。<br />
また、オルゴールがそんなに高価なものだということも。<br />
キルジェについて書かれているホームページに、MIDIでオルゴールの音色を再現したものが掲載されている。<br />
早速「明日から始めよう」を再生してみる。<br />
この曲、聞いたことがある。あのカセットテープの曲と同じだ。<br />
あ、これ、こっちの方の音のほうが綺麗・・・?ピアニストならではの耳のよさを持った潤ちゃんが言う。<br />
オルゴールの音色の方が、カセットテープの曲より、<br />
シンプルで綺麗な音色だ。むしろ、カセットテープの方が余計な音を足しているようだと言う。<br />
どの音が余計なのかは帰ってからカセットテープをよく聞いてみるとのこと。<br /><br /></dd>
<dt>138 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:20:08 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>6日目<br />
屋敷の離れで潤ちゃんと浩司さんが楽譜と格闘していた。どうやら何が足された音符か判明したようだ。<br />
全部で8つの音が足されている。こんな時はやっぱり、暗号だと疑うべきだろう。<br />
いろはや五十音、アルファベッドなどを音階に当てはめて読んでみるが、<br />
どれも正解ではないらしい。<br />
浩司さんが何かを決断したように立ち上がる。書斎へ行こう、と言う。<br />
権三氏が使っていた書斎へと行く事にする。<br />
潤ちゃんも立ち上がりかけたがそれを制し、離れに残るよう言う。<br />
書斎は静かだった。難しそうな本がたくさんあるのは普通だが、変わった作り付けの植木鉢が特に目を引く。<br />
一通り調べてみたが、音符の解読に役に立ちそうな物は何も無い。<br />
こんな人気の無い所へ連れてくるのは何か別の目的があるのだと悟る。<br />
実は、潤は権三の本当の娘なんだ、と浩司さんが言う。<br />
浩司さんの父は浩司さんが生まれた後、すぐに亡くなってしまい、母は権三の愛人になったとのこと。<br />
だが、子供が出来たと解った途端、母は身を引き、権三の前から姿を消した。<br />
母の死後になってやっと居所を突き止めた権三は、二人を引き取ったのだという。<br />
夕食の時間です、と執事が呼びに来た。浩司さんと俺は食堂へ降りる。<br />
そういえば、潤ちゃんを離れに置き去りにしてしまった。離れに向かうが、潤ちゃんの姿は無い。<br />
屋敷中探すがやっぱり居ない。また離れに戻ると、戸口に潤ちゃんが現れた。<br />
あのときのように、後ろから組み付かれ、ナイフを向けられている!<br />
そのナイフはあのときと同じナイフだ。そう、あの覆面の男は、充くんだった。<br />
充くんと潤ちゃんは宵闇に消えた。二人はどこに行っただろうと考える。そうだ、廃工場!<br />
急に走ったので傷口が開いてしまった浩司さんを残し、俺はひとりで廃工場へ向かう。<br />
廃工場の中に入り、慎重に奥へと進んでいく。<br />
使われなくなって放置されている機械が並ぶ奥に、人の気配がする。<br />
その方向に進んでいくと、充くんがナイフを構え立っていた。<br />
少し離れた所に潤ちゃんが寝かされている。<br />
俺は充くんを説得する。好きだったのに、妹だったなんて、と充くんは言う。<br />
どうやら、書斎での話を聞かれていたらしい。そして、発作的にこのような行動に・・・。<br />
充くんはまだナイフを振りかざして襲ってくるようなそぶりを見せる。<br />
灯油を撒いた、これで火をつければおしまいさ、と充くんは言う。<br />
そして、左手でポケットを探っている・・・ライターを出そうとしているのだ。<br />
よせ、こんな所で一緒に死んで何になる?死んでから潤ちゃんにどんな顔を合わせるつもりだ?<br />
諦めず、なおも説得を続ける。やがて、行けよ、と充くんはナイフを下ろして言う。<br />
急いで潤ちゃんを抱きかかえる。良かった。気絶しているだけのようだ。息がある。<br />
そして一目散に出口へ走る。・・・まさか?<br />
工場を出たところで身を伏せる。<br />
背後で、灯油に引火したとは思えないほどの大爆発が起こる。<br />
これでは、充くんは、もう助からないだろう。<br />
潤ちゃんが意識を取り戻し、身を起こす。真神さん、あの、ここは?と訊くので、<br />
秘密基地だよ、と答えた。<br />
近くの病院に潤ちゃんと俺は運ばれた。<br />
幸い、ふたりとも怪我は対した事は無い。ただ、潤ちゃんは精神的なショックが大きいだろう。<br />
じゃあ、わたしの本当のお父様は?と潤ちゃんが聞いてくるので、権三さんだよと答える。<br />
充さんがわたしのお兄様?と聞くと、執事が口を挟んだ。<br />
いいえ、充様は潤様とは血が繋がっておりません、とのこと。<br />
執事が言うには、充くんは和江夫人と愛人の間に出来た子だということだ。<br />
なんという皮肉・・・。<br /><br /></dd>
<dt>139 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 18:21:00 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>7日目<br />
木原邸のリビングに関係者一同が集合している。<br />
今度こそ、暗号を解かなくては。<br />
テーブルの上にオルゴールについて、そして音符についての関係資料を広げる。<br />
ふぅん。「明日(あす)から始めよう」って言うのか、この曲は、と誰かが資料を見て言う。<br />
そうか、明日は「あした」とも「あす」とも読める。ずっと「あした」と読むと思っていた。<br />
潤ちゃんは「あす」と聞いてピンと来たようだ。ドイツ語の音階だと、As(アス)という音があるらしい。<br />
As音から、ABC・・・とアルファベットに置き換える。すると、「NISI UEKI」という文字列になった。<br />
西の植木・・・たぶん、書斎のあの作り付けの植木鉢だ。<br />
書斎へ行き、植木鉢の奥の壁を調べると、木を張り合わせたような跡がある。<br />
叩いてみると空ろな音がする。そこをこじ開けると、ビニール袋に入った3冊のノートが出てきた。<br />
これは・・・裏帳簿だ、浩司さんが愕然として言う。<br />
木原グループの不正が載っている帳簿だ。ある意味、遺産かな。<br />
でも、これは浩司さんには役に立つだろうけど、潤ちゃんには、何か無いのか?と思い、<br />
もう一度ビニール袋を検めてみた。細い、金属の棒が出てきた。<br /><br />
半月後。<br />
浩司さんは裏帳簿の内容をすべて公開した後、責任を取る形で辞任してしまった。<br />
そして、潤ちゃんは海外留学に行く事になり、浩司さんはついて行くことになった。<br />
俺は空港に見送りに来たところだ。紙袋から小さな木の箱を取り出し、潤ちゃんの手のひらに乗せてやる。<br />
そっと蓋を開けると、「明日から始めよう」が流れ出した。<br />
最後に出てきた金属の棒は、足りない部品だったのだ。たちどころにオルゴールは直った。<br />
潤ちゃんはオルゴールを抱きしめて、言う。ありがとう、お父様。<br />
To Be Continued<br /><br /></dd>
<dt>140 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:07:48 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>第2話 赤いカメオ<br /><br />
1日目<br />
7月の土曜日のある朝。<br />
自宅近くの繁華街、とおば東通りを歩いていると、女の子の悲鳴が聞こえた。<br />
見ると、ショートカットの高校生くらいの女の子が困った顔で立ち尽くしている。<br />
持っていた紙袋の底が破けてしまったので、路上にモノをぶちまけたようだ。<br />
俺はぶちまけたモノを一緒に拾ってやることにした。<br />
事務用品にお菓子、そして化粧品のようなもの。これはあまり縁が無いので解らないな。<br />
とりあえず、拾ったモノを上着にくるんで探偵事務所まで行く事にする。<br />
事務所で新しい紙袋をもらい、詰めなおし、女の子に渡す。<br />
女の子にとても感謝される。彼女は唯(ゆい)と名乗った。<br />
唯ちゃんは、とおば東通りの先、天狗橋を渡り、手を振って元気に帰っていった。<br />
お昼は行きつけのインターネットカフェ「サイバリア」で食べる事にする。<br />
俺に声をかけるのは、サイバリアの名物店員、奈々子だ。<br />
奈々子は典型的なイマドキの女子高生といった感じである。<br />
奈々子は、今は都市伝説のサイトが面白いと教えてくれた。<br />
午後にセクンドゥムに顔を出すと、スーツを着た中年の男が怒ったように店を出て行くところだった。<br />
成美さんはなにやら悪戯っぽい笑みを浮かべている。<br />
その手には楕円形のカメオのブローチが握られている。<br />
ブローチを見せてもらった。赤の地に白く、貴婦人の横顔が浮き出るように彫刻されたものだ。<br />
よく見ると、貴婦人の胸元のところに小さなくぼみがある。<br />
そこに宝石が嵌るはずよ、宝石が無いから、価値はそれほどないわね、と成美さんが言う。<br />
なるほど。宝石があったら、貴婦人が首飾りを着けているように見えるな。<br />
先ほどの男は、それは呪いのカメオだとか何とか騒いでいたが、<br />
成美さんは、そんなことは真に受けず二束三文の値段でブローチを買い取ったらしい。<br />
成美さんが言うには、こういうのは詐欺師がよくやる手だという。<br />
呪いのカメオだとか言って上手い具合に芝居して、ブローチを手元に残しながらお金だけ貰ってしまうのだという。<br />
どうやら成美さんは、さっきの中年男を詐欺師と勝手に決め付けているらしい。<br />
ブランド物のネクタイを締めて、身なりが良さそうだったからとのこと。<br />
もしあの男が詐欺師なら、ブローチを取り返しに来るのでは、と成美さんは言う。<br />
そして、もう一人、午前中にも、若いメガネをかけた男がカメオのブローチをを探しに来たとのこと。<br />
今日だけで二人もカメオに関わる人物が現れた。これは本格的に何かあると成美さんは睨んだようだ。<br />
都市伝説として語られている、手に入れると不幸に会うという呪いの赤いカメオ。<br />
それがこの街のどこかで目撃されたか、あるいは、今手にしているこれが呪いのカメオかも・・・?<br />
呪いのカメオなら、それには赤い宝石が嵌っているはずだ。<br />
成美さんは、呪いのカメオを手に入れるか、あるいはこのカメオに嵌っている宝石を探すようにと俺に命じる。<br />
何でそんな物騒なもの欲しがるのかと訊ねると、成美さんは面白そうだから、と一言。<br />
夜、帰宅してからパソコンを立ち上げ、メールをチェックする。<br />
奈々子からメールが来ていた。話題の都市伝説のサイトのURLを教えてくれた。<br />
試しに見てみることにする。<br />
なになに、天狗橋に男の幽霊が出る・・・か。<br />
呪いのカメオの事は特に書いていなかった。<br /><br /></dd>
<dt>141 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:08:32 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br />
お昼には少し早い時間に探偵事務所の前に行くと、奈々子が待ち伏せていた。今日は日曜日だっけ。<br />
奈々子は両手にビニール袋をぶら下げていた。駅前のバーガー屋だ。<br />
京香さんと一緒に食べようという。事務所に入り、三人でバーガーを食べる。<br />
テレビをつけるとお昼のニュースをやっている。<br />
―今朝、人気アイドルの美幸さん(18)が、スターライツビルの駐車場で死亡しているのが発見されました。<br />
―美幸さんは、屋上から転落したと見られ、警察では自殺とみて捜査しています。遺書などは見つかっていません。<br />
テレビには気の強そうな女の子の映像が映し出されている。<br />
俺と京香さんは解らないのでポカンとしていたが、奈々子は驚いた表情だ。<br />
美幸ちゃんが自殺なんて嘘だよ。自殺なんかする子じゃない、と奈々子は言う。<br />
美幸ちゃんは、歌番組TRY×FLY(トライバイフライ:略してトラバイ)に出ているアイドルだ。<br />
アイドルと言ってもデビュー前である。視聴者の投票でアイドルデュオユニットを選出しようという、<br />
トラバイの人気企画で最終選考に残ったうちのひとりである。<br />
美幸ちゃんの他に、一番人気の明日香ちゃん、補欠合格の唯ちゃんと三人の中からふたりが選ばれてデビューとなる。<br />
そして、最終投票の結果がもうすぐ出るというときに、美幸ちゃんは死んだ・・・。<br />
美幸ちゃんはもともと、そこそこ人気があったが、最近、唯ちゃんの人気が上がってきたところだという。<br />
もしかしたら落ちるかも知れない。プライドが高い美幸ちゃんはそれが嫌だったのかな、とのこと。<br />
でも、自殺するなんて――。<br /><br />
3日目<br />
セクンドゥムへ行くと、成美さんが退屈そうな顔をしている。<br />
まだ詐欺師はカメオを取り返しに来ないとのこと。<br />
午後にサイバリアに行くと、哲平と奈々子が意気投合している場面に遭遇する。<br />
ふたりとも、三人の中では美幸ちゃんが一番好きなのだという。<br />
早速ネットでは美幸ちゃんの死に対して様々な噂が飛び交っている。<br />
補欠合格した唯ちゃんが美幸ちゃんを突き飛ばしたなどと書いているひどい掲示板もあった。<br />
泣き虫の唯ちゃんに、美幸ちゃんは辛く当たっていたという。それを恨みに思って・・・ということらしい。<br />
俺は三人のことを何も知らなかったので、とりあえずネットで調べてみる。<br />
一番人気の明日香ちゃん(18)は、とびきりの美少女だ。他の二人とは違うオーラが出ている。<br />
補欠合格の唯ちゃん(16)は妹系キャラといった、守ってあげたくなる感じの少女だ。<br />
そう言えば、スターライツビルはここから歩いても行けるようなところにある。<br />
唯という名前・・・昨日会ったあの女の子か?と思ったが、どの画像を見ても、あの子とは別人のように思える。<br />
そして、美幸ちゃん。気が強そうな女の子だ。実際気が強いのだと奈々子が言う。<br />
選考に落ちても、別の道で頑張ってほしかった、<br />
落ちたとしてもアイドルの道が完全に閉ざされたわけではないのだから・・・と哲平は残念そうに言う。<br />
事務所に帰ると、珍しく依頼が来ていると京香さんが言う。スピリットで待ち合わせだそうだ。<br />
夜、京香さんと一緒にスピリットに行く。<br />
依頼人は亀山という男。<br />
スターライツプロ所属の、あのトラバイの人気企画の三人(Sユニットと呼ばれている)のマネージャーだ。<br />
美幸ちゃんの死は自殺ということで片付けられたが、納得出来ないので調べてほしいとのこと。<br />
また、最近、スターライツビルに女の幽霊が出るという噂があるので、それも調べてほしいそうだ。<br />
明日、スターライツビルに行くことになった。<br /><br /></dd>
<dt>142 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:09:14 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>4日目<br />
事務所で京香さんと落ち合ってからスターライツビルへ向かう。<br />
スターライツビルは天狗橋のさらに向こうの、7階建てのビルだ。<br />
1階の受付の女性に来意を告げると、亀山さんが現れた。<br />
亀山さんにビル内部を案内される。スターライツプロは都心のビルに本社機能を移しており、<br />
このビルももうすぐ引き払われるので閑散としている。<br />
その空き部屋にSユニットの三人を住み込みさせ、<br />
日常生活に密着したドキュメンタリータッチの番組内容にしたのがウケた原因らしい。<br />
1階は受付と事務所と待合室、2階にはSユニットの三人の部屋、3階から上はほとんど使っていない。<br />
7階に会議室があり、そして屋上。<br />
エレベーターで7階まで行った後、階段を上って屋上へ出る。<br />
美幸ちゃんが飛び降りたと思われる場所には、靴がきちんと揃えてあったそうだ。<br />
それが警察が自殺と断定した理由だ。今、その場所には風化しそうなチョークの跡が残るだけ。<br />
誤って転落することも考えられなくはないが、手すりは低くない。<br />
2階へ降りて美幸ちゃんの部屋を調べる。生前のままにしてあるらしいが、特におかしい所は無い。<br />
1階へ戻り、事務所へ行く。専務の橘さんが居るので挨拶するが、<br />
探偵と聞くと橘専務はあからさまに嫌そうな顔をする。<br />
待合室はSユニットの女の子たちがテレビを見たりくつろいだりする場所だ。テレビとソファが置いてある。<br />
受付に戻ってきた。受付に座っているのは事務を担当している長井という女性だ。<br />
このビルにはSユニットの女の子たちと亀山さん、長井さんと、不在がちな橘専務しか居ないらしい。<br />
美幸ちゃんが倒れていたという駐車場に行く。消えそうなチョークの跡。ちょっと血痕も残っている。<br />
そこにはたくさんの花束が置かれている。<br />
またビル内に入る。女の子たちが住んでいるせいもあって、普段から出入り口は施錠されているそうだ。<br />
事件当日も、部外者が侵入したとは考えられない。<br />
事務所に戻るとSユニットの二人が帰ってきた。<br />
明日香ちゃんは実物も美人だ。そして、唯はやはり、あのとおば東通りで会った女の子だった。<br />
唯ちゃんは普段は普通に見えるが、衣装を着てカメラの前に立つと別人になるのだという。<br />
そういうギャップも人気の一因かもな。<br />
関係者一同が揃ったところで、事件当日のことを聞く。<br />
橘専務は当日は朝から不在で、帰ってきたときはもう美幸ちゃんが死んだ後だったとのこと。<br />
唯ちゃんは当日、買出しに行っていたとのこと。とおば東通りで会ったのは買出しの途中のことだったのだ。<br />
そして、事件の少し前に、屋上で美幸ちゃんと会っていたとのこと。<br />
何か怒ったような様子ではあったが、悩んでいるとかそんな様子は無かったそうだ。<br />
明日香ちゃんは高所恐怖症なので、屋上へは撮影の時に一ヶ月前に行ったのが最後だそうだ。<br />
幽霊のことも聞いてみる。明日香ちゃんは見たことがないと言う。<br />
唯ちゃんは、ときどき、白い人影をみると言う。髪が長くて美幸ちゃんのようだと。<br />
話が終わって事務所を出るとき、唯ちゃんに声をかけられる。<br />
美幸ちゃんは自殺するような人じゃない。確かに、辛く当たられたりもしたが、<br />
それを恨んだりしていない。むしろ感謝している、美幸ちゃんの死の真相を解明してほしい、と唯ちゃんは言う。<br /><br /><br /></dd>
<dt>143 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:11:07 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br />
今日は一人でスターライツビルにやって来た。<br />
ビル内に入るとものものしい雰囲気だ。<br />
長井さんに話を聞くと、なんと昨日の夜、待合室に幽霊が出たとのこと。<br />
待合室で亀井さん、長井さん、唯ちゃんと明日香ちゃんと4人でテレビを見ていたところ、<br />
突然テレビのチャンネルがメチャクチャに変わり、その後部屋の照明が突然消え、<br />
怖くなって待合室から逃げ出したところ、白い人影を見たという。<br />
だれかの悪戯か?待合室に行き、テレビやリモコン、照明も調べてみたが、おかしなところは無い。<br />
橘専務は不在だったので他の4人に聞き込みをしたが有力な証言は得られなかった。<br />
誰かが嘘をついている。<br />
その後、また屋上に行ってみると、小さな赤いガラス片を発見する。<br />
宝石のようにも見えなくは無いが、このように砕けているところをみるとやはりガラスだろう。<br />
ハンカチに包んで持っておくことにする。<br />
駐車場にも行ってみた。すると美幸ちゃんが倒れていたチョークの跡より少し離れた所に、<br />
何かピンク色のものが落ちていることに気付く。拾い上げると、綺麗な花模様がついている。<br />
自分では何だか解らなかったが、これはつけ爪だと長井さんが指摘した。<br />
事務所に行くと橘専務が帰ってきていた。全員にガラス片とつけ爪を見せる。<br />
どうやらつけ爪は美幸ちゃんのものらしい。皆がこのつけ爪を美幸ちゃんがつけているのを見たことがあると言う。<br />
ガラス片については何も得られなかった。アクセサリーの一部のようだとは言っていたが。<br />
ビルを後にしてサイバリアに行き奈々子に会う。<br />
つけ爪を見せてみると、とおば東通りの端にリューヌというネイルサロンがあると教えてくれた。<br />
リューヌの前に行ってみた。「レディースオンリー」の看板がある。<br />
女性に同伴を頼まないとダメらしい。誰に頼もう?京香さん?それとも・・・。<br /><br />
6日目<br />
探偵事務所に行き、京香さんにこれまでのことを報告する。<br />
思い切って京香さんにリューヌへの同行をお願いすると、京香さんは気が進まない様子だ。<br />
京香さんはそういうところに行くと、勧められたものを断りきれなくて、<br />
結局たくさん買ってしまうことになってしまうから行きたくないのだと言う。<br />
何か勧められたらひとつだけ買いましょう、必要経費ということで、と言って納得してもらう。<br />
京香さんとリューヌに入って店員につけ爪を見せると、確かにこの店で作ったもののようだという答え。<br />
だが、今は担当者が不在なので本当にこの店の物なのか、美幸ちゃんのものなのかは解らないとのこと。<br />
また出直そうと思っていると、京香さんがマニキュアを次から次へと勧められているところだった。<br />
ひとつだけ買ってリューヌを出る。黒い、どこかで見たような包装だ。<br /><br /><br /></dd>
<dt>144 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:11:54 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>7日目<br />
今日はトラバイの撮影があるというので、亀井さんと一緒にテレビ局へ行く。<br />
テレビ局は電車で都心方向に数時間行った所にある。<br />
Sユニットの企画は主にスターライツビル内での撮影なので三人が局へ行く事はあまり無いというが、<br />
スタジオに居る司会者やスタッフたちは皆Sユニットのことを心配してくれている。<br />
企画は突然中断されてしまったので視聴者からも反響が多いそうだ。<br />
そのうち明日香ちゃんと唯ちゃんの二人でデビューする事になるのだろうとは思うが、<br />
それがいつになるのかはまだ未定のままだ。<br />
それと、気になる噂を耳にする。<br />
大門寺局長からカメオのブローチを贈られた女性芸能人は売れるというジンクスがあるという。<br />
それは逆に、局長の愛人になれというメッセージでもあるかも、という人もいる。<br />
Sユニットの誰かがカメオを贈られたとかいう噂もある。<br />
そのブローチを実際に見た人も居た。カメオの貴婦人の胸元に緑色の宝石が嵌っているのだそうだ。<br />
成美さんのところにあるブローチと似てる・・・。<br />
局長に会って話を聞きたいところだが、今週に入ってから謎の失踪を遂げているという。<br /><br />
8日目<br />
京香さんを伴ってスターライツビルへ向かう。<br />
事務所に行くと、橘専務が怒っていた。幽霊騒ぎなんてくだらないというので、<br />
もう犯人はだれだか解っている、解決してみせると反論する。<br />
もちろんそれはハッタリだが、ある程度は目星が付いている。<br />
女の子たちはレッスン中ということで不在だった。<br />
申し訳ないが唯ちゃんの部屋を調べさせてもらう事にする。<br />
ただ、実際に部屋に入って作業をするのは京香さんだが。<br />
唯ちゃんの部屋には電子レンジやホットプレートが置いてあった。部屋で自炊しているらしい。<br />
そして洋服ダンスのな中ら、白い衣装と長い髪のかつらが・・・。<br />
唯ちゃんの部屋で細工を施し、レッスンから帰ってきた女の子たちと亀山さん、長井さんを待合室へ集め、<br />
幽霊騒ぎのとき起こったことを再現してみせる。<br />
そう、それは唯ちゃんの仕業だったのだ。唯ちゃんは、美幸ちゃんの死の真相を解明してほしい一心で、<br />
このようなことをしたのだという。<br />
唯ちゃんはポケットから何かを取り出した。銀のペンダントだ。<br />
これは、美幸ちゃんがいつも大切に持っていたというペンダントだ。<br />
事件当日、2階の廊下に落ちていたのを拾ったのだという。<br />
事件の直前、美幸ちゃんに会ったときに返そうと思っていたが返せずに、<br />
それ以降ずっと持ち歩いているそうだ。<br /><br /><br /></dd>
<dt>145 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:13:30 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>9日目<br />
明日香ちゃんのダンスシューズの底に赤いガラス片が刺さっているのを、唯ちゃんが発見する。<br />
ハンカチにくるんだものと形を合わせると、確かに合う。<br />
このガラス片が落ちていたのはビルの屋上だ。<br />
明日香ちゃんは高所恐怖症だから、最近は屋上に行ってないと言っていなかったか?<br />
明日香ちゃんを問い詰めると、たしかに事件当日、屋上で美幸ちゃんと会ったと言う。<br />
そして揉み合いになったとも。明日香ちゃんは最近長袖の服を着ている。<br />
袖を上げると、傷跡があった。美幸ちゃんのつけ爪で付けられた傷だ。<br />
美幸ちゃんが転落したあと、つけ爪は明日香ちゃんが全部剥がしたとのことだが、<br />
落ちたときに剥がれた一枚だけは回収されなかった。それが駐車場で発見された。<br />
だが、揉み合いになったのは認めるが、自分が突き落としたのではないと明日香ちゃんは主張する。<br />
高所恐怖症の明日香ちゃんがわざわざ屋上まで行かなくてはならなかった理由を聞いてみる。<br />
それは美幸ちゃんにカメオの件で呼び出されたからだと。<br />
噂どおり、大門寺局長は明日香ちゃんにカメオを贈っていたのだった。<br />
事件当日の前日、突然局長がスターライツビルにやってきて、<br />
7階の会議室で明日香ちゃんと密会したのだと言う。<br />
そのとき局長は、Sユニットの企画は出来レースで、<br />
明日香ちゃんと美幸ちゃんが合格する予定になっていると話した。<br />
だが、最近唯ちゃんの人気も上がっていることだし、<br />
気が強くて扱いにくそうな美幸ちゃんを落そうか、などと言う。<br />
そして会議室を出た後、カメオをふと見ると、宝石の色が赤くなっていた。<br />
これが呪いのカメオなのかと驚いて、明日香ちゃんはカメオを廊下に落としてしまった。<br />
局長は、そのカメオは気味が悪いから手放す、そのうち新しいのを買ってやるとか言って<br />
カメオを拾って持って行ってしまったとのこと。<br />
翌日、その密会の内容を聞いていた美幸ちゃんは屋上へ明日香ちゃんを呼び出した。<br />
美幸ちゃんは、自分が選考に漏れるのは一向に構わないが、出来レースは、不正は許さないと言う。<br />
美幸ちゃんは明日香ちゃんに、小さな赤い宝石を見せる。<br />
呪いのカメオに嵌っていた宝石かと思って明日香ちゃんはびっくりする。<br />
揉み合った末、明日香ちゃんは宝石を奪うが、すぐにガラスで出来たダミーだと解る。<br />
悔しくなった明日香ちゃんはガラスを足で踏みつけた。そのときガラスが砕けて靴に刺さったのだ。<br />
不正の証拠であるカメオは人に頼んで探してもらっているので、それが見つかり次第、<br />
不正を公表すると美幸ちゃんは言う。<br />
明日香ちゃんはその後、何もせずに屋上を後にしたとのこと。<br />
だが証拠は揃いすぎていた。明日香ちゃんは逮捕されてしまう。<br />
橘専務も参考人という事で警察に連れて行かれた。<br />
スターライツビルには報道陣が押し寄せると思うので、もう居られないだろう。<br />
唯ちゃんたちや京香さん、何故か成美さんも加わり、皆でご隠居の家に泊まることになった。<br /><br /><br /></dd>
<dt>146 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:15:27 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>10日目<br />
ふと気になった事があり、唯ちゃんから美幸ちゃんが大切にしていたという銀のペンダントを借りる。<br />
平べったいペンダントヘッドをよく見ると、継ぎ目があるのがわかる。そこに爪を差し込むと・・・開いた。<br />
そこには写真が入っていた。ロケットペンダントだったのだ。<br />
メガネの繊細そうな青年が映っている。反対側を見てみると、「SHINYA」と小さく彫ってある。<br />
「しんや」という人なのか。<br />
唯ちゃんは、しんやという名前に聞き覚えがあると言う。<br />
美幸ちゃんは、たまに電話でしんやという人と話していたと唯ちゃんは言う。<br />
セクンドゥムにカメオを探しに来た男と特徴が似ているので成美さんにロケットを見せると、<br />
この男のようだが写真が小さくて詳しい事はわからないと言う。<br />
こうやって写真を持ち歩くということは、美幸ちゃんと彼は付き合っていたか何かかな?<br />
なんとかして彼に会えないものかと思案する。<br />
何気なくテレビを見ると、ワイドショーの時間だった。<br />
まだ容疑がかかっているだけなのに明日香ちゃんが犯人扱いされていた。<br />
そうだ、彼もこうしてテレビを見ているに違いない。<br />
そして、美幸ちゃんに犯人が逮捕されたことを報告しに行くのでは・・・?<br />
哲平と一緒にスターライツビルに走る。駐車場に、メガネの青年が居た。<br />
青年は何故か逃げるので哲平と二人で追いかけ、捕まえた。そう、彼が「進也(しんや)」くんだ。<br />
進也くんを、唯ちゃんが待っている東公園へ連れて行き、話を聞く。<br />
進也くんは、カメオを探す事を美幸ちゃんに頼まれていたこと、<br />
そしてセクンドゥムにもカメオを探しに来た事を認めた。<br />
ふたりはやっぱり付き合っていたが、美幸ちゃんがスターライツビルに住むようになってからは電話ぐらいしかしていないらしい。<br />
美幸ちゃんは、唯ちゃんに辛く当たるのは唯ちゃんのためだから、本当は嫌だけど仕方ないと言っていたそうだ。<br />
そして、最終選考に漏れたなら、また進也くんと一緒に映画でも見たいね、とも。<br />
やはり、美幸ちゃんは選考に漏れるのが嫌だとか、そんな理由で自殺するような人ではないのだ。<br />
唯ちゃんは進也くんに、銀のペンダントを渡す。<br />
美幸ちゃんが大切にしていたものだと判ると、進也くんはペンダントをぎゅっと握り締める。<br />
進也くんは首から同じデザインのペンダントを外して、唯ちゃんに手渡す。<br />
美幸ちゃんの笑顔は唯ちゃんが持っていたほうがいいと、進也くんは言う。<br />
唯ちゃんはそっとペンダントを首にかけた。泣き出しそうだが気丈にも涙を堪えていた。<br />
ここで泣いたら、また美幸ちゃんに怒られてしまうから、と。<br /><br /><br /></dd>
<dt>147 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:16:48 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>11日目<br />
そういえば成美さんのところにカメオを売りに来た男、あれは大門寺局長ではないのか?<br />
セクンドゥムへ行き、店のパソコンで局長の画像を探してみる。<br />
自分も会っているので覚えているはずだが、記憶があいまいだ。<br />
成美さんは局長に間違いないと言う。そうすると、この宝石の無いカメオが呪いのカメオ?<br />
明日香ちゃんは、7階の会議室を出た後ブローチを落としたと言っていた。<br />
きっと、その拍子に宝石が外れてしまったのだ。<br />
まだ誰も拾っていなければ、そこにまだ宝石はあるはず・・・。<br />
成美さんにカメオを借り、スターライツビルに向かう。<br />
7階の廊下で宝石を探す。唯ちゃんも一緒に探してくれたおかげで、割とすぐに見つかった。<br />
綺麗な緑色の宝石だ。カメオの開いている穴にピッタリと収まった。<br />
あとは、またリューヌに行って確かめなくては。今回は奈々子に同行を頼む事にする。<br />
担当者はまた不在だったが、つけ爪が美幸ちゃんのものだったという事が判明した。<br />
そして、つけ爪が出来上がったのは事件当日の朝で、取りに来たのは美幸ちゃん本人ではなく、<br />
ショートカットの女の子だったことも判った。<br />
あの朝、唯ちゃんと一緒に拾い上げた物を思い出してみる。<br />
事務用品にお菓子、そして化粧品のようなもの――黒い包み、あれはこの店の包装だ。<br />
探偵事務所に行って考えを整理する。<br />
関係者たちは全員、あのつけ爪を見た事があると言っていた。<br />
だが、ひとりだけ見る事が出来なかったはずなのに、見たと言っている人が居る。<br />
当日不在にしていたという橘専務だ。<br />
後で美幸ちゃんの死体を見たとしても、明日香ちゃんがもうつけ爪を剥がした後だ。見るのは不可能だ。<br />
でも見ているという事はつまり、当日、美幸ちゃんと会っていたという事だ。<br />
警察に確認したところ橘専務は、事情聴取を終え、先ほど釈放されたとのこと。<br />
京香さんと一緒にスターライツビルへ急ぐ。もう日は暮れていた。<br />
受付の所に亀山さんが倒れていたが、大した怪我ではないようだ。<br />
橘専務が酒瓶を片手に、唯ちゃんを追いかけていったとのこと。<br />
唯ちゃんと橘を探しながらビルを上へのぼり、屋上へ着く。<br />
唯ちゃんの悲鳴が聞こえた。橘は半分に割れた酒瓶の切り口を唯ちゃんに向けている。<br />
時間稼ぎに事件のことを追及すると、橘は口を割る。<br />
局長が明日香ちゃんにカメオを贈ったことも、出来レースも全部知っていたと言う。<br />
局長と明日香の密会も、橘がお膳立てしたものだと言う。会話の内容も知っていた。<br />
そして、口封じのため自殺と見せかけて美幸ちゃんを殺したのも橘だった。<br />
屋上で美幸ちゃんを突き飛ばしてから、靴をきちんとそろえて置いたのだと言う。<br />
何気なくポケットからカメオを取り出して見ると、宝石が赤くなっていた。<br />
橘の注意が唯ちゃんから逸れたときに、唯ちゃんは逃げ出した。<br />
逆上して、橘が瓶を振り上げ、襲い掛かってくる。驚いてカメオを落としてしまった。<br />
そのとき、バタンと音がして、屋上の入り口のドアが開いた。そこには、白い服で長い髪の女性が立っている。<br />
あれは、唯ちゃんが持っていた、幽霊の衣装だな。<br />
遠くて顔がよく判らないが、きっと、京香さんが化けているのだろう、と思った。<br />
女性はつかつかと橘に歩み寄る。橘は、美幸ちゃんに似ている姿を見てすっかり動揺し、後ずさりする。<br />
女性は橘を手すりのところまで追い詰めた。そして、ふたりの体がフワリと浮いたかと思うと、<br />
手すりを乗り越え、駐車場へ落ちた。<br />
京香さんが落ちた?と思い、慌てて下を見たが、そこには橘の死体があるだけで、白い服の女性は消えていた。<br />
後から遅れて京香さんが屋上にやって来た。<br />
すると、あの女性は――。<br /><br /></dd>
<dt>148 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:17:47 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd><br />
それから何週間かたったある日の夜。<br />
関係者一同はスピリットに集まっていた。未成年の奈々子まで来ている。<br />
亀山さんも来たがっていたが、忙しいので来られないという。<br />
奈々子と哲平で都市伝説の話題になった。あの、天狗橋に幽霊が出るとかいうあの話だ。<br />
ふたりが言うには、幽霊はスーツ姿の男でブランド物のネクタイを締めているという。<br />
都市伝説というにはちょっと具体的過ぎると思っていると、何かをふと思い出す。<br />
そう、失踪しているという局長に特徴が酷似している。<br />
成美さんが怪しいと問い詰めると、噂を流したのは自分だと認めた。<br />
だってあの詐欺師、カメオを取りに来ないから詰まらなかったんだもんとのこと。<br />
だから詐欺師じゃないって。あのカメオを本当に呪いのカメオだと思って手放したかったんだろうが。<br />
結局、あれ、本物の呪いのカメオだったのに、恭介ったら失くしちゃうんだもん、と成美さんが言うが、<br />
それには返す言葉も無い。<br />
あの後、ビルの屋上で落としたカメオを探してみたが、どんなに探しても見つからなかった。<br />
(あのカメオに嵌っていた宝石は、アレキサンドライトだと思われる)<br />
テレビを見ていた奈々子が始まるよ~と皆に声をかける。そこにはひとりきりで歌う唯ちゃんの姿が映っていた。<br />
明日香ちゃんはいろいろあった責任を取るように引退してしまったのだ。<br />
そのせいもあって、唯ちゃんのデビューが予定より繰り上がったそうだ。<br />
どこかで聞いてくれてる明日香ちゃん、そして天国で応援してくれている美幸ちゃんのために、唯ちゃんは歌う。<br />
その胸元には銀のロケットが光っていた。<br />
To Be Continued<br /><br /><br /></dd>
<dt>149 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 19:44:37 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>第3話 託されたペーパーナイフ<br /><br />
1日目<br />
いつものように目を覚ます。もう終戦記念日か。<br />
朝のニュースを見ていると哲平が訪ねてきた。<br />
昨夜、柏木邸の郵便受けに紙袋が入っていたとのこと。<br />
差し出されたそれは何の変哲もない紙袋だった。中には殴り書きのメモとペーパーナイフが入っていた。<br />
ペーパーナイフは、全体は銀色で柄のところは龍の形をしており、青い宝玉が嵌っている。<br />
一応骨董品になるのかな。メモには、哲平宛てに、<br />
このペーパーナイフを誰にも知られずに、しばらく預かってほしいということが書かれていた。<br />
差出人は亮太という、哲平の舎弟だという。<br />
昔、哲平が不良たったとき、ふたりでよくでつるんでいたらしいが、今はどこに居るかも判らないらしい。<br />
亮太の写真を見せてもらう。ご隠居の所に居候してからは会ってないらしく、写真も2年前のものだが、<br />
髪型などが変わってなければ今も変わらない姿だろうという。<br />
亮太が何かヤバいことに巻き込まれているらしいので協力してほしいと哲平は言う。<br />
どうせ暇だし協力することにする。ペーパーナイフを紙袋に戻し、上着の内ポケットに入れた。<br />
夜になったら、ふたりがつるんでいたという枕ヶ碕(まくらがさき)へ行ってみようという約束をして<br />
哲平と別れた。夕方、天狗橋で哲平と合流してから枕ヶ碕へ向かう。<br />
枕ヶ碕は天狗橋から南へ行った地域で、治安の悪い場所として有名である。<br />
枕ヶ碕に着いた。潰れた店や廃屋が並んでおり、人影はまばらである。<br />
潮のにおいが海が近いことを教えてくれる。<br />
しばらく行くと、三人の不良たちが少年に絡んでいる場面に出くわす。<br />
カツアゲか?と思い哲平は止めに入る。隙を見て少年は逃げ出す。<br />
だぶだぶの人民服を着て帽子を被っている少年だ。中国人?<br />
少年は俺にぶつかり転倒する。帽子が脱げ、黒髪が滝のようにこぼれ落ちる。<br />
そう、よく見ると女の子だった。彼女は片言の日本語で「涼雪(リャンスェ)」と名乗った。<br />
大学生で日本に留学してきているという。何故こんな危険な所に来たのだと聞くと、人を探しているという。<br />
ここからさらに南に行った遠羽埠頭の倉庫街を散歩していたとき、夕立に遭い雨宿りをしていると、<br />
亮太のような人が通りかかり、傘を貸してくれたという。<br />
写真を見せてみると、確かにその人は亮太だという。<br />
不良たちはどうなったかと思い見ると、哲平と意気投合していた。哲平が枕ヶ碕に居た頃の後輩だという。<br />
俺も三人とすぐに打ち解ける。鼻ピアスのタカ、ロン毛のエイジ、バンダナのヒロヤ。<br />
立ち話もなんだからというので行きつけだというバーに行くことになる。<br />
女の子をこんなところに置いていけないので、涼雪も連れて行くことにする。<br />
涼雪を見ると、黒髪はすでに帽子の中にしまわれていた。<br />
バーには「ハードラック」という看板が出ている。<br />
中に入るとびっくりする。枕ヶ碕にあるとは思えないほど雰囲気のいい店だ。<br />
サミーという陽気な黒人がマスターだ。<br />
不良三人組に亮太のことを聞きこみする。亮太のことは知っているが、今の居所は不明だという。<br />
彼女に電話するから、と言ってヒロヤは店を出て行った。しばらくすると、慌てた様子で帰ってきた。<br />
店の裏のドブ川に人が死んでいるとのこと。サミーに警察への通報を頼み、ドブ川の死体を検分する。<br />
スーツ姿の男だが、普通のサラリーマンには見えない。首に細いワイヤーのようなものが巻かれている。<br />
自殺かと思ったが首に防御創がある。上方をみると剥き出しの鉄骨があった。<br />
投げ縄のようにワイヤーを男の首に掛け、鉄骨に吊って殺したのだと推理する。<br />
そしてその後、犯人はワイヤーを回収したかったが、回収できなかったようだ。<br /><br /></dd>
<dt>150 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 20:51:03 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>サイレンの音が近づいてきた。ハードラック店内に戻ると、氷室刑事と森川刑事が現れた。<br />
氷室さんは、誠司所長が昔刑事だったときの後輩だ。森川は氷室さんの部下の若い刑事。<br />
若いといっても俺より4、5歳年上だが。<br />
森川は俺が居るのを見ると不快な顔をする。森川は探偵が嫌いらしく、顔を合わせるといつも口げんかになってしまう。<br />
それから、ハードラック店内で一同は事情聴取される。<br />
すっかり遅くなってからようやく開放される。俺と哲平は涼雪を家まで送っていくことにする。<br />
天狗橋から北の方へ進み、さらに山の手にしばらく歩くと、高層マンションに着く。<br />
「グランパレス江榮(こうえい)」である。江榮海運公司という中国の貿易会社が持っているというマンションだ。<br />
会長の張(チャン)もここに住んでいるらしい。屋上にはヘリポートがあるとか。<br />
巨大なエントランスには、丸眼鏡をかけ、だらしなく伸びた髪を無造作に束ねた、温和そうな男が立っていた。<br />
涼雪はその男に威(ウェイ)おじさまと呼びかける。身寄りのない涼雪の保護者なのだそうだ。<br />
威さんが江榮海運公司に勤めているのでここに住むことになったらしい。<br />
涼雪は、部屋番号は4011だからと言い残して帰っていった。<br />
帰る途中で、成美さんから呼び出しがかかったのでセクンドゥムへ向かう。<br />
成美さんは風邪を引いているようだ。とても辛そうで放っておけない。<br />
こういうときにはご隠居の所へ連れて行くのがいいとは思うが、町内会の慰安旅行だとかで不在だ。<br />
そうだ、暇な人が居る、と思い京香さんに電話をかける。<br />
事情を話すと、怒った様子だがすぐに来てくれるらしい。<br />
京香さんがやってくると、成美さんは二階の部屋へ連れて行かれた。<br />
この様子だとしばらくは付きっきりじゃないとだめだと京香さんは言う。<br />
探偵事務所は、どうせ依頼もないだろうからしばらく閉めておくことにし、<br />
俺が一日一回、留守電をチェックすることになった。<br /><br /><br /></dd>
<dt>151 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 20:58:25 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>2日目<br />
とにかくいろんな人に亮太の写真を見せて聞き込みをする。<br />
諏訪弁護士の事務所に行ってみることにする。諏訪さんは誠司所長の学生時代からの知り合いで、<br />
今までも何かとお世話になっている人だ。<br />
諏訪さんに写真を見せると、ちょっと考えてから、見たことがあるような気がすると言った。<br />
サイバリアに行き奈々子にも写真を見せてみたが、知らないという。<br />
哲平と待ち合わせて遠羽埠頭へ行くことにする。<br />
枕ヶ碕で涼雪とばったり会う。今日は女の子の格好だ。髪はきっちり束ねて三つ編みにしている。<br />
一緒に埠頭に行くことになった。枕ヶ碕を通り抜けて海の方へ。<br />
倉庫街には使われていない倉庫がある。扉が開いているので中を覗くと、<br />
不良たちの溜まり場になっているらしくゴミや花火の残骸が散らばっていたりする。<br />
奥に扉がある。今は使われてないが冷凍室のようだ。<br />
ふとそこに人の気配がするのでよく調べてみると、生意気そうな少年が現れた。<br />
涼雪が「紫宵(ツーシャオ)」と驚いたように呼びかける。こいつが張の孫だという。<br />
金持ちの孫だというので何かと威張り散らしている。一緒にグランパレス江榮に帰ることにする。<br />
俺と哲平はそのまま涼雪の部屋に招かれ、夕食をご馳走になることになった。<br />
4011、つまり40階の部屋だ。41階から上は全て張の住居だという。<br />
この広いマンションの部屋に威と二人暮しだという。<br />
威さんが夕食の支度をしている間、涼雪に話を聞く。<br />
亮太が貸してくれたという傘を見せてもらうが、普通のビニール傘で、手がかりにはなりそうにない。<br />
涼雪が会ったのは本当に亮太だったのかは不明のままだ。<br />
ハードラックが開店する時間なので今日も行ってみることにする。<br />
哲平が、今日はヤバいんじゃないかとかなんとか言っていると、派手な格好の男が入ってきた。<br />
その男をみて哲平はギョッとする。彼は大仰に、スツールではなくカウンターに腰掛け、足を組む。<br />
なるほど、哲平が嫌がっているのも理解できる。彼は所謂オカマというヤツなのだ。<br />
彼の本名は「恵美(しげよし)」というのだが、「エミー」と呼ばないと怒られるらしい。<br />
そして、エミーはこう見えても有能な情報屋なのだという。<br />
エミーに亮太のことをいろいろ聞いてみる。<br />
亮太は暴力団の青島組と関わりがあるのではという噂があるらしい。<br />
思い切ってペーパーナイフのことも聞いてみた。<br />
ペーパーナイフだということはぼかして、単に骨董品だと言った。<br />
するとエミーは何かをサラサラとメモに書いてこちらへ差し出す。<br />
ヤバい品を取り引きしている裏サイトのアドレスとパスワードだという。<br />
早速裏サイトにアクセスしてみることにする。サイバリアなどの人目に着く所ではだめなので、<br />
俺の自宅に二人で向かう。<br />
裏サイトの掲示板の書き込みを、ペーパーナイフで検索をかけると、1件見つかった。<br />
その書き込みを見てみると、なんと、このペーパーナイフを探しているという書き込みだった。<br />
形状も合ってるし青い宝玉のことも書いてある。<br />
300万円で買うというが、このナイフにそんな価値があるとは思えない。<br />
哲平と相談の結果、カマをかけてみることにする。鞘がついているやつなら見たことがある、と返事をする。<br />
実物には鞘がないことを知っているか知らないかで、相手がどこまで解っているか見極められるだろう。<br /><br /><br /></dd>
<dt>152 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:05:58 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>3日目<br />
氷室さんから連絡が入る。ドブ川の絞殺体は青島組幹部の男だという。<br />
青島組といえば、組長が同じようにワイヤーで絞殺されたばかりだ。<br />
亮太に関係があるかも、と思い、ドブ川にまた行ってみようということになる。哲平と二人で向かう。<br />
ドブ川には先客が居た。スーツをだらしなく着た、とぼけた感じの眼鏡の男だ。<br />
名刺を受け取るとフリーライターの柴田と書いてある。<br />
その名前に見覚えがあった。両親の交通事故のことを独自に調べていたときに出てきた名前。<br />
毎朝新聞の記者で、その交通事故の記事を書いた人だ。だが、柴田が書いた記事は何故か差し替えられ、<br />
実際に新聞に載ったのは別の人が書いた記事だった。<br />
俺は柴田さんに、毎朝新聞に居たことはあるかと聞くが、柴田さんは否定する。<br />
とにかく詳しく話を聞きたいので、一緒にサイバリアに行って昼飯でも食いましょうということになり、<br />
とおば東通りまでやってくると、京香さんが通りかかった。<br />
成美さんの具合などのことを話して京香さんと別れると、柴田さんはどこかに消えてしまっていた。<br />
仕方なく哲平とふたりでサイバリアに入る。奈々子がランチセットを持ってきた。<br />
グラタンにスイカのトッピングというとても合わない組み合わせだ。これは合わないだろと奈々子に言うと、<br />
昨日来た人は同じメニューをおいしそうに食べていったよ、と言う。それは写真の男、亮太だという。<br />
夜にハードラックに行き、不良三人組に聞き込みをする。<br />
数日前に駅前の映画館で見たという人が居るらしい。<br />
そして昨日、とおば東通りで見たという人も。きっと、サイバリアを出た後だろう。<br />
エイジの携帯電話にメールが届く。メールを読んでから、エイジはそわそわした様子で店を出て行った。<br />
それからしばらく待っていたが、エイジは帰ってこなかった。<br /><br />
4日目<br />
昼にサイバリアで哲平と待ち合わせる。そこへタカもやってきた。<br />
昨日の夜、店を出て行ってから、エイジと連絡が取れないとタカは言う。<br />
哲平が電話をかけたら出るかも知れないな、と言うと、哲平はエイジの携帯電話に電話をかける。<br />
相手が出たとたん、哲平が動揺しだす。電話を切ってから、哲平は搾り出すような声で言う。<br />
氷室さんが出て、上遠羽(かみとおば)で、変死体が見つかった、と。<br />
哲平とタカと共に上遠羽へ向かう。<br />
上遠羽は北の方の地域で畑や田んぼが残っている所だ。山道に入っていくと氷室さんが待っていた。<br />
またお前らかという表情の森川もいる。<br />
そして、さらに奥には、異様な光景があった。エイジの死体が、大きい木に縛り付けられている。<br />
触らないように注意すれば死体を検分しても良いと氷室さんは言う。森川は不服そうだったが。<br />
左胸に刺し傷があり、それが死因のようだ。別の場所で刺されてから、この木に縛り付けられたらしい。<br />
その後、警察署に連れて行かれ、事情聴取される。<br />
エイジの死因はやはり胸を刺されたことによる失血死らしいが、一度刺されたあともう一度刺されているらしい。<br />
一度目は普通に刃物で、二度目は、氷のようなもので。つららかそんなようなものだ。<br />
昨日、エイジの携帯電話に届いたメールは、亮太の携帯電話から送信されたものだった。<br />
現段階では亮太が一番疑わしい。<br />
事情聴取が終わって警察を出ると、知らずに涙が滲んできた。<br />
きっとエイジも喜んでいる、エイジなんかが死んでも、泣くような人は居ないから、と哲平は言う。<br />
だが、今は泣いている場合ではない。それ以上泣くのを堪える。<br />
そのとき、京香さんから電話がかかる。<br />
今セクンドゥムに居るが、俺あてに女の子が訪ねてきているという。きっと涼雪だ。<br />
セクンドゥム店内に入る。成美さんはだいぶ元気になったようだ。<br />
涼雪たちと他愛も無いことを話していると気がまぎれる。<br />
京香さんと成美さんがいつものように喧嘩を始めたので、涼雪があきれていた。<br />
やがて、もう迎えが来る時間だと涼雪が言うので、涼雪と店の外で迎えを待つ間、少し話す。<br />
店の横に黒くて高そうな車がやってくる。涼雪はその車に乗って帰っていった。<br /><br /><br /></dd>
<dt>153 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:10:04 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>5日目<br />
哲平と一緒に枕ヶ碕へ行くと、暴力団の組員らしき男たちがうろついている。<br />
哲平を見て鉄砲玉くずれなどと言う。<br />
天狗橋のところで紫宵と会う。一緒にサイバリアに行くことになった。<br />
奈々子だけでも騒々しいのに、紫宵も来ているのでもっとうるさい。<br />
どうやら紫宵は奈々子が気に入ったらしく、いろいろと話しかけていた。<br />
帰宅したあと裏サイトを見てみると、返事が返ってきていた。<br />
どうやら相手は鞘が存在しないことを知らないらしい。適当に返事をしておく。<br /><br />
6日目<br />
その日の朝は携帯電話に起こされた。ディスプレイに氷室さんの名前が表示されている。<br />
悪い知らせだ、バンダナのヤツが殺されている、東公園へすぐ来てくれとのこと。<br />
今度はヒロヤか、何故あいつらが狙われなければならないのかと思いながら東公園へ急ぐ。<br />
公園はものものしい雰囲気に包まれていた。氷室さんが待っていた。<br />
殺されたのがヒロヤではないこと願った、その一縷の望みもあえなく消えうせる。<br />
公園の地面の上にヒロヤは寝かされており、埋めるでもなく、中途半端に土がかけられている。<br />
口の中には木の枝が差し込まれている。木の枝で何度も殴られて撲殺されたらしい。<br />
携帯電話にヒロヤを呼び出すメールが残されており、やはり今回も亮太の携帯電話から送信されている。<br />
柏木邸に行き、ヒロヤの死を哲平に伝える。<br />
そういえば昨日、組員に鉄砲玉くずれとか言われてたよな。気になったので聞いてみる。<br />
哲平は昔、青島組系列の中崎組の鉄砲玉だったという。<br />
そして敵対していた白虎会の幹部を撃つように命じられ、生まれて初めて銃を手にした。<br />
幹部に銃を向け、撃鉄を上げたが、哲平は打てなかった。<br />
そのまま白虎会に寝返ってしまった。その白虎会の幹部こそ、ご隠居だったのだ。<br />
そのときご隠居が旅行から帰ってきた。ひとりで何でも抱え込んで・・・と哲平を叱る。<br />
そこへ京香さんと成美さんも姿を現す。大事な事を黙っていたので京香さんに怒られた。<br />
セクンドゥムにペーパーナイフを探しているという客が来たら注意してくれと成美さんに頼んだ。<br />
もう抱え込むのはやめだ。警察にペーパーナイフを証拠品として提示する。<br />
取調室で氷室さんと話をする。エイジもヒロヤも現場は異様だった。<br />
恐らく見立て殺人だろう。あ、そういえば、木とか土とか、そして氷・・・。<br />
陰陽五行説?氷で刺されたエイジ、木で撲殺されたヒロヤ。<br />
木は土を克す。金は木を克す、か。(氷は冷たくて固いので金を表す)<br />
五行説、しかも五行相克だと思うと言うと、森川に馬鹿にされた。<br /><br /><br /></dd>
<dt>154 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:10:59 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>サイバリアに行くと、また紫宵が奈々子に話し掛けている。<br />
今日は紫宵の誕生日だそうで、グランパレス江榮でパーティーがあるらしい。<br />
それに奈々子が誘われたそうだ。俺も招待された。<br />
夜にサイバリアの前で待ち合わせて一緒に行こうということになった。<br />
自宅に帰り、一番フォーマルな服を引っ張り出して着替えてから、サイバリアに向かう。<br />
ドレスを着た奈々子は別人のようだ。まさに馬子にも衣装だなと言うが、奈々子は意味を知らないらしい。<br />
グランパレス江榮のエントランスには涼雪が待っていた。涼雪は青いチャイナドレスを着ている。<br />
グランパレス江榮の最上階がパーティー会場だ。偉そうな人がいっぱいで気おされてしまう。<br />
自分が場違いな所に居ると感じてしまう。奈々子は紫宵と楽しく会話している。<br />
そこへ涼雪が話し掛けてきた。こういう席は苦手かと涼雪が聞くので、素直に苦手だと答える。<br />
それなら抜け出しましょうということになり、ふたりでエレベーターに乗り、エントランスへ来る。<br />
外に出ると、向こうにヤバそうな奴らが居る。青島組の奴らだろうか。<br />
俺は涼雪の手を引き、エントランスの中へ駆け込む。<br />
エレベーターに乗ろうとするのを涼雪が制し、地下へと続く階段を下る。そこはワインセラーになっていた。<br />
涼雪はなんだか不安そうにしている。涼雪は狭くて暗いところが苦手だという。<br />
でもこのワインセラーはそんなには狭くもないし明るいから平気だと。<br />
涼雪は、自分はいらない子だったと衝撃的なことを言う。<br />
いたずらをすると、暗くて狭いところに閉じ込めらていたいたのでそれで怖くなったという。<br />
ある日、家に強盗が入り、両親は殺されたが、涼雪は閉じ込められていたので助かったとのこと。<br />
その後、施設に居たところを威さんに拾われたのだという。<br />
ふいに会話が途切れる。こういうとき、気の利いた事が言えないから、彼女とか居ないんだろうなぁ、と思う。<br />
あなたには怖いものはないのかと涼雪が訊く。大切な人が居なくなるのが怖いと答える。<br />
そう、突然事故死した両親のように。それが心因外傷(トラウマ)となって今も引きずりながら生きている。<br />
涼雪の両親はどんな人だったのと聞いてみるが、よく覚えていないらしい。<br />
ひとつだけ覚えていることは、母親が、涼雪が眠らないときに聞かせた子守歌があるということだ。<br />
どんな子守歌か聞きたいと言うと、中国語だから日本語の歌詞がわからないという。<br />
それでもいいから、と言うと涼雪は歌ってくれた。同じ節回しが4回繰り返され、歌が終わった。<br />
日本語訳にすると、「白い家の子供」という題名の歌らしい。<br />
白い家に子供が居た。まだ眠りたくないと子供は家から逃げ出す。<br />
そこで4人のおじいさんが家に帰りなさいと言うので家に帰った、という意味の歌詞なのだそうだ。<br />
森に行くと森のおじいさん、砂場に行くと砂のおじいさん、他に海と火のおじいさんが登場する。<br />
森に砂に海に火か。この順番は五行相克か?などと<br />
無意識のうちに事件のことを考えている自分に嫌悪感を覚える。<br />
威さんは涼雪の母にこの歌を教えられたとのことで、よく歌ってくれたそうだ。<br />
そこへ涼雪を呼ぶ声がする。威さんが探しに来たのだ。<br />
パーティー会場に戻った。帰る時間になると、涼雪が送ってくれることになった。<br />
ふたりきりで天狗橋の方へ歩いていく。涼雪の方を見て、なにか話し掛けようと思ったが、<br />
何を話していいのかが浮かばない。<br />
こういうとき、何を話したらいいのかわからないんだと正直に言う。情けないけど。<br />
すると涼雪は、恭介のそういう素直な所がいいねと言う。<br />
嘘をついて意味の無いことを話すより、黙っていたほうがいいと。<br />
実は自分も話すのが苦手だと涼雪も言う。涼雪と視線を交わしながら、心地よい沈黙のまま歩く。<br />
天狗橋に着いた。もう少し一緒に居たい気持ちを押さえて、涼雪に帰るように言う。<br />
涼雪は別れ難そうにしているが、威さんが心配するよと言い聞かせ、涼雪を帰した。<br />
とおば東通りを歩いていると成美さんと出くわした。もう外を出歩いてもいいくらいに回復したらしい。<br />
珍しくいい格好してるわねと成美さんは聞くので、パーティーの帰りだと答える。<br />
出番の終わった役者みたいな顔して、自分の役が終わってほっとしてるみたい、<br />
そんなに緊張するパーティーだったのかと成美さんが聞く。<br />
確かに緊張するパーティーだったけど、さっき俺が緊張してたのは別の理由だ。<br />
そしてその理由を成美さんはとっくに見抜いているらしい。<br />
まぁ誰だって春は来るもんだしね、とからかうように成美さんは言う。酔ってるな、成美さん。<br /><br /><br /></dd>
<dt>155 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:12:47 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>自宅に帰り、インターネットでさっき聞いた子守歌のことを調べてみることにした。<br />
世界の子守歌がいろいろ載ってるサイトに、原文と日本語訳も載っていた。<br />
子守歌の歌詞の日本語訳を紙に書き写しておく。<br /><br />
7日目<br />
柏木邸に行き、子守歌の歌詞を哲平に見せる。<br />
確かに五行相克になっている。だが、「金」が見当たらない。<br />
最初の部分に出てくる、白い家が「金」を表してるのか?確かに、白は「金」を表す色だが。<br />
エイジやヒロヤをそれぞれ森や砂になぞらえているなら、最初に出てくる白い家が何も無いのはおかしい。<br />
もしかして、エイジの前に、見立て殺人は行われていたのかも?<br />
白い家とはどこだろう。エイジは「金」というか氷で克されていたから、<br />
氷に関係ある所か?だが、この暑いときに氷があるところって?<br />
そうだ、埠頭の倉庫に冷凍室があった。あそこなら夏でも氷があるだろう。<br />
無駄足になるかも知れないが確かめておいた方がいい。いや、確かめたい。哲平と共に倉庫に向かう。<br />
その倉庫の床の、冷凍室の前には、何かを引きずったような跡がある。<br />
嫌な予感を必死で振り払いながら、冷凍室の扉を開ける。白い冷気で何も見えなかったが、<br />
徐々に視界が開けていき、そしてそこには、亮太が死んでいた。<br />
あのドブ川の死体のように、ワイヤーかなんかで絞殺されたらしい。首に跡が残っている。<br />
流した涙が凍ったようで目が痛い。倉庫の外に出る。<br />
警察が来るまで哲平と海を眺めながら待った。<br />
いつものように取調室で事情聴取を受ける。<br />
帰りにスピリットに寄る。酔いつぶれてなにも考えずに眠りたい気分だった。<br />
酒に弱い自分の体質を、今回ばかりは有難いと思った。<br /><br />
8日目<br />
目が覚めたら柏木邸だった。哲平が運んでくれたらしい。<br />
ご隠居が、ペーパーナイフについて判ったことがあるというので話を聞く。<br />
ペーパーナイフ自体には骨董的な価値はそれほど無いが、東アジア全域の密輸に関する権力の証なのだそうだ。<br />
なるほど。手に入ったら裏サイトに書き込んである300万なんてすぐ取り返せるな。<br />
それが青島組の手に渡った。青島組は密輸でのし上がっていった。ペーパーナイフのお陰で。<br />
そして、亮太が裏切ってそれを奪って逃げ、哲平に託した。<br />
青島組の組長も幹部も、亮太もペーパーナイフを探している犯人に殺された。<br />
エイジやヒロヤも同一犯だろう。たぶん、あの子守歌の見立てのためだけに殺されたのだ。<br />
五行相克でなく、子守歌に見立てているとしたら、犯人はだいぶ絞られるな。<br />
わざわざあの子守歌に見立てるという事は、涼雪の身近に居る人物が犯人だろう。<br />
警察署に、亮太の検死結果を聞きに行く。<br />
亮太は冷凍室に居たため、死亡推定時刻が特定できないとのこと。<br />
また、胃の内容物を調べたらおかしな組み合わせのものが出てきたとのこと。<br />
スイカとグラタン。6日前の夜、亮太がサイバリアで食べたメニューだ。<br />
サイバリアで食べたものが胃に残ってるうちに殺されたということは、<br />
エイジやヒロヤを殺したのもメールで呼び出したのも、亮太ではないということだ。<br />
真犯人が亮太から奪った携帯電話を使って呼び出したのだろう。<br />
一旦自宅に帰ると、何故か違和感を感じる。部屋の中のものが動かされている。<br />
そして、パソコンが立ち上げてある。デスクトップの真ん中にテキストファイルがある。<br />
「読者への挑戦」という名のファイルだ。開いてみる。<br />
そこには、「全ての手がかりは示された。犯人は誰か?」と書かれていた。<br /><br /></dd>
<dt>156 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:13:43 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>突然電話が鳴り出したのでびっくりした。成美さんからだ。<br />
今、店にペーパーナイフを探しているという客が居るとのこと。<br />
氷室さんに連絡すると、すぐにセクンドゥムへ森川を向かわせるという。<br />
セクンドゥムに向かう。客とは紫宵だった。店の2階で和やかにヘルシングと遊んでいる。<br />
焦って損した。すぐに森川が来た。やがて涼雪が紫宵を迎えに来た。<br />
涼雪に、ペーパーナイフについて何か聞いてないかと訊ねると、どこかで見たかも知れないという答え。<br />
森川に、今ペーパーナイフを持っていたらちょっと涼雪に見せてやってほしい、と頼むと、<br />
森川はしぶしぶ内ポケットからビニール袋に包まれたペーパーナイフを取り出した。<br />
涼雪がペーパーナイフを見て言う。鞘はどうしたの、と。<br />
もちろん鞘はもとから無い。このペーパーナイフに鞘があると思っているのはただ一人。<br />
裏サイトに書き込みをした人物だけだ。<br />
それに、ひとつ気になることがある。心のなかで否定し続けていた事実。<br />
今こそ、その事実と向かい合わなければいけない。<br />
最初に涼雪に会ったときと、今の涼雪の状態。かすかに感じる違和感。それは、そう、髪型が違うのだ。<br />
青島組の幹部の絞殺体には、回収出来なかったワイヤーが巻きついていた。<br />
初めて会ったとき、涼雪は、また髪を束ねて三つ編みにすることが出来なかったのだ。結ぶものが無かったから。<br />
あの時言っていた、亮太を探していたというのも、亮太に会って傘を借りたというのも全て嘘だ。<br />
涼雪があの日、枕ヶ碕に居た本当の理由は、別にある。<br />
パーティーの帰りに涼雪が言った言葉を思い出す。嘘をつくより黙っていた方がいい、あの言葉すらも嘘なのか。<br />
青島組の幹部を殺したのがきみじゃなかったら、その三つ編みをほどいて見せてくれ、<br />
ワイヤーを持っていないところを見せてくれと俺は涼雪に言う。<br />
すると、涼雪の顔からすっと表情が消えた。瞳から光が失われる。<br />
鮮やかな身のこなしで森川を蹴ると、森川はペーパーナイフを取り落とす。<br />
涼雪はペーパーナイフを拾って逃げた。行き先はきっとグランパレス江榮だろう。<br />
俺と哲平はグランパレス江榮へ向かう。<br />
エントランスで哲平に言う。どうか俺に涼雪を説得させてほしいと。<br />
涼雪はきっと自分がしていることが悪いことだと、心の底では感じているに違いない、<br />
でもああやって表情を消して、自分は悪く無いのだと思い込もうとしている。<br />
あのまま、心を閉ざしたまま捕まってしまっては、自分が悪いことをしたとも思わずに、<br />
たいした反省もせず、形だけの贖罪のあと、また罪を重ねることになるだろうと。<br />
やっぱりお前はお人好しだなと多少あきれた様子だが、哲平は承諾してくれた。<br />
こちらを招待でもしているように、エレベーターが待っていた。最上階のパーティー会場で止まる。<br />
あのときの華やかさは微塵も無い、薄暗い部屋に威が座っていた。<br />
普段見せている温和な印象はまるで無い。後ろには涼雪が表情を消したまま控えていた。<br />
作者はあなたですね、と言うと、威はニヤリと笑う。おかしくて笑っているのではない。嘲笑だ。<br />
ここまで自分を楽しませてくれたのは俺が初めてだ、と威は言う。<br />
ペーパーナイフを探すために江榮海運公司に入社し張に近づき、<br />
さらに涼雪を操って青島組の組長と幹部、そして亮太を殺した。<br />
亮太を殺したところで、子守歌を使って見立て殺人をすることを思いついた。<br />
亮太を白い家に見立てた冷凍室に置き、こちらの推理通り、エイジとヒロヤをメールで呼び出して殺した。<br />
やはり次はタカを殺すつもりだったらしいが、ヒロヤの時点で気づくとは見事だと威は俺を褒めた。<br />
見立てのためだけに平気で人を殺せるなんて・・・。<br /><br /></dd>
<dt>157 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 21:14:46 ID:D3Bd+twf0</dt>
<dd>ひととおり種明かしをしたところで、ヘリコプターのプロペラの音が近づいてきた。<br />
威はヘリに乗って逃げる気だ。頭に血が上った哲平は威に飛びかかろうとするが、威に足を撃たれてしまう。<br />
結構血が出ているが哲平は掠っただけだから大丈夫、早く威を追えというので、<br />
閉まりかけた奥の扉をくぐりぬける。<br />
威は屋上への階段を悠々と上っていく。後から涼雪がついていく。<br />
階段の下に着いてから、涼雪に行くなと叫ぶ。涼雪と威はそこで立ち止まって振り返った。<br />
きみの犯した罪はとても重い、威について行かずに、罪を償ってほしいと涼雪に必死に訴える。<br />
こっちにおいで、と手を差し延べた。涼雪は階段を上るべきか下りるべきか悩んでいるようだ。<br />
威が冷たく言い放つ。涼雪はそちらには行かないと。<br />
自分はそちらには行けない、何故なら威おじさまが自分を必要としてくれているから、<br />
威おじさまに見捨てられたら、自分はまたいらない子に戻ってしまうと涼雪は言う。<br />
威は、長い時間をかけて少しずつ、涼雪に暗示をかけていったのだ。威に対する依存心が強くなるようにして、<br />
なんでも言うことを聞くような、人殺しも平気でするような娘に育て上げたのだ。<br />
威に対して吐き気がするほどの憎悪を覚えるが、今は涼雪をじっと見つめる。<br />
俺がいらない子になんてさせないからと強く言う。<br />
そのとき、涼雪の目に光が宿った。ゆっくりと表情が戻っていき、階段を下りかける。<br />
おかえり、と涼雪に言う。<br />
威は俺に向けて拳銃を構えて言う。ひとつ教えてあげましょう、私は涼雪の母親には会ったことがありません、と。<br />
子守歌に関する思い出は、すべて威が創作したものだったのだ。<br />
その程度でこんなに便利に育ってくれるなんてね、と威は言う。<br />
威が引き金を引く、その瞬間に涼雪は俺をかばうように飛び出した。<br />
目の前が真っ赤に染まる。羽根のようにゆっくりと落ちてくる涼雪を受け止めた。<br />
涼雪は胸の辺りを撃たれている。急所は外れているらしく、まだ息があるが、出血は止まらない。<br />
暗示が解けたから使い物にならないと思ったからなのか、<br />
威は涼雪を見捨ててそのまま悠然と屋上へと姿を消した。ヘリコプターの音が遠ざかっていく。<br />
恭介は優しいところがいいね、恭介はずっと生きていて、恭介のままで・・・と弱々しい声で涼雪は言う。<br />
うん、きみが覚えてるままの俺でいる、約束するよと答えると、<br />
涼雪は満足したように目を閉じ、最後の息を吐き出した。溢れる涙で何も見えなくなる。<br />
それからどのくらい経ったのか、氷室さんに呼びかけられて、正気にかえった。<br />
白いシーツに頭まで包まれた涼雪が、担架に乗せられて運ばれていく。<br />
エントランスでは京香さんが待っていた。<br />
結局、威を逃がしてしまったとがっかりする俺に、京香さんはこんなことを言う。<br />
探偵には法的な制限が無いぶん、人の心の中だけにある事件だって解決できるとお父さんが言っていた、と。<br />
そう、最期に涼雪は救われたのだから。<br /><br />
哲平の怪我はたいしたことないらしいが、全治二週間の診断を受け、入院するとことになった。<br />
涼雪の遺体は中国に送られ、両親と同じ場所に埋葬されることになったという。<br />
俺はハードラックに居た。墓参りに行こうにも遠すぎるよなぁとぼやいていたら、<br />
サミーに、距離なんて関係ない、どこに居ても祈りはとどくよと励まされた。<br />
タカからは、命の恩人だと言われ感謝された。<br />
自宅のマンションの前に柴田さんが待ち伏せていた。<br />
世代が代わろうとしている、気をつけろよ、と謎の言葉を残し、柴田さんは夜の闇に消えていった。<br />
To Be Continued<br /><br /></dd>
<dt>158 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:26:58 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>第4話 傷ついたテディベア<br /><br />
1日目<br />
目の前が真っ赤に染まる。ゆっくりと落ちてくる彼女を受け止める。<br />
そして愛しい人は最後の息を吐き出して・・・。<br />
飛び起きる。またあの時の事を夢に見てしまった。お陰で最近よく眠れない。<br />
いや、彼女だけではない。あの事件ではたくさんの人が死んだ。<br />
何故助けられなかったのだろう、そう思うとやりきれない。<br />
午後から哲平のお見舞いに行こう。その前にサイバリアでお昼を食べて・・・。<br />
無理やり違うことを考えて気を紛らす。<br />
サイバリアに行くと、奈々子がいつもの調子で出迎えてくれた。<br />
そして、哲平のお見舞いに行きたいと言うので連れて行くことにする。<br />
哲平が入院しているのは、友凛(ゆうりん)病院という総合病院だ。<br />
外科の病室がある3階に行き、哲平の病室を訪ねるが不在だった。<br />
どこに居るのだろうと探すと、ナースステーションで美人の看護師さんたちと話している。<br />
松葉杖をついて、元気に歩き回っているようだ。大人しく寝てないと治らないぞ。<br />
3階の廊下に、熊のぬいぐるみが落ちているので拾い上げる。<br />
首に「LUKE」というタグが付いている。「ルーク」、それがこいつの名前かな。<br />
これはただのぬいぐるみじゃない。テディベアというヤツだ。よく見ると古そうだ。<br />
栗色の髪の小さい女の子が歩いてくる。足音がしないと思ったら裸足だった。<br />
あのね、るーくん返して、と話し掛けてきた。ルークはこの子のものなのか。<br />
返してあげると嬉しそうにルークを抱きしめる。<br />
朱原(あけはら)まどか、5歳ですと女の子は自己紹介する。<br />
まどかちゃんは、通りかかった師長さんに、スリッパを履きなさいと注意されている。<br />
パジャマを着ているので、入院患者なんだろうけど、どこの病室なのかな。<br />
金髪の女性がまどかちゃんを迎えに来た。この人がまどかちゃんの母親だ。<br />
4階には小児科の病室があり、そこに入院しているとのことだ。<br />
奈々子と一緒にまどかちゃんの病室を訪ねる。<br />
なるほど、まどかちゃんはハーフだから栗色の髪なのだ。母親はイギリス出身なのだそうだ。<br />
そして、まどかちゃんはイギリス生まれのテディベア、「るーくん」が大好きで、<br />
将来はるーくんのお嫁さんになるのだとか、<br />
父親が居るイギリスに一緒に行くのだとか言っている。「ルーク」だから「るーくん」らしい。<br />
まどかちゃんは自然気胸という病気なのだそうだ。病院で大人しく静養しなければならず、<br />
とても外国に行けるような状況ではない、と母親は話す。<br />
そろそろ面会時間が終わる頃だ。また来るよ、と言ってまどかちゃんの病室を後にして、1階へ下りる。<br />
待合室に通りかかると、奈々子が声を上げる。温和そうな男性が現れた。<br />
奈々子の担任の、池辺先生なのだそうだ。もうすぐ新学期なので、風邪を治そうと思って病院に来たらしい。<br />
一緒に帰ることになったが、池辺先生は、喫煙室に煙草を置いてきてしまったというのでしばらく待つことになる。<br />
だが、しばらく待っても来ないので喫煙室に行ってみることにする。<br />
怖そうな、医者の先生に、池辺先生が怒鳴られている。やっと池辺先生が出てきた。<br />
病院を出て天狗橋のところまで来ると、奈々子は、もうアルバイトの時間なのですぐ帰ると言う。<br />
池辺先生を駅まで送ってねと頼まれてしまった。先生と駅まで歩く。<br />
奈々子はちょっと変わってるけど、いい子でしょう、などと先生は言う。<br />
ええ、お互い苦労しますね、と言うと、先生も同意する。<br />
ここでいいですよ、買い物してから帰りますから、と言うので、池辺先生と駅前で別れた。<br />
携帯電話が鳴り、氷室さんに警察署に呼び出される。<br />
何故か取調室に通される。つまり、他の人に聞かれたくない話だということだ。<br />
上遠羽で男性の死体が見つかった、死後1年くらいで、年や背恰好が所長とよく似ている、と氷室さんは言う。<br />
上遠羽ってエイジが死んだ・・・、いや、そのことは今は考えないようにしなくては。<br />
死後1年って、誠司所長が失踪したのもそのくらいだったよな。<br />
誠司所長は、簡単に死ぬような人ではない、といつも思っていたが、<br />
こういうことを聞かされるとやっぱりショックだ。<br />
氷室さんは、時間がかかるが歯形の照合をしなければまだ所長だとは断定できないが、<br />
もしもの時は、気をしっかり持てと言う。でも、胸が締め付けられるような感じは拭えない。<br />
京香さんに話してしまえばこの苦しみを共有できるのに、とも思うが、<br />
やっぱりとても京香さんには言えないな。この事は、しばらくひとりで抱えていかなければならない。<br /><br /><br /></dd>
<dt>159 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:28:00 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>2日目<br />
目覚ましではなく携帯電話に起こされた。奈々子からだ。<br />
先生が、池辺先生が死んじゃった、などと言っている。<br />
とにかく、探偵事務所に行くから、と言って電話は切れた。<br />
インターネットのニュースを見ると、確かに載っている。<br />
昨日の夕方別れたあと、駅のホームで亡くなったらしい。<br />
探偵事務所に行くと、制服姿の奈々子が同級生と共に現れた。<br />
友凛学園、奈々子が通ってるとはとても思えない、お嬢様学校の制服だ。<br />
奈々子と同級生に話を聞く。池辺先生は、とても誰かの恨みを買うような人ではないし、<br />
生徒からの評判も良く、とても殺されるような理由は見当たらないとのことだ。<br />
京香さんがいつものようにやる気になっていて、協力してあげてと言う。<br />
まぁ、俺が先生と最後に会った人になるのかも知れないしな、と思い協力することにする。<br />
面会時間になったので友凛病院へ行く。<br />
今日は大人しく寝ている哲平と話していると、病室に陰気な医者が現れた。<br />
確か、昨日喫煙室で、池辺先生を怒鳴ってた医者だ。<br />
医者は哲平に、貴様、治す気がないのか、大人しく寝ていろと言ったのに、と言って去っていった。<br />
あの医者は外科担当の陣堂で、怖くて陰気な感じだけど腕はいいらしい。<br />
喫煙室で聞き込みをする。ほぼ毎日喫煙室に通っていて、昨日も池辺先生を見たという人に話を聞く。<br />
池辺先生と陣堂は喫煙室でぶつかって、陣堂が煙草の箱を床に落としてしまったので、<br />
池辺先生を怒鳴ったとのこと。その後、陣堂は落とした煙草を拾わずにそのまま出て行ったとのことだ。<br />
師長さんや看護師さんたちにもひととおり話を聞く。<br />
陣堂は変わってるけど、本当はいい人で、子供たちとは仲がいいらしい。<br />
院長室にも行ってみる。多々良院長の専門は外科だそうだ。<br />
3階の廊下でまどかちゃんに会う。またしても裸足だ。<br />
スリッパを履かなくていいのかいと聞くと、だって暑いからイヤだという答え。<br />
まどかちゃんを病室に送り届けてから、帰る。<br />
サイバリアに行き今日の調査を奈々子に報告する。<br />
学園の生徒たちに話を聞いた方がいいかな、と言うと、明日は始業式だから、<br />
終わる頃校門のところに来ればいいよ、と奈々子は言う。<br />
成美さんから電話がかかる。いつものようにスピリットに呼び出そうとしている。<br />
哲平が居ないのでひとりで成美さんの相手をしなければならない。<br />
気が進まないが行くことにする。まどかちゃんが持っているテディベアのことを話してみる。<br />
成美さんは「ルーク」という名前に聞き覚えがあると言う。<br />
そして酔いつぶれた成美さんを担いでセクンドゥムに連れて行く。<br />
酒に弱いふたりで飲もうというのがそもそも間違いだろ、<br />
所長かもしれない遺体のこととか、あの事件のことを夢に見たりとか、<br />
俺だって酔いつぶれて眠りたい気分なのに、と思う。<br /><br /><br /></dd>
<dt>160 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:29:11 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>3日目<br />
・・・ッ!<br />
悲鳴を上げそうになるのを堪えて起き上がる。またあの夢だ。いい加減勘弁してほしい。<br />
始業式が終わる頃を見計らって、友凛学園に行く。<br />
生徒たちに話を聞くが、やはり池辺先生が殺される理由が見当たらないとのことだ。<br />
声を掛けられたので振り向くと、氷室さんと森川が居た。森川がまたお前かと言う。<br />
池辺先生の事を調査していることを正直に話すと、これから理事長に話を聞くから一緒に行こうと言われた。<br />
理事長に話を聞いたが特に有効な情報は無かった。氷室さんたちと別れて病院へ行く。<br />
小児科の先生にまどかちゃんの病気の事などを聞いたりなどして、<br />
3階の廊下を通りかかると、まどかちゃんに会った。<br />
るーくんが居ないから一緒に探して、と頼まれた。<br />
るーくんと一緒に行動していたら、検査に行かなければならないので、陣堂にるーくんを預けたそうだ。<br />
それ以降、陣堂もるーくんも見当たらないのだという。<br />
お兄さんは探偵だから、捜し物は得意だよ、と言うとまどかちゃんはにっこり笑う。<br />
まどかちゃんの手を引き、るーくんを捜し歩く。裏庭の隅の芝生の上にるーくんは寝ていた。<br />
まとかちゃんはるーくんを抱き上げたが、あ、と気が付いて表情が曇る。<br />
右目が取れてなくなっている。るーくんが落ちていた辺りを探すが見つからなかった。<br />
まどかちゃんを病室に連れて行くが、表情が曇ったままだ。そうだ、成美さん・・・。<br />
お兄さんは熊のお医者さんを知っているから、そこへるーくんを連れて行ってあげる、と言うと、<br />
少し迷った後、まどかちゃんはるーくんを差し出してきた。<br />
不思議に思ったまどかちゃんの母親が熊のお医者さんって?と聞くので、<br />
アンティークショップをやっている知り合いが居て、と説明すると納得してくれた。<br />
そのとき、突然、悲鳴が聞こえたので行ってみる。<br />
3階の旧階段のところで陣堂が死んでいるとのこと。どうやら転落死のようだ。<br />
いつも使っている階段じゃなくて旧階段だから、<br />
あまり人も通りかからないので発見が遅れたらしい。<br />
しばらく待つと森川がやってきた。氷室さんは?と聞くと、俺は氷室さんのオマケじゃないよ、という答え。<br />
氷室さんは池辺先生の件を担当しており、別行動しているとの事だ。<br />
るーくんをセクンドゥムに連れて行く。るーくんを受け取った成美さんは、しばらくるーくんを眺めてから、<br />
首に付いたタグを見たりして、間違いない、ギリングの「ルーク」だわと言った。<br />
長いこと行方不明になっていたテディベアなのだそうだ。<br />
しかし、随分いとおしそうに眺めるんだな。きっと、ぬいぐるみとか好きなんだろうな。<br />
本人に言ったら否定されそうだけど。<br />
右目、治りますかと聞くと、同じ物が手に入るかどうか調べてみるとのこと。<br />
そうだ、ちょっと待っててと言って成美さんは店の奥に行き、しばらくして戻ってきた。<br />
るーくんの右目のところに包帯が巻かれている。<br />
今日のところは、これで治療中だと言っておきなさい、と成美さんは言う。<br /><br />
4日目<br />
京香さんがまどかちゃんに会いたい言うので、一緒に病院に行くことになる。<br />
包帯の巻かれたるーくんをまどかちゃんに渡す。<br />
るーくん、治るよね、と、まどかちゃんが聞くので、大丈夫、治るよと答える。<br />
看護師さんたちが騒いでいるので行って話を聞くと、陣堂の遺体が霊安室から消えたと言う。<br />
病院を出て京香さんと別れる。<br />
サイバリアに行くと奈々子は居なかったが、諏訪弁護士が居た。<br />
諏訪さん、サボる時はいつもここだな。そして、犬が好きらしく、愛犬のサイトをいつも見ている。<br />
あとで秘書さんに怒られても知りませんよ。<br /><br /><br /></dd>
<dt>161 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:30:00 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>5日目<br />
今日も病院で聞き込みだ。陣堂の遺体はまだ見つかっていないらしい。<br />
夜、2階の廊下で、陣堂が踊っているのを見たと言う看護師さんが居る。<br />
ホラー映画じゃあるまいし。<br />
そういえば、この病院、幽霊が出るとかいう噂もあったな。事件とは関係なさそうだけど。<br />
2階の廊下へ行ってみたが、これと言って変わったところは無い。<br />
そこに森川が現れた。今日も氷室さんとは別行動らしい。<br />
仕方ないだろ、捜査課で一番若いんだから、と森川はぼやいていた。<br />
哲平の病室で陣堂先生の事を話していると、まどかちゃんが訪ねてきた。<br />
恭介はモテモテだな、いろんな女性に好かれて、と哲平がからかう。<br />
まどかちゃんみたいなのも居るじゃないか、と哲平が言うので、否定する。<br />
奈々子も居るし、とも言われるが、いや、あいつも数に入れないでくれと答えた。<br />
池内先生の件は氷室さんが担当しているんだっけ、話を聞いてみようと、警察署を訪ねる。<br />
氷室さんはいつものように、俺を取調室に連れて行く。<br />
池内さんの死因は中毒死らしい。唇の裏から毒物が検出されたとのこと。<br />
それは、やっぱり煙草が原因かな。煙草と言えば、喫煙室で陣堂に怒鳴られていたっけ。<br />
陣堂は煙草を落として、そのまま出て行ったんだよな。<br />
ということは、陣堂の煙草を池辺先生が拾って持って帰ったのかも。<br />
犯人が本当に殺したかったのは陣堂で、陣堂の煙草に毒を仕込んだが、<br />
それを池辺先生が吸ってしまったのだろう。<br />
警察署を出ると奈々子から電話だ。犯人、見つかった?と、とても直球な質問をされる。<br />
駅前で待ち合わせることにした。奈々子に陣堂の死体が踊る話をすると興味津々という様子だ。<br />
そうだな、今夜あたり病院に張り込むかな、と言ったら、奈々子は一緒に行くと言う。<br />
夜に病院の前で待ち合わせることにしてから別れた。<br />
自宅に帰り準備を済ませてから病院へ行く。奈々子は大きな荷物を持ってきていた。<br />
今日は友達の家に泊まることになってるから、とのこと。<br />
こっそりと哲平の病室まで行く。面会時間を過ぎても会いに来てくれるなんて嬉しいと哲平は冗談を言う。<br />
そのまま夜まで待ってから、2階の廊下に行く。<br />
奈々子は、ねぇ、どうしてあんまんには赤い印が付いてるの、などと脈絡も無い話をする。<br />
いつもより口数が多い。もしかして、怖いのかな。<br />
奈々子は突然絶句し、あれ、と言って指差す。その先には、陣堂が居た。<br />
踊るように四肢をクネクネ動かしながら、後ずさりするように廊下の角を曲がり、消えた。<br />
奈々子が叫び声を上げてしまう。誰かがこっちへ来そうだ。マズい。<br />
奈々子に哲平の病室に戻って待てと指示してから、身を隠す場所を探す。<br />
何も書かれていないドアがあった。たぶん物置だ。鍵が掛かってなかったのでそこに入る。<br />
ふっと、嫌悪感を催すような匂いが鼻を突いた。これは、腐臭だ。<br />
ぱっと見たところ、怪しい所はないように見えるが、床をよく見ると、<br />
赤黒い汚れ・・・多分血痕が付いているし、髪の毛も落ちているようだ。<br />
そうか、犯人はここに陣堂の遺体を隠しておいたのか。<br />
陣堂が踊ったように見えたあれは、犯人が陣堂の死体を担いで持ち出しているところだったのだ。<br />
廊下の足音が聞こえなくなったのを確認してから、物置を抜け出す。哲平の病室へ行こうとすると、<br />
まどかちゃんに会った。お互い、看護師さんたちに見つかってはマズい状況だな、こりゃ。<br />
一緒に哲平の病室へ行き、奈々子に、まどかちゃんを病室に連れて行って一緒に休めと指示する。<br />
俺は2階の物置に隠れて朝まで待つことにした。<br /><br /><br /></dd>
<dt>162 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:31:19 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>6日目<br />
朝になった。廊下ではちらほらと人の気配がする。もう外へ出ても大丈夫だろう。<br />
4階のまどかちゃんの病室へ行くと、まどかちゃんと奈々子が仲良く寝ていた。<br />
こうして見てみると奈々子は以外にも可愛いなと思った。学校に行く時間なので奈々子を起こすことにする。<br />
2階に戻る。昨夜、陣堂先生が移動していった廊下を調べる。陣堂先生は、確か、この角を曲がって・・・。<br />
そこには立入禁止と書いてあるドアがあった。どうやら手術室らしい。<br />
鍵が開いているので、誰も来ないうちに中に入る。<br />
手術台には、陣堂が寝かされていた。そしてその周りの床には、内臓が飛び散っている。<br />
とても直には見れないが、遺体は腹を割かれて内臓が引きずり出されているらしい。<br />
振り向くと、多々良院長が居たので、警察への通報を頼む。<br />
これ以上ここに居ると吐きそうなのであわてて手術室を出た。<br />
哲平の部屋で心を落ち着かせてから、2階の廊下に戻ると、氷室さんが居た。<br />
森川はどうしたのかと聞いてみると、遺体を見て2分でトイレに駆け込んだという。<br />
あれでも刑事かねぇ、と思う。射撃も下手だって聞いてるし。まぁ俺も人のことはあまり言えないが。<br />
物置に血痕らしきものがあると氷室さんに伝える。それから医者や看護師さんたちに一通り話を聞く。<br />
そうだ、るーくん、今日あたり治らないかな、と思い、まどかちゃんの病室へ行って、るーくんを預かる。<br />
セクンドゥムへ行く。いつもの通り、カーテンが締めてあり、暗い。ヘルシングの鳴き声がする。<br />
成美さん、居ますか、電気点けますよ、と声を掛けてから電気のスイッチを入れる。<br />
成美さんは高そうな年代物の椅子に物憂げに腰掛けていた。その姿は、美しい。<br />
美しいとは思うけど、恋愛感情とは結びつきそうもないんだよな。<br />
現実感が無いというか、もしかしたら既視感かも。<br />
ヘルちゃん、お店に出てきたらダメでしょ、と、<br />
初めて会ったときと同じセリフが聞こえて、現実に引き戻される。<br />
成美さんにるーくんを渡す。<br />
あと3日もすれば右目が届くというので、しばらくるーくんを成美さんに預けることにした。<br />
どうしたの、顔色が悪いわよ、と成美さんが訊くので、朝にグロいのを見ちゃって、と話す。<br />
男はダメね、血とかに弱くて、と言うので、今回は性別は関係ないと思いますと反論すると、<br />
成美さんは、あたし、血とか平気だもん、と言う。また吸血鬼みたいなこと言ってるし。<br />
胸元で赤い輝きを閃かせながら、吸血鬼かも知れない人は店の奥へ消えた。<br /><br />
7日目<br />
警察署に行くと、また取調室に通された。<br />
氷室さんがビニール袋に入ったボタンのようなものを取り出す。陣堂のポケットに入っていたという。<br />
るーくんの右目だ。すると、殺される直前まで、陣堂はるーくんを持っていた事になるな。<br />
氷室さんと森川と、るーくんが居るセクンドゥムへ向かう。<br />
るーくんの左目と照合すると、確かに同じ物だと判る。<br />
るーくんが落ちていた所は、旧階段の下辺りだ。陣堂は、死ぬ直前までるーくんを持っていて、<br />
旧階段の窓からるーくんを投げ捨てたのだ。では、何故るーくんを手放す必要があったのだろうか。<br />
るーくんになにか秘密が?成美さんがるーくんを調べると、背中の縫い目の所に何か挟まっているとの事。<br />
成美さんの長い爪が何かを引っ張り出す。1cm四方ほどの小さいもの、マイクロフィルムだ。<br />
なるほど、陣堂はこのマイクロフィルムを犯人に渡すまいとして、るーくんに隠したのか。<br />
そして犯人は、陣堂がマイクロフィルムを持ってないと判ると、飲み込んだのかと思って、<br />
内臓を取り出して調べていたのか。<br /><br /></dd>
<dt>163 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:31:59 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>そうなると、まどかちゃんが危ない。氷室さんは、森川の車に乗ってすぐ病院へ向かえと言う。<br />
車内で森川とふたりきりになると、森川が口を開く。<br />
お前、京香さんに上遠羽の遺体のこと話したのか、と。<br />
まだ話してない、まだ所長だと決まったわけじゃないからと答える。だって、所長はそんな簡単に死ぬ人じゃない。<br />
森川は突然ブレーキを踏んで車を止めた。<br />
あの人に、そんな気休めばっかり言っているのか、本当に所長だったら、そのときはどうするんだよ、<br />
と森川は語気を荒げる。<br />
前から感じていたことが確信に変わる。森川は、もしかして・・・。<br />
あの死体が父親だったとき、京香さんがどれだけ悲しむと思ってるんだ、と森川は言う。<br />
なぁ、お前、もしかして、本気で惚れてんのか?だって変だろ、そんなにムキになるなんて、と訊いてみる。<br />
そのとき、氷川さんから無線が入る。上遠羽の遺体な、鳴海さんじゃなかった、と言って切れた。<br />
ほら、言っただろ、所長はそんな簡単に死ぬ人じゃないんだよ。思わず笑みがこぼれる。<br />
馬鹿じゃねぇの、お前が生き返らせたんじゃないだろ。俺の勝ちだ、ざまあみろ、などと<br />
森川と他愛ない言い合いをする。<br />
はは、そうか、違ったのか・・・と言って、森川は泣き出した。<br />
ありがとな、お前はお前なりに、京香さんのこと心配してくれてたんだな、と言うと、<br />
森川は涙を拭った。京香さんには絶対言うなよ、と焦ったように森川は言う。<br />
それからはなんだか照れくさくて、無言のまま車は友凛病院に着いた。<br />
まどかちゃんの病室に行くと、まどかちゃんは居ないという。<br />
森川と手分けしてまどかちゃんを探す。4階から旧階段を下りて、踊り場に着くと、<br />
階段の途中に、まどかちゃんを抱えた多々良院長を見つける。多々良はまどかちゃんにメスを突きつけている。<br />
3階に森川が現れ、銃を抜き多々良に向けて構えた。<br />
あなたが犯人ですね、マイクロフィルムも見つけましたよ、と多々良に言う。<br />
まどかちゃんを離せと言うが、多々良はもう正常な判断が出来そうに無いほど追い詰められていた。<br />
森川に銃を捨てさせろ、それとまどかちゃんを交換だ、と多々良が言うので、森川に銃を下ろすよう頼む。<br />
だが森川は下ろそうとはしない。なぁ、少しは俺の事信用しろよ、と言うと、やっと森川は銃を下ろす。<br />
だが多々良は、銃を捨てるまではダメだと言い張る。ここで取っておきを出す事にする。<br />
森川、お前、射撃下手だったろ、と森川に言うと、多々良はびっくりして森川を見た。<br />
今だ、と思い、多々良の死角から近づき、まどかちゃんを奪うことに成功する。<br />
森川はまた多々良に向かって銃を構えなおす。多々良は森川と逆方向、3階と4階の間の踊り場へ走り、<br />
窓へと身を躍らせ、落ちた。下は裏庭の芝生だったので、多々良は一命を取り留めたが、重体だという。<br /><br /><br /></dd>
<dt>164 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:32:52 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>奈々子と同級生たちは、依頼して良かったと、喜んでくれた。<br />
マイクロフィルムの中身には、不正な臓器移植の証拠が入っていたそうだ。<br />
多々良と、そして陣堂も不正に一枚噛んでいたらしいが、陣堂が裏切ろうとしていたらしい。<br />
不正が発覚してから、病院は大騒ぎ。入院患者は次から次へと転院していった。<br />
哲平も、完全には治ってないのに強引に退院してしまった。<br />
そして今日は、まどかちゃんが転院する日だ。京香さんと一緒に見送りに来た。<br />
よそ行きの服を着たまどかちゃんは、久しぶりに電車に乗るのだとはしゃいでいた。<br />
田舎の、もっと空気のいい病院に転院するという。<br />
右目の治ったるーくんをまどかちゃんに手渡す。陣堂のポケットに入ってた方は証拠品なので<br />
返してくれなかったので、成美さんが取り寄せた右目が付いている。<br />
あのね、大きくなったらお兄さんのお嫁さんになるの、<br />
るーくんがいいって言ってくれたから、と、まどかちゃんは言い出すのでびっくりする。<br />
そうか、俺は熊に認められましたか。って、何歳違うと思ってるんだ。<br />
いいじゃないの、まどかちゃんが18歳のとき、探偵さんは36、7でしょ、オイシイじゃない、<br />
などと看護師さんがからかう。<br />
京香さんを見ると、こんな小さな子の夢を壊したら承知しないわよ、と顔に書いてった。<br />
でも、こういうのって、そのときになったら、本人はきっと忘れてるものなんだよな、と思いながらも、<br />
わかった、待ってるよ、と返事をする。<br />
セクンドゥムに行って、成美さんにるーくんのお礼を言う。<br />
成美さんもお裁縫とかするんだ、と訊くと、るーくんの右目を縫ったのは柏木のジジイよ、という答え。<br />
ああ、やっぱりな。そんな事だろうと思った。<br />
それはそうと、顔色が良くなったわね、と成美さんが言う。そういえば、最近あの夢を見なくなったな。<br />
氷室さんから電話が入る。上遠羽の遺体は、元毎朝新聞の柴田という男なのだそうだ。<br />
柴田さんなら、先月会いましたけど、と言うと氷室さんは首を傾げる。<br />
あの柴田という男、何者なんだろう?<br />
To Be Continued<br /><br /><br /></dd>
<dt>165 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/14(木) 22:33:33 ID:8nUoasnA0</dt>
<dd>続きはまた明日ノシ<br /><br /></dd>
<dt>166 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:37:30 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>第5話 迷いの懐中時計<br /><br />
1日目(9/15)<br />
・・・あ、そうか、夢か。珍しく、目覚ましが鳴る前に目を覚ます。<br />
雨が降っていて、そこに哀愁漂うメロディーが流れている、そんな夢だ。<br />
どんなメロディーだったかはよく思い出せない。<br />
テレビを見ていると、遠羽の港の近くに巨大なホテルが完成したとのニュースが流れた。<br />
全面ガラス張りの建物だ。天狗橋を渡って駅前を過ぎ、ずーっと歩いたところだな。<br />
併設されたイベントホールでは、来る9月30日に「Aim(アイム)」という<br />
チャリティーイベントが開催されるらしい。<br />
探偵事務所に出勤すると、嘉納兄妹からエアメールが来ていた。<br />
Aimで潤ちゃんがピアノを弾くことになったので、9月23日にふたりは日本に帰ってくるという。<br />
特に依頼も無いので、所長が残したファイルを整理することになる。<br />
こうしてみると並び順が滅茶苦茶な上にファイルのタイトルから内容が想定できないし、<br />
明らかに仕事とは関係無さそうなものも混じっているし、途方に暮れてしまう。<br />
失踪者リストのところに、何故か枕ヶ碕のバラバラ殺人の新聞の切抜きが挟んである。<br />
お父さんって、家でもこんな感じなのよ、本とか、滅茶苦茶な順番に並べてるけど、<br />
自分だけはどこに何があるか判ってるらしいのよ、お母さんが掃除できないって嘆いてたわ、と京香さんが言う。<br />
京香さんのお母さん、確か、清香(さやか)さんでしたよね、と確認してみる。<br />
そうよ、22年前に病死したって言うけど、病死しそうには見えないほど元気だったわ、<br />
時々、本当に病気だったのかと考えるの、と、伏目がちに京香さんは言う。<br />
清香さんの名前を聞くと心臓が跳ね上がる。先日、友達から偶然に清香さんの名前を聞いてしまった。<br />
友達と言っても、「SAKU」というハンドルネームしか知らない、チャット友達だけど。<br />
SAKUはハッカーで、時々調査に協力してもらっている。<br />
-鳴海清香っていう人が、22年前通り魔に刺されて死んだの、知ってる?<br />
SAKUからそんなメッセージが届いていた。<br />
同姓同名の別人であってほしい、と願う気持ちもあるけど、多分、間違いないだろう。<br />
氷室さんから電話が入り、警察署にちょっと来いと言うので事務所を出る。<br />
とおば東通りで奈々子に遭遇する。突然、携帯電話を奪われる。<br />
どのポケットに入っているか知っているらしい。鮮やかな手つきだったなぁと感心していると、<br />
奈々子はなにやら携帯電話をいじっている。<br />
ほら、いつも電子音でつまらないから、着メロ入れといてあげたよ、最近話題の曲、と言って、<br />
奈々子は携帯電話を返す。勝手に何するんだと思ったが、なかなかいいメロディーだ。<br />
というか戻し方がよく解らないので、しばらくそのままにするしかない。<br />
警察署の前で森川と、諏訪弁護士が何やら話していた。諏訪さんは忙しいからと言って早々に帰っていった。<br />
森川に、また証拠品かなんか隠してるんじゃないか、何せ前科があるからな、などと難癖を付けられる。<br />
また氷室さんに取調室に通される。上遠羽の遺体、柴田という元毎朝新聞の記者の事について話す。<br />
そして、7月に会った柴田と名乗る男がやっぱり怪しい、という結論になる。<br />
思い切って、氷室さんに清香さんの事を訊いてみることにする。<br />
所長が刑事を辞めたのは、清香さんの死が原因だったらしい。<br />
犯人と思われていた、大野という男は、証拠不十分で逮捕出来ないうちに、病死してしまったそうだ。<br />
久しぶりに諏訪さんの事務所に行ってみることにするが、やっぱり忙しそうだ。<br />
諏訪さんはAimのスポンサーの会社の顧問をやっているそうで、<br />
イベントが近いのでいつもより余計に忙しいらしい。早々に退散する。<br />
ご隠居の家で、夕食をごちそうになる。成美さんも来ていた。<br />
食事の後で成美さんが、アイスが食べたいと言い出した。<br />
しかも、メロディマートというコンビニにしかないオリジナル商品のやつだ。<br />
この辺りではメロディマートは数見町にしかない。遠いなぁ。<br />
でも成美さんは言い出したら聞かないので、仕方なく哲平とふたりで買いに行くことにする。<br />
メロディマートの前では、少年たちが喧嘩をしていて、店内に入れない状態だ。<br />
なんとかその場を収めると、その中に高校生くらいの少女が居るのに気付く。<br />
睦美(むつみ)と呼ばれたその少女は、<br />
助けてくれなんて言ってないのに余計な事するなと突っかかってきたが、<br />
連れの少年に諌められ、去っていった。<br />
アイスを買って柏木邸に帰るとだいぶ時間が経っていた。成美さんはすでに寝ていた。<br />
すっかり疲れきって帰宅する。<br /><br /><br /></dd>
<dt>167 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:38:12 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>2日目(9/16)<br />
朝、久しぶりにチャットツールを立ち上げると、SAKUはオンラインになっている。<br />
清香さんの死について、もっと知っている事はないかと訊いてみると、<br />
SAKUはわかった、調べておくと言ってくれた。<br />
探偵事務所に行って、今日もファイルの整理をする。<br />
京香さんが面白いファイルを見つける。植物の標本だ。なになに、上遠羽山から採取、か。<br />
近所で取れる雑草がいろいろとファイルしてある。<br />
ふと気になったので、所長のことをいろいろと京香さんに聞いてみる。<br />
所長が失踪した時に無くなっていた物は、大きい鞄と、自宅の本棚の、一部に入っていたもの。<br />
そこにはアルバムも含まれていたらしく、お陰で今でも俺は所長の顔を知らないのだ。<br />
日が暮れてから、成美さんから電話が入る。スピリットに居るので来いと言うので<br />
行こうとすると、京香さんが自分も行くと言うので連れて行くことにする。<br />
スピリットには哲平も居た。<br />
京香さんは成美さんに、私用で真神くんを呼び出すな、などと抗議しているが、<br />
成美さんはそれを無視して俺に声を掛ける。<br />
ペンダントを売ったことがある店と連絡が取れたから、と成美さんが言う。<br />
メモを渡された。「古刻堂(ここくどう)」。メールアドレスも書いてある。<br />
はっとして目を覚ます。二杯目の乾杯までは覚えているけど、やっぱり記憶が無い。<br />
成美さんは奥の方で寝ているから、哲平が担いで運んでいくと言うので、<br />
とりあえず京香さんとふたりで先にスピリットを出ることにする。<br />
地下にある店のドアを出て、階段を上り、路地に出ると、人が倒れているのが見える。<br />
その人の横に屈みこんでいる人が居る。暗くてよく判らないが男のようだ。<br />
男はこちらに気付くと突然逃げ出した。京香さんは男を追いかけ、走りだしたが突然止まり、<br />
何かを拾い上げてポケットに入れた。京香さんは元気が無さそうな様子で戻ってきた。<br />
追いかけようと思ったけど、ハンカチを落としちゃって、それで逃げられた、などと言い訳をしている。<br />
違う、京香さんが落としたんじゃなくて、逃げた男が落としたものを拾ったんだろう、<br />
と思ったが、京香さんは思う所があるらしいので何も言わない事にする。<br />
倒れている人を見るとやはり死んでいた。何故か白い手袋をしている男性だ。タクシーの運転手かな。<br />
いつものように警察に連れて行かれる。何も見ていないであろう、哲平と成美さんも連れて行かれる。<br />
京香さんは何か思いつめた表情をしている。森川が必要以上に京香さんを心配している。<br />
森川も頑張るよなぁと哲平が関心している。あれ、森川が、京香さんのこと好きだって話したっけ?<br />
疑問に思っていると哲平は、森川が京香さんを見る目が違うからわかると言う。へぇ、そんなものなのか。<br />
色恋沙汰は苦手だろ、好かれてるのに、気付かないでそのまま終わってるんじゃないのかと哲平は俺に言う。<br />
かなり痛いところを突かれた。いや、さすがにそんなことは無いと思う・・・多分。<br />
京香さんは具合が悪そうにしているので、仮眠室で休む事になった。<br />
事情聴取を受ける。何度も迷ったが、結局、京香さんが何か拾ったらしい事は言わなかった。<br /><br /><br /></dd>
<dt>168 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:38:55 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>3日目(9/17)<br />
氷室さんから話を聞く。被害者は波多野という男で、遠羽タクシーの運転手だそうだ。<br />
外はもうすっかり明るくなっていた。受付で女性陣を待つ。<br />
仮眠室から京香さんが起きてきた。いつもの調子とまではいかないが、元気になったらしい。<br />
そして成美さんも、寝ぼけながらも起きた。外にタクシーが呼んであるらしい。<br />
森川が、早く出ろと言いながら俺を外へ引っ張って行こうとする。<br />
それを見て成美さんは、突然叫び声を上げた。<br />
やめて、お父さんを連れて行かないで、などと喚きちらし、恐慌状態に陥ってしまう。発作を起こしたようだ。<br />
結局成美さんは仮眠室に逆戻りした。<br />
成美さんが明るいのが苦手なのって、肌が紫外線に弱いとか、<br />
そういうのだとばかり思っていたけど、精神的なものだったのか。<br />
いや、ただ明るいのが苦手なだけじゃなさそうだ。哲平の話も総合すると、<br />
明るい外へ誰かが連れて行かれるのがダメらしい。俺が連れて行かれる場面に反応したように。<br />
保護者はいないのか、と聞かれ、ご隠居を呼び出すことになる。<br />
みんなで成美さんを柏木邸に連れて行き、寝かせる。<br />
成美さんには、暗いところは安全で、明るいところは危険だという認識が擦り込まれてしまっている、<br />
とご隠居は言う。<br />
京香さんと探偵事務所に行く。事務所の前で、中学生くらいの少年がうろうろしている。<br />
少年を事務所の中に入れてソファに座らせる。<br />
京香さんは机のところに行き、ポケットから何か取り出すと、ぎこちない動作で引き出しに入れた。<br />
昨日拾った物だろう。俺は気付かない振りをしたが、京香さんが居ないときにこっそり確かめようと思った。<br />
少年は「波多野皐月(さつき)」と名乗った。あのタクシーの運転手の息子だと言う。<br />
警察署に行ったとき、ここを紹介されたのだそうだ。<br />
犯人をきっと捕まえてください、という皐月くんに対し、京香さんはいつものようにやる気になっている。<br />
でも、実働は全部自分に押し付けられるんだろうな・・・と思ったが、<br />
以外にも、京香さんは自分で調査すると言い出す。<br />
清香さんのことも調査しないといけないし、とりあえず探偵事務所を出る。<br />
しばらくすると、皐月くんと京香さんが出てきて、諏訪弁護士の事務所の方へ向かった。<br />
ふたりが戻ってこないのを確認すると、事務所に戻って、<br />
心の中で京香さんに謝りながら引出しを開ける。<br />
金色の深い輝き。蓋のついている懐中時計だ。指紋を付けないよう、ハンカチに包んで取り出す。<br />
蓋を開いて驚く。文字盤が二つあって、それぞれ違う時間を表示している。<br />
キャプテンウォッチとかいうヤツだ。少し迷ったが、デジカメで写真を撮ってプリントし、<br />
それを持って行くことにして、現物は元通り置いておくことにする。<br />
京香さんが戻って来ないうちに事務所を出る。<br />
警察署に行って、氷室さんに懐中時計の写真を見せてみると、見覚えがあるという。<br />
誠司所長が持っていたものに間違いないそうだ。あの時、逃げ出した男はやっぱり所長だったのか。<br />
だから京香さんは、所長が波多野を殺したと思って自分が調査すると言い出したのかも。<br />
夜、メロディマートの前で皐月くんを見かける。<br />
あのとき会った不良少女、睦美ちゃんの服の裾を引っ張りながら、<br />
お姉ちゃん、もう帰ろうなどと言っている。ふたりは姉弟だったのか。<br />
俺の顔を見るなり、睦美ちゃんはまた突っかかってくる。<br />
学校には行っているのかと聞くと、そんなもん行ってられるかと乱暴な答えが返ってきた。<br />
帰宅後、古刻堂さんに、ペンダントについての質問のメールを出しておく。<br /><br /><br /></dd>
<dt>169 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:40:02 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>4日目(9/18)<br />
探偵事務所に行くと京香さんは目の下にクマを作っていて、ふらふらしている。<br />
本人は大丈夫だと言うがどう見ても寝不足だろう。<br />
また迷惑をかける事になるが、ご隠居の家に連れて行って休ませることにした。<br />
ごめんねと京香さんは謝る。素直に自分に任せてくれればよかったのに。<br />
京香さんに昨日の調査について聞くが、成果が上がらなかったという。<br />
たとえば、遠羽タクシーの事務所に行って波多野について聞いてみるとか・・・、<br />
そういう事はちっとも考えつかなかったらしい。<br />
遠羽タクシーに行って聞き込みすることにする。<br />
そういえば、15日に、車内に忘れ物をした人がいたので、それを波多野は交番に届けたとのこと。<br />
忘れ物は事務所で預からずに交番に届けるらしい。<br />
近くの数見町交差点派出所に行ってみる。名刺を渡すと、警官は宇野巡査と名乗った。<br />
何故か俺のことを名探偵だと尊敬の眼差しで見ている。<br />
どうやら、この派出所の丸尾巡査が森川と知り合いらしく、そこから伝わったらしい。<br />
森川が自分のことを名探偵などと言うはずが無いので、どこかで間違って伝わってるな、<br />
まぁお陰で宇野巡査は協力的で助かるけど。<br />
丸尾巡査の件ですか?と宇野巡査は聞く。<br />
そういえば、15日に警官殺しがあったっけ。それがこの派出所なんだな。<br />
そうじゃなくて、忘れ物の事なんですが、と、最近どんな忘れ物が届けられたか聞く。<br />
最後は13日で、15日の記録なんてないですよ、と記録簿を見せてくれた。<br />
記録簿をよく見ると、15日の所に破り取られた跡がある。<br />
15日の事を聞いてみる。宇野巡査と丸尾巡査はその日の当番で、<br />
宇野巡査が見回りに行って帰って来たら、丸尾巡査が殺されていたとのことだ。<br />
きっと丸尾巡査を殺した犯人が、記録簿を破って、忘れ物を持ち去って行ったのだ。<br />
帰宅後、メールをチェックすると、古刻堂さんから返事が来ていた。<br />
25年前、骨董好きの若い男にペンダントを2つ売ったとのこと。<br />
もう少し調べれば誰に売ったのか判明するので、判りしだいまた連絡するとのことだ。<br />
そういえば、以前、成美さんに、あのペンダントは同じ物が10個あると教えられたっけ。<br />
2つ買うって事は、誰かとペアで着けようと思ったのかな。<br />
父さんはペンダントを持っていなかったので、きっと父さんが買ったわけじゃないだろうから、<br />
古刻堂さんが売ったのは、母さんが持っていたペンダントじゃないだろう。<br />
でも、ひとつ譲ってくれないかな、と思った。<br /><br /><br /></dd>
<dt>170 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:40:45 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>5日目(9/19)<br />
探偵事務所を下から見上げると、ブラインドが上がっていた。<br />
京香さんは元気になったようだ。今日は自分も調査に行くと言うので、<br />
一緒にまた遠羽タクシーの事務所へ行く。<br />
15日にタクシーに忘れ物をした人はどこへ行こうとしてたのか聞いてみたが、判らないと言う。<br />
そうだ、15日に波多野が乗っていたタクシーが車庫にありますよというので<br />
見せてもらうことになる。波多野が死んでからそのままだという。<br />
後部座席の足元に、雑草が落ちていた。京香さんが驚きの声をあげる。<br />
これ、お父さんのファイルにあった草だ、たしか上遠羽山で採取したって・・・。<br />
早速、上遠羽山へ向かうことになる。山のふもとに、タクシーの中に落ちていた草が群生していた。<br />
この辺りは、たしか、エイジが木に縛りつけられていた所だな。あの異様な現場がフラッシュバックする。<br />
何故か奥のほうが気になったので、行ってみると防空壕と思しきものがあった。<br />
そこから、嗅いだことのある匂いが漂ってきている。<br />
京香さんはここで待っていてくださいと言って、ひとりで防空壕に入り、<br />
積み上がった枯草の山の中を探るとスーツケースが出てきた。<br />
匂いが強くなり気分が悪くなる。これは、腐臭だ。<br />
スーツケースには鍵が掛かっていたが、抉じ開けると、中身はやはり死体だった。<br />
服装から男らしいという事だけは判るが、それ以上はとても確認できるような状態ではない。<br />
警察に通報すると、また氷室さんと森川が来た。<br />
森川に、なんでこんな所に京香さんを連れてきたんだと文句を言われたが、<br />
京香さんが自分で行きたいって言ったんだ、と言っても納得してくれそうにない。<br />
氷室さんから、被害者は行方がわからなくなっていた公安課の刑事だという事を教えてもらう。<br />
手口も同じだし、警官殺し、波多野殺しと同一犯だろう。<br />
そして、犯人は右利きであろうという事も教えてもらうと、突然京香さんは泣き出した。<br />
お父さんじゃなくて良かった、と。所長は左利きだったのか。<br />
また京香さんと一緒に柏木邸にお邪魔することになる。<br />
お父さんは危険な事を調査していたに違いない、そして誰も巻き込まないように、<br />
姿を消したに違いない、と京香さんは言う。<br />
それに、お母さんは病死じゃないでしょ、とも。<br />
清香さんは、通り魔に刺されて死んだ、犯人の大野という男は、病死したと、<br />
今までわかっていることを教える。<br />
誠司所長が調査していた、危険な事とは何か?<br />
それは、事務所のあの謎のファイルの山の中に眠っているに違いない。<br />
意を決して探偵事務所へ向かう。今日こそは、徹底的にやってやる。<br />
まず、調査と全く関係の無さそうなものを除き、残ったものをいくつかの分類に分ける。<br />
そして、この前見つけた意味の判らない謎の暗号のようなメモを見る。<br />
「M→A→Y→?」「Gが鍵か?」<br />
Aは青島組だということはすぐに判った。Mは枕ヶ碕かな。<br />
枕ヶ碕で失踪したという人のリストがあちこちのファイルにある。<br />
ジョンとかクロとか書いてあるので、犬か猫かそんなのかと思ってたけど、人間らしい。<br />
Yは友凛病院だろう。友凛病院に関する記述も多い。<br />
Gは木原剛三だ。剛三に関する記録がある。<br />
ええと、枕ヶ碕で失踪した人が青島組に拉致されて友凛病院に連れて行かれる?<br />
それを指示してたリーダーが木原剛三?<br />
そういえば、友凛病院といえば、多々良院長が探していたマイクロフィルム、<br />
あれには不正な臓器移植の証拠が記録されていたんじゃないっけ?<br />
失踪した人はきっとドナーになって、そして枕ヶ碕のバラバラの遺体に・・・。<br />
・・・繋がった。もはや一個人ではどうしようもないような巨大な組織が裏にあるのだ。<br />
それに、所長は立ち向かおうとしている。<br />
ああ、そうか、きっと誰かが、こうやってこのファイルの山を読み解くのを期待して、<br />
こんな暗号みたいなのにして残したのだ。<br />
そして、俺はついに辿り着いた。所長が期待した答えに。<br /><br /><br /></dd>
<dt>171 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:41:28 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>6日目(9/20)<br />
朝のニュースを見る。豪華客船アニバーサリー号がもうすぐ新遠羽港に就航するとのこと。<br />
アニバーサリー号はAimを主催する団体が持っているという船だ。<br />
あれに乗って潤ちゃんと浩司さんがやってくるって言ってたな。<br />
新遠羽港ってのは、イベント会場の近くの港だ。<br />
探偵事務所には京香さんと、氷室さんも居た。ふたりに、昨日読み解いた答えを教える。<br />
氷室さんは、これから波多野姉弟に聞き込みするから一緒に来いと言う。<br />
サイバリアで待ち合わせだという。<br />
あんなところでは話を聞くどころではないんじゃないかと悪い予感がしたが、<br />
案の定奈々子がうるさくて険悪なムードになってしまう。<br />
なんと、奈々子と睦美ちゃんは顔見知りなのだという。隣のクラスだもん、とのこと。<br />
睦美ちゃんもあのお嬢様学校に通ってるのか・・・。<br />
と、そんなことはさておき、睦美ちゃんに、波多野が殺される前のことを聞き出す。<br />
殺される前の晩、睦美ちゃんが部屋でMDを録音していると、波多野が部屋に入ってきて、<br />
今日、後部座席でこの曲がずっと鳴っててうるさかった、とそんな話をしたという。<br />
そのとき録音していたMDを持っているというので聴かせてもらうことにする。<br />
MDのラベルには、「Painful rain」と書いてあった。<br />
なるほど、題名の通り、悲しげなメロディーだ。<br />
これ、おじさんが若い時に流行った洋楽なんだよね、と氷室さんは言う。<br />
あ、どこかで聴いたことがあるな。携帯電話を取り出して、鳴らしてみる。<br />
テンポがぜんぜん違うが、同じ曲だ。<br />
それ、最近カバーされた方だろ?そっちはあんまり好きじゃない、と睦美ちゃんは言う。<br />
後部座席でずっと鳴っててうるさい、それは携帯電話の着メロではないか?<br />
そうか、忘れ物は携帯電話だったのだ。上遠羽山で公安の刑事を殺し、<br />
帰りのタクシーに携帯電話を忘れ、携帯電話は交番に届けられた。<br />
忘れ物に気付き、自分の携帯電話に電話をかけ、電話に出た警官を殺して取り戻し、<br />
そして忘れ物を知っているタクシーの運転手まで殺したのだ。<br /><br /><br /></dd>
<dt>172 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 05:42:42 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>7日目(9/21)<br />
朝、パソコンを立ち上げると、SAKUからメッセージが届いていた。<br />
-大野っていう男は、昭沢(あきさわ)という医者が、医療事故で死なせたことになっている。<br />
-昭沢は医師免許を剥奪され、その後闇医者をやっているらしい。<br />
-今、昭沢は枕ヶ碕に居るそうだ。<br />
所長は今どこに居るのだろう。やはり、フリーライターの柴田、彼が所長だろうな。<br />
毎朝新聞の柴田が殺されたのをいい事に、柴田になりすましているのだろう。<br />
初めて会ったとき、とおば東通りでばったり京香さんに会うと、柴田は消えていた。<br />
顔を知っている京香さんの前に出られなかったのだろう。<br />
自分や哲平は所長の顔を知らないと確信していたのだ。<br />
そこまでして立ち向かわなければいけないものって・・・。<br />
ポケットの中で「Painful rain」が流れ出す。テンポが速いが哀愁漂うメロディーはそのままだ。<br />
出てみると氷室さんからだ。話したいことがあるから、警察署の屋上に来いという。<br />
受付で顔見知り、とくに森川などに見つかってはマズいなぁと思いながらも、<br />
誰にも見咎められずに屋上まで行けた。なんだか今にも雨が降りそうないやな天気だ。<br />
氷室さんは、今回の一連の事件は内部の人間の犯行の可能性が高いと言う。<br />
携帯電話を取り戻すときも、タクシー運転手を殺すときも、刑事だと何かと都合がいい。<br />
氷室さんを呼びに、森川が来たが、俺が居るのを見て、なんでお前が居るんだよといつものように言う。<br />
突然、「Painful rain」が流れる。ゆったりとした哀愁漂うメロディー。<br />
森川は携帯電話を取り出す。着信ランプが光っている。誰かと話して、電話を切る。<br />
それ、「Painful rain」だろ?と訊くと、よく知ってるな、昔のバージョンなのにと森川は答える。<br />
まさか、森川が・・・?<br />
森川ぁ、15日の夜、お前の携帯電話に電話をかけたけど、出なかったときがあるよなぁ?と氷室さんは訊く。<br />
森川は、懐に手を入れ、拳銃を抜く。氷室さんも抜いたが、森川の方が一瞬早かった。<br />
森川が撃った弾は氷室さんの手の甲を掠めた。氷室さんは拳銃を落とす。<br />
夢中でその銃を拾って、森川に向け両手で構える。<br />
ああ、銃ってこんなに重いものなのか、森川のやつ、こんなものよく片手で撃つよなぁ、と思った。<br />
一連の事件の犯人は、やはり森川だったのだ。<br />
頭ではわかっているが、心はその事実を拒絶している。<br />
なんて現実感が無いんだろう。俺と、森川が銃を構えあってるなんて、<br />
こんなの、悪い夢を見ているとしか――。<br />
公安の刑事は織田県警本部長の不正を嗅ぎつけたので殺された。<br />
そして、他の人たちが殺された理由は、昨日推理した通りだ。<br />
邪魔するヤツは容赦しない、仕方ないが排除した、と森川は言う。<br />
織田県警本部長は、所長が立ち向かっている組織の一員だ。そして、森川も。<br />
組織は内部分裂しそうなのだという。柴田が、所長が言い残した、「世代が代わる」という言葉、<br />
あれは剛三が死んで新しいリーダーが生まれるという事か。<br />
お前、射撃が下手だなんて嘘だろう、でないと氷室さんに向けて撃てないよな、<br />
正確に手の甲を狙うなんて出来ないよな、本当は、撃ちたくないんだろと指摘すると、<br />
森川は、何を勝手に解釈してるんだ、と言う。<br />
じゃあ、どうして所長が生きていると判ったとき泣いたんだよ?と言うと、<br />
森川の顔にはっきりと動揺の色が見える。<br />
今まで、氷室さんも俺も、森川を疑うことなんか無かった。<br />
だが、所長が生きていると知ってからの森川は、簡単に足が付くようなミスばかりしている。<br />
それは、所長が死んでいることが心の拠り所だったからだ。<br />
初めから、京香さんの敵だと、結ばれぬ運命だと思っていたからこそ、<br />
森川は平気で殺人も出来るような人間になれたのだ。<br />
俺たちの組織が、京香さんの父親を殺した、そう思うと夜も眠れなかった、と森川は言う。<br />
森川は、ゆっくりと銃を下ろす。<br />
銃声が聞こえ、森川の左胸にパッと血が広がる。<br />
どこだと思って見渡すと、少し離れたビルの屋上に、見覚えのある顔、威が冷たく嘲笑を浮かべていた。<br />
威の部下がライフルを持っている。裏切りそうになったから撃ったのか。<br />
悔しがるこちらを尻目に、威と部下は悠然と去っていった。<br />
気をつけろ、組織、”パーツ”・・・それだけ言うと森川は死んだ。ちょうど雨が降り出す。<br />
「Painful rain」が耳の奥で鳴り出したような気がした。<br /><br /><br /></dd>
<dt>173 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 06:17:12 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>次の日、睦美ちゃんと皐月くんが、氷室さんと共に事務所を訪ねてきた。<br />
事件が解決したので、お父さんのお参りに行くそうだ。<br />
波多野が死んでいた路地に、みんなで行く。消えかけたチョークの跡に花を供えて手を合わせる。<br />
ヘンね、携帯電話のためだけに、罪の無い人たちを殺したと判ってるのに、<br />
森川くんのこと、嫌いになれないの、と京香さんは言う。<br />
氷室さんは俺に、あの組織に立ち向かうつもりか、と訊ねる。もちろんです、と答える。<br />
それじゃ、敵討ちといきますか、と氷室さんは言って、歩き出す。<br />
To Be Continued<br /><br /><br /></dd>
<dt>174 :<a href="mailto:/"><b>名無しさん@お腹いっぱい。</b></a>:2007/06/15(金) 06:42:34
ID:VhzbzRAq0</dt>
<dd>ふらっと見に来ただけだが、すげー長いのが展開中だな…<br /><br /></dd>
<dt>175 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:09:34 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd><a href="http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gamerpg/1180167848/174" target="_blank">>>174</a><br />
長いのは短くまとめられないからですorz<br />
殺人事件とか合計6件削ったけどこれだ<br />
まぁPS2ソフト2本分つーことで許してください<br /><br />
最終話イクゾー!<br /><br /></dd>
<dt>176 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:10:38 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>第6話 追憶のペンダント<br /><br />
1日目(9/23)<br />
探偵事務所の、所長が残したファイルの棚を眺めていた。<br />
京香さんに声をかけられるまで、5分ほどそのまま固まっていたらしい。<br />
しばらくして哲平と氷室さんが訪ねてきた。氷室さんは謹慎中にもかかわらず出歩いている。<br />
4人は、これから立ち向かうであろう巨大な組織、<br />
森川が命をかけて教えてくれた”パーツ”という組織の事を考える。<br />
”パーツ”では、トップの木原剛三が死んだせいで内部分裂が起きているらしい。<br />
今まで関わった事件から、”パーツ”に関係がありそうな人を探す。<br />
まず死んだ木原剛三に、青島組の組長、入院中の多々良院長、森川の話に出てきた織田県警本部長。<br />
たぶん威もそうだろう。一見無関係そうな事件が繋がっていたなんて。<br />
所長のメモにあった通り、不正な臓器移植と枕ヶ碕の失踪者が本当に関係があるとしたら・・・、と考え、<br />
まず失踪者を当たる事にする。それと、”パーツ”に関係がありそうなものをもっと調べなくては。<br />
後で哲平と柏木邸で落ち合うことにして、事務所を後にする。<br />
枕ヶ碕でどんな失踪者が居るかタカなどに聞き込みをし、夕方、柏木邸に向かう。<br />
門の外にご隠居が出てきた。黒い車が通りかかる。そして、銃声。<br />
ご隠居が撃たれてしまった。黒い車には、見覚えのある人物が乗っていた。威の部下だ。<br />
早く救急車をと思ったが、哲平は闇医者に連れて行くという。<br />
そういえば、前に無免許の昭沢という医者が枕ヶ碕に居たというのを聞いたことがあるのでそれを哲平に話す。<br />
哲平はご隠居と共にタクシーに乗り、闇医者のところへ向かった。<br />
セクンドゥムへ行き、成美さんにご隠居が撃たれた事を告げると、成美さんはまた発作を起こしてしまう。<br />
おじいちゃん助けて、などと言っている。<br />
とてもひとりにさせられる状態ではないので闇医者の元に連れて行く事にする。<br />
昭沢先生が居るところは、ボロアパートの一室で、とても治療をするところではないと思うが、<br />
とにかく奥の部屋で治療中とのことだ。手前の部屋で夜を明かす。<br /><br /><br /></dd>
<dt>177 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:12:09 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>2日目(9/24)<br />
昭沢先生が奥の部屋から出てきた。<br />
昭沢先生は22年前に、成美清香さんを殺した容疑者、大野を治療した医者だ。<br />
そのときのことを昭沢先生に詳しく聞く。<br />
大野は、盲腸で入院してきたという。別に、死ぬような病気ではなかった。<br />
無事に手術を終えたが、その日の夜、突然容態が悪化したというので駆けつけてみると、<br />
既に大野は死んでいたとのことだ。きっと、大野は誰かに殺されたのだと昭沢先生は言う。<br />
そして、その責任を問われ、医師免許を剥奪され、何者かに追われる日々が始まった。<br />
闇医者をしながら、各地を転々とし、そして7年前に枕ヶ碕に来た。<br />
大野を殺したのも、昭沢先生を追いかけているのも、きっと”パーツ”に違いない。<br />
哲平を残し、俺と成美さんは帰ることにする。成美さんをセクンドゥムに送る。<br />
探偵事務所に行くと留守電が入っていた。浩司さんからだ。<br />
そうだ、昨日帰ってくると言っていたっけ。京香さんと一緒にイベント会場へ行く事になった。<br />
イベント会場に併設されたホテルのロビーで嘉納兄妹に会う。<br />
京香さんは潤ちゃんと何やら話しこんでいるので、会場内をあちこち行ってみることにした。<br />
イベントホールに唯ちゃんと亀山さんが居る。唯ちゃんはイベントで歌うことになっているそうだ。<br />
スタッフ詰め所では意外な人物を見かける。睦美ちゃんと明日香ちゃんだ。<br />
睦美ちゃんは本当はやりたくないけど、少年課の刑事に勧められて手伝っているのだと言う。<br />
明日香ちゃんも元気なようだ。今はお手伝いだけど、いつか正式なスタッフになりたいと言っている。<br />
セクンドゥムへ帰って成美さんの様子を見る。成美さんは俺を見て、<br />
お父さん行かないで、などと言う。お父さんと間違えているらしい。幼児退行してるよ。<br />
帰宅後、メールをチェックすると古刻堂さんからメールが来ていた。<br />
ペンダントを買った人は「杉内和将」という人らしい。住所も判っているが、今はそこには住んでいないという。<br />
あのペンダントって、宝石としての価値はそんなにないらしいけど、<br />
一応アンティーク・ジュエリーって事になるよな、ということで少し調べてみることにする。<br />
アンティーク・ジュエリーは、一度台座に嵌めてしまった後は、外すときに宝石に傷が付いてしまうらしい。<br />
傷と言えば・・・と、机の脇に置いてある母さんの写真に目が行く。あのペンダントを着けて微笑んでいる写真。<br />
母さんが持っていたペンダントの宝石には、傷が付いていた事を思い出した。<br />
何故傷があるのかと訊ねた事があるのも覚えている。<br />
同じものが10個あるとしても、本当に母さんが持っていたものがどれだか判別できるなんて思わなかった。<br /><br />
3日目(9/25)<br />
インターネットで杉内が住んでいた所を調べると、今はコンビニになっていた。<br />
「杉内和将」という名前で検索をかけると、杉内一家は24年前謎の失踪を遂げていることが判明した。<br />
チャットウィンドウを開くとSAKUがオンラインになっていたので呼び出す。<br />
ペンダントを買った杉内一家は失踪している事を話し、協力を仰ぐ。<br />
探偵事務所に行き、所長が残したファイルから失踪者のリストを引っ張りだして調べる。<br />
「杉内」という名前はどこかで見たと思ったが、やっぱりこのリストに載っていた。<br />
「杉内和将 31歳 妻・弥生 長女・音々」か。<br />
枕ヶ碕で聞いた失踪者の名前もいくつか載っている。<br />
夜、帰宅後に裏サイトを見てみる。あの、ペーパーナイフを探しているという書き込みに、<br />
レスが付いている。書いたのは威に違いない。寒気がする。落ち着け、俺。<br />
彼女の事を思い出しそうになる。心の一番奥に閉じ込めてあったそれを、もう一度仕舞い直す。<br />
心を落ち着けてからその書き込みを見る。そこには、「ゲームを続けましょう」と書いてあった。<br />
書き込まれた日付はご隠居が撃たれた日だ。やっぱりあれは威の差し金だったのか。<br /><br />
4日目(9/26)<br />
昼頃、サイバリアに行くと、諏訪さんがまたサボっていた。<br />
また相変わらず愛犬のサイトを眺めている。そのサイトの犬の値段は高くて買えないが<br />
ついつい見てしまうのだと諏訪さんは言う。もうすぐイベントなのにサボってていいのかなと思う。<br />
帰宅後にメールをチェックするとまた古刻堂さんからメールが来ている。<br />
あのペンダントは、本物はひとつだけで、残りの9つは似せて作られた偽物だと言う。<br />
母さんが持っていたのが偽物だったとしても構わないのに、だって形見なんだし、と思う。<br /><br /><br /></dd>
<dt>178 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:13:15 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>5日目(9/27)<br />
探偵事務所に行くと、誠司所長が何食わぬ顔でテレビを見ていた。<br />
だらしなくスーツを着た眼鏡の男。やはり柴田が所長だったのだ。<br />
本物の柴田は所長と間違われて殺されたので、所長は柴田になりすまして行動していたとのこと。<br />
どこまで掴んでる?と所長に言われ、今まで調査した結果を報告する。<br />
そして、Aimが”パーツ”と関係ありそうだという事も。<br />
それを聞くと、所長は笑った。さすがは俺の弟子だ、と褒められた。いつから弟子になったんだろう。<br />
帰宅後にメールをチェックすると、SAKUからメールが来ていた。<br />
杉内一家の写真が手に入ったので添付するとのこと。<br />
開いてみて、我が目を疑う。あのペンダントを着け、娘を抱きながら微笑む女性、<br />
その顔は、母さんとそっくりだった。写真も残ってるし、自分でも覚えているので、間違うはずはない。<br />
自宅にはプリンターがないので、明日事務所でプリントしよう。<br />
その夜はなかなか寝付けなかった。<br /><br />
6日目(9/28)<br />
ネットで失踪者のことを検索してみようとサイバリアに行く。<br />
所長のリストを見ると、あだ名と本名とどっちも載っているけど、あだ名で検索してみる。<br />
案の定、絞り込めなくて膨大な量のサイトが引っかかった。<br />
ジョンとかクロとかいう名前だから、犬のサイトが引っかかっている。<br />
開いてみると、いつも諏訪さんが見ている愛犬サイトだった。<br />
ふーん。やっぱり値段が高いなぁ。<br />
帰宅後、裏サイトを見てみる。<br />
ペーパーナイフの書き込みにレスが増えているので開くと、威からだった。<br />
いろいろな事が脳裏に浮かびそうになるのを必死で押し留める。<br />
ああ、どうしてこんな思い出し方しか出来ないんだろう。<br />
また挑戦状と称して、謎の長ったらしい暗号文が書かれている。その内容を手帳に書き写す。<br />
威の奴、今度は何を企んでいるのだろう。また眠れなくなくなるような事を・・・。<br /><br /><br /></dd>
<dt>179 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:14:08 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>7日目(9/29)<br />
探偵事務所に行くと、京香さんと所長が喧嘩していた。<br />
昨日見た、諏訪さんがよく見ていた愛犬サイトが気になったので、もう一度見てみる。<br />
犬の写真の側に、名前と犬種、そして産地を表す、Mという記号が併記されている。<br />
Mって、所長のメモにあった、枕ヶ碕を表す記号だったよな?<br />
犬の名前と失踪者リストをもう一度照らし合わせてみると、ほとんど一致する。<br />
犬種はよくわからないけど部位かなんかを表して、そしてこの法外な値段・・・。<br />
それが判ったとたん、眩暈に襲われる。<br />
これは愛犬サイトなどではない、臓器を売買するサイトなのだ――。<br />
ああ、そうか、諏訪さん、彼も”パーツ”に関わっているんだな。<br />
昨日裏サイトに書き込まれたレスのことも考えてみる。<br />
イベント当日に、威が、”パーツ”が、何かやらかそうとしている事は明らかだ。<br />
イベントは明日だ。今日から会場に行って警戒しよう。<br />
セクンドゥムに行き、杉内一家の写真を成美さんに見せることにする。<br />
その写真を見ると、成美さんの顔色がみるみる青くなる。<br />
まさか、そんな、嘘よ、などと言い、ひどく狼狽している。<br />
セクンドゥムを出て東公園を歩いていくと、成美さんの声がする。<br />
振り返ると、まだ日も高いのに、成美さんが走ってくる。<br />
成美さんはエアメールを差し出して、この手紙をお守り代わりに持っていきなさいと言う。<br />
その手紙は外国のとある財団からもらったもので、財団はペンダントのオリジナルを探しており、<br />
オリジナルがあれば、報酬は望みのままだとのこと。<br />
あのペンダントは、昔、ある貴族が妻の死を悼み、遺品のイヤリングをペンダントに作り変えたものなのだという。<br />
それが、世界にひとつしかないオリジナルで、盗難防止のためにダミーが9個作られた。<br />
それから貴族は没落し、オリジナルもダミーも散り散りになってしまったとのことだ。<br />
成美さんが何故そんな話をするのか不思議に思うが、成美さんは真剣だ。きっと何か意味があるのだろう。<br />
そのエアメールを受け取り、内ポケットに大切に仕舞った。<br />
成美さんをセクンドゥムへ連れて行き、2階の部屋に寝かせる。<br />
京香さんに電話をかけ、成美さんのことをお願いしてから、イベント会場へ向かう。<br />
イベント会場には、氷室さんに哲平、そしてタカまで借り出されていた。<br />
暗号文を読み返す。とりあえず、スタッフ詰め所に何かありそうだ。<br />
スタッフ詰め所を漁ると、段ボール箱から怪しい装置が出てきた。0~9までの数字のキーと、ランプが6つ付いている。<br />
表示された時間がどんどん減っていく。これは、時限爆弾?<br />
暗号文を見ると、これの他にも爆弾が6個仕掛けられているらしく、解除方法も4桁の数字を入力するというものらしい。<br />
氷室さんと哲平とタカに協力してもらい、暗号文を解き、7個の爆弾全てを解除することに成功する。<br />
しかし、暗号の答えが成美さんの年齢とか森川が死んだ日付とか探偵になってから調べた死体の数とか、<br />
自分にしか解けないようなのばかりとは、威も悪趣味と言うかなんというか・・・。<br />
ホッとした俺はスタッフ詰め所の床に寝転んだ。<br /><br /><br /></dd>
<dt>180 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:19:10 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>8日目(9/30)<br />
唯ちゃんに起こされてびっくりする。スタッフ詰め所で寝てしまったらしい。<br />
探偵事務所に戻って所長に報告をしてから、またイベント会場に向かう。<br />
もうすぐイベントの午後の部が始まる時間だ。午後の部は潤ちゃんのピアノと、唯ちゃんの歌だな。<br />
ロビーに行くとスタッフがバタバタしているので事情を聞くと、<br />
アニバーサリー号が突然出港することになったとのこと。<br />
きっと威たちが、”パーツ”のメンバーが逃げるつもりなのだろう。<br />
そして安全なところへ逃げてから爆弾を爆発させるつもりだろう。まぁ爆弾は昨日全て解除したが。<br />
アニバーサリー号に乗り込むとしても、船内は敵だらけだろう。気を引き締めていかなければ。<br />
イベント会場の入り口には、京香さんと、なんと成美さんが居る。<br />
成美さんはサングラスに黒い日傘という重装備だけど、いつものように発作を起こすようなことも無いらしい。<br />
成美さん自ら行きたいと言ったそうだ。<br />
そろそろアニバーサリー号のところに行こうとすると京香さんが呼び止める。<br />
話しておきたい事があると言う。昨日、成美さんが話してくれたことだそうだ。<br />
成美さんが明るいところがダメな理由は、小さい頃監禁されたことがあるからだ。<br />
拉致されて、ずっと暗いところに閉じ込められていたらしい。<br />
そして、明るいところへ連れて行かれるときが死ぬ時なのだ。<br />
「連れて行かないで」と言うのはそのときの体験が元になっているらしい。<br />
お父さんが成美さんより先に連れて行かれてしまい、次は自分の番かと思い不安になっていたところ、<br />
白虎会がその監禁場所を襲撃し、成美さんは助かった。そして、ご隠居の手で育てられることになったそうだ。<br />
何をするつもりかわからないけど、頑張ってと京香さんに励まされた。<br />
アニバーサリー号の前までやってきた。まだタラップが下りている。<br />
そこには威が待っていた。森川とご隠居を撃った部下を従えている。<br />
あの船に乗れるのは”パーツ”のメンバーだけですよ、と威は言う。<br />
どんな事をされても”パーツ”になんか入るものか、と言い返す。<br />
その後、威を飽きさせないよう会話を続ける。出港の直前になってようやく威と部下が船に乗り込む。<br />
走って、岸を離れようとするタラップに必死に飛びつく。なんとか海に落ちずに済んだ。<br />
威の部下が撃とうと構えたが、威はそれを制して去っていってしまう。<br />
甲板には諏訪さんが待っていた。彼こそ、”パーツ”のニューリーダーだ。<br />
俺の両親を殺したのは諏訪さんだった。<br />
24年前、臓器移植のドナーとさせるべく、杉内一家を拉致したが、母親だけは逃げ出し、川に飛び込んだ。<br />
それから4年経った20年前、逃げ出した母親の居所を突き止めた。<br />
彼女は記憶喪失になっており、名前を変えていた。それが母さんだった。<br />
諏訪さんは、記憶を取り戻す前に母さんを殺そうとした。<br />
母さんだけ殺すつもりだったが父さんも巻き込まれて死んでしまったのだ。<br />
交通事故に見せかけて上手く殺したつもりだったが、毎朝新聞の柴田は、顔こそ見ていないが、<br />
諏訪さんが現場に居たところを見ていた。<br />
そして、事故を起こしたトラックには運転手の他に誰か乗っていたという記事を書いたが、<br />
その記事は差し替えられた。<br />
諏訪さんが何か投げてよこしたのでとっさにキャッチする。<br />
日の光を受ける赤い輝き。そして、宝石につけられたこの傷。間違いない、母さんのペンダントだ。<br />
諏訪さんはペンダントを触ってしまったので、指紋から身元が割れると思いやむなく持ち去ったが、<br />
このペンダントが失くなったからこそ、俺はここまで来たのだ。<br />
プロペラの音が聞こえてくる。威がヘリコプターに乗って逃げようとしている。<br />
諏訪さんは懐から大き目の拳銃を取り出して、ヘリに向けて撃った。ヘリは爆発して海に落ちた。<br />
そして、諏訪はその銃口をこめかみに当てる。罪を認めるには遅すぎる、と諏訪さんは言う。<br />
生きて罪を償ってください、威を撃ったのは罪の意識があったからでしょう、<br />
わざわざ俺の前であの愛犬サイトを何度も見せたのも、止めてほしかったからでしょうと説得する。<br />
諏訪さんは拳銃を持った手を下ろした。<br />
小型の船に乗った氷室さんたちがアニバーサリー号に追いついて来ていた。<br />
初めて、犯人が死なずに連行されるところを見たなと思った。<br />
最後に諏訪さんは言う。そのペンダントは財団が探しているオリジナルだと。<br /><br /></dd>
<dt>181 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:22:50 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>アニバーサリー号はすぐに港に戻った。結局、コンサート見れなかったな。<br />
イベント会場の前で京香さんや成美さん、哲平たちが待っていた。<br />
どう?あのお守り役に立ったでしょ、と成美さんが得意げに言う。<br />
諏訪さんから受けとったペンダントを成美さんに見せる。<br />
これがオリジナルだと言うと、成美さんは少し羨ましがったが、<br />
あたしにはお父さんのがあるからいいもんと言った。<br />
杉内一家の写真を取り出してしげしげと眺める。この人、やっぱり母さんだったんだ。<br />
そして、自分には姉も居たのだ。横から成美さんが写真を覗く。<br />
ね、その子はどう見てもあたしでしょと、母さんの腕の中で笑っている少女を指して成美さんは言う。<br />
そういえばつり目だよな・・・って、えっ?<br />
異父姉弟ってヤツか?と哲平が言うと、成美さんは否定する。<br />
だって、お母さんが、もうすぐお姉さんになるのよ、って言ってたもん、と成美さんは言う。<br />
じゃあ、「月嶋成美」って言うのは?と聞くと、偽名よ、柏木のジジイの別れた女房の名前だってさ、という答え。<br /><br />
潤ちゃんと浩司さん、そして正式なスタッフになった明日香ちゃんは<br />
アニバーサリー号に乗り、日本を離れて行った。<br />
唯ちゃんは相変わらず頑張っているらしい。<br />
睦美ちゃんはたまには学校に行くようになったと聞いている。<br />
威はその後遺体が捜索されたが、片腕しか見つからなかったそうだ。<br />
ご隠居はまだ包帯を巻いてるけど順調に回復している。<br />
成美さんは徐々にだけど、昼間も外に出れるようになってきている。<br />
だが、我儘な性格は変わらない。相変わらず俺や哲平をこき使っている。<br />
俺もまだ変わらず「成美さん」と呼んでいる。だって、今さら「姉さん」なんて恥かしくて言えないよ。<br />
天涯孤独だと思ってたふたりが血の繋がりを見つけた、それだけで十分だ。<br />
いつか失う時が来ると考えると少し怖いけど、でも、もう大丈夫。そして、諦めかけていたペンダントもここにある。<br />
いや、ペンダントなんて、どんなに価値があろうとも、形見だとしても、今やオマケにしか過ぎないな。<br />
俺が本当に取り戻したかった「失くした欠片(ミッシングパーツ)」は、成美さんだったのだから。<br />
MISSING PARTS is Completed<br /><br /></dd>
<dt>182 :<a href="mailto:/"><b>ミッシングパーツ the TANTEI
stories</b></a>:2007/06/15(金) 07:23:46 ID:YyCdStCB0</dt>
<dd>ミッシングパーツ終了です~<br />
ありがとうございました</dd>
</dl><p><br /><br />
おまけ 第3話アナザーエンド</p>
<p>(7日目より分岐)<br /></p>
<p>俺は、哲平と一緒に子守歌の謎に取り組んだが、謎は解けなかった。<br />
数日後、タカが殺された。海岸線で、ずぶ濡れになり、消波ブロックの間に挟まりながら死んでいた。<br />
土に克された水の見立てだ。<br />
そして、次の日。住宅地で、威さんの秘書が死んでいるのが発見された。<br />
焦げた服を着ていて、溺死していた。水に克された火。<br />
俺はふと気がついて、遠羽市の地図を出して、4つの現場を書き入れてみた。<br />
上遠羽、東公園、海岸線、住宅地。<br />
すると、見えてきた。それぞれの現場を五芒星の頂点と見ると、5つ目の現場は・・・紫宵が隠れていたあの倉庫だ。<br />
急いで倉庫に向かった。中に入ると、異臭がする。これは、灯油か?<br />
そう思ったのも束の間、背後に人の気配がしたので振り返ると、火の点いた何かが飛んできた。<br />
すぐさま灯油に引火して、辺りは火の海に。逃げようとしたが、扉は外から鍵が掛けられたようで開かない。<br />
そうか、俺は今、火に克される金なんだ。そう思うと、死ぬことは不思議と怖くはなかった。<br />
END</p>