ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女

「ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女」(2007/08/08 (水) 10:21:30) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p><strong>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</strong></p> <p>part32-105~114,117~120,132~140</p> <hr> <dl> <dt>105 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:48:41 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>序章<br> <br> それは、今から三年前の、ある夜のことだった。<br> <br> 僕は警官に追われていた。だめだ。このままでは見つかってしまう。<br> 物音を立てないように・・・そう思ったが、足元の空き缶を倒してしまった。<br> 「あっ!こんな所にいたのか!」<br> 僕は夢中で走った。警官は追いかけてくる。<br> そして、角を曲がった時、一人の男が僕の行く手を遮ってしまった。<br> 「君、どうかしたのか?」<br> 「あ、あの・・・」<br> とっさに言葉が出ない。警官たちは僕に追いついてしまった。<br> 「住所と名前を聞いただけじゃないか。何で逃げるんだ?」<br> 「この子がどうかしたんですか?」<br> 男は警官に言った。<br> 「あんたはいったい誰だね?この少年の知り合いか?」<br> 「いえ、そういうわけじゃないんですが」<br> 「この少年が、こんな時間にうろついていたので、不審に思い、声を掛けたら、<br> いきなり逃げたんですよ」<br> 「ちょっと待ってください、突然こんなことを言うのもなんですが、<br> ここは僕に任せてもらえませんか?」<br> 「おや?あなたは確か・・・」<br> 「何か事情がありそうだから、この子に話を聞いてみようと思うんです。構いませんね?」<br> 「あなたがそう仰るなら、我々も安心ですよ。では、よろしくお願いします」<br> 警官たちは、あっさり引き上げていった。この男は何者なんだろう?<br> 「あの、どうもありがとうございました」<br> 「いやいや、そんなことより、喉が渇いただろ。どこかで何か飲まないか?ご馳走するよ」<br> <br> 僕は、男と一緒に、小さな喫茶店に入った。<br> 男は、僕にいろいろと質問をしてきたが、僕は答えなかった。<br> 「言いたくなければいいんだよ。<br> うーん。見たところ、中学を卒業したての15才、目下、家出中・・・こんなところかな」<br> ・・・当たっている。この男の観察眼は大したものだ。<br> 男の顔をしげしげと眺める。30代くらいで、ちょっといい男だ。<br> 悪い人でもなさそうなので、僕は、少しずつ、身の上話を始めた。<br> 「ふーん。君は、離れ離れになったご両親を捜すために、旅をしていたのか。<br> 何かワケがありそうだね?」<br> 「・・・・・・」<br> 「それよりも、これからどうするつもりなんだ?泊まるところもないんじゃないのか?」<br> またまた当たっている。そう、今はとりあえず、あてはない。<br> 「君を見ていると、昔の自分を思い出すんだ。だから、放っておけなくて、声を掛けたんだよ。<br> 会ったばかりで、いきなりなんだが、今日のところは、僕の家へ来ないか?」<br> 「失礼ですが、あなたは・・・?」<br> 「僕は空木俊介(うつぎ しゅんすけ)。私立探偵なんだよ。<br> きままな一人暮らしさ。どうだろう、さっきの話。無理にとは言わないが・・・」<br> 警察と知り合いのようだし、悪い人でもなさそうだ。<br> 「じゃあ、今夜はお言葉に甘えて、お世話になります」<br> 「そうか、決まりだな」<br> <br> こうして、私立探偵 空木俊介と出会った僕は、やがて先生の助手となった。<br> そうすることが、離れ離れになった両親を見つける一番の近道だと思ったからだ。<br> 僕は先生の助手として、いくつかの事件に出会った。<br> そして僕は、この恐怖の物語に出会ってしまったのです・・・。<br> <br> ―一人で学校にいると、うしろから誰かの呼ぶ声がする。<br> ―ふり向くとそこには、一人の少女が立っている。<br> ―何かを言いたげな、淋しい少女が、<br> ―あなたのうしろに立っている・・・。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>106 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:50:02 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>1章<br> <br> 僕が空木先生の助手になってから、数ヶ月の日々が過ぎた。<br> そんなある朝、恐ろしい事件の幕開けを告げる、電話のベルが鳴り響いた。<br> 「先生、警察から電話です。また何か、事件のようですよ」<br> <br> 空木先生と僕が、河原に行ってみると、そこには、<br> 見知らぬ少女の死体が、静かに横たわっていた。<br> 濡れたセーラー服に長い黒髪。生前は可愛かったんだろうな。<br> 「空木探偵事務所の人ですか?ご苦労さまです」<br> 見た限り、彼女は絞殺されたようだ。死体の身元はまだわからないと警官は言う。<br> 死体の発見場所を調べることにする。<br> ゴミが溜まっているのでそれを取り除くと、小さな手帳があったので、拾い上げる。<br> 丑美津(うしみつ)高校、1-A、小島洋子(こじまようこ)。<br> この手帳は、生徒手帳のようだ。添えられた写真は、確かに、あの死体の顔だ。<br> 生徒手帳は、鑑識に回されることになった。<br> 「洋子!洋子が、どうして、こんな事に!」<br> セーラー服の女の子と、一人の男が、河原に駆けつけてきた。<br> 「あの、あなたたちは?」<br> 女の子の方は、取り乱してしまってそれどころではないらしい。代わりに男が答えた。<br> 「わたくしは、小島洋子の担任で、日比野(ひびの)と申します。<br> しかし、なぜ、こんなことに・・・。しかも、こんな場所で」<br> 「洋子さんは、何者かに殺されたようです」<br> 日比野さんは30過ぎくらいで、とても真面目そうな先生だ。<br> 平静を装っているが、とてもショックが大きいようだ。顔が青ざめている。<br> <br> 僕と空木先生は、事務所に引き上げてきた。<br> 「やはり、殺人事件でしたね」<br> 「うん。別の場所で殺された後、川へ投げ込まれたらしい。犯行時間は昨夜だということだ。<br> 君は、学校での調査にうってつけの人間だから、警察も頼りにしているらしいよ」<br> そうか。僕が高校に行っていれば、一年生か。洋子さんと同級になる。<br> 「そうそう、河原に来てた女の子に、ここへ来るように言っといたから・・・」<br> 「おじゃまします」<br> 「ほら、噂をすれば・・・」<br> 「あの、今朝は取り乱してしまって、すみませんでした。<br> 私、橘(たちばな)あゆみと言います。洋子は、私の親友でした」<br> 僕は彼女に、形式通りの質問をする。<br> 「洋子さんが殺されたことに、何か心当たりはありませんか」<br> 「解りません。洋子に、人の恨みを買うような、事情があったとも思えない。<br> ただ、ひとつ、気になることがあるんです。<br> 実は、私と洋子で探偵クラブっていうサークルを作ってたんです。<br> テーマを決めて、調査した結果を報告しあうんです。<br> 洋子は、何かを調べていました。<br> それが、彼女が殺されたことに、関係があるのかも知れません」<br> 「洋子さんが、何を調べていたのかは知らないんですか?」<br> 「ええ、でも、何かを一生懸命調べていたことは、間違いありません。<br> その頃からなんです。洋子の様子が変わったって気付いたのは」<br> 「どんな風だったんです?」<br> 「いつも何か、考えているような、<br> そして、時々、別人のような表情を見せるようになったんです」<br> 僕が考え込んでいると、空木先生が言う。<br> 「一度、洋子さんの家に行ってみてはどうだ?」<br> <br> <br></dd> <dt>107 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:50:59 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>「私が案内します」<br> 僕はあゆみちゃんに、洋子さんの家へ連れて行ってもらった。<br> 玄関に出てきた、洋子さんのお母さんに、探偵だと名乗る。<br> 「最近の洋子さんの様子で、何か気づいたことはありませんでしたか?」<br> 「そうですね・・・。一週間ほど前から、あの子、よく出歩くようになりました。<br> 夜遅く帰ってきた後、自分の部屋で何かをしていたようです。<br> 元気もなかったので、心配していた矢先でした」<br> 「一週間前、何かあったんですか?」<br> 「いえ、とりたてて何もなかったと思いますが。<br> そういえば、ある朝、起きてくるなり、こんなことを言ったんです・・・」<br> 洋子さんは、その朝、ヘンな夢を見たと言ったという。<br> 夢の中で、学校の廊下を一人で歩いていると、うしろから自分を呼ぶ声がしたので、<br> 振り返ると、そこに、血まみれの少女が立っていて、<br> 「助けて、ここから出して」と言って、消えてしまった。<br> だが、怖いとは感じなかった。そんな夢だったという。<br> あゆみちゃんが、驚いた表情をしている。<br> 「どうしたの、あゆみちゃん」<br> 「その夢の話に、心当たりがあるの。一緒に、学校へ来てちょうだい!」<br> 「わかった。行ってみよう。お母さん、どうもお邪魔しました」<br> <br> 丑美津高校に着いた。あゆみちゃんに訊く。<br> 「心当たりって、何?」<br> うん、洋子が夢で見たっていう、その血染めの少女の話が、この学校に出るっていう<br> 幽霊の噂ととても似ているの!」<br> 「幽霊の噂?」<br> 「ええ。この学校で、古くから噂され続けている話で、誰でも知ってるわ。<br> ・・・そういえば、洋子、その幽霊のことを話してた!確か、一週間ほど前に!<br> もしかしたら、洋子が調べていたのは、この幽霊の噂だったんじゃないかしら?<br> 私、みんなに聞いてくる!」<br> あゆみちゃんは僕を置いて行ってしまった。<br> しかし、幽霊か・・・気になるな。僕は、通りかかった生徒を呼び止めて、話を聞くことにした。<br> 「この学校の幽霊の噂を聞きたいんだけど」<br> 「それって、もしかして、『うしろの少女』のことかしら?<br> 血染めの少女がうしろに立ってるっていう・・・」<br> 「その少女の幽霊は、うしろの少女って言うんだね?」<br> 「うん。とーっても気味悪い話なの」<br> 「どういう話なの?」<br> 「じゃあ、話してあげるね。<br> ―一人で廊下を歩いていると、うしろから、誰かの呼ぶ声がする。<br> ―振り返るとそこに、血染めの少女が立っている・・・。<br> だいたい、こんな感じ。<br> こういうのって、大抵、昔何か事件があったりするのよね。<br> 自殺した生徒がいたりとか。<br> まぁ、昔のことなんて私にはわからないけど」<br> 「誰か、詳しい人、知りませんか?」<br> 「学校のことをよく知っている人がいるとすれば、駒田(こまだ)先生じゃないかしら?」<br> 「駒田先生?」<br> 「美術の先生よ。古い話なら大抵知ってるわよ」<br> <br> <br></dd> <dt>108 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:52:11 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd><br> 僕は美術室へ向かった。そこには、見覚えあるおじさんがいる。<br> ぼさぼさ頭で・・・(って、それは前作だけど二年後だって!)<br> とにかく、誰かさんに似ている人だ。確かに、彼の年齢なら、昔のことも知っていそうだ。<br> 「わしが駒田ぢゃ、よろしく」<br> 「事件のことは、ご存知ですね?」<br> 「今朝、聞いた。かわいそうにのう・・・」<br> 駒田先生に、うしろの少女について訊く。<br> 「生徒でもないのに、よく知っとるのう。<br> 古くから噂されとる話しぢゃ。そう、15年くらい前から、噂され始めて、<br> 今でも見た人がいるという話ぢゃ」<br> 「15年前、学校で何か事件はありませんでしたか?」<br> 「そうぢゃのう・・・。そうそう、一つ思い出したぞ。<br> 15年前の11月頃、女生徒が行方不明になったんぢゃ」<br> 「その生徒は、どうなったんです?<br> いまだ、見つかっとらん。生きているとは思えんのう・・・」<br> 「うしろの少女の噂は、女生徒の失踪と関係があるんじゃないでしょうか?」<br> 「かも知れん。時期が、ほとんど同じぢゃし。<br> そういえば、うしろの少女のことを聞きに来た女生徒がいたのう。<br> ん?殺された女生徒はなんという名前ぢゃった?」<br> 「小島洋子ですが・・・」<br> 「たぶん、その子じゃ」<br> ふと時計を見ると、だいぶ遅い時間になっていた。そろそろ引き上げよう。<br> 「明日もお邪魔していいですか?」<br> 「もちろんぢゃ、協力するぞ」<br> <br> 僕は探偵事務所に戻ってきた。空木先生が待っていた。<br> 「お帰り。どうだ?調査の方は。<br> ・・・実は、知り合いの刑事から、11月に時効になってしまう、<br> ある殺人事件の調査を頼まれてしまったんだ。<br> だから、小島洋子の事件は、ほとんど君一人の調査になりそうだ。<br> 心細いだろうが、頑張ってほしい」<br> 空木先生は、僕に、鑑識から帰ってきたという、洋子さんの生徒手帳を渡すと、<br> 警察署に行くと言って、出て行ってしまった。<br> 困ったことになってしまった。これからどういう風に調査しようか・・・。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>109 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:53:35 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>2章<br> <br> 昨日の約束通り、丑美津高校の美術室に行ってみたが、駒田先生はいなかった。<br> 辺りの生徒に、小島洋子のことを尋ねると、旧校舎の前で見かけたという人がいた。<br> 僕は、旧校舎の前に行ってみた。ここで洋子さんは何をしていたんだろう?<br> 旧校舎の壁に一ヶ所だけ、色が違うところがある。そこだけ塗りなおされたらしい。<br> 「おい!壁にイタズラするな!ここで何しとる!」<br> 作業服姿の、60前といった感じの男に怒鳴られた。<br> 男は田崎(たざき)さんという、この学校の用務員だそうだ。<br> 洋子さんのことやうしろの少女のことを訊くと、田崎さんは僕を疑り深い目で見るので、<br> 探偵だと名乗ると、慌てた様子で去っていってしまった。何だか怪しい。<br> <br> 遠くにあゆみちゃんの姿が見えたので、ついていってみることにする。<br> あゆみちゃんは、廊下の突き当たりの、大きな鏡の前で立ち止まった。<br> 鏡に映る僕の姿に気がつき、あゆみちゃんは振り返った。<br> 「あら、あなただったの。やっぱり、洋子は、うしろの少女のことを、<br> いろんな人に聞いて回っていたみたいよ。ちょうど一週間ほど前から・・・。<br> でも、うしろの少女のことと、洋子が殺されたことと、どう繋がるのかしら・・・」<br> あゆみちゃんは、なぜ、こんな所にやって来たのだろう?<br> そんなことを思っていると、あゆみちゃんが口を開く。<br> 「実は、ここで洋子と会ったことを思い出したの。<br> 洋子の様子が変わってから、少したったある日、私、この鏡の前に立っていたの。<br> すると、うしろから近づいてきた洋子が私にこう言ったの。<br> 『あゆみ、あのうしろの少女のことだけど、<br> 彼女、本当に、あなたのうしろに立っているかも知れないわよ』」<br> 「それじゃ、まるで、洋子さんが自分のことを<br> うしろの少女だって言ったみたいじゃないか?!」<br> 「でも、それだけしか言わなかったの。洋子、いったい何を言いたかったのかしら。<br> 私、なんだか怖いわ」<br> <br> あゆみちゃんと別れて、美術室に向かうと、駒田先生がいた。<br> 僕は駒田先生に、生徒手帳を見せる。<br> 確かに洋子さんは、駒田先生の所に来たそうだ。<br> 「やたらと話を聞きたがる彼女の様子は、気味が悪いほどぢゃったぞ」<br> あの怪しい男、田崎さんのことも聞いてみる。<br> 「田崎は、用務員になる前、左官屋だったそうぢゃ」<br> 「じゃあ、あの旧校舎の壁を塗ったのは・・・」<br> 「左様、田崎が塗ったんぢゃ。かなり前、あれが崩れ落ちたとき、田崎が修理したんぢゃ」<br> そうだ、15年前に行方不明になった女生徒は?<br> 「そうそう、失踪した女生徒は、浅川(あさかわ)しのぶという、当時1-Aの生徒だったんぢゃよ!」<br> 「浅川しのぶ・・・。何か、彼女について覚えていることはありませんか?」<br> 「それが、記憶にはないんぢゃ。ただ、彼女はなにかの事件に巻き込まれたのでは、という<br> 噂だったと思うが」<br> 駒田先生はもう帰ると言うので、僕も帰ることにした。<br> <br> 探偵事務所には空木先生がいた。<br> 「調査は順調かい?僕の方は、頼まれた事件のあらましを説明してもらったところだ」<br> 空木先生は、調査している事件のことを話してくれた。<br> 15年前に、金田源治郎(かねだげんじろう)という、この町のスナックのオーナーが殺された。<br> 当時、有力な容疑者と見られた男性は、自殺体で発見された。<br> それから、事件は迷宮入りしてしまった・・・。<br> 「手掛かりは何もないんですか?」<br> 「うん、犯行時、その現場に居合わせたと見られた人物がいたそうだ。<br> 当時、丑美津高校の一年生で、浅川しのぶという女の子だったと・・・」<br> 「その子、それ以来、行方不明なんですよね?<br> ・・・先生、二つの事件には、何か関係がありそうですよ」<br> 「今から、警察に行って話を聞いてきたまえ」<br> 「ええ、そうします!」<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>110 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:54:20 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>3章<br> <br> 僕は警察署にやって来た。<br> 受付の婦警さんに空木探偵事務所の者だと告げると、刑事さんが現れた。<br> 「ほう、君が空木さんの助手なのか。<br> 初めまして、捜査1課の丸山と申します。<br> 金田源治郎殺人事件の話を聞きたいそうだね」<br> 刑事さんに話を聞く。<br> 金田は、15年前の2月にこの街に引っ越してきて、スナックを開いた。<br> そして、その年の11月10日の午後9時ごろ、自宅で殺された。<br> 死因は、刃物でメッタ突きにされたことによる出血多量。<br> 犯行の手口から見て、金田に対して恨みを持っている者の犯行かと思われた。<br> 金田は、表向きはスナックのオーナーだが、裏ではワルだった。<br> 個人で違法な高利貸しをやっていたし、詐欺も働いた。多くの人が被害にあっている。<br> だが、金田は尻尾を出さず、警察にはなかなか捕まらなかった。<br> 警察が重い腰を上げ、捜査に乗り出そうとした矢先に、金田は殺された。<br> つまり、金田を恨んでいる人、容疑者は大勢いる。凶器も見つかっていない。<br> 金田には、当時、16歳になる五郎という一人息子がいた。<br> 五郎はかなりの遊び人で、今でもブラブラしているそうだ。<br> 金田のスナックに入り浸っていた不良少女たちは、五郎と知り合い、<br> そのうち家にまで遊びに行くようになった。<br> 特に、丑美津高校の女生徒が多かったようだ。<br> それというのも、金田の家は丑美津高校の近くにあったからだ。<br> 事件のあった晩、五郎と遊びに行く約束をしていた少女が、金田の家で五郎の帰りを待っていたそうだ。<br> 「それが、浅川しのぶなんですね?」<br> 僕がそう言うと、刑事さんは驚く。<br> 「その通りだ。彼女は、何らかの形で事件に巻き込まれたのだろう、という謎を残したまま、<br> 行方不明になってしまった。正直なところ、もう死んでいると思うよ」<br> 金田の家から十数メートル離れた道路に、しのぶと同じAB型の血液が見つかったという。<br> しのぶは、金田を殺した犯人の顔を見てしまったので、犯人に殺されたか、<br> あるいは連れ去られたのかも知れない。<br> しかし、警察は、しのぶについてもう一つの仮説を立てていた。浅川しのぶ犯人説。<br> 事件後すぐに姿を消したのは、やはり怪しい。<br> 未成年のしのぶが犯人だったときのことを考えて、マスコミにはしのぶの名前を報道しないように指導した。<br> 聞き込みするときも気をつかった。だから、直接の関係者以外は、事件のことをはっきり知らないだろう。<br> でも、犯人は別にいて、しのぶは殺されたのだ思う、と刑事さんは言う。<br> 犯行が行なわれた直後、五郎は帰ってきて、警察に通報した。<br> その夜、五郎は、帰る途中で、一台の車とすれ違ったと言っていた。<br> 黒い乗用車というだけで、車種もナンバーも不明。しかし、犯行に車が使われた可能性は大きい。<br> しのぶを連れ去るためにも、車は必要だ。<br> 「ところで、容疑者と見られた人が、自殺体で見つかったということですが・・・」<br> 「ほう、よく知ってるね。そう、内田輝彦(てるひこ)という男が自殺しているんだよ」<br> 内田は小さな町工場を経営していたが、金田によって、工場を騙し取られてしまったという。<br> 内田に、参考人として事情を聞こうとしていたところ、犯行の数日前から行方不明になっていたため、<br> 行方を探したが、死体となって発見された。<br> 内田が犯人かも知れないが、確証は何もない。他の容疑者はアリバイが崩せなかった。<br> そして今年、時効を目前に控えてしまったのだ・・・。<br> <br> 僕は警察署を後にした。聞いてきたことを整理する。<br> 洋子さんは、うしろの少女を調べているうちに、金田の事件に気付いたのかも知れない。<br> そして、洋子さんは重要な手掛かりを見つけ出し、その結果辿り着いた犯人の正体が、<br> 内田以外の人間だったとしたら、洋子さんはその犯人によって・・・?!<br> だが、この推理を裏付けるためには、洋子さんが金田の事件を知っていたのか、確かめる必要がある。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>111 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:55:03 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>4章<br> <br> 僕はまた洋子さんの家に行ってみることにした。<br> ベルを鳴らすと、洋子さんのお母さんが玄関口に現れた。<br> 僕が事情を説明すると、お母さんはなにか手掛かりになるかも知れないと言って、<br> 洋子さんのカバンを持ってきてくれた。<br> 中を見せてもらう。教科書に、ノートが何冊か。<br> ノートを取り出して見ると、そこには金田の事件の新聞の切抜きがびっしりと貼られていた。<br> 洋子さんが金田の事件を知っていたのは間違いないようだ。<br> <br> また丑美津高校で聞き込みだ。手掛かりは、きっとある。<br> 辺りの生徒を捕まえて話を聞くが、金田の事件は古すぎて知らないという。<br> だが、駒田先生なら知ってるかもね、ということだ。<br> また駒田先生か。美術室へ行ってみる。<br> 美術部員がいたが、駒田先生はいないようだ。<br> 美術部員に話を聞くと、なんと、うしろの少女を最初に見た人を知っていると言う。<br> それは生物の葉山先生らしい。<br> それからしばらくして、駒田先生が美術室にやって来た。<br> 金田の事件や浅川しのぶのことを話すと、駒田先生は覚えていると言う。<br> 五郎のことや、内田のこと、警察で聞いてきた事を説明する。<br> 「それが、今度の事件と関係があるんか?」<br> 「金田の事件の犯行現場に居合わせたと見られ、そのまま行方不明になってしまった少女が、<br> 浅川しのぶなんですよ」<br> 「・・・あの事件にまきこまれとったんか。<br> で、小島が殺された事とあの事件とどう繋がるんぢゃ?」<br> 「うしろの少女を調べていた洋子さんは、偶然知ってしまった金田の事件の真犯人に殺されたんじゃないか<br> と思うんですよ」<br> 「あの事件が解決すれば、小島を殺した犯人が解るかもしれんわけぢゃな」<br> さっき聞いた、葉山先生のことも聞いてみる。<br> 「最初にうしろの少女を見たのが葉山くんだとすれば、それは15年前のはずぢゃ。<br> 彼女がここの教師になって、まだ10年あまりぢゃ。<br> ・・・あっ、葉山くんは、ここの卒業生ぢゃ。在学中に見たということぢゃな。<br> 彼女なら、ほかにも、何か知っとるかもしれん」<br> 駒田先生は葉山先生を呼んできてくれた。<br> 葉山先生にうしろの少女のことを聞く。<br> 「・・・その日は、15年前の11月10日のことです」<br> 「金田が殺された日ですね?」<br> 「ええ、だからはっきり覚えているんです。<br> その日の午後10時頃、私は宿題のプリントを学校に忘れてきたことに気付いたんです。<br> 家を抜け出して、こっそり学校へ取りに行ったの。<br> プリントを持って、帰ろうとしたとき、後ろから誰かに呼ばれたような気がしたんです。<br> やばい!と思って振り返ると、ある教室の窓のところに、血にまみれた少女が立っていたんです!<br> もうびっくりして、気が遠くなりそうでした。<br> それで、もう一度見たんですけど、そこには誰もいませんでした・・・。<br> 私、あわてて逃げたわ」<br> 「・・・・・・」<br> 「うしろの少女は、きっと、しのぶさんの幽霊よ。薄暗かったから、顔まではわからなかったけど、<br> でも、その幽霊、セーラー服を着ていたの。<br> ・・・今と同じ話を、小島さんにも話したの。そのあと、小島さんと田崎さんが言い争っているのを見かけたわ」<br> <br> <br></dd> <dt>112 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:55:45 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>用務員室に行き、田崎さんに、洋子さんと言い争っていたことを聞くが、<br> 田崎さんはうろたえながら、知らないと言い張った。<br> 明らかに何か隠しているので、問い詰めようと思ったとき、そこにあゆみちゃんが来た。<br> 「あゆみちゃん、どうしてここへ?」<br> 「あなたに話があったの。<br> 昨日、洋子の死体が発見された河原へお花を供えに行って、ついでに聞き込みをしていると、<br> ちょっと気になる話が聞けたの!<br> 洋子が殺された晩、あの川原で、挙動不審な初老の男性が目撃されていたの。<br> 顔は解らなかったようだけど、話からすれば、ちょうど田崎さんぐらいの・・・」<br> 田崎さんは逆上した。<br> 「お、お前ら、よってたかって人のことを・・・!」<br> 用務員室から追い出されてしまった。僕はあゆみちゃんに声をかける。<br> 「あゆみちゃん、帰るんだったら送ってくよ」<br> 「私、これから職員室に行くの。一緒に行く?」<br> 「そういえば、事件の日以来、日比野先生に会ってないな。一緒に行くよ」<br> <br> 職員室に着いたとき、視線を感じて振り返ったが、そこには誰もいなかった。<br> 日比野先生は事件のショックからまだ立ち直っていないようで、<br> 何を聞いても取り合ってくれない。<br> そこに、いかにも紳士、という感じの初老の男性が現れた。年は、60前かな?<br> 「日比野くん、どうしたんだね?さっきから呼んでいたんだよ。<br> ・・・おや?君は・・・探偵さんだね。初めまして、校長の浦辺(うらべ)です」<br> 校長先生は、日比野先生と話があるからと言って、日比野先生を連れて行ってしまった。<br> 職員室を出ると、ちょうどあゆみちゃんも出て来た。<br> あゆみちゃんは僕に話しかける。<br> 「ねえ、私、あなたのお手伝いをする!犯人を早くみつけたいの!<br> 打ち合わせもしたいし、帰りに事務所へお邪魔してもいいでしょ?」<br> あゆみちゃんの気持ちはよくわかる。だが、彼女の安全のためにも関わらせちゃいけない。<br> 「あゆみちゃん、君は事件に関わっちゃダメだ。危険すぎるよ」<br> 「・・・私、余計なこと言っちゃったみたいね。ごめんなさい」<br> あゆみちゃんは去って行ってしまった。<br> <br> 探偵事務所に帰ってくると、電話が鳴り出した。空木先生からだった。<br> 「君に知らせておきたいことがあるんだ。当時、金田殺しの容疑者と見られた人物がもう一人いたんだ。<br> なんと、丑美津高校の関係者なんだ」<br> 「それは、田崎じゃないですか?」<br> 「その通り。金田に相当な借金をしていた田崎は、事件の数日前、金田と言い争っているところを目撃されている。<br> だが、アリバイがあったんだ。犯行時間、田崎は学校に残って、壁の修理をしていたと言ったらしい。<br> その壁の修理を頼んだのは、浦辺校長だったんだ。浦辺は、金田と面識もなく、<br> 事件と関係があるとも思えない。アリバイは、成立したそうだ。<br> ・・・ああ、それから、あのあゆみという女の子のことだけど、<br> 彼女の行動には、気をつけておいた方がいいと思うよ」<br> 田崎が修理していた壁とは、あの旧校舎の壁のことだろう。<br> しのぶさんが行方不明になったあの夜に修理されたのか・・・。<br> 何か秘密が隠されているような気がする。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>113 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:56:33 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>5章<br> <br> 丑美津高校の用務員室に行く。<br> 田崎さんは僕を追い返そうとしたが、僕は言った。<br> 「田崎さん、あなた、金田のことはよくご存知ですね?<br> あなたにやましいところがなく、当時のアリバイに嘘がないのなら、<br> 話を聞かせてください」<br> 田崎さんは話し出した。<br> 「事件の晩、わしは、校長に、旧校舎の壁の修理を頼まれとったのを思い出して、<br> 夜の9時から12時までかけて、塗ったんじゃ」<br> 「校長先生が、あなたのアリバイを証明したんですね?」<br> 「そうじゃ。わしが壁を塗っとる間、ときどき様子を見にきなさった。<br> ・・・もうええじゃろ。正直に話したぞ、出て行ってくれ!」<br> <br> 授業が終わる頃を見計らって、職員室に行く。<br> 浦辺校長に話を聞きたかったが、もう帰ってしまったという。<br> 葉山先生がいたので、にもう一度話を聞いてみようとしたが、<br> 職員室は人が多いせいか、葉山先生は何も話そうとはしない。<br> 僕は葉山先生を旧校舎のところへ連れて行った。辺りには誰もいない。<br> そこは、田崎さんが塗ったという壁の前だった。<br> 「この壁、15年前の、あの事件があった晩に、田崎さんが塗ったそうなんですが」<br> 僕がそう言うと、葉山先生は少し驚いた顔をした。<br> 「えっ?ああ、そうね、たぶんその通りよ。<br> あの晩、うしろの少女を見て、逃げるとき、私ったら、気が動転しちゃったせいか、<br> 気が付くと、この旧校舎のところに来ていたのよ。<br> この辺りで靴が片方脱げちゃってね、怖かったからそのまま帰ったの。<br> で、次の日、靴を探しに来たとき、この壁は綺麗に仕上がっていたわよ」<br> 「あの晩、ここを通ったんですね?」<br> 「ええ、10時過ぎに・・・」<br> 「田崎さんは、あの晩、9時から12時までこの壁を塗っていたと言うんですが、<br> 田崎さんを見かけましたか?」<br> 「えっ?田崎さんなんていなかったわよ」<br> また昨日みたいに視線を感じたので振り返ると、そこには田崎さんがいた。<br> 逃げる田崎さんを僕は追いかけたが、見失ってしまった。<br> <br> 僕はひとり、探偵事務所で自分のミスを恥じていた。<br> そこへあゆみちゃんが訪ねてきた。<br> 「あゆみちゃん、どうしたの、こんな時間に」<br> 「・・・・・・」<br> あゆみちゃんは何かを思いつめている様子だ。<br> 「どうしたの?元気ないじゃない」<br> 「教えてちょうだい。田崎さんが、洋子を殺した犯人なの?もし、そうなら、私・・・」<br> 「あゆみちゃん、そんな事どこで聞いたのか知らないが、君は事件に関わっちゃだめだ」<br> 「だって・・・」<br> 「だって、じゃない!自分の身が危険なのが、まだ解らないの!?」<br> 僕は思わず怒鳴ってしまった。ちょっときつく言い過ぎたかな。<br> 話題を変えよう。<br> 「そうだ、あゆみちゃん、コーヒーをいれるよ、飲むだろ?」<br> 「あ、私がやるわ」<br> あゆみちゃんがいれたコーヒーを一口飲むと・・・。<br> 「あれ、へ、変だな?体の自由がきかない!ま、まさか、あゆみちゃん!」<br> 「ごめんなさい・・・」<br> 「な、なぜなんだ、あゆみちゃん・・・」<br> 僕は、薄れゆく意識の中で、何度もあゆみちゃんの名を呼んだ。<br> 「あ・・・あゆみ・・・ちゃん・・・」<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>114 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 18:58:23 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>6章<br> <br> 電話が鳴ってる・・・。あ、切れた。<br> だんだんと意識が戻ってきた。ここは探偵事務所のソファーの上だ。<br> そうだ、あゆみちゃんが・・・でも、なぜ・・・?<br> 起き上がる。あゆみちゃんはもういない。床に睡眠薬の瓶が転がっているのを見つけた。<br> そして、テーブルの上には書置きがある。<br> 「ごめんなさい。私、犯人をどうしても許せない。それが誰なのか、<br> 本当に田崎さんなのかを、自分で確かめたかったの。<br> もしかすれば、私、二度とあなたに会えないかも知れないね。<br> でも、私、どうしても・・・。<br> 勝手なことをしてごめんなさい。さよなら    -あゆみ-」<br> <br> なんて無茶を!<br> 僕は書置きを握りしめ、事務所を飛び出した。どこにいるんだ、あゆみちゃん!<br> 迷路のように広がる街の中を走る。<br> 丑美津高校の制服の、後姿の少女を見つけた。<br> 「あっ、いた!あゆみちゃん!」<br> だが、人違いだった。<br> 「ねぇ、あゆみって、もしかして、橘さんのこと?<br> 橘さんは、今日、休んでたわよ。風邪だっていうことだけど、<br> さっき、駅前の繁華街で、橘さんに似ているコを見かけたわよ」<br> <br> 繁華街には大勢の人が行き交っている。この中から一人を見つけるのは不可能に近い。<br> くそっ、あゆみちゃんはどこに・・・?<br> 酔っぱらいのおぢさんに絡まれたが、風俗店の呼び込みのお兄さんに助けてもらった。<br> 「助かりました」<br> 「それより、ここは子供の来るところじゃないよ」<br> 呼び込みのお兄さんは、通りかかった二人連れの方に行ってしまった。そこに、見覚えのある顔がある。<br> あれは浦辺校長だ。一緒にいる人相の悪い男はだれだろう。<br> そのとき、後ろから僕を呼ぶ声がする。振り返るとそれは洋子のお母さんだった。<br> 「あっ、洋子さんのお母さん!あゆみちゃんが・・・」<br> 「私も、あゆみちゃんのことで話があるのよ。今日の午後6時頃、うちにあゆみちゃんが来たの」<br> 6時・・・事務所へ来て、僕を眠らせた後だ。<br> 「洋子にお線香を上げに来ただけだって言ってたんだけど、<br> ひどく思いつめていたみたいなのよ。最後に、『さよなら』って言い残して、<br> 心配になったから探していたの」<br> 「お母さん、実は、あゆみちゃん、僕を睡眠薬で眠らせて、事務所を出て行ったんです」<br> 僕は、あゆみちゃんが残した書置きをお母さんに見せた。<br> 「この、田崎っていう人が洋子を?・・・一人で犯人を捜そうなんて、無茶だわ!」<br> 「僕が、彼女の協力を頭から拒んだのがいけなかったんです・・・」<br> 「田崎って人は、今、どこに?」<br> ・・・そうだ、あゆみちゃんは田崎さんのところにいるのかも知れない。<br> 「僕、田崎の家へ行ってみます!」<br> 「待って、これ、あゆみちゃんの写真。あなたに渡そうと思って持ってきたの。これで早く見つけて!」<br> 僕は写真を受け取ると、田崎さんのアパートへ急いだ。<br> <br> 田崎さんのアパートの前に来たが、田崎さんが帰っている様子はない。<br> あゆみちゃんもいないようだ。<br> 隣の部屋に住んでいる男の人がいたので、話を聞くことにする。<br> あゆみちゃんの写真を見せると、今日来たと言う。<br> 「4時過ぎに、表で田崎さんの声がしたから、出てきたんだ。<br> すると、この子がいて・・・。田崎さんが走っていってしまったんだ。<br> 預かってた小包を渡そうと思ったのに」<br> 「その小包、見せてください!」<br> さすがに中を開けるのはまずいが、差出人が誰かは確認できる。<br> 「丸福村(まるふくむら)7-4 田崎ふみ」<br> 「丸福村ってのは、小さな漁村で、田崎さんの故郷だよ。<br> そうそう、その写真のコ、この小包の住所をメモして帰ったよ」<br> ま、まさか、あゆみちゃんは丸福村へ?<br> <br></dd> <dt>117 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 20:00:53 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>僕は丸福村へ行き、田崎さんの母親、ふみさんと会った。<br> 探偵だと名乗ると、ふみさんは慌てた様子を見せる。<br> 「俊夫が、俊夫がまた何かやったんですか?」<br> 俊夫、田崎さんはそんな名前だったな。<br> 「俊夫は、今まで人様に迷惑ばかりかけてきました。<br> カッとすると、何をするか解らん性格ですが、根は優しい子なんです。<br> 都会暮らしが長かったせいか、荒れていた頃もあったようです。<br> そんな俊夫を正しく導いてくだすったのが、浦辺というお方ですわ・・・。<br> なのに、あのばかたれは、また・・・」<br> ふみさんは泣き出してしまった。そこへ男が訪ねてきた。<br> 男にあゆみちゃんの写真を見せると、崖の方へ行ったと教えてくれた。<br> <br> 崖に駆けつけた僕は、田崎さんに捕らえられたあゆみちゃんを見つけた。<br> 田崎さんの手には包丁が握られている。<br> 「馬鹿な真似は止せ!逃げられないぞ!」<br> 「来るな!わしはもう、おしまいじゃ!」<br> 田崎さんを説得しようと試みたが、田崎さんは死ぬ覚悟だ。<br> 僕は、隙を見つけて飛びかかった。それに気付いた田崎さんは包丁を振り下ろそうとしたが、<br> 寸前のところで止めて、がっくりとうなだれた。<br> 「できん、わしは人など殺せん・・・」<br> 「田崎さん、何もかも話してくれますね?」<br> 「はい・・・」<br> 金田が殺された日は、借金の返済日だったそうだ。<br> だが、返す当てがなかったので、田崎さんは金田に謝りに行こうとした途中、<br> 金田が殺されたのを知ったという。<br> このままでは疑われてしまうので、アリバイを作るために、夜中に学校に忍び込み、壁の修理をした。<br> 翌日、浦辺校長に全てを話すと、校長は、田崎くん、君は人殺しが出来るような人間ではない、<br> 私に任せておけと言ったそうだ。<br> そして、校長は嘘の証言をし、田崎さんのアリバイは成立した。<br> 「浦辺校長は、わしみたいな人間を、二度も信じてくださった」<br> 昔、田崎さんが左官屋だったとき、傷害事件を起こし、クビになってしまったそうだ。<br> そんなとき、浦辺校長と知り合い、用務員として雇ってくれたという。<br> 「今の話に、嘘はありませんね?」<br> 「はい」<br> 「それでは、今度は小島洋子のことを聞かせてください」<br> 洋子さんは、田崎さんのアリバイが嘘だということに気づいていたという。<br> それで洋子さんは田崎さんを問い詰め、口論になった所を葉山先生に見られた。<br> それからしばらくして、洋子さんは殺された。<br> 「なぜ、本当の事を今まで話してくれなかったんです?」<br> 「それは、無実の罪をかぶるより、耐えがたいことがあったからじゃ」<br> 本当の事を話せば、自分を信じてくれた浦辺校長を裏切ることになる。<br> 校長へのせめてもの恩返しにと、故郷の海で死のうと決めた。でも、あゆみちゃんに見つかってしまった。<br> 「思わず、あゆみさんを酷い目に合わせてしもうた!ゆ、許してくれ!!」<br> 「田崎さん、もういいのよ」<br> あゆみちゃんは怒ってないようだ。<br> 「私、田崎さんの言葉に嘘はないと思う。お願い、信じてあげて!<br> それから・・・ごめんなさい」<br> 「あゆみちゃん。良かった、無事で」<br> <br> 翌日、あゆみちゃんと僕は、探偵事務所に帰ってきた。<br> 「これには驚いたよ、まるで遺書じゃないか」<br> あゆみちゃんに書置きを見せる。<br> 「あなたにもしもの事があったらどうしようと思ったの。だから、私ひとりで・・・」<br> 「ありがとう。でも、あんな無茶・・・」<br> 「友達を亡くすのはもう嫌だもん」<br> 「・・・・・・」<br> 「今からなら、午後の授業に間に合う。私、学校へ行くわ」<br> 「じゃあ、送っていくよ」<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>118 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 20:01:42 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>7章<br> <br> 丑美津高校に着いた。<br> 「あっ、そうだ、実は私・・・」<br> あゆみちゃんが何か話そうとすると、チャイムが鳴った。<br> 「もう行かなきゃ。放課後、旧校舎で話すわ」<br> そう言ってあゆみちゃんは去っていった。<br> <br> 放課後まで、どうやって時間をつぶそうか考えていると、葉山先生に声をかけられた。<br> 「校長先生がお呼びよ。あなたにお話があるらしいの」<br> 校長室に通された。<br> 「申し訳ありません。事件のことをお聞かせ願おうと、お呼びしました」<br> 僕は、事件の成り行きを浦辺校長に話した。<br> 「田崎は、疑われていたのですか・・・。<br> 田崎は人を殺すような人間ではありません。わたくしは、田崎を信じております。<br> 今も、そして15年前の、あの事件のときも・・・」<br> 浦辺校長は、大切な生徒を、<br> 小島洋子も、浅川しのぶも守れなかった、と言って悲しい目をした。<br> 浦辺校長は、評判どおりの人物のようだ。<br> それだけに、先日、繁華街で一緒にいた、人相の悪い男とは不釣合いだ。<br> 「実は、先日、あなたを見かけたんですが・・・」<br> 「えっ?」<br> そのとき、電話が鳴り出した。<br> 「すみません、お話は後にしていただけませんか」<br> 僕は校長室を出て、職員室に行った。<br> 日比野先生が沈んだ様子で座っている。顔色が悪い。<br> 日比野先生と少し話をしてから、電話が終わった頃だろうと校長室に戻る。<br> だが校長先生はいなかった。窓のブラインドが閉めてある。<br> ブラインドをちょっと覗くと、校長と一緒にいた人相の悪い男の姿が見えた。<br> <br> <br></dd> <dt>119 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 20:02:26 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>慌てて外に出てみたが、男はもういなかった。<br> その代わり、へんな男子生徒に声をかけられた。<br> 「何もんだ、てめーわ・・・」<br> 剃り落とした眉毛に、整髪料で独特の形に固めた髪。所謂ツッパリってヤツだ。<br> 「男の人を見かけなかった?」<br> 「なれなれしい野郎だ。ちょっちツラ貸しな」<br> 人気のないところに連れて行かれてしまった。<br> 「テメーだろ、学校をうろついてるヘンな野郎ってのは?あ?!」<br> 僕は、探偵で怪しい者ではないと説明するが、男子生徒は信じてくれない。<br> 「ざけんなよっ!ガキの探偵はファミコンだけだ!」<br> 彼はさっきから「ざけんな」とか「ばっくれ」とか「ガンくれ」とか、聞きなれないことばかり言う。<br> ヘンなのにつかまったな、と困っていると、あゆみちゃんが通りかかった。<br> 「何してるの?」<br> あゆみちゃんが、僕が怪しいものではないと説明すると、彼の表情は和らいだ。<br> 「私、あなたと葉山先生が美術室で話しているのを立ち聞きして、<br> そのとき知った、金田の事件を調べてたの。お願い、手伝わせて!犯人を早く捕まえたいの!」<br> 僕に向かって懇願するあゆみちゃん。<br> 「話は聞かせてもらったぜ」<br> 男子生徒が口を挟む。<br> 「そーゆーコトなら、協力しよーじゃねぇか」<br> 「ありがとう、ひとみちゃん」<br> あゆみちゃんは彼をひとみちゃんと呼んだ。<br> 「牛美津高校 番格、河合(かわい)ひとみだ、ヨロシク!」<br> ひとみちゃんは、洋子さんの同級生で、生前親しくしていたそうだ。<br> 「まだ返事を聞いてねぇぜ」<br> そうだった。ひとみちゃんは強そうだし、あゆみちゃんのボディガードになれるかも。<br> 「・・・手伝ってもらうよ」<br> 僕は二人にそう言った。<br> 改めて、ひとみちゃんに、人相の悪い男がいなかったかどうかを聞く。<br> 「さっきの野郎なら、校長と行っちまったぜ。<br> 洋子の事件以来、妙な野郎が来てるみたいなんで、気にしてたんだが、<br> 奴は校長の知り合いみてーだし、オメーを疑っちまった。すまねぇ」<br> あゆみちゃんの提案により、三人で手分けして調査することになった。<br> 僕は金田の事件、ひとみちゃんは人相の悪い男のこと、そしてあゆみちゃんはその他のこと。<br> 放課後、旧校舎の前で会おうと約束し、ひとみちゃんは張りきって聞き込みに出かけた。<br> <br> 浦辺校長がまた来るかも知れないと思って、僕はまた繁華街にやってきた。<br> まだ時間が早いせいか、人通りは少ない。<br> あのときと同じ、風俗店の呼び込みのお兄さんが呼び込みをしている。<br> お兄さんとしばらく話をしていたが、お兄さんは暇だからと言って店の中に引っ込んでしまった。<br> 僕みたいなのが入っていい所ではないと思いつつも、店の中に入ってみる。<br> 案の定、おじさんに止められた。<br> 「おいおい、入っちゃだめだよ」<br> おじさんに探偵だと名乗った。<br> 「僕はここの店長だが、何を調べてるんだ?」<br> これくらいの年なら、15年前のことも知ってるかな、と思い、<br> 金田の名前を出すと、店長は反応した。<br> 「それなら、よく知ってるよ」<br> 店長と五郎は、若い頃遊び仲間だったそうだ。<br> 五郎は、養子で、金田源治郎とは他人だったらしい。<br> そのせいで、五郎が源治郎を殺したのではないかという噂が立ったそうだが、<br> 五郎は源治郎と上手くやっていたし、殺す動機がない。<br> 店長は懐かしいという様子で話す。<br> 「五郎とは、もう10年以上会ってないよ」<br> そろそろ忙しくなる頃だと言うので、店長は店の奥に去っていった。<br> 浦辺校長は来そうにないし、僕は帰ることにした。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>120 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/02(木) 20:03:08 ID:9wmRSnnp0</dt> <dd>8章<br> <br> ひとみちゃんやあゆみちゃんの調査はどうなっているのだろう?<br> 僕は丑美津高校を訪ねた。<br> 旧校舎の前で待っていると、やがてひとみちゃんがやってきた。<br> 「あの男は、洋子が殺された翌日に、初めて現れたみてえだぜ。<br> しかし、犯人だったらなおさらこんな所へ来ねぇだろーし。<br> 結局誰だかわかんねえが、校長の知り合いにしちゃ、釣り合わねぇな、あいつ」<br> <br> 美術室で駒田先生に会う。<br> 「結局、金田源治郎殺しについては、何もわからんのぢゃな・・・」<br> 「ええ。手掛かりといえば、五郎が見た黒い車くらいです」<br> 僕は何気なく、壁に掛かった絵を見た。セーラー服の少女の絵。<br> 前に来た時はなかったよな?あっ、今、瞬きした・・・なんてことはない。<br> そこへあゆみちゃんがやって来た。少女の絵を見て驚く。<br> 「この絵の少女・・・洋子に似てる!鏡の前で話し掛けてきた洋子にそっくり!」<br> 僕は駒田先生に聞いてみた。<br> 「先生、この絵の少女、洋子さんがモデルでは?」<br> 「そういえばなんとなく・・・。ぢゃが、彼女ではない。<br> 昔の美術部員が、卒業するとき置いてったんじゃ。<br> 確か、桂木(かつらぎ)という女生徒が描いたものぢゃったな。<br> あっ!思い出した。この絵のモデルは・・・浅川しのぶぢゃ!<br> 作者を訪ねてみてはどうぢゃ?」<br> <br> 少女の絵を描いた、桂木さんの家に来た。<br> 「初めまして、桂木です。しのぶの絵を描いたのは私です」<br> しのぶは大人しいコだったのに、金田五郎と知り合ってから、急にハデになってしまったという。<br> 三週間前、桂木さんを訪ねてきた少女がいた。その少女は生前のしのぶにそっくりだったので、<br> 驚いている桂木さんに、少女は小島洋子と名乗った。<br> 僕は桂木さんに生徒手帳を見せた。<br> 「これ、洋子さんなの?ずいぶん感じが違って見えるわ・・・」<br> 洋子さんは桂木さんに、しのぶさんのことを聞いたそうだ。<br> 「洋子さんの話し方やしぐさが、しのぶとそっくりなのよ。<br> そして、彼女、こう言い残したの。<br> 『しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます』<br> ・・・どういう意味なのかしら?」<br> 他にしのぶさんに関して知っていることはないかと聞く。<br> 「ああ、そういえば、しのぶには仲のいい幼馴染がいたそうよ。<br> 確か、内田っていう男の子だったわよ。同じ丑美津高校だったけど、顔を知っている程度だったし、<br> 事件のあと、すぐに転校してしまったわ」<br> 内田という名前を聞いて驚く。金田殺しの容疑者で、自殺した内田輝彦と関係が?<br> 帰り際に、桂木さんは、何かわかったら連絡すると言ってくれた。<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>132 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:21:00 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>9章<br> <br> 丑美津高校の美術室だ。あゆみちゃんが待っていた。<br> 僕はあゆみちゃんに、桂木さんから聞いたことを話した。<br> 壁の、少女の絵に目が行く。<br> 「そうそう。その絵のことが気になって、洋子のお母さんに会いに行ったの。<br> すると、洋子としのぶさんが、いとこ同士だってことがわかったの!<br> いとこ同士だったら、二人が似ていても不思議じゃないけど、<br> 鏡の前で見た洋子は、あの絵そっくりだったわ」<br> あゆみちゃんが、少女の絵を見て言う。<br> 「洋子にしのぶさんの魂が乗り移ったみたいに・・・。<br> ばかばかしいと思われちゃうかもしれないけど、私はそう思う。<br> そうすれば、洋子が残した言葉の意味がわかるような気がするの」<br> あの言葉。「しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます」。<br> 「洋子は、自分をうしろの少女・・・つまり、しのぶさんだって言おうとしたんじゃないかしら」<br> <br> あゆみちゃんと別れて、職員室へ行く。<br> 顔見知りの先生はいないし、浦辺校長も出張中だというので、適当な先生に話を聞く。<br> なんでも、生徒たちだけではなく、先生たちも、うしろの少女を見たと言って騒いでいるらしい。<br> それと、浦辺校長が、最近、家を手放したという話を聞いた。<br> <br> 美術室へ戻ると、駒田先生がいた。さっき聞いたことを聞いてみる。<br> 「校長が、家を手放されたそうですね」<br> 「らしいのう。教師たちは、お金がいることでもあったんだろうと言っとったが。<br> 確かに、校長の家は一人では広すぎたぢゃろうが・・・。<br> 校長は、一人暮らしなんぢゃよ」<br> 駒田先生は浦辺校長のことを話してくれた。<br> 「忠志(ただし)さんは、若い頃奥さんを亡くされたんぢゃ」<br> 「忠志さん?」<br> 「校長の、下の名前じゃ。もう30年以上も前の話ぢゃ。<br> その頃、わしと同じ一教師だった忠志さんに念願の子供が授かったんぢゃ。<br> ところが、奥さんは体が弱く、出産の時に・・・」<br> 「赤ちゃんも助からなかったわけですね」<br> 「ぢゃと思うが。<br> ・・・お前さんは、なんでも事件と結びつけようとするのう」<br> それを言われるととても痛い。だけど、今はどんな手掛かりでもほしい。<br> <br> もう帰るという駒田先生を、校門のところで見送ると、<br> 入れ違いに、葉山先生がやってきた。<br> 「あ、葉山先生、なにかあったんですか?」<br> 「ちょっと、事故が・・・。私のクラスの生徒が怪我をしたの。<br> 頭を打ったらしいから、入院して、検査を受けることになったの」<br> 葉山先生は、病院から帰ってきたところらしい。<br> その生徒が、階段を降りていたとき、後ろに気配を感じて振り返ると、<br> 日比野先生がいて、その後ろに、うしろの少女が立っていたので、<br> 驚いて階段を踏み外したらしい。<br> 「とにかく、校長先生に連絡しないと・・・。<br> うしろの少女はやっぱりいるのよ、私が見たあの日からずっと」<br> そう言い残して葉山先生は行ってしまった。<br> <br> <br></dd> <dt>133 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:22:36 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>旧校舎の前でひとみちゃんと会う。<br> ひとみちゃんはマッチを僕に渡す。<br> 「スナック サンボラ」と書いてある。<br> 「ひとみちゃん、スナックなんかへ行ってたの?」<br> 「違う。それはあの男が落としてったのを拾っただけさ。サンボラと言やぁ、隣町のスナックだよ」<br> ひとみちゃんと一緒にサンボラへ行くことになった。<br> <br> サンボラの店内に入る。マスターは怖そうな人だ。<br> 「ここは子供の来るところじゃないぜ・・・帰んな」<br> マスターは僕たちを追い返そうとしたが、ひとみちゃんを見て、表情が変わった。<br> 「お前、もしや、河合か?」<br> 「・・・ああっ!加藤さんじゃないスか!」<br> 二人で勝手に盛り上がっている。<br> 「この人、おれが中学のとき、世話んなった加藤さんだよ」<br> 「あんた、河合の知り合いだったのか。そんなら話は別だぜ」<br> マスターが話してくれるようになった。<br> 「金田五郎さんだろ?うちの客だよ。五郎さんは昔からのお得意さんだったらしいぜ」<br> 五郎は、財産を使い果たしてからは、来なくなってしまったという。<br> ところが、最近、また来るようになったという。<br> 「実は、この間、五郎さんがこんな事を言っていたんだ。<br> 親父を殺した奴を知ってるだの、酒が飲めるのもそいつのお陰だのと・・・。<br> あとは本人に聞いてみな」<br> 五郎はこの先のマンションに住んでいると、マスターは教えてくれた。<br> もう遅いから、とひとみちゃんは帰っていった。<br> <br> 五郎のマンションの前に来た。五郎の部屋はどこだろう?<br> 「ぎゃあああああああー!」<br> 部屋の一つから、もの凄い悲鳴が聞こえてきた。<br> その部屋に駆けつけると、ナイフで刺されて死んでいる男の姿があった。<br> よく見ると、手に何か握っている。<br> 「これは、校長と一緒にいた男だ」<br> 窓の下を立ち去る人影が見えた。犯人だろうか?<br> とにかく、警察に連絡する。<br> しばらくすると、刑事さんと空木先生が来た。<br> 「大変なことになってしまったね。これは、金田五郎だ」<br> やっぱり、そうか・・・。<br> 刑事さんは、五郎が握っていたという万年筆を見せてくれた。<br> よく見ると、「T・U」とイニシャルが彫ってある。<br> 「あとは任せなさい。君はもう帰ったほうがいい」<br> 空木先生にそう言われたので、僕は事務所に帰ることにした。<br> <br> 探偵事務所で、今日の事を整理する。<br> 五郎は、金田殺しの犯人を脅したために、殺されたのかもしれない。<br> 五郎が握っていた万年筆、やはり犯人のものだろうか。<br> イニシャルが「T・U」になる人物・・・内田輝彦?<br> しのぶさんの幼馴染の内田さんは下の名前がわからない。<br> もう一人いたはず・・・そうだ、浦辺忠志。まさか、浦辺校長が?<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>134 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:23:21 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>10章<br> <br> 翌日、丑美津高校にやってきたが、いつもと違い、人の気配がない。<br> そこへ駒田先生が通りかかった。<br> 「今日は、祝日ぢゃ」<br> 「そうでしたっけ・・・?」<br> <br> 美術室で、駒田先生に昨日の事を話す。<br> 「浦辺校長と、五郎。この二人の関係は、妙だと思いませんか?」<br> 「おまえさん、まさか、校長を・・・?」<br> 「確証はありませんが・・・」<br> 「ふん。校長が犯人などとアホなことを言うて。<br> ばかばかしゅうて話にならん。わしゃもう帰る」<br> 「・・・・・・」<br> <br> 探偵事務所に戻ると、留守番電話にメッセージが入っていた。<br> 「桂木です。今日、内田君やしのぶと中学が一緒だった、さやかさんという人が<br> うちに来ますので、ぜひ、来て下さい」<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>135 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:26:26 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>11章<br> <br> 桂木さんの家に来たが、まださやかさんは来ていないらしい。<br> 「さやか、遅いわね・・・。あ、ひとつ、思い出したことがあるわ。でも、ただの思い出話よ。<br> ある日、足を挫いた女の子が、校長先生の車に乗っけてもらってね、それが、羨ましかった・・・って、<br> それだけよ。立派な、黒い乗用車だったわ。女生徒の憧れのマトだったの」<br> 浦辺校長が、15年前、黒い乗用車に?<br> ・・・そうだ、サンボラに行って、もう一度マスターに話を聞こう。<br> 桂木さんに、サンボラのマッチを渡す。<br> 「このお店に行ってますから、さやかさんが来たら、連絡して下さい」<br> <br> サンボラでは、お客さんたちが、テレビを見ていた。<br> 「おう、来たか」<br> テレビでは、五郎が殺されたことを報道している。<br> 「まさか、五郎さんが殺されるなんてな。客たちも、驚いてるよ」<br> 僕はマスターに、何か解ったことはないかと訊いてみた。<br> 「そうだ、思い出したぜ!ちょうど二週間前、久々に、五郎さんが来たときのことだ。<br> うちは、ご覧の通り、馴染みの客ばかりだから、<br> 客の注文があれば、野球のシーズンには、音を消して、テレビをつけておくんだ。<br> その日、一人で飲みながらテレビをボーっと見てた五郎さんが、いきなり立ち上がって、こう言ったんだ。<br> 『俺にもまた、ツキが回ってきたみたいだぜ!』って。<br> 確か、9時頃だったよ。ここからテレビは見えないから、何を見たのかは解らんねぇけど」<br> 店の電話が鳴り出した。<br> 「あんたに、電話だぜ」<br> マスターから受話器を受け取る。<br> 「桂木です。さやかから、駅に着いたって電話があったの。迎えに行くから、留守番頼まれてくれない?」<br> 「はい、すぐ戻ります」<br> <br> 桂木さんの家に戻り、入れ違いに桂木さんはさやかさんを迎えに行った。<br> ここは応接間だ。テレビが置いてある。五郎は、二週間前、テレビで何を見たんだろう?<br> あ、もう9時になるな。五郎がテレビを見ていたのは今くらいの時間か。ちょっと見せてもらおう。<br> テレビをつけた。野球中継が終わったところだ。そして、ニュースが始まった。<br> 「あら、テレビを見てたのね。連れて来たわよ」<br> 桂木さんがさやかさんを連れて戻ってきた。さっそく、さやかさんに話を聞く。<br> 「しのぶや内田君とは中学から一緒でした。二人のことは良く知っています。<br> ・・・しのぶがグレたことには、私も心を痛めました。<br> その結果、あんな事件に巻き込まれたなんて・・・残念です」<br> 「あの、内田君って・・・?」<br> 「15年前、自殺してしまった内田輝彦さんの息子が、しのぶの幼馴染のたっちゃんです。<br> 私たちは、内田君をたっちゃんと呼んでいました。<br> たっちゃんとしのぶは、小さい頃から仲が良かったそうです」<br> たっちゃん・・・イニシャルはT・Uだ。<br> 「小島洋子さんのこと、何か知りませんか?」<br> 「洋子さん・・・お気の毒です。そういえば、二週間前、洋子さんの事件を知った9時ごろのニュースで、<br> インタビューを受けておられた、浦辺校長を見かけました。校長先生、とても悲しそうでしたわ・・・」<br> 五郎は、9時のニュースで浦辺校長を見たのか?<br> 五郎が浦辺校長を脅迫したから、校長は家を手放し、五郎に金を渡したのかも?<br> そのとき、桂木さんが口を挟んだ。<br> 「ねぇ、さやか、荷物を置いてきなさいよ。部屋に案内するわ」<br> 二人は奥の部屋に行ってしまった。僕は応接間でしばらく待っていたが、二人はなかなか戻ってこない。<br> 耳を澄ますと、奥の部屋から話し声が聞こえてきた。<br> 「あのー、何してるんですかー?」<br> 奥の部屋の二人に声を掛ける。<br> 「あっ、ごめんなさい!さやかが持ってきた、中学の卒業アルバムを見せてもらってたの」<br> たっちゃんやしのぶさんの写真が載っているはずだ!<br> 「見せてください!」<br> 生徒たち一人一人の顔写真の下に、名前が書いてある。そこに、見覚えのある顔があった。<br> こ、これは、日比野先生・・・?<br> 「そう、それがたっちゃん、内田達也(たつや)君です」<br> 顔は、日比野先生だが、名前は内田達也となっている。<br> <br></dd> <dt>136 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:28:22 ID:nes8Gozg0</dt> <dd><br> 翌日、僕は、誰もいない校長室に、日比野先生を呼び出し、話を聞いた。<br> 「君は、そんなことまで調べていたのか。確かに、僕は内田輝彦の息子だ。<br> 日比野というのは、母の旧姓だ。転校をきっかけに、母方の日比野と名乗るようになったんだ。<br> 僕の父は、金田殺しの容疑者として手配され、そして、死体で見つかった。<br> 僕の苗字が変わったのは、母が、世間体を気にしたからだ。<br> 父を亡くした僕を支えてくださったのは、ほかならぬ浦辺校長なんだ」<br> 内田輝彦と浦辺校長は、古くからの友人だったそうだ。<br> 「五郎と知り合って、しのぶは変わってしまった。<br> 事件に巻き込まれる前から、僕の知っている浅川しのぶは、もういなかったよ。<br> 五郎は殺されたそうだな。金田親子・・・あいつらは人間のクズだっ!」<br> 「・・・・・・」<br> そうだ、五郎が殺された日のアリバイを訊いてみなければ。<br> 「確かに、僕には十分な動機がある。おまけに、アリバイなんてないさ。<br> でも、あんな奴らがどうなろうと、構わないじゃないか!」<br> 「・・・五郎は、事件の夜、現場から走り去った、黒い乗用車の持ち主を脅していたようです。<br> その人物は、浦辺校長かも知れません・・・」<br> 僕がそう言うと、日比野先生の目は怒りに燃えた。<br> 「・・・お、おい!まさか、本気で、校長を疑ってるのか?<br> 一つ、言っておく。なぜそんな馬鹿なことを思いついたのかは知らないし、<br> 僕を疑うならそれでいい。だが、校長を侮辱することは、僕が許さない!絶対に・・・」<br> <br> 校長室を後にして、廊下を歩いていると、あゆみちゃんに会った。<br> 「あゆみちゃん、実は・・・」<br> 「ごめんなさい、これから英語の追試なの。あとで事務所に行くわ。<br> それにしても、嫌なお天気ね、今日・・・」<br> 窓の外はどんよりと曇っている。<br> 「こんな日、学校にいると、洋子の言葉通り、私の後ろに、うしろの少女が立ってるような気がする。<br> あの日も、こんなお天気だったの。<br> しのぶさんは、やはり今も、この学校のどこかに、本当にいるのかも知れないね・・・。<br> じゃ、あとでね」<br> <br> 僕は歩きながら考える。<br> 洋子さんが言い残した言葉、「しのぶさんは、今でもきっと、丑美津高校のある場所にいます」、<br> あれは、どういう意味なのだろうか。<br> しのぶさんが、幽霊となって、この学校を彷徨っているとでも言いたいのだろうか?<br> あっ!葉山先生が見たという、血染めの少女が、怪我をしたしのぶさんだったとしたら、<br> しのぶさんの遺体が、学校のどこかに隠されている・・・とか?<br> いや、それよりもまず、浦辺校長のアリバイを確かめなければ。<br> 日比野先生も怪しいけど、浦辺校長も怪しい。<br> 校長は、五郎が殺された日、出張中だった。そうだ、葉山先生が、<br> 校長に連絡すると言っていたっけ。葉山先生に訊いてみよう。<br> <br> <br></dd> <dt>137 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:29:14 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>気が付くと、そこは旧校舎の前だった。<br> 葉山先生は、忘れ物を取りに行った夜、ここを通ったといっていたけど、遠回りになるのに、なぜこんな所を通ったのだろう?<br> そこへ、葉山先生が通りかかった。<br> 「葉山先生、校長先生に連絡はつきましたか?」<br> 「それが、ぜんぜん連絡が取れないの。出張先へ問い合わせても、そんな予定無いっていうのよ」<br> 浦辺校長のアリバイは崩れた。<br> 「それより、何してるの、こんな所で?」<br> 「先生こそ、なぜここへ?」<br> 「誰かが通路に車を停めたから、ここを通らなきゃ帰れないのよ・・・。<br> あっ、そうだわ。あの夜、わざわざここを通ったのは、通路に車が停まっていたからよ。<br> だから私、こっちへ来たのよ!」<br> 「それはどんな車だったか、覚えていますか?」<br> 「黒い車だったわよ。それから、来たときは、車なんてなかったわ。誰かが、後から来たようね」<br> 「・・・先生、しのぶさんの死体が、学校のどこかに隠されてるかもしれませんよ!<br> 先生が目撃したうしろの少女は、あの夜、黒い車で学校へ連れて来られた、<br> 浅川しのぶさんだったかも知れません・・・」<br> 葉山先生は驚いて、横を見た。その視線の先には、色の違う壁があった。<br> 「きっと、あそこよ!間違いないわ。あの壁は、犯人が塗ったのよ!」<br> だが、あの壁は田崎さんが塗ったはずだ。<br> <br> 用務員室の田崎さんを訪ねる。<br> 「あの夜、あの旧校舎の壁を塗ったのは、本当に、あなたですね?」<br> 「間違いなく、わしじゃよ。まだわしを疑っとるのか・・・」<br> 「実は、壁の中に、事件の決定的な証拠が隠されているのでは、と思ったんです。<br> それは、金田を刺した凶器と、浅川しのぶさんの死体です・・・」<br> 「な、なんじゃと!?」<br> 「でも、壁を塗ったのがあなたなら、それはありえませんね」<br> 「いや、そうは言い切れんぞ。壁を塗ったのは確かにわしじゃ。しかし、壁が固まり始めるまでには、<br> 時間がかかるもんじゃ。わしが帰ったすぐ後なら、<br> 壁土を取り除いて、もう一度塗りなおすことは可能じゃ」<br> あの壁を壊すべきかも知れない。空木先生に相談しよう。<br> 用務員室を出ようとする僕に、田崎さんは言う。<br> 「早く犯人を捕まえてくれ!わしはまた疑われる!いや、それよりも、<br> わしを庇ってくださった、浦辺校長の名誉のために!」<br> <br> 探偵事務所に戻り、空木先生と話をする。<br> 「壁にしのぶの死体が隠されているかも知れないんだね。<br> そこまで解ったなら、犯人の目星はついているね?」<br> 空木先生がそう訊ねたが、僕は答えられない。いや、答えたくなかった。<br> 「実は、あの万年筆の持ち主が解ったんだよ。その人物は五郎に強請られていた」<br> 「それは浦辺ですね」<br> 「その通りだ」<br> 「先生、あの旧校舎の壁を・・・」<br> 「ちょっと待ってくれ。今、警察が浦辺の行方を追ってるんだ。<br> 僕も最後の追い込みのために、今から警察へ行かなきゃならない。じゃあ、行ってくるよ」<br> 事務所にひとり、残されてしまった。僕は頭を抱えた。<br> 田崎さんや日比野先生が言う通り、浦辺校長は立派な人物だ。<br> 僕が会ったときも、嘘を言っているようには思えなかった。<br> あの校長が犯人なんて、信じられない、信じたくない・・・。<br> 電話が鳴り出したので、取る。<br> 「はい、空木探偵事務所です」<br> 「空木の助手かい?あんたに、誰も知らない話を教えてやろう。<br> 丑美津高校の浦辺はな、昔、金田の詐欺に手を貸していたんだぜ」<br> 「な、なんだって!もしもし、あなたは、いったい!?」<br> 「あの善人面した浦辺を心から憎んでいる男だ。奴は今、学校にいるぜ・・・」<br> 言いたいことだけを言って、電話は切れた。<br> 聞き覚えがあるような声だったったような気がするが・・・?<br> そうだ、今学校にはあゆみちゃんがいるんだった。今の話が本当なら、あゆみちゃんが危ない!<br> <br> 続く<br> <br></dd> <dt>138 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:29:56 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>終章<br> <br> 学校に駆けつけると、そこにはあゆみちゃんと日比野先生がいた。<br> 「あゆみちゃん、校長先生を見かけなかった?」<br> 「学校にはもう、私と先生しかいないはずよ。教室でテストを受けてたし、<br> 日比野先生もずっと一緒だったから、ご存知無いと思うわ」<br> 「校長は、まだ出張先から戻られていないよ」<br> 「校長は出張先にはいませんでした。そして、ついさっき、<br> 校長が学校にいるという電話があったんです!とにかく、校長室へ行ってみましょう!」<br> <br> 僕とあゆみちゃんと日比野先生の三人で、校長室の前まで行ったが、<br> ドアには内側から鍵が掛かっていた。<br> 僕はドアを思いっきり蹴破った。そこには、血にまみれた校長の死体があった。<br> サッと見回すが、窓にも鍵が掛かっているようだ。密室状態か。<br> 流れ出た血はまだ乾いていない。死体の側に封筒が落ちていた。<br> それは浦辺校長が書いたと思われる遺書だった。<br> 「みなさん、わたくしは、教育者として、いや、人間として、許されぬ罪を幾つも犯しました。<br> わたくしは、金田の詐欺に手を貸しておりました。<br> やがて、金田が邪魔になったわたくしは、彼をナイフで刺したのです。<br> そして、その犯行を見ていた浅川しのぶを車で跳ね、動かなくなった彼女を連れて現場から逃げました。<br> 15年経った今、小島洋子と金田五郎が、事件を知ってしまいました。<br> 事実が明らかになることを怖れるあまり、わたくしは、この二人までも手にかけました。<br> こんなわたくしを信じ、そして、慕ってくださった皆様にお詫びするためには、<br> こうするより仕方がなかったのです。<br>                         ―浦辺 忠志―」<br> 「う、嘘だ・・・!」<br> 日比野先生は取り乱している。<br> 「先生、帰りましょう。僕が警察へ連絡をしておきます」<br> 「嘘だ、校長は人殺しなんかじゃない。これは全て、嘘だ!<br> なぜなら・・・本当はみんな、俺が殺したからだ!」<br> 「な、なんだって?!」<br> 「お前らさえ、お前らさえいなければ・・・!」<br> 日比野先生は憎しみをたたえた目で僕とあゆみちゃんを睨んだ。<br> 「金田源治郎、あいつさえ現れなければ、親父も、しのぶも・・・!」<br> 日比野先生、いや、内田達也は、源治郎を殺して、自分も死のうと決めた。<br> 最後の別れを告げるため、校長に電話をした後、達也は源治郎を殺した。<br> そのとき、しのぶさんが現れた。しのぶさんは、達也を見て、<br> 人殺しと叫んで外に飛び出していった。そして、急ブレーキの音が聞こえた。<br> 電話を受け、駆けつけてくれた校長の車の前に、しのぶさんがが飛び出して、跳ねられてしまった。<br> 校長は、達也としのぶさんを車に乗せ、学校に連れて行った。<br> ある教室に達也としのぶさんは入れられ、校長は去っていった。<br> そのとき、しのぶさんが立ち上がり、窓際に立った。しのぶさんは死んではいなかったのだ。<br> そこへ葉山先生が通りかかった。<br> 「見つかってしまう!そう思い、頭の中が空っぽになった。そして、気が付くと、<br> 砕け散った花瓶の破片と、足元に横たわる、しのぶの姿があったんだ」<br> 今度こそ、しのぶさんは死んでしまった。その後の始末は、校長がしたらしい。<br> 「校長は、俺のために・・・。その校長を、五郎の奴が強請りやがった!<br> あんなやつ、もっと早く殺してやればよかった!」<br> そのとき、達也がスキを見せた。僕はあゆみちゃんの手を取り、校長室の外へ飛び出した。<br> <br> <br></dd> <dt>139 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:38:21 ID:nes8Gozg0</dt> <dd>「だめっ!そっちへ逃げちゃ!」<br> あゆみちゃんはそう言ったが、もう遅かった。<br> 廊下の突き当たりの、大きな鏡の前に来てしまった。逃げ道はもうない。<br> 「し、しまった!」<br> 達也の足音がゆっくりと近づいてくる。<br> 「小島は、あの夜、俺をその鏡の前に呼び出し、こう言った。<br> 『先生、先生は昔、人を殺したわね・・・』<br> そのときの小島の顔は、しのぶそっくりだったんだ。<br> 恐ろしかった・・・。俺は、思わずこう叫んだよ。<br> 『そうだ!15年前、お前を殺したのは、この俺だ!』<br> 気が付くと、俺は、小島の首を締めていた・・・」<br> 達也の心の奥に潜む闇は、なんて深いんだろう。<br> 「殺すつもりはなかった。小島をそのままにして、俺は逃げ帰った。なのに、<br> 小島は河原で見つかった!なぜだっ!<br> ・・・でも、もう、どうだっていい。<br> お前らさえ、余計なことをしなければ、校長は死なずに済んだ。お前らも、殺してやる!」<br> 達也はナイフを手に、飛びかかってきた。僕はあゆみちゃんを庇って身をかわした。<br> ナイフは鏡に当たり、鏡にひびが入り、砕けた。<br> 「ぎゃあああああっ!」<br> 砕けた鏡の裏から、ミイラとなったセーラー服姿の死体が飛び出し、達也に覆い被さった。<br> 「し、しのぶ?!」<br> そのとき駆けつけてきた、空木先生や、刑事さんたちも息を呑んだ。<br> 「あの日、洋子が言ってた、私の後ろって、鏡に映った私の後ろという意味だったんだわ!」<br> あゆみちゃんはそう言うと、気を失ってしまった。<br> <br> <br> 全てが終わり、空木先生と僕は、探偵事務所に戻ってきた。<br> 「本当にご苦労だったね。君がいたからこそ、この事件を解決できたんだよ」<br> 鏡の裏からは、しのぶさんの死体の他に、凶器も見つかったそうだ。<br> しのぶさんの死体や凶器を鏡の裏に隠したのも、洋子さんの死体を川へ捨てたのも、<br> 浦辺校長がやったことだ。<br> だが、浦辺校長が、金田の詐欺に手を貸したという事実は出てこなかった。<br> 校長を憎んでいると言っていた、事務所に匿名の電話をかけてきた男、それも浦辺校長だろう。<br> そして、あんな遺書を書いて自殺した・・・。達也の罪を全て被ろうとして。<br> 「あっ、そういえば、あの万年筆は、いったい何だったんですか?」<br> 「あれは達也が大学へ入学したときに、浦辺から贈られた物らしい。<br> 達也が肌身はなさず、大切に持っていたものだそうだよ」<br> 「でも、その頃は、苗字は日比野になっていたはずだから、T・Uって彫られていたのは<br> おかしいですよね?」<br> その謎は、後日明らかになった。<br> 浦辺校長の奥さんは、出産のとき死んでしまったが、赤ちゃんは生きていたのだ。<br> その赤ちゃんが達也だった。<br> 片親では不憫だからと、浦辺校長は、子供のいなかった内田夫妻に達也を預けた。<br> だが、その結果、不幸な道を辿ってしまった達也へ、<br> 万年筆に刻んだ「T・U」というイニシャルに、願いをこめて贈ったに違いない。<br> 「浦辺達也」。そう、彼の本当の息子へ。<br> 「そうそう、君に紹介する人がいるんだ」<br> 空木先生の後ろから現れたのは、あゆみちゃんだった。<br> 「彼女は今日から我々の仲間だ。君と同じ、助手としてね」<br> 「よろしくね!」<br> 「さて、そういうことで、あゆみちゃん、どこかでおいしいものを食べようか。<br> ご馳走するよ」<br> 「はい、お供します」<br> あゆみちゃんと空木先生は、僕を置いて事務所を出て行こうとするので、慌てて追いかけた。<br> 「ちょっと、待ってくださいよー」<br> <br> <br> <br></dd> <dt>140 :<a href="mailto:sage"><b>ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女</b></a>:2007/08/03(金) 15:39:05 ID:nes8Gozg0</dt> <dd><br> そして、二年後の、夏のある日。事務所の電話が鳴る。<br> 「はい、空木探偵事務所です」<br> 「明神村の綾城家に仕えております、善蔵と申します。ちょっと、ご相談したいことがあるのですが」<br> 「明神村、綾城ですね。今から伺います!」<br> 僕は電話を切り、あゆみちゃんに言う。<br> 「あゆみちゃん、出掛けてくるよ!」<br> 「え?どこへ行くのよ?!」<br> <br> 「ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者」へ続く<br> <br> <br></dd> </dl>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: