Rokko Chanpart67-288~293,296~305,308~318
288 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 21:54:44.17 ID:PuJS6uz/0 未解決にあったGBCの「METAL GEAR Ghost Babel」を投下させていただきます。 ただでさえ本編が長い上にスペシャルモードとおまけドラマまであるので相当な量になりますが…… まず前提として、この作品はメタルギアシリーズの一作ですが『メタルギアソリッド』シリーズとは話が繋がらない パラレル設定となっています。 時系列としては、MG1→MG2→MGS1→MGS2……となる本編シリーズに対し、ゴーストバベル系統は MG1→MGGB(本作)→AC!D1→AC!D2 という風に話が続きます。 設定的にも色々と違っているため「ここんところはおかしいじゃないか」みたいなのがあるかもしれませんが、ご了承ください。 ■主な登場人物 ソリッド・スネーク:主人公。7年前に単独でOUTER HEAVENを陥落させた『伝説の英雄』だが、 3年前にFOX HOUNDを除隊し現在はアラスカで隠遁生活を送っている。 ロイ・キャンベル:スネークのかつての上官。2年前にFOX HOUNDを除隊していたが、今回の作戦のために呼び戻された。無線サポート要員。 メイ・リン:まだ学生だが、今回スネークが使う新型レーダーと無線システムの開発者である才媛。 データセーブは彼女が担当し、世界の偉人たちの名言を教えてくれる。無線サポート要員。 ブライアン・マクブライド:CIAアフリカ工作部アフリカ局の情報官。ジンドラの風土や情勢などに詳しい。 今回の作戦の実質的な立案者でもある。無線サポート要員。 ウィーゼル:本名はロナルト・レンセンブリンク。スネークに匹敵すると言われる、世界でも有数の傭兵。 傭兵世界の事情や武器などに詳しい。皮肉屋で、マクブライドとは特にそりが合わない。無線サポート要員。 クリス・ジェンナー:デルタフォース隊員。25歳。大人の女性ではあるが、時々子供っぽいところもある。 スティーブ・ガードナー:大統領補佐官。今回の作戦の総責任者。 ジョン・パーカー:陸軍参謀長。289 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 21:57:07.54 ID:PuJS6uz/0 ◆OP 7年前、OUTER HEAVENをたった一人で陥落させ『伝説の英雄』となったソリッド・スネークは 3年前にFOX HOUND部隊を退役し、アラスカで隠遁生活を送っていた。 そんな彼の元へ元上官のロイ・キャンベル大佐が訪れ、ある任務を依頼した。 数日前、メタルギアを運んでいたアメリカ軍の輸送機が消息を絶った。 スネークが7年前に破壊したメタルギアのデータは政府によって秘かに回収され、開発は続行されていたのだ。 政府の捜索により、メタルギアを奪ったのは中央アフリカの小国ジンドラの反政府組織 「ジンドラ解放戦線(Gindra Liberation Front)」、通称ジレフだと判明。 ジレフはジンドラ国内の少数民族による分離独立を目的とした武装集団で、 カリスマ的指導者である『将軍』ことアウグスティン・アグアボンによって率いられている。 彼らは山岳部に難攻不落の武装要塞「ガルエード」を築き、ジンドラ政府軍やPKF(国連平和維持軍)もうかつに手を出せない。 ジレフはメタルギアで核攻撃を仕掛けると脅しをかけ、独立を勝ち取るつもりなのだ。 今回のスネークの任務は、ジレフの本拠地である武装要塞ガルエードに潜入して捕らわれた技術者を救出し、 メタルギアを破壊すること。 一度は断ったスネークだったが、ガルエードがかつてのOUTER HEAVENを再建したものだと知り、承諾した。 作戦の総責任者は国家安全保障担当の大統領補佐官、スティーブ・ガードナー。アメリカ政府のNo.2である。 また、今回の作戦は先行してガルエードに潜入した陸軍の特殊部隊デルタフォースと協力して行うことになる。 発案者は陸軍参謀長ジョン・パーカー。 元々は陸軍の主導で開発されていたメタルギアを何としても自分たちの手で取り戻したいという思惑であろう。 加えて、スネークを無線でサポートする人員が4人。 レーダーと無線の開発者であるメイ・リン。CIA工作員のブライアン・マクブライド。一流の傭兵ウィーゼル。 そして、ロイ・キャンベル元大佐。本来は彼もスネークと同様FOX HOUNDを除隊していたはずの人間である。 ◆STAGE 1~2 夜明け近く、スネークはガルエードから南に3キロ地点のジャングルに上空からパラシュートで降下した。 ジャングルを抜けてガルエードの前に到達した頃、キャンベルから先行していたデルタフォースが全滅したという連絡が入った。 ジレフは超一流の傭兵を軍事顧問として雇い入れているらしい。その辺りの情報はウィーゼルが詳しいようだ。 ガルエードの敷地内に入り建物への侵入路を探していると、デルタフォースの唯一の生き残りである クリス・ジェンナー軍曹から連絡が入った。 デルタフォースは敵の待ち伏せに遭い、例の傭兵達によって彼女以外の隊員は全滅してしまったらしい。 待ち伏せされていたということは、どこからか作戦の情報が漏れていたのだろうか。 スネークはジェンナー軍曹にガルエードから脱出を勧めるが、彼女は仲間の敵を討つためにここに残ることを望んだ。 現地に協力者が居れば任務もやりやすくなるかもしれないと、スネークは渋々ながら了承し、 ついでに彼女を「クリス」と呼ぶことを認めさせた。 建物内部で合流することを約束し、それまでクリスは敵兵に変装して情報を集めることにした。 スネークはクリスの助言に従い、排水路からガルエード内部への侵入に成功した。290 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 22:00:11.23 ID:PuJS6uz/0 ◆STAGE 3~4 スネークは建物内でクリスと合流を果たし、彼女が集めた情報を聞き出した。 メタルギア開発者はチーフであるジェイムズ・ハークス博士一人だけが残されている。 『ジミー・ウィザード』という異名を持つ、ロボット・エンジニア業界では名の知れた天才なのだとか。 彼は今、スネーク達が居る建物の北に位置する兵舎に捕らわれている。 また、ジレフが軍事顧問として雇い入れた4人の傭兵についての情報も得ていた。 巨大なブーメランを扱うスラッシャー・ホーク。夜間戦闘を得意とするマリオネット・アウル。 火炎放射器で全てを焼き払うパイロ・バイソン。そしてリーダーのブラックアーツ・ヴァイパー。 ヴァイパーとはすなわち毒蛇という意味である。 短時間でこれだけの情報を集められたクリスの能力にスネークは感心するが、彼女は浮かない顔をしていた。 この国の人のためになる、正しいことだと信じてこの任務に参加したが、ジレフの兵士たちと話している内に その気持ちが揺らいできたようだ。 スネークに励まされてひとまず立ち直ったようではあるが、それでもまだどこか危うさを感じさせた。 ともあれ、スネークはまず捕らわれたハークス博士を救出するため兵舎を目指すことにした。 クリスは妙に兵士の出入りが多い発電所の様子が気になったため、そちらを調査することになった。 兵舎に近づいてきたあたりで、巨大なブーメランを持った筋骨隆々の男が現れた。 デルタフォースを殲滅した傭兵の一人、スラッシャー・ホークだ。 彼らの部隊はブラック・チェンバーというらしく、『将軍』の理想などには興味はないが なぜかFOX HOUNDやスネークに強い憎悪と対抗意識を抱いているようだ。 スネークは巨大なブーメランを回避しつつ、ホークを倒した。 瀕死のホークは己の身の上を語った。 ホークはオーストラリアのアボリジニの部族出身。 元々捨て子だったが、彼を拾った両親は周囲の反対を押し切って育ててくれた。 だが、いつまでたっても仲間とは認めてもらえず、両親が死ぬとホークは部族から追放されてしまった。 そんな彼を仲間として迎え入れてくれたのがブラック・チェンバーだったらしい。 復讐はヴァイパーが必ず果たしてくれる、俺たちの怒りと悲しみを思い知れ。 そんなことを言い残し、ホークは息絶えた。291 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 22:04:22.48 ID:PuJS6uz/0 ◆STAGE 5~6 スラッシャー・ホークを倒したスネークはハークス博士が捕らわれている兵舎へと潜入。 ダンボールを被って荷物のふりをして、ハークス博士の捕らわれた牢へと辿り着くことに成功した。 ジミーことハークス博士は、ふてぶてしい面構えをした肥満体の18歳の少年だった。 16歳にしてCMU(カーネギー・メロン大学)で博士号を取得した天才児だが、性格には色々と難がある模様。 ジミーによれば、メタルギアは兵舎よりさらに北に位置する地下基地にあり、 今は組み立ても終わって電装系の最終調整を行っているようだ。 さらに、核弾頭もメタルギアと共に輸送されていた物があり、調整さえ終わればいつでも撃てる状態だという。 そもそも何故核弾頭を持ち出せたのかと言うと、それはパーカー陸軍参謀長、すなわち陸軍のトップが肩入れしているため。 お蔭で予算も使い放題で、開発はかなりのペースで進んだのだとか。 そこまでして彼らが進めていた計画の名は、『プロジェクト・バベル』。 分かっているのはメタルギアがその要であることだけで、それ以外の詳細は不明。 ただ、ジミーにとっては自分の力を活かせる場所があればそれでいいらしく、それで多くの人間が死ぬことになっても それは使う者の問題であって、自分やメタルギアには関係ないと言い切った。 そんな時、突然兵舎が停電し周囲は真っ暗になった。 メタルギアはレールガンで核弾頭を発射することができるが、その際には多量の電力を消費する。 この停電は、要塞の全ての電力を使いレールガンを充電しているために起こったものだという。 充電完了までに要する時間はあと30分。あと30分で核が発射されてしまう。 スネークはジミーのことを発電所に居るクリスに連絡し、ジミーの保護を任せた。 やはり発電所は先ほどからフル稼働状態になっているようだ。 自身はメタルギアを破壊するため、一路メタルギアのある地下基地へと向かった。 兵舎内は真っ暗闇だが、赤外線ゴーグルを装備すれば視界は確保された。 そうこうしている間に、クリスからジミーを保護したという連絡が入った。 ジミーの生意気な態度に苦労しているようだが、結構仲良くやっているようだ。 兵舎の出口に近づいてきた辺りで、一人の細身の青年が現れた。 スラッシャー・ホークと同じブラック・チェンバーの一員、マリオネット・アウルだ。 彼はフクロウ並に夜目が利くらしく、暗闇の中でゴーグル無しでもスネークの顔がはっきり見えるらしい。 アウルは二体の人形を操り変幻自在の攻撃を繰り出すが、スネークは本体の位置を的確に見極め、彼を倒した。 ホークと同じように、アウルも語り始めた。 アウルが12歳の時、親しかったローラという女性が殺人鬼によって惨殺された。 その死体を発見したときに精神を病み、いつしか彼自身も殺人鬼となった。 そして、FBIによって追い詰められていた彼をヴァイパーが仲間に引き入れたという。 ブラック・チェンバーの任務は彼の狂気を満たすにはもってこいであり、アウルは優秀な暗殺者となった。 だが2年前、FOX HOUNDの卑劣な裏切りによって彼の狂気は復讐へと塗り替えられたという。 話を呑み込めないスネークだが、アウルは質問に答えず話を逸らした。 ヴァイパーはあの地獄で左腕を失ったが、普段は義手を着けようとしない。 失くした腕を見るたびに死んでいった仲間と『アノニマス』への復讐を思い出すことが出来るからだ。 奴の狂気は自分以上だ、だからこそ信じられる、とアウルは笑う。 『アノニマス』というのもスネークにとっては聞き覚えのない名前だった。 アウルは最期に死んだローラの幻を見たようだが、なぜか絶望に目を見開き、そのまま動かなくなった。 何を見たのかは知りようもないが、天国へは行けなかったようだ。292 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 22:06:48.61 ID:PuJS6uz/0 ◆STAGE 7~8(前半) スネークはマリオネット・アウルを倒し、兵舎の北へと抜けた。 地下基地へと急ぐが、そこに戦闘ヘリに乗ったヴァイパーが現れた。 そして、そうこうしている間にメタルギアが核を発射してしまった。 ヴァイパーはここで戦うつもりはないらしく、スネークへの宣戦布告を行い去っていった。 ヴァイパーの意図は不明だが、とにかく今からでもメタルギアを破壊しなければ。 しかし、基地手前の野砲陣地が凄まじい勢いで砲撃を始めた。これでは近づきようがない。 悔しさに震えつつも、ここはひとまず撤退するしかなかった。 野砲の射程外まで逃れたスネークに、キャンベルから無線連絡が入った。 メタルギアが発射した弾頭がアメリカ本土に着弾した。だが、被害はゼロ。 発射されたのは模擬弾頭で、着弾地点もネバダの核実験場。完全な無人地区だ。 また、模擬弾の発射直後にジレフからアメリカ大統領に対して声明映像が送られていた。 その映像はキャンベルからスネークにも転送された。 映像にはジレフの総司令官『将軍』と、その隣に副官らしき女性が映っていた。 『将軍』はPKFのジンドラからの即時撤退と、彼らの独立を認めることを要求し、 3時間以内に受け入れられなければ今度こそ核を発射すると宣告した。 当然、アメリカ政府は要求を呑まないだろう。 だが、今のままではメタルギアに近づくことすらできない。 そこで、スネークはクリスに連絡してみることにした。 今彼女と一緒に居るジミーはメタルギアの開発チーフだ。核攻撃を止める何らかの手立てを知っているかもしれない。 ジミーの話はこうだ。レールガンは大量の電力を消費する。ならば、発電所を破壊してその元を断てばいい。 「ああ。だけどメタルギアは……」 ジミーがさらに何かを言いかけたその時、突然の銃撃音により通信は途絶した。 敵に襲われたのだろうか。 助けに行きたいのはやまやまだが、今は発電所を破壊するのが最優先。 だが、彼らを見捨てるつもりもない。発電所を破壊してから、必ず助け出してみせる。 そう宣言し、発電所地下のメイン・タービンを目指すのだった。 発電所内を探索していると、クリスから無線連絡が入った。 やはり敵に襲われていたようで、クリスは敵の隙を突いてなんとか逃げられたが、ジミーは捕まってしまったようだ。 だが、敵はまだメタルギアを動かさなければならない以上、今はまだジミーを殺しはしないはず。 スネークはジミーを必ず助けると約束した。 とはいえ、その前にまず発電所を破壊しなければならない。 自分より先に発電所に潜入していたクリスの助言はきっと役に立つだろう。293 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/14(日) 22:09:49.52 ID:PuJS6uz/0 ◆STAGE 8(後半) 探索の最中、広々とした倉庫らしき部屋に入ると突然火炎放射器による攻撃を受けた。 三人目のブラック・チェンバー隊員、パイロ・バイソンだ。 「俺達がお前の影の中で生きるのは今日で終わりだ。 お前は知るまい、お前が英雄として脚光を浴びる代償に流れた血の数々を……」 彼はスネークを『英雄』ではなく『罪人』だと断じ、有無を言わさず襲いかかってきた。 バイソンの持つ火炎放射器、燃料タンク、特殊ボディスーツは全て合わせて150キロを超える。 彼は異常なまでの怪力により、この重装備でありながら機敏な身のこなしで攻撃を仕掛けてきた。 だが、倉庫内には盾となるコンテナが多く積まれている。スネークはコンテナに身を隠しつつ隙を突き、バイソンを倒した。 スネークは動けなくなったバイソンに歩み寄り、尋ねた。 己が『罪人』だということは言われるまでもなく自覚しているが、影とは一体どういうことなのか。 バイソンは話し始めた。 7年前、スネークはOUTER HEAVENでメタルギアを破壊し、FOX HOUNDの名は世界に轟いた。 その結果各国の情報機関によって動きを見張られ、もはや本当の隠密行動はできなくなってしまった。 そこで結成されたのが組織されたのがブラック・チェンバーだった。 彼らはそれまでFOX HOUNDが行っていた極秘任務……外国の反米的指導者の暗殺、反政府活動を行う国内民間人の始末、 アメリカの国益を損なう紛争や内戦への干渉などといった、表沙汰にできない汚れ仕事をこなし続けた。 『伝説の英雄』ともてはやされるスネークの影で、延々と。 スネーク自身は『英雄』と呼ばれようと望んだことなど一度もない。そう言うと、バイソンは激昂した。 お前は英雄になりたいんだ、だから困難な任務に加わり、自分のできる唯一のことである人殺しを繰り返すんだ、と。 さらにバイソンは言う。スネークが味方だと思っている者の中に自分たちの仲間がいる。 ブラック・チェンバーの生き残りは4人ではなく5人。 これはスネークとFOX HOUND、そして『アノニマス』への仕組まれた復讐であると。 スネークが狼狽する姿を見て、バイソンは満足げに笑う。 そして彼は後のことをヴァイパーに託し、自分自身に火を放って笑いながら燃え尽きた。 バイソンを倒したものの、彼の言葉はスネーク達に大きな衝撃を与えていた。 キャンベルやマクブライド、ウィーゼル達の間にも不穏な空気が流れ始めるが、 とにかく今はメタルギアを止めることを考えなければならない。 とりあえず今日はここまでにします。 全13ステージなので折り返し地点は越えたはずですが、後半はさらに長くなりそうです。
296 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:10:58.14 ID:WELX4Ftk0 ゴーストバベルの続き行きます。
◆STAGE 9
スネークは発電所地下のメイン・タービンが見える位置にまで辿り着いた。 だが、メイン・タービンの周囲には電流トラップが仕掛けられており、近づけそうにない。 そこで作戦を変更し、建物の構造的に弱い部分にC4爆弾を仕掛け、発電所そのものを破壊することにした。 全ての爆弾をセットし終え発電所から脱出しようとした矢先、キャンベルからメタルギアが再び地上に現れたと連絡が入った。 脱出を待っている余裕はない。スネークは躊躇わず起爆スイッチを押し、発電所が完全に崩壊する前に命からがら脱出したのだった。
※補足。この辺りでクリスに連絡するとスネークの過去話を聞ける。 OUTER HEAVENで殺したBIG BOSSは自分の実の父親だった、それなのに自分は英雄と呼ばれて喜んでいた。 そんな自分が許せない、自分は生きていてはいけない人間なのかもしれない……という話。 その時のクリスの台詞が以下の通り。 「……許してあげるから。私があなたを許してあげるから」 「だから死なないで……一緒に……アメリカに帰ろう?」 重要な場面なんですが、流れ的に入れる場所が無かったのでこういう形で放り込みました。
297 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:15:11.71 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 10(前半)
発電所の破壊に成功し、これで敵は核を撃つことが出来なくなった。 マクブライドによれば、アフリカのある友好国から発進したF-22がジンドラ領内に侵入し、 巡航ミサイルで野砲陣地を破壊してくれるそうだ。 これで地下基地に潜入し、メタルギアを破壊することが出来る。
その時、再びジレフからアメリカ宛に映像が届いた。 『将軍』は平然としたもので、レールガンが使えなくても核は撃てると言ってのけた。 次のタイムリミットは1時間。それまでに要求が受け入れられない場合、ただちにアメリカ本土への核攻撃を行うと言った。 レールガンが使えなくても核が撃てるとはどういうことなのか。 メタルギアは陸軍が極秘に開発していたものであり、CIAにも詳細な情報はないようだ。
スネークが崩壊した発電所から離れると、そこには捕まっていたはずのジミーの姿があった。 ジミーは手錠を掛けられているが、怪我はないようだ。 一緒に捕まっていた兵士によって助けられ、先の爆発のどさくさに紛れて逃げ出せたらしい。 だがその兵士、デルタフォースのスミス少尉はジミーをかばって敵に撃たれ既に命を落としてしまった。 クリス以外にデルタフォースの生き残りがいたのかとスネークは訝しむが、ジミーがスミス少尉に聞いたところによると デルタフォースが全滅したときクリスは居なかったらしい。一体どういうことなのだろう。 ジミーは以前とは別人のように憔悴しきっている。 彼以外のメタルギア開発スタッフは既に全員殺されており、さらに間近で人の死を目の当たりにしたことで 彼の心境に大きな変化を与えたらしい。 ジミーは国に帰ってやり直し、今度は人のために働いて償うことにしたようだ。 彼にはまだ聞かなければならないことがある。メタルギアの、レールガンを使わずに核を撃つ方法とは何なのか。 だが、ジミーがそれを答えようとしたとき、突然彼に掛けられた手錠が爆発した。 帰りたいよ……そう言い残し、ジミーは事切れた。
ウィーゼルの推測によると、手錠に爆弾を仕掛けたのはおそらくヴァイパーだ。 ブービートラップや爆弾は彼の十八番である。おそらく手錠にマイクが仕掛けてあり、今の会話も聞いていたに違いない。 つまり、わざとスネークの目の前でジミーを殺したのだ。 怒りに震えるスネークに対し、マクブライドが唐突に言った。 バイソンの言っていた5人目のブラック・チェンバー隊員とはクリス・ジェンナーのことではないか、と。 情報の漏洩、待ち伏せ、そして今回のジミーの一件……彼女が敵のスパイだとすれば、全てに説明がつく。 そんな馬鹿な、とスネークはクリスに連絡しようとするが、何故か応答は無い。 動揺を隠せないスネークだったが、そうこうしてもいられない。まだ任務は終わっていないのだから。
その時、スネークの頭上をF-22から発射されたミサイルが通り抜けていった。 攻撃は成功。ミサイルによって野砲陣地は完全に沈黙した。これで地下基地に近づくことができるだろう。 スネークは破壊された野砲の脇を抜け、地下基地の目前にまで辿り着いた。 そこで見たものは、一機の戦闘ヘリに軍服姿の女性が乗り込み、飛び立つところだった。 今のはまさかクリス……? 後ろ姿しか見えなかったが、背格好は似ているように見えた。
298 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:19:24.82 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 10(後半)
だが考えている余裕はない。戦闘ヘリ、ハボックはそのままスネークに襲い掛かってきた。 ハボックは機銃やロケットランチャーでスネークを追い詰める。 本来ならばとても生身で太刀打ちできるような相手ではないが、幸いなことにここには身を隠せるような障害物が多い。 スネークは岩陰に身を隠しつつ、グレネードやニキータミサイルで隙を突き、ハボックを撃墜した。
ハボックの墜落した場所には、脱出したらしき女性兵士がうずくまっていた。 映像で『将軍』の隣にいた女性副官、ソフィー・エンドラムだった。クリスではなかったのだ。 ソフィーはスネークに銃を突きつけている。状況はこちらが圧倒的に不利。 ソフィーは語る。彼女達はブラック・チェンバーの目的がFOX HOUNDとアメリカへの復讐であることを知っており、 その上で利用しているのだという。『正義』と『理想』のために。 アメリカに都合のいい『正義』や『秩序』の名のもとに、ジンドラはずっと先進国の繁栄のための踏み台にされてきた。 経済的に搾取され、今もPKFが彼らの独立を邪魔している。 今こそ先進国の影響力を排して、本当の独立を勝ちとる時なのだ。
だがスネークは、それはあくまで『将軍』の理想であってソフィー自身の理想ではないことを見抜いた。 その時、ソフィーの背後でヘリの残骸が爆発し、形勢は逆転。逆にソフィーが銃を突きつけられる立場となった。 スネークがソフィーの嘘を見抜いたのには理由があった。 彼女の瞳には一つのことを信じてそれに殉じる者の強さがなく、むしろ何かにすがりつこうとあがいているように見えたのだ。 ソフィーはそれを否定しなかった。 スネークは弾が切れたと言い、彼女を殺さずそのまま立ち去った。 その背中に向かってソフィーが声を掛けた。 クリスは生きており、ヴァイパーの捕虜になっていると。 メタルギアはもう目の前だ。
299 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:22:58.75 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 11
スネークは地下基地に侵入し、メタルギアがある地下100階へと辿り着いた。 だが、その前にブラック・チェンバーのリーダー、ブラックアーツ・ヴァイパーが立ちふさがった。 そこには拘束されたクリスの姿もある。 バイソン達からFOX HOUNDとブラック・チェンバーの関係を教えられたスネークだったが、まだ腑に落ちないことがあった。 2年前に何があったのか、復讐とは一体何のことなのか。 ヴァイパーは答えた。全てを知り、その罪の重さでスネーク達が確実に地獄に行けるように。
2年前、ブラック・チェンバーはある極秘任務を下された。それはメタルギアの奪回。 メタルギアの開発は数年前から行われており、当時はCIAの指揮下にあった。 そのメタルギアが南米のテロリスト集団によって奪われた。 事態は極秘を要し、ブラック・チェンバーがその奪回に当たることとなった。 彼らは多くの犠牲を払いつつもメタルギアの破壊に成功した。 だが政府は、メタルギア開発の事実、ブラック・チェンバーの存在、何より彼らが行ってきた裏の仕事の数々が明るみに出ることを恐れた。 そして、多くの仲間を失い傷だらけで帰国した彼らは政府の差し向けた刺客、FOX HOUNDによる襲撃を受けた。 罠に嵌められたブラック・チェンバーの隊員たちは丸腰のまま無残に殺されていった。 彼らの抹殺を指令した人物の正体はいまだ不明。 どの記録にも本名は記されず、ただ『アノニマス(匿名)』と呼ばれていた。 生き残った彼らは復讐を誓い、そしてこの地を選んだ。 OUTER HEAVEN、メタルギア、『プロジェクト・バベル』……皆、ここから始まった。 これは計画された復讐なのだ。
そして、ヴァイパーとの戦いが始まった。 ブラックアーツ・ヴァイパーはソリッド・スネークやウィーゼルと並び、現代最高の傭兵に数えられる男。 彼が戦場に現れると何故か敵が次々と爆死していき、周囲の者には何が起こったかさえ分からない。 そこから「ブラックアーツ(黒魔術)」というあだ名が付いた。 その正体は、巧妙に仕掛けられたワイヤーや地雷などのトラップ。全ての魔術にはタネがあるのだ。 それさえわかれば戦いようもある。 スネークはトラップを掻い潜り、なんとかヴァイパーを打ち倒した。
だが、ヴァイパーはただで死なず、倒れる間際に部屋中に仕掛けた全ての爆弾を起爆させた。 爆発の中、スネークはクリスの拘束を解き何とか部屋の外へと脱出するのだった。
300 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:31:08.05 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 12(前半)
ヴァイパーを倒し、クリスと再会したスネーク。 だが、クリスは謝らなければならないことがあるという。 デルタフォースが全滅したとき、クリスはパーカー陸軍参謀長から与えられた任務を遂行するために部隊から離れていた その任務とは、『プロジェクト・バベル』とOUTER HEAVENに関するデータの消去、そして『将軍』の暗殺。 データだけではなく、それを知る『将軍』自身も逮捕されて口を割ったり可能性がある。 それは決して明るみに出てはいけない事実なのだ。
話を聞き終えたスネークは、自身がメタルギアを破壊する間に脱出用の足を確保するようクリスに頼んだ。 クリスは驚いた。自分のことをまだ信用してくれるのか。 確かにクリスは本当のことを話してはくれなかった。だがそれでも信じたいから信じる。他に理由は必要ない。 スネークは力強く言い切った。
そしてついに、スネークはメタルギア・ガンダーの元へと辿り着いた。そこには『将軍』の姿もある。 「結局、負け犬は負け犬ということか。勝者とは最後に生き残った者のことだ。 そしてそれはお前でもブラック・チェンバーでもアメリカでもない。この俺だ。 俺は全てを利用する。パーカーもブラック・チェンバーも……」 『将軍』の口から出た思わぬ名前に訝しむスネーク。 彼はスネークもクリスと同じようにOUTER HEAVENと『プロジェクト・バベル』、 ジレフとアメリカの関係を揉み消すために送り込まれたのだと思ったようだ。 話が呑み込めないスネークに対し、『将軍』はお前が勝てば全てを教えてやると言い、メタルギアに乗り込み襲いかかってきた。
メタルギアは究極の殺人兵器であり、まともに戦っては勝機はない。 まずは足を止めなければ。巨大な敵と戦うにはまず足を奪うのが定石。 スネークは迫り来るメタルギアから逃げつつ、その足元に地雷を仕掛け着実にダメージを与え続けた。 そして、地上へと向かうエレベーターへと辿り着いたところでついにメタルギアが倒れた。 だが、動きは止まっても搭載された多くの武装はまだ生きている。 闇雲に攻撃したところでメタルギアの厚い装甲を破ることはできない。装甲の弱い、武装部分を的確に狙うしかない。 前部機銃、上部砲口、後部ミサイルランチャー、火炎放射器…… 武装の一つ一つを着実に潰すことでダメージを蓄積させ、スネークはついにメタルギアを完全に沈黙させた。
301 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:34:53.24 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 12(後半)
破壊されたメタルギアのコクピットから投げ出された『将軍』は、約束通り全てを話し始めた。 OUTER HEAVEN、メタルギア、『プロジェクト・バベル』、ジレフとアメリカ……その因縁を。
OUTER HEAVENはそもそも、非公式の軍事力として反米勢力を叩くためにアメリカ政府の援助によって作られた傭兵派遣会社だった。 責任者は当時のCIA副長官。 だが、現地司令官であったBIG BOSSはアメリカ政府の予想を超えて暴走し、スネークによってOUTER HEAVNは陥落した。 米政府はOUTER HEAVENへの関与を隠蔽するためのカムフラージュとして、 スネークとFOX HOUNDを『英雄』として飾り立て、各国の情報機関に差し出した。 それが、ソリッド・スネークが『英雄』として祭り上げられた本当の理由。 そしてジレフとアメリカの関係。 OUTER HEAVENが潰えた後もアメリカとの関係は切れず、『プロジェクト・バベル』の一部として引き継がれた。 アメリカのジレフへの援助作戦、その現地責任者が『将軍』ことアウグスティン・エグアボンだった。 目的はアフリカの反米勢力の力を削ぐこと。 ジンドラで少数民族のアイデンティティを煽り、計算された民族紛争を起こす。 周りの国も巻き込んで国際的な政情不安を作り出し、組織的な団結を挫く。 紛争収拾のために米軍中心のPKFが居座れば、周辺国への恫喝を利かせることも出来る。 冷戦後の混沌が支配する世界の中で『新しい世界秩序』を築き上げるための手立ての一つ…… 制御可能な、まがい物の混沌(バベル)を作り出し、それを利用してアメリカが世界的な覇権を打ち立てていくための算段…… それが『プロジェクト・バベル』の正体だった。 最高責任者はジョン・パーカー陸軍参謀長。 『将軍』が協力する見返りは莫大な報酬と身の安全。
『将軍』は懐から一枚のデータディスクを取り出した。 それこそが、パーカーがクリスを利用して闇に葬ろうとしていたもの。 そこには『将軍』が語った話の詳細や、明確な金の流れも含めた全てが収められている。 アメリカ政府の上層部を吹き飛ばす、いわば爆弾だ。 スネークはディスクを受け取った。
『将軍』の部下たちは皆、彼の掲げた『理想』を信じて戦っている。 だが『将軍』は、ジレフの部下たちを騙していたわけではなかった。 彼ははじめからパーカーの部下になる気はなく、援助だけを利用して、アメリカを出し抜いて自分の国を作るつもりだったのだ。 「裏側がどうであろうと、それを人が信じるのであれば関係ない。 ……俺はただ、事実を連中が望むように飾ってやっただけだ」 そんなもので作った国に何の価値があるのか。スネークがそう言うと、『将軍』は笑って言い返した。 「世界は全てお前の言う『そんなもの』で出来ているんじゃないか? 皆、気づかないふりをしているだけだ。『正義』も『理想』も所詮、誰かの思惑に過ぎない」 そして『将軍』は息絶えた。
302 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:41:46.37 ID:WELX4Ftk0 ◆STAGE 13
これで全てが終わった。 スネークが『将軍』の亡骸に背を向けたその時、何者かがメタルギアの上に降り立った。 それは……ブラックアーツ・ヴァイパー。彼は死んではいなかったのだ。 彼は『将軍』とスネークの話を全て聞いており、そのお蔭で『アノニマス』の正体が掴めたという。 メタルギアを奪ったのも、このOUTER HEAVENにスネークとキャンベルを来させたのも、全ては『アノニマス』を燻り出すための計略。 2年前ブラック・チェンバーが壊滅させられた時、FOX HOUNDの指揮を直接執っていたのがロイ・キャンベルだったのだ。 因縁のメタルギアを奪い、キャンベルとスネークを巻き込めば必ず『アノニマス』は姿を現すはず。 だが、キャンベルの招集もスネークの派遣も政府と軍が決めたこと。ブラック・チェンバーがどうやって介入したのか……?
その時、無線機の音が鳴り響いた。 無線機の向こうで、5人目のブラック・チェンバーが正体を現した。それは、CIA工作員のマクブライド。 2年前を生き延びた彼は顔、名前、経歴、全てを変えてアメリカ政府に潜り込み、情報を集め続けた。 全ては復讐のため、今この時のためだったのだ。 通信が途切れた。
「貴様らが忘れても、知らないふりをしても、俺たちの地獄はまだ続いている。 『アノニマス』だけではない。貴様ら全員をこの苦しみに叩き落とさない限り、終わることはない!」 そう言うとヴァイパーはメタルギアを操作した。核攻撃の準備だ。 メタルギアは破壊したはず。だがメタルギアはただの核搭載歩行戦車ではなかった。 このメタルギアの本質は、核ミサイルを搭載した七基の攻撃衛星をリアルタイム・データリンクで制御する統合核攻撃システム。 弾道ミサイルを使わず、世界中のあらゆる地点を標的にできる宇宙からの核攻撃。迎撃も不可能。 レールガンはただのオプションに過ぎなかったのだ。 復讐のために何百万もの無実の人間を犠牲にしようというのか。 だがヴァイパーは笑う。 あてがわれた『正義』と『秩序』に盲目的に従い、その裏でどんな犠牲が払われているのか見ようともしない人々も 『アノニマス』と同罪。いや、彼らのその愚かさこそが『アノニマス』を生み出すのだと。 「虐殺された仲間たちのために、俺は核を撃つ。だがそれで終わりではない。これは『アノニマス』への宣戦布告だ!!」 メタルギアとスネーク達を乗せたエレベーターが動き始めた。 このままメタルギアが地上に出れば、アンテナから信号が送信され七基の攻撃衛星が核を発射してしまう。 地上まであと90秒。それまでにヴァイパーを倒し、信号の送信を止めなければ。
「最後の戦いだ! 来い!!」 だが、ヴァイパーは閃光でスネークの目をくらました。 「卑怯だと思うか? 俺は復讐を遂げるためには手段を選ばん」 彼は真っ向からの戦いを避け、逃げに徹した。 「俺は負けん! 死んでいった仲間たちのために!!」 スネークが接近すると、ヴァイパーは義手から衝撃波を放ち、すぐさま距離を離した。 「俺は必ず復讐を遂げる! 這ってでもな! それだけのために生きてきたんだ!」
そして……勝ったのはスネークだった。
303 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:47:25.97 ID:WELX4Ftk0 ◆ED(前半)
スネークによって装置は解除され、これで核は撃てなくなった。 その直後、エレベーターが地上に到達した。 「スネーク……貴様は……何故戦える? ……なぜ生きていける……? 何のために……誰のために……何を信じて……? ………… ……すまない……みんな……」 ヴァイパーは息絶えた。
地上にはソフィーが居た。 彼女は全ての話を聞いていた。『将軍』のことも、アメリカとジレフの関係も。だが、彼女はここに残るという。 『将軍』の掲げた『理想』は確かに作り物だったかもしれないが、決してむなしいものではなかった。 ジレフにはそれを信じる兵士たちがまだ大勢いる。 ソフィーは彼らをまとめ上げ、今度こそ本当の『理想』で自分たちの国を作っていきたいのだという。 彼女は強い。きっとうまくやるだろう。
そこに、ジープを見つけてきたクリスがやってきた。 乗って脱出しようとしたところで、キャンベルから無線連絡が入った。 マクブライドはウィーゼルによって射殺され、キャンベル達は皆無事のようだ。 キャンベルは、ブラック・チェンバーのことを隠していたことを謝罪した。 彼が2年前にブラック・チェンバーを全滅させた作戦の指揮を執っていたのは事実。 ある国から上陸したテロリスト部隊と聞かされ、闇夜の戦闘で相手が味方だったなどとは分からず、 事実を知らされたのは全てが終わった後だったという。 もし自分がそのことに気づいていれば、彼らを助けることも出来たかもしれない……彼はずっとそれを悔いて生きてきた。 だが、今回のメタルギア強奪事件が起こった時、今作戦の最高責任者である大統領補佐官スティーブ・ガードナーがキャンベルを呼び、 過去を清算するという名目に加え、作戦に加わらなければ2年前の件を公表すると脅迫した。 ご丁寧に、キャンベルが同士討ちを仕掛けたという証拠までも用意されていたという。 ガードナーがどこでこの話を知ったのかは定かではないが、元CIA長官である彼ならどこで嗅ぎつけていても不思議ではない。
その時、スネークの脳裏に引っ掛かるものがあった。7年前、OUTER HEAVEN当時のCIA副長官は……? 「その通り。ガードナーだ」 口を挟んだのはウィーゼルだった。彼は話を続ける。 OUTER HEAVENを組織し、メタルギアを開発させたのはガードナーだった。 メタルギアが以前CIAの元で開発されていたという話はヴァイパーも言っていた。 スネークが破壊したメタルギアをOUTER HEAVENから引き上げ、開発を続行させたのもガードナーだ。 つまり、『プロジェクト・バベル』の本当の生みの親はパーカーではなくガードナーだった。 だが、2年前メタルギアがテロリストによって強奪され、その責任を取らされてメタルギアの管轄と 『プロジェクト・バベル』の主導権は陸軍のトップであるパーカーの手に移った。 そして、ガードナーは口封じのためにブラック・チェンバーを始末させた。 すなわち、『アノニマス』の正体はスティーブ・ガードナーだったのだ。 そして、それを知るウィーゼルは、ガードナーに直接雇われた人間だった。 さらには、ガードナーは初めからマクブライドの正体も知っていた。 そもそもメタルギアの情報をマクブライド=ブラック・チェンバーに流したのもガードナー自身。 ジレフがメタルギアを手に入れて暴走すれば、ジレフに肩入れしていたパーカーは責任を問われ、 メタルギアと『プロジェクト・バベル』はガードナーの手に戻る。そういう目論見だ。 ブラック・チェンバーがジレフと合流するように仕向けたのも、おそらくは…… この事件は全て、ガードナーが仕組んだものだったのだ。
304 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:50:26.79 ID:WELX4Ftk0 ◆ED(後半)
そして、ウィーゼルがガードナーに雇われているのならば、彼にはまだ仕事が残っている。 作戦成功後、事情を知るスネーク達を抹殺するという仕事が。 ソリッド・スネークとまともに戦えるのはウィーゼルだけ。それが、彼ほどの傭兵が作戦に直接参加しなかった本当の理由だった。 「……と、言いたいところなんだが、悪いことに俺はあんたたちが気に入っちまった。 戦場にはふさわしくない、甘っちょろいところが、特にな」 彼はキャンベルたちを逃がしてくれるようだ。 任務を放棄したとなれば、彼自身も危険に晒されるかもしれない。 だが、彼も一流の傭兵として身の処し方は心得ている。心配は無用だろう。
大佐たちの無事を伝え、スネークとクリスを乗せたジープは走り出した。 クリスは語り出す。自分の周りには信じられるものは何もなかった。 だから軍に入ったと。確かに軍は『正義』と『任務』を与えてくれた。 だが、信じるものは他に頼るのではなく、自分で考えて自分で見つけるものだと気づいた。 これから自分でそれを探し、きっと見つけてみせる、と。 そして、出来ることならスネークと二人で…… それはスネークにとっても悪くない提案だった。 スネークは過去に決着をつけるためにこのOUTER HEAVENに来た。……そう思っていた。 本当は自身の死を望んでいた。全ての決着がついたとき、誰かが自分を殺してくれればいいと、そう思っていた。 だが、今は違う。今は、生きていきたいと思っている。 自分を認め、自分を許すこと。それを教えてくれたのはクリスだった。 もがいても、苦しんでも、人生には生きる価値がある。スネークはクリスによって救われたのだ。
スネークには心に決めたことがあった。 アメリカに戻る。戻れば、敵はスネークを見逃しはしないだろう。待っているのはおそらくFOX HOUNDだ。 だが、戻って確かめなければならないことがある。 「俺たちはなぜ戦わなければならなかったのか、俺たちがしたことは何だったのか。 『ソリッド・スネーク』とは何者だったのか」 人の想いと命を裏で操り、弄んだ幽霊たちに会いそれを確かめる。 奴らに全てを告白させる。奴らが巡らした陰謀の一つ一つを、奴らが私欲のために犠牲にした者たちの名前を、全て。 「奴らの……そして俺の犠牲になった連中のために出来るのはそれだけだ」 それを果たさなければ、自分を許すことも何かを見つけることも出来ない。 だが、決して死にに行く訳ではない。目的を果たしたら、必ずクリスの元へ帰る。
「……待っていて、くれるか……?」
「……
…………うん!」
METALGEAR Ghost Babel END
305 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/15(月) 21:53:02.34 ID:WELX4Ftk0 本編は以上です。 時系列ではPSPの『AC!D』がこの作品の延長線上にありますが、ストーリー的には直接的な関連は無いようです。 クリスやウィーゼルやガードナーなんかがこの後どうなったのかは不明。スネークが生き延びたのは間違いないですが。 『ソリッド』シリーズとの大きな違いは「BIG BOSSとスネークが実の親子(リキッドやソリダスは存在しない?)」 「ザンジバーランド騒乱(MG2)が起こっていない(グレイ・フォックスも生存?)」といったところです。 また、本作でメイ・リンとのセーブ会話と無線ドラマで名前だけ出てくるコペルソーン博士はAC!D2に登場します。 それと、本筋に直接関わらないせいでメイ・リンの名前が最初の一回しか出ませんでしたが、ちゃんと最初から最後まで居ます。
SPECIALモードと無線ドラマは明日以降にします。
308 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:25:13.27 ID:088uup9x0 ゴーストバベルの続き行きます。
■SPECIALモードについて。 本編クリア後にプレイできる、様々な条件を付けたミッションをクリアしていくモード。 ただのおまけではなく、これにも独自のストーリーがついています。 流石に全部書くと多いので、重要っぽい部分だけを抜粋します。
主人公は「No.4」と名乗る謎の人物の指令を受け、ガルエードにおけるソリッド・スネークの戦いを 追体験する一種のVR訓練を受けることになる。 ただ後追いするだけでなく、様々な条件を加えることでソリッド・スネークを超える戦士を作るのが目的のようだ。 ミッションを幾つかクリアするごとに本編で明かされなかった裏話を教えてもらえる。
・パーカーが本当に恐れていたのはガードナーに『プロジェクト・バベル』とメタルギアを奪われること。 そのためガードナー子飼いのスネークが到着する前に事態を収拾しようとしたが、ガードナーは マクブライドを通じてブラック・チェンバーにその情報を流し、デルタフォースを待ち伏せさせてパーカーの目論見を挫いた。 結局はガードナーの方が一枚上手だった。
・ガードナーはFOX HOUNDを使ってブラック・チェンバーを始末させたが、 同時にヴァイパーなどの中核メンバーは逃がすように手配させていた。 メタルギアと『プロジェクト・バベル』をパーカーの手から奪い返す時の手駒にしようという目論見であり、実際そうなった。
・『将軍』は元々OUTER HEAVENの傭兵で、当時はBIG BOSSに相当心酔していたようだ。 OUTER HEAVENが無くなった後は世界をさまよって、後に自分自身がBIG BOSSとなるために帰ってきた。 わざわざOUTER HEAVENをガルエードとして再生させたのも、思い入れによるものだと思われる。
・BIG BOSSははじめから己の息子と生死を賭けた戦いをするためにスネークをOUTER HEAVENに呼び寄せた。 スネークがそのことを知っていたかは定かではないが、とにかくスネークは自分の父親を殺した。 No.4「それが『彼』の強さであり、弱さでもある。 ……そしてそれこそ、君が果たせなかったことだ……」
309 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:27:57.01 ID:088uup9x0 ・メタルギアが模擬弾頭を発射した直後にクリスとジミーが敵の奇襲を受けたのは、ジミーの服に発信器が仕掛けられていたから。 ただ、クリスを取り逃したのは誤算だったらしい。 それはヴァイパーの予想以上にクリスが兵士として手強かったということであり、 『プロジェクト・バベル』の証拠隠滅役にクリスを選んだパーカーの目は正しかったということ。
・キャンベルが作戦に参加した理由の一つとして、陸軍に居る姪のメリルが人質にされていたから、というのもある。
・No.4「君にも我々にも時間が無い。それは君もよく分かっているはずだ。 例の計画は急がれなければならない」
・発電所爆破後、クリスを捕らえたのはヴァイパー自身。前回は逃げられたため、彼自身が出向いた。 クリスにこだわったのは、スネークを確実に誘い出すためのエサが欲しかったから。
・F-22の巡航ミサイル攻撃の手回しがやけに良かったのは、作戦開始と同時に空軍を待機させていたから。 作戦が失敗したらスネークもろともガルエードを吹き飛ばすため、核弾頭装備の巡航ミサイルも用意していた。
・メタルギアの開発はOUTER HEAVENで始まった。 責任者は当時CIA副長官だったガードナーだったが、あらゆる地表から核攻撃を可能にする二足歩行戦車という アイデア自体はBIG BOSSから出たもの。 当時は技術的に不可能だったが、レールガンによる見えない核弾頭のアイデアも既にBIG BOSSによって盛り込まれていたようだ。 いわばメタルギアはBIG BOSSの亡霊といったところだ。スネークがメタルギアの破壊にこだわるのもそれが理由だと思われる。 No.4「彼にとってはまさに『呪われた過去』だ。 我々にとっては福音……もしくは祝福といったところだがな」
・ブラック・チェンバーの設立にはパーカーが深く関わっている。 パーカーはテロリストに奪われたメタルギアをブラック・チェンバーを使って奪回し、その功績を盾に 『プロジェクト・バベル』とメタルギアに関する全権を要求した。 ガードナーは全てを明け渡す代償として、パーカーにブラック・チェンバーを差し出すことを求めた。 パーカーはそれに応じ、ガードナーがブラック・チェンバーを始末するのを黙って見ていた。
・パーカーとガードナーの確執は『プロジェクト・バベル』が発足するずっと前、パーカーが陸軍大佐で ガードナーがCIAの部長だったころにさかのぼる。 当時持ち上がった政府要人の暗殺とある国のスパイを巡る疑惑にパーカーの娘の名前が挙がっていた。 本来CIAの管轄外であるこの件にガードナーは首を突っ込んで執拗に捜査を行い、結局事件はパーカーの娘の自殺で幕を閉じた。 それ以来二人は政治、軍事、あらゆる問題でぶつかってきた。 ガードナーはメタルギアとブラック・チェンバーを使って今度こそパーカーに引導を渡すつもりだったようだ。
・No.4「訓練はすべて終了だ。よくやってくれた。 君の戦闘能力は今、確実に『ガルエード戦役』当時のソリッド・スネークを超えている。 君の出番はすぐに来る。 今はゆっくり休んでくれ……ジャック」
以上です。 結局主人公の正体も、No.4の正体も、彼らの言う計画についてもまったく分からないまま終わります。 最後の「ジャックの出番がもうすぐ来る」というのは「ジャック(=雷電)が主役のMGS2がもうすぐ発売されますよ」という メタ的な解釈もできますが、それで正しいのかどうかは自信ありません。設定繋がってないし。
310 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:35:11.94 ID:088uup9x0 つづけて、おまけドラマも行きます。
連続無線ドラマ「アイデアスパイ2.5(ツー・ハン)」 メタルギア ゴーストバベルの2週目以降のプレイで周波数140.07に連絡すると聞けるミニドラマ。 本編が1ステージ進むごとに更新されて、全13ステージなのでこちらも全13話。
◆主な登場人物 『2.5(ツー・ハン)』:主人公。タイトルの通り、通信販売で手に入れたアイデア商品を駆使して戦う極秘スパイ。 『714(ナイス)』:ツー・ハンのことを「ツー」と呼ぶ彼の仲間。無線機越しに彼をサポートする。 『今すぐ・コール』:ツー・ハンのかつての恋人(?)。彼に恨みを抱いているようだ。
■OP ニューヨーク。 人々の欲望渦巻くこの大都会では今日も誰かが何かを買い、売り、そして捨て、平和に暮らしている。 だが、そんな平和の裏側で、粗悪な商品を売りつけ私腹を肥やす悪の組織、 『J・E(ジャンカー・エクスペンシブ)』が暗躍していた。 汚れなき市民を巧みに欺き、ガラクタ(ジャンク)を高値で売りつける『J・E』の野望を打ち砕くべく、FBIは極秘に対抗チームを結成。 悪の通信販売企業『J・E』から市民を守るべく誕生した極秘スパイ、その名も『2.5(ツー・ハン)』。
■第1回 ツー・ハンは『J・E』の幹部の乗るリムジンを追跡していた。 <通信機にペッタリ貼るだけであーら不思議、ノイズがスッキリ消える>『ノイズシャット』のお蔭で 仲間の714(ナイス)との通信状況も良好。 このまま行けば直に製造工場まで辿り着けるだろう。 そこは<寝ているだけであなたもアクションスターのような逞しい肉体に>魅惑のスタイルを作り出す『ビルダー・ベッド』の極秘製造工場。 そのベッドには足と枠しか無く、頭とカカトで体を支えて寝るという代物だ。 売る方も売る方だが、買う方も買う方である……と思ったが、どうやら714はおまけのクマちゃん抱き枕に釣られて買ってしまったらしい。 ……とか何とか言っている間に、リムジンが止まった。工場に着いたのだろうか。 気をつけろ、と助言する714に対してツー・ハンは「奴らは絶対にこの車を攻撃することはできない」と自信満々。 なぜなら、ツー・ハンはあらかじめ車の窓に<子どもが乗ってますシール>を貼っておいたのだ。 建物に入っていく『J・E』幹部の後を慎重に追うツー・ハン。だがその時突如鳴り響く警報音。 ビー!ビー!ビー! 『ママが来たセンサー』だ! 逃げるべきか? だがもう遅い。ツー・ハンは敢えて工場への侵入という道を選ぶのだった。 果たしてツー・ハンは敵の警備から逃れ、工場へと侵入することが出来るのか!? 危うし、ツー・ハン!
つづく
311 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:38:33.26 ID:088uup9x0 ■第2回 ふう、危ないところだった。 警報から逃れた過程を完全スルーして工場の敷地内への侵入を果たしたツー・ハン。 どういうことだと追及する714に「過ぎたことを気にするな、そんなことだからクマちゃん抱き枕に騙されるんだ」と逆切れで返すツー・ハン。 そんな彼は通販で失敗したことは一度もないと断言する。 では、去年の冬に買った『あたたかシューズ』はどうなのか。 <ポカポカしたままおでかけ>と言いつつコンセントを差している間しか暖かくならないインチキ商品。 だが、ツー・ハンは今まさにそれを履いているという。 南極でペンギンに育てられた(自己申告)彼はどんな寒さにも耐えられる強い体を持っている。 『あたたかシューズ』をコンセントに繋がなくともただの靴として履ければ冬は越せるのだ。 「じゃあ普通の靴を買えばいいんじゃないのか!?」 「うるさい! 人の過去を詮索するな!」 結局逆切れするツー・ハンであった。 その時である。 「そこに居るのは誰!?」 女の声だ! 一体何者なのか!? 危うし、ツー・ハン!
■第3回 謎の女はアイデアスパイ訓練学校で一緒だった『今すぐ・コール』だった。 久しぶりの再会だと近づくツー・ハンだったが、コールは彼を拒絶した。 彼女はツー・ハンに強い恨みを抱いているのだ。二人の過去とは…… ツー・ハンはかつて、コールのクレジットカードでアイデア商品を山ほど買い込んだ。 そして期待外れだった商品をコールの家に山ほど送りつけた。 君なら喜ぶと思った、などと言い訳するツー・ハンだったが、 『象もしまえる収納ボックス』(ただ象よりデカいだけ)などをもらって誰が喜ぶというのか。 コールはツー・ハンとの過去に決着をつけるため、工場の従業員に成りすましてずっと待っていたのだ。 ということは、工場には詳しいのだろう。 「愛しているんだ、コール」 「……えっ?」 「俺に協力してくれ」 「……ダメ」 あっという間に揺らぐコール。もうひと押しだ。だがその時! ガガガガガガガガ! 二人を狙う突然の機関銃! 武装警備兵だ! 未だツー・ハンを許せないコールだったが、このままでは二人とも殺されてしまう。ここは一時休戦とするしかない。 コールの案内により、工場内部への侵入を果たすツー・ハンであった。 だが、内部にはさらなる危険が待ち受けているだろう。
312 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:41:23.50 ID:088uup9x0 ■第4回 コールの案内により工場へと潜入したツー・ハン。 この工場に一体何の用があるのかとコールに尋ねられるが、極秘任務の内容はコール相手と言えど話すことはできない。 ならばと質問を変えるコール。昔、なぜ私にあんなものを買ってくれたのか、と。あんなものとは? 「忘れたの? 『お色気ヒモ……」 「話す。極秘任務について話す」 即座に折れるツー・ハン。任務の内容は以下の通り。 近頃、この工場に『J・E』の幹部が頻繁に訪れている。 たかが『ビルダーベッド』の工場に幹部連中が出入りするのはあまりにも不自然。 おそらく『ビルダーベッド』はカムフラージュであり、もっと重要な何かを行っているに違いない。 「ハッハッハ。よく調べたな!」 突然響く謎の声。 「ようこそ、我が『J・E』のインチキ商品製造工場へ」 自分でインチキって言ってるがそれはさておき、ここから先は関係者以外立ち入り禁止。部外者の侵入を許すわけにはいかないのだ。 シャキーン! 謎の男が構えたのは『J・E』が開発した対人用孫の手『孫いらず』。 自分以外の人の背中も掻けるように改良された孫の手。それなら手で普通に掻けばいいだけではないのか。 だが、それはただの『孫いらず』ではない。 シャキシャキーン! 柄が伸びた! そう、これは遠距離背中用対人孫の手『孫いらず・のびーる』。かゆいところに手が届くまさに究極の孫の手だ! 「普通に手で掻けばいいじゃない!」 「うるさい。くらえ!」 コールが危ない! ……だが! 「……何? なぜお前らの背中が掻けない!?」 ツー・ハン達は仰向けに寝転がっていた。これではいかに『孫いらず・のびーる』と言えど背中を掻くことが出来ない! 「……僕の負けだ。行け……」 咄嗟の機転により窮地を脱した二人。 先を急ごう。ツー・ハンはコールに幹部が出入りしている場所へと案内してもらうのだった。
313 :METAL GEAR Ghost Babel:2014/09/16(火) 22:43:57.40 ID:088uup9x0 ■第5回 コールの案内により、幹部たちの通る謎の出入り口へと到達したツー・ハン。 扉をくぐるとそこは新商品の研究所のようで、多くの設計図がある。 『おでかけ炊飯器』『ワンちゃん腕時計』『真っ黒カメラ』『朝だけハンガー』……『J・E』のインチキ人気商品のオンパレードだ。 だが、今さら幹部たちが騒ぐような代物ではない。……その中に、見慣れない名前を発見した。 『家庭用人間型ロボット・ギジンさん』。名前を聞く限りではまともそうだ。 人間型ロボットなどと、いつの間にそんな技術を手に入れたのか……いや、どうせインチキだろう。 だが714はそうとも言い切れないという。もしかすると、今までいい加減な商品を売りさばいていたのは この人間型ロボットの研究資金を集めるためだったのかもしれない。 さらに、このギジンさんは頭金無し、月々9.75ドルの36回払い。クマちゃん抱き枕よりも安い! ……しかし、ツー・ハンはどうにも疑念を捨てきれない。奴らの商売にしてはお買い得すぎる。 何か裏があるに違いない。やはりここは単なるインチキ商品製造工場ではなさそうだ。 設計図があるということは、この工場のどこかでギジンさんを作っている可能性も高い。あるいは既に完成しているか…… 探らねばなるまい。 「行くぞ、コール」 「待って。私はあなたの仲間じゃないのよ!」 「愛してるんだ、コール」 「……えっ?」 愛は全ては超えるのだ。釈然としないものを感じつつもついつい乗ってしまうコールであった。 潜入調査を続行するため、研究室を出ようとするツー・ハンだったが、異変に気づく。扉が開かない! 一体何が起こったのか!?
■第6回 いくら引いても扉は開かない。押して開ける扉だったり、横に引く扉だったり、というオチでもないようだ。 その時、何か妙な……モーターが動くような音が聞こえた。 ゴウン、ゴウン、ゴウン……ガタン! ……ガガン、ガガン、ガガン 左右の壁が迫ってきた! このままでは<これでスッキリ リサイクル、どんな空き缶もラクラク潰せて場所を取らない『ペタンコカンカン』>で潰された空き缶のようにペチャンコになってしまう。 <おふとん潰して押入れ広々『ペッタンコおふとん収納袋』>で潰された布団のようにペチャンコになる前に何とかしなければ! だがツー・ハンは、こんなこともあろうかと<お庭のサイズに合わせて伸び縮み>『ニョキニョキ物干し竿』を持ってきていた。 これで壁につっかえ棒をすれば……ああ、お部屋のサイズに合わせて縮んでいく! それならば、とツー・ハンが取り出したのは『ワニさんドアストッパー』。これで……どうにもならない! ガガン、ガガン、ガガン…… このままではコールのプロポーションも崩れてしまうだろう。まぁ、良いダイエットになるかもしれないが。 「ペラペラに潰れた君も魅力的さ」 「ツー・ハン……」 「愛してるんだ、コール」 そうこうしている間も壁は止まらない。 ガガン、ガガン、ガガン……ゴーン! 「ツー! 応答しろ! ツーー!」 714の悲痛な叫び声だけが響いた。
314 :ゲーム好き名無しさん:2014/09/16(火) 22:58:10.20 ID:088uup9x0 ■第7回 「ふう、危ないところだった」 ツー・ハンは無事だった。コールも。一体どうやって? ……どうやら二人はいつの間にか寝てしまっていたらしく、夢の中で壁に潰されるところで目が覚めた。 うなされて寝言を言っていたかもしれないが、と。 何故二人で同じ夢を見ていたのか? ……通信ケーブルを繋いだまま寝たからだろう。 壁が迫る音? ……まぁ、夢のすることだし。 さっさと先を急ごうとするツー・ハンだったが、714は納得できんとなおも食い下がる。 「なんだしつこいな! そんなしつこい口は <しつこい汚れもスッキリ落とす 街角のアンケートでも46%の奥様が 洗濯物が真っ白になったと答えていますでお馴染みの『ジャブジャブクリーン』>で洗ってやるぞ!」 対するツー・ハンはいつも通りの逆切れである。 その時、コールが謎の拒絶反応を起こした。『ジャブジャブクリーン』には良い思い出が無いという。 「ある、夏の日だったわ……」 「何の話だ、いきなり」 その頃、コールは毎日の海通いで真っ黒に日焼けしており、その内焼けすぎて肌がヒリヒリしてきたという。 で、『ジャブジャブクリーン』なら肌も白くなるかと思って風呂にたっぷり入れ、肩までしっかり浸かったと。 で、熱い方が効くかと思ってこれでもかと熱いお湯に入ったものだから、体中を火傷してしまったと。 ただでさえ日焼けでヒリヒリしていたものだから全身が燃えるように熱くなり……それ以来、『ジャブジャブクリーン』の名を聞くだけで怖くなってしまうのだそうな。 『ジャブジャブクリーン』は特に関係ない話であった。 が、人にこの話を聞いてもらえてコールは気が楽になったらしい。 「私……誰かにこの話を聞いてもらいたかっただけなのかもしれない…… さ、先を急ぎましょう、ツー・ハン」 何の話だったのかはさっぱり分からないが、先を急がなければならないのは確かだ。 何しろこれでもう3話も研究室から動いていないのだから。一方714は…… 「うわ、壁が迫ってくる! 助けてくれ、ツー!」 コールの話が長すぎたため、今度はこちらが夢の中であった。
■第8回 工場の端ににある、一般従業員は使用禁止のエレベーターへと辿り着いた二人。 もしかするとギジンさんの工場に繋がっているのかもしれない。 だがこのエレベーターは定員一名。ここはひとまずコールを先に行かせ、下で落ち合うことにした。 エレベーターが降りた後、714は言う。彼女は元々ツー・ハンを恨んでいた。裏切る可能性もあるのではないか? だがツー・ハンは、二人で通信販売カタログを赤丸チェックした仲である彼女を信じている。 どういう仲だかよく分からんが、ともかく油断は禁物ということだ。そうこうしている間にエレベーターが戻ってきた。 ……エレベーターの移動はずいぶん長い。一体どこまで下るのか。 耳がツーンと痛くなってきたらつばを飲み込むと少しは楽になる。714の知恵袋だ。 どんな面白アイデアよりも役立つ男、それが714。 エレベーターが止まった先、そこはガランとした広い倉庫であった。 そこで異変に気づく。コールが居ない。一体なぜ? まさか…… だがそんな時、突然の轟音が彼の思考を中断させた。 ガガガガガガガ! すわ、機関銃か!? 幸い当たりはしなかったが、敵の姿は見えない。 「そこまでだ、ツー・ハン!」 謎の声、そしてさらなる攻撃! 危うし、ツーハン!
315 :ゲーム好き名無しさん:2014/09/16(火) 23:00:03.10 ID:088uup9x0 ■第9回 突然の奇襲攻撃! ……だが、妙だ。どこにも当たった様子がない。 謎の声の主が笑う。 「どうだ? ツーハン! 我が『J・E』が作り出した『モグラくん』の轟音は!?」 <プロ顔負け! テクニック無しで誰にでも手軽に岩盤が掘れる家庭用掘削機>『モグラくん』の出した音であった。まったく紛らわしい。 そもそも一般家庭で掘削機を使う機会があるのだろうか。 だがこれで終わりではない。 ボーン! ボボーン! 今度は一体何が!? <驚異の新発見!! カラスは風船の割れる音が嫌い!? 通常の約3倍も割れやすく、さらに割れるときの音を5倍もアップさせたカラス追い払い用ゴム風船『ブーン・バルーン』 Dr.コペルソーンも大推薦!!> ……であった。 何という強引なアイデア。そもそもコペルソーンって誰だ? 一体何を根拠に3倍だの5倍だのと言い切れるのか? というかカラスって本当に……突っ込みきれない! このままでは埒があかない。だが敵の位置が見えなければ反撃もできない。 そこでツー・ハンは閃いた。 セロハンを丸めて両手のひらで転がすと、まるで炎が燃えているように聞こえる。この音が相手の耳に届けば…… チリチリチリチリ…… 「うわっ!? なんだ、火事か!? くそ、ツー・ハン! この勝負はお預けだ!」 まんまと騙されたらしく、敵は一目散に逃げていった。 何とか窮地を脱したところで、コールのことを思い出した。彼女はどこへ!? ……と思ったら、すぐそこに居た。 エレベーターに乗っていたら耳がツーンと痛くなったので、その辺で休んでいたらしい。 そういう時はつばを飲み込むと良い。 さあ、先を急ごう。
316 :ゲーム好き名無しさん:2014/09/16(火) 23:01:56.73 ID:088uup9x0 ■第10回 倉庫内を探す二人。だが見つからない。 彼らが今探しているのはギジンさん……ではなく、先ほどの戦闘で落としてしまったコンタクトレンズだった。 コンタクトと言っても視力矯正用のものではない。ツー・ハンの視力は両目とも3.0だ。 落としたのはおしゃれ用のカラーコンタクトレンズだ。高かった。 「任務中にそんなものを付けるな!」 「714、スパイにオシャレする資格はないというのか!?」 キュラキュラキュラ…… 二人が言い争っていると、謎のキャタピラ音が近づいてきた。 戦車だ! しかも車体がピカピカ光っている! まぶしい! 操縦士が自慢げに笑う。 <一塗りするだけでどんな汚れもサヨウナラ! あなたの車をピカピカに輝かせるカー・ワックス>『フラッシュ・ザ・カー』の威力だ! なぜ戦車をピカピカにする必要が!? 商品自体はまともそうだが用途が間違っている! 「愛車を綺麗にしてやりたいという気持ちが分からんか!? 戦車だってオシャレしたいのだ!」 「甘えるな! 極限下で戦う男がオシャレに気を配るな!!」 自分のことは全力で棚に上げるツー・ハンであった。 操縦士は逆上し、ツー・ハンのカラーコンタクトを戦車で踏みつぶそうとする! ああ、このままでは支払いがまだ16回も残っているコンタクトレンズが! 「品物を失ったあと支払いを続けるむなしさを思い知るがいい、ツー・ハン!! そう、あれはもう5年も前のことだ……」 なにやら急に語り始めた。 彼はこの戦車の中でどうしても音楽が聴きたくなり、2975ドルもするカーオーディオを購入した。スピーカーが10個も付いている。 だが、いざ取り付けると走行音がうるさすぎて音楽が全く聞こえてこない。 それで、アンプの音量を最大にしたら……ボン!!と音を立てて全10個のスピーカーが一気に火を噴いた。 それ以来そのオーディオが音楽を奏でることはなかった。あと78回の支払いを残したまま! 「この気持ち、貴様も思い知るのだ、ツー・ハン!」 「やめろおおおー!!!」 危うし、コンタクトレンズ!
317 :ゲーム好き名無しさん:2014/09/16(火) 23:07:23.66 ID:088uup9x0 ■第11回 ツー・ハンの落としたコンタクトレンズにどんどん近づいてくる! そしてついに、キャタピラがコンタクトレンズを……踏んだ、その時! ドカーン!! 突然床が爆発し、戦車はその下へ落ちていった。一体何が!? 実はツー・ハンが落としたのはオシャレ用カラーコンタクトレンズ型超小型爆弾。そう、全ては敵を欺くための作戦だったのだ! よくもまぁ、そんな危ない物を目に入れていたものである。 ……さて、戦車が開けた穴の下にはまだ何か部屋があるようだ。 そこには膨大な数のダンボール箱が並んでいる。軽く見積もっても5000個はあるだろう。 もしや、この中に『家庭用人間型ロボット・ギジンさん』が? 既に生産も終わり、出荷状態にあるというのか? 二人は<業界騒然! あのリンカーンも愛用していた強力洗濯ヒモ>『ストロンゲスト』を伝って下に降りた。 一体何の業界なのか。リンカーンと洗濯ヒモに何の関係が。……細かいことはさておき、とにかく下に降りたのだ。 ダンボールを調べてみると……中はカラだった。どれもこれも、中身の入っていない空箱だ! その時、一体何度目になるのか謎の怪しげな声が! 「よくここまで来たな、ツー・ハン!」 一体何者なのか!?
■第12回 声の主は、ツー・ハンがこのインチキ商品製造工場まで追跡してきた『J・E』最高幹部『頭金・ゼロ』だった。 果たしてギジンさんはどこに? 頭金・ゼロは答える。まだ製造は始まっていない。だが部品は君の周りに山ほど積み上がっている、と。 まさか、このダンボール箱自体がギジンさんの部品だというのか。 その時コールが気付いた。ダンボール箱の側面に……顔が描いてある!! 頭金・ゼロはならばこれも見せてやろう、と満足げに笑う。そこへ現れたのはギジンさん試作1号機だ。 「ガッシャン、ガッシャン…… ハロー、コンニチワ、ボク、ギジンサン」 その正体は……ただ人間がダンボール箱を被っただけ!! 一体何のためにこんなものを売ろうと!? 「ピッ、ポッ、パッ、ポッ、ピッ。 アー、モシモシ、『J・E』サンカネ?」 何か喋ってる。電話を掛けている……のだろうか? 「オタクノ『ビルダー・ベッド』ヲ10個、注文スルヨ。スグ、送ッテクレタマエ、ガチャ」 そう、ギジンさんは各家庭に潜り込むとその家から『J・E』に大量の商品注文を行う。 これでもう、いちいち注文を待たなくても確実に商品が売れるというわけなのだ!! なんという卑劣! っていうかどうひいき目に見てもうまくいくとは思えん!! それでも頭金・ゼロはひるまない。これで結局一台しか売れなかった『ビルダー・ベッド』の売り上げが何万倍にも膨れ上がる。 どうやら、クマちゃん抱き枕に釣られたのは全世界で714一人だったらしい。 何にせよ、これで『J・E』の企みは全て分かった。後は残った一つのカラーコンタクトレンズ型超小型爆弾で工場を爆破するのみ。 「さらばだ! 『頭金・ゼロ』そして『ギジンさん』!!」 「やめろおー!!」 「ヤ、ヤメロー!!」 ドッカーーーーーン!!! ゴゴゴゴゴゴゴ…… 凄まじい爆発に地下工場が震える。完全に崩れ落ちる前にコールと共に脱出しなければ。 戦車の時と破壊力に差がありすぎて不自然だが、今はとにかく急がねば! だが、地上へと繋がるエレベーターは定員一名。 地上まで二往復している時間はない!! どうする、ツーハン!?
最終回につづく
318 :ゲーム好き名無しさん:2014/09/16(火) 23:11:30.11 ID:088uup9x0 ■最終回 迷っている時間はない。ツー・ハンはコール一人をエレベーターに押し込んだ。 「コール、買いすぎには注意するんだぞ……」 上昇するエレベーターの中、コールは一人涙に濡れる。 「うう……ツー・ハン……」 ゴゴゴゴゴゴゴ……ドッカーーーーーン!!! 地下工場が爆発し、コールを乗せたエレベーターは地上に到達した。 そしてそこには……なぜかツー・ハンが居た。 コールの乗っていたエレベーターシャフトに足が引っ掛かり、そのまま地上まで連れて行かれたらしい。 今度は喜びの涙にむせび、スス汚れにも構わずツー・ハンへと抱きつくコール。 「……待て。定員一名のエレベーターなら、そのシャフトにもう一人乗っていてもやっぱり定員オーバーなんじゃないのか?」 714が鋭く突っ込んだ。 「714、俺は今回の任務で一つ学んだ」 「いや、私の質問に答えろよ」 「市民を騙して粗悪なガラクタを高値で売りつけるのはもちろん許せない罪だ。 だが、市民たちももっと粗悪かどうかを見極める目を養っていかなければならない。 いつかきっと、我々を必要とせずに、市民が自分たちの足で歩けるようになる日が来る。 俺はそれを信じたい」 それっぽい話でまとめに入るツー・ハン。 今回の件のどこにそんな教訓があったのかはサッパリだが、コールも同意見だった。 二人は714を無視し、これからどうするかなどを語り始めている。 「私の家で通販カタログの赤丸チェックをしない?」 「それでじっくり二人で住む家の家具でも探そうか」 「えっ……?」 ……などとイチャつきつつ二人は去っていき、714は一人放置された。
「ちょっと待て、納得いかんぞツー!」
「ツー・ハン!」
「アイデアスパイ、ツー・ハァァァァァァン!!!」
THE END
以上、これにてゴーストバベルはすべて終了です。 不慣れなもので、だいぶ冗長になってしまいましたが…… ちなみに、ツーハンの脚本は後に『ANUBIS』の監督を務める村田周陽氏で、後にラジオドラマにもなったようです。
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