ゴッド・オブ・ウォー要約スレ1-859・863~864、Part26-336・338~339・341~342・365~369・394~395・398~399、Part27-115~120・303~319・322~323
859名無しさん@お腹いっぱい。sage2006/03/13(月)21:15:17ID:ej7Iy9wd
ゴッド・オブ・ウォー仕えていた戦神にはめられ主人公は自分の家族を殺してしまう。それ以来悪夢と狂気に苦しみ、神々に悪夢からの救済を求めた。女神「最後の試練だ女神の治める都を攻める戦神を倒せ」主人公海上から都こえ砂漠こえ神殿の仕掛け解きキーアイテム手に入れ冥界からも這い上がり、仇でもある戦神殺す。女神「良くやりました。主人公の罪を許しましょう。でも君の悪夢消すのは神様でも無理。」主人公崖からの飛び降り自殺決行。しかし崖の上まで戻される「大義をなした人間が自殺なんて神様許さない」「主人公の戦いは終わった、オリンポス来い」主人公は新しい戦神(ゴッドオブウォー)になってしまいました。 簡略して書くと主人公がもの凄くいい人に思える・・・主人公はハゲでマッチョの親父。書かないけど清々しいまでに極悪非道な事やってくれます。おもしろいのでアクション好きな人はどぞ
863名無しさん@お腹いっぱい。sage2006/03/16(木)00:16:10ID:sU3lkzYC
簡略するといい人に見えるなんて誤解されそうな事かいたからもう少し内容書くヨ(違うカラサ)主人公はスパルタの兵士、蛮族との戦いで死にそうな時戦神アレスに命乞いした。戦神はその願いを聞き届けて蛮族皆殺し、主人公、戦神に忠誠を誓う。その後主人公、戦神の名のもとに虐殺しまくり。主人公、戦神に従わない町を焼いて虐殺中、その町の神殿の中も殺してたらスパルタにいるはずの奥さんと幼い娘がいた。(気づいたのは切り終わった後)戦神は「私の思い描いた通りになった。これでお前には何も無くなった。」と喜ぶなんでこんな事を仕組んだのかは、主人公を最強の戦士にする為。ラスト、主人公がオリンポスに行って戦神の玉座に座るとナレーションが始まる「それ以来、人間が起こす戦争を主人公が見つめていて人間は主人公に操られているのだ。」内容はこな感じ。ゲーム中、船員が「近寄るな!お前なんかに助けられたくない!」とか言って檻に閉じこもってたり。主人公を見たおばはんが「あなたが何やったか知ってるわ」とか言って逃げて手すりから滑って死んだりなんだヨこいつらって最初思ってたけどゲーム進めていくと納得する。ヒドラのボス戦の後、腹の中から「助けてくれ~」って声が聞こえる。口の中入って行くと奥まで滑り落ちそうな船長がいる。ひっぱって船長救う。船長は助けに来てくれた事感謝するんだけど主人公「お前を助けに来たわけじゃない」首から下がっている鍵うばってヒドラの腹の中に船長ポイ捨て。町のなか男が橋を上げてる。男は橋を下ろすと化け物が来るから嫌だと怖がって下ろさない。主人公、ゼウスからもらった雷の矢でその男倒して橋渡る。神殿の仕掛けで「生け贄をささげよ」。その部屋の入り口に小さい檻の中に化け物が閉じこめられている。主人公、その檻おろして化け物見てにたりと笑う。化け物何されるかわかってガクブル。こんな事やる人間ならそりゃ逃げるわナ。
864名無しさん@お腹いっぱい。sage2006/03/16(木)00:48:36ID:Vfv4FP/V
>>863海外版だと檻は怪物じゃなくて人間らしい。
336 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/11/10(金)22:08:22ID:XnVDdqR60
>>334さんくすんじゃ、書いてみます。男は断崖絶壁の上に立っていた。ヘラクレスもかくやと云わざるを得ない、鎧のような筋肉に支えられた屈強な体。剃り上げられた禿頭、たくましい顎鬚。全身は不自然にも灰のように白く、異様な赤い刺青が全身に渡って彫られていた。異形の男。そう呼ぶのが相応しい。しかし今、彼の顔に刻まれているのは人を人たらしめる最も人間らしい感情。――決して癒えることのない深い苦悩だった。「オリュンポスの神々は私を見捨てた」左足が虚空に向けて踏み出される。「もはやこれまでだ」そうして、男は身を投げた。ギリシアが誇る最高峰の絶壁から逆波渦打ち付ける海へと。彼の命が失われるまでの数瞬、脳裏に映し出されたものは恐怖でも、後悔でもなく。彼の辿った数奇な旅路の記憶であった。
338 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/11/10(金)22:30:28ID:XnVDdqR60
三週間前 エーゲ海「化物ども、冥界の奥底に送り返してくれる!」異形の双剣を構え、男が吼えた。嵐の甲板にもう一つの嵐が吹き荒れる。それは業火を発する邪悪な双剣の生み出す殺戮の嵐。鎖によって主と結び付けられたその双剣は鞭でありながら同時に剣であった。数分と経たず、甲板には一人の男だけが残された。暴虐をほしいままにしたアンデッドレジオネア――「死せる軍団兵」はただの一人の男の手によって全滅させられたのだ。男は座礁した船団の奥へと突き進む。その前に立ち塞がったのは通路を埋め尽くす巨大な竜が頭の一つ。人間では到底敵わぬ神話の怪物を前に男に恐れの色は毫ほどもない。全てを噛み砕く竜の顎を双剣を鞭の如く駆使して翻弄する男。巨大な頭が天井に突き刺さった、その瞬間だった。それまで守勢に回っていた男の双剣が竜の顎に伸びる。顎に突き立った双剣。それを頼りに――男は壁に叩き付けた。人に倍することおよそ数倍、数十倍。その頭をただ腕力だけで叩き付けたのだ。目を回した竜に飛び乗った男は冷静に、何の躊躇いもなく双剣を眼球に突き立てる。尋常ならざる叫びをあげて逃げ去る竜を尻目に再び男は歩み始めた。
339 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/11/10(金)22:50:03ID:XnVDdqR60
ある者は彼の助けを拒み自ら鉄格子を閉めた。ある男は彼に助けを求めて目の前で頭を射抜かれた。女達は閉ざされた扉の向こうで彼に助けを求めていた。もはや船団は壊滅寸前だった。そこかしこで竜と死せる軍団兵に襲われ、嵐から生き延びた人間は彼らの餌食となる運命を強いられていた。そんな凄惨な光景にも些かも動じず進む男。その前に現れたのは巨大な幻影。それは海神「ポセイドン」その人だった。「クレイトス」ポセイドンの荘厳なまでに重厚な声が響く。「お前は、アテネに向かう前に私の海を荒らすヒドラを倒さなければならない」「しかしクレイトスよ、お前がいかに強靭な戦士であろうと人の力だけではあの化物に勝つことはできない――神々の力を使うのだ」次の瞬間、クレイトスは強大な力の流れに包まれたかと思うと全身より強烈な雷撃を発した。「神々と共にゆけ、クレイトス。オリュンポスの名の下に!」海神の力を授かったクレイトスがその先で見たものは、ひときわ巨大なヒドラの生贄となる人間達の姿。その中の一人が首から提げていた鍵がクレイトスの目に留まった。あの鍵ならば、閉ざされた扉を開けられるかもしれない。彼は挑まなければならない。メインマストよりも遥か巨大な大蛇に。クレイトスは背負った双剣を抜いた。
341 :GOD OF WAR:2006/11/10(金)23:01:12ID:XnVDdqR60
滑落するゴンドラ、そのシャフトの下には――ヒドラの首。無残にも甲板に縫いとめられたヒドラはもがき、暴れ、そのうちに力を失って崩れ落ちた。最大の首を守護するかのように立ち塞がった二体のヒドラ。彼らに残酷な止めを刺したクレイトスはメインマストを登る。マスト上で対峙したそれは人と比べるのも馬鹿らしいほど巨大な存在だった。その大蛇を相手にクレイトスは双剣を振るう。双剣は次々と竜の鱗を裂き、鮮血を迸らせた。だが、それだけだった。所詮生物としての規模が違いすぎるのだ。少々傷つけたところでヒドラの再生力には到底及ぶはずもない。しかし、クレイトスの心に諦観の二文字は無かった。彼は剣を打ち続ける。打ち続け、隙あらばメインマストならどうだといわんばかりに何度も、何度も、ヒドラをマスト叩きつける。マストはあまりにも乱暴な扱いに耐え切れず折れた。――だが、それこそが彼の狙いだった。一瞬の隙を突き、ヒドラに飛び乗ったクレイトスは容赦無くその眼球に刃を突き立てた。想像を絶する痛みに暴れるヒドラ、巻き込まれ、空に投げ出されるクレイトス。怒りに震える片目にありったけの憎悪を込め、愚かな虫ケラ目掛けヒドラが牙を剥く。一つ一つが子供ほどもありそうな乱杭歯が彼に迫る。回避したのは皮の差一枚。だが彼の窮地はまだ終わらない。頼りにすべき足場は数メートルの向こう。墜落は避けられない運命に思えた――否!
342 :GOD OF WAR:2006/11/10(金)23:15:57ID:XnVDdqR60
運命に抗う――いや、文字通り運命を手繰り寄せるクレイトスの双剣が伸びた。ヒドラの両顎に突き刺さった双剣を頼りに己が身を引き上げるクレイトス。その両足がマスト台を掴んだ。それは誰の目にも信じられない、想像を絶する光景だった。天地に抗う形で足場を得たクレイトスが、あらん限りの力で鎖を引き絞る。いかなる奇跡も、いかなる加護もそこには存在しなかった。ただ一人の、たった一人の人間が、人に倍すること数十、いや数百倍。その化物を、膂力のみで捻じ伏せているのだ。彼とヒドラを結ぶ直線上には、本来であればマストが存在した。叩きつけられただけならば、再生力に任せて休息すれば傷も癒えただろう。しかし、今や大蛇を待ち構えているのは先端を失った――槍と化したメインマスト。慈悲も容赦も無く、クレイトスは鎖を引き絞る。大気を裂くほどの絶叫が響き渡った。上顎から眼窩まで貫かれたヒドラは必死に逃れようと暴れる。だが、それを許すクレイトスではなかった。力づくで押さえつけられ、次第にそのもがきが弱々しくなる大蛇。その最後の動きが止まったとき、クレイトスは大蛇の中から人間の声を聞いた。クレイトスは声の主のところに向かう。果たせるかな、それは鍵を首から下げた男だった。彼は間一髪で男を救い出す。感謝の言葉を男が口にしようとしたその時だった。「勘違いするな」その声は残虐を超え、痛みすら感じるほど冷酷だった。「戻ったのはお前のためじゃない」真意を理解した男を襲う恐怖と恐慌。だが、思いとどまるよう懇願することさえクレイトスは男に許さなかった。引き千切られる鍵を結んだ縄紐。支えを失った男は悲痛な叫びをあげながら大蛇の腸へと落ちていった。クレイトスは進む。閉ざされた扉の向こう、船長室へと。だが、扉を開けたクレイトスの眼前に広がっていたのは、見るも無残な光景だった。――女も、男も、誰もが死んでいた。最後の生存者さえも、彼の目の前で殺された。怒りに任せ、死せる軍団兵を斬り殺すクレイトス。彼の脳裏には忌まわしい過去が蘇っていた。
365 :GOD OF WAR:2006/11/12(日)23:04:12ID:MGI8PloJ0
どんなに女を抱こうとも――どんなにワインを飲もうとも――悪夢からは逃れられない。彼を慰めるのは、ただ荒れ狂う海だけだった。「アテナァァァァーーーーーッ!!」クレイトスは獣の如く吼えた。「十年だ! 私が神に仕えて十年になる。いつになればこの悪夢から解放してくれる!」港から港へと航海を続け、神の敵を打ち滅ぼし続け十年。その彼についに最後の試練が与えられる時がやってきた。神像に宿ったアテナは語る。アテネに向かえ、と。戦神アレスの軍隊は既にアテネを滅ぼす為にアテネを包囲していた。地下世界の怪物どもを率いたアレスの軍隊は地上無敵。アテネの滅びは目前に迫っていた。しかし、神々は主神ゼウスの掟により互いに争うことができない。アテネを守護するアテナ自身でさえ手を下すことはできないのだ。故に、クレイトス。神の力を受けた男が必要なのだと。「もし私がこの使命を、神を倒せれば……あの悪夢は消えるのか?」神々は約束を違えない、とアテナは言った。それは使命を無事果たした褒章としてだろうか、それとも力尽き倒れてのことだろうか。どちらにせよ悪夢から――クレイトスの狂気から解放される時は迫っていた。
366 :GOD OF WAR:2006/11/12(日)23:08:39ID:MGI8PloJ0
ヒドラを滅ぼし、アテネ港に辿り着いたクレイトスを待ち構えていたのはアレスの軍勢だった。彼は微塵の容赦も見せず彼らを屠り、進む。半牛半人の化物――ミノタウロスは倒れたところを口腔に双剣を突き立てられた。単眼の巨人――サイクロプスは、ただ一つしかない眼球を串刺しにされた。だが、悲惨の極みを挙げるならばそれはゴルゴンの女王、メデューサに他ならない。かつてアテナに抗い化物へと身を落とされたこの女はクレイトスに首を奪われた。生きたまま、血の通う体から直接、首を引き抜かれたのだ。メデューサの首を捧げ、アテナより石化の魔法を授かったクレイトス。彼が、アテネ市街に通じる架け橋を渡ろうとしたその時だった。クレイトスの前に突然現れる幻影。驚くクレイトスに幻の女は東の神殿に向かえと言った。そこでアテネの神官たる自分が神を倒す方法を教えよう、とも。女の言葉を信じ、神殿に向かうクレイトス。その道中、見晴らしのよい山上で彼が目にしたものは忌まわしき「敵」の姿――
367 :GOD OF WAR:2006/11/12(日)23:10:14ID:MGI8PloJ0
アテネの軍勢を相手にたった一人で立ち向かう――いいや圧倒する、神。あまりにも巨大、あまりも強大、それが戦神。アテナの兄でありながらアテネを滅ぼすことを望んだ狂神アレス。「戦いの神よ、忘れるものか。あの夜の報いだ、この街をお前の墓場としてやる」深く、深く、憎しみを滾らせクレイトスは誓った。
368 :GOD OF WAR:2006/11/12(日)23:11:57ID:MGI8PloJ0
アテネ市街に辿り着いたクレイトスを見た瞬間、その女は逃げ出した。「待て!」理由もわからず逃げられ、思わず追いかけた彼に浴びせられたのは呪詛にも等しい罵倒の言葉。「貴方を知ってるわ……何をしたかも。――化物! 来ないで、近づかないで!」クレイトスは女ににじり寄る。彼が一歩進むごとに後ずさる女。しかし女は気がついていなかった。もう、これ以上は下がれないことを。手摺にもつれた女は地に落ちた。転落死した哀れな女の手に握られているのは一本の鍵。クレイトスが何を考えていたのかは分らない。弁解するつもりだったのか、あるいは殺意を抱いていたのか。事実はただ一つ。彼は先に進むための鍵を手に入れたということだ。
369 :NINJA GAIDEN:2006/11/12(日)23:19:11ID:MGI8PloJ0
道を塞ぐ愚かな人間をゼウスより授かった雷撃で焼き払ったクレイトスはついに東の神殿――アテナ神殿に辿り着く。しかし、彼の目前で神官はハーピーにさらわれてしまう。神官を追うクレイトスが、彼に襲い掛かる化物たちを皆殺しにしたその時だった。老人の高笑いが神殿に響いた。「よくやった。いいぞ、アテナの選択は正しかった! 恐らくアテネは助かるだろう」かさつき、ひび割れた日に焼けた肌、伸ばし放題の白髪と髭、ぼろぼろの服。まるで狂人じみた老人は彼に近づくとさも嬉しそうに言った。「しかし油断するなよ。ワシが墓を掘り終わるまで死んではいかん」「墓、誰の墓だ?」老人の指は、はっきりとクレイトスを指した。「おまえだろうが!」「いずれ全てが分かるだろう。そして、何もかも失われそうな時があれば――ワシが手を貸そう」さっぱり要領を得ない老人の戯言を無視し、クレイトスは神殿へと足を踏み入れる。彼が駆けつけたとき、神官はハーピーによって地に叩きつけられる寸前であった。間一髪のところで神官を助け出したクレイトス。無事助けだされ、落ち着きを取り戻した神官は彼が本当に救世主であるか確かめるために手を伸ばす。彼女はそこに見た。口に出すのも憚られるおぞましいものを。
394 :GOD OF WAR:2006/11/19(日)01:36:02ID:W2S9SyS60
それは、人の形をした獣だった。誰よりも残忍で、誰よりも勇猛なスパルタの将軍。精強で知られるスパルタ兵ですら怖れたこの男に立ち向かう事ができたのは彼の妻ただ一人。だが、その彼女でさえも彼の欲望を止める事はできなかった。更なる戦を求め、激しく燃え上がるクレイトスの欲望。その欲望が彼自身を焼き尽くすことになることを、彼はまだ知らない。神官の顔は青褪めていた。アテナは何故このような者を選んだのか――?「私の頭を覗くな!」忌まわしい過去を覗かれたクレイトスは怒りに任せて神官を振り払う。獣の怒りに身を任せてようとした彼に神官は冷たい鞭のような言葉を打ち付けた。「敵を見極めなさい」と。この世で神を倒す方法はただ一つ。それは「パンドラの箱」。アテネ城壁の先、砂漠の彼方に神々が隠した強大な力。しかし、箱を求め生きて帰った人間は誰もいない。
395 :GOD OF WAR:2006/11/19(日)02:01:17ID:W2S9SyS60
箱を求め、死の砂漠に向かったクレイトスはその途中でアテナの啓示を受ける。アテナはクレイトスに告げた。パンドラの箱を求めるのならば三匹のセイレーンを探せと。彼女の歌を聴く者だけが「クロノス」の下に辿り着けるのだ。クロノス。偉大なるゼウスの父でありながら、ゼウスに反逆され神々の座から下ろされた巨人。父であるこのタイタンにゼウスは罰を科した。それは、パンドラ神殿を護ること。彼の巨大な肉体、その全てが砂に削られ、失われるまでの永劫にも等しき時間の果てまで。歌を頼りに三匹のセイレーンを見つけ出し、首をへし折って皆殺しにしたクレイトスは真に彼女達が守る物を見つけ出した。巨大で豪奢な角笛。それを吹いたクレイトスの前に驚くべき光景が広がった。いつ果てるとも知れない砂嵐が太刀で切り裂いたかのように二つに割れたのだ。これこそがアテナの言う安全な道であった。砂漠の道の向こう、遥か砂の世界を這い回る巨人――クロノス。彼が背負うパンドラの神殿に足を踏み入れれば、最早逃げることは敵わないとクレイトスは知っていた。箱を手に入れるか、朽ち果てるか。その二つしかないのだと。全てを承知の上でクレイトスは神殿に向かう。
398 :GOD OF WAR:2006/11/19(日)02:41:29ID:W2S9SyS60
ただ一人で山脈にも匹敵するクロノスの巨体をよじ登り、クレイトスはパンドラ神殿に辿り着いた。そこで彼を待っていたのは半ば朽ち果てた男だった。神殿の門番であり、この神殿に命を喰われた者たちの火葬人。それがこの神殿に忍び込んだ最初の愚か者に神々が与えた罰だ。この姿を見れば誰でもこの神殿の恐ろしさを知るだろう。そして心に刻むのだ、神々が自らを脅かす力を求める者をどれほど憎むのかを。クレイトスの決意はそれでも変わらない。その意思を汲んだ門番は神殿の門を開いた。狂気の神殿は変わらぬ姿で新たな侵入者を待ち受ける。更なる狂気が彼を屈服させる、その時まで。アルテミスよりタイタン殺しの剣「ブレイドオブアルテミス」を授かったクレイトス。新たな力を手に彼が最初に挑んだのは第一の試練「アトラスの試練」だった。アトラスの試練、それは過酷な罠をかいくぐりアトラス像の仕掛けを作動させること。クレイトスはすぐに理解した。アトラス像に足りないもの、それは神話に名高い彼が背負うべき「荷」だった。剣呑極まりない罠の奥で手に入れたハンドルを力の限りに回すクレイトス。アトラス像は彼に応えるようにゆっくりと動き出し、あつらえるように彼の足元に置いてあった巨大な鉄球を背負い――無造作に放り投げた。分厚い神殿の壁が砕け、隠されていた道が姿を現す。それは、祭壇へ続く道だった。神殿の為に命を落とした偉大なる建築家の息子、その遺体を祀る祭壇。遺体から首を引き千切り、クレイトスは第一の試練を乗り越えた証を手に入れるのだった。
399 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/11/19(日)02:49:20ID:W2S9SyS60
証を手に入れ神殿中央部「パンドラの輪」に戻る途中、クレイトスは見た。無残に殺され、折り重なるように倒れた兵士たちの姿を。クレイトスはそれが何者の仕業かを知っていた。眼前の光景は彼には懐かしいものでもあったからだ。数年前――最も若く、最も優秀な将軍であったクレイトス。幾百、幾千の敵を滅ぼし畏怖と尊敬を一身に集めた彼の栄光もついに終わりの時を迎えようとしていた。――数千を超える東の蛮族がスパルタ軍に襲い掛かったのだ。無慈悲な彼らの攻勢の前に虐殺されるスパルタ兵達。彼らの将軍もまた、同じ運命を辿ろうとしていた――しかし、クレイトスにとって勝利は絶対だった。自分の魂よりも。「アレス! 我が敵を滅ぼせ! 我が魂を捧げよう!」ついにクレイトスは決定的な一言を放った。彼の全ての後悔、その始まりとなる言葉を。「神々よ、私は何をしたのだ」あの夜、あの時、自分が何を失ってしまったのか。その価値は神々にも、クレイトス本人にさえも分らないのだろう。死体に囲まれて、ただ彼は立ち尽くすのだった。
115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/12/13(水)23:02:42 ID:mcPVP8PP0
あー、都合で遅くなっちまったけど折角書いたから最後までゴッドオブウォー書くよ。で、間が空いたから簡単なあらすじ。悪夢を消すために神々の僕となって戦う残忍非道な男、クレイトスは悪夢を消すための最後の試練、仇敵でもある戦神「アレス」を殺すために究極の力「パンドラの箱」を求めてパンドラ神殿に向かい見事第一の難関を突破したのだった。こんなところ。んじゃ書きます。
116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2006/12/13(水)23:12:12 ID:mcPVP8PP0
手に入れた頭蓋骨を鍵に「パンドラの輪」の第二層に進んだクレイトス。そこで彼を迎えたのは第二の試練「ポセイドンの試練」だった。ポセイドンの試練、それは生贄を捧げること。檻に閉じ込められた人間を、生きながら焼き殺す。(この部分は北米版準拠。日本版では敵モンスターが檻に入ってます)それがポセイドンが望んだ「試練」だった。試練に耐え切れず死を選んだ男を尻目にクレイトスは生贄を捧げた。檻を挟み込むようにせり出た壁が業火を噴き出し、逃れようともがく男を焼く。それを待っていたかのように檻の床下が開く。哀れな断末魔の叫びをあげ、何処とも知れぬ地下に吸い込まれていく犠牲者。この瞬間、クレイトスは試練を乗り越えたのだ。試練を乗り越えたクレイトスに与えられた物は「ポセイドンの鉾」。水中を自在に動き回ることを許す神々の道具を手に入れ、クレイトスは水中迷宮を踏破し、パンドラの輪に戻る。いよいよパンドラの輪の最深部に挑む時がやってきたのだ。船を浮かべて走らせることができそうなほどの水を湛えた最深部。その地下へとクレイトスは潜ってゆくのだった。
117 :GOD OF WAR:2006/12/13(水)23:17:17 ID:mcPVP8PP0
燃え盛る炎と血の赤で染められた最深部地下に広がる「ハデスの試練」。冥界の王に相応しく、その試練が望んだものは純粋な殺戮。クレイトスは殺戮の限りを尽くした。獰猛なるケンタウロスの前足を切り落とし、跪いたところを双剣で腸を突き、喉笛を掻き切る。ミノタウロスの首を一刀の下に断ち切る。切り掛かってきた死せる軍団兵の剣をその手ごと掴み、背後に回って自らの獲物で無理やり自刃させる。だが、ハデスはその程度では満足しなかった。ハデスを満足させるに相応しい生贄を捧げるため、クレイトスは巨大な鎖で封じられた門を開くのだった。
118 :GOD OF WAR:2006/12/13(水) 23:21:03ID:mcPVP8PP0
それは、巨人を思わせる存在だった。だが、それは人とは似ても似つかない。人はこんな足を持たない。人はこの様な頭を持たない。この様に邪悪ではいられない。それは、鋼鉄の巨牛。全身余すことなく鋼の鎧に包んだ巨大なるミノタウロス。炎を宿した巨牛の目玉がクレイトスを間近に見据える。瘴気を撒き散らす鼻先は肌がふれるほど近い。存在そのものが狂気じみたそれを相手にクレイトスは立っていた。 いかなる怯懦も、傲慢さえもなく。ただ彼は信じているのだ。己はこの化物を凌駕すると。矮小なる人間の思い上がりを叩き潰すべく、巨牛が拳を振り上げる。死闘が、始まった。大人ほどもあるミノタウロスの拳を避け、強烈な炎の息を掻い潜りクレイトスは双剣を叩きつける。だが、巨牛の身を守る鋼の鎧は幾多の強敵を切り伏せた双剣さえも防いだ。クレイトスは知っていた。勝つためには己だけではなく何か他の力が必要だと。利用できる何かを探す彼の視線が遥か後方で止まった。溶鉱炉を思わせる炎の池の上。巨大な杭を撃ち出す機械仕掛けがそこに存在した。しかし、ただ撃つだけでは俊敏なこの巨牛に当たるべくもない。ならば――
119 :GOD OF WAR:2006/12/13(水)23:23:43 ID:mcPVP8PP0
クレイトスの猛攻の前に耐え切れず、ミノタウロスが守りを固めたその一瞬だった。身も軽く巨牛に飛び乗ったクレイトスは兜の後ろに双剣を結びつける。地上のいかなる乗り手も味わったことの無い獣の激しい抵抗。それを制したクレイトスは巨牛の背から飛び降りる。重力、そして彼の膂力が体力を消耗した巨牛を揺さぶる。抗うこともできず大地に叩きつけられ、朦朧とするミノタウロス。その隙を巨大な杭の一撃が破壊槌の如く巨牛を撃つ。あれほど頑丈だった鎧に罅割れが走った。好機を逃さず縦横無尽に奔る双剣。少しづつ奪われてゆく巨牛の鎧。そしてついに――最後の鎧が奪われた。ミノタウロスは、傷つき使い物にならなくなった鎧を怒りに任せて引き千切ると、最早無用とばかりに兜さえも投げ捨てた。おぞましい彼の正体がついに晒される時が来たのだ。
120 :GOD OF WAR:2006/12/13(水) 23:25:46ID:mcPVP8PP0
その肉体はとうに腐り果てていた。血の滴る剥き出しの筋肉、骨だけしか残されていない頭蓋。だが、その眼は燠火のように憎悪に燃えていた。防御すら省みない死せる巨牛の猛攻。しかし――クレイトスは巨牛を上回る。そう、遥かに上回る化物だ。吹き荒れる双剣の嵐。猛攻虚しく膾に切り刻まれ、意識が刈り取られた後、再び撃ち込まれる炎と燃える巨大な杭。正確に心臓を貫いたそれは遥か遠く、巨牛の飛び出してきた扉まで吹き飛ばし、ミノタウロスを磔刑に処した。高く、物悲しくすらある咆哮を断末魔に、泉の如く血を噴き出して巨牛は絶命した。クレイトスは、勝利した。
303 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:04:33 ID:aPWhDKyW0
巨牛の封じられていた扉の奥。もう一人の建築家の息子の頭蓋骨を手に入れたクレイトスはハデスその人からこれまでの功績をたたえて魔法を授けられた。新たな力を手にパンドラの輪に戻ったクレイトス。彼は第二の息子の頭蓋骨を鍵に「パンドラの輪」最大のからくりを作動させる。神殿が激しく揺れ、姿を現したのは巨大な神像。迷うことなく神像に乗り込むクレイトス。これこそが神殿の上層に向かう唯一の道だった。遥かな高みへと昇り続ける神像。彼が導いた先は果てしなく続く険しい断崖。この先に目指すパンドラの箱が存在するのだ。とうとうクレイトスはパンドラの箱を手に入れる第一歩に手をかけた。その彼の前に現れる一羽のハーピー。彼はその意味する所を知っていた。それはかつての主――アレスの警告に他ならなかった。
304 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:16:50 ID:aPWhDKyW0
「アレスーーーーーッ!」死を目前にした喉が張り裂けるほどのクレイトスの絶叫。その時、空が裂けた。あまりにも巨大、あまりにも雄大、あまりにも偉大。人の姿をした神――アレスがその身を現したのだ。クレイトスを救い、完全な戦士に、僕にするために。彼は神に誓った。僕となることを。アレスは新たな信仰者の望みに応えた。蛮族は皆殺しにされ、クレイトスには僕の証として相応しい武器が与えられた。「ブレイズ オブ カオス」冥界の奥底で鍛えられし双剣。一度身に付ければその鎖は使い手の肉を焼き、終生離れることはない。それは彼の両腕に焼き付けられた僕の証であり、彼の新たなる力だった。邪悪なる双剣は彼の意に従い変幻自在に奔り彼の敵を滅ぼすだろう。クレイトスの双剣が、いとも容易く蛮族の首を刎ねた。今まさに彼は究極の力を手に入れたのだ。だが、クレイトスは知らない。その力の代償が決して払いきれる物ではないことを。「哀れな獣め、主人の下に帰れ! 私がもはや僕ではないことを伝えろ。箱は必ず手に入れる。そしてそいつを使い、お前を慄かせ、跪かせてやる」吐き棄てるように言ったその顔には、邪悪な喜びが張り付いていた。
305 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:23:26 ID:aPWhDKyW0
狂気の断崖絶壁を登るクレイトス。かつてない強敵――双刃の剣を振るうサテュロス。三首から炎を吐くケルベロス。そして凶悪無惨な罠。それでも――彼の道を阻むことはできなかった。だが、彼の悪夢は消えることはない。どんなときも彼に絡み付き決して放さない。両腕に巻きついた剣のように。クレイトスは獣と化した。人間性を剥奪され、代わりに与えられたのは殺戮への衝動。アレスの名の下に殺戮を繰り返す彼に従うスパルタ軍はまさに無敵だった。そしてあの運命の夜も、クレイトスは殺戮を積み重ねようとしていた。「奴等はアテナに祈りを捧げるために神殿を建てた。愚かにもこの村は逆らおうとしている。我が神アレスに!村に火を放て!燃やし尽くすのだ!!」戦いの神に鼓舞されたスパルタ軍による虐殺が始まった。だが――クレイトスだけは村の中心、神殿を前に立ち止まっていた。彼の本能が危険を告げていた。立ち入ってはならぬと警告していた。「気をつけよクレイトス。神殿の中はそなたが思うよりも危険だぞ?」からかうような老婆の警告を無視し、クレイトスは神殿に踏み入る。彼は完璧な殺戮者だった。全くの獣だった。阻むものも逃げるものも殺された。誰一人逃げることすら叶わず殺された。胸を駆け巡る勝利の喜びは主より与えられたもの。それが、絶望に変わるまでどれほどの時間が必要だったであろうか。クレイトスは理解した。これ以上主に仕えることはできないと。そして彼は使命を得た。戦いの神を、葬るのだ。絶望に膝をつく彼を嘲笑う老婆の高笑いが燃え上がる村に響き渡った。「アレス、あの夜の償いに死ぬのだ」クレイトスはそう呟くと再び狂気の断崖に挑むのだった。
306 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:26:15 ID:aPWhDKyW0
ついにクレイトスはパンドラ神殿最上部に辿り着いた。彼の前に姿を現したのは何者の侵入も拒む気配を見せる建築物。その内部に侵入した彼はすぐに事情を悟った。そこは、墓だった。そこには偉大なる狂気の建築家とその妻の死体が転がっていた。この神殿を建てるためだけに二人の息子を捧げた建築家。彼が最後に捧げたものは最愛の妻その人だったのだ。だが、自身の最高傑作を物にした建築家もまた、自分の失ったものの大きさに耐え切れず死を選んだ。クレイトスは建築家の妻の首を引き抜く。とうとう彼は最後の鍵を手にしたのだ。最後の扉を開けるクレイトス。その奥でついに、彼は見つけ出した。ゼウス、ポセイドン、ハデス。三界を治める神々の像に見守られてパンドラの箱は神殿の最奥に鎮座していた。クレイトスの功績を讃えるアテナの声、その声が終わると同時に床が沈み込む。パンドラの箱まで辿り着いた勇者を送り出す最後の仕掛け。その終着点は神殿入口だった。まだ彼には長い長い道程が残されている。再び死の砂漠を越え、アレスの下までこの巨大な箱を運ばなければならない。しかし――もはや地上の何者にもパンドラ神殿すら踏破した彼を阻む事はできないだろう。そう、地上の者には。
307 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:29:16 ID:aPWhDKyW0
遥か遠く、アテネを滅ぼしつつある戦神は異変に気がついた。何者かがパンドラの箱を手に入れたのだと。「さらばだクレイトス。お前は冥界の奥底で永遠に朽ち果てるのだ!」戦神は無造作に柱を引き抜くと彼方目掛けて投げつけた。矢より速く、風よりも疾く。数百里の距離を駆け抜け殺意の槍がクレイトスを襲う。反応する暇さえなかった。己が滅ぼした巨牛と同様、磔にされたクレイトス。それでも、彼はまだ諦めていなかった。今際の際にあっても尚、悪夢は彼を責め苛んでいたのだ。
クレイトスは抱き締めていた。自らの手で殺めてしまった最愛の妻と子の亡骸を。セイレーンですら消すことのできない深い嘆きが彼の口から漏れた。「妻が、娘が……。何故だ、スパルタにいたはずでは……」最悪の答えが、彼の受けねばならぬ報いが、与えられる時がついに来たのだ。「私が思い描いた通りになったな、クレイトス」炎が、主の姿を浮かび上がらせる。主は満足そうな笑みを浮かべていた。「妻と娘が死んだ今となってはお前には何もない」「お前は更に強くなるだろう。しかしその強さによって滅ぶのだ」主は――アレスは、己を完全な野獣と変える為、自らの手で妻と子を殺させたのだ。彼は理解した。己はアレスの望んだとおりの完全な野獣になるのだと。そしてその牙が向けられるべき本当の相手も。「アレェェェーーース!!!」それは人としての慟哭であり、野獣の誕生を意味する咆哮であった。
308 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:31:21 ID:aPWhDKyW0
炎上する神殿を後にしたクレイトスに老婆が告げる。「今夜から後、お前の恐ろしい行為は皆の目に晒されることだろう」「そなたの妻と娘の灰はそなたの皮膚に纏わり付き、決して剥がれることはない!」立ち尽くすクレイトスの身に白い灰が纏わり付く。それは彼の罪の証。彼を目にしたものはすぐに知るだろう、彼がいかなる罪を犯したのかを。スパルタの亡霊。その誕生の瞬間であった。ハーピーがクレイトスの眼前で箱を運び去る。だが、彼にはそれを止める力さえ残っていなかった。結局、彼は使命を果たすことに失敗したのだ。アレスを滅ぼす寸前まで行きながら、クレイトスは命を落とした。もはや彼に残された道はない。冥界へと、その奥底へと彼の魂は堕ちていった。
309 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:35:33 ID:aPWhDKyW0
彼の呪われた魂でさえ冥界は迎え入れる。忘却の河に落ちた者は罪も記憶も失い、眠り続けるのだ。だが、彼にはそれを受け入れる気はなかった。使命を果たすために、クレイトスは最後まで抵抗し――その努力は、報われた。クレイトスの指が、冥界の柱にしがみつく男の服を捉えた。「離せ! 馬鹿! 俺を河に引きずり込むんじゃない!!」男の言葉など、クレイトスの知ったことではなかった。「地上に遣り残したことがある。やり遂げるのだ」わめく男をクレイトスは剣を突き立て、黙らせた。男が大人しくなった隙に彼は柱の上まで登る。登り終えた彼の姿に男が驚愕に目をかっと開く。クレイトスもまた男のことを覚えていた。あの時、ヒドラの体内に突き落とした男。「またお前か!」悲痛な男の叫びはまたもクレイトスには届かなかった。彼は無慈悲にも男を蹴り落とした。クレイトスは斟酌すらしない。肌で理解していた。冥界と云うものが己が越えてきたどの地にも決して劣ることのない危険な場所であると。双剣を抜き、クレイトスは進む。この先に何があるかは知らない。ただ、地上に戻るために。アレスを殺すためだけに。
310 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:40:27 ID:aPWhDKyW0
存在自体が残虐な冥界の果て、番人たちを殺し尽くした先、地上に最も近い高台。そこに辿り着いた彼を迎え入れるように空から一本の縄が降りてきた。罠か誘いか、どちらにせよクレイトスが地上に戻るに他の手段はなかった。ロープをよじ登るクレイトス。上へ、上へ――ついに、地上に戻った彼を迎えたのは、アテネ神殿の前で出会った狂気染みた老人だった。「ほほう、クレイトス。丁度よかったようだな。ほんの少し前に墓を掘り終えた所だ」あの時と同じく、惜しげもなく喜びを振りまきながら嬉しそうに老人は云った。だが、クレイトスはそんなことよりも疑念に囚われていた。「一体何者だ?」「なかなか興味深い質問だ。だが今は急がねばならん。アテナがお前を待っている」「どうやって分かった!」「お前を見守っている神々はアテナだけではない」その言葉と共に老人の姿が掻き消える。あの老人もまた、尋常ならざる存在であったのだ。「使命を果たせ、クレイトス。そうすれば神々はお前の罪を許すだろう」廃墟と化したアテナ神殿を通り抜け、クレイトスは向かう。アレスの下へと。その途中で出会ったアテナの神官は云った。アテネは終わりだと。しかし――クレイトスはまだ、終わってなどいなかった。彼は果たさなければならない。使命を、復讐を。ついにクレイトスはアレスと対面する。長き苦難の日々を、辛き試練の日々を終わらせるために。
311 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:44:18 ID:aPWhDKyW0
「ゼウスよ、自分の息子の力を思い知ったか!」アテネを滅ぼし尽くした戦神は咆えた。曇天の向こう、オリュンポスに座する神に向かって。「貴方はアテナを贔屓しているようだが彼女の都市は私の眼前で廃墟となった。そして今やパンドラの箱さえ手中にある。こいつを使って、オリュンポスを攻めてやろうか!」 戦神の掲げた手には鎖、その先にぶら下がるのはパンドラの箱。常人では押すことも適わない巨大な箱も戦神にとっては玩具に等しい。戦神の恫喝をクレイトスは黙って聞いていた。「クレイトス、冥界から戻ってきたというのか」首だけ動かしてクレイトスに視線を向けるアレス。その視線に怒りの色はない。地を這う虫けら如きに何故怒りを覚えよう。戦神の憤怒が叩きつけられるべき相手は他にいた。「これが貴方にできる最良の方法か! 戦いの神である私を倒すために寄越したのは、この壊れた人間か!!」天に向かって咆える戦神をクレイトスは冷静に見つめていた。彼は、自分のなすべきことを理解していた。その為の魔法がクレイトスの掌に宿る。次の瞬間、雷神の槌が放たれた。狙い違わず雷が鎖を喰い千切る。落下するパンドラの箱。ついに――箱は、正しき所有者の下に戻ったのだ。数千年の時を封印され続けてきた箱が開かれる。究極の力が解放される時が来た。
312 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:51:57 ID:aPWhDKyW0
神と人間の差とは何だろうか?様々な差がある。壮麗の極致に至る技、禁断の知識、到底起こせぬ奇跡。
人と神々の差はあまりに隔絶している。しかし――それらは突き詰めれば、即ち、力の差である。神々の巨体は端的にその事実を現している。そう、誰が敵うだろう。山よりも大きなこの巨人に。この広大なアテネ湾ですらただの水溜りにしてしまうこの巨人に。究極の力とはその差を埋めるもの。人をして神々に対抗することを可能とさせる力。クレイトスの肉体に力が宿る。力は、即ち大きさである。箱に封じ込められていたものが全て失われたその時、クレイトスは手に入れていた。神にも匹敵する力を。「お前はただの人間に過ぎぬ。かつて私に命乞いをした日と寸分違わず弱いままだ」かつての主の言葉にクレイトスはせせら笑うように答えた。「私はあの日と同じ人間ではない。私はお前が作り出した、怪物だ」「お前は本当の怪物と云うものを知らないようだなクレイトス」戦神に浮かぶ不敵な笑み。次の瞬間、アレスの背から鮮血が噴き出した。云うならばそれは蜘蛛の爪に似ていた。だが、それは現実の物とは似ても似つかない。それは、幾つもの節を備えた長大な爪だ。戦神の背を突き破り姿を現したのは、主の意思に従い自由自在に動き業火を発する三対の爪。「最後の稽古をつけてやろう」クレイトスの最後の戦いが始まろうとしていた。
313 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 19:58:38 ID:aPWhDKyW0
戦神の猛攻。彼の爪は敵の攻撃から身を守る外套であり、盾であり、伸縮自在の槍であった。炎の魔法は矢のように上空からクレイトスに襲い掛かり、紅蓮の炎を帯びた巨大な戦槌は一振りで大地を揺るがした。まさに戦神と呼ぶに相応しい、絶対的な力。積み重ね、培った全ての業を、手に入れた魔力を駆使して対抗するクレイトス。そしてついに彼の業が戦神を捉えた。傷つき、純粋な力勝負に追い込まれるアレス。しかし究極の力を得た彼の膂力は神すらも凌駕していた。押し負け、一瞬の隙を作るアレス。その機を逃さず肩に飛び乗った虫けらに、振り払おうと爪を振るう戦神。戦神の必死の抵抗、その抵抗さえもクレイトスは利用した。彼は己に向かってくる爪を受け止めると逆にその主に向かって振り下ろした。自慢の爪に強大な肉体を貫かれるアレス。己の爪に貫かれること二度。ようやくアレスは理解した。この人間がかつてない強敵であることを。咆哮と共に戦神の掌に魔力の輝きが宿る。両の手が合わさったその時、嵐が生まれた。全てを喰らい、飲み込む嵐。これこそが戦神の奥の手だ。クレイトスは双剣を突き刺し、堪えようとするも抵抗空しく吸い込まれてしまうのだった。
314 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:01:52 ID:aPWhDKyW0
「お前には敵の倒し方を幾通りも教えたはずだ」「肉体を焼き、骨を砕く。だが、精神の崩壊こそが真の破滅なのだ」異界を堕ちてゆくクレイトスの耳に響くかつての主の声。落ち続けたその果てでクレイトスは言葉の意味を知った。そこは彼の罪そのものだった。忌まわしきあの神殿。あの時と全く変わらない神殿の扉を蹴り破るクレイトス。そこにはもはや望んでも叶わない筈の願いがあった。「神々よ、これは現実か……?」何が起きたのかも分らず不安に震える妻と娘。その不安が具現化したかのように異様な存在が姿を現した。――クレイトスそのものであった。獣と化し、殺戮に酔うおぞましき野獣。彼の過去、最悪の可能性。「……おとうさん!」クレイトスの進むべき道は決まっていた。全く始めから。「――アレス、お前に私の行く手を阻む術はない。今度こそ家族を守る!」あまりにも無謀な戦いだった。戦神の下僕として戦った頃の自分、獣と化した己の群れを相手にたった一人で家族を守り抜くなど到底不可能としか思えない。だが、万に一つの奇跡でも、それは挑む価値のあるものだった。幾度傷つこうとも、彼は諦めなかった。文字通り己の身を盾にしてでも彼は家族を守った。どれ程の時間が経ったのか。クレイトスは忌まわしい自身を全て屠っていた。
315 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:10:12 ID:aPWhDKyW0
「見たかアレス! 一度は奪われたが二度と手出しはさせん!」クレイトスの叫びを嘲笑うかのようにアレスの声が響く。「家族を救うことはできぬぞクレイトス。お前は究極の力を求め家族を棄てた。何かを得るには相応の代償を払うのだ」「代償ではない……家族を死なせたくなかった」それは彼の偽らざる言葉だった――しかし、既に遅すぎた。「代償抜きで私の力がやれるものか!」神の怒り。自分の庇護を求めながら代償すら払おうとしない背徳者への怒り。突然、双剣が宙を走り、彼を吊るした。主の意に反する行動に見えてそれは正しく理に叶った行動。彼らは、真の主の意思に従ったのだ。死ぬまで離れないはずの双剣がクレイトスの腕から離れた。生物のように宙を舞う双剣が狙いを定めた先、それは命を賭けて守り抜いた家族たち。クレイトスは守りたかった。だが彼にはそうする為の力も、魔法も残っていなかった。己の分身とも云えた筈の双剣が最愛の家族を貫く。あの時と同じ巨大な絶望がクレイトスに襲い掛かった。ついに膝をつくクレイトス。彼の口からうめきが漏れる。それは神々の戦士と思えぬほど弱々しいものだった。「そんな……嘘だ。またなのか……?」絶望し、アテネ湾に膝をつくクレイトスをアレスは見下ろしていた。「私に従っていればよかったのだ、クレイトス。更に強くなれたものを」精神の戦いに勝利した戦神がかつての下僕の首を刎ねるべく炎の剣を振り上げる。再び彼の命運が尽きようとした――その時だった。「あれは!」クレイトスの目に映ったもの。それはアテネの守護女神、アテナの巨像。その像が捧げ持つ巨大な剣。アレスにも対抗しうる力。戦神の剣が空を切る。すんでの所で避けたクレイトスは守護女神の剣を手に取った。これこそが神々が彼の為に残した最後の力。「私にはまだオリュンポスの神々がついている。アレスよ、今こそ私の強さを見せてやる」
316 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:13:44 ID:aPWhDKyW0
決戦の火蓋が切って落とされた。それは巨像の剣と炎の剣による真っ向勝負。アレスは深い傷を負っており、クレイトスは神の力を奪われている。一見して互角。しかし、地力が違いすぎた。戦神の爪は健在、加えて魔力もまだ残っている。そして――アレス自身もクレイトスに劣らぬ剣の使い手なのだ。クレイトスに残されたのは己が業だけ。ただの業、十年にも及ぶ苦難を積み重ねた業、人の身では到底叶わぬはずの化物たちを屠ってきた業。弛まず緩まず積み重ねてきた修羅の業。神の力を駆使する戦神に喰らい付くクレイトス。致命打を避け、幾度切り刻まれようとも不屈の闘志で立ち向かう。神域に達した業、全てを凌駕する膂力。だが、何よりも――神すら殺しうるその執念。それは、十分に戦神を凌ぐに足るものだった。力が戦神を圧し、業が戦神の剣を払った。隙をさらけ出した戦神の胴に深々と刺さる剣。致命傷にも等しい傷。膝をつく戦神。しかし、クレイトスの執念はここで剣を止めない。膝に飛び乗るや否や跳躍するクレイトス。その肉体は空中で弧を描き、流れるように大剣を振り下した!
317 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:22:33 ID:aPWhDKyW0
大勢は決した。もはやアレスにはクレイトスに抵抗する力はない。追い込まれた戦神から神の物とも思えない言葉が飛び出た。「忘れるなクレイトス、お前を救ったのは私だ。お前が助けを求めたときに――」「忘れるものかアレス! お前がどうやって俺を救ったか!」突き放すような彼の言葉に戦神は食い下がる。「あの夜、私はお前を最強の戦士にしようとした」未だ戦神は理解していないなかった。かつての僕が何故、彼の下を離れたのか。クレイトスの顔には如何なる表情らしきものも窺えなかった。「それは成功だな」女神の剣がアレスの胸を貫いた。彼の復讐は成し遂げられたのだ。鮮血を迸らせ、戦神は倒れた。広大なアテネ湾を戦神の血が赤く染める。だが、戦神の死はそれだけに留まらない。彼が集め、蓄えた力は肉体と云う枷からの解放されようとしていた。漏れ出す光はあふれ出す彼の力の一片。それは次第に増え――やがて臨界に達した。その時、天と地が震えた。閃光が、爆発が、湾を飲み込む。まさに戦神の名に相応しい凄絶な最後だった。
318 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:24:38 ID:aPWhDKyW0
夜が明けた。アテネを覆う雲は晴れ、朝の光が廃墟と化した街に差し込む。街は守られたのだ。アテネは再び栄えるだろう。しかし――クレイトスには、それで終わりではない。彼には望みがあった。魂の底からの渇望があった。「アテナ、あの忌まわしい悪夢がまだ消えぬ」再び神像に宿ったアテナが口を開く。大業を果たした人間に送られる賞賛の言葉。だがクレイトスが望むのはそんなものではなかった。幾度もの死線を潜りぬけ、戦神を倒すという、人には過ぎた大業を成し遂げてでも魂の再生を求めた男。彼に真実が与えられる時が来た。「貴方の罪を許すとは言いました。それは護ります。しかし悪夢を消すとは約束していません。神といえども貴方の忌まわしい過去を拭うことはできないのです」全ての望みは断たれたクレイトスはエーゲ海を見下ろす断崖に向かった。悪夢から解放される唯一の術を求めて。
319 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 20:28:41 ID:aPWhDKyW0
彼は断崖絶壁の上に立っていた。ヘラクレスもかくやと云わざるを得ない、鎧のような筋肉に支えられた屈強な体。剃り上げられた禿頭、たくましい顎鬚。全身は不自然にも灰のように白く、異様な赤い刺青が全身に渡って彫られていた。異形の男。そう呼ぶのが相応しい。しかし今、彼の顔に刻まれているのは人を人たらしめる最も人間らしい感情。――決して癒えることのない深い苦悩だった。「オリュンポスの神々は私を見捨てた」左足が虚空に向けて踏み出される。「もはやこれまでだ」そうして、彼は身を投げた。ギリシアが誇る最高峰の絶壁から逆波渦打ち付ける海へと――
322 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 21:54:03 ID:aPWhDKyW0
しかし、彼の命運はそこで尽きなかった。羽根の如く軽く舞い上がる彼の体。浮かべ上げられた彼を迎えたのは巨大な扉とその番をするアテナの神像だった。「貴方はまだ死ぬべきではありません。神々はかような大業を成し遂げた人物が自ら死を選ぶことを許しません」自ら死を選ぶことすら許されないと悟り、落胆するクレイトスにアテナは新たな道を示す。「アレスは残忍でした。彼の行為を止めねばなりませんでした。しかし彼のいない今、オリュンポスには新たな戦いの神が必要なのです。この階段を上りなさい、貴方の未来が待っています」重く、大きな扉が開き水面のように輝く空間が現れた。扉を潜るクレイトス。彼の眼前に広がる光景、それは未だかつて見たこともないほど豪壮な、雲海の上に立つ黄金色に輝く神殿だった。オリュンポス、神々の住まう地。彼の歩みに合わせて神殿の扉が開く。その奥、玉座の脇を飾るのはかつて彼の滅ぼした獲物の姿。骨と化した死せる巨牛、そして――狂いし神。戦神、アレス。誰にも覆すことのできない勲章を打ち立て、クレイトスは玉座に腰を下ろす。新たなる戦神が今、ここに生まれたのだ。
323 :GOD OF WAR:2006/12/31(日) 21:55:43 ID:aPWhDKyW0
――それ以来ずっと、その理由がどうであれ人間が起こす戦いにはかつて神を倒した人間の眼差しが向けられている。彼らは新たなる戦いの神、ゴッド・オブ・ウォーとなったクレイトスに操られているのだ。GOD OF WAR END
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。