リーヴェルファンタジア~マリエルと妖精物語~
part36-283~291,307~310,330~338,366~370、part37-34~37、part36-379~383、part37-137~141,178~182,195,part39-453
●10月 ラスト
月初め、毎月当たり前のように小屋に訪ねて来ていたアルフレッドが来ない。
その代わりか、ヘイゼルがマリエルの小屋を訪ねる。どうやら今夜ローアンの誕生日会があるらしく、
是非マリエルにも来て欲しいとの事だった。快諾するマリエル。
夜を迎え、マリエルはヘイゼルの家に向かおうとする。
小屋を出ようとしたその時、フィオナが「あのね、マリエル…。」と呼び止めるが、
ううん、何でもない、気をつけてねと歯切れ悪くマリエルを見送った。
(フィオナはこれから起きる悪い出来事を予感したと思われる。)
ハーブ園にあるヘイゼルの家に向かったマリエル。そこではローアンの友達達が集まり、誕生日会が楽しく催されるのであった。
誕生日プレゼントを渡す時、コリンはローアンに綺麗な蛙をプレゼント。それをヘイゼルに見せびらかすと
ヘイゼルは卒倒してしまう。程なくして誕生日会は終わるのだった。
誕生日会を終えた後、ヘイゼルの家の外にて。ヘイゼルとマリエルが向かい合っている。
「…マリエル、今日はありがとう。」「ううん、…ヘイゼルはたいへんだったね。まさか、カ…」
「言わないで、その名前。いいのよ、ローアンが楽しければ。」「ヘイゼルって、とってもローアンのことが大事なんだね。」
それを聴いてヘイゼルは何か物思いにふける。どうしたの?と聞くマリエルにヘイゼルはこの街に来てよかった、
ずっとここに住みたいくらいにとマリエルに伝えた。「そうすればいいのに。」
「…そうね。そうできれば、どんなにか…あら?」ヘイゼルが何かに気がついた。耳を澄ますと歌が聞こえてくる。
歌が聞こえるほうに歩き出す2人。そこには白装束と白いフードを身にまとい、顔が真っ黒、
目は赤く輝く幽霊のような者が立ちつくしていた。その者は歌いながら長い袖で何やら涙をぬぐっているように見える。
「ゆ、幽霊?」怖がるヘイゼルに「あれは、幽霊じゃない。妖精だよ。」とマリエルがたしなめた。
妖精を見るのは初めてと感激するヘイゼル。「なんて悲しい歌…。あっ、もしかしたら。」
ヘイゼルはその者の歌を聴いて何かを思い出した。それは以前ヘイゼルの祖母イェッタから聞いた話。
イェッタも以前一度だけ妖精を見たことがあるという。それは今と同じ場所で今と同じように泣き、そして歌っていたと。
おびえだすヘイゼル。「おばあさまのおじいさまにそのことを話したら、それはバンシーといって、
家族の死を告げる妖精だって教えてくれたんですって。…その数日後に、おじいさまが亡くなったそうなの。」
それを聞いて驚くマリエル。「そうなの?あなたが、バンシーなの?」そうヘイゼルがバンシーに問いかける。
バンシーはヘイゼルの方を向き首を縦に振った。「…おばあさまを連れにきたの?」バンシーは首を横に振る。
「…あ、あたし?」バンシーは再度首を横に振った。そしてバンシーは手で家の方角を指し示す。
ヘイゼルは手で口を押さえてしまう。「そ、そんなっ…じゃあ…。」バンシーは首を縦に振った。
「どうして?うそよ、そんなの。」信じられないという素振りを見せるヘイゼル。
そこにイェッタの声がした。どうやらローアンが発作を起こしたらしく、一刻を争うためシスターメイを教会に
呼びに言ってほしいということだった。ヘイゼルは教会の方に駆けていった。
小屋に戻ったマリエル。ハーブ園での出来事についてフィオナに相談する。
フィオナはバンシーの事を知っていた。ハーブ園のオブライエン家は代々バンシーに守られているらしい。
守っているなら何故ローアンを助けてくれないのとマリエルが聞くが、
「バンシーだって、悲しいから泣いてるの。彼女は…ただひとの運命を告げてるだけなのよ。」そう答えた。
ローアンはまだ小さいのに可愛そうだというマリエルだが、ローアンの運命ならば誰にも変える事が出来ないと諭すフィオナ。
何とか助ける方法にすがりたいマリエル。フィオナはポピンジェイを頼る事を勧めた。
ポピンジェイを訪ねるマリエル。バンシーが現れたと言う事情をポピンジェイに話すマリエル。
「バンシーが予言したなら、それは運命なんだろう。」ポピンジェイはそういった。
妖精の力で何とかならないか?そう聞くマリエルに人間の運命を変える事は許されず、妖精が関わる事じゃないと説明した。
それでも助ける方法がないかとすがるマリエル。「たとえ方法を知っていたとしても、きみに教えるわけにはいかない。」
何故?と聞くと、妖精の樹を銀の森のように呪われた樹にしてしまう方法であるとポピンジェイは言う。
複雑な面持ちのマリエル。そこにポピンジェイのお付の妖精ドルチェが現れ、何やらポピンジェイと相談を始めた。
ポピンジェイは余り確かな話ではないがと念を押し、もう一つローアンを助けられるかも知れない方法をマリエルに伝える。
伝説では人の命の身代わりになってくれる生命の石と言うものがあるらしいが、それがどこにあるのかは分からないと言う。
不確かな情報だった。しかし、わずかな希望が見つかったマリエルはそれをヘイゼルに伝えるためにハーブ園へと向かった。
ハーブ園にはヘイゼルは居なかった。その代わりイェッタが居り、ローアンの具合が良くないと言う事と
ヘイゼルはローアンの看病をしているシスターメイの代わりに教会に行っていると言う事を告げられた。
教会に着いたマリエル。そこには祈りを捧げるヘイゼルの姿があった。
「…どうかローアンを連れていかないでください。天国に召されてしまうには、あの子はまだ小さすぎます。
世の中にはまだまだ楽しいこと、うれしいこと、うつくしいものがたくさんあるのに、知らないまま逝くなんてかわいそうです。
あんなに小さいのに、とても苦しんで…。代われるものならあたしが代わってあげたい。
あの子はあたしたちの、だいじな宝物です。パパとママは、あの子の病気を治すために、一生懸命都会で働いてます。
それなのに、ローアンが居なくなったら、どんなに悲しむことでしょう。だから…神さまお願いです。
どうせならあの子の代わりに、あたしを連れていってください。」
その熱心な祈りに、マリエルは声をかけるタイミングを逸してしまう。
その時、教会にあるピアノが何者かの手によって不協和音を奏で出す。驚いてピアノの方を見るヘイゼルとマリエル。
視線の先に居たのは、以前マリエルの居る小屋に妖精の樹を見に立ち寄った女性、レベッカであった。
レベッカはヘイゼルに、神に幾ら願い事をしても人間の運命を決めているのは神なのだから効果がないと諭す。
それでもローアンの死は受け入れられない、ローアンが死ぬのは間違っているとヘイゼルが言う。
レベッカは神が何もしないなら、自分達で運命に立ち向かわなければいけないとヘイゼルを勇気付ける。
「本当に、自分が身代わりになってもかまわないの?」それでローアンが助かるならと、
ヘイゼルは藁にもすがる思いでレベッカを頼る。「方法がないでもないの。ね、そうでしょ?」
レベッカは急にマリエルの方を向いた。ヘイゼルはこの時初めて教会にマリエルがいた事に気づいた。
「…ひとの運命までは変えられないって言われたよ?」ポピンジェイに言われた通りにマリエルが返答する。
「そりゃ、死んだ人間を生き返らせるのはムリだわね。でも、運命を引き受けてくれる人がいるなら、話はべつよ。」
ポピンジェイすら教えてくれなかった方法をレベッカが知っている。マリエルもその方法について聞く事となる。
レベッカはマリエルが妖精使いであり、人の願いを叶える事が仕事であることをヘイゼルに教えた。
「…でも、ヘイゼルの願いはつぼみをつけないよ?」妖精使いとして願いを適えるならば花が咲かなくては何もできない。
レベッカは続けて説明をする。余りに大きな願いを叶えると、樹はエナジーを使い果たし枯れてしまうという。
これがポピンジェイがマリエルに教えてくれなかった方法で、銀の森はそうやって呪われた森になったのであろうか。
「ムリヤリにでも花を咲かせる方法を、わたしが知ってるわ。」「…どうすれば、いいんですか?」ヘイゼルが聞くと、
「わたしは花を咲かせる方法を知ってるだけ。実際に奇跡を起こせば、樹を失うことになるのはそこの彼女なんだから。」
「…マリエル。」「なにもしなかったからといって、だれもあなたたちを責めたりしないわよ。
失うものがあまりに大きすぎるしね。ま、ふたりでよく話し合ったらいいわ。」
まるで2人が悩むシチュエーションを楽しんでいるかのように振舞うレベッカ。話が終わるとレベッカは教会を後にした。
レベッカが居なくなった後の教会。マリエルはローアンを助けるもう一つの方法、生命の石のことをヘイゼルに説明する。
「ぜったい、ぜったい、見つけてくる。だから、ヘイゼルもあきらめないで。」「…ありがとう、マリエル。」
「あたしたち、友だちだもん!」マリエルは教会の外へ駆け出した。
小屋に戻ったマリエル。そこにはアルフレッドがいた。借金の返済も今月で終わりの為、
マリエル達の調子を確認に来たのだという。マリエルはアルフレッドにも生命の石について聞くが、
アルフレッドはその存在すら聞いた事がないと答えた。
その時、誰かが扉を叩いた。迎えると、そこに立っていたのはエリックであった。
いつものように仕事の依頼だと思ったマリエルは時間がない事から話を切り上げようとするが、
エリックの依頼は、マリエルも探していた生命の石に関するものであった。
どうやらエリックも独自にローアンを救うすべを模索していたらしい。
その材料となるのは、月のしずく、虹のかけら、シェリンクスの笛、火の酒であると。
全て手元にあると大喜びするマリエル。しかし材料はそれだけではなかった。4つの材料を合成する核がまだ足りず
それは「土より生まれ、水にて育ち、風をはらみ、炎を産む。すなわち世界の中央にありき」という文字が示す場所に
あるのだという。
情報を元に、生命の石の核となるマテリアルは世界樹にあると推測したマリエル。
世界樹に向かうがそこは以前のような緑生い茂るような場所ではなく、枯れ果てたようなそんな言葉が
似合うような場所になっていた。世界樹に棲まう妖精達にも元気がない。
何が起きたのか訪ねると、もう直ぐソーウィンの祭りなのだが、妖精女王が姿を現さないらしい。
今の代の妖精女王は銀の森出身らしく、銀の森が枯れ果ててからと言うものの世界樹も元気がなくなったと妖精達は話す。
世界樹の奥で世界樹を見守るヤドリギの妖精と出会う。
ヤドリギの妖精はマリエルに世界樹を救って欲しいと依頼する。その為、現在の状況をマリエルに説明した。
今、自然界のバランスが乱れて恐ろしい大きな力に翻弄されている事、その影響が自然世界の中心である世界樹に強く現れている事、また女王がそれを少しでも食い止めるために妖精界に戻っている事を伝えた。
ヤドリギの妖精はマリエルには世界樹の根に赴き、乱れたエナジーの影響で生まれた黒いつるを焼いて欲しいのだと言う。
話を受けたマリエルは妖精女王の間から世界樹の根に降りていった。
世界樹の根に到着したマリエルは、妖精の力を借り、黒いつるを全て焼ききる事に成功したのである。
その後、世界樹の頂上でマリエルは生命の石の核となるマテリア、光の花を手に入れた。
それを報告にするため、ヤドリギの妖精の元へ向かうマリエル。
ヤドリギの妖精はマリエルの働きに感謝をしたが、エナジーの乱れは全て解決したわけではなく、
今後も妖精女王が人間界に降りてくる機会は減ると伝えた。また、光の花は本来人間に与えられるものではなく、
それを持っていったとしてもマリエルが望むような結果をもたらすとは限らないと念を押した。
「それでもいいの。なにかを失わずにすむとは、思ってないから…。」「そこまでわかってるなら、いいでしょう。」と、
ヤドリギの妖精は光の花をマリエルに与えたのだった。
急いで小屋に戻ったマリエル。フィオナはマリエルの留守中にヘイゼルが訪ねて来たことを伝える。
どうやら何か思いつめていたような顔をしていたらしく、ローアンの容態が悪くなったのかと心配するマリエルは、
直ぐハーブ園に向かった。
ハーブ園のヘイゼルの家の前にはシスターメイが居た。マリエルはメイにローアンの容態を聴くが、
もう手の施しようがなく、どうか少しでも苦しまないように祈るだけだと教えられた。
また、ヘイゼルは思いつめた表情でどこかに出て行った事を聞く。
----------------------------分岐点(作中は多分ノーヒント)
虹のかけら、炎の酒、月のしずく、シェリンクスの笛をそれぞれ手にいれた四大の迷宮にて、
土の妖精王、火の妖精王、水の妖精王、風の妖精王に祝福して貰った後、
光の花をエリックに渡す→ED2
----------------------------
虹のかけら、炎の酒、月のしずく、シェリンクスの笛のどれか一つでも妖精王の祝福を受けずに、
光の花をエリックに渡す→ED1
----------------------------
光の花をエリックに渡したマリエル。後は合成の結果を待つのみであった。
「よし、できた!」エリックがそう言った直後、猫の鳴き声し、何か争ったような音が聞こえた。
エリックの元へと向かうマリエル。メガネメガネとエリックは床を探している。
「何があったの?」マリエルがエリックに聞くと、どうやらエリックは黒猫に襲われたらしいとの事。
そして気がつけば合成が完了した生命の石が消えていた。
犯人にあたりがついたマリエル。しかし信じたくはなかった。「まさか…まさか、そんな…。」
マリエルは急いでアルフレッドの居る母屋に向かった。
母屋にはアルフレッドはいない。何度名前を呼んでもアルフレッドは姿を現さなかった。「どうして?…どうしてなの!?」
仕方なく小屋に戻るマリエル。外からみた妖精の樹は既に枯れ初めていた。そしてそのたもとにはヘイゼルがいた。
「マリエル…。」「ごめんね、ヘイゼル…ごめん。」結果的に生命の石を手に入れることが出来なかったマリエル。
頭を下げ、ヘイゼルに謝る。「どうしてマリエルが謝るの?」「だって、かならず助けるって言ったのに…。」
「…あやまらなくちゃならないのは、あたしのほう。ごめんね、マリエル。…樹が枯れちゃうね。」
(この段階で恐らくヘイゼルはレベッカに花を無理やり咲かせる方法を聞いて実行に移している。)
「じゃあ、もう…?」「花が咲いたら、あとのことはお願いします。お願いです。どうか、ローアンを助けてください。」
「やめてヘイゼル。頭なんか下げないで。」「お願い…お願いします。」ヘイゼルは頭を上げる事なくマリエルに願い続けた。
「ヘイゼル…。」友の悲痛な願いにマリエルは迷いながらも小屋へと向かう。
しかし、そこにポピンジェイがやってきて、マリエルを呼び止めた。
ポピンジェイは樹はまだ一時的に枯れているだけだが、願いの花を咲かせてしまえば、街全体が銀の森のように
呪われた場所になり人が住めなくなるとマリエルに忠告する。花が咲く前につぼみを摘み取ってしまうべきだと。
「きみは、それでもいいと言うのか?」ポピンジェイがヘイゼルに聴く。
「そしたら、ローアンはどうなるの?」マリエルの問いに、ポピンジェイが少し顔をうつむく。
「かわいそうだが、あきらめるしかない。」
「どうしてっ、どうしてローアンが死ななくちゃいけないのっ!」ヘイゼルが抗議する。
「人は運命にしたがうしかない。きみの弟ひとりのために、街を犠牲にするわけにはいかないだろう?」
「…ローアンが助かるなら…ほかはどうなってもかまわないわ。」
「なんて、身勝手な…。」あらあら。どの口からそんな言葉が出てくるのかしら。
3人のやり取りをいつから聞いていたのだろうか、ポピンジェイの背後にレベッカが現れる。
「こんな街ひとつ、人の命には代えられないでしょう?気にする事ないわよ。」
「おまえか。この子たちに余計なことを吹き込んだのは。」
「少なくともあなたにだけは、そんなこと言われるすじあいはないわね。」
レベッカはポピンジェイに纏わる話を語りだす。
銀の森を呪わせたのも、それを止めようとしたマリエルの父イアンが樹に取り込まれてしまったのも
全てはポピンジェイが行ったことなのだとレベッカは言った。
ポピンジェイはその事実をレベッカが知っていることに驚いた。レベッカの話は続く。
ポピンジェイは死んだ人間を生き返らせようとして森ひとつを犠牲にしたのだという。
「しかし、彼女は生き返らなかった。ぼくは…ぼくは、だまされたんだ。」
「違うわよぅ。いくら銀の森でも、死んだ人間を完全にもとどおりにするには、エナジーが足りなかったのよ。それだけ。」
「きさまっ!」怒るポピンジェイ。それを代弁したのかドルチェが飛び出し、レベッカを火で包んでしまう。
燃える火の中から現れたのは、今までとは違う魔女のような風貌をしたレベッカだった。
「すぐに頭に血がのぼるんだから、これだから人間ってイヤだわ。」
「おまえ…おまえだったのか…。」その姿になって初めてポピンジェイは今まで対峙していたのが誰だったのか気づく。
「やっと気がついたのね。かわいいボーヤ。」「こんどはこの子たちをだまして、この樹を枯らすつもりなのか。」
方法を教えただけ、決断して実行するのはこの子達とレベッカは言った。それにヘイゼルは頷いた。
遠くからバンシーの声が聞こえる。レベッカはヘイゼルを煽り焦らす。
悲しむヘイゼルを見ていられないと小屋に向かうマリエル。それをドルチェが身を挺して防ごうとするが、
そのドルチェに飛び掛りを押さえつけた者がいた。それはどこからともなく現れたアルフレッドであった。
「あ、アルフレッド…!」「動くなよ、オイラの爪は妖精でも紙のように切り裂くぜ。」爪をドルチェに突きつけてそういう。
「悪いなマリエル。オイラ、ボスの命令には逆らえないんだ。」「ボスって…。」マリエルはアルフレッドのボスが
レベッカだと言う事を悟る。「…どういうことなの?」「早く行け。ローアンを助けるんだろう?」
「教えてよ。生命の石を奪ったのは?」「…オイラさ。」マリエルは失意のどん底に落ち、泣きながら小屋に向かう。
「…うまくやるんだよ、マリエル。」レベッカは不敵な笑みを浮かべた。
小屋ではフィオナが異変を感じ取っていた。妖精の樹には今まで見たことがないような
禍々しい赤黒い色の願いの花がつぼみをつけている。
その花にエナジーを吸い取られて樹が枯れてしまう事を危惧するフィオナ。
「早く摘んでしまいなさい。」そういうフィオナだが、マリエルは思いつめたようにその場を動けない。
「…どうしたの?」「花…咲かせなくちゃ。」
「なに言ってるの!つぼみがついただけでこれなのよ。花が咲いたらとんでもないことになるわ!」
「でも、ローアンを助けなきゃ。」「…そんなムチャな願いで、花は咲かないわ。」
「ヘイゼルが、自分は死んでもローアンを助けたいって…。ゴメンね、フィオナ。あたしがやらなくちゃ。」
「…しかたのない子。」フィオナも覚悟を決めた。
エナジーを求める妖精の樹に、そこに棲む妖精達が吸収されないようにするため解放する。
樹に棲んでいた妖精達は全て光となって妖精の樹を離れていった。
「フィオナは?」心配するマリエル。「あたしはへいき。」
フィオナはマリエルの一族が代々守り続けてきた妖精の樹と心中する覚悟が出来ていた。
「だって…この花咲かせたら…。」フィオナが消えることはマリエルにも分かっていた。
「考えたってしかたないわ。どっちを選んでも後悔するだけよ。」「だって…。だって…。」
マリエルの望みどおりすればいいとフィオナが言う。その言葉にマリエルが覚悟を決めた。
「お願い、ローアンを助けて。どうか、ヘイゼルも死なさないで。あたしのともだちを連れていかないで。あのふたりも助けて。
妖精の樹も助けて。代わりに…、代わりに…。あたしが…。」「だめよマリエル、その先を言っては…!」
「…あたしは、どうなってもいいからっ!」「マリエルッ!」
その時、禍々しい色の願いの花のつぼみが開き奇跡が起きる。【献身】の妖精の誕生。
小屋の外、妖精の樹の前。マリエルを心配するヘイゼルの姿があった。「マリエル…マリエルは?」
全てが上手くいった事に喜び高らかに笑うレベッカ。「すばらしいわ。ほんとうに、たいしたものね。」
何をやったのか?とレベッカに聴くポピンジェイ。
「大きくなりすぎた負の力は、やがて自分時自身を呑もうとして、世界に孔を開けてしまうのよ。見てるといいわ。」
妖精の樹の根元付近にブラックホールのような孔が出来る。
「自然界と妖精界をつなぐ環への扉よ。環っていうのはね。この街や銀の森のような、小さな自然界のひとつひとつが、
輪のようにつながってできているのよ。あたしはこれから、この中に入って、そのつながりを壊していくつもり。」
そんな事したら自然が壊れ人間だけじゃなく妖精も世界に棲めなくなるとポピンジェイは訴える。
しかしレベッカはどうせ人間のせいで自然が滅びつつあるこの世界で、人間も共倒れするように手回しをしているだけだと言った。
「いくつもの妖精の樹をつぶしてきたけど、扉を開くことはできなかった。
まさか、あんな小さな子の手で開けることが出来るとはね。結局、自分が犠牲にならないといけないのだから、
よっぽどの純粋さがないとダメなのね。あたしの見込んだ通りだったわ。」「…あの子の純粋さを利用したというのか。」
怒るポピンジェイ。「おしゃべりはもうおしまい。さ、行くわよアルフレッド。」
アルフレッドを連れ立って環の中に入ろうとするレベッカ。しかしアルフレッドは動かない。「ボス…もう、やめてくれよ。」
「…なんですって?」自然を滅ぼすなんてやりすぎたとアルフレッドは言う。
「あたしの言うことが聞けないの?…人間に戻れなくなってもかまわないのかしら。」
「だって、人間に戻ったところで、世界が滅びてしまえば意味がないだろ?」
「ふん。心配することないわ。だって、あなたは人間に戻れやしないんだもの。」「…え?」
「もともと人間でもなんでもないの。あんたはあたしが黒猫から生み出した使い魔なんだから。」
「なんだって…じゃあ、あの写真は?」「わたしが退屈しのぎに考えた作り話。ぜーんぶウソよ。」
「オ、オイラをだましたのか…。「夢があっていい話だったでしょ?」
「そんな…そんなことのために、オイラ…マリエルを…。ちくしょおお!」アルフレッドがレベッカに飛びかかろうとする。
その時レベッカは魔法のようなものがアルフレッドを撃つ。次の瞬間アルフレッドはただの黒猫に戻ってしまった。
「さよなら。せいぜい気ままに生きるといいわ。」そういい残すとレベッカは環に消えていった。
ポピンジェイとドルチェもレベッカを追い環に入る。
一人残されたヘイゼルの元にイェッタがやってくる。奇跡が起きたとローアンが命を取り留めたことを喜ぶイェッタ。
イェッタはそれを急いでマリエルに伝えて欲しいとヘイゼルに言い、再びハーブ園へ戻っていった。
浮かない顔をしているヘイゼル。「…ローアンが助かったのに、どうしてあたしはここにいるの?」
小屋の方に目を向けるとそこにはバンシーが泣きながら歌っていた。
「…どうして、どうしてあたしを連れていってくれないの?…マリエル?」ヘイゼルは小屋に入る。
そこには仰向けになって倒れているマリエルとそれを見守っているフィオナの姿があった。
「マリエル…。…あなたがフィオナ?」「あたし…守りきれなかった…。」泣き出すフィオナ。
ヘイゼルもそっとマリエルに近づき跪く。「あんたのせいよ!あんたが、ムリな願いをかけたからっ…」
フィオナは怒りを露にした。「…うん。ごめんね。あたし、ひどいこと言ったね。
ひとりで残されるのが、こんなにも悲しいだなんて…。ごめんね。
あたし、自分のことしか考えてなかった。…ごめんね。…ごめんね。だから、お願い…戻ってきて…。」
気がつくとマリエルは見知らぬ場所にいた。地面はまるで雲のような辺りには何もない場所だった。
ヘイゼルの願いが成就されたことにより生まれた献身の妖精によって導かれるままにマリエルは進む。
マリエルが着いた先には懐かしい顔があった。
「…マリエル?どうしてここに。」それはもう1年以上も行方不明になっていた父イアンであった。「パパ!」
抱きつこうと駆け寄るマリエル。しかし、マリエルの身体はイアンの身体を通り抜けてしまう。
「あ、あれ?ヘンだな。」「マリエル…。」
あ、そうだとマリエルは森で拾ったイアンのペンダントを取り出そうとした。しかし入れてあったはずのポケットには
ペンダントは見当たらなかった。
「…たぶん、今のマリエルは、魂だけがここにいるんだよ。だから、形あるものはなにも持ってないんだ。」
「魂だけ?…じゃ、あたし…死んじゃったの?」「そうとは言い切れないが…。」イアンは言葉を濁した。
それならばイアンも死んだのか?と聴くマリエルだが、イアンは死んでおらずここから出れないだけと答える。
マリエルは父を救えなかった事を謝る。ごめんねパパと。
「そうか、心配かけたね。マリエルがどんなにがんばってきたか、今のマリエルを見ればわかるよ。」「え?」
「たくさんの妖精たちが、マリエルの中にいるじゃないか。きっと、いろんな経験をしてきたんだろうね。」
見渡すと奇跡の妖精達がマリエルの周りを囲んでいた。フィオナが妖精の樹から妖精達を放った時に、
全ての妖精がいなくなったと思っていたマリエル。しかし、奇跡の妖精達は、マリエルの心に住んでいるのだと言った。
「…ありがとう。みんな。」「さあ、マリエル行きましょう。」献身の妖精が切り出す。
「えっ…どこに行けばいいの?」「レベッカの心の中へ。」「レベッカを、助けに行くのよ。」真実の妖精と
希望の妖精が言った。「レベッカを?」そう聞くマリエルにイアンが頷く。
「どうやら、レベッカが環に入り込んだようだね。」「パパはレベッカを知ってるの?」
「知っているよ。彼女は世界とともに滅びるつもりなんだ。なんとかして止めなければ。マリエル、おまえがやるんだ。」
「あたしが?」「彼女は人間に絶望して、人としての心を捨ててしまった。でも、もう一度それを取り戻す事が出来れば…。
…きっと、彼女もそれを望んでいる。」「…パパ?」奇跡の妖精達も後押しをし、レベッカとの対面を望むマリエル。
マリエルは再び空間を移動する。そこは真っ暗闇な場所で周りには8つのドアがただ立っているだけであった。
「ここ?ここがレベッカの心の中?」辺りを見回すと目の前にレベッカが現れる。
こんなところの良く来たわねとレベッカはマリエルを迎えた。「こんな、こんなさびしい場所が、あなたの心の世界なの?」
貴方には分からないとレベッカは言い捨てる。「良き隣人に囲まれ、愛情を注がれ、なに不足なく生きてきた、あんたには。」
悲しそうなレベッカにマリエルは掛ける言葉もない。「けれども、わたしにはなにもない。…見てよ!」
レベッカが手を振りかざすと扉が一つずつ開き始める。
「人間らしい気持ちなんて、これっぽっちも残ってない。からっぽよ、からっぽ!」ドアの向こうもまた闇が広がっていた。
しかし、もう人の心なんていらない、人間も世界も滅ぼすのだからと己の目的をマリエルに伝える。高笑いするレベッカ。
あなたに出来る事はもうなにもない。そう言い切るレベッカにマリエルはそんな事ない、私があなたを助けると
力強く訴えた。それを聴いてまた笑うレベッカ。
「あんたが?あんたがわたしを?」マリエルは頷く。途端レベッカが怒る。「生意気言うんじゃないよっ!」
その手には火をはらみマリエルにぶつけようとした。が、火はマリエルの前で奇跡の妖精によって防がれる。
献身の妖精が語りだす。「そう、あなたにはわからない。人の心をなくしてしまったあなたには。
だから、わたしたちが教えてあげる。あなたを助けるために。」「…どういうつもり?」
「さようなら、マリエル。わたしたち、行くわね。」「…え?待って!」
献身の妖精はドアの一つに飛び込む。献身の妖精がドアに飛び込むとドアは閉じてしまう。
その時、レベッカは胸を押さえ悲鳴を上げる。「痛いっ…む、胸がっ…。」「レベッカ…。」
愛情の妖精が語りだす。「それはあなたの心が痛みを訴えているのよ。」
「なぜ?…なぜ、そこまで他人のために必死になることができるの?」
「人間を愛しているからよ。その人の喜びが自分の喜びなの。」「そんなこと…信じられない…。」
「そう、あなたにはわからない。愛する心を失ったあなたには。」
愛情の妖精もまたドアに飛び込んでいく。レベッカが更に激しい悲鳴をあげる。
それを見たマリエルはレベッカの心配をし、奇跡の妖精達に止めるように言う。
真実の妖精が語りだす。「心というものは、傷つけば血を流す。悲しければ涙を流すの。」「だ、だって…。」
「彼女が苦しんでいるのは、人としての心を取り戻しているから。つらくても目をそらさず、
見据えなくてはいけないことがあるの」真実の妖精がドアに飛び込む。
「わたしは…すべてをなくしてしまった…。…運命とやらのせいで。」レベッカの悲痛な声。
追憶の妖精が語りだす。「すべてじゃないわ。思い出までは、だれもあなたから奪えない。」
「いや…やめて、思い出させないで!」レベッカは頭を抱えうつむく。
「嬉しいことも、悲しいことも、あわせもってこそ人間なの。」追憶の妖精がドアに飛び込む。
「いやああ!わたしの家族…わたしの幸せ…。」
正義の妖精が語りだす。「憎しみにとらわれてはいけない。心を奴隷にしないで。」正義の妖精がドアに飛び込む。
自由の妖精が語りだす。「心に繋いだ重い鎖を、今こそ断ち切らなくちゃ。」自由の妖精がドアに飛び込む。
勇気の妖精が語りだす。「大切なもののために、新しい一歩を踏み出して。」勇気の妖精がドアに飛び込む。
「でも…どうすればいいの。」レベッカの声には既に険しさがない。今はただ悩んでいるだけの女性に見える。
「すべてをなくしたわたしに、どうしろと?」
希望の妖精が語りだす。「人はそれでも、希望を失わなければ生きていけるの。」「希望?…どこに、そんなものが?」
「そこにいるわ。あなたの、目の前に。」希望の妖精はそっとマリエルの方を見た。「そして、あなた自身のうちにも。」
希望の妖精がドアに飛び込む。レベッカの心のうちにあったドアはすべて奇跡の妖精達に満たされた。
「…マリエル?」レベッカの声はとても優しいものに変わった。「うん。」「思い出したわ。そう…そうだったの。」
「レベッカ、だいじょうぶ?」「ごめんなさいね…でも…会えてよかった。」「レベッカ…どうしたのっ。」
「ありがとう、わたしの…わたしのマリエル。」「えっ…?」そういい残すとレベッカは暗闇の中に消えた。
「待って、レベッカ…!」
気がつくとマリエルは再び別の場所にいた。先ほどイアンと在った場所であろうか、
今はそこにイアンとポピンジェイ、それに赤子を抱えた妖精女王もいる。
「よくやってくれました、マリエル。」「女王さま…。」女王はイアンとポピンジェイの方を見て、ねぎらいの言葉を掛けた。
「…お久しぶりですね。イアン。」妖精女王がイアンに声を掛ける。「え、パパ、女王さまと知り合い?」
「そうですよ。…ポピンジェイとも、ずっと前から。」「それで、あいつは…レベッカはどうしたんだ?」ポピンジェイが訪ねる。
ここにいると、女王は抱えていた赤ん坊を皆に見せる。赤ん坊はどうやらレベッカの生まれ変わりらしい。
女王はレベッカの身の上を語りだす。
「彼女はもともと、銀の森で暮らしていた半妖精でした。その生まれゆえ、人間からも、妖精からも疎まれて育ったのです。
けれどもある人間の青年と恋に落ち、結婚して子供も生まれるなど、彼女にもしあわせな時期はあったのです。」
「子供が居たんだ…」マリエルがそう言った。
「ええ、でも彼女には秘密がありました。ある時期になったら人間の部分を捨てて、
妖精界に帰らなければならない運命だったのです。」「えっ、子供も居るのに?そんな、かわいそうだよ。」
「そうですね。彼女の人間の部分は運命に抵抗しようとしました。悩み苦しんだあげく、ついに彼女は
妖精と人間のふたつに分裂してしまったのです。…その人間の部分が、レベッカです。
彼女はすぐれた妖精使いでしたが、善き心は妖精の部分が連れていってしまい、憎しみの心しか残っていなかったため、
今回のようなことを引き起こしたのです。あなたのおかげで、妖精界も、レベッカも救うことができました。
ありがとう、マリエル。」マリエルに謝辞を述べた妖精女王。
しかしマリエルは浮かない顔をしている。「ねえ、レベッカの子供はどうなったの?」
「心配しなくても、善き隣人に取り囲まれて、やさしく明るい、いい子に育ちましたよ。」女王は満面の笑みでマリエルに伝えた。
マリエルはそれを自分のことのように喜んだ。
別れの時間が近づいていた。レベッカの思惑によって開いた環がそろそろ閉じるのだという。
妖精の女王はポピンジェイにレベッカの生まれ変わりを託した。
「この子には妖精使いの才能があります。銀の森を復活させるには、その力が必要になるでしょう。
あなたの手で育ててあげてください。」と。
「…ぼくに、できるだろうか。」「この子はマリエルと同じように、いずれ妖精と人間の架け橋になれる存在です。
きちんと愛情を注げば、きっとマリエルのように育ちますよ。」マリエルが照れくさそうに笑う。
環が閉じかけ、女王はポピンジェイとイアンに早く戻るように促す。
「きみは…。」ポピンジェイはマリエルの方を見た。
「残念ながら、マリエルはあなたがたと違って魂だけの存在です。このままでは帰れません。」「しかし…。」
「あたしなら、平気。ヘイゼルたちによろしくね。」マリエルは笑顔でポピンジェイに言った。「…わかった。」
ポピンジェイがその場を去った。「さ、あなたも早く。」
「こんどはわたしの番だ。かならず、おまえを助け出す。待っててくれ。」イアンはマリエルに約束をする。「うん…。」
「きみも、元気で。」「ええ、あなたも。」イアンもまたその場を去った。
二人の前では我慢をしていたが、マリエルはその場で泣き出してしまう。「マリエル…。」
-------------------分岐(ED1)
「へ、ヘンだね。…たましいだ、だけでも…、涙は、で、出るんだね…。」女王は腰を下ろし背中からマリエルを抱きしめた。
「…やさしい女性は、死んだら水の精になるんですって、知ってる?」マリエルは首を横に振った。
「わたし、女王になるよりも、あなたのおうちのそばを流れる小川になりたかったわ。
そして、あなたたちのことをずっと見守っていたかった。」「…あたし、小川になれるかな?」
「そうね…マリエルならなれるわ。きっと。…でも…。」
(レベッカの心の中のドアに入らなかった友情の妖精はマリエルを慰めるかのように振舞っています。)
場面は街に移る。
手に収まるサイズの植木鉢を持ってヘイゼルがハーブ園からどこかに行こうとしている。
それをすっかりと元気になったローアンが呼び止める。「どこ行くの?」「マリエルのところよ。」
「ぼくも行っていい?」ヘイゼルは首を横に振った。
「きょうは特別な日だからだめよ。広場の方で遊んでらっしゃい。」「うん。」
マリエルの家に向かい歩くヘイゼル。その途中にある橋の上で、小川の方を何度も気にし、見つめる。
マリエルの母屋の前に着いたヘイゼル。その時、妖精の樹の方からイアンがやってくる。
「こんにちは。」「やあ、こんにちは。」「お帰りになってたんですね。」
「うん、今日はソーウィンの祭りの日だからね。」「え?じゃあ…。」「いや、ことしは多分無理だろう。」
イアンは首を横に振る。「…そうですか。」ヘイゼルも残念そうにする。
「あきらめたわけじゃないよ。今年がダメでも、また来年がある。」「…はい。」
イアンはヘイゼルの持つ植木鉢を見た。「新しいハーブかな?」「ええ。…マリエルは?」
「いつものように小屋に居るよ。」「はい…じゃ、おじゃまします。」ヘイゼルは頭を下げる。
そして小屋の方にトコトコと駆けて行った。
小屋に入ったヘイゼル。「こんにちは、フィオナ。」しかしフィオナは居るのに姿を現してなかった。
まだヘイゼルを許していないのだろうか。「上にあがってるわね。」ヘイゼルは2階に上がっていった。
「マリエル、新しいハーブの苗を持ってきたわよ。お部屋の空気をキレイにしてくれるんですって。きっと身体にいいわ。
聞いた?キャシーったら、またアーヴィンとケンカしたの。キャシーがつくったサンドウィッチで、
アーヴィンがおなかこわしたのよ。二日前から下ごしらえしてたんですって。アーヴィン怒ったんだけど、
それだけ好かれてるってことよね。きっと、またすぐに仲直りするわ。ヒルトップさんとこの男の子も元気よ。
妹がほしかったデイジーも最初はがっかりしてたけどいまではしっかりおねえさんしてるわ。
それに、来年にはフラニーかシャロンのとこに赤ちゃんが生まれると思うの。そうしたらこの街ももっとにぎやかになるって
みんな楽しみにしてる。あとは…。」ヘイゼルがベッドの方を見た。「マリエルが目を覚ましてくれれば…。」
マリエルはあの出来事以来ずっと眠ったままであった。
「あれから一年になるわ。今日は妖精界への扉が開く祭りの日なのに。マリエルの魂はいつになったら帰ってきてくれるのかしら。
…きょうはおわかれに来たの。ローアンも元気になったから、都会に戻ることになったの。
わたしだけでも、マリエルのそばに居たかったんだけど。でも、いつか必ずここに帰ってくるわ。
あたしの心は、いつだって、マリエルと一緒に居るんだから。」
ヘイゼルが泣きながら2階の階段を下りてきた。そして扉を開けて小屋の外に出て行った。
「ヘイゼル…。」姿を表すフィオナ。複雑な面持ちをしている。フィオナが家事に戻ると、
ヘイゼルの出入りで開いたドアの隙間から侵入したのか、レベッカによって使い魔から普通の猫となったアルフレッドが
小屋の2階に上っていく。物音に気づいたフィオナが振り返る。しかし、アルフレッドは既に2階に上がっていた。
「ん?…ヘンね。だれか居たような気がしたんだけど。」
2階に上がったアルフレッド。その口には何やら石のようなものがくわえている。
そして、それを眠っているマリエルのもとに置いた。
1階のフィオナが何かの気配に気づいた。「…なにかしら?」辺りを見回るフィオナ。
「あっ…!」気がつくと妖精の樹に花のつぼみがついている。「…旦那さまに知らせなくちゃ!」
(スタッフロールへ)
-------------------分岐(ED2)
「めそめそ泣いてるんじゃないぜ。マリエルらしくもない。」聴きなれた声にマリエルが反応する。
マリエルの目の前には借金取りのアルフレッドが立っていた。
「ア、アルフレッド…どうしたの?」「ヘタをうっちまってな、見ての通りさ。マリエルたちをだました報いだろ。」
「そ、そんなこと…。」マリエルはアルフレッドを責めない。
「オイラはマリエルに借りを作っちまった。それはなんとしても返す。」「…どういうこと?」
アルフレッドが妖精女王の方を見つめた。そして視線をマリエルの方に戻す。
「さあ、帰るんだマリエル。みんなが待っている。」「ええっ?アルフレッドは?」「…オイラはダメだ。」「そんなっ…。」
「気にするな。いつかはきっと、人間に生まれ変わるさ。」「アルフレッド…待ってるからねっ!」
マリエルがアルフレッドの身体を抱きしめようとした時、光に包まれ消えてしまう。
その場に残った妖精女王とアルフレッド。「これでいいんだよな、女王さま。」
「ええ。それにあなたの転生も、そんなに遠いことじゃないと思いますよ。」「…ホントかい?」喜ぶアルフレッド。
「あなたは、すでに魂を持っていますから。」女王は微笑みながらそうアルフレッドに伝えた。
場面はマリエルの小屋に移る。仰向けのまま倒れたマリエルをフィオナとヘイゼルが見つめている。
ヘイゼルが何かに気づいたかのように「…マリエル?」と言った。どうしたの?とフィオナが言う。
「いま、マリエルが…動いたわ。」「ええっ?」するとマリエルが目を覚ます。
「う、うーん。」「マリエル!」「あれ?ヘイゼル…フィオナ…。」「マリエル…よかった…。」
ヘイゼルはマリエルを抱きしめた。フィオナも嬉し涙をぬぐっている。フィオナが部屋を見渡すと、
ただの猫となったアルフレッドが机の上に居た。「あっ、…ちょっと…。」その時、小屋の扉が開く。
イアンが戻ってきたのだ。「あっ、パパ。」「…マリエル。」「生き返っちゃったみたい。えへへっ。」
マリエルは手で頭をかき笑顔でイアンにそう言った。「そ、そうか…よかった。」
イアンは飛んでいるフィオナを見つける。「…フィオナ。」「…だんなさま。」「ただいま、フィオナ。」
「おかえりなさいませ!」フィオナがイアンの方に飛びついていく。
(スタッフロールへ)
-------------------本編終了
リーヴェルファンタジアはコレにて完結です。多分本作で語られることなく終わったであろう謎が幾つかあります。
・チャンドラーの生死。
・妖精の許しが恐らく行方不明であり、何故ケヴィンは鉱山の経営を続けられるのか?
また、妖精の許しがなくてマリエルは何故水晶鉱山で水晶のベルを探せたのか?
・水晶鉱山の主が誰だかわからない。
・ジャック妻、娘の死因。
・ポピンジェイの正体。恐らくイアンとレベッカ(=妖精女王)の息子でマリエルの兄?
・ポピンジェイが生き返らせようとした女性とは?
・フィオナの年齢。
・環が開くトリガー。(本作では闇のエナジーがその要因となるが他にもありそう。)
・ED2でマリエルは何故生き返れたのか。
アルフレッドの命と引き換え or 最期に現れた猫のアルフレッドが生命の石をマリエルに使ったから?
・そして、リーヴェルファンタジア最大の謎だと思うのはリーヴェルって何?って所です。
(マリエルが成長すると階級の呼称が変わりますが、それの最高位がリーヴェルマスター。)
謎については攻略本でも手に入ってそれに載ってたらこっそりとWikiの方に追記します。
後、もう少し掘り下げて欲しかった部分として、いつもポピンジェイの傍にいる妖精ドルチェ。
説明書でも大々的にキャラ紹介が書かれていますが、ゲーム中、ボイスは勿論テキストですら発言しません。