プロローグ3 「戦国の用心棒」
場所:魔界…ガマ親分の賭博上、サイコロ道場
サイコロ道場で賭博を楽しんでいる、たろすけ。
たろすけ「よし!じゃあ…四六の丁ッ!」
ガマ親分「ふむ…」
たろすけ「へへっ!もらいっ!」
ガマ親分「…う~む、やられた」
たろすけ「…あのさ、親分」
ガマ親分「ん~?」
たろすけ「オイラに…何かあるんじゃない?」
ガマ親分「む…ん…まあ…なあ」
たろすけ「歯切れ悪いなあ、なんなんだよ、親分!
さっきから上の空じゃんよ!」
ガマ親分「う~ん、まあ…言わなけりゃならんことだからなぁ」
たろすけ「なんなんだよ、もう!そう簡単には驚かないっての!」
ガマ親分「………。…閻魔大王様がお呼びだ」
たろすけ「ゲェーーーーーーーーッ!?」
場所:超未来…辺境惑星、古代遺跡
遺跡の調査にあたる銀河連邦宇宙軍のトビ・マスヨと天現寺ひろみ。
マスヨ「ここは…間違いない。忘れるもんですか…。スーツ越しでも感じるこの感覚…」
ひろみ「マスヨ先輩!どうしたんですか?こんな辺境の遺跡に…。
え…!?な、なんです?この気持ち悪い壁…すごい趣味の悪さですけど…」
マスヨ「違うわ…"造り直された"のよ」
ひろみ「…へ…?」
マスヨ「ひろみちゃん、本部に緊急連絡!」
ひろみ「え?」
マスヨ「それから、この遺跡の近辺に来ている、すべての人物、団体に対して、
全周波数で避難勧告を出してちょうだい。
最近見つかったこの遺跡には、
かなりの数のディグアウターが入り込んでいるはずよ」
ひろみ「え?え!?ちょっと先輩、急にどうしたんです!?
そんな事したら、私達『辺境警備隊』がここに来ている事が、
トロン・ボーンにバレちゃいますよ!せっかく居場所を掴んだのに!」
マスヨ「"元"辺境警備隊よ。ひろみちゃん。
あいつら…空賊ボーン一族を捕まえるのは後よ。後。連絡、急いで!」
ひろみ「もう!説明してくださいよ、先輩!」
その時、"ゆがみ"が急に発生する。
ひろみ「わわっ!な、なに!?」
マスヨ「…遅かったようね。これが答えよ、ひろみちゃん」
ひろみ「何が起きているんです!?先輩には…これが何だかわかっているんですか!?」
マスヨ「急いで!すぐに脱出よッ!
さっきの勧告を大至急!本部への連絡よりも優先してッ!」
ひろみ「コ、了解(コピー)! わ、わわっ!」
"ゆがみ"がさらに大きくなる。
マスヨ「なぜ、"ここ"が!? どうして…!?…タイゾウ…君…!」
…
場所:魍魎界…上ノ伊城近辺、竹林。
城へと続く竹林を一人歩く御剣平八郎。
御剣「この先か。上ノ伊城……ぶっ潰れてだいぶ経つがな」
???「………」
御剣「…おい。どこの誰だか知らねえが…コソコソしてるんじゃねえ。どこの乱波だ!」
???「ふん…勘だけは一人前だな、御剣平八郎」
御剣「…また貴様か!いい加減にしろッ!」
姿を現したのは封魔の里のくノ一、タキ。
タキ「フッ…懲りない奴」
御剣「遊びじゃねえっ!」
タキ「いい加減にするのは貴様だ、御剣。
あの『剣』は、貴様のような田舎侍にどうこうできる代物ではない」
御剣「それを決めるのはタキ、貴様じゃねえ。…この俺だ。
邪魔をするなら…ここで勝負をつけるか?ああっ!」
タキ「ふん、この単細胞が。話にならん」
立ち去るタキ。
御剣「ケッ、ほざきやがる。
…だが、これで確信が持てたぜ。あの女がここにいるって事は、
あの『剣』もここにあるって事だ。…『そうるえっじ』がな」
場所:魔界…三途の川
??「……ここは?そうか…我は…」
???「ひゃひゃひゃ…久しいのう。…平景清(たいらのかげきよ)よ」
景清「…安駄婆(あんだば)…。なぜ、我を眠りから呼び醒ました…」
安駄婆「もう…400年近く前になるかのう…。
ひゃひゃ…まるで昨日の事のようじゃ」
景清「…安駄婆」
安駄婆「…おぬしを黄泉帰らせる理由など、いくつもあるまい。
滅びし平家の恨み…忘れたわけではあるまいな」
景清「……!!…馬鹿を申すな、安駄婆。
彼の者は、我が斬った…間違いはない」
安駄婆「ひゃひゃひゃ…じゃが、その"諸悪の王"を斬ったおぬしも、一度は打ち死にし…
黄泉より帰りし者ではなかったかのう」
景清「………」
安駄婆「そうじゃ、黄泉帰りよ。…一族郎党、すべてな」
景清「………。承知した。…参る」
安駄婆「待つのじゃ。…時が流れ、人の世も変わった。
おぬしだけでは何かと不便じゃろう」
景清「……?」
安駄婆「水先案内人を用意した。閻魔大王様のお心遣いに感謝せい、景清。
…たろすけや、待たせたの」
たろすけ「なんだよ~、なんでおいらがこんなトコに…。
…って、わ!ナニこの人!怖ッ!」
景清「…この童(わらし)は?」
安駄婆「ひゃひゃひゃ…名はたろすけ。おぬしの相棒になる者よ」
景清「…いらぬ。我一人で事足りる」
安駄婆「たわけ。これは閻魔大王様の勅命じゃ。おぬしに拒否する権利などない」
景清「………」
たろすけ「いやぁ、でも、本人は嫌だって言ってるしさぁ。
…じゃあ、安駄婆の婆ちゃん!おいらはこれで!」
安駄婆「…それならば、帰り道は三途の川底じゃ。ちと寒いが達者でのう、たろすけや」
たろすけ「もう!どうすりゃいいんだよッ!」
無言で先に行く景清。
たろすけ「あ!ちょっと待ってよ!
おいらの立場も考えてくれってばよ!」
安駄婆「…ひゃひゃ…再びこの日がやって来るとはの。
じゃが、二人とも…忘れるでないぞ…。
…諸悪の王、頼朝を倒すには、『曲玉』『剣』『鏡』の三種の神器の他に、
正しい心が必要じゃ。ひらすらに信心を忘れなさるな。
よいな、信心じゃぞ…」
場所は再び魍魎界…上ノ伊城、城門前。
城門に突き刺さる邪険ソウルエッジを眺める、異形の侍とその配下の者達。
???「なんと禍々しい気を放つ剣か。だが、それ故に…鎌倉殿には相応しい…。
ひょひょひょ…」
御剣「ハッ、そんな事ぁねぇな!」
???「む…?」
御剣「その剣…『そうるえっじ』は俺がもらう」
???「ひょひょひょ…いきなり現れて、面白い事を言う。
『そうるえっじ』と申すか、この剣は」
御剣「そんな事も知らずに、手ぇ出そうとしてやがったか」
???「後から現れおったというに、ふざけた男よ。
しばらく居らぬうちに、侍も落ちたものよな」
御剣「ごたくなんぞ聞いちゃいねえ!
(…しばらく居らぬうち…だと?
それに、こいつのこの格好…いつの時代の甲冑だ?
…おまけに取り巻きは妖(あやかし)の類ときてやがる)」
???「まあよい。…どの道、見られたからには生かしておく通理もない。
この義経の手にかかる事を誉れにするがよい」
御剣「へへ…わかりやすくて安心したぜ。強い奴の総取り…そうでなくっちゃなっ!」
義経「わかったような口を利く!無粋な野武士風情が…殺して進ぜよう!」
御剣「御剣だ!覚えとけッ!」
襲い掛かる義経配下のガイコツを一刀の元に斬り捨てる御剣。
御剣「ひとォーーつ!」
義経「…ふん、やるではないか」
御剣「痩せっぽっちの骸骨風情に、俺をどうこうできるかっ!
次は貴様だ、覚悟しろ!」
???「なかなか威勢のいい男だ。久しい…久しいぞ、この空気…。
この男、戦場(いくさば)に流れる気を纏うておる」
御剣「なに…!?」
現れた男は義経配下の武蔵坊弁慶。
義経「…うぬか」
弁慶「よもやと思うて来て見れば…難儀のようで。牛若様」
義経「ひょひょひょ…遊んでおっただけよ、鬼若。
うぬの力、借りるまでもない」
御剣「牛若に…鬼若?
どこかで聞いたような名だが、関係ねえ!まとめて相手をしてやるぜッ!」
弁慶「くっくっく…我らの名も地に落ちたものよ」
??「…牛若は源九郎義経、そして鬼若、武蔵坊弁慶…
数百年前にそのような者達がいたと聞く」
義経「むう…?」
弁慶「気配がない…何奴?」
御剣「…ちッ!またかッ!」
タキ「騙りか、はたまた本人か…そこまではわからぬがな」
御剣「貴様…今までずっと見ていやがったな」
タキ「当然だ。うっとうしい猪武者が斬られるまで待つつもりだったが、
状況が変わったようなのでな」
弁慶「面白いぞ…娘。で、どうする?」
タキ「知れた事。貴様ら人外の者を封じ…『そうるえっじ』を頂く」
御剣「けっ、面倒くせえ!貴様らまとめて、刀の錆だッ!」
タキ「この阿呆侍が!後で相手をしてやる!今はこの者達を先にせい!」
御剣「………。…ふん、確かにそうか。
けっ…仕方ねえ。そんな事言っといて、背中から俺を斬るんじゃねえぞ」
タキ「…なるほど、それも手か」
御剣「ぬかせ!いくぞッ!」
タキと一時的に手を組み、義経達に戦いを挑む。
弁慶「やるではないか!ぬしら程の兵(つわもの)が欲する剣…。
わしにも興味が出てきた!決めたぞ!
一千本目の武器…『そうるえっじ』に!」
義経「ひょひょひょ。鎌倉殿…兄者がお許しになればだが、
手に入れねば始まらんぞ、鬼若」
弁慶「承知!こやつらを討ち倒し、我が手に!」
御剣「それはこっちの台詞だ!抜け駆けは許さねえッ!」
タキ「なにが抜け駆けだ。後から来たのは貴様だろうに…。
うっ!?
(滅鬼丸が…『ソウルエッジ』と共鳴している!?)」
急に"ゆらぎ"が起き、未知のモンスターが多数出現する。
ギリィ・オクティ「………」
御剣「な、なんだ、こいつらはッ!?」
タキ「ちっ、妖魔の類か。こやつらの仲間…?
(だが…妖気を感じないだと?)」
弁慶「…牛若様、この者達は…?」
義経「捨て置け。…黄泉の道が開いたのだ。我らと同じく、出てくる者もいよう」
タキ「("黄泉の道"…!?やはり、こやつら…本物の…!?)」
また新たな"ゆらぎ"が起き、
出現したのは空賊ボーン一家の長女、トロンとサポートメカのコブン。
そして、銀河連邦宇宙軍のマスヨ、ひろみ。
トロン「あたた…いきなり目の前が真っ白になったと思ったら…一体何事ですの…?」
コブン1号「ト、トロン様ぁ…」
トロン「1号、状況報告お願い!」
コブン1号「え~と、そのぉ~…」
御剣「なんなんだ、貴様らッ!」
コブン17号「なんか怖い人と…」
ギリィ・オクティ「………」
コブン28号「なんか怪生物と…」
マスヨ「ひろみちゃん、大丈夫?」
ひろみ「あうう…一体、何がどうなったんですかぁ、先輩…」
コブン1号「なんかボク達を追っかけてる元辺境警備隊の人達です~」
トロン「辺境警備隊って…えええ!?爆突野郎のっ!?」
マスヨ「誰が爆突野郎ですってぇ!?私は女よ!」
トロン「う…ま、まずいですわねぇ。こんな時に…」
ひろみ「先輩、先輩!あれを!」
ギリィ・オクティ「………」
マスヨ「オクティ…!間違いない…オクティ族だわ…!」
コブン1号「トロン様ぁ!リーバードもいますぅ!」
トロン「ああ~もう!何が起こってるのよォ!」
弁慶「騒がしくなって来おったな。
なまった体をほぐすには丁度いい!まとめて薙ぎ倒してくれようぞ!」
御剣「何だかわからんが、確かに邪魔だな。…ぶった斬るか」
タキ「待て、御剣。…ここは利用するのが手だ」
御剣「あぁ?」
タキ「敵の数が多い。こちらに引き込めるようなら引き込む。
それに、今出てきた化け物の事を知っている様子…情報が欲しい」
御剣「なるほどな、邪魔なら後で始末すりゃいいって事か」
タキ「ほう、多少は物分かりが良くなったな。犬や猫よりはマシになったぞ」
御剣「ぬかせ。おい、貴様ら!こつらは…
…あ~、その、何だ…敵だ!死にたくなけりゃ戦え!」
トロン「へ?」
タキ「…この阿呆が…もっとうまい言い方があるだろうに」
ひろみ「ど、どうします?先輩…」
マスヨ「…彼らの方について、戦いましょう。
どの道、オクティやリーバードは相手をしなければならないわ。
トロンちゃん、あなたもいいわね?」
トロン「い、いきなりちゃん付けとは馴れ馴れしいですわね。
…この際、仕方ありませんわね。わかりましたわ」
ひろみ「先輩…いいんですか?」
マスヨ「とりあえず、よ。この場を切り抜けて、情報を集めるの。
その後は…邪魔なら始末してしまえばいいでしょ?
トロンは縛り上げて、バイクで引きずっていけばいいし」
ひろみ「………」
コブン17号「アワ、アワワ…」
トロン「聞こえてる、聞こえてる!
トビ・マスヨ…噂通り恐ろしい女ですわ…」
御剣「やるのか、やらねえのかッ!はっきりしろ、貴様ら!」
マスヨ「やるわよッ!」
弁慶「フフフ…ぬははははは!面白い…面白いぞ!やはり戦こそ華よ!
こうでなければならぬ!ぬははは!」
マスヨ「な、なんなの…!?
(それに…さっきから場所の特定ができない。ここは一体…?)」
義経「ひょひょひょ。まさにその通り…敵を斬り捨て、野に晒す…至上の悦楽よ」
トロン「め、滅茶苦茶言ってますわね…」
マスヨ「…ひとり斬ってもらって、うっとりしているうちに射殺するって
いうのはどうかしら?」
コブン28号「……ッ!」
ひろみ「あの、先輩…そういう考えはどうかと」
マスヨ「…ひろみちゃん、これが戦術よ」
ひろみ「…な、なんか、騙されてる…」
???「至上の悦楽…とな?
…ならば、斬り捨てられ…野に晒される覚悟もできていような」
義経「な……ッ!?」
弁慶「こ…この…声はッ!?」
景清「…久しいな。義経、弁慶…」
弁慶「ぬ…ぬうう…!」
義経「景清…うぬかァッ!」
御剣「今度は何モンだ?様子がおかしいぞ」
タキ「(カゲキヨ…?
連中が過去の亡霊の類と考えれば、同時代…悪七兵衛景清の事か…!?)」
たろすけ「お、タキ姉ちゃんだ!お~い!」
タキ「な…たろすけか!?なぜおまえが!?」
たろすけ「相変らずたまらん格好してるじゃん…デヘヘ」
ひろみ「セ、セクハラ…」
タキ「ふざけるな!質問に答えろ!」
御剣「誰でえ、あの小僧は」
タキ「たろすけ…人の身でありながら、魔界と天界を歩き通した童(わっぱ)だ」
たろすけ「三途の川を抜け出した連中を退治しなきゃならなくてさぁ」
トロン「サンズノカワ…?そしてテンカイにマカイ…?
ちょっと、何を言ってるんですの!?」
マスヨ「…少し読めたわ」
ひろみ「先輩?」
タキ「たろすけ!その男は味方と考えてもいいんだな!?」
たろすけ「そういう事!な、景清の兄ちゃん」
景清「………。すべて…斬る…!」
だろすけ「駄ぁ~目だっつうの!
あの姉ちゃん達が戦っている相手だけにしろってば!」
景清、鬼の形相でたろすけを睨みつける。
たろすけ「あ、あの…悪い奴らだけでお願いします」
景清「………。…承知」
たろすけ「(疲れるなぁ…)」
義経「景清…よもやうぬまでが…!」
景清「問答無用…参る…ッ!」
景清達も戦闘に参加し、義経達を追い詰める。
義経「まだ体が思うように動かぬ…。今宵はここまでにしようぞ…景清!」
景清「…逃げるか、義経」
義経「ひょひょひょ、そう急くな。まだ始まりに過ぎぬ故な。
また会おうぞ、景清。…そして忘れぬぞ、御剣とやら」
御剣「けっ、逃げ口上なんぞ聞きたかねえッ!」
景清「………」
弁慶「くくく…この痛み…わしは戻って来た。ぬははは!わしは再び戻って来た!」
景清「…そしてここで終わりだ、弁慶よ」
弁慶「景清よ、お互い現世に黄泉帰ったばかり…おぬしの太刀筋もなまっておるぞ!
鍛えなおすがいい!景清!」
景清「………」
弁慶「おお、そうだ…言わせてもらおうか。これで勝ったと思うなよ?ぬははは!」
退却する義経、弁慶。そして残りのモンスターも一掃し終える。
景清「…義経に弁慶…その後ろには…きゃつがいる…!」
たろすけ「まあまあ、熱くなんなよ、兄ちゃん。
まだ始まったばかりなんだしさ」
御剣「ふう…色々あったが、片付いたぜ。よし!『そうるえっじ』を!」
タキ「待て、御剣!」
突然ソウルエッジが輝き、消え去ってしまう。
御剣「なにいッ!?消えたッ!?
どういうこった!『そうるえっじ』はどこへ消えたッ!」
トロン「空間転移…!?
エネルギーの反応…測定値オーバー。グスタフの機能じゃここまでが限度!?
なんてエネルギーゲインなの!?」
マスヨ「"空間転移"…それが答えよ。
私達は、あの辺境惑星から…この世界に転移されて来た」
ひろみ「ええ!?ホントですか!?」
マスヨ「…そう考えるのが、一番自然よ。
(そう…そして、すべてが一本の線でつながっている…そんな気がする…)」
最終更新:2006年02月04日 16:02