雨格子の館

雨格子の館

part41-255,268~286,291,292,294,323


255 :ゲーム好き名無しさん:2008/09/12(金) 07:44:54 ID:+gQ3FP+90
雨格子の館を予約。

でもさ、これ書くの難しいよね
記憶にある限りでは、過去2回予約されて、2回とも期限切れでキャンセルされてるけど
それほどまとめるのが超難しいって実感した

このゲームは全編、推理パズルなんで、ぶっちゃけ決まったストーリーってのは存在しないんだよ
このゲームのストーリーは自分で紡いでいくもんなんだよ
好きなタイミングで行動して、推理して、犯人を当てればいい。
だからストーリーの元となる事象の羅列になっちゃうと思う
リクした人、または読みたい人、西ノ宮勇希ファンだったらごめんなさい
西ノ宮勇希の雰囲気を味わいたい人はセパレイトハーツでもやってろってことで一つ。
 
268 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:17:31 ID:v2SvIRle0
雨格子の館(あまごうしのやかた) 一柳和、最初の受難。

※記号の見方
N-○…主人公の視点で語られている部分。
X-○…謎の男による、ゲームについての解説。
S-○…ゲーム内に出てくる本の内容。
R-○…ルーチンワーク。簡潔な説明でとどめておく。
000など…その他の資料。
EX-○…失敗パターン。基本的に、全てにおいて成功パターンを通った前提でこの文章は書かれている。
   失敗パターンは起こり得ないが、一応、こんなことも起こる可能性があるという意味で、記述しておく。
○-a,○-b…一回のプレイではaかbか、最初に選んだ方しか見ることができない。

000 高遠延二郎 作 「呪は死なず」より。
あの館は、忌まわしい呪の欠片だ。
とうに滅び、朽ちていたはずの、
古く、そして深い哀しみの断片だ。
その呪縛は今も消えてはいない。
なぜなら、彼は死の間際、こう言い遺した。
「呪は死なず」と。


001 謎の脚本家<帽子屋>の新作。
―お招きした覚えはございません。お引取りください。
―なんだって?
―おいおい、こんな嵐の中を引き返せってのか?
―そういう問題じゃないだろう!招待状を送りつけておいて。なんだね、その言い草は!
―ですから、当家ではお招きした覚えはないと…。
―でも、確かにこうして招待状が…。
―わたしたちも…ね、ねえさま?
―ええ、ほら、同じものでしょ?
―そのようですが、わたくしには見覚えはございません。
―ええい、話にならんよ君ィ。主人を呼びたまえ、主人を!
―あいにく、主人はどなたともお会いになりません。
―そんな…。
―いったい、どういうことなの?
―決まってるじゃない。あたしたち、騙されたのよ。
―冗談じゃないぞ。どういう茶番なんだ、これは!
―や、やめてください。そんな風に声を荒げては…。
―ええい、黙れっ!大人しくしていては、この嵐の中に追い出されかねないだろう!?
―でもっ…。
―この執事の態度じゃあ、やりかねねぇな。

 
269 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:19:49 ID:v2SvIRle0
002 上記<帽子屋>の新作の登場人物。
椿…フロックコートを着て、眼鏡をかけた館の執事。
斑井(まだらい)…小太りな男。偉そうに喋る。
御陵(みささぎ)…イブニングドレスを着た妙齢の女性。
暗石(くらいし)…スーツを着たチンピラ風の男。
那須…体格はいいが頭は悪そうな男。
静奈…双子の姉。妹と同じ服装をしていて、入れ替わっても気づかないほど。
鈴奈…双子の妹。
南雲…短気な中年男性。
日織(ひおり)…男性。まだ登場してないので、詳細は不明。

X-0
このゲームわ本格推理ゲームなのデ。
キミわ主人公の「一柳和(いちやなぎ なごむ)」になって、
証拠を集めて、推理し、殺人事件の犯人を当ててもらうのデ。
当てられなかった場合わ、ゲームオーバーなのデ。

N-01 (7月21日)
まったく、ついてない。どうしてこうも、不幸は重なるのだろう。
僕は道に迷ってしまった。ガソリンが尽きかけたので、車を降りて歩くことにした。
もう日は暮れて、あたりは真っ暗。行けども行けども回りは木ばかり。いつしか雨も降り始めた。
ここはどこだろう?どこかの山の中なのは間違いないけど。
木の間に明かりが見えた。どうやら建物が建っているらしい。しばらく歩くと、開けた場所に出た。
石造りの古風な洋館が建っていた。
格子がはまった窓から、明かりが漏れている。誰かがいるということだ。
ああ、よかった。とりあえず、遭難せずに済んだ。
足元をよく見てなかったので、僕は何かにつまずいてしまった。
それは男の人だった。背広を着て、うつぶせに倒れている。呼びかけてみたが、返事がない。
もしかして、死んでる?と、とにかく、助けを呼ばないと。もつれそうな足を前に数回出したとき、僕は意識を失った。

N-02
目を覚ます。
「ですから、当家ではお招きした覚えはないと…」
いかにも執事という見た目の男がそう言った。
「でも、確かにこうして招待状が…」
ドレスを着た女性が答えた。
そうだ、僕は気を失って…。そこは館の一室の、広い部屋だった。
ソファの上に僕は寝かされていた。
「大丈夫ですかい?どこか痛いところは?」
時代劇から飛び出してきたような、着流しの男が、僕を心配そうに覗き込んでいる。
そういえば頭が少し痛い。僕は起き上がった。
僕が起き上がったのを見て、その部屋にいた人たちは話を打ち切ってこっちを見た。
「あなた、南雲さんでしょう?随分遅いお着きでしたね。館の裏で何があったんです?」
僕は、南雲ではなく、一柳和だと説明した。そして、ここに来ることになった経緯も。
着流しの男は「日織」と名乗った。
「じゃあ、南雲さんは…?」
日織と、そして周りの男女は首を傾げた。

 
270 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:20:54 ID:v2SvIRle0
N-03
僕を除く、ここにいる男女は全員、<帽子屋>から招待状をもらって集まった役者たちだという。
<帽子屋>というのは、今話題の、正体不明の謎の脚本家。
たぶん、「不思議の国のアリス」に出てくる登場人物から取った名前。
<帽子屋>とは、グループ名かもしれないし、個人なのかもしれない。
<帽子屋>が脚本を書いた映画は必ずヒットし、その映画に出演した人は売れるというジンクスがある。
<帽子屋>が新作の脚本を書いたので、そのロケ地であるこの館に皆が集まったとのこと。
斑井さん、御陵さん、暗石さん、那須さん、僕と同い年くらいの静奈ちゃんに鈴奈ちゃん、
僕よりも年下と思われる椿くん、そして日織。皆、お互いに面識はないとのことだ。
ここで注意しなければいけないのは、斑井や御陵という名前は、<帽子屋>の脚本の中の役名ということだ。
ほかに本名(芸名?)があるが、役に入り込むためか、
あるいはそういう習慣があるのか、皆互いに役名で呼び合っているので、僕も役名で呼ぶことにする。
南雲さん役の人が来ていないところへ、僕がやってきたので、僕は南雲さんだと勘違いされたらしい。
斑井さんが言うには、南雲役の人は滝プロ所属の、四倉欣治という人だろうとのこと。
それと、日織が着流しなのは、個人的趣味なのだそうだ。
<帽子屋>の脚本は冒頭部分しかなく、日織の出番はないので、まだどんな役かはわからないとのこと。
他の人たちは、ちゃんと役に合った衣装を着ているらしい。

N-04
温室の方から物音が聞こえてきたので、皆で行ってみることになった。
母屋から離れたところに、ガラス張りの温室がある。雨の中を歩いて温室へ。
温室の中には誰もいなかった。
温室の床の上に、紙が置いてある、その上に、文鎮代わりに、黒い猫の置物が置いてある。
紙には赤い字で「復讐」の文字が書かれていた。昼間はこんなものは無かったらしい。
「猫は、斑井さん」
突然静奈ちゃんがそんなことを言い出すので驚く。

N-05
「俺らの役名は、高遠延二郎(たかとお えんじろう)の著作に出てくる登場人物から取られているんです」
日織がそう説明した。高遠延二郎は昭和のころ有名だった推理作家だ。20年ほど前に亡くなっている。
斑井さんの元ネタであるところの、斑井重雄が出てくるのが、「黒猫の毒」という作品。
だから静奈ちゃんは、黒猫だから斑井さんだと言ったのだ。

N-06
温室から戻る途中で、駐車場の方から何か破裂音が聞こえてきた。
行ってみると、停めてあった斑井さんと那須さんの車が、パンクさせられていた。
それも、2台とも前輪が両方やられていた。
スペアタイヤは1つしかないので、これでは車は使えない。
その後、僕が倒れていたという館の裏の方に行った。木の蓋がかぶせられた井戸があった。
男の人が倒れていたところには、何もなかった。気のせいだった?いや、そんなはずは――。

N-07
応接間に戻って、濡れていた体を拭く。稽古が再開された。
招待状をもらったという客と、執事の押し問答。日織は出番がないので見てるだけ。
しばらくすると休憩になった。僕は皆と話をしてみることにした。

 
271 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:22:08 ID:v2SvIRle0
N-08
皆から聞いた内容をを手帳に書いておく。
日織…26歳。時代劇のチョイ役をよくやるらしい。
椿…18歳。高校生の役をよくやっている。眼鏡は伊達。執事らしく振舞っているが、時々地が出てしまう。
那須…33歳。体を鍛えるのが趣味らしい。健康食品のポスターに出ていたらしい。
御陵…舞台が中心でテレビにはあまり出ないらしい。お嬢様育ちらしく、感覚が人とずれている。
暗石…売れない大部屋俳優。時代劇の斬られ役などをやっている。
静奈…20歳。普段はぼーっとしているが、演技力は天才的らしい。ミステリマニア。
鈴奈…双子の妹。ちょっと口が悪い。でも黙っていれば静奈と見分けがつかない。
斑井…芸暦は長いらしい。
聞き出せたのはこんなところだ。
ちなみに、
和…僕。21歳。大学生。極度の怖がり。運が悪い。
…やめよう。

N-09
夜も遅いので、稽古は終わりになった。明日にはスタッフが来て、撮影が開始されるらしい。
僕も、明日にはなんとか山を下りて、帰れればいいなと思う。
ちなみにこの館は、
1階は応接室や書斎や遊戯室などがあり、2階は全て客間になっている。
地下にはボイラー室がある。
僕は日織と一緒の部屋を使うことになった。他の人の部屋は全て個室だが、
日織の部屋だけは、なぜかベッドが二つあった。
ベッドに横になったが、よく眠れない。眠ったり起きたりを繰り返してしまった。

N-10 (7月22日)
朝になったが、雨が降り続いているせいか、窓の外は暗い。
後で食堂に集合する約束をして、館の中を見て回る。
書斎には高遠延二郎の著作が全部揃っていた。いくつかパラパラとめくってみる。

S-00 北速水涼介シリーズ
高遠延二郎作品の8割を占めるシリーズ。長短編合わせて50編以上ある。
探偵の北速水涼介と、ワトスン役の日織諒が、難事件を次々と解決していく。

S-01 黒猫の毒
斑井重雄という人が展望室で殺されており、現場には黒猫だけがいた。
「白蛇殺人事件」も同時収録。

S-02 湖畔の館
老木に五寸釘で打ち付けられた、奇妙な脅迫状が。雑誌記者の那須信ともに訪れた館での連続殺人。
現場には脈絡のない品がいくつも残されている。

S-03 檻の中の女
御陵香織という白い日傘を差した女性が、地下の檻の中で殺されていた。

 
272 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:23:44 ID:v2SvIRle0
S-04 忌まわしい花
暗石丈治という男が射殺された。現場には薔薇の花束が。
そして付近で目撃された、レースの手袋の女。

S-05 鐘楼館の殺人
棺の中から、奇妙な形の杖とともに、館の当主、椿祐三郎の遺体が発見される。

S-06 悪魔の花園
静奈・鈴奈という双子が登場する事件。
妹の鈴奈が、花嫁衣裳を着て、斧で惨殺される。

N-11
上記はとりあえず、皆の役名の元ネタとなった本のあらすじ。
そうそう、「白蛇殺人事件」には、南雲という人が出てきてた。
書斎には他に、アイドルの情報が載っている雑誌とか、オカルト関係の本もあった。
これらに何の関係が?この館の持ち主ってどんな人なんだろう。

N-12
腹が減ったところで食堂に行く。並んだ椅子の間からチラッと青いものが見えた。
斑井さんの衣装のシャツだ。近付いてみる。
複数の椅子の上に横になっている斑井さんは、カッと目を見開いたまま、動かなかった。
体は縄で椅子に固定されていて、胸の辺りから大量の血が流れた跡があった。
そんな。斑井さんが殺されるなんて。
僕は遅れてやってきた日織に泣きついた。騒ぎを聞きつけて、他の人たちもやってきた。
皆の総意で、食堂は閉鎖されることとなった。椿くんが扉に鍵をかけた。

N-13
皆は娯楽室に集まった。全員に昨夜のアリバイを聞いてみる。
斑井さんの死亡推定時刻は昨日の夜、22:30頃。
その頃自室で大人しくしてたのは僕と日織だけで、皆はトイレに行ったり台所へ行ったりと
結構ううろうろしていたらしい。
那須さんは2階の吹き抜けに大きなてるてる坊主を吊るしたところ、
椿くんに、気味が悪いからやめろと注意され、仕方なく1階のテラスに吊るし直したとのことだ。

N-14
娯楽室にはステレオが置いてあり、ノイズがひどいが、一応ラジオが聴ける。
それがこの館の唯一の情報源だった。
ラジオを聴いていた暗石さんがイライラしたように舌打ちをした。
町へ下りる道は、降り続いている雨のせいで崖崩れが発生し、通れないとのこと。
復旧の見通しはたっていないとのことだ。
今日来る予定だったスタッフも、これでは来られないだろう。
ちなみにこの館には電話がない。携帯電話も持ってるけど圏外だ。
僕たちは完全に孤立してしまった。
でも、台所には食料がたくさんあるし、とりあえずは大丈夫だ。
一週間も経てば、崖崩れも復旧するだろうし、
異常に気づいた皆の所属事務所の人とかが、迎えに来ると思うし。

 
273 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:24:50 ID:v2SvIRle0
N-15
「猫は、斑井さん」と静奈ちゃんが言っていたことが思い起こされる。
斑井さんを殺すことが「復讐」なのだろうか。
そうだ、温室。見に行ったほうがいいだろう。
温室の黒猫の置物の隣に、おもちゃのベルが置いてあった。クリスマスの飾りに使うようなやつだ。

N-16
日織に誘われて書斎へ。日織は、高遠延二郎作品は一通り読んだことがあるという。
日織が言うには、斑井さんは静奈ちゃんが言うように、「黒猫の毒」に見立てられて殺されたらしい。
椅子に縛り付けられているというのが、本の中の斑井の死に方と似ているそうだ。
そして、今度はあのおもちゃのベルに関連した作品の誰かが?
見立て殺人は続くのだろうか。高遠延二郎作品に関係のある役者たちは、
斑井さんのように、一人ずつ殺されていくのだろうか。そんなのは嫌だ。
僕は、なんとかして、皆を助けたいと、日織に言った。
日織は、自分は書斎にいるから、困ったことがあれば何でも相談してくれと言ってくれた。
心強い味方ができた。

X-1
これから先わ自由行動なのデ。犯人は、夜毎に一人ずつ殺していくのデ。
キミわ、温室に置かれたモノから、次のターゲットを予想して、殺人を止めなければならないのデ。
あ、モチロン、止められなくてもイイのデ。クリア時のランクが下がるだけなのデ。ククク…。
まず、書斎に行って「見立ての推理」をするのデ。推理したら次に「危険告知」や「回避行動」をするのデ。
推理が間違っていたら、モチロン殺人は止められないし、危険告知や回避行動をとってない場合、
殺されるかも知れないのデ。殺されたら「回避失敗」となるのデ。
「見立ての推理」「危険告知」「回避行動」わ、自由時間内に済ませなければいけないのデ。
余った時間わ館の中を探索したり、書斎で本を読んだり、みんなと雑談してもイイのデ。
自由時間が終わっても油断わ出来ないのデ。夜にターゲットの見張りをしないと、殺されることもあるのデ。
それでわ、頑張ってネ。

R-22-1 見立ての推理
温室のベルから「鐘楼館の殺人」を連想し、今夜のターゲットは椿だと予想した和。
日織:なるほど。次は椿さんが危ない、と。本は、「鐘楼館の殺人」。
  ということは、棺に、杖ですか。
和:杖?
日織:ええ。魔法使いが持っているような木の杖です。それで椿は撲殺されるんです。
  見立てに使えそうなものは、犯人が使えないように隠しておいたほうがいいでしょう。

R-22-2 危険告知
和は椿に危険を知らせる。
椿は俄かには信じられない様子だったが、和の真剣な様子を見て、納得したようだ。

R-22-3 回避行動
地下に大きな空の長持が置いてある。人が入れるほどの大きさだ。
和は釘とトンカチを持ってきて、長持の蓋を固定して開かないようにした。
斑井の部屋のベッドの下から木の杖が発見されるので、隠しておく。

 
274 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:26:09 ID:v2SvIRle0
N-17
夜。僕と日織は椿くんの部屋へ行った。3人で固まっていれば、さすがに犯人も手が出せないだろう。
椿くんは形から入るタイプだそうで、部屋の中にいるときも、執事の格好をしている。
「くそっ。何でオレが執事なんか…。<帽子屋>も、とんでもない役を回したもんだぜ」
毒づく椿くんに、日織は、普段と違う役をするのも勉強ですからね、と答えた。
それにしては、授業料が高すぎるような気がする。こんな館に閉じ込められて、命を狙われて…。
何で執事役をしているのか心当たりはないのかと聞いてみたら、思い当たるふしがあるらしい。
椿くんの本名は「成瀬壮一郎」という。この館の現オーナー「成瀬公康」の親戚だという。
昔、何度かここに遊びに来たことがあったので、館のことはある程度知っていたらしい。
だから、執事役に選ばれたのではないかとのことだ。
そして、<帽子屋>を名乗る人物から椿くんに、この館を貸してくれるように依頼するメールが来たという。
夜も更けて、交代で眠ることになった。まず椿くんが眠る。日織は懐から花札を取り出した。
なるほど。これなら静かに時間が潰せるな。結果は…僕の完敗。
お金を賭けていたら、いくら取られるんだろうというくらいに。
椿くんを起こして、今度は日織が寝る番。椿くんは日織ほど強くはないが、それでも僕は負け続けた。
最後は僕が寝る番だ。日織に冗談めかして、僕の負けを取り返すよう言ってから、眠った。

N-18
目を覚まして僕は驚く。日織と花札に興じている男は誰だろう。
いや、椿くんなのはわかっている。でも、まるで別人に見える。
椿くんは上着を脱いで、ネクタイを外して、すっかりくつろいだ様子だ。
後ろに撫でつけていた髪は乱れて、伊達眼鏡は床に転がっていた。
「あぁ、起きたのか。この通り、生き残っちまったぜ。…ありがとな」
彼は照れ笑いを浮かべた。執事の椿なら絶対に見せない笑顔。こんな表情もするんだ。
もう大丈夫だろうと、引き上げることになった。日織は花札を片付け始める。
椿くんは眼鏡を拾ってかけた。彼は役をを自らに降ろす。成瀬壮一郎から椿へと変わっていく。
役者というもののすごさを垣間見た気がした。

EX-22 回避失敗
椿は長持の中に、冷たくなって入っていた。長身を窮屈そうに折り曲げている。
木の杖で頭を殴られたのが死因だ。

N-19 (7月23日)
温室に行ってみると、案の定、また品物が増えていた。
黒猫とベルの他に、長い釘が置かれていた。

N-20 (殺人を回避できたとき)
あれ?そういえば、黒猫のそばに、白い花が落ちている。辺りを見回したが、同じ花は見当たらない。
わざわざどこかから持ってきたのか。動かすとまずそうなので、携帯電話で白い花の写真を撮った。
そして、皆にその写真を見せてみた。那須さんが、これはジンジャーリリーだと教えてくれた。
花言葉は「無駄なこと」。
殺人を止めても無駄だ、復讐を続ける、という、犯人からのメッセージらしい。

 
275 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:28:05 ID:v2SvIRle0
R-23-1 見立ての推理
書斎に行き、日織に釘のことを話す和。
和:温室に、また物が増えてたんだよ。
日織:俺も見てきましたよ。あの釘…五寸釘ですよね。
五寸釘から「湖畔の館」そして那須と推理。
日織:「湖畔の館」ですか。これは厄介ですよ。何せ、脈絡のないものがたくさん出てくるんで。
  全部探して隠すとなると大変でしょうが、頑張ってください!

R-23-2 危険告知
那須に危険を知らせる和。だが那須は、犯人が襲ってきても倒す自信があると言う。
和は不安になった。

R-23-3 回避行動
和は館じゅう駆け回って、見立てに使われそうな品を探す。
コルク抜き/燭台/ダーツの矢/角砂糖/銀のマドラー/ワイングラス/チェスの駒/革のクッション/羽根ペン。
暖炉が関係あるとのことで、暖炉が描かれた絵も隠した。

N-21
僕は那須さんが心配なので、那須さんの部屋に行って朝まで一緒にいることにした。
那須さんの部屋のドアをノックすると、ドアはすぐに開いた。
相手が誰だか確認しないでドアを開けるなんて。
まぁ、もし僕じゃなくて、犯人が来たとしても、那須さんならやられる心配はないだろうけど。
那須さんの部屋に入って驚く。
自宅から持ってきたというトレーニングマシンが部屋の中央にデンと据えられている。
床には、僕なら両手でも持ち上がりそうもないダンベルが転がっていた。
那須さんは、作り付けの棚のところで何かを探している。
棚にはプロテインの缶などがごちゃごちゃと並んでいた。
「えっと、さっき台所から持ってきたお茶は…?」
僕は、トレーニングマシンの上の、お茶のペットボトルを指さした。
って、待った!「湖畔の館」では、被害者は毒殺されたんだ。
「そういえば、このお茶、いつの間にか封が空いてたんだよな」
そんな物を飲まないで下さい!毒とか入ってたらどうするんですか。
僕は那須さんからお茶のペットボトルを取り上げた。
暇だから、スクワットが何回続けられるか数えようということになってしまった。
僕も付き合わされた。そのうちに、意識が朦朧としてきた。

N-22
ゆっくりと意識が戻っていく。
僕は那須さんの部屋のベッドで寝ていた。那須さんが数を数える声が聞こえてくる。
那須さんは、あの重そうなダンベルを上げ下ろししていた。その表情は真剣そのものだ。
これは、単なる趣味を通り越してる。人生そのものを懸けている、そんな感じさえする。
「だって、生きてるんだから、体を使わないともったいないでしょ」
那須さんはそう言った。

EX-23 回避失敗
那須は自室で倒れていた。口の周りには血がこびりついている。
そばにお茶のペットボトルがあった。お茶に毒が入っていて、それが原因で死んだらしい。

 
276 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:29:00 ID:v2SvIRle0
N-23 (7月24日)
温室に置かれた物はまた増えていた。白くて、薄い生地の手袋。
このサイズは女性用かな。

R-24-1 見立ての推理
手袋から「忌まわしい花」を連想した和。
日織:「忌まわしい花」?今度は暗石さんですね。
和:うん。…薔薇の花か。どこかにあったかな?
日織:被害者は射殺されてますね。
  銃…は無いと思いますが、関係ありそうな物は隠しておいたほうがいいでしょう。

R-24-2 危険告知
暗石の部屋を訪れて、危険を知らせる和。

R-24-3 回避行動
温室に咲いている薔薇の花を摘み、そして掲げられていた薔薇の絵を外して隠す。
物置にディスプレイ用と思われるボウガンがあったので、それも隠す。

N-24
暗石さんは、朝まで起きていると言っていたけど、念のために僕も朝まで起きることにした。
暗石さんの部屋を訪ねる。暗石さんは意外にも、僕を快く部屋に入れてくれた。
もっととっつきにくい人だと思ってたのに。
でも、そこで安心するのはまだ早かった。暗石さんはいきなり、怖い話をし始めた。
「なあ坊主、赤いカメオの話って知ってるか?」
赤いカメオの話とは、芸能界でまことしやかに語られている怪談話だそうだ。
僕が極度の怖がりなのを知って、からかっているらしい。
そのうちに意識が遠のいていった。

N-25
目を覚ますと、窓の外はもう明るかった。ああ、またいつの間にか眠ってしまった。
どうして気を失ったのかと暗石さんが聞くので、
僕は、暗石さんがあんまり怖そうに話すからだと答えた。
暗石さんは煙草に火をつけて、窓際に立った。
「そんなに怖がってくれるなんて、役者冥利に尽きるってもんだ」
くわえ煙草で振り向く暗石さん。…あっ!
この場面を見たことがある。僕が小さかった頃、確か、テレビで…。
そうだ、北速水涼介シリーズに出てくる、陣野警部だ。
「よく覚えてるな、坊主。もう15年も前だぞ。
俺が名前付きでドラマに出たの、それ1回だけだったな」
帰ったら、DVDとか出てないか探してみよう。
本人に聞いても、恥ずかしがって教えてくれなさそうだから。

EX-24 回避失敗
暗石はボウガンで頭を打ち抜かれて死んでいた。
そばには薔薇の花が置かれていた。

 
277 :雨格子の館:2008/09/16(火) 16:30:08 ID:v2SvIRle0
N-26 (7月25日)
今日も温室に行く。今度は斧だ。
小型だけど、こんなに直接的なものが置いてあると思うと、怖くなる。

R-25-1-a 見立ての推理
斧から「悪魔の花園」を連想し、そして静奈が危ないと予想した和。
日織:なるほど。次は静奈さん。そして「悪魔の花園」、と。ふむ。
和:え?何かおかしいところがあるの?
日織:いや、合ってると思いますよ。実は、「悪魔の花園」は、
  鈴奈が殺されたと見せかけて、実は双子は入れ替わってて、
  静奈が殺されてた、というオチなんです。だから、静奈さんで合ってます。

R-25-1-b 見立ての推理
斧から「悪魔の花園」を連想し、そして鈴奈が危ないと予想した和。
日織:なるほど。次は鈴奈さん。そして「悪魔の花園」、と。

R-25-2-a 危険告知
静奈に危険を知らせる和。
静奈はしばらく考えたあと、和に礼を述べた。

R-25-2-b 危険告知
鈴奈に危険を知らせる和。
けれども鈴奈は、大丈夫だと言った。

R-25-3 回避行動
娯楽室にディスプレイしてある斧を取り外して隠す。
温室に置いてあった斧も隠しておく。
花嫁衣裳…は、それらしいものは見当たらない。

N-27-a
鈴奈ちゃんは、今夜は静奈ちゃんの部屋に泊まるという。
僕は、静奈ちゃんの部屋の前で寝ずの番をすることになった。
時々ドア越しに声をかけて、二人が無事なことを確認する。

N-28-a
いつの間にか寝てしまっていて、目を覚ますともう夜は明けていた。
「おはよ、兄さん」
その言い方は…鈴奈ちゃんか。口を開かないと本当に見分けがつかない。
「もう、姉さんったら」
あれ?もう一人の方が鈴奈ちゃん?
「ふふっ、騙された」
すっかり騙された。
静奈ちゃんの、天才的と言われる演技力の片鱗を見せつけられてしまった。

 
278 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:00:28 ID:v2SvIRle0
N-27-b
鈴奈ちゃんに、今夜は部屋の前で寝ずの番をすると言うと、
鈴奈ちゃんは、部屋に泊まっていったらいいのにと言った。
さすがに女性の部屋に泊まるのは…と思って動揺してしまう。
「構わないのに。だって、男だもん、僕」
鈴奈ちゃんは確かにそう言った。えっ?何だって?
鈴奈ちゃんは、表向きは芸能活動をしていない。
たまに、静奈ちゃんの代わりに、女装して仕事をすることがあるらしい。
鈴奈ちゃんは女装の趣味があるとか、トランスジェンダーだとかではなく、
単に人を騙すのが面白いからやっているのだそうだ。
今回も、静奈ちゃん宛てに招待状が二通来たので、女装して来たとのこと。
ぜんぜん気付かなかった。
結局、鈴奈ちゃんは静奈ちゃんと一緒に泊まることになり、僕は部屋の前で寝ずの番をすることになった。

N-28-b
いつの間にか寝てしまっていた。目を覚ますと…。
思わず悲鳴を上げてしまった。目の前に鈴奈ちゃんがいて、僕の顔をじっと見ている。
うっ。でも、こんな至近距離でも女の子にしか見えない。
鈴奈ちゃんは、そんな僕の反応を見て楽しんでいる。

EX-25-a 回避失敗
静奈は絨毯の上で死んでいた。凶器は斧だ。
花嫁衣裳ではなく、サマーセーターにミニスカートという、静奈の衣装で。

EX-25-b 回避失敗
鈴奈は絨毯の上で死んでいた。凶器は斧だ。
花嫁衣裳ではなく、サマーセーターにミニスカートという、鈴奈の衣装で。

 
279 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:28:25 ID:v2SvIRle0
X-2
このゲームをクリアするにわ、見立て殺人を防ぐだけでわダメなのデ。
書斎の本を読んで、みんなに聞き込みをして、犯人の動機を解明しなければならないのデ。
そうしないと、たとえ犯人が解ったとしてもゲームオーバーになってしまうのデ。
7月26日までに以下の情報を集めるのデ。

S-07 週刊インパクトNo.89
女優の池内梨奈(18)が、所属事務所の屋上から飛び降りて自殺した。
<帽子屋>の新作映画のオーディションに落ちたショックが原因か?
<帽子屋>がオーディションに介入したという噂。

S-08 アイドルマガジン春の特大号
里江みどり特集

N-29
日織に、日織の元ネタの日織諒のことを聞いてみた。
日織諒は複数の本に出てくるけど、那須や椿や斑井などは一度しか出てこない。
だから、「猫は斑井さん」みたいに見立てることは出来ないと、日織は言う。
そいうえば、日織の本名ってなんだろう。
「本名も『日織』です。苗字じゃなくて、名前が。『高遠日織』っていいます」
「高遠」って…。
「高遠延二郎は、俺のじいちゃんです。
小さい頃、可愛がられたらしいんですが、よく覚えてないんですけどね」

N-30
そういえば、御陵さんって何歳なんだろう。日織に聞いてみる。
「37歳です。とてもそうは見えませんけどね。昔、アイドルだったとか。『里江みどり』とかいう芸名で」
そうか、あの雑誌の写真、見たことあると思ったけど、御陵さんだったのか。

N-31
暗石さんぐらいの年なら知っているかと、里江みどりの話題を振ってみる。
「ああ、聞いたことがある。俺の事務所の先輩と出来て、妊娠させちまったとかいう話だ」
暗石さんの先輩は事務所を辞め、里江みどりは芸能界から姿を消し、その後どうなったかは知らないという。

N-32
静奈ちゃんと池内梨奈さんは同じ事務所なのだそうだ。
梨奈さんが屋上から飛び降りる直前、静奈ちゃんは梨奈さんと話をしていたらしい。
そのときやってきた人が、オーディションに<帽子屋>が介入していたという話をした。
それから梨奈さんはふらふらっと屋上まで行って、飛び降りてしまった。
梨奈さんは<帽子屋>のファンで、<帽子屋>の映画に出られるように頑張っていたが、
その<帽子屋>に気に入られなかったのが、そうとうショックだったらしい。
鈴奈ちゃんにも、梨奈さんの話を聞く。
鈴奈ちゃんは、オーディションに<帽子屋>が介入したというのはデマだったと言った。
それは、梨奈さんが死んだ後に判明したことだった。

 
280 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:30:30 ID:v2SvIRle0
N-33
暗石さんに、斑井さんのことを聞いてみる。
「あいつ、何度か見かけたことがあったな。一緒に仕事したことはねぇんだけど、
打ち上げにはちゃっかり出席して、プロデューサーとかに自分を売り込んでたな。
そういえば、あのとき、ガタイがいいのもいたな。着流しもいたんじゃないか?」
「白夜」というビデオ映画の打ち上げの席に、
この館に呼び集められた役者たち全員がいたらしいことを、暗石さんは思い出したらしい。
その席には四倉欣治さんもいたそうだ。
僕は「白夜」のことを皆に聞いて回った。
暗石さんや御陵さん、そして日織は「白夜」に出演していた。そして、四倉さんも。
静奈ちゃんは「白夜」に出演していたけど、打ち上げに出席したのは鈴奈ちゃんの方だった。
椿くんは挨拶のために最後の方だけ顔を出したという。
那須さんはなぜだかわからないけど、連れてこられたらしい。
斑井さんはいつもの如く、ちゃっかり出席していた。
やっぱり、皆は脈絡もなく集められたのではなく、ちゃんとした理由があったのだ。
そしてそこには、犯人の動機もある。
さらに驚くべきことがわかった。その打ち上げの席には、<帽子屋>もいたらしいのだ。

N-34
館の裏側にある井戸を調べてみる。井戸にかぶさっている木の蓋の隙間から、何かが見える。
一人では怖いので、日織を呼んできてから、木の蓋を取る。
懐中電灯で照らしてみたが、よくわからない。
僕がロープを体に巻きつけて、井戸の中へ下りることになった。
体重からいっても、日織よりは明らかに軽い僕の方が適任だ。怖いから本当は嫌だけど、仕方ない。
少しずつ下りていくと、突然手になにかが触った。おそるおそる下の方を照らしてみると、
さかさまになって、頭を水に突っ込んだ死体があった。
とりあえず携帯電話で写真をバチバチ撮ってから、引き上げてもらう。
写真を見ると、背広を来た男らしいことがわかった。顔は潰されていて判別不明。
いつ死んだのかもよくわからない。もしかしたら、初めて館に来たときに見た、
死んでると思った男の人かもしれないけど、服装がそれっぽいかなと思うくらいで、同じだという確証はない。
四倉欣治さんかもしれないけど、顔が潰されているのでわからない。
死体はそのままにしておくことにして、元通りに井戸に蓋をかぶせた。

N-35
那須さんに、<帽子屋>のことをどう思っているのか聞いてみた。
「和くんは、この事件を起こしているのは、<帽子屋>だと思う?」
那須さんは逆に、僕に質問してきた。僕は違うと思うと答えた。
犯人はきっと、<帽子屋>の名を騙っているんだと思う。
「そうだよね。だって、<帽子屋>はここにいるから」
それってどういう意味ですかと聞く。
「その通りの意味だよ。ぼくが正真正銘の<帽子屋>だ」
人を見た目で判断してはいけないことを思い知らされる。

X-3
情報わ以上なのデ。それでわ7月26日から、ドウゾ。

 
281 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:32:38 ID:v2SvIRle0
N-36 (7月26日)
温室に置いてあったものは、小さい木の柵だ。
ガーデニングにつかうようなやつだ。温室においてあっても違和感はないけど。
でも辺りを見まわしたけど、同じようなものはなかった。

R-26-1 見立ての推理
木の柵から檻を連想し、「檻の中の女」、御陵が危ないと推理した和。
日織:「檻の中の女」ですか。でも、この館の地下に檻なんてありませんし…。
和:うん。だから…。
日織:とりあえず白い日傘、ですね。
  あと一日です。明日には迎えが来ます。頑張って、生き残りましょうや。

R-26-2 危険告知
御陵に危険を告知する和。御陵はなぜ自分なのかと和に尋ねた。
和は、順番がそうなっていると説明した。
「黒猫の毒」「鐘楼館の殺人」「湖畔の館」「忌まわしい花」「悪魔の花園」「檻の中の女」。
この順番は、作品の発表順ではなく、作中の出来事が起こった順番だった。
それを聞いて、御陵は納得したようだった。

R-26-3 回避行動
物置にある白い日傘を隠しておく。

N-37
その夜は、見張りはせず、眠りに就いた。御陵さんは殺されないという予感があった。
すべては、明日決まる。

N-38 (7月27日)
目を覚まして、窓の外を見ると、雨は止みかけていた。
心を落ち着けて、昨日までに得た情報を整理してみる。
犯人は、なぜ温室に物を置いて、見立て殺人をしようとしたのか。
それはまるで、次のターゲットをわざわざ教えてくれているようなものだ。
一つは誰かに罪を擦り付けたいため。もう一つは、誰かに止めてほしかったから。
これから、犯人に、もうやめてください、って言わなくちゃならない。

 
282 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:33:32 ID:v2SvIRle0
N-39
僕は御陵さんの部屋を訪ねて、推理した内容を話す。
斑井さんが殺されたときのアリバイを聞いたとき、矛盾したことを言ったのは御陵さんだけだ。
御陵さんは、1階の台所に行った後、すぐに2階に上がったと言った。
でも、那須さんが2階の吹き抜けに吊るしたてるてる坊主を見たことがないと言った。
御陵さんは本当は、1階に下りた後、ずっと食堂にいて、斑井さんを殺したのだ。
井戸の中にあった死体も、御陵さんがやったことだ。
僕が館に来たとき倒れていたのは、死んだふりをした四倉さんだった。
四倉さんは、背を向けた僕を殴って気絶させた。
その後も、館の外にいて、那須さんと斑井さんの車をパンクさせた。
きっと、御陵さんは、映画の撮影のためだとか嘘をついて、四倉さんにそんなことをさせたのだ。
稽古が終わって、部屋に引き上げるとき、御陵さんは外に行って、
四倉さんを殺して、遺体を井戸に投げ込んだ。

N-40
御陵さんは観念して、身の上話を始めた。
かつて、御陵さんはアイドルだった。「里江みどり」という芸名だった。
御陵さんはその頃、とある男優と恋に落ち、そして妊娠した。
厳格な御陵さんの家族は、御陵さんと男優を別れさせた。
そして、堕胎させようとしたが、御陵さんは子供を必死で守った。
やがて女の子を出産したが、その子は他の家に預けられ、
本当の両親が誰だか知らせられずに、育てられた。
離れ離れになっても、御陵さんは、ずっとその子を遠くから見守っていたという。
その子が、池内梨菜だった。

N-41
「あの子は、私と同じ、女優を目指すことになったの。
やっぱり血が繋がっているんだって思った。
いつか、同じお仕事をして、あの子に会うことがあるかもしれない。
ずっとそればかりを考えていたわ。
泣き出さずに、自然に『はじめまして』って、あの子に言えるように、練習したりして。
一世一代のお芝居よ」
だけど、会うことはかなわなかった。
<帽子屋>のせいで、オーディションを落ちたのを苦に、池内梨菜は自殺してしまった。
御陵さんは、<帽子屋>に復讐する決心をした。
「白夜」の打ち上げに出た人たちの中に<帽子屋>がいるのを知った。
その人たちを、<帽子屋>の名前を使って館に集め、一人ずつ殺す。
誰が<帽子屋>かはもはや関係ない。
「<帽子屋>かもしれない人は、生きていてほしくなかったの!」
北速水涼介シリーズに見立てたのは、日織に罪を着せるためだった。
日織は、高遠延二郎の関係者だし、それに、元ネタの日織諒は、皆と同じように見立てることが出来ない。
真っ先に疑われるのは、日織だ。

 
283 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:34:06 ID:v2SvIRle0
N-42
僕は、<帽子屋>の正体は那須さんだということ、
そして、池内梨奈がオーディションに落ちたのは、<帽子屋>のせいではないことを、御陵さんに言った。
「本当に、私は、何の関係もない人を恨んでいたの…?」
御陵さんの目から涙がこぼれた。
「たしかに、私は勝手に<帽子屋>のせいだと思いこんでいたのかもしれない。
こんなことを始める前は、うまくいくとは思わなかった。
皆が集まるかどうかも賭けみたいなものだったわ。でも、何もかもうまく行きすぎたの。
そして私は、四倉さんを殴ったときも、ためらわなかった。
ああ、出来るんだって、私は人を殺せるんだって思ったら、止める理由が何もなくなってしまったの…」

N-43
僕は悲しいと思った。本当のお母さんが、こんな酷いことをしていると知ったら、梨奈さんは何て思うだろう。
でも――。
「私がどんなに酷いことをしても、あの子が傷つくことはないの。あの子は何も知らずに逝ってしまった」
せめてお墓参りくらいは行けるでしょう、と僕は言った。
「駄目なの。あの子のお墓がどこにあるのかも、私、知らないの。
教えてもらえないの。お参りに行って誰かに見られたら勘ぐられるかもしれないって。
だから、こうするほか、なかったの」
僕の目からも涙がこぼれる。
本当はどこからでも聞こえるはずなんだ。墓前じゃなくても、声が届かないわけないじゃないですか。
僕は訴えた。
「あの子になんて言えばいいの?私、取り返しのつかないことをしてしまったのに…」
だから、こんなことはもうやめて、罪を償ってください、
いつかは、僕らも梨奈さんと同じところに逝くんだから、と、僕は言う。
「私、あの子と同じところに逝けるの…?
あの子に会いたい。どんなに怒られても、嫌われてもいいから」
御陵さんは涙を流しながら笑った。
「あなたに謝らなきゃ、きっと梨奈に叱られるわ。ごめんなさい、一柳さん。ありがとう」

EX-26 説得失敗
御陵は、内側から鍵をかけた、地下のボイラー室の中で死んでいた。
さながら「檻の中の女」の見立てのように。

 
284 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:38:42 ID:v2SvIRle0
N-44
外に出た。何日も降り続いていた雨は止んでいた。
崖崩れの復旧作業は終了していた。これで山を下りることができる。
「それでは、一柳さん、行って参りますわ」
御陵さんは駆けつけてきた警察に、真っ先に自首を申し出た。
生き残った人たちが次々と館から出てくる。
トレーニングマシンをどうやって持って帰ろうか心配している那須さんに、椿くんがツッコミを入れている。

N-45
静奈ちゃんは御陵さんが犯人と聞いて、驚いていた。
「あのね、あたし、日織さんか、兄さんが一番怪しいと思ってた」
そう言われてびっくりする。そうか。斑井さんが殺されたとき、僕と日織は一緒に部屋にいた。
だから、僕らはお互いに、絶対に犯人ではないという確証があった。
でも、他の人たちから見たら逆に、僕たちが怪しく見えるだろう。
「なんで日織さんはずっと書斎にいたの?」
僕は少し考えて、そして理解した。日織がずっと書斎にいて、僕と一緒に行動しなかった理由。
僕に疑いがかからないようにしてくれてたんだ。でもそうすると、日織に疑いがかかってしまう。
「見ず知らずの人を『助けたい』なんて、そうそう言えたもんじゃないですぜ。
だから、そのとき、思ったんです。この人だけは守ってみせるって」
日織はそう言った。なんだか照れくさい。

N-46
こうして、この館での一連の事件は幕を下ろした。
役者たちは役から解放される。あ、僕は役者じゃないけど。
「でもさ、この館、本当に呪いの館かもしれないな。
だって、見立てに使えるモノがたくさんあったし、書斎にそれっぽい本が揃ってたし。
おまけにタイミングよく崖崩れが起きるし。出来すぎてるだろ?」
椿くんはそう言って考え込んでしまった。
この館、そして一連の事件は、北速水涼介シリーズの「呪は死なず」に見立てられていたようなものだ。
この館に来てしまった僕は、本の中に迷い込んだのと同じだった。
殺人事件の犯人を推理するなんて、そんなこと、本の中だけの話だと思ってた。
僕は謀らずも、北速水涼介役を演じさせられてしまっていたのだ。
いや、でも、僕は北速水涼介ほど格好よくはないし、もちろん名探偵でもない。
殺人事件なんて気持ちのいいものではない。出来れば、こんな役は二度と演りたくはない。
そう心から願った。


 
285 :雨格子の館:2008/09/16(火) 17:40:15 ID:v2SvIRle0
N-47 (8月31日)
救助された僕は、疲れからか、それとも精神的ショックからか、気を失ってしまった。
それから入院させられて、もう8月も終わり。夏休みは潰れてしまった。

N-48
那須さんは<帽子屋>であることを公表してしまった。
おかげで役者としてはもうやっていけなくなったが、<帽子屋>としてのオファーが殺到しているそうだ。

N-49-a
静奈ちゃんは、天才的演技にますます磨きがかかったらしい。
「謎の双子の美人姉妹」なんて噂が流れていた。
どうやら、時々鈴奈ちゃんと入れ替わっているらしい。

N-49-b
双子の姉妹(というか姉弟)であることがばれてしまった鈴奈ちゃんは、
髪を切って男に戻り、鈴奈ちゃんの専属マネージャーをやっているらしい。

N-50
椿くんは、今度始まるドラマで不良学生の役が決まったそうだ。
もう執事の役だけは嫌だとかなんとか、どこかでコメントしていた。

N-51
暗石さんは、館から救助されてしばらくはワイドショーに出ることもあったけど、
今は元通り、時代劇に役名無しで出て、元気に斬られているらしい。

N-52
御陵さんは、梨奈さんのお墓の場所を教えてもらったらしい。
裁判はこれからだし、罪を償い終わってお参りに行けるのはだいぶ先のことになりそうだけど。

N-53
日織から手紙が届いた。相変わらず、暇な役者をやっているらしい。
えっ?僕のこと「名探偵」って書いてある。ちょ、ちょっと待ってよ。
何か誤解してるって、日織!

Thank you for reading!!

 
286 :雨格子の館:2008/09/16(火) 18:04:30 ID:v2SvIRle0
予告どおり、事象の羅列になりました。こんなまとめ方しかできなくてすみません
上記に出てきた物品やら本やら情報やらは、必要なものだけです。
ゲーム内には推理を間違わせるようなモノもたくさん出てきますし、書斎にはたくさん本が並んでます。
皆と会話するときに、本編と全く関係ない話題を振って、無益な情報をたくさん引き出すこともできます。
自由時間の自由度は半端ないです。もう何から手をつけたらいいのか解らないくらい。
これこそゲームブックを作るのに相応しいと思ったけど叩かれたからもうしないw
 
291 :ゲーム好き名無しさん:2008/09/16(火) 21:10:46 ID:9AHQAOLT0
>287 雨格子はクロス探偵のような推理ものかと期待すると
凄まじくがっかりするから止めておいた方がいいぞ!

まあ、登場人物がどの人も愉快なタイプだから
キャラゲーだと思って会話を楽しむ方が面白いと思う

正直なとこかなり人を選ぶゲーム
女性の登場人物が2人だけだし、しかもその内の一人が犯人だし
主人公はへたれの、のびた君だし、妙にホモくさい場面出てくるし
BLゲーム好きな人にはある意味お勧め

書き手さん省略してるが、
最初の夜御陵を除くみんなで階段登って部屋に戻る時、
一番最後の日織とのびたは庭で何か落ちるような物音聞くんだよ
日織が庭に確認に行こうとするんだけど、のびたが言うんだ
「怖いからやだ!!君子危うきにちかづかずだ!」みたいな事いって
主人公のくせに全力で止めるんだよ。
実際、御陵が南雲を井戸に落とした音だったんだけど
この時確認してれば事件起こらないだろ!って突っ込んでたなあ
 
292 :ゲーム好き名無しさん:2008/09/16(火) 22:26:39 ID:3XfQyuiD0
>>291
まぁ、静奈の心ゲット出来たからよかったんじゃないか。
俺は続編を知らないから静奈とどうなったかしらんけど。
 
294 :ゲーム好き名無しさん:2008/09/17(水) 05:40:55 ID:O/lZfmaO0
>>291
>この時確認してれば事件起こらないだろ!って突っ込んでたなあ

一応作中でもそのことへの突っ込みあったし。主人公も後悔と反省してる描写もあったし
主人公責めるのはかんべんしてやれw
 
323 :雨格子の館:2008/09/19(金) 22:15:42 ID:22aHEHWR0
>>291
うはwBLwww
言われて初めて実感。

椿くんの部屋に泊まりこむ展開のとき(↑で書いた通りの展開)
朝のシーンのあまりのデレっぷりに正直、気持ち悪くなってコントローラ投げた
なので↑は気持ち悪くならない程度に書いた。
まぁ攻略サイトを見たら、どうやら椿くんの好感度が最高じゃないと
椿くんのお部屋に泊まれないらしいので、それでもいいのかなぁ。
あと鈴奈もちょっとやりすぎの感が。
最高ランクが取れる展開のとき(これも↑の通り)、ラストで日織が言う台詞もちょっと行き過ぎ。

そう言えば、シナリオ書いてる人、毎回こうだな
男が主人公なのはいいんですが
男キャラとの距離がいつも近すぎる。
ミッシングパーツ然り、セパレイトハーツ然り。
それは友人ってレベルじゃねぇぞって感じで。

「君子危うきに近寄らず」のところはあえて省かさせていただいたw


続編もいつか書くよ。まだ積んであるけど。つーか相当難しそうだけど。
 
最終更新:2020年02月23日 22:00