アナザー・マインド

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47 :アナザー・マインド:2010/07/28(水) 13:42:03 ID:nwHgqZq50

主な登場人物
キミ…プレイヤー自身のこと。デフォルト名は「真野俊平」。正体不明だが少なくとも男なのは間違いない。
説明書には「なるべく自分の名前を入力しましょう」と書いてあるが、
女性プレイヤーの存在は想定されてないっぽいので
女の名前を入力するのはやめたほうがいい。
葉山 瞳…主人公。名前変更可。高校2年生。キミの意識が入り込んでしまった女の子。
鳴海 健一…K県警の刑事。
高木 真理子…瞳のクラスメイトで親友。
明円 輝夫(みょうえん てるお)…フリーのルポライター。
向井 夏子…心理療法士。


第一章 「あなたは誰?」

キミは真っ暗な世界で覚醒する。何も聞こえない、何も見えない。
ここはどこなのか、キミは考えたが、何も思い出せない。
『あなたは、誰?』
いきなり女の子の声がしたので、キミは驚く。
“僕は――。”
キミは名前を名乗った。
『私は葉山瞳と言います。16歳。N学園に通ってて…。
って、こんなこと話してもしょうがないですよね。あの、私、買い物に行ってて…。
それで車にはねられて…。ということは、私、死んでしまったのかしら』
“さぁね。僕には何もわからない。”
『そうですか…』

3月23日(月)

真っ暗だった世界に突然光が射す。看護婦がこちらを覗き込んでいる。ここはきっと、病院だ。
「大丈夫ですか、葉山さん」
看護婦はこちらを見て、女の子の名前を呼ぶ。
唐突にキミは理解する。どういうわけか、キミは意識だけの存在になり、
葉山瞳という女の子の中に入り込んでしまったらしい。
看護婦は、ここはT大学付属病院だということ、瞳は交通事故に遭って1ヶ月間意識不明だったことなどを話す。
看護婦が去っていった後、瞳はキミに話しかける。
『あの…いますか?』
“僕は君の中にいる。”
『やっぱり、夢じゃなかったんだ…。出て行ってください、と言いたいところですけど…』
“出来ればそうしたいよ。だけど、今の僕はこうして瞳と話すことしか出来ない。
出て行く方法もわからないし、僕の体も、どこにあるのか…。”
『そうですよね…。こうなったら仕方がありません。これからよろしくお願いしますね』
“こちらこそ、よろしく。”
『それで、私、考えたんですけど、あなたは幽霊なんじゃないですか?』
“そうかも知れない。死んだ自覚は無いけど。”
『この病院に入院してて、死んじゃった、とか。名前がわかってるんだから、そこから何とかならないかしら』

3月26日(木)

今日は検査の日だ。黒川という医師に連れられて、瞳は検査室に行く。
そこで瞳はCTスキャンにかけられた。そのときキミはデジャヴのようなものを感じる。
夜、瞳はぼんやりとテレビを見る。ニュースで、F市のパチンコ店に強盗が入ったと報じている。
「F市って、隣の市じゃない。いやぁねぇ」

3月27日(金)

看護婦がやってきたとき、キミは幻覚を見る。
【看護婦の背後に謎の影が忍び寄る。看護婦は振り返って驚く。】
『あの、あなたも見ました?看護婦さんが襲われているところ…』
“うん。”
どうやら瞳も同じ幻覚が見えたようだ。
その幻覚が何を意味するのか。キミと瞳は戸惑うばかり。

キミに繋がる手がかりを得ようと、瞳は夜中にこっそりベッドを抜け出し、霊安室を調べる。
ドアには意外にもカギはかかっていなかった。中に入って見回すが、それらしい遺体は無いようだ。
と、そこに看護婦が倒れているのを発見する。
「見回りをしていたら、男に襲われて…」
『これって、もしかして…』
“ニュースでやってた、強盗犯、かもな。”
瞳は電話の元へ走り、警察に通報する。
もしかしたら、昼間に見えたビジョンはこのことを予言していたのでは、とキミは考える。
ホッとしたのも束の間、謎の男がこちらに向かってやってくるのが見える。看護婦を襲ったヤツだろうか。
瞳は病院中を逃げ回り、空き病室に入り、ロッカーの中に隠れる。
息を殺して待つ。しばらく後、男がやってきて、瞳が隠れたロッカーを開ける。
恐怖のためか、瞳はそこで気を失う。

3月28日(土)

瞳の病室に男が訪ねて来る。
「私、K県警捜査一係の鳴海という者です」
鳴海刑事は、事件のあらましを瞳に話す。
瞳を追ってきた男は、病院に忍び込んだ例の強盗犯で間違いないようだ。
強盗犯は何故か瞳を襲わずに、逃げ出したという。

4月2日(木)

数度に渡る検査の結果は異常なしだった。瞳は無事退院する。
だが、学校に行けるようになるには、まだ少しかかりそうだ。

第一章 終わり


4月12日(日)

もしかしたら、キミは何らかの事故や事件に巻き込まれたのかも知れない。
そう考えたキミと瞳は、図書館へ行く。
過去の新聞記事を調べてみたが、それらしいものは見つからない。


第二章 TIAMATの呪い

4月16日(木)

【そこは学校の屋上だ。「待ってくれ!」と男は言うが、少女は虚空に足を踏み出し、落ちていく】
瞳は冷や汗にまみれながら飛び起きた。例のビジョンだ。
『リアルで…イヤな夢だった。まさか死ぬなんて…。』
“ああ、そうだな…。”

今日は瞳が退院後、初登校する日だ。
通学路の途中で、瞳の親友である真理子に会う。
学校の校門に着く。校門の柱に、赤いチョークで落書きがしてある。
逆三角形の中に「TIAMAT」という文字が書いてある。
それをじっと見ている少年がいる。瞳と同じクラスの金田だ。

ホームルームの時間になり、文化祭の実行委員を決めることになった。
まず真理子が立候補する。そして早くクラスになじめるようにと、真理子は瞳を推薦してきた。
戸惑った瞳はキミに相談する。
『あの、どうしましょう?』
“僕は受けた方がいいと思う”
『じゃあ、やってみようかな…』
こうして瞳も実行委員をやることになった。男子は金田と北川だ。
放課後、実行委員4人は、担任の樋口という男性教諭も交えてミーティングを行う。

4月17日(金)

真理子は瞳に、例の三角形の落書きが増えていることを話す。
確かに校内のいたるところに落書きがされているようだ。
放課後、ミーティングに向かおうとした瞳は、
下駄箱に「文化祭を中止せよ」との脅迫状があるのを発見する。
どうやら実行委員4人全員に脅迫状は届いているらしい。
脅迫状を樋口に見せると、とりあえず今日はこれで解散ということになる。

落書きのことが気になったキミは、瞳に調査をするよう提案する。
瞳は真理子と一緒に、校内の落書きを調べて回る。
落書きは尽く何者かに消されていた。
「あ、ほら、見てよ、これ」
屋上に向かう途中の階段の壁に書かれたその落書きをよく見てみると、
うっすらと二重に書かれているのがわかる。
「一度消して、その上からまた書いたみたい」
確かに、真理子が言う通りだ。
瞳たちは、用務員のおじさんが落書きを消している場面に遭遇する。
「まったく、こんな訳のわからん落書きを書いて…。
でも、樋口先生は意味を知っているみたいだったがのぅ」
瞳たちは樋口に会いに行くが、不在だった。

「あなた、2年生?」
校門を出たところで、瞳は他校の女子生徒に呼び止められる。
「金田って知ってる?」
「クラスメイトですけど…」
女子生徒は「火浦菜々子」と名乗る。
「彼が悪いことしないかどうか、気をつけて見てて」
瞳は菜々子を呼び止めようとしたが、彼女は無視して去って行く。

4月20日(月)

今日は金田が休みだ。
放課後、瞳は樋口に会う。
「あの落書きのこと、教えてください」
樋口は、TIAMATとは風のカオ…ではなく、古代の女神のことだと言う。
「それが、何か?」
「そういう意味ではなく…。あの落書き、うっすらと二重になってました。
昔、誰かが――」
【学校の屋上に書かれた、TIAMATの落書きの前に立つ女子生徒】
突然、例のビジョンが見える。
『今の…』
“ああ、見えた、な。”
「話が終わったなら、帰りなさい」
他の教師に邪魔されて、それ以上話を聞くことは出来なかった。

下校途中のこと。
「あなた、N学園の生徒ですよね?よかったらお話、聞かせてくれません?」
瞳は見知らぬ男に呼び止められ、喫茶店に行く。
「フリーライターやってます、明円輝夫です」
明円は瞳に名刺を渡す。
「5年前、N学園の女子生徒が、学校で死んでいるんだ。学園祭の前日にね」
屋上から落ちる女子生徒のビジョン、あれは本当にあったことだったのかと、キミは思う。
「教師にフラれて、そのショックで飛び降りたと言われていたんだけど、真相はわからないままさ。
気になるのは、その子が死ぬ少し前に、赤いチョークの落書きがされていたことだ。
最近になって、その落書きが復活したらしいって噂を聞いてね。
ま、そのところの真相を究明したいわけだ。協力してくれないかな」
「何をすれば…?」
「これから、何か分かったことがあったら、教えて欲しい」
「それだけでいいんですか?わかりました。協力します」

4月28日(火)

とうとう、文化祭の前日になった。準備のために、普段立ち入り禁止になっている屋上へと行かねばならない。
瞳たち実行委員は、樋口に連れられて、屋上へ行く。
屋上の床には、大きくTIAMATの落書きが書かれていた。
「5年前もこうだったんですか?」
金田は樋口に言う。
「これは、たちの悪いイタズラだ」
樋口の顔が真っ青になっている。
「この落書きは私が消しておくから、君たちは他の準備を進めなさい」
瞳たちは屋上から追い出されてしまった。

真理子の携帯電話が鳴り出す。しばらく話した後、真理子は携帯電話を切り、瞳に言う。
「明円さんが金田くんのことで話があるって。大至急」
明円と真理子はいつの間にか知り合いになっていたらしい。
キミは樋口や金田の様子が気になったが、明円に会おうと瞳に言う。
瞳と真理子はこの前の喫茶店に行く。そこには、明円の他に菜々子も待っていた。
菜々子の顔を改めて見て、キミと瞳は、屋上に立つ女子生徒のビジョンとそっくりだと思う。
「そっくり…ですね」
瞳は素直な感想を口にする。
苗字こそ違うが、菜々子は5年前に死んだ女子生徒「大沢杏子」の妹なのだ。
明円から事情を聞く。金田と杏子は幼馴染だった。そして、杏子は樋口と付き合っていた。
「危ないことしないように、って言ったけど、どうやら遅かったみたいね」
菜々子はため息をつく。
「たぶん、脅迫状も、三角形の落書きも、金田くんの仕業だろうね」
「どうして…」
「彼は樋口先生を裁こうとしているのよ」
あの落書きは、杏子が樋口を呼び出すときの合図だったという。
「金田君、無茶しなきゃいいけど…。学校へ行きましょう」

辺りはすっかり暗くなっていた。瞳たちは急いで学校へ戻り、屋上へ駆けつける。
金田は今にも落ちそうな位置に立っている。そんな金田を見て、樋口はオロオロしている。
「もういいでしょ、金田君」
瞳たちは金田を説得しようとするが、金田は聞かない。
「こんなことで許されると思っているのか、樋口!
杏子は死んだ。あんたはのうのうと生きて…。そんな虫のいい話ってあるか?
お前も杏子と一緒に飛び降りて死ぬべきだった。だから猶予をやったのに、
知らない顔をしていやがった。脅迫状も、落書きも、全部無視して…」
金田は樋口を睨む。樋口はうつむきながら話す。
「おれには、何も言う資格は無い」
「逃げるんじゃねぇよ。杏子が死んだときみたいに、逃げるのか?
先生はいいよなぁ。学校がかばってくれるんだから。
でも、二人目の生徒を殺しても、学校は守ってくれるかな、先生?」
金田は飛び降りようとする。明円が飛び出していって、金田をつかんで引き戻す。
金田は助かった。

4月29日(水)

文化祭当日。当然というべきか、金田は学校に来ていなかった。
瞳は、樋口と学年主任の教師が話しているのを立ち聞きしてしまう。
「結局、私は金田を助けることが出来なかった。自分の言うことが全て嘘に思えて、
生徒たちに語るべき言葉が無い」
「また逃げるんですか、樋口先生。教師だって人間です。間違うことだってあります。
とりあえず、この辞表は預かっておきますよ」

第二章 終わり


5月3日(日)

瞳は、心理療法士の向井夏子の元へ行き、カウンセリングを受ける。
瞳は夏子に、キミのことを説明する。
「なるほど。頭の中で男の声がする…と。彼と直接話をすることは出来ないかしら」
「どうするんですか」
「瞳さんの意識を一時的に消して、彼の意識を浮かび上がらせるの。やってみていいかしら?」
「どうぞ」
夏子は瞳に催眠術をかける。瞳の意識が消え、キミの意識が浮かび上がる。
キミは夏子にいろいろと質問されるが、それに素直に答える。
夏子が指を鳴らすと、瞳の意識が復活し、キミの意識はまた瞳の中に戻る。
「先生、私って二重人格なんでしょうか?」
「それはまだわからないわ。また来てください。彼ともっとお話がしたいわ」


第三章 明神池の怪

5月9日(土)

瞳と真理子、そして明円は列車のボックス席に座っている。
窓の外をのどかな風景が通り過ぎていく。
三連休を利用して、瞳と真理子は温泉旅行の計画を立てたのだが…。
「でも、どうして明円さんがついて来るんです?」
真理子は不満そうに言う。
「瞳ちゃんに付いて行けば、面白いことに遭遇出来ると思ってね」
明円はそう答える。

静かな田舎の駅で、瞳たちは列車を降りる。
駅前のバス停に行ってみるが、今日のバスはもう無い。
近くにレンタカーもあったが、明円は免停中とのことで、運転はできない。
仕方なく瞳たちは歩いて旅館を目指す。
山道を歩いて1時間ほど行ったところに、ガス欠になった車が乗り捨ててあるのを見つける。
ドアのロックはかかっておらず、キーはさしたままになっている。
辺りを見回してみたが、車の持ち主らしき人物は見当たらない。
【男は山の斜面を転がり、悲鳴を上げながら池に落ちる。】
キミと瞳は例のビジョンを見る。その男は何らかの事故に巻き込まれたようだ。
その車はレンタカーだったので、明円は携帯電話を取り出し、レンタカー会社に連絡する。
「おたくの車が乗り捨ててあって…。え?二条?違いますよ。おれが借りた車じゃなくて…」
とにかく、ガス欠ではどうしようもない。瞳たちはその車を見捨てて再び歩き出す。

日暮れ頃、ようやく旅館に着く。
瞳と真理子は早速露天風呂へと向かう。脱衣所で服を脱ぎだす真理子。
瞳は慌てて脱衣所を出る。
“瞳、どうした?”
『あなたが見ないとも限りませんから。真理子が脱衣所を出るまで待たないと』
“わかった。見ません。”
『その心がけは立派です』
瞳はしばらく待った後、キミに真理子の裸を見せないよう慎重に露天風呂に入り、目を閉じる。
キミの視覚は瞳と共通のものなので、これでは何も見えない。

旅館の食堂で夕食となる。
「そうだ、女将さん。この近くで、何か面白い場所、ありませんか?」
明円が女将に尋ねる。女将は、旅館の近くには「明神池」という古池があって、
半魚人が住んでいるとか、そんな伝説がある、と答える。

夕食後、瞳はあてがわれた部屋に戻る。
そこには見慣れぬ大きいバッグが置かれ、中身が広げられている。
「何これ?カメラ?」
部屋を間違ったわけではない。戸惑っていると、男が部屋に入ってくる。
「あ、ゴメン。部屋を間違えたみたいだ」
男は、カメラマンの大崎と名乗った。瞳と大崎はしばらく話をする。
“瞳、この男、怪しいぞ。”
『うん、そうかも』
“カメラのことについて聞いてみよう。何かボロを出すかも知れない。”
『わかったわ。でも、私、カメラのこと、わからない』
“レンズの明るさについて聞くんだ。”
「ねぇ、大崎さん。これ、大崎さんのカメラなんですか?」
「そうだけど」
「えっと、このレンズなんですけど、どんな明るさなんですか?」
「ここに書いてあるよ、ほら。135ミリ」
“135ミリは、レンズの焦点距離のことだ。大崎は偽のカメラマンだ。”
大崎は荷物をまとめて、そそくさと部屋を出て行こうとする。
【何かの液体の入ったビンが高いところから落ちて割れる。液体が床に飛び散る。】
このビジョンが何を意味するかわからないが、大崎は何かをしでかすに違いない。
とりあえず大崎の様子に注意することにする。

5月10日(日)

「きえええええーっ!!」
朝早く、奇声によって瞳と真理子は起こされる。
どうやら隣の部屋から聞こえてくるようだ。二人は隣の部屋を訪ねる。
そこには、いろいろな色で書かれた文字が躍っている紙が散らばっている。
その中心に、気難しそうな老人が座っている。彼はどうやら、前衛的な書家の先生らしい。
瞳は書家の先生としばらく話をする。彼は字を書く際に奇声を発する癖があるようだ。
瞳は自分の部屋に戻った。まだ朝早いので、寝なおそうかと迷っていると、隣の部屋から物音が聞こえてくる。
「明神池の半魚人?」
「まさか、そんなわけないでしょ」
しばらくして、物音が収まった後、瞳は再び書家の先生の部屋へ行く。
中には誰もいない。見回すと、テーブルの端の落ちそうなところに、
液体の入ったビン――絵の具のリムーバーが置いてある。その側に、携帯電話が置かれていた。
老人には似つかわしくない、最新機種のものだ。携帯電話を調べてみると、「大崎」とネームが入れられている。
後で大崎に返すことにして、瞳はとりあえずその携帯電話をポケットに入れた。

瞳と真理子と明円、そして何故か大崎も交え、4人で観光することになる。
リフトに乗って山の頂上へ。
昼頃、大崎は明円から携帯電話を借り、何処かへ電話をかける。
瞳のポケットの中の、大崎の携帯電話が震える。
帰りに、瞳たちは書家の先生と会った。先生は大崎に話しかけるが、大崎は先生を睨んだ。

夜、瞳たちがロビーでくつろいでいるところへ、女将が慌てた様子でやって来る。
「玄関に人が倒れてて…」
玄関に倒れていた男はロビーへと運び込まれる。幸い、大した怪我もなく、意識もはっきりしているようだ。
「僕、大崎って言います。交通事故に遭って、気が付いたら池に落ちてて…」
昨日見えたビジョンはこの男のことだったのか、とキミは思う。
「あ、僕のカメラ、拾ってくれたんですね」
もう一人の大崎が持っているカメラを見て、助けられた大崎は言う。

「大崎さん、話があります。付いて来てください」
瞳はもう一人の大崎を部屋に連れて行き、話をする。
「あなた、本当は二条さんでしょう?大崎さんの荷物を拾って、大崎さんになりすました」
「……」
「そして、書家の先生の部屋に携帯電話を置いて、振動でビンが落ちるように細工した。
あのビン、ラベルを見たら、毒性あり、って書かれてました。先生に何の恨みがあるんですか?」
「どうしてこんなことになっちまったんだろうな。あんた、男と付き合ったこと、あるかい?
まぁ、大人になれば、わかるよ」
ニセ大崎――二条は、瞳の言ったことを否定も肯定もせず、そう言う。
「私にだって、いつも一緒にいてくれる男の人くらい、います」
それは自分のことか、とキミは思う。
「何背伸びしたこと言ってんだよ。じゃあな」
二条は瞳に背を向けて逃げ出す。

二条を追って旅館の玄関を飛び出そうとした瞳は、意外な人物と出会う。
「あれ?夏子さん?どうしてこんなところに?」
「瞳さん…父と会ったのね」
実は書家の先生は、「向井正三」という、夏子の父だったのだ。
そして、二条はかつて、夏子の元へ通っていた患者だという。

二条は明神池のほとりにいた。
二条は自分の思いを吐露する。二条は夏子を一方的に思いつめていた。
その恋を正三に邪魔されたと思い、正三を恨むようになった。
「おれは大崎になりきって、自分から解放されたんだ」
二条は池に入っていこうとする。それを明円が体を張って止めた。

5月11日(月)

帰り道、妙円は素直な感想を述べる。
「いや、世の中にはいろんな人間がいるもんだな、と思ってさ。
きっと、みんな何かに救いを求めたいんだな」

第三章 終わり


5月16日(土)

夏子の元でカウンセリングを受ける。
瞳に催眠術がかけられ、キミの意識が浮かび上がる。
キミは夏子の質問に答えていく。
『それで、あなたは、瞳さんをどうしたいの?』
“僕は瞳を助けたい。”
『私と目的は同じみたいね。協力してくれる?』
“僕に出来ることなら、何でも。”
『そう、良かった。これからよろしくね』
夏子が指を鳴らすと、キミの意識は瞳の中へと沈む。
「どうでした?」
「彼も協力してくれるって。きっと、彼は瞳さんに必要だから、現れたんだと思うの。
必要がなくなれば、瞳さんの意識と統合して、消えるはずよ」
「消える…いなくなるってことですか?」
キミの存在は、ただ脳内で作り出されただけの妄想の産物なのかと、瞳は夏子に問う。
「それは…まだわからないわ」


第四章 夕暮れ爆弾男

5月17日(日)

瞳は真理子と一緒に、NKホールへとやって来る。今夜は若者に人気の歌手のコンサートがある。
開場一時間ほど前、すでにホールの前には列が出来ている。真理子はトイレに行った。
瞳が一人で待っていると、挙動不審な男がやってくる。あのブルゾンはきっと、コンサートのスタッフだろう。
男はアタッシュケースを置いて去っていこうとする。
「あの、これ忘れてます!」
【ステージ上で歌手が歌っている。そのとき、どこかに置かれたアタッシュケースが、爆発する】
瞳がアタッシュケースを持って男に渡そうとしたとき、ビジョンが見える。
「あ、ああ」
男はアタッシュケースを受け取り、去って行く。
『あのアタッシュケースの中身、あれって…』
“たぶん、時限爆弾だろう。”
『大変!あの人を追わなくちゃ』

瞳はコンサートをあきらめて、男を捜すことにした。
やがてコンサートが始まるが、まだ見つからない。スタッフなら、一般人が入れないところにも行ける。
そうなったらもうお手上げだ。
『どうしよう…』
“瞳、警察に通報だ。”
『でも私、携帯電話持ってないし、ホールの外に出なきゃ…』
ホールの外に出ようとしたが、どの出入り口にもカギが掛かっている。閉じ込められたようだ。
“瞳、非常ベル!”
非常ベルを鳴らそうとボタンを押したが反応が無い。
「え?どうして…」
そのとき、同じく閉じ込められたと知って途方に暮れている、あの爆弾男と会う。
「あなた、このホールに爆弾を仕掛けたでしょ」
「なんでわかった?…まぁいいや。どうせおれは死ぬ運命だ。まんまとハメられたよ」
男はホールに爆弾を仕掛けたが、共犯者に裏切られ、逃げられなくなってしまったと語る。
「どうしてそんなことを…」
「爆弾に関する知識、おれにはそれしか誇れるものが無かったんだ」
男はポケットから酒の小瓶を取り出し、ちびりちびりと飲み始める。
「爆弾、止めに行きましょう」
瞳は、このままでは共犯者の思う壺だ、それで悔しくないのかと男を説得する。男は説得に応じる。
「まずは、控え室だ」
瞳と男は控え室に行く。そこに置かれたアタッシュケースを男は開く。
「もう酒はやめだ。これはあんたに預かってもらおう。
今のおれは、酒が無いと手が震えちまう。情けねぇ」
男は瞳に酒瓶を渡してから、見事な手つきで作業を進め、爆弾を解除する。

もう一つの爆弾を探すためステージ裏へ。爆弾は面倒な場所に置かれていたので、探すのに手間取る。
そして男はアタッシュケースを開いて作業を始めるが、何だか手つきがおぼつかない。
と、電子音とともに、タイマーが作動し、カウントダウンを始める。
「しまった!酒が切れて、手が震えて…」
男は、瞳が抱きかかえている酒瓶を物欲しそうに見る。
「ダメだ。このままじゃ、元の木阿弥じゃねぇか」
“瞳!お前が、あの男の手になって、爆弾を解除するんだ。”
『えっ?そんなこと、出来ないよ』
“それしか方法が無い!”
『わかった。どうなっても知らないから!』
「私がやりますから、解除の仕方、教えてください」
「でも…」
「あきらめないで!」
瞳はペンチを持ち、男の指示通りに爆弾の配線を切っていく。
そして、タイマーはゼロになる前に止まる。
「やった…。すごいよ、あんた」
「ところで、名前、聞いてませんでしたね」
「荒井ってんだ、おれ」

コンサートは無事終了し、荒井は駆けつけた警官に逮捕される。
「荒井さん…」
パトカーに乗り込む直前、瞳は荒井を呼び止める。
荒井は振り返って瞳を見つめる。

第四章 終わり


5月24日(日)

【マンションのカギを開けて部屋の中に入っていく。床に、胸を血に染めた女の人が倒れている。
女の人を抱きかかえて揺するが、もう事切れている。】
瞳は悲鳴をあげながら目を覚ます。
“どうした、瞳?”
『とても悲しかった。あの女の人、知らない人なのに、どうして?』

夏子の元へ行く。瞳は夏子に、今朝見た夢のことを説明する。
「その夢の中では、私、男の人だったんです」
夏子はしばらく考えた後、言う。
「今日は、瞳さんの記憶を遡ってみようと思うの」
夏子は瞳に催眠術をかける。すると、頭の中に数々の場面が浮かんでは消えていく。
最近の記憶から徐々に過去へと遡っていく。
温泉旅行、文化祭、入院していた頃、初めて目を覚ましたとき、そして――。
【パジャマ姿の女の人が病院のベッドに腰掛けて、ぼんやりと天井を見ている。】
病院にいた女の人はたぶん、アパートで倒れていた女の人と同じだ。
瞳は、今見たビジョンを夏子に話す。
「その女の人を見たとき、ああ、妹だな、って思いました。私は一人っ子なのに」
夏子は、その女の人の幻覚はキミの記憶なのではないか、と言う。
「今度は、彼の記憶を遡らせてみたいわ」
「ぜひ、やってください」
「今日はダメよ。瞳さん、とても疲れているでしょうし。また今度にしましょう」


第五章 夢猫

5月27日(水)

下校途中、瞳は捨て猫を見つける。かわいい白い猫だ。
瞳はその猫を拾って帰宅した。瞳は母に猫を飼ってもいいか聞いたが、拒否された。
だが今からまた捨てに行くのは忍びないと思い、
とりあえず今晩だけは自分の部屋に白猫を泊めることにした。

「優美(ゆみ)お嬢様」
優美は召使に起こされ目を覚ます。
そこは巨大でレトロなお屋敷だ。優美はすでに両親を亡くしており、家族は偏屈な祖父だけ。
広い食堂で、祖父と二人だけの寂しい朝食を済ませる。
そしてお勉強の時間となった。優美の部屋へ、教育係の「砂原(さはら)」という小説家の男がやってくる。
砂原はお屋敷に居候している。
優美の具合が悪そうなので、砂原は勉強は中止にしましょうと言い、
自室に帰って小説の続きを書き始める。

午後、広い庭へテーブルと椅子を持ち出し、お茶の時間となる。
周囲には誰もいない。今がチャンスだ、とキミは思う。
“おい、瞳!”
『ふふっ、バレたか』
今朝目が覚めた途端、自然に優美になりきっていた、と瞳は言う。
“ここはどこなんだ?夢なのか?”
『私にもわからない。でも、お嬢様になれるなんて、滅多に出来ない体験よね』
瞳はお屋敷の中を探検してみることに。その途中で、白いかわいい猫と出会う。
その猫は、砂原が飼っている「雪風」という猫らしい。
大した収穫もなく、瞳は眠りに就いた。

翌日。目が覚めると元に戻っていた…ということもなく、相変わらずあのお屋敷の中だ。
『いつまでもこのままでいいわけない、よね?元に戻るには、どうすればいいんだろう』
“何か、現実につながるものを探すんだ。”
『現実に…そうだ、雪風のことね』
瞳は雪風を探し回るが、見つからない。

また次の日。瞳は書斎に行く。そこには「もう一人の私」という本がある。
タイトルが気になったので、瞳はそれを読んでみることにする。
なんと、その本の中には、瞳とキミのことが書かれている。
『でも、現実とちょっと違う。温泉旅行が海外旅行になってたり。でも、ほとんど同じよ』
その本の作者は砂原だ。
砂原は、現実での出来事を小説の中の出来事にすることで、瞳とキミをこの世界に閉じ込めた。
現実を小説に、そして小説を現実にすりかえてしまったのだ。

瞳は砂原の部屋へ行った。そこに雪風がいたが、砂原はいない。
瞳は砂原の書きかけの原稿を読む。そこに書かれていたのは優美というお嬢様の話だ。
【とあるボロアパートの一室。砂原は雪風を抱き上げる。
「僕の作品を理解してくれるのは君だけだ。さあ、僕たちの小説の続きを書こう」砂原は雪風に言う。】
「書きかけの原稿を読むなんて、いい趣味とは言えませんね、瞳さん」
「砂原さん、私たちを元に戻してください!」
「ここにいれば、現実の辛いことも全て忘れていられるというのに…」
「こんなこと、続けてはいけないと思います」
「こうでもしなきゃ、僕の作品は誰にも読んでもらえない」
瞳の説得に、砂原は耳を貸そうとしない。
「雪風は、一人でも多くの人に読んでもらおうと、この世界を作ったんです。あなたのために」
雪風の名を聞いて、砂原は思い直したようだ。
砂原は、自分はもう死んでいることや、最後の原稿が心残りだということを話す。
と、瞳はランプを倒してしまい、辺りは火に包まれる。
「あっ、原稿が!!」
「もういいんです、瞳さん。ありがとう。ここまで読んでくれたのは、あなたが初めてです」
砂原は炎に包まれながら笑う。

5月28日(木)

キミと瞳は、現実の世界で目を覚ます。
瞳は明円に連絡する。砂原から言われたことを話し、砂原の原稿を探すよう依頼する。

6月2日(火)

砂原の原稿は、砂原が言った通りの場所にあった。
ただ不思議なことが一つある。その小説の主人公は優美ではなく、瞳になっていたのだ。

第五章 終わり


6月4日(木)

夏子の元へ向かう。
「じゃあ今日は、約束通り、彼の記憶を遡らせてみるわね」
夏子は瞳に催眠術をかけ、キミの意識を浮かび上がらせた後、さらに催眠術をかける。
キミの記憶は過去へと飛び、ついに瞳と出会う前まで遡る。
【マンションのカギを開けて部屋の中に入っていく。床に、胸を血に染めた女の人が倒れている。
女の人を抱きかかえて揺するが、もう事切れている。】
【パジャマ姿の女の人が病院のベッドに腰掛けて、ぼんやりと天井を見ている。】
【カーテンをレールから外していく。青い表紙のファイルから中身の紙を取り出し、
折りたたんでカーテンの縫い目の間に入れる。】
「どう?何か見えた?」
“青いファイルを、カーテンに隠した。”
「それが何を意味するのかはわからないけど、とりあえず、
あなたにとって重要なことなのは間違いなさそうね」


第六章 メリーゴーランド

6月12日(金)

《こんばんは!》
夜、瞳が眠った後、突然、何者かがキミに話しかけてくる。
《あなた、あたしがわかる?》
相手はどうやら女性のようだ。
“誰だ?”
《あっ、ごめん。今日は時間ないの。もう行かなくちゃ。また明日ね》
“おい、ちょっと!”
キミは叫んだが、相手はもう答えない。

6月13日(土)

瞳は目を覚ますと、大慌てで支度をして家を飛び出す。
駅前で真理子と待ち合わせし、映画館へ。やがて、映画が始まる。
【遊園地のメリーゴーランドの前に、女性が待っている。しばらくして、男性がやってくる。
女性は男性に迫るが、男性は拒絶し、去っていく。女性は泣き崩れる。】
《ハーイ♪》
“君は昨日の…。”
昨日キミに話しかけてきた女性が、また話しかけてきた。
『え?何?誰なの?』
《こんにちは。あなた、瞳ちゃんよね?あたしは「渡瀬鈴(わたせ りん)」。
一度、あなたたちと話がしたかったの。パパがね、あなたたちのこと話してたから。》
キミと瞳は、鈴と話をする。
鈴は、他人の精神や残留思念と自由に交信できるという、テレパシーのような能力を持っている。
鈴はキミに、自分と同じように他人と会話出来ないかと聞く。
“僕は、瞳と話すことしか出来ないよ”
《そう?でも、あなたたちも見えるんでしょ?人の記憶や未来なんかが。
あたしと同じ能力だと思うんだけどなー。パパが、アナザーマインドって呼んでた能力。》
“アナザーマインド…?”
『ねぇ、パパって誰なんですか?』
《パパはあたしの父親みたいな人よ。ね、明日、デートしましょ。
海浜公園で午後1時に待ってるから。それじゃ、バイバイ!》
鈴は言いたいことだけ言ってコンタクトを打ち切る。
気が付くと映画は終わっていた。

“明日、どうする?”
夜、キミは瞳に話しかける。
『気が進まないけど、鈴さんに会って、話を聞かないと』
“そうだな。アナザーマインドのことも気になる。”
「アナザーマインド」という言葉は、今の自分の状態にピッタリだと、キミは思う。

キミと瞳は海浜公園で鈴を待つ。帰ろうとする瞳をキミはなだめる。
鈴は30分遅れてやってきた。
「ごめんなさい。待ち合わせとか慣れてなくて…」
鈴はそんな言い訳をする。
「あたし、ずっと寝てたの。植物人間ってやつ」
鈴は自分のことを語る。17歳のときに水難事故に遭い、それから3年間意識不明だったこと。
そして半年前に目を覚ますと、件の能力が使えるようになっていたらしい。

「ねぇ、あたし、行きたいところがあるんだけど…」
鈴は瞳を遊園地に連れて行く。鈴は自分勝手、良く言うとマイペースだな、とキミは思う。
鈴は絶叫マシンに乗ろうと誘う。キミに異存は無いが、瞳はそういった乗り物が苦手だという。
「もっと他のに乗りません?ほら、メリーゴーランドとか…」
瞳がそう言うと、鈴は悲しそうな顔をする。
「あれは、見てるのがいいのよ」
結局、瞳は鈴によって強引にジェットコースターに乗せられてしまう。
日が暮れる頃、メリーゴーランドの前へ行く。ライトアップされているメリーゴーランド。
なるほど、見てるのもいいな、とキミは思う。
「知ってる?このメリーゴーランドに一緒に乗ったカップルは、別れるってジンクスがあるのよ」
鈴はそんなことを言う。
“ってことは、これに乗ったら僕と瞳が…。”
『えっ?ち、違いますよ。私たちはカップルとかそんなんじゃ…』
「ふふっ、嘘よ」
そのとき、ビジョンが見える。
【メリーゴーランドの前に、女性が待っている。しばらくして、男性がやってくる。
女性は男性に迫る。男性は女性にそっと口づける】
昨日と似た幻覚だが、少し違うのは何故か、とキミは考える。
「見たんでしょ、あたしの記憶」
鈴が言う。
『あの女性、鈴さんに似てましたね』
“うん。確かに、あれは鈴だ”
「さてと。瞳ちゃん、今日はありがと♪」
鈴は別れを告げ、去っていく。

6月15日(月)

『待ち合わせに慣れてない人は、移動時間を考えに入れてないんです。
だから、待ち合わせに遅れてしまう。鈴さんは30分遅れて来たから…』
“なるほど、それで、ここなのか”
鈴にもう一度会おうと、キミと瞳はショッピングモールへとやって来た。
瞳の推理だと、鈴は海浜公園から30分移動したところに住んでいることになる。
とりあえず、ショッピングモールを歩いてみる。やがて、端にたどり着く。
そこにはフラワーショップがある。
「いらっしゃい。今日はかすみ草が安いですよ」
瞳に話しかけてきたのは、鈴だった。いや、よく見ると、鈴とは雰囲気が違う。
「あの、鈴さんですか?」
「私、鈴の姉で玲(れい)と申します。鈴は双子の妹です」

鈴と玲から話を聞く。
「3年前、私たち、海難事故に遭いました。私は助かりましたが、鈴は意識不明になりました。
途方に暮れていたところへ、あるお医者様が、画期的な治療法があると言われて…」
「それがパパよ。天才医学博士、桐原育生(きりはら いくお)」
「それで、その治療法を施したら、私の意識の中に鈴の精神が感じられるようになったんです」
『それって、私たちと似たような状態ですね』
“そうだな。”
「桐原先生は、その状態のことをアナザーマインドと呼んでいました。
しばらく経った後、鈴の精神を鈴の体に戻しました」
「そして、あたしが目を覚ましたら、その能力が使えるようになってた、っていうわけ」
そのとき、電子音が鳴り響いた。玲が持っていたポケベルが鳴っていたのだ。
それは、玲と交際中の「良介」という男性からの呼び出しだ。
玲は良介の元へと向かう。

残された鈴はキミたちに語る。
2年前、鈴が玲の意識に入り込んでいた頃、玲は良介と出会った。
奥手な玲に鈴がいろいろアドバイスしたお陰で、玲は良介と付き合うようになった。
「でも、あたしが戻ったら、すっかり邪魔者扱いなんだもん」
“鈴は良介が好きなんだな。”
鈴はキミの問いには答えず、話を続ける。
鈴は目を覚ました後、玲のフリをして良介に会いに行ったが、見破られてしまったという。
キミは似ているが結末が違う2種類のビジョンの意味を理解する。
男――良介にフラれて泣いていたのが鈴で、良介とキスしたのが玲だ。
「それじゃあね。今日は帰る」
鈴は去っていく。

第六章 終わり


6月17日(水)

キミと瞳が図書館にやって来るのも、もう何度目になるだろう。
その度に新聞を調べてみるのだが、全て徒労に終わっていた。
新聞を閲覧していく。閉館時間が近付き、今回も徒労かと思い始めた頃、
それらしい記事を見つける。
1月8日、冴子という27歳の女性が自宅の朝日台マンションで胸を刺されて殺されていた。
第一発見者の兄が警察に通報した。
以前見たビジョンと状況が同じだ。
『それじゃ、やっぱり、あの女の人は、あなたの妹だったんですね』
“そうみたいだな。でも、確証がない。写真があれば…。”
それから2ヵ月後、3月の新聞記事に、ついにキミの名前を発見する。
新聞社に勤めている32歳の冴子の兄――キミに、冴子を殺した容疑がかかっているが、
行方不明になっていると書かれている。
“僕は、妹を殺したのか…?”
『あのビジョンが本当なら、そんなはずないです。あんなに悲しかったのに…』
“やっぱり、写真、だな。明円にでも頼んでみたらどうかな?”
『わかりました。明円さんに頼んでみます』
瞳は明円に連絡し、冴子の写真のことを頼む。


第七章 明かされた過去

6月19日(金)

キミと瞳は明円の事務所へ向かう。そこには明円の他に鳴海がいた。
明円から写真を受け取る。
「やっぱり…」
マンションで死んでいた女性、そして病院のベッドに腰掛けていた女性は、キミの妹、冴子だった。
「それで、何がやっぱりなんだい?話してくれないかな。もちろん、口外はしないよ」
「わかりました。信じてもらえないかも知れないけど、話します」
瞳は明円と鳴海に、キミのことを説明する。
「なるほどな。おれは信じるよ。職業柄、不思議なことには幾つも遭遇してるんでね」
明円は信じると言った。鳴海も信じると言う。
実は鳴海は、この殺人事件を担当していたのだった。鳴海は、キミは犯人ではないと考えていたらしい。
「冴子は精神病を患っていて、看病疲れが殺しの動機とされている。
だが、彼はそんな素振りを見せていない」
冴子は、医療機器メーカーに勤めていて、とあるプロジェクトに参加していた。
ある日、冴子は精神薄弱状態で発見された。
冴子は病院に入院していたが、キミは冴子をわざわざ引き取り、自分のマンションで面倒を見ることにしたという。
そんな人は妹を殺さないだろう、と鳴海は言う。
冴子が参加していたプロジェクトが怪しいと、鳴海は睨んでいるらしい。
そのプロジェクトは、「精神医療開発センター」という施設の所長である桐原がリーダーを務めている。
『桐原って…』
“鈴が言っていた、パパのことだ。”


6月21日(日)

桐原の話を聞こうと、鈴と玲に会いにショッピングモールの端のフラワーショップへ。
そこには誰もいない。
「あれ?玲さん?いませんか?」
そのとき、瞳は何者かに後ろから襲い掛かられて、気を失う。

6月22日(月)

瞳は目を覚ます。そこは、今は使われていない倉庫だ。
“大丈夫か、瞳?”
『大丈夫。怪我とかはしてないみたい。でも、手も足も縛られてて…』
外には見張りとしてチンピラが二人立っているのが見える。
瞳は辺りを見回す。
“瞳、あそこの廃材から釘が飛び出ているだろ?あれでなんとかならないか?”
『やってみます』
瞳は這って廃材に近付き、手を縛っているロープを釘にこすりつけた。
こすり続けること2時間弱。ついにロープは切れた。足を縛っていたロープも解く。
それから、キミと瞳は逃げる算段を始める。そのとき、チンピラが倉庫内に入ってきた。
瞳がロープを切っているのを見て、チンピラは逆上し、瞳に襲い掛かる。
そこへ鳴海刑事がやってきて、チンピラを倒し、瞳を連れて逃げる。
倉庫を出たところで、車が通りかかる。
「乗りたまえ。さぁ、早く!」

瞳と鳴海は、夏子の元へと連れてこられた。二人を車に乗せたこの男が、桐原博士だ。
桐原から話を聞く。
5年前、桐原がリーダーとなってアナザーマインドプロジェクト、略してAMPが発足した。
人の脳細胞に磁気的な刺激を与えて、精神的疾患を治療する。
そんな研究をすることを目的としたプロジェクトだった。
とある医療機器メーカーと協力し、装置が完成した。
健常者の脳と患者の脳を繋げて、異常個所の修正を施す装置だ。
そして2年前、昏睡状態の患者にその装置が使われた。その患者はアナザーマインド状態になった。
それは鈴と玲のことだな、とキミは思う。
アナザーマインド状態となった者の意識がシンクロするとき、
何らかの超常的な現象が発生することがわかった。
そして、患者に再び装置を使い、患者の意識を元に戻すと、患者はアナザーマインド状態を得た。
つまり、その装置を使えば、マインドコントロール可能な超能力者をいくらでも生み出せるということだ。

AMPは桐原の手を離れて勝手に動き始めてしまった。
桐原は、装置を作った医療機器メーカーに勤めていた冴子と協力し、AMPを中止させようとした。
だが、冴子は捕まり、実験台にされた挙句、廃人同様になってしまった。
桐原は、キミと連絡をとり、このことを新聞で告発しようとした。
しかし、冴子は殺され、キミは殺人の濡れ衣を着せられてしまった。
桐原はT大学付属病院の黒川医師にキミを託した。黒川は、桐原の古い友人だという。
だが黒川は既にAMPに買収されていた。黒川は、病院の患者を使って人体実験を行っていたらしい。
黒川はキミを装置に入れ、記憶を消した。そして、瞳にキミの意識を移した。
意識を失ったキミの体は暴走した。
あの病院での夜、瞳を追いかけてきたのは、自我を失ったキミの体だった。
瞳の中のキミの意識に、キミの体が引き寄せられたのだ。
その事件で警察が騒ぎ出したので、黒川はAMPに始末されてしまったらしい。
キミの体はたぶん、AMPの手に渡っていることだろう。

「どうして、警察に通報しなかったんですか?」
そこまで聞いて、瞳は桐原に疑問を投げかける。
「証拠が無いんだ。人の精神を他人に移動させるなんて、荒唐無稽な話を警察が信じるとは思えない。
だが、冴子君が持ち出した資料がどこかにあるはずだ。青いカバーのファイルなんだが…」
【冴子はキミに、青いカバーのファイルを渡す。】
「桐原博士、彼は以前、こう言っていました。青いファイルをカーテンの中に隠した、と」
夏子の言葉に、桐原は目を見開く。
「それだ!早速向かおう」
桐原は夏子と一緒に、朝日台マンションへと向かう。

第七章 終わり


第八章 隠したもの 隠されたもの

6月23日(火)

夜の12時を回り、日付が変わる。瞳は鳴海と、桐原と夏子の帰りを待つ。
キミは桐原のこと考える。瞳を助けに来たとき、やけにタイミングがよかったのが怪しい。
それと、冴子がキミにファイルを渡したときのあの目は、何かを訴えているような…。
“二人とも、遅いな…。”
『そうですね。こんなとき、あの幻覚が見えればいいのに…』
“そうだ瞳、桐原博士は、「意識がシンクロするとき超常的な現象が起こる」って言ってたよな?”
『ええ』
“だから、僕たちの意識がシンクロするようにすればいいんだよ。同じことを考えるとか。”
『そうですね。やってみましょう』
キミと瞳は夏子のことを考える。すると、ビジョンが見える。
【桐原は夏子を謎の施設へと運び込む。】
「鳴海さん、精神医療開発センターって、どこにあるか、わかりますか?」
「わかるけど、どうして?」
「たぶん、夏子さんはそこにいます」

瞳と鳴海は精神医療開発センターへと駆けつける。
「それで、夏子さんはどこへ?」
ビジョンに従い、2階の部屋に行くと、そこに夏子が横たえられていた。
夏子を助け起こす。どうやら記憶を消されたりはしていないようだ。
「さぁ、帰りましょう、夏子さん」
「まだよ。ここには彼の体がある」

キミと瞳は意識をシンクロさせ、キミの体がある部屋を探り出す。
そこには、CTスキャンに似た謎の装置に入れられた男の体がある。あれがキミの体だ。
そして、傍らには桐原が立っている。
「よくここがわかったな」
桐原がAMPを中止させようとしたというのは、真っ赤な嘘だ。
冴子を殺したのも、キミに濡れ衣を着せたのも、桐原だ。
桐原は、事情を知る者を排除しようと、黒川を殺し、瞳を誘拐した。
そして今、キミに危害を加えようとしている。
「そのへんでやめといたらどうだ、桐原」
やってきたのは明円だった。
「ファイルを回収して、夏子さんの記憶を消せば、それで済むと思ったのか?
彼は、ファイルのコピーを残していたんだよ」
追い詰められたはずなのに、桐原は笑っている。
「それで私を追い詰めたつもりか?私を自由に出来るのは、私だけだ」
桐原は懐から毒物が入った瓶を取り出し、中身を一気に煽る。桐原は息絶える。

6月25日(木)

いよいよ、この時がきた。
瞳はT大学付属病院に行き、謎の装置の前に立つ。
『元に戻るの、うれしいはずなのに、何だか寂しいような気がします』
“僕も、寂しいよ。”
『元に戻っても、私のこと、忘れませんよね?』
“もちろん!”
瞳は装置に入る。キミの意識は暗闇に飲み込まれる。

第八章 終わり


第九章 アナザー・マインド

7月3日(金)

真っ暗な世界に突然光が射す。ここは、病院だ。瞳がこちらを覗き込んでいる。
「気が付いたんですね」
「ああ、瞳か…」
「私、一週間前に目が覚めたんです」
「まさか、毎日お見舞いに来てくれたのかい?ありがとう」
何だか様子がおかしい、とキミは思う。この体は自分のもののはずなのに、動かせない。
“おい、瞳!”
キミは瞳に呼びかけてみるが、もちろんその声は届かない。
『これがアナザーマインドか。興味深い感覚だな』
キミの意識に男が語りかけてくる。
『私が誰か、わかるかね?』
キミは考える。キミより先に、キミの体の中に入ることが出来た人物。それは――。
“桐原、か?”
『正解だ。桐原育生はここにいる。君は自分の体を動かすことも出来ず、
ここで死ぬまで傍観することになる…』

7月8日(水)

キミの体を乗っ取り、キミになりすました桐原は退院し、朝日台マンションへ。
そこで、桐原は恐ろしい計画をキミに語る。
鳴海刑事や夏子や明円、そして瞳。事情を知っている邪魔者を全て殺し、AMPを復活させるという。
『AMP――増幅。精神を増幅させるのだ。まさに、正鵠を射た名前だろう?』
“みんなを殺すなんて…そんなことさせるか。止めてみせる!”
『君に何が出来るというのだ。まぁ、大人しく見ていたまえ。
手始めに葉山瞳、あの小娘を排除するとしよう』
桐原はキミのフリをして、瞳に電話をかける。
「やぁ、瞳ちゃん。明日、どこかへ行かないか?デートのやり直しをしよう」
“瞳、来ちゃダメだ!”
『無駄だよ。君の声は彼女には届かない』

7月9日(木)

何も知らない瞳は、待ち合わせ場所の喫茶店へとやってくる。
「こうして面と向かって話をするのも、何だか新鮮だな」
「えっ、やだ、そんなにじっと見ないで下さいよ」
キミになりすました桐原は、瞳としばらく話しこむ。
「それにしても、いろんなことがありましたよね。
退院した後、初めて学校に行った日とか、もうずいぶん昔のことみたいで…。
そうだ、あの落書きのこと、覚えてます?」
『落書きとは何だ?答えたまえ』
“あれは確か、四角形の落書きだったな”
「ああ、あれは四角形だったよね」
「違いますよ。三角形だったじゃないですか」
『後で覚えておきたまえ!』
こんな調子で、キミは桐原の質問に嘘をつき続けた。

「今、私の前にいるあなたは、まるで別人みたい。あなたは、誰なの?」
瞳は桐原を睨む。
「や、やだなぁ。僕は僕だよ。瞳ちゃんが一番よく知ってるじゃないか」
「…そうだ、あの約束、覚えていますか?」
『約束とは何だ?』
“約束なんて、していない。”
『本当だな?』
“本当だ。”
「…ああ、確か、君に服を買ってあげる約束だったね」
「うれしい、やっぱり覚えててくれたんですね。あ、ちょっと、トイレ行ってくるね」
瞳が席を外した後、桐原はキミに語りかける。
『見たかね?まんまと騙されて。所詮、子供だな』

瞳と桐原は喫茶店を出る。
「ちょっと、ここへ寄って行きましょう」
瞳はひと気の無い公園へと桐原を誘う。
「少し、歩きませんか?」
散歩道を歩いていく。
「桐原!」
背後からの声に、桐原は思わず振り向く。それは明円の声だった。
桐原は、いつの間にか夏子や鳴海や真理子たちに取り囲まれていた。
「引っかかったな、桐原」
「わ、私は桐原では…」
「嘘。本当の彼は、そんな話し方しないわ」
瞳は語る。
「桐原さん、私は彼と何の約束もしていないんです。
でも、その約束が無いことが、逆に彼と私との約束になっていたんです。
あなたは、喫茶店で何度も言い間違えた。
それは彼が、私との思い出を守ろうとして、嘘をついたんだと思います。
でも、あなたは最後に彼の本心までも疑って、ありもしない約束をしゃべった。
それが、決定的だったんです。こんなこと出来るのは、桐原博士しかいない。
そして、トイレに行くフリをして、みんなを呼びました」
「おれが名前を呼んだら、あっさり振り向いたな。もう言い逃れは出来ないぞ」
“桐原、これは僕と瞳の、絆の勝利だ!”

第九章 終わり


エピローグ

数日後。キミは病院のベッドの上で目を覚ます。
「気が付いた?」
瞳がこちらを覗き込んでいる。
「瞳…」
キミは、今度こそ本当に、自分の体を取り戻したことを確認する。
桐原は、キミの体の中から出された後、コンピュータのメモリの中に入れられたという。
「瞳、僕が退院したら、どこかに行こう」
「そうですね。今度こそ、デートのやり直しです」

Fin


88 :ゲーム好き名無しさん:2010/07/31(土) 10:19:02 ID:VZifCSJs0
アナザーマインド乙です。
鈴って死ななかったっけ?


95 :ゲーム好き名無しさん:2010/07/31(土) 13:07:57 ID:8mPLsnnI0
>>88
条件によっては生きている。
死ぬパターンでも鈴を殺す必然性がストーリー上全く感じられない
よって鈴は死んだとも生きてるとも明言していない模様





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