ゴースト トリック

・part56-403、part57-14~21,23~32,34,76~80,82~94,96~104

 

・part53-340~343(途中まで)


403 :ゲーム好き名無しさん:2011/05/11(水) 20:27:32.91 ID:REm+ymCq0
ゴーストトリックできました。
前任の方の文章が独特なのと、伏線の確認が煩雑なので、最初から書いています。
全18章です。

15 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:36:11.41 ID:REm+ymCq0
【PM7:02 ゴミ捨て場】
主人公が目を覚ますと、目の前に赤い髪の女が立っていた。
そして、黒服の男が彼女に銃をつきつけていた。
女性を見殺しにするのは主義に反する。しかし、助けられない事情があった。
主人公は、一足先に死んでいたのだ。

二人の中間地点に、尻を高く上げて無様にくずおれている、
真っ赤なスーツにサングラスのトンガリ金髪…これが自分だろう。
何しろ、この場―大きなゴミ捨て場―で死んでいるのはこの男だけだから。
黒服が引き金を引こうとしている。気の毒だが、どうしようもない。

「…のんびり死んでいる場合ではございません…
 あの方を救えるのは、アナタ様だけでございます。」
声が語りかけてくると同時に、世界が一変した。
時が止まり、黒い男と赤い女も静止した。
声曰く、これが死者の世界。流れる時から任意に外れることが出来る。
色調が暗く沈んだ世界に、鮮やかに燃えている青い炎が一つ。
倒れた主人公の体に宿っているそれは、死者の<タマシイ>。つまり今の主人公そのものだ。
そして、あちらこちらに灯る小さな光は、様々な物の<コア>だと声は説明する。
声によれば、死んでタマシイになった主人公は、物のコアに<トリツク>と、
それを<アヤツル>ことができるらしい。
それが死者の<チカラ>なのだという。

習うより慣れよということで、女を助けることにする。
時の流れに戻り、間髪いれず、すぐ傍の廃棄された遮断機に<トリツク>。
そして<アヤツル>と、遮断機はバーを跳ねあげ、黒服の銃を弾きとばした。
しかし、黒服は落ちてきた銃を受け止め、女の足元を撃った。
走りだしていた女は、少し離れた地点でまた両手を上げて立ち止まった。

依然ホールドアップはされているが、極めて地味に女の運命は変わった。
また時の流れから外れ、別の物にとりつくことにする。
遮断機のバー部分にとりついていた主人公は、バーが上がった事で随分高い位置にいた。
少し離れた所に巨大な鉄球が吊り下がっている。
あれにとりついて黒服の上に落っことしてやりたいのだが、
どうやら、タマシイは物を離れて自由に移動する事はできないようだ。
しかも、とりつけるのは現在地点から手を伸ばして届くほどの範囲にあるものだけらしい。
仕方ないので、近場のゴミ山の上にあったギターにとりつき、
弦を掻き鳴らすと、黒服は振り向きギターを撃ち落とした。
その隙に駆けだした女は、2mも行かずにまたホールドアップされた。
全く逃げ足の遅い女だ。

ギターが落とされ転がった事で、主人公は自分の死体の傍にいた。
ちょうどいいので自分にとりつき、あやつろうとしたが、動かない。
「残念でございますね。アナタ様があやつれるのは<物>だけ。
 ナキガラは、死んでいても<物>ではないのです。」
しかし、他にはとりつける位置にコアが無い。
万事休す。女は黒服に撃たれ、下の階に落ちて行った。
残念ながら、彼女を救うことはできなかったようだ。

16 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:37:33.25 ID:REm+ymCq0
地下階にある公衆電話が突然鳴り始めた。
ここは地上1Fで、手前側には床が無く、地下へ吹き抜けているようだ。
黒服は階段へ向かう途中、主人公の死体を下に蹴り落とした。
死体のあった場所には、バスケットが一つ置かれていた。
なるほど、バスケットの上に倒れていたから、あんな屈辱的な姿勢だった訳だ。

落された主人公の死体は、ちょうど粗大ゴミのソファに座った格好になっていた。
黒服は、鳴っている公衆電話に出て誰かと話し始めた。
「片付きました。すぐ戻ります。」
言葉通り黒服は去っていき、その場には死者だけが残された。
「残念でございましたね。」
すぐそばの電気スタンドが、キコキコと首を回して語りかけてきた。
どうやら、こいつが先程の声の主らしい。
彼曰く、正確には声ではなく、死者同士は意識が伝わるらしいが。

電気スタンドの向こうには、赤い髪の女が倒れている。
主人公の死体からは、何かオーラの様な物が漏れ出ているのに対し、
彼女の死体からは何も出ていない。
これは、死者のチカラを持つ者と持たない者の違いらしい。
誰もが死後に物をあやつれるわけではないのだ。
しかしその力が何になろう。結局彼女を救うことはできなかった。

「今のところは、でございます。」とスタンドは訂正する。
このチカラで、既に死んでいる彼女を助けることができると言うのだ。
主人公は電気スタンドの誘いに乗る事にした。
理由は二つ。女性をゴミの中に転がしておくのは主義に反するから。
そして、死んでしまった自分には失うものは何も無いからだ。

スタンドから教わった、もう一つの死者のチカラ、
それは他者の死体にトリツクことで、その死の4分前に戻れるというチカラ。
これで4分前に戻れば、何度でも彼女の運命をやり直すことができる。
彼女にとりつくと、彼女のタマシイ―青い炎を感じた。
主人公のように、死後しばらくはタマシイも意識を失なうそうだ。
眠っている間に、助けてやるとしよう。

17 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:38:53.16 ID:REm+ymCq0
【PM7:01 ゴミ捨て場】
彼女の死の4分前―主人公のタマシイが目覚めるより1分前。
彼女は、主人公の死体をゆさぶっていた。
「なんてことなの。もう死んでいる…」
その後ろから、あの黒服が彼女に銃をつきつけた。
「殺し屋って訳なの?でも、どうしてこんなことを?」
「この国に、<アシタール>の痕跡を残すわけにはいかないそうだ。」
「あしたーる…?」

残りの3分は以前と同じだ。遮断機が上がり、ギターが鳴り、彼女は死ぬ。
もう一度4分を巻き戻し、行動を開始する。
4分間のスタート地点は、元々死体があった場所だそうで、
今の主人公は二人からはるか離れた地下階のすみっこにいた。
タイヤを転がしたり扇風機を回したり、色々な工夫しながら移動していく。
なんとか彼女が撃たれる数秒前に地上に辿りつき、自転車のベルを鳴らした。
黒服の隙をついて彼女は走りだし、またホールドアップされる。
ほんの小さな変化だが、これで希望が生まれた。
こうやって、繰り返し繰り返し死を回避し、失敗すれば4分を巻き戻して、
彼女の運命を変えていく。

※現実世界では、ドットアニメーションでリアルタイムに4分間が進んでいきます。
 任意に時間を止められますが、物をあやつっている間は時がたちます。
 タイミングを見計らいながらトリツクとアヤツルを繰り返し、
 何度も4分を巻き戻しながら、試行錯誤して誰かの死を回避していくゲームです。

詳細は省くが、クレーンを操作して鉄球を黒服の上に落とし、
黒服はひしゃげて鉄球と共に地下に転がり落ちていった。
赤い髪の女はホっとしてへたりこむ。
主人公は今夜イノチを落とし、一つのイノチを救ったのだ。
「さようでございます。アナタ様はやってくださったのです!
 ワタクシの見込んだ通りに!」

命の終わりに私が助けた女。見知らぬ女。そこまで考えて、主人公は愕然とした。
この女を知らないが、他にも誰も思い出せない。
それどころか、自分が何者かさえ。
それより何より、自分は何故、殺されたのか?
「アナタ様の物語は、まだ終わってはいませんよ。」
キコキコとくねりながら、電気スタンドはのたまうのだった。

18 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:40:47.97 ID:REm+ymCq0
クネクネした電気スタンドは、「クネリ」と名乗った。
本名を明かす気はないようだ。
クネリ曰く、死者は死の衝撃で記憶を失うが、思い出すケースもあると言う。
彼は、自分の死の4分前に戻ろうとする主人公に、
「時間逆行は、自分のナキガラにだけは使うことが出来ないのでございます」と告げる。 
そしてタマシイは、一夜が明けた朝に消滅するのだと…。
それなら、せめて主人公は知りたかった。
自分が何者なのか、何故ここで死んだのかを。
クネリは、赤い髪の女を示した。
確かに、彼女は主人公の死を目撃していたと思われる。とっかかりには最適だ。
それどころか彼本人を知っているかもしれない。
「そう、彼女は今夜の<全て>のカギを握っているのでございます。」

降り出した雨に打たれて、彼女はくしゃみをしている。
女性が雨に打たれているのを放っておくのは、主義に反する。
カサにとりついて開き、彼女の元へフワリと降下した。
思惑通り彼女は、とりついた主人公ごとカサを手に取り歩き始めた。

彼女は階段を降りて、主人公の死体を調べ始める。
どこから現れたのか、主人公の死体の傍らに、黒ネコが座っていた。
真っ赤なスカーフを巻いた美しい黒ネコは、一鳴きして雨の中を去って行った。
彼女は主人公の死体から一枚のメモを抜き取った。
主人公もメモにとりついて読んでみようとしたが、
それより早く、公衆電話が鳴りだして、彼女はメモを畳んでしまった。
この電話は、彼女の運命が変わる前に、黒服が出ていた電話だ。
この向こうに、主人公の殺害を命じた犯人がいる。

クネリが、最後にもう一つ死者のチカラを伝授してくれた。
死者は、電話を通じて今つながっている電話の向こうや、
知っている電話番号の向こうへ飛ぶことができるらしい。
クネリは、一緒に来ないと言う。
「ワタクシのチカラはもう消えかかっているのです。
 アナタ様に一つのお願いをする為に、最後の力をふりしぼってここまで来ました。
 この街では今夜、ある出来事が起こっている。
 その真の姿を、アナタ様につきとめていただきたいのです。」
主人公は、約束はできないと言った。
朝までしか時間がない。自分の物語を優先して追っていきたいのだ。
「それで十分でございます。それはいずれにしろ、”同じコト”なのでございますから。」
こうして、自分の物語を知るための一夜の追跡劇が始まった。

19 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:45:36.03 ID:REm+ymCq0
第2章『PM7:31』

電話の主は、軍服を着た外国人の老人だった。
奇妙に豪華な小部屋で、大きなファイルを手にしている。
それは、あの赤い髪の女のデータファイルだった。
どうやら、彼女も彼らのターゲットの一人のようだ。
ファイルにとりついて読んでみようとしたが、外国語らしく全く読めない。
ただ、老人と部下らしき巨漢の会話から、
彼女の名前が<リンネ>だということは分かった。
そして、彼らは主人公の姿もスクリーンに映し話し始めた。
「<シセル>か…。あやつが信用できるか極めてあやしいからの。
 あやつとのトリヒキが成功すれば、ワレワレは世界を変えるだろう。」

<シセル>。それが自分の名前らしい。確かに心の奥にひっかかる名前だ。
それにしても私め、一体何を企んでいたのか?
この小部屋はやたらに機械仕掛けで、随分テクノロジーが進んでいる。
どうも、こいつらは全く知らない国の者達の様だ。
あちこちいじり回しているうちに、老人に電話がかかってきた。
「どうやら片付いたようですね。ミス・リンネが。」
巨漢の言葉にギョッとする。またリンネは死んでしまったのか。
電話にとりついて、会話を聞いてみる。
命令を受けた殺し屋が、リンネの自宅からかけてきたようだ。
リンネはまだ帰っていないので、待ち伏せするらしい。
それを阻止する為、電話線の向こうへ飛ぶ。


電話線の向こうは、中々綺麗に片付いたマンションの一室だった。
さっきと別の黒服が、銃を持ってソファに座っていた。
そこには、アンラッキーなレディがまた一人。
小さな女の子が、クリスマスツリーの電飾で縛られていた。
レディを守り切れなかった小さなサムライといったところか、
玄関でポメラニアンが一頭死んでいた。

とりあえずそのポメラニアン君に話しかけてみる。
青い炎がポメラニアンにも宿っていた。
「ココは一体ッ!?そしてボクは誰なのでしょうかッ!」
死者は記憶を失い、自分の形が思い出せない内は炎の形を取るようだ。
主人公も、自分の死体を確認してから、誰かと会話する時は人の形を取れるようになった。
「あっカノン様!ボクの大切なカノン様がッ!!
 一生をかけてお守りしようと誓った、大好きなカノン様がッ!
 お守りする前に、ボクの一生がッ!いつの間にか終わっているなんてッ!」

「あっはじめまして!ボク、ミサイルっていいますッ!
 ポメラニアン、2歳、やってましたッ!」
彼のタマシイは、愛らしいポメラニアンの形を取った。
やはり、個人差はあれ死者は記憶を取り戻せるのだ。
それにしても、自分の死より主人のピンチを気にかけるその心意気、嫌いではない。
この小さなイノチを助けるため、死の4分前に戻るとしよう

20 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:49:33.03 ID:REm+ymCq0
【PM7:20 メゾン・ド・ナムアミ 701号室】
4分前に遡ると、ミサイルのタマシイが一緒についてきていた。
時間逆行には、他のタマシイも一緒に連れていけるようだ。
では、一緒に彼の最後の4分間を鑑賞する事にする。

彼のご主人、カノン嬢がテレビをつけると、ミサイルが興奮して吠えはじめた。
すると、隣室のゴージャスなマダムが、怒って壁を叩き始めた。
こちらの家具が揺れるほど強く壁を殴りつけ、
「今度吠えたら、壁ごとふみつぶす!」と怒鳴るマダム。
カノンはテレビを消し、ミサイルをなだめる。
「吠えちゃダメでしょ、ミサイル。
 テレビが見れないとちょっとさみしいな…。そうだ、音楽でも聞こうかな。」
カノンは背伸びしてヘッドホンを壁かけから取り、大音量で音楽を聞き始めた。
そして、ドーナッツを食べながら本を読み始めた。
ドーナッツが床に落ち、ネズミが現れてそれを食べ始め、
ミサイルがそれに興奮して吠えかかる。マダムが怒って壁を叩く。
そして黒服の男が玄関のドアを蹴破った。その全てに、ヘッドホンをしているカノンは気付かない。
黒服に駆け寄ったミサイルは、あえなく撃ち殺されてしまった。


「アンタがあの男の足を噛みちぎるのが手っ取り早いと思うが?」
「あっ多分それ、無理です!ボク、お客さんが来ると、
 ようこそッッッッ!!!!みたいな気持ちになっちゃうものですからッ!」
では、レディにご助力を賜ろう。その為に邪魔な物は…。
カノンが背伸びしてヘッドホンを取る瞬間、
真上にかかっていた折り畳み傘にとりついて取っ手を伸ばし、
ヘッドホンを水槽の中に弾き落した。
「うう、まいったなぁ、おねえちゃんこのヘッドホン買ったばっかりなのに…
 ミサイル、あんたが壊したことにしておこうね。」
これで、運命が少し変わった。

それにしても、キャンキャンとよく吠える犬だ。
そしてミサイルが吠える度に、カノンはミサイルに寄り添って優しくなだめてやる…ということは。
皿を揺らしてドーナツを一つ床に転がし、テレビ台の扉を勢いよく開けて、
寄って来たネズミごとドーナツを、ソファの下にはたき込んだ。
それを追ってソファの下でミサイルが吠えはじめ、なだめる為にカノンもソファの下に潜り込んだ。
「もう、ダメでしょミサイル。こんな所まで入り込んで…」
その瞬間、黒服が扉を蹴破って踏み込んできた。
カノンは驚き、ミサイルを抱き寄せてソファの下で息を殺した。
黒服はソファに腰掛け、「エモノは必ず戻って来る…」と呟いた。
これで新しい現在が生まれた。カノンもミサイルもまぁまぁ無事だ。
ミサイルのタマシイは、感激して礼を言いながら、現在へ帰っていった。

21 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 20:54:20.96 ID:REm+ymCq0
電話が鳴り、それを取った黒服は、
リンネがまだゴミ捨て場から帰りそうにないという報告を聞いて、出て行った。
カノンが怖々ソファの下から這い出すと、また電話が鳴った。
「出ない方がいいのかなぁ…?」
迷った末取ると、それはリンネからの電話だった。
「カノン、そこにいるとアナタもあぶないかもしれないの!
 オナクナリ通りのレストラン<キッチンチキン>まで来て!
 それとね、オルゴールを持ってきて欲しいの!その部屋に隠してあるんだけど、」
隠し場所を言う前に、ハトを頭に乗せたおじいさんが、リンネの肩をたたいた。
リンネの悲鳴に驚いたカノンが受話器を放り出し、水槽に落としてしまった。

カノンがオルゴールを探すのを、陰ながら手伝うことにする。
ただ、記憶を失っているので、オルゴールという物がどんな物なのか分からない。
探している途中、ミサイルにコアがあることに気付いた。
今まで、生きている者にコアは見えなかったのだが…。とりついてみると、
「あッ!!アナタはッッ!!またお会いできましたねッ!」
ミサイルは死の記憶を持っており、主人公の事も覚えていた。
一度助けた元死者にはコアが生まれ、意識を介して会話ができるようだ。
オルゴールとは、天井裏にある木箱のことらしかった。ハッチを開けてツリーの上に落としてやる。
カノンはオルゴールを抱え、ミサイルを置いて出かけて行った。

ここで問題が一つ。おてんばなレディが電話を壊してしまったので、
主人公もリンネの元へ移動できなくなってしまった。
主人公は、壁ごしに物にとりつき、隣室へお邪魔する事にした。

23 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:23:30.25 ID:REm+ymCq0
第三章『PM8:02』

壁際に物が無いので、ちょいとミサイルに吠えてもらい、
マダムの壁叩きで家具を倒して、とりついて移動できる物の道を作った。
カノン嬢を助けに行きたいと言うミサイルに、「道は作るものだ。そうだろ?」と返す。
玄関のドアに猛然と体当たりを始めたミサイルに別れを告げ、隣室に移動した。

そこは、変にゴージャスなお部屋だった。
大邸宅の一室を、無理やりこの小さなマンションへ詰め込んだかのようだ。
先程の精力的なマダムが、ワイングラス片手にタイプライターを叩いている。
「今宵こそは神聖なるシメキリの夜。
 ワタクシの天使ちゃん、ちゃんとおクスリを飲んで寝ていなさいね。」
見れば、ベッドでは麗しき小さなレディが一人、鼻を垂らしていた。
そして、その横の吊り棚には電話が。
かなり遠いが、試行錯誤して電話の元へ向かう。

母娘の会話を聞いていると、小説を書くことを反対されたマダムが、
旦那さんを置いてこのマンションに家出しているようだ。
そして、今日は旦那さんの誕生日で、小さなレディ<エイミン>はパパに電話をかけたがっている。
一度、旦那さんから電話がかかってきたが、マダムが叩き切ってしまった。
旦那さんの所へ飛んでみると、軍服を着た中年男性が、立派な執務室でしょぼくれていた。
中々興味深い人間模様だが、今はリンネを見失わない事が肝要だ。
電話から急いでゴミ捨て場に飛んだ。


ゴミ捨て場の公衆電話についてみると、警察が主人公の死体を調べていた。
クネリにリンネの無事を確かめると、
「あの方なら無事でございます。何しろ、先程タイホされましたので。」
全くトラブルの多い女だ。刑事達の会話を聞いて情報を集める。

監察医によれば、主人公の死因は胸に受けた一発の銃弾。
その容疑をかけられているリンネは、新米刑事らしい。
それで今から、リンネを可愛がっているお偉い捜査官が現場に来るとか。
話していると、その捜査官が颯爽と自転車をこいで現れた。

白いロングコートに赤いマフラーをなびかせた、キザなダンディだ。
踊るようにステップを踏みながら登場した彼は、<カバネラ>警部。
捜査に入る前に、カバネラは公衆電話から一本電話をかけた。
その先は公園の公衆電話で、カバネラの部下が張り込んでいるようだ。
カバネラは電話を切ると、リンネが保護されている管理人室へ踊り去った。

24 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:24:30.25 ID:REm+ymCq0
一応公園に飛んで様子を見てみると、機材を積んだワゴン車を停めて、刑事が一人待機していた。
目をキラキラさせた変な男に、
「コウエンの宅地化反対!神のイシを守れ!!ワレの話をお聞きください!!」
とビラを押し付けられ、大変難儀しているようだった。
少し見物してから、すぐにゴミ捨て場に戻る。

監察医が、凶器のピストルを見つけてトレイに置いていた。
これは刑事が持つ型のピストルらしい。リンネの嫌疑が濃くなるだろう。
その時、どこかから銃声が聞こえた。同時に公衆電話が鳴りだした。
電話の主はカバネラ警部。場所は管理人室。
新たな死が電話の向こうに横たわっているのだろう。管理人室へ飛ぶ。


第四章『PM8:32』

予想通り、リンネは死んでいた。
カバネラの目の前で、窓の外のゴミ山から狙撃されたらしい。
リンネにとりついてみると、彼女のタマシイは目を覚ましていた。
君はあの刑事だ、と教えてやると、リンネは自分の姿を取れるようになった。

リンネは、熱血で突っ走るタイプの新米刑事だった。
主人公<シセル>のことは、知らないと言う。「こっちが教えてもらいたいくらいよ!」
見ず知らずの主人公が、今夜リンネをこのゴミ捨て場に呼び出したらしい。
主人公が撃たれた時も居合わせたらしいが、よく思い出せないと言う。
何が何やら全くわからない。
とりあえず、今までの全ての事をリンネに話した。
「君を今からまたヨミガエらせるから、私が誰なのか朝までに調べてくれないか」と依頼するが、
「ゴメンナサイ。私、私にとってダイジな事件を追ってるの。
 だから、朝までに他のことをする時間はないと思う。本当にゴメンナサイ。」と断られた。
まっすぐなお嬢さんだ。
彼女を救うため、二人で4分前へ戻る。

【PM8:28 ゴミ捨て場管理人室】
その死の4分前。
リンネは管理人室で一人、手帳を見ながら電話をかけようとしていた。
そこに制服警官が入ってきて、リンネは慌てて手帳を本棚の裏に隠す。
「お腹空いて、出前を頼もうかなーなんて…」と誤魔化すリンネに、
制服警官が「チキンステーキ」を電話で頼んでくれた。でも取り消してもらう。
そこに踊るように飛び込んできたカバネラ警部。
警官を外に出し、リンネと二人で意味深な会話を始めた。
カバネラ率いる特別捜査班は、今夜重大な任務についている。
一方、リンネはシセルに「今追っている事件の手がかりを教えるといって呼び出された」と主張するが、
カバネラによると、リンネは今これといった捜査には関わっていない。
「ベイビイを疑ってる訳じゃないよ。
 ただキミに万一の事があったら、<アイツ>に申し訳がたたないじゃないか?」
「教えてください、カバネラ警部。<今夜>なんじゃないですか…?」
その時、カバネラが窓の外の何かに気づき、
「ふせるんだ!」とリンネに飛びかかろうとした。だが一瞬遅く、リンネは撃ち殺された。

25 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:25:07.58 ID:REm+ymCq0
とりあえず、警官が出前を頼む通話を覗いてみると、
そこがかのレストラン「キッチンチキン」だった。カノン嬢は無事だろうか。
今は、狙撃者のいるゴミ捨て場の電話に移動したい。
だが、どうやら巻き戻しの4分間は、通話状態の電話先にしか飛べないらしい。
スタンドライトにとりついてくるりと回し、
警官が本棚の横に来た時に、リンネが隠した手帳を照らした。
警官は、リンネが手帳を隠したことに気づき、ゴミ捨て場の刑事に電話で報告した。
その電話線を通じて、首尾よくゴミ捨て場に飛ぶことが出来た。

ゴミ捨て場で、リンネのタマシイにクネリを紹介する。
リンネにもクネリは電気スタンドに見えるようだ。あくまで正体を明かす気は無いらしい。
地上まで物伝いに移動し、リンネを狙う黒服を探照ライトで移動させて、
クレーンの真下へ誘導し、コンテナを落してやった。
これで、二人目の黒服を片付けることが出来た。
リンネの死は回避され、彼女のタマシイは新しい現在に戻っていく。

リンネにもミサイルにも、この死者のチカラはなかった。
二人はうらやましがったが、主人公には二人の方がうらやましい。
彼らの死は、何度でも主人公が助けてやれるが、主人公を助けてくれる死者はいないのだ。
このチカラの理由も、今晩分かるのだろうか。

とにかく、リンネを見失うのはまずい。公衆電話から管理人室へ飛ぶことにする。

26 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:32:51.32 ID:REm+ymCq0
第五章『PM8:34』

リンネは全く行動的な女だった。
イノチを取り戻してわずか数分の間に、刑事達の手から逃げてしまったのだ。
刑事は、リンネの手帳に書いてあった電話番号にかけてみる。
リンネを見失った主人公は、とりあえずその向こうに移動した。

そこは、警備員のような男が二人いる事務所のような場所だった。
記憶を失った主人公にはよく分からないが、
モニターで「涼しげだがプライバシーは全くない狭い小部屋が沢山並んでいる」所の住人達を監視しているようだ。
刑事には、警備員の様な二人は係官と呼ばれている。
生真面目で抜けている中年のセンパイと、
それををダルそうにおちょくる若造のコウハイという二人組だ。

二人の会話を聞くに、リンネは毎日ここへ電話をかけてくるらしい。
噂をすると、またリンネから電話がかかって来た。
「お願い、あのヒトと話をさせて!」
「今晩は無理なのですよ、9時から電話室に予約が入ってるんでありまして…」
リンネはがっかりしながら、この電話を秘密にしてくれといって切る。
係官二人が、リンネの電話を通報しない事を確認してから、
主人公は、今入手した電話番号へ飛んだ。

なんとまぁ、この数分でリンネは死んでいた。
ここは、さっきのゴミ捨て場管理人室の地下、ハトを頭に乗せた管理人さんの私室の一部のようだ。
早速リンネのタマシイと合流し、4分前に戻る。

【PM8:30 管理棟地下室】
新たな現在に帰ったリンネは、警官とカバネラが来る前に、
管理人室の片隅にあった小さな荷物用エレベータに器用に潜り込み、地下階へ逃げた。
エレベータ横の地下室の中では、暗闇の中管理人さんがランタンで辺りを照らしていた。
「この部屋を闇で閉ざしてから何年たつかな…。
 闇の中でこそ、解ける謎もあると思ったが…。」
出てくる管理人さんを、エレベータに入ってやりすごす。
リンネが地下室に入って電気をつけると、そこはパーティーの飾りつけをした一室だった。
電気のスイッチを入れたことで、ピタゴラスイッチのような物が始まった。
天井のファンが回り、巻き取られた紐が何やかやして、
最終的に天使のオブジェが持っている矢に火が付き、天使がくるりとこっちを向いて、
壁に飾ってある拳銃に火矢を放った。中の弾が暴発し、リンネを直撃した。

27 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:33:18.59 ID:REm+ymCq0
黒いピタゴラスイッチとでもいおうか…。
だが、物がリンネを殺したのなら、こちらもやりやすい。
天使の火矢が別の方向に飛んでくれれば済む話なので、
仕掛けをいじりながら天使の方向を変えようと試みる。
結局、床のハッチを開けて坂道を作り、仕掛けの役目を終え床に転がったボールを、
壁にかかったショベルを回転させて打ち出し、天使に当てて向きを変えた。
逆を向いた天使がテーブル上に火矢を打ち込むと、
導火線に火が回り、ケーキのろうそくに火が灯ってクラッカーが鳴った。
無人の部屋の突然の歓待に、リンネが目をパチクリさせている。
リンネのタマシイは、新しい現在に戻っていった。

生き返ったリンネは、空中に視線を彷徨わせ、主人公を呼んだ。
リンネにもやはり最初は無かったコアがあり、意識を通じて話すことができた。
リンネは、もう解決していて犯人も捕まっている過去の事件を追っているらしい。
何故なら、結末にどうしても納得がいかないから。
そして、その事件は明日までに解決しなければならないらしい。
詳しくは教えてくれない。主人公を信用しきれないそうだ。
無理も無い。生前の自分は、随分うさんくさい男だったようだ。

主人公は、リンネに<利用し合う協力関係>を申し出る。
ギブアンドテイクで情報提供し合おうという申し出だ。
リンネは、刑務所―さっき係官が二人いた所に潜入して、
<D99>という番号の囚人の、<明日の予定>を見てきてほしいと頼む。
独房の隅の小さな黒板に、その囚人が明日やらされる作業の予定が書いてあるそうだ。
主人公は了承し、二人は別れる。
待ち合わせ場所は<キッチンチキン>。カノン嬢が心配だ。
リンネはハッチから地下道へ抜けて去って行った。
ゴミ捨て場地下に這い出て走っていくリンネを、クネリがキコキコと見送っていた。

28 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:35:08.27 ID:REm+ymCq0
第6章『PM9:03』

また愉快なコンビが詰めている部屋に戻って来た。
独房とやらがどこにあるか分からないので、色々情報収集をする。

センパイのメモによると、<C79の定期検査>の予定があるようだ。
コウハイに聞かれ、センパイが語って聞かせる所によれば、
”C79という巨漢の囚人は、警視総監室に忽然と現れ、総監を人質に立てこもった。
 火炎放射器をつきつけて、要求はなんと「カレーを5杯」。
 頭のニブイ大男が、どうやって総監室に侵入しおおせたのか、完全非公開の<機密>扱い”らしい。
もう一つのメモは、<C38を電話室へ>。これが電話室の先約か。
センパイがコウハイに聞かせる所によれば、
”C38こと若造の囚人は、ロックンローラーなのだが、
 あるライブで、この国の暗部―国家予算の不正流用や他国との取引等を観客の前で歌い上げた。
 一介のロッカーが、何故国家機密を知る事ができたのか。完全非公開の<機密>扱い”らしい。

中々個性的な囚人たちだ。
目指す<D99>についてのメモも貼ってある。<D99にディナー>。
D99の事件は、コウハイ君も知っているらしい。
「奥さんを…撃ち殺したんすよね。家族の前で…。
 ありえないっすよ!なんで、あの人が…!」
珍しく、感情を露わにするコウハイ。しかしD99の事件も<機密>らしい。
センパイ曰く、ここは<そういう>刑務所なのだそうだ。

二人の会話から、D99にはヒゲが生えている事が分かった。
これでそいつを探しやすいだろう。
隣の電話室に、<C38>が来たので、物伝いに近づく。
C38ことロッカー少年は、エレキギターを掻き鳴らしながらやって来た。
ちょうどいいので、ギターにとりつく。
思惑通り、電話を終えた少年は、ギターごと独房へ運んでくれた。

ザ・牢屋。といった鉄格子の独房だが、家具の持ち込みはかなり自由なようだ。
ロッカー少年の独房は、ドラムセットやらバスケットゴールやらでごちゃごちゃしている。
隅の壁に、リンネの話通り小さな黒板がある。
試しにロッカー少年の予定を読もうとしてみたのだが…。
今宵主人公は記憶を失くしたが、それは今まで学習した知識にまで及ぶようだ。
文字が、全く読めない。何て書いてあるのか、まるで分からないのだ。
これでは、D99の予定をリンネに伝えられないが…行くだけ行ってみよう。

29 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:36:16.56 ID:REm+ymCq0
ロッカー少年の独房の壁には、○と×が書かれた2種類の大福帳がかけられていた。
看守が去ったのを確認して、少年は○の紙を1枚破り、トイレに流した。
試しに、非常ベルを鳴らして看守を誘き寄せると、少年は×の紙を流した。
紙の行方を見てみると、階下の独房の床下へ下水パイプを流れ、
その独房の便器から垂れている釣り針に引っ掛かった。
脱獄用の穴をほっていた大男が、糸の吊ってあるベルの音に気づいて独房に戻り、
糸を上げて×を確認すると、シャベル代りのスプーンを放り投げてベッドに横になった。
面白いアイディアだ。少年に紙を流させ、その紙にとりついて下水を流れ、
男の投げるスプーンに乗って部屋の隅へ。
壁越しに移動した横の部屋には、立派なひげの男。
これが、<D99>か。

ピンクのスモックを着た、体格のいいヒゲ男が、
大きなキャンバスに油絵を描いていた。こちらからは絵の内容は見えない。
黒板を見てみると、そこには何も書かれていなかった。
文字が読めないが、任務は果たせた。彼の予定は未定だ。
それにしてもこの男が、家族の前で妻を撃った男…。
しかしありがたいことに、この男もリンネとの因縁も、自分には関係ない。
さっさと電話からキッチンチキンへ行こう。
そう思った時だった。件の”ディナー”がD99に運ばれてきた。
ディナーであるチキンの丸焼きを運んできた係官も、D99を知っているようだ。
「ジョード刑事…お聞きしておきたかったのですが、その絵は、一体誰なのでありますか?」
「忘れたくない奴の顔を描いておくことにしてるんだ。コイツはその最後の一人さ。」
食事を取る為に、<D99>ことジョードがキャンバスをこちら向きにたてかけた。
そこに描かれていたのは、真っ赤なスーツにサングラスのとんがり金髪…。
主人公その人だった。

何もかもわからない。
分からないが、リンネの追うものと主人公の追うものは確かに交わっている。
内線から看守室に戻り、キッチンチキンに移動しようとした時、
警察本部から電話がかかってきた。カバネラ警部だ。
カバネラは、リンネを<逃亡犯>として探しているらしい。
「例の件はとどこおりなく進んでいます。1時間後…です。」
センパイがそう報告して電話を切り、コウハイが毒づく。
「カバネラ警部、ジョード刑事の親友だったんでしょ?一度くらい面会に来たっていいっしょ!」
「お忙しいんですよ、特別捜査班長さんは…」
よりによって、今夜に…と二人はぼやく。今夜1時間後に何かが起こるようだ。

30 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:37:39.67 ID:REm+ymCq0
一応警察本部に飛んでみると、本部長とカバネラが話し合っていた。
「刑務所の準備は順調のようだな?」
「まぁね。ポイントXはとーーっくに監視させてあるし、
 奴が現れて捕まえられたら、まだ間に合うさ。」
「こんな大事な夜に、何故事件が重なるのだ!
 …そういえば、ゴミ捨て場の件は、本当に彼女がやったのかね?」
「こんなものを見ちゃうと、ね。」
カバネラが放り出したリモコンにとりつき、再生してみる。
それは、あのゴミ捨て場を映した監視カメラの映像だった。

手にバスケットを提げた主人公が、リンネと向き合っている。
主人公はフェンスにもたれかかり、何かをリンネに言ったようだ。
リンネはひどく驚き、懐から銃を取り出して構えた。
人に銃を向けたことなどないのだろう。手をガクガク震わせながら、一発足元に威嚇射撃した。
主人公は全く動じない。
リンネは構え直してもう一発撃ち、主人公は地面に倒れ伏した。
もう一度死んだような気分だった。
自分を殺したのは、リンネだったのだ。

本部長は、映像を見直して疑問を呈する。
「撃たれた場所と、死体発見場所が違うようだが?」
主人公の死体を蹴り落とした黒服は、運命の変更で途中退場した。
しかしまた、主人公の死体は落とされてソファに座っている。
カバネラが心得顔で映像を早送りした。
主人公の死体が何かに押されて、手前側に転がり落ちていった。
正体は、バスケットのフタ。中から何かが主人公を押しのけてフタを開けたのだ。
出てきたのは、真っ赤なマフラーを巻いた黒ネコだった。
黒ネコは、夜の街へ走り去ったという。

突然、警報が鳴り始めた。スピーカーから捜査員の声が響く。
「カバネラ警部!大変です!
 ポイントXに、リンネ刑事が現れました!!」
「バカな!!我々が長年かけて割り出した場所だぞ!?
 とにかく、ベイビイを早くポイントXから連れ出してくれ!!!」
また突然、スピーカーから耳をつんざくような破壊音が聞こえ、それきり応答が無くなった。
リンネは、キッチンチキンに向かった筈なのだが…
カバネラ警部がポイントXにかけた電話にとりつくと、出たのはシェフだった。
ポイントXは、キッチンチキンだったのだ。
大慌てで警察の救援を要請するシェフの元へ、電話線を飛ぶ。

31 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:39:51.51 ID:REm+ymCq0
第7章『PM10:05』

いやはや全く、ココで何が起こったのか…
レストラン<キッチンチキン>は壊滅的に崩壊していた。
パっと見、リンネの姿は見当たらないが、彼女の事だ。
何か想像を絶する形で巻き込まれ、このどこかで死んでるだろう。

すぐ目に付いたのは、ガラスを突き破って店内に突っ込んでいるワゴン車と、
フロントガラスを突き破って死んでいる運転手さんだ。
これは、あの公園で待機していたワゴン車と刑事さんではないか?
よく探すと、リンネは超巨大チキン型オブジェの下敷きになって死んでいた。
話しかけると、タマシイは元気に返事をした。

情報交換と言うことで、リンネに主人公殺害の事を問い質す。
リンネは、主人公が死ぬ瞬間の記憶が無いと言う。
主人公に何を聞いたのかも、自分が主人公を撃ったのかすら思い出せないと言う。
D99ことジョードの予定が未定だったことを話すと、
リンネは予想外に強いショックを受けた。
「刑務所で、明日の作業予定が未定ってどういうことか分かる?
 …明日は来ないからよ。今晩、処刑されるということなの。」
ジョードは妻を撃ち殺し、自ら死刑を望んだ。
でも、この国では何年も死刑は行われていないのだ。こんなことは間違っている。
そもそも、ジョード刑事が妻を殺したことすら、リンネは信じていないらしい。
リンネは、ジョードを助けて話を聞く為に動いていたのだ。

ここがポイントXだったことは、リンネは知らなかったらしい。
主人公の死体を調べた時、見つけたメモに、
「今夜10時、キッチンチキン」と書かれていたから来たそうだ。
では、警察が張っていたのは、主人公だったのだろうか。

「これからどうするの?アナタの目的は果たされたわけでしょ。
 犯人に復讐する?簡単だよね。このまま、私を助けなきゃいいんだもの…。」
だが、主人公はリンネを助けることにした。
まだ、自分を取り巻くナゾは解明されていない。
それを解くには、リンネの協力が必要なのだ。
「わかった。”ありがとう”はまだ言わない。”ごめんなさい”も。
 私も、あなたの<コタエ>を見届ける!」
リンネと共に、彼女の死の4分前へ戻る。

32 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 22:42:20.60 ID:REm+ymCq0
【PM10:00 キッチンチキン】
リンネは、レストラン<キッチンチキン>の隅のテーブルにいた。
「あのトンガリさん、こんなとこで誰と会うつもりだったんだろ?
 …まだかなぁ、私の肉。」
お腹が空いているらしく、恨めしげに天井のチキン型オブジェを見る。
割と広い店で、時間が遅いせいか1Fにはリンネしか客がいなかった。
ローラースケートをはいたウェイトレスが、
ワゴンを押してエレベーターに乗り、2Fバーカウンタにチキンの丸焼きを届けた。
もう一度降りてきて、奥に引っ込み、リンネの所へ来ようとした時。
リンネは窓の外の異変に気付き、ウェイトレスに駆け寄って突き飛ばすと、
自分も幾度かバック転で転がり後ろへ下がった。
間髪いれず、ガラスを突き破って、ワゴン車が突っ込んできた。
一息ついたリンネの上に、支えていたチェーンが切れた巨大チキンが降って来た。


圧倒的迫力な死に方だ。
ウェイトレスを助けなければ、リンネは死なずにすむのだが…。
「ムリだよ、だってあたし刑事だもん。」
では、とりあえず色々調べてみよう。

リンネのテーブルのベルを鳴らしてウェイトレスを呼び、
ウェイトレスのワゴンにとりついて、2Fに運んでもらう。
チキンが運ばれたバーカウンタには、あからさまに怪しい二人組が居た。
妖艶な美女と、軽薄な小男。
「信用できるのかい、この取引は。」
「この国で、彼の予言通りの事件が起きたのは確かよ。
 国家機密を歌い上げる男、警察のトップを人質に立てこもった男…。」
彼らこそ、主人公シセルが待ち合わせた奴らでは?
とりあえず、彼らのでっかいトランクケースにとりついておく。
「どうしてアイツら、特殊刑務所の事知ってるの?
 どっちの事件も、機密事項として扱われてるのに…。」
主人公とリンネが話し合っていると、不意に美女が辺りを見渡した。
「場所を変えないこと?なんだか立ち聞きされてる気がして。
 アタクシ、そういうの強いの。<霊感>っていうの?」
二人は、座席下にトランクを忘れたまま、奥の席へ移動してしまった。
霊感持ちとは、手強い相手だ。

カウンタのベルを鳴らしてウェイトレスを呼び、
グラスを落してトランクに気づかせ、彼らに忘れ物を知らせてもらう。
このトランクはよっぽど重いらしく、小男は全身の体重を使って引き摺って行った。
これで、また二人の話を盗み聞ける。

34 :ゴーストトリック:2011/05/11(水) 23:06:26.40 ID:REm+ymCq0
しかし、美女はまた話を止めてしまう。
「話は二人きりの時しましょう。ここ、テントウムシがいるみたい。
 アタクシ嫌いなの。小さな虫は、ね。」
美女はライターで、チキンの丸焼きの一部を炙った。
その時、1Fにワゴンが突っ込んできた。
「ど、どうするの?もう私死んじゃうよ?」
最後の3秒。トランクから吹き抜け部分のチキンのオブジェにとりつく。
鎖が一本一本切れて降下していくチキン。
最後の一本が切れる一瞬前、高度が下がったチキンの目の前には、事切れた運転手が。
主人公は彼にとりつき、その死の4分前に飛んだ。


【PM10:00 公園】
運転手は、やはり公園の刑事だった。
公園から双眼鏡でキッチンチキンを見張っているうちにリンネが来店し、
ワゴン車の無線でカバネラに報告した。
そして、鳴りだした公園の電話に出て少し話すと、
ワゴン車に乗ってヘッドホンをつけ、キッチンチキンへ走り出した。
ヘッドホンからは、聞き覚えのある会話。
「アタクシ嫌いなの。小さな虫は、ね。」
次の瞬間、凄まじいノイズが耳をつんざき、彼は気絶した。
アクセルが踏まれたまま制御を失ったワゴンは、キッチンチキンに突っ込んだ。

あの美女が、チキンに仕込まれた盗聴器を炙って壊したのだ。
精密機械を破壊すると、大音量のノイズが発生する事があるらしい。
それを阻止して、刑事の失神を防ぎたい。

ここは、リンネが小さいころからある公園なのだそうだ。
「なつかしいな…。子供のころは、よく遊びに来てたの。
 でも、もう一生来ないつもりだった。」
リンネから暗い感情が意識を通じて伝わって来たが、理由を聞きそびれてしまった。

刑事の双眼鏡にとりついて電話まで行き、通話を聞く。
電話の主は、あのウェイトレスだった。
「どうしたメメリ、まだ定期連絡の時間じゃないぞ?」
「リンジュー刑事、2Fに怪しい二人組がいるんです!
 私、二人のチキンに、盗聴器を仕込んでみます!会話のチェックお願いしますね。」
ここに元凶がいた。電話を飛んでキッチンチキンの厨房へ行く。

厨房のテーブルには、チキンの丸焼きが二つ並んでいた。
大事件の火種が、片方のチキンにモタモタと仕込まれていく。
換気扇を止めて、ウェイトレスが煙たがって換気扇を回しに行った隙に、
テーブルを回転して、チキンを入れ替えてやった。
ウェイトレスは、盗聴器が仕込まれていない方のチキンをワゴンに積んで滑って行った。
「よしッ!これでどうだ!!」
主人公の快哉通り、刑事の耳に聞こえるのはシェフの鼻唄だけ。
リンジュー刑事は無事にキッチンチキンに辿りついたのだった。

76 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 19:06:43.10 ID:s7E15I120
新しい現在では、リンネが凄い勢いで丸焼きを食べ進め、
向かいでリンジュー刑事が肘をついてそれを眺めていた。
主人公は、改めてリンネと意識を通じて話し合う。
D99ことジョードは、リンネのヒーローなのだという。
10年前、あの公園で遊んでいたリンネは、何者かに人質にとられた。
「来るな!こっちに来たら、こいつを撃つぞ!!」
銃声のような音がして気を失い、目覚めるとジョード刑事がいた。
「おじさんが助けてくれたの?」
「おじさんは仕事をしただけだ。…助けてくれたのは、そう、神様だな。」
「おじさんのお仕事って?」
「おじさんは刑事なのさ」
その日から、リンネは刑事を目指した。ジョードはリンネの「理想の刑事」なのだ。

それにしても、カノンが来ない。
彼女がキッチンチキンに向かったのは、もう3時間は前のことだ。
オルゴールを持っていた事で、よからぬ事に巻き込まれたのだろうか?
あのオルゴールと言う木箱は、ジョードが逮捕直前にリンネに郵送した物で、
「事件が解決したら、<ある人物>に渡してほしい」と頼まれているらしい。

リンジュー刑事は、リンネを黙って見ている。
「どうしました?あっ私の食べっぷりにホレちゃったとか?」
「リンネ……俺にはどうしても黙ってることはできない…。
 ジョード刑事の処刑、今夜11時なんだ。もう、すぐだ。」
愕然として立ち上がるリンネ。
今さらもう中止は不可能だ。法務大臣の執行中止命令でも出ない限り。
リンジューにそう言われて、リンネは法務大臣執務室に行く為に飛び出していく。
「シセル!!ジョード刑事を助けて!!
 リンジュー刑事、お願い、カノンを探して下さい!あの子を守って!」
そう言い残して駆けていくリンネを見送り、電話から刑務所へ飛んだ。

77 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 19:13:55.03 ID:s7E15I120
第8章『PM10:55』
看守室は、真っ暗だった。
暗闇の中で、センパイが奇妙な踊りを踊っている。
「これは、我が家に伝わるアリガタイ踊りなのですぞ!
 どうしていいかわからない時に踊る”テンテコの舞”という」
コウハイの冷たいリアクションにも負けずに踊り続けるセンパイ。

どうやら、刑務所全体が停電してしまったようだ。
<処刑室>から電話がかかってきて、内線だけとりあえず復旧したが、
地下発電機の完全復旧にはまだ時間がかかると報告された。
独房のロックも開いてしまっているのだが、
会話によればこの刑務所には、元々あの3人しか囚人はいないのでそうキケンはないらしい。
「しかも、一番凶悪な奴はもういないじゃないっすか。」
「ああ…!それは言わない約束でしょう!」
一足遅かったようだ。内線を飛んで処刑室とやらに行ってみよう。

案の定、ジョードはもう霊安室に安置されていた。
主人公は試行錯誤して死体まで辿りつき、ジョードのタマシイに話しかける。
ジョードも記憶を失っていたが、リンネや処刑のことを教えると、ある程度記憶を取り戻した。
しかし、主人公のことは覚えていないと言う。
彼を伴って、その死の4分前まで飛ぶ。

【PM10:45特殊刑務所】
ディナーを終えたジョードの元に、処刑執行のため係官がやってきた。
係官達は、この処刑に納得がいっていないらしい。
「わが国では何年も処刑なんて行われていないじゃないですか。
 何故、法務大臣は執行書にサインを…?」
ジョードが連れられて行った処刑室には、コードの沢山出たイスが置いてあった。
ジョードをイスの脇に待たせて、係官がテストとして一度壁のレバーを引いた。
イスから火花が散り、爆発して、至近距離に居たジョードが吹っ飛んだ。

これが“処刑”とやらなら、もう少し安全な方法で行うべきだと思うのだが…
主人公がそう言うと、ジョードは大ウケした。
「記憶と失うと言うのは、悪い物でも無いな。
 世の中が面白く見えていそうでうらやましいよ。」
ジョードは、腹の据わったというか、人を食ったというか、相手をペースに呑む力を持っている。
死刑囚になってなお、係官たちに尊敬されていたのだから、大人物なのだろう。

78 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 19:16:12.62 ID:s7E15I120
ジョード曰く、あの処刑用のイスは長年使われておらず、配線だかホコリだかでショートしたらしい。
放っておけば爆発で死んでしまい、爆発を防ぐと処刑で死んでしまう訳で…??
「生まれてきてゴメンな。」心のこもってないジョードの合いの手をよそに、頭をひねる主人公。
そうだ、先に爆発させてしまえば、処刑はできなくなる。
しかも、停電でロックも開くという一石二鳥さだ。
ジョードの到着より早く処刑室にたどりつき、レバーを引いてしまおう。

長くなるので割愛するが、それはもう知略策略を巡らせて処刑室まで先回りした。
生者のように、自由に足で歩けないのは本当に不便なものだ。壁を通れるのは便利だが。
レバーを引くと、イスは爆発し、やはり停電もした。
格好のチャンスだ。生き返ったジョードを導いて脱獄させることにする。

第9章『PM11:13』

暗闇は死者には意味を為さない。
主人公が全体を見渡しながら、タイミングを図ってジョードをナビしていく。
シビアなタイミングと、複雑な逃走経路を攻略し、ジョードを外に出す。
主人公はとりあえず、内線電話から看守室へ戻った。
すると、間髪いれず電話が鳴った。コウハイが取ると、さっき別れたジョードからの電話だった。
ジョードは誰何するコウハイを無視して、「シセル君、いたらすぐ来てくれ」と言って切る。

飛んでみると、そこは刑務所のすぐ外の公衆電話だった。
実にシンプルな事実を物語る光景だった。
カバネラ警部が、ジョードに銃をつきつけていた。脱獄失敗、以上だ。
カバネラが、ジョードの為に刑務所の外から黙祷を捧げていたら、本人が出てきたわけだ。
連行される前に、ジョードの意識を通じて会話しておく。

ジョードは、主人公シセルの事を、話してくれなかった。
「何故なら、俺は君の本当の顔を知らなかったからさ。刑事として君に話せることは無い。」
そして、自分がリンネのいうような<理想の刑事>では無いと独白した。
幼いリンネを逃亡犯が人質にとった時、ジョードは様々なリスクを無視して撃った。
それもただ、まだ若く自分を抑えられなかったからという理由で。
リンネに当たらなかったのは不幸中の幸いであり、犯人はその場で死んだ。
「俺は人殺しなんだ。処刑がお似合いの男なんだよ。」

ジョードはカバネラに頼み、一本電話をかけてから連行されていった。
電話先は法務大臣執務室。出たのはリンネだった。
「行ってやってくれ。あちらでも何か起こっているようだ。」
ジョードを見送り、主人公も電話から、わびしく暗い夜道を後にした。

79 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 19:20:20.53 ID:s7E15I120
第10章『PM11:41』
そこは、あのゴージャスマダムの旦那さんの執務室だった。
珍しいことにリンネは死んでいなかったが、旦那さん―法務大臣が死んでいた。
リンネにジョード生還と脱獄失敗を報告して、
とりあえず大臣の死の4分前に戻る。

【PM11:31 法務大臣執務室】
法務大臣は、執務室で一人書類仕事をしていた。
電話がかかるなり受話器に飛びつき、
「エンマ!君か!?」と奥さんの名前を呼んだ。
だが人違いだったらしく、しかも最悪の用件だったようだ。
非常なショックを受けた様子で受話器を置き、すぐにどこかに電話をかけた。
だが、相手はでなかった。彼は身も世も無く悶え、身をよじり、憤怒と悲嘆にくれた。
そして、胸を押さえて苦しみ始めた。
「ク…クスリ…」机の端のクスリビンを弾いてしまい、ビンは部屋の隅まで転がってしまった。
「ミ…ミズ…」震える手は水差しも掴み損ね、水差しは床に落ちて割れた。
大臣はヒクヒク痙攣していたが、コテンと倒れて静かになった。

「オロカな男だ。ブザマな男と言ってもいいかもしれませんな。」
目を覚ました大臣のタマシイが、今の一幕を冷たく批評した。
気持ちよく忘れているようだが、あれがついさっきまでのアンタなのだが。
とにかく、水だけでも飲ませてやれれば少しはもつだろう。
そうしておいて、クスリビンを机まで届けてやればいい。

電話にとりついて、通話の内容をチェックしておく。
一度目の電話は、なんとあの美女からだった。
「ムスメさんをあずかったわ。ワレワレの要求は、すでに伝えてあるわね。
 今夜中の処刑よ。ワレワレは用心深いの。
 この情報が部屋から外に漏れたら、ムスメさんのイノチは無いわよ。アナタを監視しているわ。」
娘エイミンの誘拐を知らされて、大臣は非常なショックを受けた。
そして急いで妻の家出先に電話をかけたが、妻は出なかった…という訳だ。

発作を起こした大臣が水差しを落としそうになった所で、
机脇の大きな旗をはためかせて水差しを押し戻した。
大臣は水をたっぷり飲み、一息ついた。
これであと数分もちそうだ。その間に、どうにかしてクスリビンを運んでやらねばならない。
天井のファンを回して、飛んだ紙にとりつき、部屋の隅へ移動する。
そこで色々な物で仕掛けを作り、クスリビンを机へ弾き飛ばした。
大臣は薬を呷り、大きな吐息をつくと、立ちあがって晴れやかに歌い出した。
これで、新しい現在が生まれた。

80 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 19:22:47.72 ID:s7E15I120
新しい現在では、法務大臣をリンネがとっちめていた。
「何の証拠も無い、ただ自白だけの判決だったんですよ!
 アナタも、判決当初は処刑に否定的だった!なのに何故、急に執行書にサインを!?」
とりついていた甲冑の手を振り、リンネに気付いてもらう。
そして、今の質問の答え「あの怪しい二人組に何らかの脅迫をされていて、今夜新たにムスメを誘拐されたから」
という新情報を教える。
大臣も、一度助けてコアがあるので、リンネと主人公の会話が聞こえるのだが、
ユメだと言って信じてくれない。困ったおっさんだ。
小さなレディを見捨てるのは主義に反するし、誘拐事件を解決しなければ大臣の協力は得られまい。
先程かかってきた誘拐犯からの電話の先へ飛ぶ。


第11章『AM12:10』

そこは、デジャヴを催す一室だった。
あの、管理人室地下の部屋にあった仕掛けが、そっくりそのままその部屋にもあったのだ。
佇む美女の元に、小男がトランクをひきずってきた。
「アタクシ、外の空気を吸ってくるわ。見張り、よろしくね。
 トランク、開けておあげなさいな。アタクシ達の大事なお客さまよ。」
「オーライ、ビューティー。アンタの夢でも見てるさ。」
美女は、相当に手強い難敵だが、この小男ははっきり言って抜け作だ。
美女が退場してくれたおかげで仕事がやりやすい。
しかも、警察を振り切るのに疲れていた小男は、トランクを開ける前に居眠りを始めた。

たかが部屋を横切ってトランクを開けるだけのことが、死者には相当難しい。
仕掛けを使ってほとんどピタゴラスイッチの様にトランクに辿りつき、カギを開けた。

ガタンとトランクが開き、ギミックが展開してちょうど座イスのようになった。
そこに座って、本を読んでいるのは…なんと、カノン嬢だった。
法務大臣のムスメは、お隣のエイミンだ。
エイミンとカノンは友達で、部屋に遊びに行く事もあると、8時頃エイミンが母に喋っていた。
これはどうやら、この間抜けな小男が人違いをしたらしい。

小男は間抜けだが紳士で、カノンにジュースや本をくれる。
「汚い部屋でごめんよ、レディ。」
「汚いなんて言っちゃダメ!ここ、カノンのおうちなんだもん。」
「ご、ごめんよレディ!汚いのは、オジさんの心の方だったさ。」
戻って来た美女に、小男がこの取引場所について尋ねるが、
”取引相手の彼”が指定した場所で、5年前からこの家は空き家だ、と美女が答える。

事実が集まる度に、謎は深まっていくばかりだ。そして何よりも衝撃的な事実が一つ。
カノンに、コアがある。
とういうことは、あれからカノンは死んだのだ。
そして誰か他の死者によって蘇った。

82 :ゲーム好き名無しさん:2011/05/13(金) 21:48:00.45 ID:s7E15I120
今夜、主人公以外に動いている、チカラを持った特別な死者…。
気になる存在だが、カノンに話しかけてみると、彼女は死の事を覚えていなかった。
おそらく、タマシイが意識を取り戻す前に助けられたのだろう。
小さなレディに、忌まわしき死の記憶を掘り起こさせるには及ばない。

カノンに、この家のことを尋ねると、5年前まで住んでいた家だと言う。
ママの誕生日、カノンはお留守番中にあの仕掛けを作った。
ママが帰ってきて、電気のスイッチをつけて…そして、銃が暴発し…。
「あんなことになるなんて、信じられない…」
そう、正しく仕掛けが動作すれば何が起こるはずだったのか、主人公も知っている。
パパは、「パパが何とかするから誰にもこの事は言っちゃダメだ。お前は夢を見ていたんだ」
と言って、そしていなくなってしまったらしい。
…パパの名前を尋ねる。「ジョード。パパは刑事だったの…」

カノンは、<アシタール公園>を通ろうとしたところで、誘拐されてしまったらしい。
「おねえちゃんが、ここは怖いことが起こるって言ってたけど…近道だからと思って…」
それでも、攫われる間際、オルゴールを木の茂みに隠したらしい。

その時、美女が急に「場所を変えましょ」と言い出した。
「アタクシ、強いのよ。霊感っていうの。
 聞こえる?誰かさん。今度アナタの気配を感じたら、この子のイノチは無いわ。」
主人公を置いて、美女と小男、再びトランクに囚われたカノンは行ってしまった。
美女は、気配を幽霊だと断定し、しかも警戒している。
もしかして彼らは、死者の<チカラ>を知っているのだろうか…?

83 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 21:48:52.28 ID:s7E15I120
第12章『AM12:25』

法務大臣室に帰ってみると、リンネが大臣に詰め寄っていた。
しかし大臣は、現実逃避と絶望の間を行ったり来たりしている。
そこに、カバネラがジョードを連行してきた。
繰り広げられた愁嘆場や昔の話が終わるのを待ち、
リンネ、大臣、ジョードのコア持ち3人に、誘拐の人違いを教えた。
カノンが誘拐されたことに、動揺するジョード。
ジョードは5年前の事件を全て自分の罪にし、処刑されることでカノンを救おうとしていた。
しかし、そんなことをして楽になれるのは、ジョード一人だけだ。

カノンが作った仕掛けは、ありえない動きをした箇所が二つあった。
一つは銃。カノンの仕掛けには、銃は含まれていなかった。
もう一つが天使。カノンの設計なら、天使が回転する機能はなかったのだ。
今までは、ジョードはその理由を追求せず、とにかく罪を被る事しか考えていなかった。
しかし今夜、死者の<チカラ>を目にして、新しい可能性が浮上した。
物にとりついて動かし、ありえないように見える事を起こす死者。
そして、カノンを誘拐した連中は、その死者の存在を知っている。
5年前のあの日、あの部屋にはチカラを持った死者がいたのではないか。

「今夜、ムジツを証明しましょう!ジョードさんでもカノンでも無い真犯人を見つけるんです!」
リンネはそう主張した。ジョードは「いいアイディアだ。」と頷いた。
死に魅入られていた刑事さんにも、火が点いたようだ。
ジョードは5年前、自分の銃に偽装工作して提出し、
仕掛けに使われた銃は木箱に隠して、リンネに送ったと言う。オルゴールと偽って。
主人公は、カノンがそれを公園に隠したことを教える。
「私、取ってきます。シセル、誘拐事件の方をお願い!」

法務大臣は主人公の存在を「私の妄想かもしれない」と否定しており、
自分のムスメが誘拐された可能性を排除できない限り、処刑を中止する勇気は出ないようだ。
何度かけても妻は出ない。警告されているので警察に確認させることもできない。
カバネラに意向を問われ、大臣は「速やかに処刑を執行してください」と呻いた。
カバネラは護送車の手配を部下に命じ、腰を下ろした。
「護送車の手配には10分程かかる。今夜の脱獄はミゴトだった。
 また、キセキを見せてくれるのかな?」
いいだろう。死者の<チカラ>で、新たなキセキをお目にかけよう。

84 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 21:49:49.56 ID:s7E15I120
『第13章 AM0:51』
マダムの家出先へ飛ぶと、小さなレディ・エイミンはベッドにいた。
ちなみに、誘拐判明の時点でここに確認しに来た場合、エイミンはいなかったのだが…
「アタクシの天使ちゃんったら、まさかベッドを抜け出して夜遊びにいくなんてね。」
「パパの誕生日プレゼントを買いに行ってたんだもん。熱が下がってきて動けるようになったから…」
「それで、前より熱があがったというわけ。情熱的な天使ちゃんにカンパイね。」
エイミンは、誕生日の過ぎた大臣に電話をかけたがっている。
心優しきレディだ。そして彼女の願いが叶えば、誘拐疑惑も解決する。
電話はベッドの脇の吊り棚にあるのだが、エイミンは高熱で座った体勢が限界だ。
エイミンが買ったプレゼント、ライターを着火して、
電話のある段の吊り紐を焼き切り、滑り台のようにして電話を枕元に届けた。

喜んで電話をかけようとしたエイミンに、マダムが気付いてしまった。
「エイミン、今夜はダメなのよ。
 パパは、間違ったことをしようとしていて、ママはそれに気付いてほしいだけなの。」
「まちがったことって何!?パパはダイジンなんだよ!
 ママなんか、変な小説書いてるだけじゃない!!」
自分の官能ロマンス小説をバカにされてマダムがキレてしまい、電話は吊り棚のてっぺんに上げられてしまった。
しかも、マダムはこちら向きに座り、エイミンを見はるようになった。
電話の周りにはコアが無く、ライターはさっきの滑り台で床に落ちてしまった。
しかたないので、彼女の元に電話を届けるための策略を仕組んでいく。

まずは、マダムをなんとかしないと電話を届けても意味が無いのだが…
とりあえず色々いじって停電させてみると、
マダムは普段使わないロウソク式のシャンデリアを降ろして火をつけ、もう一度天井まで上げた。
このシャンデリアは巻き取りが少しバカになっていて、
ハンドルを回して降ろす時に、途中から一気に落下してくるという危険な代物。
これを、マダムに落っことせば気絶するのでは…。
マダムが席に戻ろうとした所に、ハンドルを回してシャンデリアを落下させた。
「ちょこざいな。」マダムはマトリクスばりに上体を反らし、シャンデリアを避けた。
手強いマダムだ。しかし負けられない闘いというものがこの世にはある。
息詰まる攻防の末、シャンデリアの輪の中にマダムを捉えることに成功した。

頭をジャストミートとはいかなかったが、
マダムのグラマラスな肢体とシャンデリアの直径はジャスト一致したようだ。
ピッタリはまってしまったマダムごと、シャンデリアを天井に巻き上げておく。
「ちょっと!何がどうなってこうなったのよ!」
ここからエイミンに電話を届けるピタゴラスイッチを組む。
簡単に言うと、マダムのはまってるシャンデリアの炎を、吊り棚てっぺんの紐まで持っていく。
棚は再び滑り台の如く、エイミンへ電話を届けた。

エイミンが電話をすると、大臣は飛びあがって驚き、落ち着きを取り戻した。
「エイミン、パパが悪かったんだよ。
 パパは、アヤマチを犯そうとしていた。でも、もう大丈夫だとママに伝えてくれ。」


85 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 21:50:26.23 ID:s7E15I120
法務大臣室に帰ってみると、意外にも部屋の空気は暗かった。
ムスメの無事を知った男にしては、法務大臣の心はちっとも軽くなっていないようだ。
主人公が大臣に話しかけると、大臣は主人公に礼を言った。
「あなたは死者なのですね。そして不思議なチカラでワレワレをアヤツル。」
「私の力は、人を操れる程強くはないがな。」
「本当は薄々気づいていたのです。<アヤツル者>の存在に。
 そして、あの刑務所は、<アヤツル者>を研究する為のものだった。
 3人の囚人は全て、犯罪の動機が無く、自力での犯行は不可能だったのです。」

カバネラにも聞こえるように、大臣は口に出して「自らのアヤマチ」を語った。
わが国での、最初の<アヤツル者>の影が見えた事件は、
「最も優秀な刑事が妻を殺した、不可解な密室銃殺事件。」
それを担当したカバネラが初めて、<アヤツル者>の存在を主張した。
それからずっと、カバネラは極秘任務として、不可解なチカラが働いた事件を追い続けてきた。
法務大臣は、ずっと<アヤツル者>の存在に否定的だった。
しかし今から一か月前。身をもってその存在を知ることとなった。
何者かに体を操られ、ジョードの死刑執行書にサインをさせられたのだ。
意思に反して体が動き、抵抗しようとすると、ガクガクと体が震えはするが止められない。
そしてサインをした後は、その時のことをよく思い出せなかった。
だが、カバネラの報告を聞いていた為、<操られていた>ことに気付いたのだ。
しかし、それを口に出すことができなかった。
こんなチカラを認めれば、この国の司法が崩壊する…そう頑迷な観念に囚われていたのだ。
事実から逃げ続け苦しんだ大臣は、妻に苦悩を見抜かれてしまった。
大臣から事の次第を打ち明けられたマダムは怒り、
「今すぐに執行を取り消し、事実を公表しなければ家を出ます!」と宣言した。

ずっと<アヤツル者>の存在を調べてきたカバネラに、大臣がその正体を告げた。
「今夜その正体がわかりました。彼らは死者。<タマシイ>だったのです。」
それを聞いたカバネラは驚き、<急用>の為にその場を走り去った。

主人公の他にも、チカラを持つ死者がいる。それは問題ない。
主人公にも、クネクネした電気スタンドの知り合いがいる。
しかし、この事件にかかわる未知の死者は、<人をアヤツル>のだ。
どうやら死者のチカラは、死者によって違うらしい。

その時、公園に着いたリンネから電話がかかって来た。
「説明しにくい状況なんです。シセル!そこにいたら、こっちに来て!」
お招きに与って、リンネの元へ電話線を飛ぶ。

86 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 22:09:12.98 ID:s7E15I120
『第15章 AM1:28』
アシタール公園では、リンネがしょんぼりしていた。
どこを探してもオルゴールは見つからず、代わりにとんでもない物を見つけたと言う。
示された先には、紡錘型の大きな石のオブジェが突っ立っていた。
よく見ると、その下で誰か死んでいる。
8時過ぎに、張り込み中のリンジュー刑事を困らせてた、変な男だ。
話しかけてみると、タマシイは起きていた。
「公園の宅地化断固反対!公園を守れ!神のイシを知れ!!」
鬱陶しいが、見つけてしまった以上、助けない訳にもいかない。
その死の4分前へ戻ってみる。

【PM8:35 アシタール公園】
変な男は、張り込み中のリンジュー刑事にビラを押し付けていたが、リンジューがトイレに行ってしまう。
その時、公園の逆の隅から悲鳴が聞こえてきた。
「むっ!今いくぞ!」
園内を知り尽くした動きで公園を横切る。
そして、そこにある茂みから、向こうの噴水広場を覗きこんだ。
そこには、カノンがいた。
あの小男が美女へ通信機で報告し、カノンを抱き寄せてさらおうとする。
カノンはとっさに、後ろ手に茂みへオルゴールを押しこんだ。
そのオルゴールを、茂みの向こうにいた変な男が受け取る形になった。
そしてカノンは、小男を思いっきり突き飛ばした。
小男は転んで、後ろにあったレバーに縋りついた。
そのレバーは、調整中だった噴水のオブジェを、持ちあげて空中で固定しているクレーンのものだった。
小男がレバーを押してしまったことで、紡錘型の大きな石のオブジェはクレーンから解き放たれた。
オブジェが、真下にいるカノンに向けて落下を始めた瞬間。
オブジェが斜め上にスライドした。
スライドとしか言い様の無い、不可解な動きだった。
一瞬で、右斜め上に移動したのだ。
そしてオブジェは、真下にいた変な男の上に落下した。

明らかに、何か不可思議なチカラがオブジェを動かしたのだ。
主人公もある程度物を操れるが、あんな重量のある物を空中で持ち上げることなど、とても出来ない。
主人公よりも強大な力を持つ死者が、この出来ごとに関わっているのか。

暗く沈んだ死者の世界、今、死体があった位置に宿る青い炎が主人公。
そして、少し離れた捨てタイヤにも、燃える炎があった。
恐る恐る、話しかけてみる。
「ああああッ!!!!シセルさんッ!!!!!」
恐ろしく元気に返事を返してくれたのは…
黒くつぶらな瞳の、愛くるしいポメラニアンだった。
「見ましたかッ!?見てくれましたかッ!?
 やりましたともッ!ボク、カノン様のためにやってやりましたともッ!!」
なんと、あの物体移動を行ったのは、小さなサムライ<ミサイル>君だった。

87 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 22:15:12.45 ID:s7E15I120
ミサイルはあの後、扉に体当たりを続け、
何度目かに偶然ドアノブにひっかかり、外に出ることが出来た。
そして、カノンの臭いを追って、この公園の前まで来た。
カノンは公園に入って歩いていく所だった。
喜び、カノンに追いつこうとした時、後ろから来たスクーター―あの小男の愛機―がミサイルをはね飛ばした。
ミサイルは宙を舞い、公園入口のクレーターを転がり落ち、絶命した。

彼のタマシイが目を覚ました時には…
目の前には、咽び泣く小男と、大きな石の塊に押し潰されたカノンがいた。
「カノン様!!!!!!」
愛しい主人のナキガラを目にした時、世界が一変した。
暗く沈んだ死者の世界、静止した森羅万象。
そして、鮮やかに燃える己のタマシイの炎、あちらこちらに灯るコアの光。

ミサイルは、主人公が助けてくれた時の事を思い出し、
自分の死者のチカラで、カノンを救った。
あのオブジェ―変な男のタマシイが言うには公園のシンボル”ミノくん”が、
カノンに向けて落下した時、ミサイルはミノくんにとりついた。
ミサイルは、<トリツク>の射程距離が主人公より遥かに長く、2m程先の物にとりつける。
だが、ミサイルには<アヤツル>ができなかった。
困って、一番近くにあったコア、右斜め上の木に残る葉のコアに射程を伸ばした。
すると、その二つの位置が、入れ替わったのだ。
ミノくんと木の葉は、平面的に見ると同じ紡錘形。
ミサイルは、視界の中で形が相似した二つの物の位置を、<トリカエ>る事ができるのだ。

ただ、その真下にいた変な男がとばっちりを食ってしまった。
実はミサイルは、葉の更に先に、もう一つ紡錘形があるのに気付いていた。
離れた所にある木の枝に、ラグビーボールがひっかかっているのだ。
でも、ミサイルの射程でもそのコアには届かず、変な男が犠牲になってしまった。
「変えられるさ。私とアンタ、二人の力を合わせればな。」
もう一度、ミサイルと二人で、<アヤツル>と<トリカエ>を駆使してこの死に挑む。

二人の力を使ってラグビーボールを枝から落とすと、
ラグビーボールははねて、変な男の脇の、ドラム缶に盛られたゴミに乗っかった。
そしてミノくんとラグビーボールをトリカエた。
ドラム缶はひしゃげたが、ミノ君を絶妙なバランスで支える台座となった。

これで一つのイノチを救うことが出来た。
あとは、ミサイルのイノチだが…、ミサイルはしばらく死んでいたいと申し出た。
カノンを守る為に、このチカラを持っていたいと言うのだ。
本犬の意志を尊重し、新しい現在に戻って、オルゴールを変な男からリンネに渡してもらう。
ミサイルも一緒にリンネに話しかけ、今死んでいることを教える。
リンネのつまんだ木の葉にミサイルはとりついていたのだが…
強風が吹いて、リンネがその葉を放してしまった。
ミサイルは風に乗ってどこかへ飛ばされていってしまった。

88 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 22:44:44.13 ID:s7E15I120
変な男がリンネにオルゴールを渡し、リンネの顔を凝視する。
「アナタは、あの時のおじょうさんでは…?そう、10年前の…。」
そう言われて、リンネは言葉を失う。

男は、二人に公園入口のクレーターと石碑を見せた。
クレーターの底には、今はミサイルの死体が倒れている。抱き上げるリンネ。
石碑には、「神の石 アシタール公園」と書かれている。
変な男が固執していたのは、神の意志ではなく、神の石だったのだ。
男は10年前、この公園を通りかかった時、リンネが人質に取られたのを見た。
犯人は背中を向けていたが、抱えられたリンネはよく見えた。
茂みの間からハラハラしながら見ていて、今にもリンネが撃たれそうに見えた時。
空が青白く光り、隕石が公園の入り口に激突した。
石は、地面にめりこむ時に、美しい欠片をまき散らした。
その内の一つが、誘拐犯の背中に突き刺さったのを、男ははっきり見たのだった。
「あの日、この公園で神の審判が行われたのです!!」
“助けてくれたのは、そう、神様だな。”ジョードの言葉の真の意味はこの事だったのだ。
隕石は<アシタール>と名付けられ、今もこのクレーターの下に埋まっている。
変な男は、あの日見たキセキが忘れられず、公園が宅地化されると聞いて反対運動を行っているのだ。

リンネは、この事件を忘れる為、公園を2度と通らず、関連のニュースも見なかった。
だから、アシタールの事は知らなかった。
だが、ジョードは目の前で見ていたのだから、何が犯人のイノチを奪ったのか知っていたはずだ。

法務大臣室にリンネと共に戻る。
まずはオルゴールから銃を出して法務大臣に提出する。
銃には仕掛けに使われた証拠の焦げ跡があり、調べれば家の壁の焦げ跡と一致するだろう。
新たな証拠の提出で、正式に処刑は中止された。
この世に<アヤツル者>が暗躍している事が、認められた瞬間でもあった。
「私も、そうだったのかな…?」
リンネが主人公を撃った時、リンネもまたガクガクとぎこちない動きをしていた。
そして、その記憶が抜け落ちている。リンネは主人公を、撃たされたのかもしれない。

ジョードに、「俺は人殺しだ」という言葉の真意を尋ねる。
10年前のあの日、取り調べ中の容疑者が、警察署内から逃げ出した。
それを公園に追い詰めたのが、ジョードだった。
ジョードは若く、未熟な正義を振りかざす半人前の刑事だった。
軽率な威嚇射撃で、脅えた容疑者を追い詰め、あんな行動に走らせた。
そして、あと1秒でも隕石が遅ければ、人質のキケンを顧みずに容疑者を射殺していた。
だから自分が撃ったも同じなのだと、ジョードは独白する。
収監されてからジョードは、忘れたくない人たちの顔を描いて暮らしていた。
そして、最後の一枚を今日書きあげたのだ。あの日の”容疑者”の顔を。

89 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:07:12.85 ID:s7E15I120
「待ってくれ、そんなバカな!私が10年前のハンニンだとでもいうのか!?」
「ああ、10年前に俺が見たのはキミの顔だよ。10年前俺が殺し、死亡を確認した男の顔だ。
 でも、10年前の容疑者の名前は、<シセル>じゃなかった。
 今夜キミが現れてからずっと、俺はキミはダレなのかと考えていたよ。」

その時、電話が鳴った。カバネラ警部からだった。
「ジョード元刑事の今夜中の処刑を要求する。
 人質が誰であろうと、要求が呑まれなかった場合、人質が死ぬのには変わりない。」

10年前飛来した神のイシは、幾多の人間の人生を狂わせた。
その連鎖はまだ終わっていない。
謎が謎を呼び、そして最大の謎が現れた。
私は一体、何者だったのだ?私は、ダレだ…?


第15章『AM2:55』
カバネラの真意を質すべく飛んだ電話の先で、主人公は完全に自分を見失った。
目の前では、主人公が今カバネラを撃ち殺し終わった所だった。
そこは、ゴミ捨て場の管理人室だった。
主人公と思しき人物は、あの軍服の老人に電話をかけた。
老人が彼に待ち合わせを指定する。
「シセル君、電話での連絡は最後だ。あと1時間でそちらに付く。
 会えるのを楽しみにしているよ。」
軍服の老人達がいる部屋は、引きで見ると、大きな潜水艦の中の一室だった。
ケーブルから離脱し、水面へ向かって浮上していく。
“シセル”は、キザな仕草でカバネラの死体に別れを告げ、管理人室を出て行った。

何が起きたのか知るのが怖いが…カバネラ警部死亡の4分前に戻ってみる。

【AM2:50 管理棟管理人室】
カバネラ警部は、痛めつけられ骨折を負っているようだ。
シセルに脅され、ジョードの処刑を要求する電話をかけさせられた。
シセルの動機は、復讐だという。
リンネの体を乗っ取り、自分のヌケガラを撃たせて殺人犯に仕立てて殺し
ジョードを死刑囚として処刑し、カバネラもここで脅迫を犯させて今から殺す。
あの日自分を追い詰めたジョード、目の前に現れた少女リンネ、そして少女に銃を向けるきっかけを作ったカバネラ。
自分を死に追いやった3人に、復讐しようとしているのだ。
「キミに話すことは無いよ。めんどくさいんでね。」
カバネラは、懐から銃を取り出してシセルを撃った。
シセルはキャスター付き脚立に倒れ込み、床を滑って…、またキャスターが転がって戻って来た。
そして、なんでもなかったように立ち上がった。
「そんな…お前は一体…?」
電気スタンドが素早く回転し、カバネラの銃は弾き飛ばされた。
それを受け止めたシセルは、カバネラを撃った…。

90 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:08:18.40 ID:s7E15I120
もう、受け入れるしかないだろう。
私は、この男<シセル>のタマシイではない。
全く未知の何者かなのだ。

目を覚ましたカバネラのタマシイに指摘されたが、
シセルに主人公の存在を気づかれたら厄介なことになるだろう。
ひとまず、カバネラのタマシイを連れて床を抜け、地下室に移動した。
そこにはもう、あの仕掛けは無かった。
一面瓦礫の山で、何もかもが破壊されつくしていたのだ。
「ここには、この国にとって重大なイノチが埋まっている」とカバネラが言う。
その時、ハトが一羽瓦礫の上に舞い降りた。
管理人のおじいさんに乗っていた、管理人さんと一心同体のハトだ。
ハトの乗った瓦礫の下には、管理人さんが埋まっていた。

カバネラは、管理人さんを<先生>と呼んだ。
先生のタマシイは、記憶を完全に取り戻していた。
先生も連れて、更にその死の4分前へ戻る。

【AM2:42 管理棟地下室】
先生は、テーブルの上にシセルの死体を寝かせ、
何か探知機の様なもので丹念に調べていた。
「こやつは確かに死んでいる。しかしここに反応がある。これがチカラの源なのだ。」
「先生、そいつは死んでるんじゃない!今そこにいないんだ!
 奴らの正体は、<タマシイ>なんだよ!」とカバネラが先生を外に連れ出そうとする。
「クックック…よくそこまでたどりついたな。
 カバネラ警部、あんたのおかげで今夜はずいぶん時間をムダにしたよ」
シセルは起き上り、床に降り立った。
今夜、シセルはこの国を去る。その前に、このチカラを知る全ての人間を葬っていきたいのだと言う。
「死んでもらうよ、先生。」
シセルは、天使のしかけを作動させる。
天使がテーブルに火矢を撃つ。カバネラが飛び出そうとしたが間一髪遅く、
シセルによって仕込まれていたダイナマイトが爆発した。
先生は死に、カバネラは重傷を負った。

91 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:09:49.24 ID:s7E15I120
シセルは、自分を知る人物全てを葬った後、
取引とやらをして、あの老人達の国へ渡るつもりだ。
今夜ゴミ捨て場を捜査していたあの監察医が、シセル側の回し者で、
ラボに搬送するフリをして、シセルのヌケガラを回収するはずだった。
それを見抜いたカバネラは医者を買収し、この地下室にヌケガラを運び込んだ。
しかし、先生ともども殺されてしまったわけだ。
明け方には、シセルはこの地を離れてしまう。それを追う前に、二人を助けよう。

しかし、やり直しの4分に、何の手立ても見つからない。
あまりにも操れるコアが少なく、しかも距離が開きすぎてとりつけないのだ。
それに、爆死を回避したとしても、シセルに他の方法で葬られるだけ。
だから爆発の最中に、シセルに気付かれず助けたい。
先生の踏んでいる地下道へのハッチ。これを爆発寸前に開ければいいのだが、
惜しいことに、これは上開きの扉なので、先生の体重がジャマで開けられない。
何も出来ずに4分が立とうとした時。
「…シセルさーーん……」
どこからか叫び声が聞こえてきた。
「どこかに彼がいる!」儚げな見た目とは裏腹に、強力な彼が。
地下道の脇を流れる、下水水路。そこを、一枚の葉が流れてきた。
「シセルさんッ!今、そちらに行きますとも!」
彼の持つ、ケタ違いの射程距離。地下水路から一息で、ミサイルはこちらに上って来た。

爆発までは、もう数秒だ。
主人公は地下通路のゴミバケツのフタに目を付けた。
あれは、ちょうど床のハッチと同じ形だ。
もう少し近くに寄せて、あれをハッチとトリカエできたなら…
フタを一度落として、視界の中で円の形にし、タイヤとトリカエして招き寄せて寝かせ、
床のハッチとフタをトリカエした。
間一髪、爆発の瞬間に先生は地下通路へ落っこちた。

これで、シセルに気づかれずに先生を助けることが出来た。
次は、今頃上に連れていかれているカバネラを助ける番だ。
また、シセルに気付かれずにカバネラを助けなければならない。
シセルに見つからず動き、発砲を止めずに、カバネラが死なないようにするのだ。
「ピストルって言ったら、いっつも不思議に思ってたんですけど、
 どうして人間って、あの大きな音がしたら死んじゃうんですか?」
「えっ!?それは…(…なんでだっけ…?)」
記憶喪失と犬の危なっかしい会話に、意識を介して先生が突っ込んでくれる。
「弾が出とるんじゃよ。それに当たると死んでしまうんじゃ。」
だったら、弾と何かをトリカエてしまえばいいのだ。

力を合わせて、シセルの死角を突きながら、ニットキャップを運んできて、
金具にひっかけて、視界の中で半円形になるようにする。
そして弾が発射された瞬間。
素晴らしい瞬発力で時を止めたミサイルは、弾とニットキャップをトリカエた。
ニットキャップを顔面に食らったカバネラはもんどりうって倒れ、
シセルは気付かずに電話をかけ始めた。

92 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:11:50.51 ID:s7E15I120
これで、二人をシセルに気づかれずに助けることが出来た。
新たな現在へ帰る。
主人公は、自分を追う為に。ミサイルは、カノンを守る為に。
ここを去る前に、カバネラと先生に話を聞いておく。

「少女に銃を向けるきっかけを作ったのはカバネラ」というシセルの主張は正しいらしい。
ある重大事件を追っている時、シセルを容疑者として尋問したのがカバネラだった。
カバネラは、特別捜査班に配属されたばかりで、功を焦っていた。
下っぱとして、シセルに下調べの質問をしておくように命じられたに関わらず、
シセルを大袈裟な言葉で追い詰めてしまった。許されないレベル、<絶望>まで。
「本当に、何にも知らないんです!信じてください刑事さん!」
「吐いてしまった方が身のためだよ。キミの一生くらい、特別捜査班の力でなんとでもできるんだ。」
そして、マヌケにも自分の銃をその場に忘れたまま退席してしまったのだ。

あの事件の数年後、外国との通信を監視している部署から報告があった。
何者かがある国に向かい、「自分のチカラを、自分ごと買い取って欲しい」という発信をしたのだ。
そして、チカラの証明として、2つの事件を予言した。
「国家機密を歌い上げるロックシンガー」「警察トップを人質に立てこもる男」

シセルが隕石によってイノチを落した時、検死に当たったのが、当時監察医だった先生だった。
シセルを解剖する事は出来なかった。
メスで切った瞬間、傷が治ってしまったのだそうだ。それでいてシセルは確かに死んでいた。
その後、シセルの死体は安置所からコツゼンと姿を消した。
まるで、内側からロックを開けたかのように…。
それ以来、先生はその謎を追い続けてきたのだ。
地下室の仕掛けも、謎のチカラの痕跡を感じ謎を解き明かそうと再現したものだった。

シセルのチカラの源は、隕石アシタールが体内に残っているからだと仮説が立てられている。
シセルは、今頃敵国の潜水艦に乗り込むところだろう。
このチカラが国家レベルで悪用されれば、とんでもない事になる。

ジョードとリンネがこちらへ合流し、
敵国の潜水艦の浮上ポイントを探しにまた飛び出して行った。
カバネラがシセルに撃ちこんだ弾には、電波発信機が仕込まれていたのだ。
潜水艦がケーブルを一度離脱した為、電話番号が変わってしまい主人公は移動できない。
仲間が潜水艦内から道を届けてくれることを信じて待つしかない。

93 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:14:27.09 ID:s7E15I120
第16章 『AM4:19』
2時間後、ジョードから短い着信があった。
その電話の向こうへ飛ぶと、そこはあの老人達のいた小部屋だった。
部屋は無人と見えたが、突然電話が床に収納され、モニターが灯った。
「ここまで辿りつくとは、さすがだな、ジョード君。」
モニタには、軍服の老人が映っていた。
機械仕掛けで、イスがクルリと回る。そこに座っていたのはシセルだった。
「今はヌケガラだよ。タマシイは、今頃キミのムスメを操っているんじゃろう。
 シセル君も甘いな。大事な取引材料をほったらかしていくとは。」
壁から出たアームが、シセルの死体に突き刺さり、隕石の欠片を抜き取った。
シセルのチカラの正体を、敵国は調べ上げていたのだ。
「これで、こちらとしては取引完了だ。さらばだ、ジョード君。」
ジョードのいる部屋自体が潜水艦からポッドとして分離され、ジェットを噴射して海面へ消えていった。
そして、潜水艦本体は、どこかから不気味な爆発音が響き揺れ始めた。

格納された電話にいた主人公とミサイルは、潜水艦本体に残された。
鳴りだした内線電話にトリツクと、それはカノンからのSOSだった。
飛んでみると、カノンは機関室の片隅にうずくまっていた。
下の階段まで浸水していて、そこにリンネが俯けに浮かんでいた。
トランクの中でカノンが目を覚ますと、そこはもう潜水艦の中だったらしい
逃げまどう内に、疲れて動けなくなり、リンネと再会できた安堵で失神してしまった。
気がつけば、目の前でリンネが死んでいたらしい。
小さなレディは、消耗しきっている。
ミサイルは彼女のサムライだ。4分前には連れて行かず、カノンの傍に置いていく。
リンネのタマシイと二人で、死の4分前へ。

【AM4:22潜水艦ヨノア号貨物庫】
4分前のリンネは、失神したカノンを台車に寝かせていた。
目を覚ましたカノンは、台車の下の段から長銃を取り出して、リンネに突きつけた。
「自己紹介の必要はなさそうだな?」
シセルのタマシイがカノンを操っているらしい。
ジョードの処刑が中止されたのを察知し、
娘を助けに来るジョードを、娘に殺させようとしているのだ。
カノンの後ろで、電話が鳴り始めた。
シセルはそれに出ようとしない。
電話が鳴りやむと、爆発音が響いてきた。
「謀られたか?」シセルは去り、カノンが崩れ落ちる。
そして、リンネを爆発が襲った。

94 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:15:08.26 ID:s7E15I120
この爆発を止めないとリンネが死んでしまうので、
4分を巻き戻して、鳴っている電話の向こうへ行ってみよう。
巻き戻しの4分では、通話状態の電話しか移動できないので、
適当に物をぶつけて受話器を外し、向こうへ飛ぶ。
電話の向こうには、若い兵士がいた。
乗組員が艦内に残ってないか、確認の電話をかけているらしい。
その上のフロアで、今まさにシセルの体から隕石が抜き出されていた。
その隕石にとりつき、行方を追ってみる。
軍服の老人の元へ運ばれた隕石は、彼の胸元へしまいこまれた。
そして、老人は脱出ポッドに乗り込み、潜水艦を後にした。
「このヨノア号は、君の為のカンオケなのだよ。
 永遠に眠りたまえ、シセルくん。」
主人公は隕石を離れ、潜水艦から撃ち出された魚雷にとりついた。
これが、Uターンして潜水艦に着弾する事で爆発が起こるらしい。

内部の仕組みをリンネがマンガからの知識で知っており、
なんとか安全装置を作動させた。
これで起爆はしない。命中は避けられないが。
不発弾となって潜水艦に打ち込まれた魚雷から、また貨物庫に戻って来た。
リンネのタマシイも、新しい現在に戻っていく。

新しい現在で、リンネはカノンを背負い、懐中電灯に主人公をとりつかせて、
じわじわと浸水していく潜水艦の中を登っていく。
途中、潜水艦が傾いて直立してしまい、カノンをおぶって進むのが困難になる。
ミサイルと力を合わせ、足を使って登れる道を作っていく。

90°傾いた船を登り、扉まで辿りついたが、
ハンドルが固くて開けられない。
水が迫り、絶体絶命のその時。
勝手にハンドルが回って扉が開き、巨大なUFOキャッチャーのクレーンのようなものが、
リンネとカノンを掴んで引き上げ、扉が閉まった。
一人と一匹のタマシイも、扉を越えて、二人を追っていく。

第17章【AM5:10】
そこにいたのは、何とも言えない代物だった。
消化器、ボトル、歯車、クレーンの先端、色々な物が合体し、蛇の様な形をしている。
それは一度崩れ落ち、もう一度宙で再構築された。
どうやら成人男性の様な形になったそれは、見覚えのあるキザな仕草で挨拶をよこした。
「カラダを失くしちまってな。こんな格好で失礼するぜ。」

この潜水艦は、動力を失くし、穴を穿たれ、
ゆっくりと海底に向かって沈んでいっている。
大きな棺桶。闇へ向かう死の航海だ。為す術は無い。
それに毒気を抜かれてか、シセルから憎悪は消えているようだった。

96 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:50:59.65 ID:s7E15I120
シセルは、リンネ達を助ける主人公の存在に気付いていた。
主人公は、仮にシセルの姿を借りたままだったが、とうとう炎の形に戻る。
「私は、もうこの男の、シセルの姿のままではいられない。
 教えてくれ、アンタは一体?」
「シセル?…それは俺の名前じゃないぜ。
 もうすぐお前は思い出すだろう。お前の事も、俺の事も。」

シセル(仮)に、<死者のチカラ>について話を聞く。
シセルはこの10年、先生の研究を見続け、自分なりの解釈をしてきた。
死者の力は個体差があり、そして時間と共に変化する。
シセルは、最初はイノチある小さな物しか動かせなかったが、
今では無機物有機物に限らず、かなりの物を自在に操ることが出来る。
このチカラを得る条件は一つ。
「隕石アシタールの放射線を浴びながら死ぬこと。」
シセルは、隕石の欠片に心臓を貫かれて、
ミサイルは、隕石の埋まるクレーターの底で死んだ。
ならば、主人公も、隕石の傍で死んだのだろうか?
そして、クネリは「タマシイは一晩で消滅する」と言っていた。
しかしシセル(仮)のタマシイは10年存在し続けている。
クネリはウソをついたのだろうか。

シセルは更に、自身のカラダが腐らない理由も分析していた。
隕石アシタールには、<死>の瞬間を再生しようとする機能がある。
体内にアシタールを抱えて死んだシセルは、矛盾した存在になった。
シセルの体は、死の瞬間が、瞬間的に、永遠に繰り返されている。
死の瞬間から、時間が止まっているのだ。
シセルは復讐と、新しい生活の為にこの取引を計画した。
しかし、連中の目的は、アシタールを知る全ての者―シセルも含めて
を始末して、シセルの体内のアシタールを回収する事だった。

シセルが、リンネに取りついて自分の体を撃たせようとした時。
リンネの意志の力は、強硬に抵抗した。
初めてシセルは人を操り切れず、一発目は狙いが逸れてしまった。
二発目でなんとか命中させ、それを監視カメラで撮らせるまでがシセルの計画。
しかし、現れた黒服に、取引国がもっとシンプルに関係者を消そうとしているのを知った。
その直後、遮断機がバーを跳ねあげ、一夜の物語が始まった。

そのフィナーレが、深海へ沈み続けていく潜水艦なのか。
ゆっくりと海底へ向け降下して行く潜水艦は、やがて水圧で押し潰される。
それを避ける術はもうない。
「この10年のあなたの気持、今ならわかる気がする。」
リンネがぽつりと呟いた。
タマシイだけの存在になり、生者の世界と切り離された、孤独な10年間。
「潜水艦の中で一人、音もない暗い海の底に、沈み続けていくような気持だったんだろうなって。」
シセルの長い孤独の為に、リンネは涙を零した。

97 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:51:36.31 ID:s7E15I120
「パパなら、助けてくれるよ。」
目を覚ましたカノンが言う。
そういえば、ジョードとシセル(仮)のカラダは、海上へ射出されたのだ。
そして、そのシセルのカラダには、電波発信機が埋め込まれている。
リンネがその受信機を持っていた。これで正確な位置が座標で分かる。
ジョードの元へ、浮上する手段。
格納庫に納められた魚雷がまだ数発残っている。

タマシイ達が魚雷に取りつき、
リンネが魚雷がジョード達の乗っているポッドとすれ違うように座標を指定して発射する。
手立てが見つからなければ、リンネ達には二度と会う事は無い。
リンネは主人公に向けて呟く。
「結局、アナタが誰なのか分からないままだったね。
 でもそんなの関係ない。今夜アナタに会えて、本当によかった。
 これから何が起こったとしても、アナタのことは忘れない。
 …頼んだわよ、相棒!!」

海を貫いて魚雷は、ほんの十数秒でジョード達のポッドとすれ違った。
飛び移った主人公達は、ジョードの死体を発見した。
何が起こったか知らないが、とりあえずタマシイに話しかける。
ついてきていたシセル(仮)のタマシイと邂逅したジョードは、
「君は…ヨミエルなのか?」と呟いた。
「覚えていたみたいだな、刑事さん。」
ヨミエル、それがこの男の本当の名前。シセルは取引に使った仮名だという。

ヨミエルは、非常に優秀なシステムエンジニアだった。
功績を認められ、若くして国から要請されプロジェクトに参加する事になった。
国の機密を守るプロテクトの強化再構築。
しかし、そのプロジェクトの中に他国のスパイが潜り込んでいた。
ヨミエルは、情報を流出させた容疑者として尋問を受け、あの顛末となった。
彼の死から半年後、無実が証明された。
肉体とタマシイが切り離され、公的に死亡したヨミエルを待っていたのは、圧倒的な孤独と絶望。
「大切な存在を失う絶望を、お前たちも味わうべきだと思った。」
ヨミエルの独白に水を指すのは控えたが、大切な存在とは何だろう?

ヨミエルは、10年かけてこの計画を思いつき、実行に移した。
取引の内容は、このチカラと引き換えに、
復讐を手伝う事と、
ヨミエルに新しい人生を用意する事。
ヨミエルのタマシイの受け皿となる人間を用意し、
その人間にとりついて、家族を作り、年を取って、家族にみとられて死ぬ。
しかしその願いは、取引国の裏切りによって断たれた。

アシタールの存在は、先生によってこの国の政府にも既に報告されている。
政府の対応は、敵国に比べ理性的で平和的な物だった。
あの公園を武装したエージェントに監視させ、
そして宅地化で公園を取りつぶし、他国からアシタールを守るという物。
だから敵国にとっては、ヨミエルの体内のアシタールが、最後の望みだったのだ。

98 :ゴーストトリック:2011/05/13(金) 23:54:59.85 ID:s7E15I120
結果アシタールの回収に成功。関係者一同は海の底へ。
自動操作の銃で撃たれてジョードは死に、このポッドも燃料が尽きて海底へに沈み始めている。
敵国の大勝利と言ったところか。
…しかし、同じようにジョードも沈めるつもりなら、
このポッドがわざわざ分離されたことには意味がある。
この中に、敵国がヨミエルや他者のタマシイから遠ざけておきたかった何かがあるのだ。
何も無い小部屋。あるのは二つの死体だけ。
そう、ヨミエルの体もアシタールを失い、ただの死体になった。
このどうにもならない状況を逆転する可能性。
主人公、ミサイル、ジョード、ヨミエル、4人全員のタマシイがヨミエルの死体にとりつき、主人公は死者のチカラを使った。
10年前、全ての始まり。その死の、4分前へ。

【最終章】
10年前の、アシタール公園。
幼いリンネが一人、落ち葉でイモを焼いている。
半分に割った焼きイモを、棒に刺して持ち上げたところで、
駆けてきたヨミエルがリンネを人質にとり、ジョードがそれに銃を向けた。
ジョードの足もとに、子猫が一匹近づいてきた。
「なんだコネコくん、そんなところにいるとケガするぞ。」
その時、空から隕石アシタールが飛来した。
アシタールから飛び散った欠片の一つが、
紡錘形の街燈を割り、そのままヨミエルの背中を直撃した。

この隕石を止めることは不可能だろう。
しかし、その欠片からヨミエルを守ることはできる。
詳細は省くが、ミサイルと力を合わせて、
隕石の欠片が割る街燈のランプと、おなじみの巨石ミノくんを、タイミングよくとりかえた。
隕石は、ミノ君をかすって軌道の角度を変え、ヨミエルを外れた。
しかしその先には、ジョード刑事がいた。
隕石は、ジョード刑事のひざを撃ち抜いた。
その衝撃で、ジョードは引き金を引いてしまった。
「…やはりこれが運命だったのか…」ジョードのタマシイが呻く。
「そうはさせませんッ!!!」
時が止まり、暗く沈んだ死者の世界。
ミサイルのタマシイが、名前の通り闇を切り裂いて飛んでくる。
圧倒的射程で弾へとりついたミサイルは、同じ半円形の物、
リンネの焼いた半割れの焼き芋ととりかえた。

99 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:10:17.84 ID:zcMOyFXd0
高速焼き芋を喰らったヨミエルは後ろに吹っ飛び、
街燈のでっぱりが背中につきささり失神した。
背中に何か刺さる運命だけは変わらなかったようだが、軽傷だ。
しかし…その衝撃で、街燈の上で辛うじてバランスを保っていたミノくんがグラリと揺れた。
ミノ君は、ゆっくりと傾ぎ、倒れたリンネの上へ倒れていく。
ジョードは足を負傷し動けない。
主人公が同じ紡錘形の電球を、街燈上に届けることは成功したが、
ミサイルがそれとミノくんをとりかえても、数秒後にはミノくんはまた落ちてくる。
「いいや、その数秒が欲しかったのさ。」
ヨミエルのタマシイが、物を伝い自分の体へとりついた。
彼の一番得意なチカラは、命ある者をあやつること。
ヨミエルの体は起き上り、倒れたリンネを抱き上げ、ジョードへ放り投げた。
そして、ヨミエルの足の上に、ミノ君が落下した。
復讐に燃えていたヨミエルのタマシイの意外な行動に、一同のタマシイは驚く。
「あの娘は、オレの10年の為に涙を流してくれた。
 オレの10年は、あの時救われたのさ…。」

「おじさんが助けてくれたの?」
「おじさんは仕事をしただけだ。…助けてくれたのは、そう、神様だな。」
「おじさん、おひざ大丈夫?」
「大丈夫だ。派手にかすっただけさ。
 警察を呼んでくれるかな?おじさんより、君の方が早く呼べそうだ。」

ジョードが、ヨミエルに声をかける。彼も生きていた。
「体が勝手に動いたんだ。誰かに操られたみたいに。
 でも、勝手に動いてよかったよ…。」
歩きだしていたリンネが、ジョードの後ろの茂みから何かを抱き上げた。
先程ジョードの足元にいた黒い子猫だった。
「おじさん、このネコちゃん、元気ないの。」
「さっきの子猫ちゃんか。怪我もしていないようだし、大丈夫だろう。
 ネコくん、君、うちに来るか?」
子猫は、ジョードに引き取られることになったようだ。

ヨミエルのタマシイが言う。
「これでアイツの運命も大きく変わったな。
 …あのクロネコさ。名前は“シセル”。」
シセル。心を揺さぶる名前。私の名前。
「この10年間、孤独な俺の友は、お前だけだった。
 …まだ思い出さないのか?相棒。」

100 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:10:56.38 ID:zcMOyFXd0
孤独な男に寄り添った、一匹の猫。
主人公のタマシイは、赤いスカーフを巻いた黒ネコに変化した。
「どうやら、ようやく思い出したようだ…。」
10年前、主人公はよるべない小さな捨て猫だった。
一人ぼっちで、寒空をさまよい、救いの手を求めていた。
誰か、ボクを見て…手を差し伸べて…
生還劇の只中にいた刑事と女の子は、ちっぽけなネコなど見てはいなかった。
死んだ男に、子猫はそれと知らずすりよった。
その時ヨミエルは、タマシイの記憶を失い混乱したまま、子猫に手を伸ばした。
するとヨミエルのタマシイは子猫の中に移動し、
その後しばらく、ヨミエルと主人公は一つの体の中でネコとして生きた。
やがて記憶を取り戻したヨミエルは、自分の体を警察から取り戻した。
どうしても会いに行きたい人がいたから。
しかし、その人はすれちがうようにこの世を後にしていた。
「ヨミエルに会いに行きます」と書き残して。

ヨミエルは主人公に、<シセル>と名付けた。
彼がイノチと一緒に失った、大切な何かの名前。
<フィアンセ>という言葉の意味を、猫である主人公は知ることは無かったが。
そして、時は流れた。主人公にとっては幸せな10年間だった。
しかし、ヨミエルにとってはそうでなかった。
孤独と絶望はヨミエルの心を蝕み、同時に時を経てチカラは強まっていった。
主人公は傍らで、それを見ていることしかできなかった。
人を自在に操れるようになり、ヨミエルは計画を実行した。

一緒に新しい国へ連れて行くため、ヨミエルはバスケットに主人公シセルを入れていた。
リンネに自分の体を撃たせた後、
すぐに死体が動けば騒ぎになるので、ひとまず相棒の体にとりつき動き回るつもりだった。
しかし。バスケットの中のシセルにとりついたヨミエルは愕然とした。
一発目の逸れた弾に当たって、シセルは死んでいたのだ。
現場から立ち去った黒ネコは、シセルのナキガラをあやつったヨミエルだった。

主人公は、ヨミエルの中の隕石のオーラを浴びながら死んだ。
そして、なじみ深いヨミエルの死体を自分と取り違え、今に至った。
「何故、計画の邪魔になる私を止めなかった?」
「そもそも止めようがなかったのさ。チカラには個人差がある。
 <死の運命を上書きする>なんて、そんなチカラがあったら、俺はお前を生き返らせていたさ。
 もちろん、10年前の彼女もな。」

新しく生まれた10年前では、ジョードが子猫を抱き上げ、ヨミエルは呻いている。
全ての死が回避された。ヨミエルの愛する人も、カノンの母も。
ここに、最後の運命更新が完了した。
新しく生まれた現在では、これまでの10年は上書きされ消失する。
そして、この更新に立ち会った二人と二匹の記憶の中だけに残るのだ。

101 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:11:45.48 ID:zcMOyFXd0
「シセル、新しい現在では、俺達は出会わなかったことになる。
 だから、今これだけ言わせてくれ。今夜、俺は君のイノチを奪ってしまった。本当にすまない。」
「それは、もう失われた過去の話だ。そうだろう?」
「ああ。…君に会えて、本当によかったよ、シセル。」
「…私もだ。ヨミエル。」

ミサイルとも別れの挨拶をする。
「ボクたち、このままもう会えないんでしょうか?
 そんなの、絶対イヤですともッ!!!」
「ミサイル、私たちの運命は、きっとまた交差する。
 それを信じて待とう。」
ジョードには、これからも世話になるだろう。
「どうやら君は俺が連れて帰るみたいだね。」
「ああ、これからよろしく頼む、ジョード刑事。」

タマシイは別れ、バラバラに新しい現在へ帰っていく。
主人公のタマシイが時間を戻る途中。
「お待ちください!」
久方ぶりに、電気スタンドが目の前に現れた。
「新しい現在に戻る前に、お礼を言いに参りました。
 ワタクシが消滅する前に。」
クネクネキコキコとクネリはおじぎする。

クネリがいなければ、これほどスムーズに今夜の運命が変わることは無かっただろう。
「教えてくれないか?君が何者なのか。」
「…シセル様にはお話しておきましょう。今夜の、もう一つの物語を。」

今夜最初の死、ゴミ捨て場でのリンネの死が回避されることが無かったら、何が起きていたか?
リンネを殺害後、ヨミエルと黒服はあるマンションの一室に押し入り、少女と小犬を銃殺する。
死んだ小犬のタマシイは、愛しい少女のナキガラへ必死で手を伸ばした。
その時、キセキが起きた。暗く沈んだ死者の世界、己のタマシイの炎。
今なら理由が分かる。小犬は、ヨミエルの足元で死んだのだから。
しかし、彼には主人を救えなかった。トリカエだけではどうにもならなかった。
小犬は、あきらめずヨミエルを一晩中追い続けた。
そして…深海へ沈みゆくポッドの中、ヨミエルの死体と一緒に残された。
小犬は、ヨミエルの死体から10年前に戻り、
10年前の運命を変えようともした。
しかし、やはり彼の力だけでは何も変えられなかった。
だから、小犬は待つことにしたのだ。
そこから10年後、もう一度あの夜が巡って来るまで。
「…アンタだったのか…。」
「さよう、ミサイルでございます。」
電気スタンドが姿を変えたのは、年老いたポメラニアンだった。
「10年。犬のタマシイには長い時間でした。」

102 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:12:50.60 ID:zcMOyFXd0
ミサイルの一度目の運命の夜。
実は、ミサイルと主人公シセルは出会っていた。
死で記憶を失ったシセルは、電気スタンドをキコキコとあやつって遊んでいた。
ミサイルはシセルに協力を頼み、すげなく断られた。
「悪いが、私は私の記憶を追いたい。」
そういって、シセルは電話線を伝って姿を消した。
だから、クネリとして現れたミサイルは、シセルのチカラを予め知っていたのだ。

年を経て、小さな無機物をなんとかあやつれるようになったミサイルは、
巡って来た運命の夜、もう一度シセルと出会った。
今度こそは彼の力が必要だった。だから、シセルの記憶を欲する気持ちをうまく利用した。
そして、「一晩でタマシイは消滅する」と嘘をついてタイムリミットを設けた。
明け方には、またヨミエルは海底に沈んでしまうからだ。

「それでは、そろそろお別れでございます。
 この10年は消滅し、ワタクシの存在も消滅します。
 ワタクシは信じておりましたとも。アナタ様なら、必ずやってくれると!
 そして、アナタ様はやってくださったのです!!
 本当に、本当にありがとうございました。」

この10年、ただひたすら待ち続けたのか。カノンとリンネの為に。
「もちろんでございます。それがワタクシ達、犬なのでございますから。
 それでは、ごきげんよう。シセル様。」
誰も知らない、ただ主人公の記憶の中だけに残る、消滅した物語。
幸せな小犬の物語が、それに取って代わるのだ。
主人公シセルも、自分自身の、新しい現在へ帰っていく。



「あれ?まっくら。すみません、電気つけますよー」
リンネがスイッチを入れると、そこはパーティーの飾りつけをされた部屋だった。
電気のスイッチを入れたことで、ピタゴラスイッチのような物が始まった。
天井のファンが回り、巻き取られた紐が何やかやして、
最終的に天使のオブジェが持っている矢に火が付き、天使が火矢を放ち、
机の上のクラッカーが一斉に鳴ってケーキに火が灯された。
隠れていたカノンと黒ネコが、リンネの元へ駆け寄る。

「この子、あの時のネコちゃんですか?」
後ろからやってきたジョードに、リンネが尋ねる。
今日は、リンネが刑事になったお祝いのパーティーらしい。
カノンとリンネは初対面らしく、カノンは少し照れている。
「この子、シセルって言うの。
 とっても変わってるんだ。もう10歳なのにずーっと小さいままなの。」

台所から、カノンのお母さんが料理を運んできた。
歓声を上げて、カノンとジョードがテーブルへ駆けていく。

103 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:13:27.38 ID:zcMOyFXd0
私は、やはりネコなのだろう。
あの晩、一夜だけ私は人間として彼らの世界を覗いた。
そこで分かったのは、
彼らの人生はつながり合い、必ずどこかで影響し合っているという事。
彼らの織りなす奇妙で美しい模様を、
丸くなって見ているのが私の性には合っているようだ。
…当分は退屈せずに済むだろう…

暗く沈んだ死者の世界、鮮やかに燃えるタマシイの炎。
小さな黒ネコの体から沸きだすのは、アシタールの放つオーラの波動。

<完>

104 :ゴーストトリック:2011/05/14(土) 00:13:59.54 ID:zcMOyFXd0
エンディングテーマで、全てのキャラクターの後日談が流れる。
二つだけ抜粋する。
パーティーもたけなわの頃、カバネラが花束と共に踊りこんでくる。
その後ろには、元気に吠えるミサイル。
リンネが留守番させていたのを、カバネラが連れ出して一緒にやってきたらしい。
ミサイルは、カノンに撫でられながら、嬉しそうにカノンの頬をなめる。

とある刑務所の独居房で、ピンクのスモックを着て絵を描いている囚人が一人。
そこに、係官がやって来る。
「今日まで10年間、ごくろうでしたね、ヨミエル。
 いつも面会に来ているレディが、表で待ってますよ。」
少女を人質にとり、銃を突きつけた罪を、償い終わったのだ。
ヨミエルは、出ていく前に呟く。
「ありがとう、シセル…。」
ヨミエルが描いていたのは、満月をバックにした、赤いスカーフの黒ネコだった。


340 :ゴーストトリック◆l1l6Ur354A:2010/09/09(木) 02:29:33 ID:tYiRL97e0
ゴーストトリック投下します。


ある夜。
街の片隅で、私は一発の銃弾に倒れた。
タマシイとなって目覚めた私は、命と共に、その記憶を失っていることに気づく。
私は、何者だったのか? なぜ殺されたのか? そして、私の命を奪った犯人の正体は?
失われた記憶をたどる手掛かりは、命と引き換えに手に入れた《死者のチカラ》……
モノに《トリツク》《アヤツル》、そして死の4分前に《モドル》チカラ。

これは、死から始まる一夜の追跡劇。



 --- 登場人物 ---

 「私の目の前で誰も死なせるつもりはない。」
主人公“私”:死によって得た不思議なチカラを使って、自らの死の謎を追う。
     記憶がないため、自分のことは一切覚えていない。

 「えへ。また死んじゃった。や、慣れってコワいよねー。」
リンネ:正義と理想を持て余す新米刑事。主人公の死の瞬間、その現場にいたと思われる。
     今夜、彼女も命を狙われているらしく、幾度となく命を奪われるが……

 「こんなヨルはドーナツだよね。」
カノン:マンションの一室で、留守番をしている少女。
    運命のいたずらで、事件に巻き込まれてしまう。

 「ボクにできるコトといえば、吠えるコトでしょうか。それ以外、なにもありませんともッ!!」
ミサイル:飼い主のカノンが大好きなポメラニアン。シュミは元気いっぱい吠えるコト。
      カノンを守ることこそ、自分の使命だと信じている。

 「いいねぇ、事件現場のキンチョー感。とってもラブリーだ。」
カバネラ:特別捜査班の班長で、リンネとは何か強い“つながり”があるらしい。
      今夜、この国の未来が左右されるほどの取り引きを捜査している。

341 :ゴーストトリック◆l1l6Ur354A:2010/09/09(木) 02:30:25 ID:tYiRL97e0
 --- 第1章 PM7:02~ ---

…………しばらく、気を失っていたようだ。
気がつくと、女が立っていた。そして、その横に銃を持った男が一人。
男は銃口を女に向ける。女は両手を上にあげたまま、動けない。
黙って見ているのは私の主義に反するが、その私はというと一足先に死んでいた。
道端にうつ伏せになって死んでいる、赤いスーツに身を包み、金髪を逆立てている男。
これが、私。それは間違いない。この場で死んでいるのは私だけなのだから。
彼女を助けたいが、私にはどうしようもない。そう思った、その時。どこからともなく謎の声が。
「……のんびり死んでいる場合ではございません……」
その瞬間、見えていた世界が“赤く”変わり、時が止まった。
謎の声によると、これは《死者の世界》らしい。私の《チカラ》を使えば彼女を救えるという。
謎の声に導かれるまま、私は自分の死体に宿っていた《タマシイ》を、
その近くにあった遮断機の《コア》に取り付かせた。
そして、世界の時が再び動き出したその瞬間、私は遮断機を動かして男の手から銃をはじいた。
女はその隙に逃げようとするが、銃を拾った男に再び銃口を向けられる。
これで、彼女の運命は変わった……きわめて地味に、だが。相変わらず危険は去っていない。
私は次の手を打とうとしたが、《タマシイ》はあまり距離のある《コア》には取り付けないらしい。
結局何も出来ずに、彼女は殺されてしまった。
私の《チカラ》……いったい、何だったのか。疑問に思っていたその時。
近くにあった電気スタンドが突然動き出し、私に話しかけた。謎の声の主はコレだったようだ。
電気スタンドによると、私にはまだ出来ることがあるらしい。
私の《タマシイ》はモノに取り付いて操ることが出来るが、死体に取り付くと何が出来るか……。
死体は、操ることはできない。しかし、その人物の死より4分前の世界に《モドル》ことが出来るのだ。
そうして、私は目撃した。彼女の、最後の4分間を。

342 :ゴーストトリック◆l1l6Ur354A:2010/09/09(木) 02:31:05 ID:tYiRL97e0
 →その死の4分前 PM7:01 
彼女は私の死体を揺さぶり、何があったのかと問いかけていた。
その背後に、銃を持った男……殺し屋が迫る。
殺し屋は彼女の銃口を向け、「《アシタール》の痕跡を残すワケにはいかないそうだ」と語る。
彼女はその言葉に心当たりはなさそうだ。
彼女は殺し屋の隙を見て逃げ出そうとするが、結局撃ち殺されてしまった……。

この運命を、《死者のチカラ》を使って変える。
私は《コア》を伝って《タマシイ》を移動させていき、
クレーンを操って殺し屋の上に鉄球を落とした。
鉄球は殺し屋を潰し、どこへともなく転がっていった。
これで、危険は去った。彼女の運命は変わったのだ。

私は変えられた運命……更新された“現在”に戻った。
いつの間にか雨が降っていて、私が救った見知らぬ女は一人、雨に濡れていた。
“見知らぬ女”……? ふとそれが心に引っ掛かり、次の瞬間、私はとんでもない事に気がついた。

……なにも、思い出せない……。

先程の電気スタンド、クネリ(本名を名乗るつもりはないようだ)によると、
死者の記憶は混乱するようだ。
しかし、そんなことはどうでもいいこと、と言うクネリ。
どっちにしろ死者は夜が明けて朝日がさすときには消滅してしまうのだから。
私は、《死者のチカラ》を使って自分自身を救うことを思いついたが、
どうやら自分の死体に《死者のチカラ》を使うことはできないようだ。
私は明日の朝、消滅する……それを避けることは不可能。
だが、たとえそうであっても私はどうしても自分の死の真相を知りたかった。
たった一つの手掛かりは、私が救った彼女しかない。死の現場にいた、目撃者。
クネリは、“彼女が今夜の全てのカギを握っている”と意味深に語る。
私はさっぱり意味が分からなかったが、とりあえず彼女のそばに向かうことにした。

343 :ゴーストトリック◆l1l6Ur354A:2010/09/09(木) 02:31:46 ID:tYiRL97e0
私は傘に取り付き、彼女の傍に落とした。
彼女はその傘を差して、私の死体の元へと向かう。
彼女は、私の死体の胸ポケットから何かのメモを発見したようだ。
私がメモに取り付き、その内容を読もうとしたその瞬間、突然公衆電話のベルが鳴り出した。
メモは彼女のポケットにしまわれ、その内容は読めなかった。
しかし、今気になるのはその内容より公衆電話の向こう側。
よくよく思い出してみると、彼女の運命を変える前……彼女を殺害した後、
殺し屋がその電話を取り、仕事の報告をしていたのだ。
つまり、電話の向こう側に殺害の依頼主・私を殺した犯人がいる。
電話に取り付いてみると、電話ごしに私は犯人の姿を“目撃”した。
しかし、電話の相手が殺し屋でないことを知った犯人はすぐ電話を切ってしまう。
犯人のところに行きたい……だがどうすれば?
そこでクネリから、最後の《死者のチカラ》を教わる。
《チカラ》で、電話線で繋がった2つのポイントを飛び越せるというのだ。
もう《チカラ》が消えかかっていて、一緒には行けないというクネリから一つ“おねがい”をされる。
今夜、この街では何かが起こっている。その“真の姿”を知ることが出来るのは“私”だけ……。
「《死者のチカラ》を使って、それを探っていただきたい。」
私は、私自身の謎を追うだけだと返すが、クネリはそれで充分と答える。

こうして、私のタマシイをめぐる一夜限りの物語は始まった……。
夜が明けるまでに、かならず答えを探しだす。


 続く






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