死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~

part56-133~145,147~151,153


133 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/29(火) 22:23:02.93 ID:IAX/dCG+0
さて推理ADV繋がりと言うわけでもないですが死角探偵の1章持ってきた
再プレイしながら書いてたら長くなってしまったが許して欲しい
複線関係全部切ると本当に面白みも何も無いゲームになるんだぜこれは

134 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:25:51.58 ID:IAX/dCG+0
最初に断っておかなければならないことがあります。

この作品、続編ありきで作ってるくせに続編の見込みは限りなく0に近い。
(製作会社の公式サイト2008年で更新止まってるし)
ストーリーのところどころに複線が散らばっているのだが、推理ADVという性質もあって
事件の複線なのかストーリーの複線なのか分かりにくいものが多い。
だからと言って解決しない複線を全部切ると話がちぐはぐで分かんなくなる。
よってかなりの部分「この作品で解決しない複線」をまとめに入れます。
何と言うかその……ごめんなさい。

あと個人的にかなりの雰囲気ゲーだと思ってる。うざいかもしれないがその場合はスルーを。
現代ファンタジーな推理ADVの雰囲気が少しでも出てたらいいのだが。

■主要登場人物

・空(くう)
主人公。「自分が信じられるもの」を探す青年。苗字は無い。
性格は厭世的でローテンション気味。自らを「空虚」であると語る。空(そら)が嫌い。
でもボケとツッコミを同時にこなせる貴重な人。
実は人間じゃない。後述するふたつの不思議な力を持っている。

・夕葵観砂(ゆうき みさ)
夕葵3姉妹の次女。高校生。明るく行動力に富む。
1年前のある事件を追っていて、空に協力を依頼する。

・夕葵咲樹(ゆうき さき)
夕葵3姉妹の三女。中学生だが現在は休学中。
1年前の事件のショックで事件前後の記憶と、声を失っている。
声が出ないせいで大人しそうに感じるが、本来の性格は非常に積極的で活発。

・夕葵鳴海(ゆうき なるみ)
夕葵3姉妹の長女。21歳。喫茶店「アルモニオーソ」の店長。
妹達を守るために必要以上に張り詰めている。元ヤン。
彼女が入れるコーヒーにはファンが多い。

・ユキヒロ
空と同類の人ならざるもの。『精霊』らしい。
「あらゆるものの監視」が仕事だとか。空以上の視点を見る能力を持っている。
空の監視もかねて猫の姿で彼の周りをうろちょろする。

・夕葵風行(ゆうき かざゆき)
故人。3姉妹の父親にして、高名なピアニストであった。
1年前に謎の自殺を遂げており、観砂はその死に疑問を抱いている。

135 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:30:16.23 ID:IAX/dCG+0
■空の能力

・死角を見る力
人の落とした感情の欠片を手に入れることで、他人が過去経験した視点を見ることができる。
ただし死んだ人の視点は見えない。24時間以内に会った人のもの且つ24時間以内に見た風景のみという限定もある。
基本的に自由に見られる訳ではなく、1つまたは2つの『視覚の欠片』と呼ばれるきっかけが必要。

また、取得した視点を繋ぎ合わせて一つの結末に辿り着くと(具体的に言うと事件を解決すると)、一時的にだが一連の出来事の関係者たち全ての視点を共有することが出来るようになる。

・心の声を聞く力
触れた相手の心の声を聞くことが出来る。ただし非常に限定的な能力。
互いに信頼し、互いに対して意識を向けている必要がある。つまり信頼しあえる人間にしかこの力は使えない。
空はこの力が使える相手に出会ったことは無い。そしてそのような相手を探している。

ゲームのメインは「死角を見る力」を使って、空にしか分からないところから推理を進めていくことだと思う。
とりあえずきっかけさえあれば残留思念的なものが見える人と思っておけばおk。

136 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:32:19.93 ID:IAX/dCG+0
空(くう)は人ならざるものである。
しかし、その存在は完全なものではない。
異質な存在である空は消されてもおかしくなかった。
しかしユキヒロは、空を見守ることにした。半ば面白がりながら。

――さあ、『新しい終わり』を始めよう。



第1話「隠島伝説殺人事件」



何故なら、アイツが山に行くと言ったから。

空は春の寒々しい海岸の砂浜で惰眠をむさぼっていた。
「……死んでる?」
そんな声で目を覚ます。高校生ほどの少女が空を見下ろしていた。
夕葵観砂と名乗った少女は、続けて空に質問をする。

「こんなところで何してるの?」
 ――見ての通り、昼寝だな。
「どうしてこんな晴れた日に、空(そら)に顔を背けて寝てるの?もったいない」
 ――眩しいからだよ。え、もう日も傾いてるから嘘だって言われても。
「体が半分ぐらい濡れてるのに平気なの?」
 ――え?

海の潮が上がってきていたせいで、寝ている間に体半分ほど海に浸かってしまっていたのであった。
何とも間抜けながら想定外の事態に、観砂が少し考えた末に提案してくる。
「よかったらだけど、ウチ来る?ウチっていうか、ウチの別荘っていうか」
観砂の指差す先の沖合いには、砂の道で繋がった小さな島があった。
そこにある別荘でシャワーを貸し濡れた衣服を乾かさせてくれるという観砂。空はその申し出を素直に受けることにする。

「……俺は空が嫌いなんだ」
「え?」
「ふたつ目の質問の答えさ」

島の名前は『隠島(かくしじま)』。色々なものが見えなくなってしまうという曰く付きの伝説を持つ島だった。

137 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:33:52.74 ID:IAX/dCG+0
■第1話登場人物

・夕葵草平:風行の弟。売れないヴァイオリニスト。
・岩滝隼夫:観砂たちの従兄弟。胡散臭い物理学者。鳴海が好き。
・樫埜新一:風行の従兄弟。売れない画家。
・樫埜弘美:新一の妻。がめついヒステリックなおばさん。
・小山内:コック。今回の集まりのために呼ばれた。
・木戸義考:風変わりな刑事。風行の友人。


隠島は観砂の父親・風行の仕事場として使われていた別荘だった。とはいえ、半年に1度程度しか使われていなかった場所だ。
今日この日は夕葵の親戚一同が集まっている。
1年前に謎の自殺を遂げた風行の遺品整理をかねた遺産分配が目的であった。
夕葵風行は高名な音楽家で、島の屋敷に残された美術品だけでも相当な量があるのだ。

観砂は空にシャワーと着替えを提供する替わりに「ここにいる人たちを見張っていて欲しい」とお願いする。
彼女は父の死を自殺だとは考えていなかった。自殺をする理由がない、と。
隠島には前の持ち主が謎の死を遂げて以降「人や物が消えてしまう」という伝説がある。
磁場の関係で時計は正常に動かないし、島へ繋がる道は満潮で消えてしまう。
……だがこの噂は今回この屋敷に来た誰かが風行に吹き込んだことらしいのだ。
島を購入した後から、島の屋敷に飾ってある美術品がいくつか無くなるようになった。
つまり観砂は「物が消える呪いの噂を吹き込んで、屋敷から美術品を盗み出した人物がいる」と考えている。
そして……もしかするとその件で風行は殺されたのかもしれない。
だが全ては観砂の推測で、証拠もない。
それでも観砂は諦めきれず、空をここまで連れてきたのであった。協力者とするために。
そう、隠島は「満潮で道が消えてしまう」。
服を乾かしている間に帰り道は無くなってしまっていた。いやがおうにも空は隠島の屋敷に1泊しなければならなくなっていたのだ。

空は一宿一飯の恩(無理やりだけど)を返すのも悪くない、とのことでさり気なく集まっている人々に話を聞き込むことを了承した。
どうせ翌日になるまでここからは出られない。それに、誰かに求められて力を使うのは初めてだった。頼りにされる、というのも悪くは無い。
空には特別な力があった。あるきっかけを得れば、誰かの過去の視点をあたかも自分が見たかのように見ることが出来る力だ。
彼は人間ではない。自分が信じられる存在を求めて、彼は彷徨っていた。
時刻は夕方。夕飯までの時間が空いていた。
隠島にやってきていたのは空を除いて全部で9人。
屋敷を見て回りながら話を聞いていくことにする。
探るべきことは2点。「屋敷から盗みを働いた人物」「それを隠島の呪いのせいにした人物」の調査。
とは言え観砂の想像によるところが大きい要素である。まず空は各人の「遺品に対する執着」と「島の呪いに関しての反応」について調べていくことにする。

138 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:35:42.86 ID:IAX/dCG+0
・鳴海と咲樹
観砂の姉である鳴海と、妹である咲樹に話を聞きに行く。
鳴海は「観砂と私達に危害が及ぶことがあったらぶっ殺す」と脅迫まがいの念押しをするものの、観砂にも何か考えがあるのだろうと察してある程度の協力を約束してくれる。
この隠島の屋敷は風行が創作活動に煮詰まった時に訪れるまさに「隠れ家」的なところであったという。鳴海でも父が死んでしばらくずっと忘れていたくらいだ。
今回の集まりのきっかけは、風行の記念館が建てられることになったためにそこに寄贈するものを選別する必要があったから。
屋敷には非常に多くの美術品が点在していて、記念館に寄贈するもの以外を遺産として親戚に分配することになっている。
鳴海曰く「ガス抜き」。風行の遺書には娘達への遺産分配しかきちんと示されておらず、親戚達にはまともに遺産が入っていないのだ。そのことをめぐって葬式の席で言い争いがあったくらいである。ここで遺産を渡しておいて後腐れないようにしたい、というのが狙いだ。
その話をしている間、咲樹はずっと空のほうをみて何か言いたそうにしていた。しかし彼女から声はかけてこない。
そんな様子の咲樹を鳴海は非常に気にしているようである。
しかし踏み込もうとすると鳴海に止められてしまうため、詳しいことは分からずじまい。

・厨房
コックとして招かれている小山内が、夕食の準備をしている。
厨房の設備はそこそこのもので、後から新設されたと思われるキッチン周りやどっしりとした電子レンジが目立つ。
元々はフランスの有名料理店で料理長にまで上り詰めたほどの人物だが、何故か今は日本でフリーの料理人をしている。
彼は風行の関係者と言うわけではなく鳴海の知人。今回の件のためにわざわざ呼ばれたのである。
その報酬としてこの屋敷にある食器類の美術品を分けてもらえることになっている。
しかし遺産が分配される相手に赤の他人が混じっていることに、風行の弟の草平がいい目をしていないことに小山内は気付いている。
また自称「物理学者」である隼夫に対して、努力もせずに結果を求める人間だとしていい感情を抱いていないようだ。
隼夫が読んでいる専門書を小山内が投げ捨てている視点を手に入れる。相当嫌っているようだ。

・応接間
岩滝隼夫がいた。観砂たちの従兄弟で自称「物理学者」。
空が来た途端、何かを隠す動作をする。書きかけの手紙のようだ。
彼はどこかの研究機関に所属している訳でもなく、「自分はいずれ一山当てる人間である」ことを信じて疑わない。
いずれ大成するため今が貧乏であるのも仕方がないと語る。
遺産には執着しているわけではないが貰えるものは貰っておく、との立場。
空が「物が消える呪い」について切り出すと、「樫埜が犯人でしょ」と断言する。
樫埜は以前こそそこそこ売れていた画家であったが最近はさっぱりで、それでも妻の金遣いは荒いままなので家計が火の車であるのだと言う。

・樫埜夫妻の部屋
その話があった樫埜夫妻の部屋へと行く。
夫の樫埜新一は画家。しかし妻の尻にしかれる非常に小心者である。
空を見た瞬間驚愕した表情を向けるが、そのまま流されてしまう。
スケッチブックにデッサンをすると言って中々顔を上げてくれない。
妻の弘美は高級志向で非常にがめつい。人一倍遺産を欲しがっている。
フラワーアレンジメントをしているので花瓶や陶器の食器類が欲しいと話すが、食器は小山内が貰い受けることになっているのではなかったか?そこを指摘すると「わたくしが先に目をつけていたのに横取りされた」と憤っている。
小山内にはバツイチで娘もいるからお金には困って横取りしてくるのだ、と弘美は怒っている。
しかし新一は風行の従兄弟であり、遺産を貰える立場としては少々弱い。何故彼らがしゃしゃり出てくるのか問うと、新一と風行は幼い頃より親交があり、お互いが大きくなってからもよく酒を酌み交わす仲であったのだと自慢げに語られた。
弘美曰く、近年でも3ヶ月に1度はこの屋敷に呼ばれていたのだという。
……3ヶ月に一度?風行は半年に一度程度しかこの屋敷を利用していなかったはずだが。
そこを追求しても弘美は「確かに呼ばれていた」としか答えない。どちらかが間違えているのだろうか。

139 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:42:04.52 ID:IAX/dCG+0
・木戸の部屋
鳴海に呼ばれた刑事のところへ。名前は木戸義孝。飄々とした雰囲気を崩さない人だ。
元は風行の飲み友達で、ミステリ好きの同士でもあった。
風行は変な噂には目が無く、噂を聞いたことで屋敷の購入を決めたのだと言う。
彼は風行の娘である観砂たちを守るためにここにやってきたが、もし何かあるようなら誰にも容赦はしないとも語る。

・草平の部屋
風行の弟である夕葵草平のところへ。容姿は眼鏡をはずせば風行にかなり似ているだろう。
眼鏡をかけているが、実は伊達眼鏡なのだと言う。
兄と同じ音楽家だが、こちらはヴァイオリン奏者である。
ただし腕はそこそこ。兄の七光りで多少注目されているくらいのようだ。
呪いの事について聞くと「金目のものだけが消える呪い」などあるはずがないと一蹴。誰かが盗んでいる可能性に思い至っているようだ。
草平が一番気にしているのはかつて風行から譲り受ける約束をしたストラディバリウス。非常に価値のある有名なヴァイオリン。
ストラディバリウスもまた同じくこの屋敷から消えていることに、草平は怒りを覚えている。
その件もあるのか風行の遺産を持っていこうとする人たちにいい印象は抱いていないようだ。
特に樫埜夫妻については呆れてすらいる。同じ芸術家としても新一の絵には全く興味が湧かない、と投げ捨てるように言う。
しかし新一がスケッチブックに描いたデッサンを見て憤慨している草平の視点が手に入る。興味が無いと言っていたはずなのに……?

・外
隠島は2階建ての屋敷と、岩場に立つ小さな灯台がある。空は屋敷を見て回る。
灯台のほうまで足を運ぶと、ラベンダーが供えられていた。
献花のようだ。誰かがここで死んだのだろうか?

外から戻ると玄関には写真立てが飾られていた。
夕葵一家の集合写真――その中に草平に似た男性の姿がある。
それこそが夕葵風行その人だ。
写る風行の姿は、空が借りて着ている衣服と全く同じものだった。
空が着ている服は風行のものであるのだ。

・・・

夕食の席では会話も殆ど無く、張り詰めた空気での食事が続いていた。
机の上にはラベンダーが飾られている。弘美が持ってきたものだと言う。
空は灯台の下にも同じものがあったことを思い出し弘美に聞くと、確かにそれも弘美が供えたものなのだそうだ。
しかし何故あのような場所に献花をしたのか。それを問うと「呪いが怖いから」と答えた。
20年ほど前にこの島で、何故かミイラ化して打ち上げられた遺体が発見されたのだ。
そしてそれ以来この島の周辺では何名か行方不明者が出ているのだと言う。
その話を受けて隼夫が饒舌に持論を語りだした。行方不明者は時空を超えたのではないか、と。
「ワームホールってご存知ですかねェ?」
ミイラ死体はワームホールを通って別の時空に飛んで行き、何年も経って後また時空を越えて戻ってきた。
行方不明者はワームホールを通って別の時空に飛んでいったまま帰れなくなってしまった。
眉唾物の話を、隼夫はこの島周辺の磁場が不安定なことを根拠に上げて更に持論を展開していく。

140 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:43:30.13 ID:IAX/dCG+0
「しかし近年は美術品がなくなるだけ、と妙に現実的なことしか起こってないじゃないか」
「そうとも言えないだろう?大きな事件があったじゃない。
 ほら、風行さんが消えたじゃないかァ。この屋敷からね。
 現場はここじゃなかったけど風行さんはワームホール発生に伴う強い磁場に当てられて心を病んで……」
「出て行ってください」
ついに鳴海が切れた。それをきっかけにただでさえ悪かった空気が凍りつく。
新一は一服しに、弘美は化粧なおしに外へと出て行った。
小山内はデザートを用意するとのことで、コーヒーを入れる鳴海とそれを手伝う草平もまた席をはずした。
その間停電するものの、すぐに復旧する。よくあることなのだそうだ。
時間を確認しようとしても、この屋敷のどこにも時計はない。磁場のせいでまともに動かないのだ。携帯も通じない。
対磁時計を所持している鳴海、新一、草平の3人だけが時間を正確に知ることが出来る。
時刻はもう午後8時半を回っていた。
結局デザートまでに弘美は戻ってきたが、新一は戻ってこなかった。

・・・

部屋に戻って対策会議をした後観砂に部屋を追い出されてしまい、空は応接室のソファで寝る羽目になってしまう。
応接室へ向かう途中、片づけをしていた小山内に会う。
有名料理店で料理長にまで上り詰めたにも関わらずフリーへと身をやつしたのは、その世界の権力争いに疲れてしまったからなのだと語った。しかしそのせいで妻には愛想を着かされ、離婚した挙句に高額の慰謝料を請求されているのだと言う。
廊下での立ち話の最中、近くの部屋からは樫埜夫妻の夫婦喧嘩が聞こえてくる。妻の金遣いの荒さについての口論のようだ。
玄関からは隼夫がやってきた。外に出ていたようだが、何をしていたのかは分からない。
応接室に着くと草平が毛布を持ってきてくれた。
そしてそのまま寝てしまう。不思議なほどの睡魔が襲ってきていた。

・・・



目の前に樫埜新一がいる。
居る場所はベランダだろうか、夜の海が遠くに見える。
だが頭上は明るい。
新一は怯えて振り返った。
恐怖の表情を浮かべて後ずさる。

手が伸びた。

瞬間。視界から新一が消える。
目の前には壊れた手すり。
覗き込む視界。
頭から血を流している、新一の姿。
その顔に張り付いているのは恐怖。
純粋な恐怖。



141 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:44:44.68 ID:IAX/dCG+0
あまりの眩しさに空は目覚めた。
目覚めは最悪。あんなものを「見て」しまったからだ。
樫埜新一の殺害の視点。死者の視点は見れないため、空が見たそれは樫埜新一を突き落とした「犯人」のものである。
視点を得たきっかけは光。窓から入る眩しい光が眠っている空に容赦なく差しこみ、まるで悪夢のように犯人の視点を見ることになったのだ。
まるで昼間のようだが、よく外を見てみるとまだ夜だった。
眩しすぎる光は、灯台から照らされるものだった。現在は使われていないはずだ。
灯台の光は容赦なく屋敷を照らしている。向けるべき海とは反対方向だ。
視点から得た光の方角から空は犯人の居た場所は灯台であると結論付け、現場へと向かう。

灯台の下、岩場となったそこにはすでに空が視点で見た通り、樫埜新一の無残な姿があった。
傍らには、枯れはてたラベンダーが散らばっていた。

・・・

空は屋敷中の皆をたたき起こした。みな一様に目覚めがよくない。疲れているのか。
刑事である木戸が現場検証を行う。
死因は頭部の打撲、すなわち灯台から落ちたときの傷。
死後硬直は既に完成しており、死後8~10時間経過していると見られる。
現在時刻は2時。鳴海の時計と、新一の時計が一致しているから間違いないだろう。
だが、8時半の夕食には新一は確かに生きていた。それから8時間も経っていない。
不思議なことだと首をひねっていると、弘美が悲鳴を上げた。
弘美が供えていた献花の上に落ちてしまったせいか、花瓶が割れてラベンダーが飛び散っている。そのラベンダーを見て弘美は驚愕の表情を浮かべていた。
何故なら「ラベンダーが枯れていた」からだ。弘美は生花を生けておいたはずなのに。たかが半日やそこらでラベンダーが枯れてしまうだなんて話があっていいはずが無い。

それは、新一もラベンダーも、隠島の呪いによって時間が奪われてしまったかのような姿であった。

木戸はその話を有り得ないことだと一蹴し、事故の可能性が高いと主張する。
現場検証のために灯台へ入ろうとするが、鍵が掛かっていて開かない。
鍵は観砂が持っていた。昼間に中を整理して鍵をかけた後は、ずっと彼女が持っているのだと言う。
状況が変わった。灯台は密室であったのだ。
観砂が鍵をかけ忘れたのだとしたら、新一は灯台に入ることが出来た。後から新一自身が鍵をかければいい。だが、危ないところの鍵をかけ忘れた責任は観砂にある。
観砂が鍵をきちんとかけたと言うのが事実だとしたら、新一を含む観砂以外の人間にとって灯台は密室となる。だとすると灯台に新一を入れることが出来たのはただ一人……観砂だけだ。
ひとまず全員で灯台の中に入って調べるものの、他に抜け道などは存在しなかった。
木戸は事件性を考慮し、観砂に疑いをかけ始める。
弘美は「観砂が鍵をかけ忘れたから新一が事故死した」と観砂に責任を追及しようとする。
その全てをワームホールのせいだと主張する隼夫に周囲の空気は更に悪化していく。
だが空は知っている。これは殺人であると。
「どうやって新一と犯人が灯台に入ったか」この手段が見つからなければ、先程見た犯人の視点は観砂のものということになる。
観砂のことを庇いたてする必要は空にはない……はずだった。
しかし空は弘美に攻め立てられる観砂を庇い、木戸と共に灯台を更に調査することにする。
木戸もひとりで調査すると不要な疑いを招く可能性があることを理解しているため、渋々ながらも空の同行に了承した。

142 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 22:47:24.34 ID:IAX/dCG+0
灯台の中は無造作に美術品が置かれていた。1階は倉庫になっていた。
人一人通れる程度の窓はあるが、鍵が閉まっている。よくあるサムターン錠だ。
灯台の電気を操作する操作版にはレバーの他にダイヤル式のタイマーがついている。灯台の明かりはこれでつけることができるのだ。レバーはさび付いているのか動かしにくいが、ダイヤルタイマーは動かしやすい。分単位でのタイマー指定もできるらしい。
2階に鍵は掛かっていないが、手すりが海風で老朽化してしまっているためにロープをかけて上ることなどには耐えられないだろう。
調べているうちに空はふたつの視点を入手する。どちらも昼間の観砂のものだ。
ひとつは灯台の2階から砂浜で倒れている空を発見した時の視点。まあ実際は寝ていたわけだが。
「犯人」の視点と偶然にも同じ位置からの視点であることから、視点の高さを比べてみる。「犯人」の視点よりも観砂の視点は低い。「犯人」は観砂よりも背が高い人物だ。
これで空だけは「観砂が犯人ではない」ことを確信することができた。
そしてもうひとつは、美術品倉庫となっている1階を整理しているときの視点。
よく観察してみると、昼間は窓の鍵が開いている。だが今は閉まっている。誰かが閉めたのだ。
窓の辺りを再確認してみると窓枠に砂がついていた。窓からよじ登った形跡だ。


窓が開いていた可能性、そして何より窓から誰かが侵入した形跡があることで、観砂への疑いはかなり和らいだ。
一同は「呪い」のごとき新一の状態に恐怖しながらも各々の部屋に戻って休息をとることになる。
観砂は空に礼を言う。庇ってくれたこと、そして何より自分を信用してくれたこと。
そのうちに空は観砂の心の声が聞こえてくることに気がついた。
空が持つ特殊な力のひとつ。互いに信じあう者の心の声を聞く力。
しかし声は直ぐに途切れてしまった。まだ完全な信頼関係ではないのだ。
だが空にとってそれは初めての経験であった。短い間ながら、信頼しあうことができた初めての人間。
空は、観砂と彼女達姉妹をもう少し見守ろうと決意する。
彼女達こそが、空の探していた存在かもしれないから。

観砂単独の疑いこそ薄れたものの、事件自体は全く解決していない。
木戸は事故説を一番有力視しているようだが、空はこれが殺人であることを知っている。
観砂と共に、改めて操作に乗り出すことにする。


・樫埜夫妻の部屋
弘美の悲鳴が突如屋敷に響いた。
慌てて駆けつけてみると、弘美はスケッチブックを見て怯えている。
開かれているスケッチブックを見ると、そこには「枯れたラベンダー」のデッサンが残されていた。
新一が生前にこのような絵を残したことに何の意味があるのか。彼の死とラベンダーは関係があるのか。
呪いのせいで新一はこんなものを描いてしまったのだと弘美は泣き崩れた。
そんな弘美を尻目にスケッチブックを更に見せてもらうと「醜悪な表情を浮かべた風行のデッサン画」「屋敷から消えた美術品のデッサン画」がいくつも見つかる。
弘美はスケッチブックに何が描かれていたのかは知らないらしい。新一は頑として見せてくれなかったのだそうだ。
常にしがみつく様に持ち歩いていたスケッチブックに、新一は何を思ってこのようなデッサンを描いていたのだろうか。

143 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 23:01:50.28 ID:IAX/dCG+0
・厨房
小山内が洗い物を片付けている。
夕食の後すぐに眠くなってしまって残したままであったそうだ。
空はコーヒーカップのひとつをこっそり拝借することにした。屋敷全員が不思議なほどの眠気を覚えているのを、睡眠薬が入れられたせいではないかと考えたからだ。
ホットミルクを作ってくれるとのことで電子レンジを開けると、中には砂が散らばっていた。
そこで「電子レンジで砂の入った容器を暖めている」視点が手に入る。
ある可能性に思い至った空は、フラワーアレンジメントをしているという弘美に質問する。
「花を砂と一緒に容器に詰めて電子レンジで暖めると2~3分でドライフラワーが出来る」
「そういえば死体の周りに散っていたラベンダーにはまだ香りが残っていた」
この証言から、散乱していたラベンダーは誰かが人為的に作り上げた可能性が提示された。
スケッチブックに残っていたデッサンを見て、呪いに見せかけるために急遽思い至ったのかもしれない。
スケッチブックは昼間のばたばたしていた時なら誰でも見る機会があっただろう。

・鳴海と咲樹の部屋
弘美からスケッチブックを借り出し鳴海たちに見せる。
描かれている美術品は確かにこの屋敷にあったものであることを確認できた。
(後に弘美に確認すると、まとまったお金が入ってきた日と美術品が書かれているスケッチの日付が一致する)
屋敷から物が消える「呪い」の正体は死んだ新一の盗みであった。
描かれているものについて話していくうちに、スケッチブックは新一のストレスの刷毛口になっていた可能性について思い至る。
醜悪な表情をした風行も盗み出した美術品も、彼の鬱憤の現れてあったのではないか。
枯れたラベンダーも、弘美へのあてつけに口には出せない思いをぶつけて描いたものであるのかもしれない。
弘美にはいつも尻にしかれて散財の日々を送っている。かつてはある程度の人気があったが、風行のような成功ももはや程遠い。
風行の屋敷からこっそり美術品を盗み出して売りさばき、それで得た金を絵が売れたと偽って家へと持ち帰る日々。
スケッチブックには彼の感情の全てが吐き出されていたのではないか。
空を初めて見たときに異様に驚いていたのも、風行への恐怖心からであった可能性が高い。
空は「風行の服」を着ていたのだから。小心者の新一はそんな些細なことでも驚いてしまったのだ。
(新一の視点で空の服をガン見しているものが手に入ることからも分かる)

部屋には隼夫から鳴海にラブレターが届いていた。
鳴海は必死に気付いていないフリをしている。
「灯台で未来を語り合おう」だそうで。
隼夫がちょろちょろと出入りしていたのはそのためのようだ。

・草平の部屋
部屋に行くと物に引っかかってこけながら草平が出てくる。
こっそり空は草平をドジっこ属性認定。酷い。
部屋にはビタミンAのビタミン剤のビン。何粒かこっそり拝借する。
コーヒーに入っていた睡眠薬ではないかと疑い調べてみるが、普通のビタミン剤であった。

144 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 23:04:32.82 ID:IAX/dCG+0
・灯台
隼夫がワームホールの立証のために灯台に来ていた。
鳴海に褒めてもらいたいらしい。空気が読めないにも程がある。
新一の死体を再度確認する。よく見ると新一の死体は割れた花瓶で傷ついていない。
花瓶の上に落ちて割れてしまったのではなさそうだ。
虱潰しに探してみると花瓶とは別のガラスの破片が落ちているのを発見する。
眼鏡のレンズのようだ。度が入っているかどうかも分からないほどの小ささだが。
花瓶が割られたのはこのレンズ片を隠すためである可能性が高い。
突き落とした時の犯人の視点は若干視界が悪かったことからも、犯人は眼鏡をかけていたと思われる。
すなわち犯行前後で「眼鏡が変わっている」「行動に不自然な点がある」可能性が高い。
眼鏡をかけているのは草平、隼夫、小山内、木戸の4人。ただし草平は視力が悪いわけではないが。
しかしこの4人はいずれもかけている眼鏡に変化はなかった。

今度は灯台の中に入る。
窓の近くを再度確認すると、窓付近の絵画の縁の埃だけが落ちていた。
他はみんな埃をかぶっている(観砂が掃除をサボったから)のに。
また窓の下には画鋲が落ちていた。不自然な場所だ。
1階をところどころ調べていると螺旋階段の下に、地下室への扉を発見する。
空が来る前の昼間の段階では誰も気付いていなかったようだ。
パイプが張り巡らされた小さな空間。灯台の施設と言うには若干不自然だ。
奥には通路があったが行き止まり。何とも不思議な空間。
棚には資料や楽譜。机の上にはピアノ線の切れ端。
楽譜があると言うことは、風行はこの場所を知っていたのかもしれない。
そして「犯人」らしき人物の視点を入手する。
地下室の中をうろうろする様子が分かった。犯人はこの空間に入っている。

・・・

観砂をさり気なく監視している視点が手に入った。木戸のものだ。
途中参加した空、そして彼を連れ込んだ観砂。疑うなと言うほうが難しい。
事故だと主張していたが、実際木戸は殺人だと思っていた。
何故なら新一の顔には「恐怖」の表情が張り付いていたから。
事故ならばあのような表情はしない。刑事の経験が告げている。
だが不可解な点は確かに多い。だが死体に起こった「呪い」についてはこじつけられる範囲内であると木戸は言う。
通常よりも死後硬直が早く始まれば解決するのだ。
気温が高かったり、死ぬ前に急激な運動をしていたり、精神に極端な負担がかかった状態のまま死に至った場合――死後硬直は早まる。
前者2つは状況としてありえない、だが恐怖の表情を浮かべて新一は死んでいたのだから最後は当てはまる。
後の不可解の状況は犯人に聞けばいい、と木戸は空と観砂をねめつけた。

145 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/29(火) 23:15:48.14 ID:IAX/dCG+0
あとちょっとなんだけどここで切ります
データは殆ど揃えたはずなのでよかったら考えてみてくれ
犯人を特定する材料はちょっと足りないかも。ヒントが微妙なのが多くて綺麗に入れられなかった

>>84の説明すごく参考になった
時間帯によっては結構連投できるんだなー

147 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/30(水) 22:49:43.29 ID:nQ5DMifA0
「大変、大変だよォ!」

膠着した状況を、大声を上げながら飛び出してきた隼夫が崩した。
「またワームホールが発生したんだよ!」
現場に戻ると、新一の死体が忽然と消えていた。
隼夫はずっと灯台付近で調査(と鳴海を待っていた)のだが、紙飛行機で飛んできた鳴海からの手紙(もちろん偽物)によって別のところにおびき寄せられたと言う。そしてその隙に新一の死体は消えてしまった。
犯人が露骨な方法で死体を消したのだろう。焦りの証拠だ。
そしてずっと木戸に見張られていた空と観砂には死体の移動は不可能。
完全に容疑が晴れたわけではないが、木戸は気が抜けた様子で空たちへの疑いを改めた。

死体が人為的な手で隠されたことを機に、木戸は屋敷にいる全員への取調べをすることを決める。
今までは不可解な点があったにせよ事故や自殺の可能性も捨て切れなかった。
だが、人の手によって死体が隠されたのならば話は別だ。
あからさまな犯人のミス。起こした事件に仕掛けを上塗りしていくことで、余計に粗を出していったのだ。


空には全てのピースが出揃った。あとは犯人をおびき寄せればいい。
今の空にはこの事件の関係者全ての視点を把握できる。
それが得た視点を一繋ぎにしたときに可能となる空の力。
死角は、今開けた。

・・・

犯人はあっさりと空のしかけに引っかかった。
灯台の地下で高そうなヴァイオリンを発見したとの情報を流したのだ。

148 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/30(水) 22:50:28.44 ID:nQ5DMifA0
夜明け前に灯台の地下に現れたのは、夕葵草平。
彼こそがこの事件の犯人だ。

灯台の密室は簡単な時限装置を作れば窓の鍵をかけることが出来る。
地下にあったピアノ線を絵画の縁と画鋲をリールとして灯台のダイヤル式タイマーに巻きつけ、窓のサムターン錠に引っ掛ける。
後は時間が来れば灯台の点灯と共にダイヤル式タイマーがピアノ線を巻き取り、サムターン錠を引き上げてくれる。

まるで時間が消えたような「呪い」の現象も説明できる。
枯れていたラベンダーは電子レンジを使って簡単にドライフラワーを作り出すことが出来る。
新一の死後硬直のずれは、新一が死の直前に「恐怖」を感じるものを目撃したからだ。
精神的な衝撃を強く受けた死体は死後硬直が早まるのだから。
ではその「恐怖」、彼が最も怯えるものとは何か?
「夕葵風行」その人だ。空が風行の服を着ていただけでも驚きを隠せなかった程なのだから。
草平は風行にそっくりだ。眼鏡をはずし、服もそろえればまさに「夕葵風行の亡霊」の完成だ。

動機はストラディバリウス。
新一が美術品を盗んで売り飛ばしていることを、草平はスケッチブックを見たことで知った。
風行の死後見つからなかったストラディバリウスもまた新一が売り飛ばしたのだろうと考えたのだ。
最初は問い詰めようとしただけかもしれない。
しかし風行のふりをして恐怖を煽り、そのまま……。

それだけでは当然犯人の証明になどならない。
だが、花瓶に紛れていた眼鏡レンズの欠片が証拠となる。
レンズの破片自体からは度が入っているかすら分からない。空たちに判別は不可能だ。
しかし草平の眼鏡は昼間と変わっていない。それがおかしいのだ。
彼は「夜盲症」なのだから。
夜盲症はビタミンAの欠如で起こりうる症状。所謂「鳥目」で、暗いところでは視界が通常よりも悪くなってしまう。
その目を守るために昼間は光を抑える遮光レンズを使用した眼鏡をかけることがある。
草平のかけている眼鏡は「遮光レンズ」。サングラスの役割をする光の入ってくる量を調節するためのものなのだ。
何故草平は夜になっても遮光レンズの眼鏡をかけ続けているのか。
ただでさえ暗いところで悪くなる視界が、遮光レンズ越しであることで更に悪化しているのにも関わらず、だ。
何故なら彼は「夜用の伊達眼鏡」を犯行時に割ってしまっているから。
夜盲症であるが故に深夜の犯行時に眼鏡を割ってしまった際も、欠片を完全に集め切ることは出来なかった。
だから傍にあった献花の花瓶を割ってその破片の中に紛れさせ、それを誤魔化すためにあえて「呪い」に見せかけるような偽装工作をおこなったのだ。恐怖によって偶然死後硬直が早まったのは「呪い」に見せかけるためにも不幸中の幸いだったと言える。

149 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/30(水) 22:51:13.67 ID:nQ5DMifA0
空は薄暗い灯台の地下で、草平と対峙した。
空が拾った破片は、島から出て警察にきちんと調べてもらえば誰のものか簡単に分かるだろう。
集めた証拠と視点で得た情報を使って、あたかも犯行の様子を見ていたかのように空は語る。
目を閉じて、草平の反応を待った。
草平は近くにあった鉄パイプを手に取り、空に襲い掛かる。
だが今の空には例え自分の視覚を閉じていたとしても「見える」。
「今の俺に、死角はありません」
草平の視点からあっさりと攻撃を回避し、草平ともう一度向かい合った。

「……殺すつもりじゃ、なかったんだ」

それが全てだった。
きっとこの言葉に嘘はない。
草平はストラディバリウスのことを新一から聞き出せている様子は無かった。
最初は風行の姿を借りて脅かしてから、盗みのことを聞きだすつもりだったのだ。
だが睡眠薬を使って目撃者を無くそうとしていた以上、元々殺意はあったのだろう。


さて事件自体はこれで終わったが、騒動は終わらなかった。
空はストラディバリウスを本当に発見していたのだ。
灯台の地下室には隠し部屋があった。行き止まりの通路の先である。
風行の本当に大事なものを隠しておくための部屋だったのだ。
隠し部屋には風行の日記が残されていた。この部屋についての記述もあった。

『このところ、この屋敷からいくつかの物が消えている。
 何者かが盗みに入っているのかもしれない。
 私の特に大切な物が盗まれないように偶然見つけた隠し倉庫に隠しておくことにする。
 なかでもストラディバリウスは弟の草平に譲ると約束した大切な品だ。
 盗まれたりしたら、草平が悲しむ。
 すぐに渡してもいいが、それではあいつのためにならないだろう。
 楽器に頼ることなく、自分の音を見つけたときに渡してあげたい』

残された兄の言葉に、草平は泣き崩れた。
だが何故このようなところに日記は隠されていたのか。
木戸は「家族には知られたくないことが書かれているのかもしれない」と推測した。
その言葉を受けて、ひとまず日記は長姉の鳴海が預かることになった。
鳴海が読んで問題が無いと判断したら、姉妹みんなで読もう――と。

150 :死角探偵 空の世界~Thousand Dreams~:2011/03/30(水) 22:52:13.70 ID:nQ5DMifA0
事件は終わった。空は静かに屋敷から立ち去ろうとする。
だが観砂がそれに気付いて追いかけてきた。どうして行ってしまおうとするの、と。

「このまま帰らせたりしたら、ナル姉にどやされちゃう。
 うちの喫茶店に来てよ。今日は何でもご馳走しちゃう。
 だから、帰ろう。あたしたち3人と一緒に」

そう言って観砂は空の手をとった。

『どうしてかわからないけど、空を初めて見たとき
 この人はあたしたちにとって必要な人だって、そんな感じがしたんだ。
 やっぱりそうだった。ホントにありがとう』

観砂の心の声が、空の中に響いた。
心から観砂が信頼してくれている証。

――もう少しだけ、この少女に関わってもいいかもしれない。



第1話「隠島伝説殺人事件」 終



……さてここからは余談となる。
実は隠し部屋ではもう一騒動あった。隠し部屋には更に奥に続く扉があったのだ。
その先には、ある潰れた保険会社の研究施設が存在した。灯台の地下室が不自然なつくりをしていたのはこのためらしい。
秘密裏に冷凍睡眠の実験をしていたという話だ。呪いの噂の元となる行方不明の原因がここにある……のかもしれない。
そして屋敷の前の所有者にして、呪いの噂の出所となった人物。
それは樫埜弘美の父親であった。
あの献花は父に対するものであったのだ。そして呪いの真相を確かめるために新一に付いてこの屋敷にやってきた。
父どころか夫さえも「呪い」でなくした弘美が、一番の被害者なのかもしれない。

151 :ゲーム好き名無しさん:2011/03/30(水) 22:57:47.41 ID:nQ5DMifA0
以上で死角探偵第1話は終了です
ちなみに全3話
続きはちょっと先になると思います

何か足りないところとか、変だなって思ったところがあったら答えられる範囲で答えます

153 :死角探偵:2011/03/31(木) 02:39:37.92 ID:Te8WFh2l0
ごめん、1話で補足し忘れた部分があるのでちょっとだけ

・睡眠薬はいつ入れられたか
夕食後草平はコーヒーを入れるのを手伝ってる&停電があったのでそのタイミング。
鳥目の彼が停電時まともに動けるのか?という疑問は残るが、少なくともこの段階では眼鏡は壊れてないので、視界はそんなに悪くない。

・トリックに使ったピアノ線どうしたんだよ
密室はダイヤル式タイマーを使ったピアノ線巻き取りトリックなので、がっつりピアノ線が室内に残ってます。
ですが事件後一度当事者全員で灯台に入っている&灯台内の部屋の明かりはタイマーと同じところで管理していました。
灯台に入った直後、率先して部屋の電気をつける振りをして草平はピアノ線を回収しています。
空は「クモの巣みたいなものがあったが、後で確認するとなくなっていた」くらいしか認識できませんでした。
ピアノ線の出所もはっきりとは書き忘れたと思うのでここで補足すると、地下室にあったものを使ってます。
犯人が地下室に入った視点が手に入ってますが、草平は地下室でピアノ線を調達して密室を作り上げています。
犯行の計画性はともかく、トリック自体は行き当たりばったりであることをうかがわせます。

・枯れたラベンダーについて
順番は
「新一が弘美への当てつけに枯れたラベンダーを描く」
→「草平がスケッチブックを見て呪いに見せかけることを思いつく」
これもトリックが行き当たりばったり、ってのが分かる構図。

あとなんか抜けがあったら指摘してください
どこまで説明してどこを省略するか、推理物だと難しいなぁ





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