STEINS;GATE 変移空間のオクテット
part61-441~445
- 441 :STEINS;GATE 変移空間のオクテット:2012/07/08(日)
00:34:32.47 ID:TOMIacPN0
- 通称8bit。オクテットとは8進数、8人組。たぶんラボメンたち8人のことを指していると思われ。
このゲームはシュタインズゲートとカオスヘッドをつなげるブリッジ的なお話です。
というわけでカオスヘッドもよろしくね。ふひひ。
2010年のとある秋の日。俺はいつものように、電車で秋葉原にあるラボに向かっていた――。
ああ、自己紹介がまだだったな。俺は岡部倫太郎……というのは仮の名で、
その正体は狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真なのだ!フゥーハハハ!
まぁこれを読んでいる諸君は知っていて当然だろうがな。
血反吐を吐く思いでやっと勝ちとったこの平和な世界線シュタインズゲートで、不意にそれは起こったのだ。
俺の携帯に、未来の俺からメールが届いた。なに!Dメール…だと?
バカな!?電話レンジ(仮)は解体したはずだぞ…。
そのメールは長文だったが要約するとこんな内容だった。
未来の俺がいる世界線変動率は1.048728。シュタインズゲートは1.048596だから…少しだけズレている。
渋谷に住んでいる「ナイトハルト」という人物がIBN5100というレトロPCを手に入れたらしい。
そのせいで変動率が――未来が変わり、世界中の基幹産業の全てが「萌え」へとすり替えられてしまった。
その後に世界大恐慌という悲劇が発生してしまう。これは何としてでも避けなければならない。
「計画を壊す者作戦(オペレーション・ラーズグリーズ、と読む)の概要を説明する。
ナイトハルトという男からIBN5100を奪還せよ。それできっと世界線のズレは修正できる。
成功を祈る。エル・プサイ・コングルゥ」
IBN5100は、シュタゲでは探し回ったけど結局見つからなかった、というふうになっていたはずだ。
別の世界線のように、神社に奉納されていたのだろうか?
そんなことを考えつつ電車は秋葉原に到着。
降り立ったホームには天王寺綯がいて、何やら懐中電灯のようなものを弄んでいる。
「あー、その懐中電灯をよく見せてくれないか?」
と頼んでみたがこの小動物は突然泣き出してしまった。
これではどうしようもないので階段を下りて改札口の方へ行ってみると、ミスター・ブラウンが娘を探していた。
辺りを見回すと雷ネット翔のポスターがあったので、剥がして小動物に与えてやると泣き止んだ。
代わりに小動物から懐中電灯を受け取り、それをミスター・ブラウンに渡した。
さて、改札を出よう…としたが、あれ?ポケットに財布がない。落としたようだ。これでは改札を出られない。
「このライトはな、特殊な力があるんだよ。試してみるか?」
ミスター・ブラウンが言うには、懐中電灯は透明人間になる(正確に言うと周囲から見えなくなる)ライトなのだそうだ。
早速試させてもらうことにする。
ミスター・ブラウンが点けたライトの光にしばらく当たってから、俺は堂々と改札を通り抜けた。
- 442 :STEINS;GATE 変移空間のオクテット:2012/07/08(日)
00:36:29.62 ID:TOMIacPN0
- 何の咎めもなく、ラジ館の前まで来た。まさか、本当にこんなことが起こるとは……。
ミスター・ブラウンはラウンダーという、SERNのスパイだったが。SERNの科学力は世界一ィィィ!!
「俺だ。今から作戦を開始する。……わかった。定時報告は怠らないよう努力する。
そっちも無理をするな。ああ、そうだ、あまり気乗りはしないが、それがシュタインズゲートの選択だ」
これは昂った気持ちを鎮めるためにする俺の習慣で、携帯電話を耳に当ててはいるのだが、
その電話はどこにも繋がっていなく、結局俺は独り言を言っているだけで…って言わせんな恥ずかしい。
「あら。ヘンな人がいると思ったら、やっぱり岡部だったのね。厨二病乙」
現れたのは助手のクリスティーナ……もとい、牧瀬紅莉栖だった。
シュタゲだと9月に初めて会ったことになっていた。会ったばかりの頃は非常にしおらしかったのだが…。
今はこの通り、すっかり生意気になってしまった。
そう言えば、助手が話しかけてきたということは、もうライトの効果は切れてしまったということか。
「クリスティーナよ、今は大事な作戦の途中だ。お前と関わっている暇はない」
「なによそれ。バカなの、死ぬの?もう知らない!」
助手は勝手に怒って、去って行ってしまった。
世界線のズレがどれほどのものか確認するため、俺はラジ館に入った。
と、階段の途中に桐生萌郁が座り込んで携帯をいじっている。
萌郁に見つかるといろいろ面倒なことになりそうなので、なんとか見つからずにやり過ごす方法は……。
そのまましばらく待っていると、萌郁はそのまま居眠りを始めた。
萌郁の横をこっそり通って階段を上り、屋上へ。
そこにはタイムマシンがあった。また奴がこの時代に来ているのだろうか。
タイムマシンはそのままにしてラジ館から出て、万世橋を通って柳橋神社へ。
そこにはもう五月雨の素振りを済ませたというルカ子がいた。
巫女服を着て、思わず心がときめいてしまうほどのかわいらしさ。だがこいつは男だ。
IBN5100の所在を確かめてみるが、やはり無くなっているそうだ。
ルカ子に、ナイトハルトという男に心当たりがないかどうか聞いてみる。
「そういえば、駅前を通ったとき、ヘンなことを言われたんです。
これはけしからん巫女だ、って。その人、大きな段ボール箱を抱えてました」
間違いない。そいつはナイトハルトだ。
しかし、IBN5100は25キロもあるが、ナイトハルトはそれを持ち歩いているのか……。
習慣とは恐ろしいもので、喉が乾いたのでメイクイーン+ニャン2に行き
フェイリスの妄想トークに付き合いつついつもの流れでアイスコーヒーを注文していた。
そうだ、フェイリスにもナイトハルトのことを聞いておこう。
「段ボール箱を抱えた男?さっきここに来たニャン。その男の胸ポケットに
星来(せいら)のフィギュアが入っていたのをフェイリスは見逃さなかったのニャン」
フィギュアを持ち歩くとは、奴はキモオタなのかも知れん。
店を出ようとしたときにやっと、財布がないことを思い出した。
仕方なく助手に電話して呼び出し、事情を説明する。
「仕方ないなぁもう。倍返しだからな!」
文句を言いながらも、ちゃんと貸してくれるところが紅莉栖らしい。
助手から借りた金で支払いを済ませる。
- 443 :STEINS;GATE 変移空間のオクテット:2012/07/08(日)
00:38:13.72 ID:TOMIacPN0
- ラボに行って、まゆりとダルから話を聞く。
まゆりもナイトハルトらしき人物をドンキの辺りで見かけたと言った。
ダルはナイトハルトという名前に心当たりがあるらしい。
去年、渋谷の駅前に超能力少年が現れるという祭りがあった。
その超能力少年がナイトハルトだという。そのとき撮影された動画を見てみる。
映っているのは痩せ型の男だった。どうやら学校の制服を着ているようだが、小さすぎて顔はわからない。
ラボから出てみたが、行くあてはない。まだ会っていないラボメンが約一名いるが…。
と、見覚えあるマウンテンバイクがUPXの方へ通り過ぎるのが見えた。
UPXへ行くと…、見つけたぞ、ジョン・タイター、もとい、阿万音鈴羽!
聞けば鈴羽は、この秋葉原においしい物を食べに来たらしい。
そんな理由で気軽にタイムトラベルしないでくれ。あのバカ親(ダル)は娘にどういう教育してるのかね?
とにかく、腹が減ったという鈴羽になにか食べるものを与えなくては……。
万世橋に行って紅莉栖から借りた金でカツサンドを買い、UPXに戻って鈴羽に渡す。
カツサンドをもの凄い勢いで食べ終わり、満足した鈴羽はもう帰ると言う。
鈴羽を追ってラジ館の屋上へ。念のため、鈴羽にもナイトハルトのことを聞いてみた。
俺がカツサンドを買いに行っている間にナイトハルトに会ったらしいが、段ボール箱は持っていなかったという。
笑顔で手を振り、タイムマシンに乗り込み、鈴羽は、ジョン・タイターは、未来へと帰った。
「なに?何なの今の?説明しろ、岡部!」
何の前触れもなく、助手が登場した。俺の行動が怪しかったので、後をつけてきたのだという。
いつの間に助手からストーカーにクラスチェンジしたのだ?
とにかく、紅莉栖の怒りを鎮めなければ、落ち着いて話が出来ない。
こういうときのコマンドは……「hug」だ!
(「kiss」でもいいぞ!好きな方を選びたまえ!フゥーハハハ!)
「ちょ、何すんのよぅ。このバカ!」
>こうかは ばつぐんだ!
「……ねぇ、岡部。困っていることがあったら相談してほしいの」
俺は紅莉栖に全て話すことにした。未来の俺からDメールが来たこと。IBN5100を探していること。
「それで、ナイトハルトが今どこにいるかはわかってるの?」
「いや、ナイトハルトはもうIBN5100を手放しているだろう。
IBN5100の在り処には心当たりがある。付いてきてくれ」
それはドンキの裏のコインロッカーだった。違う世界線では何時間も張り込みをしていた場所。
その他の世界線でも、何度も、IBN5100はこのコインロッカーに収束している。
この使用中になっている扉の奥に、きっとIBN5100はあるのだ。
だが、どうやって開けよう?張り込んでいればナイトハルトはやって来ると思うが……。
「それなら、おびき出すのはどう?」
さすがは助手だ。いいことを言う。確か、奴は星来のフィギュアを持ち歩いていたんだった。
そういうことを知っていそうなまゆりに電話してみよう。
「星来ちゃんはね、ブラチューのヒロインだよー?星来ちゃんと言えば『ぼけなす☆』だよ」
電話をおもむろに切った俺はこう言った。
「助手よ、今ここで『ぼけなす☆』と叫ぶがいい」
紅莉栖は顔を真っ赤にして抵抗したが、世界を救うためだとか何とか説得する。
- 444 :STEINS;GATE 変移空間のオクテット:2012/07/08(日)
00:38:53.27 ID:TOMIacPN0
- 「ぼけなす☆」
アキバの中心で、ぼけなす☆と助手が叫ぶと、知らない番号からの着信があった。
「もしもし、僕だよ。僕の名前は疾風迅雷のナイトハルト。
ちなみに、ぼけなす☆の使い方、間違ってるから。これ豆知識な」
「なぜ、俺の携帯の番号を?」
「君のことは知ってるよ。だって、これまでウザいくらい僕に報告を入れてきたじゃないか。
それがシュタインズゲートの選択なんでしょ?ふひひ」
「そんなはずは…。だって、あれは単なる芝居で…」
ちょっと待て。冷静に考えてみよう。いくらSERNの科学力が世界一だとしても、だ。
透明人間になるなんておかしいだろう。他にも割愛したが非現実的なイベントが次々と……。
この世界線はあまりにもファンタジーだ。ならば、何が起こっても不思議はない。俺は考えるのをやめた。
「それで、ナイトハルト、貴様の目的を聞こう」
「僕を解放してくれ。数か月前、ネット上で幻のレトロPCを探せっていう祭りがあったんだ。
その時は見つからなかったけど、僕一人で探し続けて……。
ぼ、僕は妄想しすぎたんだ。IBN5100を神格化し過ぎた。気が付けば、僕はIBN5100と融合しちゃってたんだ」
「なん…だと?お前はIBN5100を抱えながら、アキバをうろついているのを目撃されているんだぞ」
「あれは僕が見せた妄想だ。君の仲間…ラボメン、だっけ?彼らにだけ、僕の妄想を見せた。
君をこの場に導くためにね。そしてまんまと釣られた。ふひひ」
ファンタジーなことが起こるのも、ナイトハルトの妄想のせいらしい。
「君には僕とIBN5100の融合を解いてほしいんだ」
「わかった。具体的方法を教えてくれ」
突然、ロッカーの扉が開いた。
「PCを起動して、正しいパスを入力してくれ。それが還るためのカギ」
「何かヒントのようなものは…?」
「それでも鳳凰院凶真なら、鳳凰院凶真ならなんとかしてくれる……!」
つまりノーヒント、と。
「わかった。何とかやってみよう」
「あとは任せたよ」
「ああ。それがシュタインズゲートの選択だよ」
- 445 :STEINS;GATE 変移空間のオクテット:2012/07/08(日)
00:40:27.26 ID:TOMIacPN0
- 段ボールからIBN5100を取り出し、起動する。そして助手にもパスワードを考えてもらう。
「ふむん。パスワードにするのは、言葉……もしかして、公式のようなものかも」
公式といえば、脳裏に浮かんだものがある。ir2……「fun^10*int^40=ir2」だ!
「正解。この公式で世界の可能性は殺されてしまったと思ったけど、全然そんなことはなかったぜ!
君たちの領域と、僕の領域、両方とも経験していれば簡単だった。
とにかく僕は解放された。迷惑かけてゴメン。これで世界は元通りになるはずだよ」
「ナイトハルト、ラボメンにならないか?」
「ちょ、『やらないか』みたいなwクソワロタ」
好意のつもりで言ってみたら、笑われてしまった。
「またどこかで会おう。エル・プサイ・コングルゥ。ふひひ」
気持ち悪い笑い声を残して、電話が切れた。
俺のリーディング・シュタイナーが発動し、世界が、元の形へと収束していく。
「こら!岡部!ちゃんと持ってよ、重いんだから」
俺は紅莉栖と二人で、段ボールに入ったIBN5100をラボに運んで行く途中だった。
「折角だが紅莉栖よ、このPCは神社に返すことにする」
そう言うと、紅莉栖は不満をあらわにした。
「夕飯をおごってやるから、機嫌直してくれ」
「え?いいの?ガチのディナーだぞ?高いぞ!?」
「ああ。何でも好きなものを頼め」
……今、ポケットに財布があるかどうか、わからないが、な。
END;
最終更新:2012年07月14日 03:02