スーパーダンガンロンパ2さよなら絶望学園(Part1/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。
part62-212~221,225~230,232~237,243~250,254~262,267~271,305~309、part63-53,54、part62-310


212 :◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:04:10.87 ID:RGd60neR0
スーパーダンガンロンパ2できました。
1をクリアしてることを大前提にしたストーリーなので、1の内容を知らないとチンプンカンプンだと思います。

213 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:07:42.63 ID:RGd60neR0
プロローグ『だんがん☆アイランドへようこそっ!どきどき修学旅行で大パニック?』

主人公日向創は、晴れがましい思いで私立希望ヶ峰学園を前にしていた。
今日から、日向はこの学校の一員になるのだ。
ここは、全国から天才達を集め、日本を担う希望に育てるための、政府公認の超特権的教育機関。
卒業すれば成功は約束されているとさえ言われ、実際に、第一線で活躍する要人は希望ヶ峰の卒業生である事が多い。
生徒の募集は行わず、入学方法はスカウトのみ。
条件は、現役高校生であること、各々の分野の天才であることだ。

野球少年が代表チームに憧れるように、日向は幼い頃からこの学園に憧れを抱いてきた。
そして…そして…おかしい、眩暈がする…扉が見える…
この扉に入らなければならない…入るべきだ…

ふと気が付くと、日向は扉を開けて教室の中に入っていた。
周囲には、同じく新入生だという少年少女が集まっていた。
全員が日向と同じ様に、この教室までどうやって辿り着いたか思い出せないという。
そして、今日向が入ってきたはずの扉がビクともしない。
完全に閉じ込められた形になり、生徒たちは焦りはじめる。

「安心してくだちゃい。皆さんはただ、修学旅行に来ただけでちゅよ。」
突然可愛らしい声が聞こえてきた。
振り向くと、教卓からピンク色の丸っこいウサギの様な物が飛び出してきた。
彼女?は、日向達の担任教師、ウサミだと名乗った。
入学式も済んでいない内に修学旅行?旅行といっても、一体どこに?
「どこって、ここでちゅ!」
モノミの声に合わせて、四辺の壁がコントのようにばっくりと割れた。
ハリボテの壁が倒れて現れたのは…

燦々と降り注ぐ太陽、白い砂浜を洗う青い波。
ヤシの木が立ち並んだ足元には、咲き乱れる真っ赤な花々。
そこは、テンプレ通りの、まさに南の島だった。
「おかしいだろ!今、希望ヶ峰学園に入学したところだっていうのに!」
日向が詰め寄ると、ウサミは優しく諭すように彼をなだめた。
「やっぱり、希望ヶ峰学園が気になっちゃうんでちゅね…。
希望ヶ峰学園のことは忘れて、修学旅行を楽しんでくだちゃい。その為の、修学旅行なんでちゅから…」

214 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:10:23.96 ID:RGd60neR0
柔らかな声に呼ばれて、ふっと日向の意識が浮上した。
「大丈夫?無理もないよね、突然こんなことに巻き込まれて…」
覗きこんでいたのは、新入生の一人、狛枝凪斗だった。
肌も髪も抜けるように白い、にこやかな少年だ。
どうやら日向は、ショックのあまり思考停止状態でうずくまっていたらしい。
他の皆はもう、互いに自己紹介を終えてそれぞれ島の探索に散っていた。
狛枝は改めて、自己紹介をしてくれる。
彼の能力は【超高校級の幸運】。「運」の研究のために、全国の新高校生から抽選で選ばれる枠らしい。
要するに、ただラッキーなだけの凡人だと狛枝は自嘲する。
日向も自分のことを話そうとして、愕然とした。
自分の才能が何なのか、靄がかかったように思い出せないのだ。
混乱するのも無理はない、と狛枝に励まされ、一緒に島の探索に出かける。
道中で、同級生達を探して改めて自己紹介を交わす。

【日向創/ヒナタハジメ】超高校級の???
主人公。cv:コナン。でもショタではない。むしろ179cm。
他の皆より記憶の混乱が深く、自分が何者だったのか思い出せない。
自分の頭で考えて判断する性格。空気を悪くしそうでも納得できないことははっきり主張する。
人はいいが、けっこう辛辣で流されにくい。そしてムッツリスケベ。

【狛枝凪斗/コマエダナギト】超高校級の幸運
全国の高校生から抽選で選ばれただけ…にしてはやけに肝が据わった少年。
超高校級の天才達を心から賛美していて、誰かが揉めたり困ったりしているといつもフォローに入る。
反対に自分を極端に卑下する癖がある。爽やかに自分の事ゴミ虫とか言うタイプ。
思わせぶりで意味深な言動が過剰に多く、ここまで来ると逆に黒幕じゃねーな感を醸し出している。

【終里赤音/オワリアカネ】超高校級の体操部
まさに野生児、といった感じのがさつな脳筋少女。強い奴と闘うのが大好き。
基礎やルールを無視するものの、圧倒的身体能力で高得点を叩きだす体操選手。
危機感に乏しく、規則を守るという概念が無いので、この修学旅行でもしょっちゅう皆の肝を冷やすトラブルメーカー。

【澪田唯吹/ミオダイブキ】超高校級の軽音部
超人気ガールズバンドの元メンバー。「放課後ボヨヨンアワー」はミリオンヒットを記録した。
やたらにノリが軽く常にハイテンション。考えてることがダダ漏れな、裏表のない明るい性格。
自他ともに認めるおバカだが、音楽の才能はまさしく超高校級。

【田中眼蛇夢/タナカガンダム】超高校級の飼育委員
自称「制圧せし氷の覇王」。末期の邪気眼。
絶滅危惧種の繁殖にも成功した凄腕の飼育委員だが、人との関わりを避け、動物達と共に世界征服を志すよく分からない奴。
最強の獣、破壊神暗黒四天王との盟約を語る彼のマフラーからは、4匹の可愛いハムスターが顔を覗かせている…

【罪木蜜柑/ツミキミカン】超高校級の保健委員
いつも誰かの顔色を窺っている、挙動不審で卑屈な美少女。
壮絶な虐待の中生き延びてきた生粋のいじめられっ子で、誰かに相手にしてもらう為ならどんな命令でも聞く。
根深い精神の歪みを抱えているが、健気で一生懸命な医療のスペシャリスト。

215 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:14:10.09 ID:RGd60neR0
【辺古山ペコ/ペコヤマペコ】超高校級の剣道家
変な名前だが、本人はクールでストイックな女武芸者。
生真面目で潔癖な性格で、よこしまな輩は背の竹刀で叩き斬る。
剣道家だが段位を持っていない。競い合う為ではなく、ある大切な物を守る為に剣を取っているかららしい。

【西園寺日寄子/サイオンジヒヨコ】超高校級の日本舞踏家
今回のロリ担当。性格の悪さも超高校級。ブリっ子口調で常に人の悪口を垂れ流している。
他人の心を踏みにじるのが大好き。反対に自分は打たれ弱く、何か言い返されると泣き喚く。
和の文化以外を馬鹿にしていて、この常夏の島でも常に和服を着込んでいる。

【ソニア・ネヴァーマインド】超高校級の王女
ヨーロッパの小国から留学に来ている、超ハイスペックな王女様。
透き通るような美貌と、柔和ながら無意識に相手を従わせてしまうカリスマ性の持ち主。
日本語ペラペラだが、ドラマフリーク、特にバブル期のF1層向けドラマのファンなので、かなりの死語使い。ぶっとび~。
民を導く指導者としての自覚を持ち、この修学旅行でも、常に優しく毅然とした態度を保ち続けている。

【花村輝々/ハナムラテルテル】超高校級の料理人
今回のブサイク担当。だが本人は性欲の塊。
欲望丸出しのセクハラ発言を連発し、隙あらばフェ●やセッ●●に持ち込もうとする。
しかもストライクゾーンが異常に広く、女の子たちはもちろん、日向や弐大も余裕で性欲の対象。
自称都会派で、青山や麻布がホームグラウンドだと常々口にしている。

【小泉真昼/コイズミマヒル】超高校級の写真家
珍奇なキャラの多い今作では、いたって地味な普通の少女。
「男子、ちゃんとしなさいよ!」系女子で、男にはいつもガミガミ口うるさい。

【左右田和一/ソウダカズイチ】超高校級のメカニック
見た目はチャラいDQNだが、機械をいじらせれば右に出る者はいない天才メカニック。
小心者の常識人で、変人奇人の集まりの中ツッコミ役として奮闘している。
ソニアにゾッコンで勝手にしもべ化しているが、全く報われていない。

【弐大猫丸/ニダイネコマル】超高校級のマネージャー
彼が手がけた選手は必ず成功する超一流マネージャー。選手をやれよと思うほどのガチムチボディ。
応援団気質の豪快な大男で、見かけ通りかなりの戦闘力を誇る。
素晴らしい素質を持ちながら基礎が疎かな終里を、選手として鍛え上げるつもりのようだ。

【七海千秋/ナナミチアキ】超高校級のゲーマー
見た目はおっとりした美少女だが、超ディープな天才ゲーマー。
ゲームには凄まじい集中力を発揮するが、平常時は立ったまま居眠りしていることも間々ある。
常にぽかんと無表情、あっぱれな程マイペースで、目の前の出来事や周囲の感情に引きずられない。

216 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:18:09.94 ID:RGd60neR0
【七海千秋/ナナミチアキ】超高校級のゲーマー
見た目はおっとりした美少女だが、超ディープな天才ゲーマー。
ゲームには凄まじい集中力を発揮するが、平常時は立ったまま居眠りしていることも間々ある。
常にぽかんと無表情、あっぱれな程マイペースで、目の前の出来事や周囲の感情に引きずられない。

【九頭龍冬彦/クズリュウフユヒコ】超高校級の極道
構成員3万人を超える最大級の指定暴力団「九頭龍組」のお世継ぎ。
可愛い美ショタだが、外見のことは禁句。童顔なんて言おうものなら指が何本あっても足りないらしい。
刺々しく、馴れ合いを嫌う一匹狼で、徹底して皆の輪に加わらない。

【十神白夜/トガミビャクヤ】超高校級の御曹司
日本を牛耳る超名家の御曹司。完全無欠の天才エリート。前作にも出演。
尊大な俺様ぶりはそのままだが、前作とは別人のように丸くなっている。色んな意味で。……というよりは…。
霧切系が今回いないので、頭脳派として先導役を務める。

【モノミ】担任教師
何故かCV:タラちゃん。心優しいウサギ型ロボだが、ウザさはモノクマ以上。
序盤はウサミと名乗っていたが、モノクマに改名させられる。←こういう類の茶番は割愛します。
生徒達を仲良くさせようと画策し、「希望」を育むことを提唱しているが、生徒達には冷たくあしらわれている。

島をざっと探索した所、以下の場所が見つかったが、全て無人だった。
・ホテル
幾つものコテージの連なりからなる、南国の高級リゾートといった趣の宿泊施設。
一人に一つずつコテージが割り振られ、そこで寝起きする。
各コテージの郵便受けにドット似顔絵付きのネームプレートが嵌っていて、誰のコテージなのか一目でわかるようになっている。
コテージ群を抜けたところに、大きなプールもあり、リゾート感はいや増している。
レストラン脇に、ホテル旧館と表示された木造のロッジがあるが、老朽化の為閉鎖中。
・レストラン
ホテルの敷地内に建っているレストラン。
南国らしい解放感のある作りでありながら、高級感と快適性も併せ持っている。エロコック輝々も大絶賛。
・ロビー
レストランの1F部分は、くつろげるラウンジになっている。
温泉旅館にあるようなチープなゲーム箇体があり、七海が夢中。
・牧場
何故か唐突に牧場。牛が呑気に草を食み、南国らしい極彩色の鳥が出迎えてくれる。
・空港
文字通り空港。だが、並んでいる飛行機からはエンジン部が丸ごと抜き取られている。
・スーパー
アメリカンな雰囲気の大型スーパー。食料品や雑貨衣類品はもちろん、サーフボードから暗視ゴーグルなんて物まで揃っている。
やはり無人なので、全品無料で持ち出しOK。
・島の各所に監視カメラが設置され、同じくモニタも備え付けられている。
モニタには何も映らないが、これだけあちこちにあるということは何か意味があるのだろう。

217 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:20:15.32 ID:RGd60neR0
この島は歩いて回れるほどの大きさしかないが、橋で「中央の島」に繋がっている。
中央の島からは他にも幾つかの島に橋が伸びているが、今は封鎖されていて渡れないようだ。
中央の島は「ジャバウォック公園」なる庭園になっており、巨大な石像が聳えている。
蛇、鳥、獅子に馬、その馬には人間の兵士が跨っている像だ。

道すがら、日向がフリーズしていた間に説明されていたことを狛枝が教えてくれる。
・電子生徒手帳
前作と同じカード型の端末。見た目は皆同じで、起動すると各々の名前が表示される。
地図、修学旅行のしおり、通信簿等が見られる他、今回はたまごっちのような電子ペットが育てられる。
・修学旅行の目的
生徒たちが友情を深め、希望を育むことがこの旅行の目的。
同級生達それぞれが友情が深めるたびに、「希望のかけら」なる物が手に入る。
全員が固い絆を結び合い、全ての希望のかけらを集め「希望の結晶」を手に入れたとき、修学旅行は終わり島から帰れるらしい。
・島での生活
危険なことは一切なく、ルールを守る限り生徒の安全は保証されている。
ルールとは、この島の自然を壊さず、お互いに仲良く暮らしていくということだけ。
例えば、いかだを作って脱出しようとするのは、島の木を切って環境破壊をしているのでNG。
・担任教師ウサミ
ウサミは、この旅行を引率する先生らしい。
生徒がルールを守っている限り、教師側が生徒に干渉することはない。 

島全体は、普通の修学旅行で来ていたなら万々歳だろう美しいリゾート地だ。
しかし、自分たち以外には徹底的に無人、空港の飛行機からはエンジン部が抜かれている。
これで警戒するなという方が無理だ。あちらの提示したルールだって信じられない。
日向はそう思うのだが、他の生徒たちは既に旅行気分で状況を受け入れ始めている。

集合して話し合ったところ、十神がこの島に心当たりがあるという。
5つの島の連なりからなる、風光明媚な常夏の楽園「ジャバウォック島」。
太平洋に浮かぶこの5つの島は、5体の「神聖な動物」をその象徴としているらしい。
しかし、十神が聞いたところによれば、既にこの島は……
そこまで言いかけたところで、十神はもったいぶって話を打ち切った。
「わめくな…。もう少し調べて確証を得たら、この俺から話してやるさ。」

そこにモノミが、皆が仲良くなる「動機」プレゼントとしてスクール水着を持ってやってきた。
これをあげるから、海で楽しく遊んで友情を深めてね、ということらしい。
冗談じゃない。こんな状況で、呑気に遊んでいられるか。
日向はそう激昂するのだが、同級生達に逆になだめられてしまう。
差しあたって危険もないし、言う事を聞く以外選択肢がないのだから、希望のかけらを集めればいいじゃないかというのである。
もちろん一部の生徒は警戒を解いていないようだが、ほとんどの生徒はホテルで水着に着替え、嬉々として海で遊び始めた。

なんだろう、この言い表しようのない疎外感。自分の方が間違ってるんだろうか?
呑気に海で騒ぐ同級生を見てるうちに、日向は自分ばかり気を回して心配させられているのに腹が立ってきた。
もう知るか!俺だってやってやる!のほほーんと楽しんでやるんだからなっ!
「おーい皆!俺を忘れてんじゃないだろうな!俺も混ぜてくれよ!」
日向が水着に着替え浜を走り出した途端、急激に空が曇り薄闇が押し寄せてきた。
「な、なんなんだよ!こんな急に天気変わるなんておかしいだろ!今度は何したんだよっ!」
腹立ちまぎれにモノミに詰め寄るが、彼女は空を見てブルブルと震えていた。
「こんな…こんなことある訳ないでちゅ…あるはずがないんでちゅ…あぁ、なんでこんなことに…!」

218 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:23:03.60 ID:RGd60neR0
ブツ、と音を立て、今まで沈黙を守っていたモニタが突如砂嵐を映し出した。
「あー、あー、マイクチェック、マイクチェック。オマエら聞こえてるー?
退屈な茶番は飽きちゃったでしょ。真打の登場です!ジャバウォック公園にお集まりください。」
底抜けに陽気で能天気な中に、底知れぬ悪意が潜んでいるのを感じる…そんな声だった。
走るモノミに続いて、中央の島に辿り着くと、中央の石像の影から、妙な物が飛び出した。
「あーっはっはっは!オマエラ、ごきげんよう!そして、おひさしぶりです!」
それは、縦半分で白と黒に分かれた、ドラえもんくらいのサイズのクマ型ロボットだった。
そのクマは、モノクマと名乗った。希望ヶ峰学園の学園長だと言う。
【モノクマ】
白と黒の、ちょうどドラえもんくらいのクマ型ロボ(Cv.大山のぶ代)
神出鬼没、冷酷非道の愉快犯だが、言動は陽気でひょうきん。
ドラえもんの声で、ドラえもんが絶対言わない事ばかり言う。

「なーにがドッキドキ修学旅行だよ!そんなもの誰も見たくないっての!
もっと世間のニーズを考えろよ!皆が見たいのは、絶望、他人の不幸だけだっつーの!
そういう訳で、ただいまよりコロシアイ修学旅行を始めます!」
・同級生の中の誰かを殺しましょう。殺し方は問いません。
・自分が犯人だということを隠し通しましょう。殺人発見後、一定時間後に行われる学級裁判を切り抜けましょう。
・学級裁判で誰が犯人なのかを議論し、結論が出たら全員で投票を始めます。
・皆に犯行を見破られ、投票の結果犯人に過半数の票が集まっていたら、その犯人だけが処刑、修学旅行は続行されます。
皆が間違えて無実の生徒に過半数の票を投じていたら、見事犯人は島外へ脱出。
他の生徒は全員処刑、修学旅行は終了します。

シンプルで、ハイリスクハイリターンな、絶望のゲームの幕開けだった。
モノクマはウサミをボコボコに負かし、彼女をモノミと改名させて、彼女の持っていたステッキを折ってしまう。
剣士ペコ、武闘派終里、巨漢弐大を擁する生徒一同はモノクマに刃向おうとするが、
モノクマは抑止力として、石像に擬態させていた大型ロボット達を起動させる。
モノクマは5体の動物のうち、鳥に内蔵されていたガトリングガンをモノミに掃射した。
モノミは一瞬で、焦げた綿くずと化した。

「別に、やりたくないならやらなくたってかまわないんだよ。
でも、青春は短いんだからね。40代になってからコロシアイ始めたって遅いんだからねー。」
モノクマが捨て台詞を残して去って行った後も、日向たちは呆然と立ち尽くしていた。
圧倒的に経験値の足りない、未知の出来事の奔流に、恐怖すらまだうまく感じることができない。
「気をつけろよ。俺たちの本当の敵は、モノクマでも、あの機械でもない。俺たち自身だ。」
十神は、傲然とそう言い放つ。
そう、お互いだけではなく、自分自身すら信じられない。
突然放り込まれた絶望の中で、他人を犠牲にすることで自分だけ助かりたいという衝動を抑えられるのか、確証はない。
だからこそ、絶望的だった。

<プロローグ終> 生存者16名

219 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:24:36.98 ID:RGd60neR0
CHAPTER1『絶望トロピカル』

・一度に1人が殺していいのは2人までです。
・生徒内で殺人が起きた場合、3人以上が死体を発見した時点で、死体発見アナウンスが放送されます。
・アナウンスから一定時間後、全員参加が義務付けられる学級裁判が始まります。
・学級裁判で正しい犯人を指摘できた場合、犯人だけが処刑されます。
正しい犯人を指摘できなかった場合、校則違反として全員を処刑。
犯人だけが罪を免除され、島外に帰還することができます。
・監視カメラやモニターを始め、島内の設置物を許可なく破壊することを禁じます。
・島内を調べるのは自由です。特に制限は課せられません。
・修学旅行のルールは順次増えていきます。チェックを怠らないようにしましょう。

プールサイドのデッキチェアで、電子生徒手帳をチェックしていた日向は、暗い気持ちで顔を上げた。
やはり、新しいルールがアップロードされている。これを守らねばならないのは、昼間目にした通りだ。
見慣れない満天の星空を見上げながら、とぼとぼと自分のコテージへ帰った。
綺麗で快適な木造のコテージには、バスルームとトイレも作りつけてあった。
寝支度を終えてベッドに転がると、微かに波の音が聞こえてくる。
全て夢だったら…と淡い期待を抱きながら眠りについた。

翌朝、モノクマの陽気な時報で、憂鬱な目覚めを迎えた。
十神が全員にレストランに集合するよう招集をかけていると聞き、身支度を終えて出かける。
皆同じような暗い顔をしているが、通常運転なのも何名かいる。
終里は完全に朝食の事しか考えていないし、七海は朝から階下のゲーム機に夢中。
エロコックの輝々は、現実を放棄することにしたらしく、
「ボクはこんなこと信じてないから大丈夫。もっと素敵なお話をしようよ」と序盤のギャルゲーモードを引きずっている。
皆を呼び出した十神も、いつもと変わらぬ不遜な態度だ。彼は全員集合を確認して、皆に宣言した。
曰く、自分たちが生き残るのに必要な物は何か?
絆か?確かに一致団結は必要だ。だからこそ敵は我々を分断するために疑心暗鬼を煽るようなルールを提示してくる。
しかし、集団が団結するためには、絆という不確かな繋がりでは生ぬるい。
明確なリーダーがもたらす統率こそ、今必要とされているものだと。
「そのリーダーを、俺が引き受けてやろう。
安心しろ。この俺が統率するからには、お前ら誰一人死なせはしない。」
実に強引だ。でもこれこそがリーダーシップ?
口煩い真昼がお約束の様に噛みつくが、他には誰も異論はなく、十神の仕切りに従うことになった。

十神はまず、一同をジャバウォック公園へ連れて行った。
そこには、動き出した銅像の代わりに、巨大な球体とタイマーが設置されていた。
タイマーは、心当たりのない設定時間をカウントダウンしている。残り時間は、あと21日と4時間弱。
たった一晩で誰がこれを設置したのか?この設定時間の意味とは?
他にもまだまだ疑問はある。リゾート地として有名なジャバウォック島をどうやって無人にしたのか?
高度な技術力を必要とするモノクマやモノミ、機械の獣たち等のロボットを開発、操作しているのは誰なのか?
その誰かは、どこからその操作を行っているのか?
そして、これは潤沢な資金を持った巨大な組織にしか為しえない所業だ。
これだけの細工をしているのだから、島内にその組織の手掛かりは残っているはず。
「死にもの狂いで探せ!」
十神の檄と共に、皆解散し、それぞれ自由に過ごしながら島内を探索することになる。

220 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:26:42.59 ID:RGd60neR0
その日は、島内を探索したり、誰かと親交を深めたりしている間に夜になった。
コテージで休んでいると、突然モニタからモノクマの声で招集がかかった。
言いつけ通りジャバウォック公園へ向かうと、皆もすでに集まっていた。昨日の脅しが利いているのだろう。
モノクマを待つ間に、九頭龍の態度の悪さが発端で、言い争いが始まってしまう。
「ちょっとあんたら、やめなさいよ!仲間割れなんてよくないって!」
「あぁ!?仲間だぁ!?俺がいつお前らなんかの仲間になるって言ったかよ。
この際だからはっきりさせておくけどなぁ、俺は殺れるぜ?」

九頭龍の言葉に場が凍りついた。九頭龍は、仲良しごっこなどより殺し合いの方がよほどわかりやすいとせせら笑う。
なおも挑発を続ける九頭龍を、十神が厳しい口調で諌めた。
「九頭龍よ…お前の考え方は分かった。それ自体は否定しない。かつて、俺にもそういう時期はあったからな。
だが、むやみに殺してどうなる?逃げ延びなければお前も殺されるんだぞ。
いいか、この島にいる限り誰も死なせんぞ!
一切の犠牲者は俺が許さん。それは九頭龍、お前もだ。俺はお前を死なせん。」
「なんだそりゃ、キレイごとばっか言いやがって…」
「確かに一般人が言えばただのキレイごとだろうな。
だが、俺は十神白夜だ。そのキレイごとを可能にする選ばれた男だ。
お前は好きにするがいい。
決して犠牲者は出させない。それは、俺が俺自身に課した義務だ。」
「くひーっ!白夜ちゃん、シビれるくらいかっこいいっすーー!!」
唯吹が身悶えている。確かに、ふくよかな背から後光が見えるようだ。

「あのー…」
その時、モノクマがタイミングを掴み損ねて地味に登場した。
「動機」をプレゼントしに来たのだ。スペアの機体で動いているモノミも一緒にいる。
「モノミってすぐそうやって怖い顔するんだから。気を付けてね、こいつは悪い奴なんだよ。
その証拠に、モノミはみんなの記憶を勝手に奪っちゃったんだからね。
しかも、どうやって島まで来たかなんて生ぬるいもんじゃないよ!
オマエラの学園生活数年間の記憶、まるごと奪っちゃってるんだから。
オマエラほんとは新入生なんかじゃないんだよ。今何年生だったかなー?」
入学直後の眩暈、そして開かない教室で我に返った時、その二つが記憶の結合点。
その間には、数年間の年月が失われているのだという。
「こんな古臭い丸パクリのネタ、最後の最後までひっぱるなんて卑怯者のすることだよねー!
だから、ボクがオマエラに記憶を返してあげます!そのかわり…」
コロシアイを始めること。
殺人が起これば、皆に記憶が返却される。それがモノクマの動機プレゼントだった。

記憶喪失なんてありえない、信じられないと反論する皆に、モノクマは首をかしげる。
「信じられないんじゃなくて、信じたくないだけでしょ?
証拠に、オマエラ裏切り者が一人入り込んでるのに気付いてないじゃん。
修学旅行予定者は15人だったのに、なんでオマエラ16人いるの?
記憶を無くして、お互いの素性がわからないから、裏切り者が誰かもわからないんだよね。
クラスメイトのふりして皆を騙すなんて、殺されても仕方ないかもね。殺られる前に殺れだからね!」
モノクマは意気揚々と去っていき、モノミは狼狽えて逃げ去ってしまった。
生徒たちは、再び呆然と立ち尽くす。

221 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 11:28:32.74 ID:RGd60neR0
「ぼぼボクは信じないよ。何も信じない信じない。そんなことより皆、そろそろディナーにしない?」
エロコックの輝々は、いつも通り現実逃避を始めている。
輝々の言う通りかもしれない、16人だの裏切り者だのも全てモノクマがそう言っただけの事だ。根拠はない。
しかし、皆口々にデマカセだと言いながらも、絶望に飲まれ始めていた…。

十神の発案で、毎朝一緒に朝食を取りながら話し合う朝食会の習慣が、明日から始まることになった。
モノクマのモーニング時報コールに合わせて起床しレストランに集合する、という取り決めをして、各自コテージに戻る。
日向は、ベッドに座ってうなだれていた。
裏切り者…。それは例えば、未だに自分が何の才能を持っているのか思い出せないような奴…?
くだらない考えを追い払う為、ベッドに入って目を閉じた…。

翌朝、約束通りレストランに集合した。ペコが朝食会の事は伝えたそうだが、予想通り九頭龍だけは不参加だ。
朝食を取りながら、十神が今夜全員強制参加オールナイトパーティーを開くことを宣言した。
今夜は、モノクマに干渉されない閉鎖空間で、全員が一晩中一緒にいることが重要だと十神は言い張る。
親睦を深める為にもパーティーは中々よさそうなので皆賛成し、
正面扉からしか中に入れない、閉鎖中の旧館ロッジがモノクマの介入を防ぎやすそうだという結論になる。
モノミ曰く、旧館内は埃まみれで掃除が必要らしい。

「こんなこともあるかと思って、作っておいたんだよ。
赤い印がついていた人が掃除当番。これで公平でしょ?」
どんなことがあると思っていたのか、狛枝が嬉々として割り箸のクジを差し出した。
皆で引いた結果…掃除当番は言いだしっぺの狛枝になった。
「超高校級の幸運のくせに、クジ運の悪い奴だな。」
日向が茶化すも、気のいい狛枝は快く一人で全ての掃除を引き受ける。
掃除を始めた狛枝と、料理の準備で厨房にこもる輝々に旧館を任せて、日向は夜まで自由に過ごした。

夜、開放された旧館に足を踏み入れると、玄関には十神が仁王立ちしていた。
ここで十神のボディーチェックを受けなければ中には入れないらしい。
彼はスーパーから、危険物を入れるためのジュラルミンケースまで調達してきている。本気だ。
お許しが出て中に入ると、皆大体集まっていた。九頭龍にも伝えたそうだが、やはり彼は来ていない。
十神は、不参加が九頭龍だけならそれは容認するらしい。一人きりでは何も事件は起こせないからだ。
他の皆も容赦なくボディチェックを受けたらしく、十神の徹底ぶりに半ば呆れ半ば感心している。
基準も厳しく、左右田はつなぎのポケットに入れていたレンチを取り上げられたそうだ。

狛枝が奮闘したらしく、会場のホールは綺麗になっていた。
幾つもあるテーブルは、床まで届く白いテーブルクロスで飾られ、ゴージャス感を演出している。
その上には、豪華絢爛な料理が所狭しと乗せられ、期待感は増しに増すばかり。
だがよくよく見れば、閉鎖されていただけに綻びもちらほら見える。
例えば床は、老朽化で板が縮んだのか、床板の間が隙間だらけだ。
一応、狛枝がスーパーから絨毯を運んで敷いてくれたため、壁際の方に行かなければ床は露出していない。
それより目を引くのは、旧館内の全ての窓に、分厚い鉄板が巨大なボルトで止め付けてあることだ。
やけに厳重に閉鎖していたものである。
225 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 12:54:15.47 ID:RGd60neR0
十神は、シュラスコに使われていた鉄串まで神経質に回収し、日向に手伝わせて厨房の刃物類もジュラルミンケースの中に放り込み始めた。
「なぁ、本当にここまでする必要あるのかよ?」
「あるからやっているんだ。」
十神の慎重さを日向が訝しむと、十神は自嘲するように少し笑った。
十神には、ここまで疑い深くならざるを得ない、人に言えない過去があるのだという。
人を疑い続け、人に疑われ続ける、生き地獄のような生活。
それが十神を変えた。しかし、今はまだ詳細を語る気はないらしい。

厨房には、スタンバイ中の料理もまだまだある。
一際目を惹く巨大な骨付き肉は、弐大が牧場の牛を仕留めたものを捌いて炙った一品だそうで、
もう、今から涎が止まらない程ゴージャスでおいしそうだ。
十神は、それらの料理にも串や刃物が飾られていないかチェックし、輝々がまだ料理中にも関わらず、調理器具も危ないものは没収していく。
BBQ用の鉄板や卓上ガスコンロまで考慮に入りかけたが…流石に置いておくことになった。
二人で厨房を調べまわるうちに、備品リストを見つけた。
それと照らし合わせると、鉄串が一本足りない。
輝々によると、最初から見当たらなかったらしい。
「…まぁいい。あれほど長い串を隠しておける場所もなさそうだからな。
要は、俺が目を光らせていればいい話だ。」

会場に戻り、十神は危険物を入れて施錠したジュラルミンケースの保管場所にしばし悩む。
鍵がかけてはあるが、なるべく人の触れない場所に置いておきたいそうだ。
「なら、事務室はどうかな?倉庫もあるけど、あそこは掃除の手が回らなくって…」
狛枝によれば、掃除ができている個室は他にはそこだけらしい。
よって、ホールから離れた事務室にケースを保管することになり、その見張りをペコが買って出た。
「気にするな。元から人が集まる場所は得意ではないんだ。
だが、せっかくの料理だからな。少し取り分けて持って行っていいか?」
ペコは、ジュラルミンケースを提げ、料理を盛った皿を手に事務室へ去って行った。
事務室にはブレーカーもあるので、剣士のペコが見張ってくれるのは心強い。
ジュラルミンケースはもう一つあるが、これにはあのケースの鍵等が入っているそうで、
十神が手元に置いたままになった。

後は、モノクマの干渉をなるべく避けるために、モノミをけしかけてモノクマを煩わせておこうという事になった。
ゲーマーの七海がモノミに事情を話しに行き、帰りを待たずにパーティーは始まった。
食いまくる終里、写真を撮り歩く真昼、興奮してはしゃぎ回る唯吹。
眼蛇夢はイヤリングを落としたと騒ぎ出し、弐大はトイレが空いていないと苦しみ悶える。
輝々が厨房に籠っているので下ネタが飛び交うことはないが、それでも十分すぎるほどの大騒ぎだった。
十神の手に負えない程の喧騒の中、真昼のシャッター音が響く。
その中に微かに、「ピピッ」という耳慣れない電子音を聞いた気がした。
その瞬間、バチンと音をたてて照明が消え、会場は暗闇に包まれた。
ブレーカーが落ちたのだろうか?窓が鉄板で塞がれてるだけに、灯りを失えば真の闇になる。
パニックに陥った皆の悲鳴が交差する。
「おい、やめろ!」と怒鳴ったのは十神の声か。
「どうしたの!?停電、厨房だけじゃないの!?」輝々の叫ぶ声が聞こえる。
「待ってろ!壁伝いに…俺が何とかしてくっから!」
左右田らしき声が出口方面へ消えていき、しばらく待った後、突然照明が灯った。
光に照らされ現れたのは、超高校級の保健委員罪木蜜柑の、変わり果てた姿だった。

226 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 12:55:22.69 ID:RGd60neR0
「う、うゆぅ~~っ!こ、転んでしまいましたぁ!た、助けてくださぁい…!」
何をどうしたらそうなったのか、罪木は色んなものに絡まってド開脚ですっ転んでいたのだ。
スカートは完全にめくれあがり、両ももの付け根やその間にある素敵な部分まで露わになっている。
股間にテーブルから落ちた料理がぶちまかれ、パンツが見えるよりも更にエロティックな有様だ。
繋がった腸詰が手に絡まり立ち上がれないらしく、罪木は泣きながらもがいている。
見ないで下さぁいと言われても……ごめん、見る。正直ガン見だ。

なんとか罪木が立ち上がり、左右田がホールに戻ってきた。
流石は超高校級のメカニック!と労うも、左右田は「暗くて事務室まで辿り着けなかった」と頭をかく。
電源は一人でに復旧したという事だろうか?
そして…最初に口火を切り皆を仕切るべき人物が見当たらない。
十神が、忽然と姿を消していた。こんな時にこの場を離れるような奴ではないはずだが?

手分けして、十神の捜索とペコの安否確認を行う。
十神はどこにもおらず、事務室には何故かペコもいない。
外に出てみると、玄関先で七海がまだモノミと一緒にモノクマを待っているところだった。
二人に聞いてみたが、誰も旧館から出てきていないという。
廊下に戻ると、弐大がまだトイレが空いていないとぼやいている。パーティー開始直後から、ずっとトイレに鍵がかかっているらしいのだ。
ノブを回してみると、確かに開かない。便意と戦っている弐大を心の中で励まし、会場に戻った。

一体二人はどこに消えてしまったのか?首をかしげていると、ふいに終里が鼻をひくつかせ始めた。
「…これ、血の臭いだぞ。」
終里が振り向いた先には、壁際に寄せられた長机。そこにも床まで届くテーブルクロスがかけられている。
日向は一気に駆け寄り…躊躇してしまった自分を叱咤するように雄叫びを上げ、テーブルクロスを掻き上げた。
純白のクロスの中は、深紅に染まっていた。
中心には、小山のような男がうつ伏せに横たわり、周りには血溜りが広がっている。
皆の悲鳴を背に浴びながら、日向はかつて十神白夜だった物を見つめていた。

悲鳴を聞きつけて、七海と、行方不明だったペコが駆け込んできた。
同時にモノクマが登場し、大はしゃぎでコロシアイの開幕を言祝ぐ。
「この場にいないのは九頭龍クンだけだね!では彼へのお知らせも兼ねて、あれいっちゃいましょう!」
”死体が発見されました。一定時間後に学級裁判が始まります”
頭上を、死体発見のアナウンスが流れていく。
学級裁判までに、十神が誰に殺されたのか、手がかりを掻き集めなければならない。
「ボクらの中の誰かが、十神君を殺したなんて…そんな絶望的なこと、あるわけないんだ!」
狛枝は拒絶反応を示すが、腹黒さならモノクマ級の日寄子は全く動じてないようだ。
「でもさぁ、豚足ちゃんが死んだのは事実だよねぇ?誰が殺したのかわからなければ、みーんな殺されちゃうんでしょ?
だったらやるしかないんじゃーん?」
いつもはブリっ子発言か嫌味あてこすりしか言わない日寄子だが、今の言葉は正しい。
この中の誰かを犯人として暴く、そんな事だけが、自分たちに残された希望なのだ。
「…僕には、やっぱり仲間のうちの誰かが十神君を殺したなんて信じられない。
だから、それを証明するために、事件のことを調べるよ。」
狛枝は青い顔をしながらも、謎を解明することを決意した。

227 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 12:59:02.11 ID:RGd60neR0
「ちょっといいかな?クローズドサークル物の推理ゲーだと、
犯人が証拠隠滅なんかを図らないように、現場を見張る人とかを決めておくんだけど…私たちはどうしよっか?」
大抵の出来事に動じないゲーマーの七海は、冷静にそう提言する。
「…現場には、アタシが残るよ。死体を調べる自信なんてないし、頭がいいわけでもないし…。
せめて十神のそばにいてあげるよ。それが見張りってことでいいんでしょ?」
「こ、小泉さぁん…!…あ、あのっ私もっ私もがんばりますぅ!
す、少しなら検死だってできますし…医療に携わる人間の務めとしてやらせてくださぁい!」
カメラマンの真昼と、保健委員の罪木が現場に残ることになった。

モノクマが、タブレット型の端末を残して退場していく。
これはモノクマファイル。死体についての情報をまとめたデータだ。
ウソが書かれることは無いが、モノクマが教えたくない情報は入っていない。
・十神白夜の死亡時刻は午後11時30分
・死因は刺殺。腹部から喉にかけての十数か所をメッタ刺しにされている。
それ以外に外傷はなく、薬品類を摂取した痕跡もない。

日向は意を決し、テーブルの下を覗き込んだ。
【大広間】
・テーブルクロスの内側には夥しい血飛沫が散っている。
うつぶせになった十神の下にも、大きな血だまりが。
しかし、クロスの外側には一切の血痕はなく、血だまりに引きずったような跡はない。
・十神の手元には暗視ゴーグルが落ちている。犯人はこれを使って停電中に犯行に及んだのか?
・血溜りの中、十神の脇あたりに、ナイフが落ちている。柄の一部に何か塗料が塗ってあり、薄暗いテーブルの下で淡く光を帯びている。
このナイフは、厨房の備品リストには載っていない。旧館の外から持ち込まれたものだ。
・テーブルの裏にガムテープが貼られ、片方の端がはがれ垂れ下がっている。
ガムテープには夜光塗料が塗りつけられていて、テーブル下の薄闇に淡く光っている。
ナイフについている塗料も、同じ夜光塗料だと推測される。
・不要で壁際に寄せたテーブルだった為、上に乗っているのはテーブルランプが一つだけ。
これはコード式で、壁のコンセントから電源をとっている。停電時は役に立たなかっただろう。
・十神が携帯していたジュラルミンケースが、いつの間にか開けられていた。
中には、警棒、催涙スプレー等の防犯グッズが詰まっている。一つ、望遠鏡のケースのような物の中身が入っていなかった。
事務室に保管したケースの鍵は入ったままだったので、あちらのケースにあった刃物類は使われてないという事になる。
それにしても、何故十神はここまで警戒していたのか?何かを知っていたのかもしれない。
・壁に作りつけられたエアコンのスイッチを見ると、入タイマーがセットされていた。
11:30。十神の死亡時刻と同じだ。あの停電直前の「ピピッ」という音は、エアコンの起動音だったかもしれない。
・真昼が停電前にデジカメで撮っていた写真を見せてもらう。
特に不自然なものは映っていなかったが、十神が立っていた位置が気になる。
十神が立っていた壁際は、長机から対角線上に離れた位置にあり、かなり距離があるのだ。
皆の立ち位置はヒントになるかもしれない。真昼に、写真から皆の立ち位置を割り出し、図にしておくように頼む。

228 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:01:44.70 ID:RGd60neR0
そろそろ違う場所に移動しようとしてふと見ると、
眼蛇夢が捜査そっちのけで停電前に失くしたイヤリングを探し回っていた。
そんなに探して無いなら、端の方の絨毯が無い所から、床板の隙間を通って床下に落ちたんじゃないか?
そう示唆してやると、眼蛇夢は床板の隙間に目をこらし…
「あったぞ!ふはは、やはり神は俺の為に存在したようだな!
……だが、どうやって取ればいいのだ?
この隙間からでは手は入らんし…道具を使ったところで届きそうにない…」
「諦めるしかないんじゃないか?」
「世界をか!?」
「イヤリングをだよ。」
あのイヤリングを人類が失うのは世界の終焉と同じだとかなんとか眼蛇夢は喚いているが、付き合いきれないのでホールを後にする。
狛枝が、一緒に行動しようと言ってついてきた。
「君には、ボクと同じ匂いを感じるんだ。君もボクも、希望ヶ峰学園に特別な思いを抱いている。そうだよね?」
よく分からないが、狛枝が希望ヶ峰やその生徒達に強い愛着を抱いてるのは分かる。
彼は仲間をとても大事にしていて、その一人が欠けてしまったこと、
そして仲間を疑わなければならないことに、強い苦痛を感じているようだ。

【倉庫】
倉庫の中は、狛枝の言葉通り掃除されておらず埃まみれで雑然としていた。
蜘蛛の巣が無数にかかり、体に悪そうな饐えた空気が立ち込めている。
とても長居できる状態じゃない。この状態から広間を綺麗にしたなら、狛枝の根性は大したものだ。
・大量の荷物が乱雑に積まれていて、急ぎの探索ではとても中身を検めてる暇はない。
手をつけずに放っておくことにした。
・アイロン台の上に、何故か3台もアイロンが並んでいる。
ついさっき狛枝がコードを抜くまで、3台とも電源はONになっていたらしい。作為的なものを感じる。
・棚には予備のテーブルクロスが積まれているが、
1枚、血飛沫の散ったテーブルクロスがランドリーボックスの中に突っ込まれていた。
日向は発見に興奮するが、何故か狛枝の反応は薄い。

【廊下】
ソニアが、不思議そうに壁の一部を見ている。
「この、壁の色が変わっているところは何ですか?」
それは防火扉だった。用途を教えてやると、ソニアはカルチャーショックに感激していた。
ヨーロッパに防火扉ってないんだろうか?
・未だにトイレの鍵が閉まっている。旧館のトイレは男女共用で個室は一つだけ。
・唯吹に、停電時の様子を聞いてみた。天才的な音感を持つ彼女なら、停電時の混乱した皆の声を聞き分けられたのではないか?
予想通り、唯吹は誰が誰の声か完璧に聞き分けていた。彼女の覚えている限りの発言を挙げて行ってもらうと、気になることが一つ。
「おい、やめろ!お前、何をしている!」という十神の怒鳴り声。「何をしている」?

229 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:02:58.48 ID:RGd60neR0
【事務室】
・ペコは、自分が疑われていることを自覚していた。
しかしペコは、停電が起きた時この場にいなかったのだという。
話している間にも、ペコは脂汗を浮かべ、ヨロヨロと事務室から出て行った。
…お腹を壊しているらしい。旧館のトイレは今閉まっているので、自分のコテージまで歩くことになる。
険しい道のりだろうが、健闘を祈る。
・ブレーカーは、天井近くの非常に高いところにあった。
脚立でも持ってこないと届きそうにない。
電力を復旧したのは、モノクマだという。生徒たちがブレーカーを上げられる見込みが薄かったため介入したんだとか。
なら、犯人はブレーカーに触れずにブレーカーを落としたのだろう。
・事務室のエアコンも、11:30にスイッチが入るようタイマーがセットされていた。

十神のコテージを調べるために旧館を出ると、眼蛇夢と七海が外から旧館の床下を覗き込んでいた。
七海は、床下にもぐりこめるなら事件の様相はは全く変わってくると判断した為。
眼蛇夢は、イヤリングを諦めきれないからだ。
だが、外からは頑丈な柵で囲ってあり、とても床下には入れないようだ。
「これで、九頭龍君の容疑は晴れるね。」
停電前に七海がモノミと旧館前に立っていた時、九頭龍と出くわしたのだという。
九頭龍は、散歩だとうそぶいていたが、本当はパーティーに参加したかったんじゃないかと七海は推測している。
「本当は皆の輪に入りたいけど、自分は他人とは違う人間だって思ってるから、素直になれないでいる…て感じのキャラが主人公のRPGってなんだっけ?」
それはともかく、九頭龍が外にいたことが確認されているのだから、彼に犯行は不可能だ。

【十神のコテージ】
・特に変わった様子はなかったが、机の上に差出人の名前がない封筒があった。
中の文面は、「今夜、必ず最初の殺人が起きる。警戒せよ」と、定規をあててかいたような文字で記されていた。
十神は、この手紙を読んだから、今夜を警戒せざるを得なかったのだろう。

旧館に帰る途中、一人になりたいと言い出した狛枝と別れた。
仲間思いの彼は、今回の件でかなり消耗しているようだ。

【再びホテル旧館】
・弐大は、ようやく便意を解消できたらしく晴れやかな顔をしている。
先ほどトイレに入っていたのは、弐大だったようだ。
・罪木の検死が終り報告を受けた。
十神は、直径5mm程の鋭利な物で喉から胸にかけて十数か所も刺されているらしい。
・七海はホテル内部を調べまわったが、中からも床下に降りる方法は見つけられなかったらしい。
・真昼が見取り図を完成させていた。人の位置だけでなく、物の位置も可能な限り正確に書き込んでくれている。
長机から伸びる斜めの線は何かと思ったら、これはテーブルランプから壁のコンセントに繋がっているコードらしい。

そこで裁判開始を告げるチャイムが鳴り、一同はモノクマの指示に従って中央の島へ向かった。
その道中で日向は、眼蛇夢の耳にイヤリングが戻っているのに気付く。
島の地下には、裁判所が作られていた。でたらめに大がかりな仕掛けに、十神の示唆した巨大な組織の存在が改めて感じられる。
彼の知識は、絶対に自分たちに必要だった。
口が悪くて、自信過剰で、いつも人を見下してて…でも、責任感の強い奴だった。
リーダーとして、混乱するみんなを必死でまとめようとしてくれていた。そんな彼にしてやれることは、もう犯人を暴くことだけだ。
学級裁判が開廷する。
この中の誰かが十神白夜を殺した。それを暴かなければ、犯人以外全員死ぬ。

230 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:07:38.53 ID:RGd60neR0
【学級裁判】
全員が思い思いに仮説や証言を出し合い、その中に矛盾や糸口を見つけて、
ふさわしい言弾(ことだま・捜査で分かったトピック)を装填しそれを撃ち抜く=論破する。弾丸論破だけでなく、選択肢や文字入力もある。
今回は反論を言刃(ことのは)で斬り捨てたり、賛成したい意見に言弾を援護射撃できたりと忙しい。
そうやって、矛盾を正し糸口を見つけ、仮説を修正していき、真相に近づいていく。
今回は故・十神以外頭脳系の天才はおらず、ある一人を除いて皆の賢さも五十歩百歩。それだけに裁判は紛糾する。

まず、何故十神の死体がテーブルの下にあったのか?という議題をとっかかりに裁判は始まった。
犯人が十神を殺した後に隠したのではないかという左右田の仮説を、血痕に引き摺られた跡がないことから却下する。
血飛沫はテーブルクロスの中に散っていた。ということは、彼はあのテーブルの下で殺されたのだ。
彼は一体何故そんなところに入ったのか?
「隠れて皆を驚かせよーとしたんじゃねーのか?あいつっておちゃめなとこあったからな。」
「ねーーよ!!お前はあいつのキャラすら把握してなかったのかよ!?」
終里のノーテンキな発言を左右田が却下し、皆で真剣に知恵を絞る。

日向は、暗視スコープとジュラルミンケース内の空ケースを根拠に、十神が何かを目撃してテーブルの下に入ったのだと主張する。
停電が起きてすぐ、十神はこんな時の為に準備していた防犯グッズから暗視スコープを取り出し、視界を取り戻した。
そしておそらく、誰かがテーブル裏からナイフを取り出そうとするのを見て、それを止めに入ったのだ。
テーブルの下に潜り込んだのは、ナイフをはがして回収する為だろう。
犯人が暗闇の中ナイフを取り出せたはずがないという反論には、ナイフとガムテープに塗布された蛍光塗料を根拠に論破した。

十神のボディーチェックは容赦なく徹底的に行われた。
だからあのナイフは、もっと以前に、パーティーの準備段階で机の裏に仕込まれたものだろう。
ならば、ナイフと蛍光塗料をスーパーから調達した時点で、犯人は停電ありきの計画を練っていたことになる。
「つまり、停電を起こしたのが犯人って事だろ?
それはお前だ!辺古山ペコォ!!」
左右田が得意げに吠える。確かにブレーカーの一番近くにいたのはペコだ。
しかし、ペコは歯切れ悪く、実は見張りを放棄して事務室を空けていたことを打ち明けた。
主人公は、ペコの発言を裏付けるために、弐大がトイレが空いてないと零していたことを証言する。
ペコ以外は全員その時点の所在がはっきりしている。停電前からずっとトイレにこもっていたのは、お腹を下したペコだったのだ。
公衆の面前でウンコしていたとは言い出せなかったのだろう。すまない…と赤い顔でペコは恥じ入っている。

「誰かがその女に下剤を盛って、ブレーカーに近づいたってことはねーのかよ?」
九頭龍も議論に参加してくる。しかし、料理は終里もモリモリ食べていたし、無作為に料理を取ったペコだけに下剤を盛るのは無理だ。
それに、停電はブレーカーの操作で起こったのではない。
倉庫でONになっていた3台のアイロンに、11:30にセットされたタイマー。あれが仕掛けだ。
犯人は大方モノクマにでも聞いて旧館の電力供給量を把握し、アイロンを使ってギリギリの電力使用量を保ち、エアコンをタイマーでONにして任意の時間にブレーカーを落としたのだ。

停電も十神の想定の範囲に入っていた。それほどに十神が警戒していたのは、脅迫状が彼宛てに届いていたから。
それで十神は、互いに見張りあう状況を作り出し、犯人が身動きの取れない状況を作ろうとしたのだろう。
一人も犠牲を出すまいと決意した以上、手紙をいたずらだとは見過ごせない。そんな彼の強い責任感が、彼の死を招いてしまった。
232 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:10:30.97 ID:RGd60neR0
それにしても、容疑者の輪はせばまってこない。どの細工も、昼の内に誰もができたことだ…
主人公がそう思った時、狛枝が憑かれたように喋りはじめた。
「大丈夫だよ。たかが人殺しじゃない。そんなもの希望の象徴である君たちの敵ではないよ。絶対突き止められるさ。
だからボクは確信してるんだよね。最後には希望である君たちが勝つって!」
「どうしたんだよ狛枝?お前、あんなに仲間が十神を殺したなんて信じられないって言ってたじゃないか…」
「えー、そうだっけ?それよりもさ、皆気づいてる?これだけ議論しても、犯人に繋がる証拠は一つも見つかってないってこと。
無理なんだよ。犯人を見つけるなんて。だってこの中に犯人なんかいないんだからさ。」
言っていることが一瞬で180度変わっている。
「やっぱり、お前どうかしてるぞ、狛枝…!?」
「あはっ…僕をどうかしてると思うのは、みんなの方こそどうかしてるからだよ。
こんな風に仲間内で糾弾しあうなんて、正気の沙汰とは思えないって…
もうやめようよ!犯人なんて見つけなくたっていいじゃん!ボクはもう嫌なんだ!」
急に笑い、急に激昂する狛枝の不気味な姿に、皆の間に不安が感染し始める。
「私だって、私だってこんなの、嫌だよ…」
「こんなのもう嫌ですぅ…!おうちに帰してくださあい!」
急激に議論のムードは薄れていき、皆忘れていた死の恐怖に呑まれていく。
皆を落ち着かせようとする日向の努力もむなしく、パニックが広がっていく。
狛枝がゆらめきながら呪詛の言葉を撒き散らす。
「もうどうだっていいじゃないか…。どうせ、犯人に繋がる手がかりなんて、一つもないんだし…」

「それは違う!」
決壊しそうになっていた場の空気の流れが、ピタリと止まった。
普段と変わらぬぽかんとした無表情で言い放ったのは、ゲーマーの七海だった。
彼女は常に同じく、周囲の感情の激流にまるで流されていない。
「…と、思うよ。
だって、犯人に繋がる手がかりなら、もう見つかってるじゃんか。」
「お、お前、犯人わかってんのか!?」
色めき立つ皆に、七海は補足、という感じで付け加えた。
「犯人…なのかなぁ?でも、怪しい人の手がかりならある…と思うよ。」

「へぇ…だったら、試しに言ってみてもらえる?」
狛枝は、見たことのないきつい顔で七海をにらんでいる。
「うん。まず、犯人がどうやってあの停電の中でナイフを手にしたのか考えてみよっか。」
「その話ならさっきしたよね?蛍光塗料を使って…」
「ううん、その前だよ。」
ナイフが光っていたとしても、テーブルクロスをめくるまでは自力で闇の中を進まねばならない。
犯人は、どうやってテーブルまで移動することができたのか?
真昼に描いてもらった見取り図で、日向はもう一度状況を確認する。
この中で、問題のテーブルに闇の中辿り着ける目印は…。

233 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:13:29.72 ID:RGd60neR0
テーブルランプのコードだ。壁を伝いコードを掴めれば、あとはたぐっていけばテーブルまで辿り着ける。
そして、停電前そのコードのすぐ傍にいたのは、狛枝凪斗だった。
「狛枝…まさか、お前がやったのか?」
「やだなぁ、日向くん、そんなの偶然だよ!」
しかし、掃除を一人で行った狛枝には、ナイフやアイロンを仕込む時間はいくらでもあった。
更に言えば、倉庫の掃除をしないでおくことで、仕掛けたアイロンに人を寄せ付けないでいることもできた。
そもそも、掃除当番を決めたクジを作ったのも狛枝だ。何かイカサマをした可能性が十分にある。
さきほどの演説も、皆に議論を止めさせる為の作戦だったんじゃないか。
そう皆に詰め寄られて、狛枝が唸りはじめる。
「狛枝…違うなら違うと言ってくれ。俺だって信じたくないんだ。
一緒に捜査したお前が…、あんなに優しいお前が、犯人だなんて…」

「…あはっ。」
俯いて苦悶していた狛枝が、小さく笑った。
再び顔を上げたその目は、ゾッとするような混濁した闇を湛えていた。
「あははははははははははははははははははは!!
超高校級の才能を持つみんなが、力を合わせて仲間の死という絶望に立ち向かう!
あぁ!なんてすばらしくて美しいんだろうねぇ!
結論から言うと大正解!すべてボクの仕業だったんだよ!」
狛枝は、今までの議論で出た仮説を認め、脅迫状を出したのも自分だと認めた。
ただし、掃除当番のクジは、何の仕掛けもないただのクジだったという。
彼は単に、自分の望む外れくじを引くことができると信じただけ。
「そりゃ、みんなに比べたらゴミのような能力かもしれないけどさ、
『超高校級の幸運』は、ボクの唯一の才能だからね。」
日向は運が悪いと茶化したが、あの時狛枝は確率16分の1の運試しに勝利していたのだ。

「でも、十神君が暗視スコープまで用意してたとは思わなかったなぁ。
おかげで、テーブルの下でもみ合いになって…その結果がアレだよ。
でも、だからこそこんなに面白い謎に仕上がったともいえるよね。あはっ、十神君のファインプレーだね!」
完全にキャラが崩壊している。マジで病んでる。
「まさか…それがアンタの本性なの?今までずっとアタシたちをだましてたの?」
「まさか!ボクなんかがみんなを騙せるわけないじゃん!
自分が大したことない人間だってことくらいは、ボク自身が誰よりも理解してるつもりだよ。
夢や希望を持つのもおこがましいほど…努力をするのも図々しいほど…ボクは決定的に最低で最悪で愚かで劣悪で、
何をやってもダメな人間なんだ。」
「ヤバイ!この人って絶対に、子供のころに近所の動物とか殺してたタイプだ!」
目がイっちゃってる狛枝の独白に、隣の席の唯吹が震えあがっている。

狛枝は、決して自分が生き残ろうとして犯行を計画したのではないという。
「君達をさしおいてボクごときが助かろうなんて、そんな大それたこと考えてないよ。
ボクはただ、殺し合いが始まってほしかったんだ。
希望がより強く輝くには、絶望が必要だからさ。
ほら、自分のひいきのボクサーには、より強い相手と闘って勝ってほしいでしょ?」
仲間の死という絶望に打ち勝って、希望を掴む姿を見せてほしい。
その為の生贄になれるなら、こんなに光栄なことはない。
「ボクはね、君たちを、本当に愛してるんだ。
さしずめ、超高校級の超高校級マニアってところかな。」

234 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:16:39.97 ID:RGd60neR0
言葉も出ない。口を開いたら反吐が出そうだ。
皆、言葉少なに投票へ移ろうとしたその時、罪木がおどおどしながらそれを制止した。
「あ、あの…狛枝さんは、犯人じゃないと思うんですぅ…!」
罪木の検死では、凶器は直径5mm程の鋭利な物だ。絶対にあのナイフは凶器じゃないと彼女は主張する。
「あの、それに…狛枝さん、犯人にしてはきれいだと思うんですぅ…」
「容姿をほめられたのは初めてだよ!母親にすらほめられたことはないからね。」
「うゆぅ…そ、そうじゃなくてぇ…」
返り血のことだ。あのテーブルクロスの中の様子では、犯人は相当の返り血を浴びてなけれなおかしい。
日向は、倉庫に捨てられていた血まみれのテーブルクロスの事を思い出した。
だが、停電が終わった時、狛枝がそんな物を持っていなかったのは皆見ている。
それに、かなりかさばる物なので、隠し持っておくのは無理だろう。

そこで七海が、新しい可能性を提唱した。
殺人が起こったのは、テーブルクロス内部ではないのではないか?
机が壁際に寄せられていた為、その下には絨毯がなく、床が露出していた。
直径5mmの長い凶器なら、床板の隙間から十神を刺すことができたはずだ。
探索時、床下に入る方法は見つからずじまいだったが…、日向は眼蛇夢に問いかけた。
「田中、そのイヤリング…」
「魔犬のイヤリングの事か?」
「そのイヤリングが、探していたやつでいいんだよな?」
「魔犬のイヤリングの事だな?」
「…魔犬のイヤリングを拾うことができたってことは、床下に入る方法を見つけたってことだよな?」
眼蛇夢が得意げに話すには、破壊神暗黒四天王が一角、蜃気楼の金鷹チャンP(ハムスター)が倉庫で入口を嗅ぎ当てたらしい。
乱雑に積まれた荷物の山をどかすと、そこには床下に降りる床ハッチがあった。
床下を這ってイヤリングを探した際、床板に淡く光っている部分を見かけた、と眼蛇夢は証言した。
真犯人は、狛枝がナイフを仕掛けるところを目撃して彼の計画を知ったのだろう。
床下からナイフの真下の床板に夜光塗料を塗っておいて、停電時そこを目印に床下を進む。
そしてシーツを被って、ナイフに塗られた夜光塗料が動くのを待ち、凶器を突き上げたのだ。

犯人が床下で待ち伏せていたのだとしたら、パーティーの時所在がはっきりしていない人物ということになるが、
ペコはずっとトイレにいたのが弐大に確認されているし、厨房に籠っていた花村も、料理を運びにしょっちゅう広間に顔を出していた。
七海はモノミと一緒にいたし、九頭龍はその七海に目撃されている。
ということは、犯人は停電時に倉庫まで移動したという事になる。
倉庫からホールは、壁がない床下での移動距離はごく短いが、
地上では、廊下を回り込んでいかねばならないので、灯りなしでは短時間の移動はできそうにない。
犯人は、暗闇の中どうやって倉庫まで移動したのか?
皆知恵を絞るが、中々いいアイディアが浮かんでこない。
「めんどくせぇから勘で言うぜ。普通に灯りを使ったんじゃねぇのか?」
終里の適当な発言に、日向は記憶を刺激された。
厨房の棚にあった、卓上ガスコンロ。
あれを点灯させれば、十分な灯りになるだろう。

そこで狛枝が反論をしかけてきた。
廊下で火を灯していたなら、事務室を探して彷徨っていた左右田に発見されているというのだ。
その反論を、広間と厨房の間の廊下に防火扉があったことを根拠に斬り捨てた。
あれを閉めてしまえば灯りは洩れないだろう。

235 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:21:07.05 ID:RGd60neR0
今までの仮説を実行可能な人物は一人しかいない。
日向は、厨房にこもっていた料理人、花村輝々を名指しした。
「もちろん、これはただの推理だ。違うなら反論してくれ。」
輝々は取り乱すばかりで、ろくな反論が出てこないが、自分は停電時に大広間にいたと主張し始めた。
そういえば、輝々の声を唯吹が聞いているのだが…、日向は床の隙間の事を根拠に、床下から声を張り上げれば同じ効果を得られることを指摘した。
一同はざわつき、急速に花村輝々犯人説に場が傾いていく。
「ちょっと待てちゅーとるやろがあああああ!!!!
きさんら、さっきからなにおぅ抜かしとるかぁ!ぼかぁ停電ん時は広間にいたゆーとるやろがっ!」
「…あんた、どこ出身だっけ?」
「南麻布生まれの南青山育ちっちゃが!!」
「みんなー、こいつウソついてるよー!」

輝々は頑なに停電中から自分は大広間にいたと主張して譲らない。
皆の記憶もあいまいで、いたともいないとも言い切れずにいたが…、日向はふいに閃いた。
「いや、証明できるかもしれない。
花村、お前が停電中から広間にいたなら、停電が終わった時、罪木がどんな恰好になっていたかわかるはずだよな?」
「な、なぬ!?」
「ふゆぅっ、思い出させないで下さいよぉ…!」
あんなに凄いポーズだったのだ、あれを凝視しなかった男子などあの場に居得たはずがない。
しかし、輝々はしどろもどろに言葉を濁し、ド忘れしたと言い出した。
「あんたみたいなエロキャラが忘れるわけないでしょっ!!」
日頃の性欲丸出し最低発言が、ブーメランのようにとどめを刺しに来た瞬間だった。
しかし輝々は往生際が悪く、先ほどまで輝々側を援護していた狛枝に縋る。
しかし、狛枝は冷たく輝々を突き放した。
彼は常に、どんな絶望にも負けない『絶対的な希望』を追い求めている。
犯人となり脱出する唯一の勝者も、犯人を見抜き生き残っていく勝者も、彼には等しく執着と献身の対象だ。
だが、無様を晒し、逆転の見込みもない敗残者は、もはや彼の興味を惹くことはないのだった。

「らー!ぼっきにんばはんだらゆげっちゃ、めんずきんきだばなんぞゆげったれでぱれや!!」
追い詰められ通訳がいないと意思疎通ができないほどなまり始めた輝々だが、どうやら凶器が特定されていないと言っているらしい。
それはやはり、一本欠けていた鉄串が最も可能性が高いだろう。それを、輝々がどこに隠していたのか?
そこで日向は、モノクマに厨房に会った巨大骨付き肉をこの場に持ってくるように頼んだ。
予め真相を監視カメラで把握しているモノクマは、既に骨付き肉を用意していた。
その骨を引くと、ずるりと鉄串が現れた。
鉄串の柄に骨を被せて接着し、それを元のように肉に刺して偽装してあったのだ。
「肉が鞘となり骨が柄となる破滅の剣!それで十神にカタストロフィをもたらしたのか!」
眼蛇夢がうるさいが、そういうことである。

論破された輝々は号泣し始め、皆は投票を行った。
満場一致で、十神白夜を殺したのは、花村輝々だと決定し、モノクマもそれに正解と答えた。
どうして十神を、と問い詰められた輝々は、泣きながらあらましを語る。
「そんなつもりじゃなかったんだ、ボクは、みんなを守ろうとして…」
昼間、旧館厨房で料理を担当していた輝々は、妙な笑い声を聞きつけ広間に顔を出した。
すると、狛枝がナイフを仕掛けている現場に出くわしてしまったのだ。
問い詰めると、狛枝は悪びれずに笑顔で答えた。今夜停電を起こして誰かを殺すつもりだと。
殺人が始まってほしい。だから今止められても、明日も明後日も絶対に誰かを殺すまで諦めないと。
恐怖した輝々は、この仕掛けを逆手にとって、狛枝を始末する決意をした。
しかし、彼の予想に反して、幕が明けてみると死んでいたのは十神だった…。

236 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:23:11.20 ID:RGd60neR0
七海は、狛枝はわざと輝々にナイフを仕込む所を見せたのだと指摘する。
狛枝もそれを認めた。更に言えば、予め床下への入り口の存在を輝々に教えていたのも彼だった。
狛枝は、自分の死を厭わずに伏線を張り巡らせ、今夜一体どのような結果になるのかを楽しみにしていた。
そして、彼は偶然生き残り、中々に面白い謎ができあがったのだった。
「花村くん、こんな結果になってボクも残念だよ。
でも、胸を張っていいんだよ!君は、皆がより強い希望になるための、人柱になるんだ!」
狛枝は笑顔で輝々をはげまし、十神の死も皆の糧となると言い祝福した。
「おいおい、こんなイカれた奴を野放しにしといていいのかよ…ブッ殺ししまった方がいいんじゃねーのか?」
「キャー!ぶっ殺すですって!最近の高校生って過激!
でも、ぶっ殺されるのは花村クンの方ですからね。」
モノクマは容赦なく輝々の処刑を宣言する。

「待ってよ…あれは正当防衛っていうか、過失っていうか……せめて、抒情酌量とか、執行猶予とか…
ねぇみんな、助けてよ!ボクは、ただみんなを助けようとして…!」
「本当は、狛枝クンの計画を聞いたとき、これを使って彼を殺せば誰にもバレないって思ったんでしょ?
狛枝クンを殺して、みんなを犠牲にして、自分だけ生き残ろうって必死だったんでしょ?
素直になりなさいよ、最後くらいは。」
モノクマに諭され、皆にも狛枝を殺そうとした真意を問われて、輝々は泣き崩れた。
「みんな、ごめん…でもボクは、帰りたかったんだよおおお!帰らなくっちゃいけなかったんだよおおおお!!!
だって、田舎で母ちゃんがボクを待ってるんだ…たった一人で待ってるんだよ…」
輝々は、実家の花村食堂を母に任せて、希望ヶ峰学園に入学する為に上京した。
別れの時、次に帰る時は青山支店や麻布支店の話を持ってくると言うと、母はまたそんな事を言ってと苦笑した。
でも輝々は本気だった。だって、卒業すれば成功を約束される学校なんだから。
病気がちな母を一人残していくのは心配だったが、母は「じゃあそれまで花村食堂を守らないとね」と笑って見送ってくれた。
「なのに、記憶を奪われたとか、あれから何年もたってるとか言われて…
そしたら、花村食堂は、母ちゃんはどうなっちゃったんだよぉ!!」

「信じてしまったのか、あの話を…!」
「なんでだよ…お前、そんなの信じないって、だから大丈夫だって、あんなに言ってたじゃねーか…!」
輝々は、他の誰よりも信じてしまっていたのだ。
だから怖くて怖くて、否定して現実逃避するしかなかった。
そのことに、もっと早く気づいてやれていれば…
涙する皆を意に介さず、モノクマは輝々を処刑場に曳いていこうとする。
「待ってよ、せめて、母ちゃんがどうなったのかだけでも教えてよ!」
モノクマはそれをすげなく断り、処刑を開始した。

237 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 13:24:32.70 ID:RGd60neR0
【花村輝々処刑】
花村は浜辺で杭に縛り付けられ、ヘリによって空中から卵とパン粉をまぶされる。
そのままヘリに吊り下げられて海上を渡り、近海の島にある火山口へ投入された。
マグマの中に落ち、トンカツになる花村輝々…

大喜びするモノクマを、皆で責めつけた。
殺し合いが始まれば、記憶を返すという約束だ。輝々には、母がどうなったのか知る権利があったはずだ。
モノクマはそれを、”すぐ返すとは言っていない”という小学生のような反論で片付けて去っていった。
狛枝は笑顔で輝々の死を受け入れ、皆の神経を逆撫でする。
「気色悪い事抜かしてんじゃねえよ!お前、ブッ殺すぞ!」
「うん、どうぞ。ボクが嫌いならいつでも殺していいよ。
踏み台になる覚悟はできてるからさ!でも、一つだけお願いがあるんだ。ボクを殺すなら、予め教えてくれないかな?
ほら、そうしたら、犯人になる人に協力してあげられるからさ。」
腹が立つが、こんな奴の相手をしている場合ではない。
ソニアは、皆にはやるべきことがあると言う。
「それは、頑張ることです。」
何を、と問われれば具体的にはわからない。でも、次の殺し合いが始まらないよう、自分にできることをやるしかない。
中身のない薄っぺらな言葉だと分かっていても、皆、合言葉のように「頑張ろう」と連呼し合い、裁判場を後にした。

<CHAPTER1終> 生存者14名
243 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:19:34.14 ID:RGd60neR0
CHAPTER2『罪と罰。 海とココナッツ』

裁判の夜が明け、重苦しい朝がやってきた。
レストランには暗い顔ながら皆揃っていたが、その中に九頭龍と狛枝の姿はなかった。
朝食を取っていると、終里が何か臭うと言い出した。
まさか、また血の臭いが!?と皆一瞬慌てたが、
「本当だ…。何かが腐ったような、生ゴミのような…」
「あー!わかった!きっと弐大おにぃの口臭だよぉ!」
「がっはっは!こりゃあ一本とられたわい!」
日寄子が笑顔で弐大を罵るが、終里があっさり彼女に宣告した。
「いや、この臭い、お前だぞ西園寺。」
「むぅ…この不快な臭い…魔蝕の始まりか…!?」
「お前、ちゃんと風呂入ってんのか?」
口々に言われ、日寄子は顔面蒼白になり…顔をぐしゃぐしゃにして大泣きし始めてしまった。
「ちょっと!あんた達、デリカシーが無さすぎる、って言ってるでしょ!」
女尊男卑のうるさ型、真昼が一同を叱りつける。
和の文化以外を馬鹿にしている日寄子は、この常夏の島でもきっちり着物を着続けていたのだが、
実は一人では帯が結べないので、一度も着物を脱がず、風呂にも入っていないらしい。
「ほら、泣かないで西園寺さん。簡単な結び方でよかったら、私やってあげられるから。」
真昼が慰めると、日寄子は顔を輝かせ大喜びした。
「わーい!小泉おねぇとお風呂で洗いっこだー!」
「…えっ!?私も入るの?それはちょっと…」
押し切られ、真昼は日寄子に引き摺られていく。
これ以降、日寄子は真昼にベッタリ懐いてしまい、唯一彼女だけは攻撃しなくなる。

モノミが機械の獣を一頭仕留め、第2の島への橋を解禁してくれた。
新しい場所で仲良く遊んで、今度こそ友情を深めましょう、らーぶ、らーぶ…という事らしい。
お風呂に入った二人を置いて、一同は第2の島に足を踏み入れた。
そこは、アメリカンかつ高級感のある建造物の並ぶ、花咲き乱れる島だった。
ダイナー、大型ドラッグストア、図書館、チャンドラービーチ、少し離れたところに巨大な遺跡が見えている。
ダイナーの中では、九頭龍がハンバーガーを食べていた。ペコが、最初に引き受けて以来なんとなく九頭龍への連絡係のようになっているので、彼女が情報を教えているのだろう。
九頭龍は相変わらず刺々しいが、日向は何とか彼とコミュニケーションを取ろうと試みる。
彼は、九頭龍組の力に安易に頼るのを嫌い、独り立ちするつもりだと話した。組なんか関係ない、自分の力で自分を認めさせてやる、と。
「それに、跡目なら妹が喜んで継ぐだろうしな…。」
とりあえず彼に妹がいることは分かったが、また怒り始めた彼に追い出されてしまった。
そのダイナーの駐車場を抜けた先には、プライベートビーチ風の浜辺チャンドラービーチがある。
モノミ曰く、風紀が乱れるのでビーチハウスでの着替えは禁止とのこと。
規則を破ると何をされるかわからないので、不便だが言いつけは守っておく。

244 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:20:54.72 ID:RGd60neR0
大きな図書館には、物凄い数の蔵書があったが、外国語ばかりでまるで読めない。
ソニアは何か国語も操れるので、好みの雑誌を見つけて夢中で読んでいる。
何でも最近の殺人鬼を特集したものらしい。多趣味な王女様である。
「この本は中々ですわ。今若手ホープとして売り出し中の、『ジェノサイダー翔』のことも書いてありますしね。
わたくしのイチオシは、『キラキラちゃん』です。キラキラちゃんは、古今東西のヒーロー物のお面をかぶり、犯罪者をブチ殺す、正義の殺人鬼なのです!」
ソニアはジェノサイダー翔とキラキラちゃんの事を熱く語り、ペコと日向をドン引きさせる。
殺人鬼トークを聞き続ける気力はないので、ジャバウォック島の観光案内を見つけて、和訳してもらった。
それによればジャバウォック島は、中央の島に行政機関の建物が集まり、周囲の4つの島が観光地となっているらしい。
しかし今中央の島には、大きな公園と、岩山に隠された裁判所以外には何もない。
更にジャバウォック島は、各島を繋ぐ交通が船しかなく、生態系への影響に配慮して橋が架かっていないらしい。
そして、今いるこの島は、中央の島から各島へ全て橋が架かっている。
この大きな食い違いは何なのか?まさかこの島は、本物のジャバウォック島ではないのだろうか?

そこで七海から、発見があったので至急集まってほしいと通達が来た。
言われた通り遺跡の前に皆集まる。砂塵の層を被り、木々が蔦の様に絡んだ、威容を誇る大きな遺跡だ。
…この建物を、どこかで見たことがある。それもこの島に来る直前に。
希望ヶ峰学園と、この遺跡のシルエットがよく似ていることに気づき、皆も訝しみ始める。
七海の発見とは、その遺跡の中央下、建物ならば正面入り口にあたる部分だった。
遺跡には、似つかわしくない何か。こびりついた砂を皆でこそげ落とすと、違和感の正体がはっきりと姿を現した。
それは、まるで軍事施設のシェルターのような、物々しい円形の機械扉だった。

そこに現れたモノミとモノクマは、口数少なく、歯切れも悪く、遺跡の事を語る。
この遺跡は、本質的に入ることのできない場所。モノクマすらこの中に入ることはできないらしい。
「だからこそオマエラには期待してるんだよ。この謎を解き明かしてくれることをね。」
機械扉には、「未来」という字が刻印されている。横に液晶パネルがあり、ここにパスワードを打ち込めば開くようだ。
しかしその入力装置の真横に、どう見ても機銃のようなものが設置されてあり、でたらめに試してみる勇気はとても出ない。

「オマエらは、世界の破壊者って呼ばれる組織の事、聞いたことある?」
モノクマは唐突に、聞き覚えのない組織の事を語り始めた。
中学生が考えたような名前だが、それ以外に呼びようのない組織。
何故なら彼らは、本当に世界を破壊してしまうのだから。
「コラーッ!あんた、いいかげんにしなちゃいよっ!!」
珍しく激昂するモノミをぶん殴り、モノクマは更に続けた。
日向達の中に一人潜む裏切り者の正体こそ、その組織の手先だと…。

訳のわからない情報が多すぎて、疲れ果てた日向達はその日はすぐ休んだ。
翌朝になっても、狛枝は姿を見せなかった。それはそれで有難いが、一体どこにいるのだろう?
朝食会で裏切り者の話題になった時、弐大が自信ありげに裏切り者のことはもう心配ないと言い切った。
「何しろ、そいつは今身動き取れん状態じゃからのう!」
…そんなことだろうとは思ったが、狛枝をどうにかしてしまったようだ。
「苦ッ!しまった、喋ってしもうたぞ!どうする左右田よォ!」
「だぁぁっ!そこで俺に振んじゃねーよ!!」
弐大と左右田は、狛枝を捕まえてふん縛り、旧館大広間に監禁していた。
先生として頼られると弱いモノミにつけこんで、面倒を見させているようだ。
確かに、狛枝が一番裏切り者として怪しいし、奴を野放しにしておくのは危険すぎるが…
死なない程度に世話をしないとややこしいことになりそうだ。

245 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:22:28.06 ID:RGd60neR0
思い思いに南国の一日を過ごしたその夜、2回目の動機プレゼントが開催された。
モノクマがジャバウォック公園に用意したのは、一台のゲーム箇体。
ゲーセンにあるようなその箇体の画面には、いかにも90年代なロゴで、「トワイライトシンドローム殺人事件」と表示されていた。
このモノクマ製作の謎のアドベンチャーゲームこそ、今回の動機だという。
プレイするもしないも自由だが、これをプレイした者は動機を抱くことになる。
機先を逃せば、自分が狙われる者となるかもしれない、とモノクマは皆の不安を煽る。
「もう、殺人なんて起きないよ。私がそんなこと許さない。」
七海がきっぱりと宣言した。そういう熱い所のある奴だとは思わなかったから意外だ。
結局、全員プレイしなければどうということは無い、という結論に至った。
しかし皆、誰かが抜け駆けをするのでは?という不安を完全に拭うことはできないまま、散り散りに去った。

翌朝、日向はコテージを出たところで、九頭龍に出くわした。
九頭龍は顔色が悪く、手に大判の封筒を持って難しい顔をしている。
もしかして、あのゲームをプレイしたのでは?そう思って問いかけると、九頭龍は突然怒り出し、
二度とかまうな、と言い捨てて自分のコテージに帰ってしまった…。
レストランに入ってみると、皆朝食を済ませてしまったのか人気がない。
真昼だけが、パンや牛乳の乗ったトレイを持って日向に寄ってきた。
「ちょうどよかった!こんな時に限って誰もいないから、待ってたのよ。」
面倒見のいい真昼は、監禁中の狛枝に朝食を運んでやったらしい。
だが、「ボク、ご飯苦手だから、トーストにしてくれるかな?」とほざかれ、怒り心頭で戻ってきて支度をし直したそうだ。
「私、この後用事できちゃって急ぐからさ、後はよろしく!」
トレイを押し付けられ、渋々旧館大広間まで赴く。
恐る恐る扉を開けると、そいつは微笑んでいた。

縄で手足を縛られ、鎖で拘束されて、一日中ここで転がっているしかないというのに、彼は変わらずにこやかだった。
「やぁ、嬉しいな。日向君が来てくれるなんて。
小泉さんはどうしたの?もしかして、急用ができたって言って、急いでどこかに行っちゃった?」
「…何でそれを知ってる?」
やはりこいつは不気味だ。狛枝から漏れ出た毒が、辺りを汚していくように感じた。
「ねぇ、日向君、ご飯食べさせてくれる?」
思わず身を引いたが、よく考えると狛枝は手が使えないので、口に運んでやらないと物が食べられない。
…普通に嫌だ。輝々にも批判されたが、自分にはBL属性は一切ない。
「そうそう、聞いたよ。トワイライトシンドローム殺人事件だって?
ちょっと残念だな。立ち向かわずに逃げているだけなんて、希望である君達にはふさわしくないよ」
またも身勝手な希望信仰を聞かされ、気分が悪くなった日向は介護を放棄して立ち上がった。
「あれ?日向君?食べさせてくれるんじゃなかったの?」
「…もう2度と、お前に騙されるのはごめんなんだよ」
やはり会わなければよかった、と思いながら日向は旧館を後にした。

246 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:23:24.23 ID:RGd60neR0
その夜、日向はこっそりとホテルを抜け出し、あのゲームをプレイしに行った。
危なそうな内容なら途中でやめたらいいし、誰が誰に殺意を抱きそうな内容なのか掴んでおいた方がいい、という判断だ。
要するに、不安に負けた…と言えなくもない。
「トワイライトシンドローム殺人事件 探索編」と書かれたスタート画面でボタンを押し、プレイを始める。
いきなり「2日目」、と表示されて唐突に始まったのは、横スクロール型のアドベンチャーとでも言ったらいいのか、不思議な味わいのゲームだった。
A子という名の女子高生を動かして校内を歩き回る。
1-Aの教室に入ると、A子のクラスメイトの少女達が彼女を待っていた。
A子「お、遅れてごめんなさいぃ!何でもしますから、怒らないでください!」
D子「何言ってんの。そんなことで怒るわけないでしょ。」
C子「集まったのって、やっぱあの事件の事っすか?」
彼女たちは、この高校で起きた殺人事件の事を話し合い始める。
女生徒が音楽室で頭を割られて死んでいた事件。窓が開いており、警察は外部からの侵入者が犯人だとみている。
スクール水着が盗まれていたのも、その見方に拍車をかけているようだ。
A子「で、でもぉ…よかったんですかねぇ?私たちが死体を見つけたの、警察に黙ってるなんて…」
B子「あんたはマゾだからいいかもしれないけどさー、あんな事件に関わりたくないっての。」
E子「死体を発見したのが誰かなんて、関係ないわよ。
せっかくこの学校に入ったんだから、こんなことで失敗したくないの。」
E子という少女が、強硬に押し通して死体発見を黙っていたようだ。
いきなり画面が暗転し、「4日目」と表示されてまた始まった。
弓道部の部活で遅くまで残っていたE子が、暗い廊下を一人足早に歩いていた時、どこからか声が聞こえてきた。
E子は悲鳴を上げ、一目散に走りだす。
「いやっ!許してぇーーー!!!」
「許さない」という赤い文字が画面を覆いつくし、画面が赤く染まった。
E子の死に様が実写で映し出される…頭を割られ、壁に背を預けて絶命しているE子。傍らに血の付いた金属バットが転がっている。
C子「やっぱ、呪いっすよ!同じ様に頭を割られてたなんて…」
そこで画面は暗転し「GAMEOVER」の文字が表示された。その下には「ごかいした」という謎のひらがなが。

意味不明すぎて不気味な内容だった。何故いきなり2日目で始まり4日目に飛ぶのか?
分岐もないのに何故GAMEOVER?その下の「ごかいした」とは?何かを誤解したのか?
それにわざとなのかどうか、少女達のセリフの中には、耳に覚えのある喋り方が含まれていた。
何にせよ、これが一体どんな動機になるのか、全くわからない。
モヤモヤした気持ちのまま自分のコテージに帰り、寝ることにした…。

翌朝起きても、あの意味不明なゲームが頭を離れなかった。
もういっそ正直に話して、ゲームの内容を皆に相談してみようか?
そう思いながら朝食会に出てみると、皆勤賞だった真昼の姿がなかった。
「一人になりたい」と言って、朝食会には出ずどこかに行ってしまったらしい。
そういえば、昨日「用事ができた」といって出かけて行って以降、元気がなかったようだ。
罪木が、顔を曇らせて呟いた。
「もしかして小泉さん、あのゲームを…」
「黙れゲロブタ!!そこの鈍臭いオタク女ならともかく、小泉おねぇがゲームなんてやる訳ないだろ!」
すかさず、日寄子が口汚く人を罵る。
「……。あ、もしかしてオタク女って私の事?」
「ひうぅ…ゲロブタは私の事ですよねぇ…」
どうしてこいつはこんなに性根が腐っているのか…
日寄子は、朝から大量に食べる終里にも嫌味をぶつけていたが、終里はまるで意に介さなかった。
「おめぇこそ、菓子ばっかりじゃねぇか。」
「いいんだもーん。これは4種類のフルーツ味のグミだから、色んなビタミンがたっぷり入ってるはずなんだもん。」

247 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:24:27.13 ID:RGd60neR0
しかし、とてもじゃないがゲームをやったなんて言い出せる雰囲気じゃない…
日向がそう思案に暮れていると、目の前に左右田が座って顔を寄せてきた。
「よぉ、おめーに頼みてぇ事があるんだ。14:30にスーパーまで来てくれ。
…あ、あと、体力は温存しとけよな。」
不審に思ったが、ビビってる時以外はソニアの事くらいしか考えてない左右田のことなので、警戒せずスーパーまで行ってみた。
案の定、左右田の頼み事とは、ソニア絡みの事。
何でも、左右田が小耳に挟んだところ、ソニア発案で女子一同は海水浴に行くらしい。
そこに、是が非でも、偶然を装って合流したい!!だから付いてきてくれというのである。
「一人ってのは不自然すぎんだろ?偶然俺とお前が海水浴に行ったところで、女子たちと出くわすって筋書よ。
…あっ!何だよ!断る気か!?俺はお前の分の水着ももう用意してやってんだぞ!」
断ったら一生ネチネチ言ってやるからな!と喚く左右田に負け、このくだらない作戦に乗ることになった。
ご機嫌の左右田に連れられ、第2の島のダイナーで女子達を待つ。
ビーチに行くには、必ずここの駐車場を通り抜けることになるので、格好の待ち伏せ場所なのだ。
ダイナーに着いたのが15時で、女子たちの待ち合わせ時間は16時!1時間もある。慎重を期しすぎだ。
ガラス越しに駐車場を睨みながら、浮かれた左右田のビキニ談義を聞かされ続けるという不毛な時間を30分近く過ごした時、
九頭龍が駐車場を歩いているのを見つけて、二人はダイナーを飛び出した。

「なっ、なんだてめーら!?」
「隠すんじゃねぇよ、お前、俺達の計画を聞いてやがったな?お前も合流したいんだろ!」
噛み合わない口論をしている二人を眺めていると、罪木と唯吹がそこに通りかかった。
「や、やぁ、偶然だね、二人はこんなところで何を?
オレらは海水浴に来てね…あっ君たちもそう?それは偶然だ!むしろ運命だ!合流しましょう!」
……演技が下手すぎて見ていられない。しどろもどろでボロを出しまくる左右田から目を逸らすと、いつの間にか九頭龍がいなくなっていた。
唯吹は呆れながらも、発案者のソニアがOKを出すなら一緒に海水浴に来ることを許してくれた。
女子たちの待ち合わせ場所は偶然にもダイナー。
唯吹と罪木は、腹ごしらえの為に早めに来たということで、4人でダイナーに引き返して他の女子たちを待つ。
ビーチハウスは着替え禁止なので、日向以外の3人はもう服の下に水着を着こんでいるらしい。
「あ、お前はまだだったな。じゃあ、トイレで履いてこねーとな。」
左右田が差し出したのは、迷彩柄のビキニパンツ…
「あのぅ…差し出がましいようですが、その水着は大胆すぎます…!」
罪木に言われるまでもなく、難色を示す日向に、左右田が涙目でキレる。
「なんでだよっ!俺とお揃いなのが嫌だとか言うんじゃねーだろーな!?」
「お揃いなのかよ!?じゃあ絶対に嫌だ!!」
ギャアギャア騒いでいると、ガラスの向こうを何かが駆けていくのが見えた。

西園寺日寄子だ。何故か泣きながら、着物の裾をからげて全速力で走っていく。
唯吹曰く、日寄子は泳げないからと言って海水浴を断ったらしい。
だが、日寄子は今ビーチ側から走ってきたが…。
「まぁ、女は意外性に満ちているもんっすからね。絶対来そうな真昼ちゃんにも断られたっすから」
確かに、真昼が来ないのは意外だ。むしろ、あいつこそこういうことを発案しそうなのに。
その時、ダイナーの扉が開いた。
「あらら、残念。早めに来たから、一番乗りかと思ったのに。」

248 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:25:55.41 ID:RGd60neR0
正直、眼が釘付けになった。
そこに立っていたのは、白いビキニを着た七海千秋だった。
ガーリーなテイストだが大胆なラインが、色白な肌と相まって…
「なんつーか…これがギャップ萌えってやつか!普段おとなしい奴が大胆な水着着ると、なんか高ぶるよな…
な、日向!しかしあいつがあーんな巨乳だったとはなぁー…」
「…いや、まぁ、どうだろうな…」
なんて言いつつ、日向は鼓動が早まるのを感じていた。
「ちょっとサイズが小さかったかな?でも、この水着しか合うのがなかったんだよね。
……似合ってないかな?」
「え?いや…似合ってるんじゃないかな…」
七海に首を傾げられ、日向はどぎまぎと答える。七海も微笑み、いい感じになったところで…
「おう、待たせたな。」
扉が開き終里が入ってきた。
期待通りのダイナマイトボディにボーダービキニはいいのだが、頭が割れてて血まみれだ。
ここに来る途中弐大に会い、トレーニングと称した肉弾戦に興じていたらしい。
終里は初めて適わない相手に出会ったらしく、大喜びでしょっちゅう弐大に勝負を挑んでいるのだ。
罪木が手当の為に終里をトイレに引き摺って行った所に、ペコが入ってきた。
ペコは第1の島から、反対側の島に泳いで行けないか試していたそうで、既にずぶ濡れだった。
黒のビキニ、濡れ髪のオールバックが艶めかしいが、こんな時にも背に竹刀袋はしょっている。
巨乳3人衆のサービススチル3連発が終わったところで、ソニアが元気よく入ってきた。
「そ、ソニアさんが来ただぁー―――!!ど、どんな水着をぉ!
ぎゃあ!ウェットスーツだ!」
左右田が慌てて立ち上がったが…、ソニアが着用していたのは全身を覆うウェットスーツだった。
「日焼けすると肌がダメージを負ってしまいますからね!でも、ウェットスーツを着たのは初めてなので手間取って遅れてしまいました。
本当にめんごですわ。」
左右田は流石の立ち直りの早さで、ソニアの美麗なボディラインに興奮している。
ソニアに、男子が紛れこんでいることを訝しまれると…
「それなんですよソニアさん…率直に言うと、海に行くならどうかオレ達にもお供させてください!!」
もうド正面から行くことにしたようだ…。ソニアは困りながらも了承してくれて、左右田はテンションぶっちぎりでビーチにすっ飛んで行く。
パラソル、シート、ドリンクなど、女子の方々をおもてなしする為準備に行くそうな…
水着の女子に囲まれているのも気まずいので、日向も後を追いかけた。

日向が駐車場奥のトンネルを抜け、ビーチハウスの前まで来た時、
ピンポンパンポーンと、聞き覚えのあるアナウンスが聞こえてきた。まさか…
「死体が発見されました。一定時間後に学級裁判が始まります」
それに被る様に、「誰か来てくれぇ!!」という左右田の絶叫が聞こえてきた。
目の前の道路側の扉からビーチハウスに入ろうとすると、何故か開かない。
砂浜側のドアまで回り込んで飛び込むと、そこには…頭を割られた小泉真昼が、血の海の中、道路側の扉に背を預けていた。
既に息はなく、傍らに血の付いた金属バットが転がっている。
250 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 18:27:42.67 ID:RGd60neR0
視界がブラックアウトしそうになり、思わず壁に手を突いた。
左右田も、半泣きでウロウロと歩き回っている。
「なぁ…日向よォ…俺ら、さっきまでいい感じだったよな?
海水浴だって、はしゃいでよォ…それが、どうしてこんなことになっちまってんだよ!誰か、教えてくれよォ!」
それを、今から自分たちが突き止めなければならないのだ。
集まってきた女子たちが、青い顔でフラフラとビーチハウスに入ってくる。
それを、冷静な七海が止めた。出入り口に足跡が残っている、それを消さないよう注意を呼びかけたのだ。
皆は尻込みしているが、七海は学級裁判で真犯人を引きずりだす為に全力を尽くすつもりでいる。
「ふゆぅぅ…また、あんな残酷なことをしなくちゃいけないんですかぁ…!」
「…コロシアイなんて、絶対許しちゃダメなんだよ。犯人に事情があるのもわかってる。本当に悪いのはモノクマだってこともわかりきってる。
でもね、コロシアイなんて、絶対に許しちゃダメ。」
七海の言う通りだ。何故小泉真昼が死ななくてはならなかったのかを突き止め、今度こそこの殺し合いに終止符を打つ。その為には…
「俺がやるしかないんだ!」
日向は決意を新たに、小泉の死体に向き直った。

罪木が他のメンバーに死体の場所を教えに行き、モノクマがモノクマファイルを置いて去って行った。
モノミは、また死人が出たことに涙している。
彼女は、モノクマに監視カメラのモニタを奪われてしまい、この島で何が起きているのかを把握することができなくなっているらしい。
役立たずのウサギは放っておいて、捜査を開始する。

【モノクマファイル】
・小泉真昼の死亡推定時刻は15時頃。
・死因は、鈍器で頭部を殴打されたこと。その一撃で死亡し、他に外傷、薬品の摂取などの痕跡は見られない。

【ビーチハウス内部】
・真昼は、道路側の出入り口のドアに背を預けている。
そこまで這ったのか、血痕は部屋の中央から扉まで擦ったように続いている。
・左右田が、ビーチハウス備え付けの冷蔵庫を見て首を傾げている。ドリンクの種類が減っているらしい。
確かに、色のきつい甘そうなドリンクばかりが残っている。
・冷蔵庫横のゴミ箱に、水系のドリンクの空ペットボトルが大量に捨てられていた。
・サーフボード等がしまってあるウォークインクローゼットの中に、グミが一つ落ちていた。誰かが入ったようだ。
それにしてもクロゼット内の整頓が悪い。サーフボードが散乱し、空のボードケースが棚に並んでいる。
・道路側の出入り口に真昼がもたれている為、砂浜側の出入り口しか利用できない。
砂浜には、ビーチハウスに向かう皆の足跡のほかに、一筋だけビーチハウスから出ていく足跡があった。
足跡は、ダイナーの駐車場に抜けるトンネルへと続いている。これが、犯人の足跡なのだろうか。
・シャワールームは元々故障していて水が出ない。一応調べたが特に何の痕跡もない。
ただ、出入りができそうな大きさの窓があるが…シャワールームなので風紀上、窓は天井近くにある。
終里を肩車して調べてもらうというラッキー調査の結果、窓は簡単に開け閉めでき、上りさえすれば外に出られることが分かった。
だが高さが3m程の位置にあるので、ジャンプしたくらいでは登れそうにない。終里が「忍者なら登れる」と言い出したのは黙殺した。
・死体の横に、魔法少女物のアニメのお面が落ちていた。ソニアはそれを見て、調べ物があると言い残し駆け出して行った。
254 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 19:55:46.38 ID:RGd60neR0
現場の様子は、トワイライトシンドローム殺人事件のE子の死に様と気味の悪いほど合致している。
七海もあのゲームをプレイ済らしく、あのゲームが今回の事件と深くかかわっていると確信している。
あのゲームの訳の分からなさを話題にしようとしたが、なんと七海は真エンドをクリア済らしい。
「クリアもしてないゲームを語るほど、浅い女じゃないよ。」
七海に連れられ、あのゲームを攻略する為にジャバウォック公園に赴く。
そこには思いがけず、モノミによって縛めを解かれた狛枝がいた。
狛枝は今、ゲームの真エンドを見たところらしく、他の場所の調査へ去っていく。
気を取り直して、七海に手解きを受けてゲームをスタートする。
キーワードは「ごかいした」。あれは誤解したではなく5回下と解釈すればいいらしく、スタート画面で5回↓を入力すると、裏面が始まった。

【トワイライトシンドローム殺人事件・真相編】
・1日目、同じようにA子が友人たちの元へ向かうところから始まった。
また遅刻を謝り、B子に罵られ、D子がそれを窘めて皆の写真を撮り、C子が横で茶化す…
やはり口調に覚えがある。A子は罪木、B子は日寄子、C子は唯吹、D子が真昼だ。
4人はE子を待っている。スクール水着が鞄に入っていなかったので、探しに戻ったらしい。
最近噂の変質者に盗まれたんじゃないか、とB子が言ったところで、2階からガラスの割れるような音が聞こえた。
急いで階段を上ると、E子が音楽室の前で息を切らしていた。この中から音が聞こえたが、鍵がかかっているらしい。
D子が、放課後遅くて人気のない職員室から鍵を盗み、音楽室を開けた。
中では、少女が一人壁に背を預けて事切れていた。頭から血を流している。
その背後の窓ガラスが割れていた。近くで水槽が割れ、砂利が散乱している。
皆が聞いた音は、このガラスが割れる音だったのだろう。
状況から鑑みて、犯人は少女を音楽室に連れ込み、鍵をかけて、少女を何かで殴り殺し、窓を割って出て行った…とB子が推理する。
でも、窓を割る必要はないはずだし、凶器らしいものは見当たらない…。
「…きっと犯人は変質者だよ!だって、私のスク水、見つからなかったんだよ?
私の水着を盗んだ奴が、この子を乱暴しようとして連れ込んで、殺して逃げたんだよ!」
E子はそう主張し、第一発見者だというだけで疑われるかもしれないから、知らなかったふりをして帰ろうと言う。
皆も賛同し、音楽室から立ち去った。D子だけが考え込んでいる。
3日目、D子はE子を人気の無い所に呼び出した。
「なぁに?まさか愛の告白?」
「E子、これ、見てほしいんだ。」
D子が差し出したのは、割れた花瓶の写真。死体を発見した日、他の教室で割れているのを見つけ、写真に撮っておいたのだ。
あの時4人が聞いたのは、ガラスではなく、この花瓶が割れる音…
「これが見つかると、E子、まずいんでしょ?処分しておいたから…
ゆするとかそういうんじゃないよ。ただ、私には話してほしいの。私たち、親友でしょ?」
「…D子だって、話してくれなかったじゃない。あいつ、D子に嫌がらせしてたんでしょ?」
死んだ少女は、D子に過激な嫌がらせを繰り返していた。同じ中学の写真部の後輩だった彼女は、D子の才能に嫉妬していたのだ。
親に権力があるのをいいことにやりたい放題、嫌がらせの件を諌めたE子にも彼女は牙をむき、E子も虐めの標的にすると宣言したらしい。
カっとなったE子は、その少女の首を絞めてしまった。気絶した彼女を見てE子は、このまま大事になるならいっそ、と彼女を殴り殺してしまったのだ。
E子はD子の元から走り去り、学校のゴミ捨て場に、花瓶の写真を投げ捨てた。
それを見ていた少年、F男がその写真を拾い上げる。彼はその写真で事件の真相を見抜いたようだ。
「あいつ、あの日妹と一緒にいたって噂の…E子とかいったな。あの女、妹に何をしやがった?…ぜってー許さねぇからな…。」
・そこでゲームは終わった。モノクマで埋め尽くされたスタッフロールが流れ、最後に出演者の一覧が表示された。
ツミキ サイオンジ ミオダ コイズミ サトウ クズリュウ クズリュウ

255 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 19:56:16.04 ID:RGd60neR0
予想通りのキャスティングに、知らない名前が一人と、もう一人の九頭龍。
現れたモノクマ曰く、これは完全ノンフィクション、記憶から奪われた学園生活の中での一コマだという。
「それでは、真エンディングをクリアした人へのクリア特典ですが…一つしかないので、最初にクリアした人にあげちゃいました!」
七海も、二人を呼びに来た狛枝も、クリア特典とやらはもらっていなかった。
狛枝は、あのゲームに出演していたメンバーを空港に集めておいたので、話を聞こうと誘ってくる。
胸糞が悪いが、手掛かりは欲しいので誘いに乗り、3人で空港に向かった。
空港にいたのは、唯吹、罪木、日寄子の3人。九頭龍はコテージに籠っていて出てこなかったらしい。
唯吹と罪木に真昼の事を聞くと、二人は真昼の事を、特に親しくはない相手と認識していた。しかし、二人とも今日真昼から誘いを受けていた。
真昼は、二人に海水浴の予定があると聞いてガッカリし、日を改めると言っていたらしい。
日寄子にも、真昼から誘いがあったかどうか聞いてみると、彼女はそんな誘いはなかったと答えて逃げ去っていった。

真昼は、やはりトワイライトシンドローム殺人事件をクリアしていたのだろう。
だからこのメンバーに召集をかけて話し合おうとしたのだ。
狛枝と別れて、七海と日向は真昼のコテージにクリア特典が無いか探しに行く。
果たしてそれはそこにあった。ベッドの上に、大判の封筒が置いてあり、中には写真が数枚入っていた。
玄関ホールのような場所で、揃いの茶色いブレザーを着て映っている、罪木、唯吹、日寄子。
これは、D子=真昼が1日目の最初に撮った写真なのではないだろうか?
2枚目は、ゲーム中にも出てきた、割れた花瓶の写真だった。
3枚目は、見知らぬ少女が、頭から血を流し絶命している写真だった。ピアノが映り込んでいるということは、これが音楽室で死んでいたあの少女か。
4枚目は、E子の死体の写真だった。黒いザンバラ髪が乱れて顔は見えない。傍らに金属バットが転がっている。
この殺人事件が実在したという事は、自分たちの奪われた学園生活も実在することになる…。
そう考えていると、封筒からさらにメモが1枚出てきた。
「あのゲームをプレイしろ。ゲームオーバーになったら、始めの画面で5回下を押すと違う面が出てくる。
それをやれば、お前らが妹に何をしたか思い出すはずだ。話は、それからだ。」
この見覚えのある封筒…やはり、ゲームを最初にクリアしたのは彼の様だ。
クリア特典を調べ終り、コテージを出たところでまた狛枝にぶつかった。
捜査に進展があったから教えに来たらしい。九頭龍に話を聞きに行く七海と別れ、狛枝と共にビーチハウスに戻った。

【再びビーチハウス】
・狛枝の発見とは、ビーチハウスから去っている足跡を特定できたこと。
モノクマに頼んで鍵を開け、本人が中にいた九頭龍以外全員のコテージに入り込み、靴型を取って回ったのだという。
その結果、唯一このハウスから去っている足跡は、西園寺日寄子の物だった。
・日寄子の靴型を取った際、彼女の部屋に大量にあったグミの袋を一つ狛枝はくすねていた。
日寄子はこの銘柄がお気に入りで、こればかり食べている。マスカット、オレンジ、グレープ、ストロベリーの4つの味が入った商品だ。
・罪木が検死を終えていた。それによれば、真昼は即死。苦しむ間もなく息を引き取っただろうと言う。
・小泉のポケットからメモが発見された。
「さっきの事だけど時間を変更していいかな?14:30にビーチハウスでお願い。誰かが私たちが会うのを邪魔しようとしてるみたい。
だからこの事は内緒ね。それまで会わないようにしよう。」
末尾には、西園寺日寄子と署名されていた。
・ソニアが、調べ物を終えていた。ソニアが主張するには、この事件は『キラキラちゃん』の仕業らしい。
ヒーロー物の仮面が落ちていたからというだけのことが根拠だ。ソニアは、殺人者が仲間の中にいるのではなく、島内に殺人鬼が元から潜伏していたと考えたいらしい。
ソニアは、キラキラちゃんの恥ずかしい上に長い決め台詞をポーズ付きで熱演して見せた。雑誌に原文が載っていたので、わざわざ訳して覚えてきたらしい。
「正体不明の殺人鬼に決め台詞があるのか…?」と突っ込むペコに、ソニアはキラキラちゃんに遭遇した記者が書いた記事の事を熱く語る。

そこでチャイムが鳴り、一同は裁判所へ向かった。
皆真昼の事を思い出し、口数が少ない。勝気だが面倒見がよく、誰に対しても真っ直ぐにぶつかっていく奴だった。
その小泉真昼を、この中の誰かが殺した。それを暴かなければ、犯人以外全員死ぬ。

256 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 19:57:31.76 ID:RGd60neR0
【第2回学級裁判】
モノクマの要望により、まずトワイライトシンドローム殺人事件の真相を解くことを議題にする。
大抵のメンバーがゲームをプレイしていないので、ざっと内容をまとめた。
オドオドしたA子が罪木、性格の悪いB子が日寄子、ハイテンションなC子が唯吹、カメラを持ったD子が真昼。最後に登場したF男が九頭龍だ。
九頭龍に妹がいるのは日向が聞き知っている。その九頭龍の妹が、最初に死んでいた女子高生だ。
スタッフロールの余りからするに、女子高生を殺し、自分も殺されたE子がサトウだろう。

罪木と唯吹は、その内容にまるで心当たりがないようだった。記憶を奪われているなら当然だろう。
九頭龍は、ゲームの内容など現実に関係ないと決めつけ、ゲームをプレイしたことも否定している。
「大体、殺して死ぬような妹なら俺が殺してるっつーんだよ。あいつ、俺が希望ヶ峰に入る時も、憎まれ口叩いて…
ついこの前の事だぞ!!」
自分たちの感覚も同じようなものだ。でも、モノクマの言葉が真実なら、その間には数年の月日が存在している。

九頭龍の妹をE子が殺した時の真相をまず解いておく。
E子は、音楽室で彼女を殺して鍵を閉めた後、鍵を職員室に戻しておき、皆が昇降口で待ち合わせをした時間にまた戻ってきて、隣の教室で花瓶を割り皆を招きよせたのだ。
なので、九頭龍妹が死んだのも、ガラスが割れたのも、もっとずっと前の事だったのである。
凶器がなんだったのかで行き詰まり、皆が適当に室内にあったものを列挙していく。
唯吹の「逆に砂利」という言葉に、日向は閃いた。
スク水を縛って砂利を詰めぶん回せば、相当の威力が出るのではないだろうか?スク水を始末してしまえば変質者に罪も着せられるし一石二鳥だ。
その後真昼が花瓶を始末して証拠隠滅し、E子はその写真をゴミ捨て場に捨てた。
妹が死んだ日にE子と妹が話していたという噂を聞いていた九頭龍は、その写真を見てE子が犯人であることを見抜いた。
そのことだけから判断すれば、E子を殺したのは九頭龍である可能性が高い。

そして、現実の真昼が殺された事件だが、金属バットや真昼の死因からして、犯人はあのゲームを意識している可能性が高い。
日寄子は、低能な九頭龍がゲームの内容を信じ込んで、復讐のために真昼を殺したんだと主張しているが…
「それが真犯人の罠かもしれない。ゲームを利用して、九頭龍を犯人に仕立てる為のな。
実際そうなんだろう?西園寺。」
ペコは、日寄子こそ真昼を殺した犯人だと主張した。
彼女はビーチハウスに来ていた。足跡がそれを証明している。
砂浜には日寄子の足跡は出ていく時の物しかない。つまり彼女は道路側のドアからビーチハウスに入ったはずだ。
真昼の死体が、そこにもたれかかる前に。

日寄子は泣きわめいていたが、通用しないと分かると、朝のお散歩の時にビーチハウスに入ったとうそぶき始めた。
「嘘だと思うなら証明してみてよ。きゃははははははは!あんた達みたいな低能に、できるわけないよねー!」
急に元気になったので、真昼の持っていたメモでぶった斬っておく。
日寄子と真昼が14時30分にビーチハウスで待ち合わせをしていた証拠だ。
「えっ…何?そのメモ…私、そんなの書いてない!本当に知らないよ!」
「おっ、そうだ!俺ら西園寺を目撃してんじゃねーか!
俺と日向は、海水浴の待ち合わせで15:00にはダイナーにいた。
それから30分ちょっとで西園寺が走ってきたから、15:30過ぎだったはずだ!」

257 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 19:58:30.37 ID:RGd60neR0
ペコと九頭龍が、左右田の証言を受けて日寄子を糾弾する。
日寄子は先に道路側からビーチハウスに入り、ウォークインクローゼットの中に隠れていた。
そして真昼が来たら、彼女の隙を突いて殴り殺し、死体がドアを塞いでしまったので、仕方なく砂浜側から逃げ出したのだろうと二人は主張する。
落ちていたグミがその証拠だと突きつけられて、日寄子は言い返せない。
大多数のメンバーは、日寄子犯人説一色で、彼女の犯行の証拠固めを議論している。
ソニアだけが、これは殺人鬼キラキラちゃんの仕業だと主張しているが、皆に黙殺されている。
しかし日向は、違和感を感じていた。なんだか、うまく誘導されているような気がする。
主人公は、クローゼットの中にあったグミが黄色かった事を理由に、これは真犯人の罠だと主張した。
日寄子が普段食べてたグミには、黄色い色の物は入っていないのだ。

「グミごときで容疑が晴れたと思ってんじゃねぇぞ!?俺の追い込みはこんなもんじゃねーからな!」
九頭龍は、強硬に日寄子犯人説を押し通そうとする。
あの砂浜の足跡は、動かしがたい証拠だというのだ。
確かにそうなのだが…、日寄子が足跡を残さざるを得なかった理由を先に議題に上げる。

皆は、真昼の死体がドアを塞いでいたことを、彼女が瀕死の状態でそこまで這ったからだと思っていたが、
罪木と主人公が、検死の結果からそれを否定した。真昼は即死だった。
犯人が、真昼の死体を引きずってドアを塞いだのだ。
血まみれの真昼に触れたなら、犯人もかなり血で汚れたはずだ。
15:30頃に左右田と日向が目撃した時、日寄子の着物は綺麗だった。
「そ、そんなもん、一回裸になってから、後でシャワーで血を落としゃ済むだろうが!」
しかし、それは日寄子には不可能だった。
朝食会に来ない九頭龍は知らないだろうが、日寄子は一人で着つけができないばかりに、
南国で3日も着物を脱がず風呂にも入らないという無茶をしたのだ。
更に言うなら、ビーチハウスのシャワールームは壊れていて水が出ないし、
ビーチハウスでの着替えは、モノクマによって厳禁されている。
九頭龍は言葉に詰まり、渋々訴えを取り下げた。
何故そこまで日寄子を犯人にしたいのか聞いても、怒るだけで彼は答えない。
そういえば、九頭龍の事も左右田と日向は見かけているのだが…
九頭龍は、ビーチハウスなど行ってないし、二人と出くわした後はすぐ自分のコテージに帰り、その間に誰にも会ってないと証言した。

容疑が晴れて急に強気になった日寄子に、本当は何があったのかを聞き出す。
日寄子は、ポストに入っていた真昼からの手紙を見て、14時頃ビーチハウスに行ったらしい。
その手紙は、真昼が持っていた日寄子からの手紙とほぼ同じ内容、同じ筆跡だった。
ただ時間だけが、日寄子宛てには14時、真昼宛てには14時30分になっている。
この2通の手紙は、犯人が二人を操るためにねつ造したものだったようだ。
日寄子はビーチハウスに着いた直後に何者かに眠らされてしまい、気づくとウォークインクローゼットの中に倒れていたらしい。
慌てて飛び出すと、目の前に真昼の死体があり、怖くてそのまま逃げ出してしまったのだそうだ。
罪木が、日寄子が眠らされたのはドラッグストアにあった薬だろうと証言した。
医師の処方が必要な薬が幾つも陳列されていたのを、彼女は事前に確認している。

258 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 19:59:02.41 ID:RGd60neR0
そうなると、犯人はどこかに隠れていたということになる。
グミ等の偽装工作は、日寄子が逃げた後に施さなくては、彼女に回収されてしまうかもしれないからだ。
しかし日寄子は逃げる前に犯人がいないか確認する為シャワールームを覗いたらしい。
そうなると、犯人はどこに潜んでいたのだろうか。
そこで、七海と日向はウォークインクローゼットの棚の乱雑さを思い出した。
棚のサーフボードケースが空だったのは、あの中に犯人が潜り込んでいたからではないだろうか?
犯人は日寄子を陥れる為、真昼の死体を使って道路側のドアを塞いでおき、クローゼットに隠れ、日寄子が逃げてから偽装工作を施したのだ。

そこで狛枝が、ふいにモノクマにむかって証言を求めた。
死体発見アナウンスは、3人が死体を発見すると放送される。その3人には犯人自身も含まれるのか?
モノクマは、そこの基準を今まで曖昧に扱っていたらしく答えを渋るが、
今回に限っては、犯人以外の3人が死体を発見したと渋々証言した。
狛枝はそこで発言を打ち切り、思わせぶりに議論から引き下がる。

シャワーが壊れていたなら犯人だって血を洗い流せない事が論点になった。
しかし、シャワー以外の物を使えばいいだけだという七海の発言に日向も同意する。
水系のドリンクが無くなっていた冷蔵庫と、大量の空きペットボトル。
犯人は冷蔵庫の中の水を使って、血を洗い落としたのだ。
そこまで仮説を出して、主人公はふいに思い当たった。
ペコは、一人だけずぶ濡れの水着姿で待ち合わせ場所に現れた。
ビーチハウスにタオルの類はないし、いくら南国でもそんなにすぐには乾かない。
泳いできたなどと言っていたが、あれは血を水で洗い落とした後の姿だったのではないか?

そう糾弾されてもペコは、静かに瞑目しているだけだった。
その代わりに何故か、九頭龍が日向に猛反発を返す。
ペコがその姿で、ビーチ側ではなく橋の方から歩いてくるのとすれ違った、だからペコは本当に第一の島で泳いでいたというのである。
しかし九頭龍は、誰にも会わなかったと証言したばかりだ。
そう諭すと、九頭龍はとにかくペコが犯人ではないと主張し、彼女がどうやってビーチハウスから出ることができたのか答えてみろと突っかかってくる。
足跡を残さずに砂浜から出ることはできない。考えられるのは、シャワールームの窓から道路へ降りることくらいだ。
しかし、九頭龍が主張するように、窓までは3m程あり、とても登れそうにはない。
「…待てよ。辺古山なら、登れたかもしれない。」
主人公は、ダイナーに現れたペコの姿を思い出して閃いた。
彼女は、水着姿でも竹刀を背に背負っていた。あの竹刀を使えば…
「ほーらな!だから忍者って言ったろ?忍者は、刀を壁に立てかけて、鍔を踏み台にして跳ぶんだ!」
終里が得意げに豆知識を披露する。

「待てよ!そうしたら、竹刀がシャワールームに残っちまうだろうが!」
またしても、九頭龍が反論をしかけてくる。
「どうしたんだよ、九頭龍…何故、お前がそんなに必死に…」
九頭龍は答えず、ひたすらペコを庇い続ける。仕方なく日向は、竹刀袋の紐を結んでおけば、竹刀も回収できることを指摘した。
「まだだ!お前ら、全部憶測でモノを言ってるだけじゃねぇか!証拠がねぇなら俺は認めねぇぞ!!」
「もういい。これ以上は悪あがきにしかなるまい。」
沈黙を守っていたペコが、足掻く九頭龍を制して罪を認めた。

259 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 20:01:10.34 ID:RGd60neR0
投票に移ろうとするペコを止めて、七海が動機を尋ねた。
「…それは私の大義のためだ。この世の中の正義を守るためのな。」
ペコは突然、ポーズをとって高らかに正義について語り始めた。
あのゲームをプレイしたことによって、下劣な殺人者の共犯が潜んでいることに気づいたペコは、
正義を持って真昼を粛清したのだという。
「もういい…もうやめろ!!」
苦しげな九頭龍にかまわず、更にペコは取り出した美少女物の仮面をつけて声を張り上げた。
「輝く正義を仮面に浴びて、醜き悪の五臓六腑をブチ晒す…正・義・完・了!!
正義で貫く正義のど真ん中!闇夜に輝く正義の一番星!
人呼んで、『キラキラちゃん』とは私の事だ!( `⌒´)」
…恥ずかしい!!その異様に語呂の悪い文句は、ソニアの言っていたキラキラちゃんの決め台詞そのものだった。
皆赤面しつつ、このサイコパスを投票で葬り去ろうとスイッチを押した。
満場一致でペコが犯人に決まったのだが…
「待ってください!お願いです、もう少しだけ議論を続けさせてください!」
ソニアが必死の面持ちで処刑を止める。
「ソニアさんが気にしているのは…本当に辺古山さんがキラキラちゃんなのか…だよね?」
七海の言う通り、ソニアはそこをもう少し掘り下げたいと言う。日向も気になることを思い出した。
ソニアはキラキラちゃんの決め台詞を演じて見せたとき、「原文があったので訳してきた」と言った。
つまり…オリジナルのセリフは、日本語ではないのだ。
「そうなんです!原文はスペイン語…キラキラちゃんも記者も、スペイン国籍のはずなのです!」
日向は勘違いしていた。最初に、セーラー服を着た殺人鬼ジェノサイダー翔だとかの話の延長で聞いたため、キラキラちゃんも日本の物だと思い込んでいたのだ。
そしてそれは、その場にいたペコも同じだったのだろう。

「…ふっ、この仮面がはがれる時が来たようだな。しかしこの仮面はもう用済みだ。私と同じようにな。」
ペコは、静かに仮面を取った。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。
「今頃気づいても、お前達にとってはもう手遅れだ。投票は終了してしまったのだからな。」

謎めいた言葉に不安に陥る一同に、狛枝が死体発見アナウンスの事を蒸し返した。
ペコが犯人なら、死体発見者は日寄子と左右田と、あともう一人いるはずだ。
それがペコの共犯者だったとしたら…
「共犯者などではない。お前達は根本的に勘違いをしている。
私はただの道具だ。冬彦ぼっちゃんに使われるためだけに存在している。」
あのゲームによって真昼に殺意を抱く可能性があった唯一の人間、九頭龍冬彦。
クリア特典として写真を受け取った彼は、妹の亡骸の写真を目の当たりにして、ゲームの内容が現実にあったことと認識せざるを得なくなった。そして…
「ぼっちゃんが、私という「凶器」を使って小泉真昼を殺したのだ。つまり、ぼっちゃんこそが真犯人だ。」
無茶苦茶な主張だ。しかし、これが通れば、この投票は不正解。つまり生き残るのは…
「…俺、だけ……」
九頭龍は、青い顔で呆然としている。

260 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 20:01:59.07 ID:RGd60neR0
「ど、どう考えても辺古山が犯人だろーが!だって、お前は人間だろ!」
「人間だからどうだというのだ。人間なら道具ではないというなら、お前は間違っているぞ。
道具として生きるより他のない人間の存在を知らないだけだ。」
ペコは、生まれてすぐに親を亡くし九頭龍組に拾われた。
そして、九頭龍冬彦と共に育ち、共に生きてきた。それは幼馴染などという関係ではない。九頭龍冬彦の刀としてのみ、ペコは存在を許された。
九頭龍冬彦が狙われればその身を守り、九頭龍冬彦が殺意を抱けばその人間を殺す。それがペコの役目だ。
「そんな…じゃあ、私たちと過ごした時間は一体なんだったんですか…!?」
「なんでもない。私は、ぼっちゃんに命じられた通りに振る舞い、お前たちに接していただけだ。」
”この島では俺とお前の関係はチャラだ。普通の高校生として振る舞え”そう九頭龍に言われたのだという。
「この島に来てからだけではない…。冬彦ぼっちゃんは組に頼ることを嫌う。組から与えられた私を嫌う。
だが私は、ぼっちゃんの道具だ。」
だから、九頭龍の命じるままに、小泉真昼を殺害した。

「どうなんだよっ九頭龍!」
問われて、九頭龍は苦しそうに語り始めた。
「だって…しょうがないだろ!いきなり、いきなり妹の死に顔なんか見せられて…
それなのになんで俺は、妹が本当に殺されたのかどうかも、わからないんだよ!」
記憶は蘇らず、悩んだ九頭龍は小泉真昼に写真を送りつけて話を聞こうとした。
しかし、真昼は九頭龍を避けるようになり、業を煮やした彼は、立ち聞きした日寄子との約束を利用して真昼を誘き出すことにした。
「殺られたら殺り返す。それが俺の生きてきた世界だ…。
もし本当に妹が殺されてて、この島に妹が殺される理由を作ったやつがいるなら、殺るしかないだろ…。
妹が撲殺されたなら、そうした相手も撲殺する。それが復讐ってもんだからな…。
でも俺は、ギリギリまで信じてたんだぜ!あんなゲーム、フィクションだって…なのにあの女!」

真昼は九頭龍に妹の事件の事を詰問された時、逆に問い返してきたのだという。
「じゃあ、E子の事を殺したのはアンタなの?」と。
妹が殺されたのは気の毒だが、E子を殺す必要なんてないじゃない、復讐したり人を裁いたりする権利なんて誰にもない!と、
口うるさい真昼らしく、正義感のままに、逆に九頭龍を責めつけた。
「正直に言ってやろうか…。俺はビビってたんだ。最後まで、踏み止まる理由を探してた…。
だけど、あの女の言い草を聞いて、そんなもの頭から吹っ飛んじまった…!俺はカっとなって、隠してあった金属バットで…
けど、そん時だった…」
「ぼっちゃんは待ち構えていた私を呼び寄せて、小泉を殺させた。」
九頭龍が、ぽかんとペコを見上げる。ペコはかまわず、九頭龍が予め待機させていた自分に殺害を命じたと繰り返した。

「なるほどね、辺古山さんにとっては、九頭龍君こそが希望なんだ。
だから、自分を犠牲にして、僕ら全員も犠牲にして、彼を生き残らせようとする。そうでしょ?」
希望マニアの狛枝が、嬉々としてしゃしゃり出てきた。
「じゃあ、九頭龍君の希望は何なのかな?
どちらにしても辺古山さんを失うのに変わりはないけど、僕らを犠牲に生き残るか、
辺古山さんの願いを断って、もう一度僕らと一緒に絶望と闘うか…どっちが君の希望なのか、聞かせてよ。」
九頭龍は、歯を食いしばって苦悩している。日向は、彼に語りかけた。
九頭龍は常々、自分が生き残るためには他人を犠牲にできる、俺はお前らなんか平気で殺せると言い続けてきた。
「でも、お前は本当は、そんな奴じゃないんだよ。だって、そうじゃなきゃ、今お前がこんなに迷うはずないもんな。」
ペコは焦り、九頭龍に自分の証言を裏付けるように促す。
だが、九頭龍はふと苦笑して、彼女に謝った。
「悪いな、ペコ…でも、俺には無理だ。こんな風に生き残ったって、自分が情けなくなるだけだろ。
それに、俺が認めたら、お前は本当にただの道具だって事になっちまうじゃねーか。
俺は何度も言っただろ…?九頭龍組から与えられた道具なんていらねーって…」

261 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 20:03:21.20 ID:RGd60neR0
カっとなった九頭龍がベンチの下に隠しておいたバットを取り出そうとした時、
走り出たペコがバットを奪い、小泉真昼を殴り殺した。
後は自分に任せて逃げろと言うペコに、九頭龍は詰め寄った
「何でだよ…この島では今までの関係はチャラだって…お前はただの高校生だって言ったじゃねーかよ!
俺の命令が聞けねーのか!?」
ペコはそれでも、九頭龍を生かして帰すために主張を曲げなかった。クロゼットの日寄子が目覚める前に早く道路側のドアを出ろと言い張った。
「くそっ…お前も逃げろよ!俺の事や、組の事なんか忘れて、お前も逃げろよ!」
念を押して九頭龍は逃げ、しかしペコは彼を守るために自分の計画をやり通した。

「ぼっちゃん……そんな気はしておりました。ぼっちゃんは極道として生きるには心の優しすぎるお方…。
だからいつも自分の在り方に迷い続けていらっしゃる。そんなぼっちゃんが、他人を犠牲にして自分だけ助かるなんて、頷くはずがないと思っていました。
子供のころから一緒にいるのです。そのくらいわかりますよ。でも……私はあなたに生き残って欲しかった。」
ペコは初めてニッコリと笑い、優しい顔で九頭龍に別れを告げた。
「それと皆、迷惑をかけたな。虫のいい願いだが、どうかぼっちゃんを許してやってくれ…。
もういいぞモノクマ。始めたらどうだ?だが私は絶望などせんぞ。道具として生きる以上、死は覚悟の上だ。」
「うぷぷ、どうかな?そうやって強がってるやつほど、最後は絶望の涙を流すって決まってるんだよ!」

ペコが曳かれていこうとした時、突然九頭龍が叫んだ。
「ガキの頃から一緒にいたのに、何でお前にはわかんねぇんだよ!!
俺は道具なんかいらないって、何度も言ったじゃねぇか!!
お前は道具なんかにならなくていい!俺は、そのままのお前がいてくれたらそれでよかったんだ!
俺にはお前が必要なんだ!ペコぉ!!俺を置いていかないでくれよぉ!!!」
九頭龍は、恥も外聞もなく号泣している。ペコは一瞬立ち尽くし…顔を歪め涙を流しながら引き摺られていった。

【辺古山ペコ処刑】
ペコが曳かれていった先は合戦場。機械仕掛けの武者たちが、無数にペコを取り囲む。
ペコは渡された真剣で、力尽きるまで武者たちと切り結びあう。
その合戦場に、九頭龍が乱入してきた。武者達の大軍を掻き分け、ペコを探して走り回る。
やがて、ペコが斬り捨てた武者越しに、二人は出会った。
ペコは刀を捨て九頭龍を掻き抱き、抱き合う二人を無数の武者が刀を振り上げ取り囲む。
そして、血飛沫が上がった。

262 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 20:04:13.68 ID:RGd60neR0
皆、泣いていた。結局は九頭龍までも処刑に巻き込まれてしまった。
狛枝だけが、違うベクトルでこの裁判を嘆いている。
「あぁ、残念だよ。人を殺すときはボクに相談してってあれほどお願いしたのに…。
せっかくの裁判がこんな消化不良な形で終わるなんて…」
狛枝は、どんな絶望にも打ち勝つ絶対的な希望を追い求めている。この場合、この学園生活の最終的な勝者がそうだ。
その希望は、踏み台となる絶望が深ければ深いほど、より輝くと狛枝は信じている。
だから、事件が難解を極めるほど、仲間がより残酷に、やりきれない死を迎えるほど、彼はそれを喜ぶのだ。
「ふーん、ボクを踏み台と言うか。中々面白い考え方するね、キミ。
ちょっと”彼”に似てるかもね、その歪みきった希望の捉え方とかね。」
モノクマは、謎めいたことを呟く。

その時、モノミが叫んだ。
「九頭龍君はまだ生きてるでち!!」
駆けよれば、九頭龍には確かに息があった。
しかし、罪木が手を尽くしても、器具も何もないこの状況では、九頭龍の体から命が流れ出ていくのを止めることができない。
モノミがいつになく厳しい口調でモノクマに詰め寄り、犯人だけが処刑されるというルールの徹底を求める。
言われるまでもなく、モノクマは既に手配を済ませていたらしく、救急車が駆けつけ、何処かへ九頭龍を運び去って行った。
モノクマに彼を任せていいのか、皆不安に想いながらも、彼の無事を祈る。
「なんであんな奴の帰りを待つの?小泉おねぇが死ぬ原因を作ったやつなんだよ?」
日寄子はそう憤るが、それはペコの死で手打ちとし、前に進まねばならない。
結束し、殺し合いを阻んでいこうと誓い合って、裁判は終了した。

<CHAPTER2 終了> 生存者12名

モノミは、ジャバウォック公園カウントダウン装置の前に佇んでいた。
パネルに表示された残り時間は、あと15日と20時間程。
「みなさんには、見えてるんでちゅよね。
わたちたちのことが全部、見えてるんでちゅよね。
もう、4人も欠けてしまいまちた。希望のかけらも、もう全部集めることはできまちぇん。
このままあいつの好きにさせれば、待っているのは『超高校級の絶望』の復活。
そして始まるのは『人類史上最大最悪の絶望的事件』の続き…。
それだけは、絶対に阻止してみせまちゅ。例え、それなりの犠牲を出すことになったとちても…」
267 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 22:00:34.55 ID:RGd60neR0
CHAPTER3『磯の香りのデッドエンド』

モノミによって解禁された、第3の島を一同はそれぞれ探索した。
今までの島と違い、この島はお世辞にもリゾート地らしくなかった。
どこかメキシコの田舎町に似た、乾いた土地に低い建物がゴチャゴチャと並ぶ治安の悪そうな島だ。
ライブハウス、映画館といった娯楽施設の他に、病院やモーテル、電気街もある。

映画館に入ってみると、モノクマがしきりに映画を見ていくように強要してきた。
モノクマ自主製作の映画を上映しているようだが…全然見たくない。
見ないならモノクマステッカーを150万で買えと言われ、島から出たら払うと言い放ちステッカーを購入した。
モノクマを言い負かせたのは気分がいいが、この安っぽいステッカーに150万は無謀だったか…
と思ったが、ちょうど上映が終り出てきた狛枝が、あまりのつまらなさに絶望しているのを見て思い直す。

日向が電気街を見つけて立ち寄ると、そこには年代遅れな雰囲気を漂わせたジャンク屋やPCショップが並んでいた。
念の為、日向は適当なPCを起ち上げてみたが、やはりネットには繋がっていなかった。
ただ、モノミの顔のアイコンの文書ファイルがデスクトップにぽつんと置かれている。
ファイルを開くと、タイトルには、『人類史上最大最悪の絶望的事件について』とあった。
・後に世界を巻き込んだ畏怖すべき事件の発端は、希望ヶ峰学園の一部の生徒による蜂起だった。
予備学科の生徒が、本科の生徒との待遇格差に不満を持ち、学園側を相手取って武装闘争を始めたのがその始まり。
最初はただの学園紛争と楽観視されていたが、その裏には巨大な権力が加担していたらしく、暴動は世界中へ伝染していった。
その定義できない純粋な破壊活動は、一見無秩序ながら何者かの悪意によって計算されており、だからこそ絶望的だった。
やがて、発端となった希望ヶ峰学園も、大■殺□によってその長い歴史に終止符を打つことになり、
生き残◎■生徒た●も『絶望の見せしめ』とし□殺し■いを強▼られ…

これ以上は文字化けして読めず諦めると、モノクマが登場し日向のリアクションの薄さにダメ出しをしてくる。
これはモノクマが作ったファイルだと日向は決めつける。各地の暴動や、希望ヶ峰の廃校など、モノクマの考えそうな話だ。
「大体、希望ヶ峰学園の予備学科って何だよ。そんなのあるって、聞いたこともないぞ!」
「あれー?他の皆はともかく、キミだけは確実に知ってるはずなんだけどなぁ…」
謎めいた発言だけを残して、モノクマは退場してしまう。

病院を調べていた罪木が何か発見をしたと通達が回ってきて、日向も病院に急ぐ。
病院内は、驚いたことに無人ではなかった。モノクマのマスクを被ったスタッフ達が、ガラスで隔てられた向こうで立ち働いているのが見える。
報せの通り、1F奥に駆けつけるとそこには…
「へっ、何だよ。幽霊でも見たような顔しやがって。」
包帯だらけではあるが、予想外に元気そうな九頭龍冬彦がベッドに横たわっていた。
カルテを見た罪木によれば、出血量は多かったが、内臓に達するような傷が一つもなかったのが幸いしたのだという。
それは、ペコがあの刃の嵐の中、全生命を賭して九頭龍を守り抜いた証だった。
だからこそ、「このくらいで死ねる訳ねーだろ…」
九頭龍は絞り出すように呟いて、皆から顔を隠して寝に入ってしまう。
九頭龍の無事を喜ぶ笑顔が並ぶ中、日寄子は九頭龍を睨みつけていた。
慕っていた真昼の死の原因を作り、更に自分にその咎を被せようとした男だ。許せない気持ちも分かる。
罪木が看病を引き受けると申し出たので、天才保健委員に後を任せて、皆コテージに戻り休むことになった。

268 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 22:02:55.47 ID:RGd60neR0
翌日の朝食会に集まった皆の顔は、どこか晴れ晴れとしていた。みんな九頭龍の無事が嬉しいのだろう。
罪木によれば、経過は非常に良好なので1週間ほどで退院できる見通しだという。
「ただですねぇ…あの右目はもう、見えないかもしれません…」
「ふんっ、自業自得じゃん。」
日寄子は未だに怒りさめやらず、蛇蝎のごとく九頭龍を嫌っているが、全体の雰囲気は上々だった。

次の朝、自室のベッドで目が覚めると、目の前に唯吹がいた。
寝起きドッキリは誰にされてもキツいが、寝起きで相手にするには唯吹のハイテンションが一番辛いかもしれない。
要点をまとめると、レストランに早く来いと伝えに来たらしいが、鍵をブっ壊して忍び込んでまで伝えることだろうか。
というか、このサバイバルな状況で鍵を壊すとか、マジでやめてほしいんですけど…等色々文句はあったが、レストランに向かう。
そこでは、皆席に着かず輪になって何かを囲んでいた。
「お控えなすって!!」
聞き覚えのある声に驚き、輪に加わってみると、予想通り輪の中心には九頭龍がいた。
「これよりあげます言葉の後先…間違えましたら、ごめんなすって!
手前、姓は九頭龍!名は冬彦と発します!
家業未熟の駆け出し者でございます!
以後、面体お見知りおきの上、よろしくお願い申し上げます!!」
腰を落とし、腹から声を出して、怪我人とは思えない迫力のある挨拶だった。
もう島に来て幾日もたつが、九頭龍から挨拶されたのはこれが初めてかもしれない。
彼の右目は、眼帯に覆われていた。もうこの目は完全に見えないのだそうだ。

日寄子は依然態度を軟化させず、九頭龍を面と向かって罵倒した。
「あんた、自分が許されると思ってる訳!?小泉おねぇが死んだのはあんたのせいなんだよ!
辺古山だってあんたのせいで死んだんだ!あんたが何もかも悪いんだ!こんな人殺し、仲間なんかじゃない!!」
九頭龍は、そのことで、けじめをつけにきたのだという。
突然その場に伏し、土下座をしたのかと思いきや、彼を中心に血が広がり始めた。
「はひぃぃぃぃぃ!!九頭龍さん、自分のお腹を切ってますよぉ!」
彼は自分で立ち上がり、改めて詫びを入れてその場を去ろうとする。
それを罪木と弐大が支え、大慌てで病院へ駆け去って行った。

日寄子は、呆然とその場に突っ立っていた。
七海が優しく声をかける。こんな時、真昼だったらなんて言っただろうか?と
日寄子は考え込んでいる。簡単に答えが出ることではないだろう。
そういえば、これだけの騒ぎなのに、終里の顔が見えない。
あの大食漢が朝食を食べに来ないなんて、かなりの異常事態だ。
終里は最近、あれほど嫌っていたトレーニングに精を出したりして、様子がおかしい。
彼女はいまいちこの修学旅行のルールを理解しておらず、何かしでかさないか心配だった。

269 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 22:04:04.64 ID:RGd60neR0
その晩、唯吹が皆に招待状を届けて回り、皆ライブハウスに集まった。
「九頭龍冬彦復帰記念パーティー」とのことだ。当の本人が今朝腹をかっさばいたタイミングで強行とは、唯吹らしい強引さである。
ライブハウスには、罪木と弐大に付き添われて九頭龍も来ていた。
容態を心配すると、九頭龍は不敵に笑って大丈夫だと答えたが、
「大丈夫な訳ないじゃないですかぁ!余裕で重傷ですよぉ!」
罪木の悶絶具合からすると相当無茶しているようだ。
それを押して今まで出たことのないパーティーに駆けつけたということは、彼は変わろうとして努力しているのだろう。
「…いざという時、真っ先に切り捨てられるのはあんたなんだからね。」
日寄子も、憎まれ口を叩きながらも、彼を仲間に迎え入れることを容認した。
彼女もまた努力している。今までの日寄子なら、決して九頭龍を許すことはなかっただろう。
明るい兆しを感じた矢先、モノミが物凄い剣幕で転がり込んできた。
「大変でち!!終里さんが、モノクマに決闘を挑んでるでち!!」

学園長への暴力は校則で禁じられている。
強い奴を倒すのが大好きだとかいう戦闘民族みたいな性格は知っているが、
この期に及んであのバカは、敵の規模もこの状況の危機感も理解してないのだ。
「儂の責任じゃあ!マネージャーたるもの、選手のプライベートまで把握しておくべきじゃった!」
以前から何度も、機械の獣へ挑もうとする終里を諌めていた弐大は、険しい顔で現場の砂浜へすっ飛んで行く。
駆けつけた先では、勝敗は既に決し、終里は膝をついていた。
モノクマは違反者には微塵も容赦しない。バズーカを取り出して、彼女を撃ち殺そうとする。
そこに弐大が飛び込んでいくのが見えた次の瞬間、視界が白く染まった。
視力が戻った時には、へたりこんだ終里の前に、ズタズタになった弐大が倒れていた。

弐大は虫の息だが、微かに脈がある。
違反者ではない者を撃った事で、終里の違反はチャラという判定になり、弐大はモノクマの手配した救急車で運ばれていった。
「みんなの気が緩んでるからこんなことになるんだよ!
みんなで仲良くとか言って…私たちがどんな状況に置かれてるか誤魔化してるだけだったんだよ!」
日寄子が終里を睨みつけながら叫んだ。
「友情とか団結とか協力とか、関係ないんだよ…。
劣ってる奴から、次から次へ殺されていく…誰も信じられない。それが私たちの現実なんだ。
ねぇ、あんたもわかったでしょ?
劣ってる奴が勝手な行動をすると、みんなに迷惑がかかるんだからね。
巻き込まないでくれるかな?私、無駄死なんて絶対に嫌なんだよね。」
厳しい意見だが、日寄子の言葉に一理あるのも、確かな現実だ。
しかし、本当に自分たちが協力し合うことに、意味はないのだろうか?殺し合いを防ぐことはできないのだろうか?

翌朝、気が重いながらレストランへ行くと、中から女の泣き声が聞こえてきた。
ドアを開ければ、柱に隠れるようにして、終里がすすり泣いている。
昨晩は気丈に振る舞い、弐大の帰りを待って謝ると言っていたのに、一体どうしたのか?
終里を慌てて励ましていると、普段の3割増しのウザさで狛枝が話しかけてきた。
十神は実は生きていて彼が裏切り者だの、日向は人肉を食べるだの、訳の分からないことをまくし立てている。
そこへ唯吹がやってきたので、顛末を話そうとすると、彼女は敬礼しながら狛枝の話を真に受け始めた。
唖然としていると、そこに半泣きの罪木が駆けてきた。
唯吹は物凄い高熱を出しているのだという。慌てて狛枝と終里の額にも手を当ててみると、驚くほど熱かった。

270 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 22:05:14.05 ID:RGd60neR0
モノクマが愉快そうに登場し、それはこの島の土着病だと話す。
虫が媒介するこの病は、高熱とともに錯乱状態をもたらし、人格の混乱を招く。
人から人へも伝染するこの病が、モノクマの今回の動機プレゼントだという。
狛枝が泡を吹いてぶっ倒れたので、彼を担いで、他の二人を引きずって病院に急ぐことになった。
罪木が3人に処置している間、待合室で今後の事を話し合う。
日寄子は、感染者を殺すわけにもいかないから、隔離しようと言い出した。
この病気が広まり皆が理性を失くせば、殺し合いはより容易に始まるだろう。
自分たちを仲違いをさせようとするモノクマの思惑に乗ってはならないが、隔離は必要な事かもしれない。
日寄子は、既に病人に触っている罪木と日向が病院に残って、病人の世話をしろと主張する。
「お前は、俺が真っ先に切り捨てられるべきだと言ったな?今がその時だ」
そう言って、九頭龍も病院に残ることを引き受けてくれた。
そういう訳で二手に分かれ、眼蛇夢、日寄子、左右田、ソニア、七海の5人は、この騒ぎが解決するまでこの島のモーテルで寝泊まりし、
罪木、日向、九頭龍は、病院に残って唯吹、終里、狛枝の看病をすることになった。

その夕方、仮眠をとっていた日向は、息苦しくて目が覚めた。
何か、あたたかで柔らかで重い物が自分の上に乗っている。
目を開けると、サービススチル要員の罪木が、日向に抱きつくようにして寝息をたてていた。
ぎょっとして寝ぼけた罪木と揉みあっていると、駆け込んできた純情坊ちゃんの九頭龍にどやされた。
「つーか、そんな場合じゃねぇぞ!ヤベーんだって!
さっき狛枝の病室覗いたら、あいつ息してねーみてーだったぞ!」
罪木は飛び起きて病室に走って行った。
「日向、前屈みになってる場合じゃねー!俺らも急ぐぞ!」
可能な限り急いで向かうと、病室の狛枝は青白い顔で横たわっていた。
「まさか、死んだわけじゃねーよな?死体発見アナウンスも鳴ってないし…」
ちらりと部屋の隅を見ると、モノクマがソワソワと狛枝の様子を伺っていた。待ちわびている!や、やばい…
結局、罪木の処置でなんとか狛枝の呼吸は戻ったが、予断は許さない容態らしい。

これ以上ここにいても専門知識のない二人ができることはなく、日向は九頭龍に連れられてロビーへ出た。
日向の仮眠中に、左右田が連絡手段を運んできたそうだ。
それは、一組のカメラとモニタだった。モニタのランプが点滅し始めたのでボタンを押してみると、モニタには左右田の顔が映し出された。
「よぉ!日向かー?」
ようやくメカニックの本領発揮、ということで、電気街から適当な物を探し出して改良したらしい。
これはご家庭用の監視カメラと監視モニタ。よく、幼児がいる家庭で、リビングや両親の部屋から子供部屋の様子をチェックするのに使うあれだ。
2組のセットを用意し、カメラを交換して、互いがいる場所の映像が相手のモニタに映るようにしたという単純な仕掛けだが、
家庭用なので遠距離の通信ができず、それを左右田が改良して通信範囲を広げてくれた。
それでも、病院からモーテルまでは届かなかったので、間にあるライブハウスからモーテル組は通信してくる。
なので、こちらからはモーテル組に連絡を取ることができない。
それを考慮して、案外段取りがいい九頭龍が、毎日朝と夜に1度ずつある時報アナウンスの30分後に定時連絡を取り合う約束を取り付けていた。
病院組とモーテル組が接触しては隔離の意味がないので、連絡は全てこのモニタとカメラを介して行われる。

271 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/26(日) 22:06:28.14 ID:RGd60neR0
22時を報せる夜のアナウンスが始まり、仮眠をしていない九頭龍が2F休憩室に向かおうとすると、モノクマが現れた。
ルールに異常に細かいモノクマは、付添人以外の病院での宿泊はお断りだと難癖をつけてきた。
確かに、狛枝の事は罪木に任せるしかない二人だが…、追い出されても行くあてがない。
モーテルに行くわけにもいかないし、ホテルまで戻ることにした。
翌朝、7時を告げる朝アナウンスと共に、日向はホテルを飛び出して病院に急いだ。
九頭龍も一足先に出勤していて、朝の通信までの間に二人で狛枝と罪木の様子を見に行くことにした。
罪木の必死の看病にもかかわらず、狛枝の病状は悪くなるばかりで、今夜辺りが峠というのが罪木の見立てだった。
朝の通信で、狛枝が生死の境を彷徨っている事をモーテル組に伝え、日寄子が他のモーテル組すら警戒して部屋に閉じこもっている事を聞いた。
それが終わると、ぶっちゃけた話日向と九頭龍にはやる事が残っていなかった。
唯吹と終里は、ルーチンの世話をした後は放っておくしかなく、狛枝程症状が重いと、罪木に任せるしかないのだ。
結局二人は、事態が好転するのを待ちながら、じりじりと夜の通信までの時間を過ごした。

外で病気の治療法等を探っているモーテル組も、今日は何の進展もなかったらしく、定時連絡はすぐ終わった。
休む暇もない罪木一人に患者を任せて、今日もホテルに帰らねばならない。九頭龍と日向は、背中にどんよりと重い空気を背負って帰路に着いた。
その晩、重苦しい気持ちで床に就いた日向は、重苦しい夢を見た。
どこかの教室に、自分が座っている。耳に雑音が入ってくる。聞きたくない…耳を塞いでしまいたい…
「あいつ、希望ヶ峰学園に行くんだって!すげーよな。
でも、あいつ、そんなすげー奴だっけ?」
「あれ?お前知らねーの?入るだけだったら、そんな難しいもんでもねーんだよ。
………が…………………だぜ。でも、金出す親も大変だよな。」
「あいつが特殊な才能とか持ってるわけねーよ。どこにでもいる普通の奴さ。」
放っといてくれ。俺はただ、自分が胸を張れる場所に行きたいだけ。それは、ここじゃない…

翌日早朝、日向は息苦しくて目が覚めた。
何か、あたたかくて柔らかで重い物が自分の上に乗っている。あたたかというより、熱いくらいだ…。
目を開けると、サービススチル要員の罪木が、日向に抱きつくようにして寝息をたてていたリターンズ。
ぎょっとして寝ぼけた罪木と揉みあう内に、彼女が我に返った。
狛枝の容態が安定したので、二人に報告に来たが、疲労の限界だった罪木はつい日向のベッドに潜り込んでしまったらしい。
どうやって勝手に中に…と思ったが、そういえば日向のコテージは唯吹が鍵を壊したままだった。
九頭龍はまだ寝ているらしくコテージの鍵も閉まっていたので、罪木と二人で病院に急ぐ。

狛枝はベッドから起き上がれるまでに回復していたが、それでも病状はかなり悪く、罪木が二人いるだのなんだの呟いている。
徹夜の続いた罪木はふらついていて、日向は彼女に2F休憩室で仮眠をとるように勧めた。
「はいぃ、ちょっと寝てきます。日向さんもお疲れでしょうから、朝の通信まで、ロビーで休まれた方がいいですよぉ」
日向がロビーに入ってふと見ると、朝のアナウンスもまだなのに、モニタの受信ランプが光っていた。
緊急の通信かと、急いでスイッチを押すと、訳の分からない物が映し出された。
奥に黒いカーテンが引かれた薄暗い空間で、ぼんやりとした灯りが脚立を照らしている、その真上に首を吊るようなロープの輪が垂れ下がっている。
まるで、処刑台のような…そう思った次の瞬間、画面端から入院着姿の人影が現れた。
頭に麻袋を被せられていて、誰なのかはっきり分からないそいつは、ゆっくりと脚立を登りはじめた。
その手がロープを掴もうとした所で突然映像は途切れ、焦った日向は病院を飛び出した。

305 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 20:53:32.08 ID:1Aauh6MY0
祈るような気持ちでライブハウスの扉を開けると…ステージの照明バトンから、あの入院着姿の誰かが吊り下がっていた。
ステージの中央に、まるでオブジェのように、首吊り死体は静止している。
頭部の麻袋からは、見覚えのあるメッシュの筋の入った黒髪がはみ出していた。
ここはひどく暑い。どうしてこんなに暑いんだ?いや、そんなこと今はいい、
どうして、誰も来ないんだ。そうか、まだ死体発見アナウンスが…
足をもつれさせながら、隣のモーテルまで走った日向は、大声で皆を呼んだ。
出てきた眼蛇夢と七海に事情をまくし立て、後の連絡を眼蛇夢に任せて、七海と共にライブハウスへ走る。
道路へ出ると、別方向から同時に罪木と九頭龍が駆け寄ってきた。
二人は、病室に唯吹がいないことに気づいて探し回っているらしい。
説明は後回しにして、日向はとにかく3人をライブハウスまで連れて行った。
急いで入ろうとすると、ライブハウスには鍵がかかっていた。さっきは普通に入れたのに何故?
4人で体当たりをして扉を突破し、中に転がりこむと…
ステージには、入院着姿の首吊り死体がスポットを浴び…その脇の柱に、西園寺日寄子が磔にされていた。

「死体が発見されました。一定時間後学級裁判が行われます。」「死体が発見されました。一定時間後学級裁判が行われます。」
2回連続で鳴ったアナウンスが意味するのは、目の前の二人が死んでいるという事。
「だけど、さっきは西園寺はいなかったのに!ステージの首吊り死体だけだったのに!
あれから10分もたってないのに、どういうことだよ!?」
とにかく、照明バトンを操作して死体を下ろし、麻袋を取ってみると、現れたのはやはり澪田唯吹の顔だった。
モノクマは、しれっとした顔で病院にいた患者二人を連れてやってきた。
狛枝も終里もほぼ回復していて、熱も下がっている。やはり伝染病云々はモノクマの出鱈目で、3人には何かを投与し変調させていただけのようだ。
そんな馬鹿馬鹿しい小細工に踊らされて、二人も犠牲者を出してしまった。
モノクマは皆の憎悪の視線も物ともせず、モノクマファイルを置いて去って行く。

【モノクマファイル】
・澪田唯吹の死因は首を絞められたことによる頸部圧迫。外傷は無し。
・西園寺日寄子の死因は、首を鋭利な刃物で切られたことによる失血性ショック。ほぼ即死。

【ライブハウスフロア】
・左右田が暑がって捜査を放棄して出ていった。確かにライブハウスの中は何故か異常に暑い。
空調パネルを見ると、設定温度30℃で暖房が入っていた。
・九頭龍が扉の近くで折れたドラムスティックを見つけた。
ライブハウスには鍵が無いようなので、これを取っ手に噛ませて扉を開かなくしていたのだろう。
道理で、非体育会系+怪我人+女子2人のタックルで扉が開いた訳だ。
・このライブハウスは裏口も窓も無いため、扉を内から閉じたなら犯人は中にいたはずだ。
どこかに隠れ、皆が駆けつけたどさくさに紛れて出てきたのかもしれない。
・七海が、両開きの扉の合わせ目に半透明の塊が付着しているのを発見した。
彼女が口に入れてみたところ、図工室の味がするという。接着剤の類だろうか?
・家庭用監視カメラとモニタが粉々に壊されていた。
日向に現場中継を見せるくらいなら、何故その後犯人はこれを壊したのか?

306 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 20:54:03.82 ID:1Aauh6MY0
【ライブハウスステージ上】
・ステージ上の一部に、血を拭き残したような跡があった。
首を切られた日寄子の死体がすぐ傍にあるのに、何故犯人は血を掃除しなければならなかったのか?
・唯吹が使ったらしき脚立の左側面にも、血飛沫が飛んでいた。
・ステージ手前の端に、大きなロウソクが立っていた。日向が見た映像のぼんやりした灯りは、このロウソクだったのだろう。
何故、ステージの照明ではなくロウソクを使ったのだろう?
・照明バトンを調べると、黒い厚紙の切れ端が引っかかっていた。
・ステージ奥に引かれている黒いカーテンは、横幅が足りずステージ端まで覆えていない。
裏に見覚えのある仮止めテープがついているので、これは第一の島のスーパーから持ち込まれたものだ。

【ライブハウス倉庫】
・照明バトンに引っかかっていた黒い切れ端の、本体らしき壁紙の束があった。
何故かこのライブハウスのステッカーがベタベタと貼りつけてある。
以前見た時、山ほど余っていたステッカーが少し減っているので、犯人がこの厚紙にステッカーを貼ったのだろう。
このステッカーは、ステージ脇の柱にも同じようにベタベタと貼られている。

【西園寺日寄子】
・ステージ脇の太い柱に、ガムテープをぐるぐると巻き付けて磔にされている。
日寄子の首にも、傷を隠すようにガムテープが巻かれていて、これが止血帯代わりになり着物の汚れが少ないようだ。
・その着物が妙なことになっている。何故か帯が前で結ばれているのだ。
・着物の一部が膨らんでいるので、女子に手を突っ込んでもらうと、モーテルの日寄子の部屋の鍵が出てきた。
懐に仕舞い込まれていて、取り出すのに苦労したので、これは犯人の小細工ではなく、日寄子が実際に鍵を仕舞ったのだと思われる。

【澪田唯吹】
・彼女がかぶっていた麻袋は、よく見るとエコバッグだった。
この島の映画館で、モノクマがステッカーと共にグッズ販売していた麻製モノミエコバッグだ。
・入院着を着て、足には病院のスリッパを履いたままだ。
そのスリッパの裏に、血痕を踏んだような跡が残っていた。
・罪木の検死では、ロープによる首吊りが死因で間違いない。

七海が、犯人が二人も殺した意図を訝しんでいる。
複数殺せば、より手がかりが多くなってしまう上に、何のメリットもない。
二人殺さなければならない理由があったのだろうか?
七海はモノクマに、犯人が同時に複数存在した場合の投票の事を問い詰める。
モノクマは渋々、殺人犯が同時に2名以上誕生するとややこしくなるので、殺人が同時発生しないよう監視している事、
共犯者がいたとしても、処刑されるのも脱出できるのも主犯だけだという事を説明した。
今回も、少なくとも主犯は一人だということだ。

罪木の検死は難航している。暖房の熱気のせいで、正確な死亡時刻が割り出せないのだ。
二人が死んだ順序も正確には分からないという事だが、日向がライブハウスに駆けつけた時、日寄子の死体はなく、唯吹らしき首吊り死体はあったのだから、唯吹の方が先に死んだはずだ。
ただ、日向がモーテルから皆を呼んでくるまでの間は10分もなかった。
日寄子を殺して柱にガムテープで貼り付けるなんて芸当が、そんな短時間で済むだろうか?
日向が見た映像のすぐ後、そのまま首を吊ったなら唯吹は自殺だ。
そんなことがあり得るだろうか?
他の皆は、他の理由でも唯吹が先に死んだはずという印象を持っていて、しきりに映画の「見立て殺人」だと囁き合っている。
最初はちんぷんかんぷんで疎外感を感じていたが、ようやく呑み込めた。日向以外は、素直にモノクマの自主製作映画を見ているのだ。
仕方なく映画館へ行き、後で150万払うにもかかわらず、モノクマ作の映画を見てみることにした。

307 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 20:55:12.70 ID:1Aauh6MY0
【映画館】
・カウンターで売られていたモノミエコバッグが無くなっている。
モノクマはあれをジョークで二つほど作り、一名様限定で販売、一つ買えばもう一つおまけという謎の売り方をしていた。
・映画を見ると申し出ると、モノクマから招待券を渡された。
これには見た日の日付スタンプが入っていて、2回は使えないようにしてあるとモノクマは言う。
・映画のタイトルは『モノミの魔法使い』
出生率より死亡率の方が高い老人ばかりの村に生まれたモノクマは、軍用ヘリAH64通称アパッチの作る竜巻に巻き込まれてしまい、モノミの国に飛ばされた。
モノクマは、元の老人たちから小銭をせびる生活に戻るため、魔法使いモノミを探して旅を始める。
道中、脳ミソのないかかしと出会ったので、自殺を勧めるとかかしは首を吊って死んだ。
次に、勇気のないライオンと出会ったので、弓矢で木に磔にしてやった。
そして、心のないブリキの木こりと出会ったので、バラバラの鉄くずにしてやった。
何だかんだの末に魔法使いモノミと会えたモノクマは彼女を殺して魔法の国を乗っ取り、故郷に帰って老人から年金を巻き上げ優雅に暮らしたとさ…
…というような内容だった。
絶望的につまらなかったが、事件の内容に確かに似ている。
脳ミソが無いとまでは言わないが、まぁそういう感じの唯吹が首を吊り、誰よりも死を怖がって、脅えた小型犬のように吠えついていた日寄子は磔にされた。

【モーテル】
・モーテル前で、九頭龍と出くわしてアリバイの話になる。
九頭龍は朝のアナウンスと共に病院に出かけ、入り口で罪木と出くわして以来、一緒に唯吹を探していた。たまに別行動もしたが、たかだか数分以内の事だという。
・死体発見後モーテルに応援を呼びに来たとき、姿を見せたのは七海と眼蛇夢だけ。左右田とソニアは顔を出さなかった。
・日寄子が持っていた鍵で、やはり彼女の部屋が開いた。
中は殺風景で一般的な部屋で、鏡が小さくて錆びついており、あまり女性に考慮しているとは言えない雰囲気だ。
・ソニアが、日寄子が死んだことは、自分にも責任の一端があるかもしれないと言い出した。
日寄子は閉じこもっていたのは伝染病に脅えていたのも理由の一つだが、どうやら着付けができず着物が着られなかったようなのだ。
たまたま鍵が開いていた時に部屋を訪ねて、日寄子が半泣きで帯と格闘しているのを目撃したらしい。
真昼にせっかく教えてもらったのにと落ち込む日寄子に、ソニアは鏡を見ながら帯を結ぶことを勧めた。
ライブハウスの倉庫にある大きな姿見を見ながらなら、きっと着付けがしやすいだろうと。
日寄子が自分で部屋に施錠したのはほぼ確実なので、彼女は自分でライブハウスに向かった可能性が高い。
だが、ソニアは自分たちの会話を誰かが聞いていたとは思えないと言うので、犯人がどうやって日寄子がライブハウスに行くことを知ったかはわからない。

【病院】
・終里が、入院着の着心地を気に入ってまた貰いに来たらしいが、各部屋一つ常備されているはずの入院着が一つ足りなかった。
・七海が2Fにある会議室を調べていた。
プロジェクター等を使う為か、窓側の壁一面を黒い遮光カーテンで覆えるようになっており、カーテンを引けば真っ暗闇になる。

そこでチャイムが鳴り、一同は裁判所へ向かった。
狛枝は相変わらず既に事件の真相をほぼ掴んでいるようだが、珍しく今回の犯人に嫌悪感を示している。
弐大の姿はなく、モノクマは彼の生死を明言しないまま、弐大の欠席を申し渡した。
皆、彼の身を案じるが、今は裁判に集中しなくてはならない。
澪田唯吹、彼女は皆のムードメーカーだった。唯吹がいれば、辛い気持ちも重い空気もまとめて吹っ飛んだ。
西園寺日寄子、皆の気分を害してばかりの問題児だったが、彼女は変わろうと努力していた。
その二人をこの中の誰かが殺した。それを暴かなければ、犯人以外全員死ぬ。

308 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 20:56:50.45 ID:1Aauh6MY0
【第3回学級裁判】
寝込んでいた狛枝と終里の為に、病気発症から死体発見までのあらましを説明する。
するとしょっぱなから、狛枝が日向の証言の信憑性を追求してきた。
麻袋の人物が首を吊ろうとした映像も、最初の首吊り死体発見も、日向しか見ていないのだから、日向が犯人なら幾らでもウソをつけるのだ。
映画の半券の日付スタンプを根拠に、自分が見立て殺人をできなかった事を主張すると、狛枝は笑顔であっさりそれを認めた。
「君が犯人じゃないのは分かってるよ。でも、今回は君の目撃証言が要になってくるみたいだから、そこの地盤を固めておこうと思ってさ。」
腹が立つが、狛枝の発言によって、日向の証言を信用する方向で裁判の方針が固まった。

九頭龍がまず議題に上げたのが、日向が首吊りを最初に発見して助けを呼んでくるまでの10分足らずの間に、日寄子を殺害できたのは誰かという事だ。
それはアリバイのないソニアと左右田しかいないと九頭龍は追い込みをかける。
ライブハウスの扉が内側からドラムスティックで封鎖されていたなら、犯人も死体発見まで中に隠れていたはずだというのが九頭龍の主張する根拠だ。
だが、日向は扉の間に残っていた半透明の塊を根拠に、扉が外から封鎖された可能性を提示する。
折れたドラムスティックは、犯人が屋内に留まっていたと誤認させるためのダミーで、本当は扉の合わせ目に接着剤を塗布したと考えられる。

照明バトンに引っかかっていた黒い切れ端は、倉庫の壁紙の欠けた部分と一致した。
常識的に考えて、犯人は日寄子の死体を隠す為、この壁紙を柱に巻きつけ、一回り大きな偽の柱を作ったのだろう。
照明バトンの端は柱をぐるりと囲むように円になっているので、バトン内径に厚紙をくっつけていけば円筒形になる。
こうしおけば、日向が首吊り死体を見て駆け出して行った後、壁紙を剥がして倉庫に放り込むだけで、そこに日寄子の死体が現れるという寸法だ。
これなら、日向が戻ってくるまでの10分足らずで実行可能だ。しかし流石に急いでいた犯人は、切れ端をバトンに残したことに気づかなかったのだろう。

ならば、日寄子と唯吹、本当はどちらが先に死んだのだろうか?
議論の末、日向は日寄子が先に殺されていたと断定した。
唯吹のスリッパの裏に、血痕を踏んだ跡があった事が根拠だ。
映画のかかしとライオンの死に方をなぞったのも、暖房が入っていたのも、二人の死んだ順序を誤認させる為の物だろう。
しかし、その見立ての甘さが気になる。
ライオンは弓矢で磔になったのに、日寄子は首を切られてガムテープで貼り付けられていた。
このやっつけ感は何を意味するのか。

七海は、日寄子が不幸な偶然で命を落としたのだと主張した。
日寄子は着付けの為にライブハウスへやってきた。そこで唯吹殺害の準備段階を目撃してしまったのだろう。
犯人は躊躇なく彼女をその場で始末し、突発的な殺人を映画の見立てという形で計画に組み込んだ。
ならば、最初に犯人が組み立てていた唯吹殺害のトリックはどういう骨組みになっていたのか?
やはり、日向だけが見ているあの映像が鍵になってくる。
皆に乞われて、あの映像を頭の中で反芻していた日向は、映像の中で脚立が左側面をこちらに向けていたことを思い出した。
そこに血飛沫が飛んでいたなら、印象に残るはずだ。そんな物があった記憶はない。
日寄子が死んだのが唯吹殺害より後なら、あの映像の脚立と、ライブハウスの脚立は別物だった可能性が高い。
つまり、ライブハウスではない別の場所で、唯吹以外の誰かが麻袋をかぶって首を吊る唯吹を演じて見せただけ。
本当の殺人は、もっと以前、夜の間にでも済まされていたのだろう。
モニタの電波が届く範囲で撮影場所の条件に合致するのは、病院の会議室くらいだ。
床の色が似ているし、会議室の遮光カーテンに似た物をライブハウスステージにも用意すれば、ろうそくの頼りない光ではとっさに見極めがつかない。
犯人は、ライブハウスのカメラだけを持ち出して会議室で撮影したのだろう。
持ち出す際に、日向がライブハウスに駆けつけた時カメラが無い事に気づかないよう、モニタをバラバラに破壊しておいた。
そして後で、カメラを粉々にしたものをそこに足しておいたのだろう。
家庭用カメラとモニタには録画機能などはついていない。犯人は、リアルタイムで撮影を行ったはずだ。
それができ、それによって利益を被るのは一人しかいない。
朝、日向と一緒に病院にいて、日向がロビーに行くタイミングも知っていた、罪木蜜柑だ。

309 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 20:57:38.76 ID:1Aauh6MY0
「わ、わたし、やってませぇん!人を殺すなんて無理ですぅ…!」
罪木は半泣きで脅えている。確かに罪木が殺人を犯すなんて、想像もつかないのだが…。
そこで狛枝が、冷ややかな態度で罪木にロープを突きつけた。
唯吹が首を吊っていたロープ。見覚えが無いので、恐らく犯人はこれをスーパーで調達してきたのだろう。
ならば新品のはずなのに、吊り輪のもっと上の部分が、何故かひどくささくれている。
狛枝はこのささくれを、ロープを交差させ人の首を絞めたとき擦れた跡だと主張した。
唯吹の首には、後ろ側にも索状痕が残っていた。彼女は首を吊ったのではなく、絞め殺されたのだ。
皆が唯吹が縊死したと確信していたのは、罪木がそう証言したのを信じていたからに過ぎない、と狛枝は罪木のウソを糾弾する。
「で、でもぉ、検死とか、専門外なんですぅ…!こんな状況だから一生懸命やってただけでぇ…1回くらい間違えても、許してほしいですぅ…」
罪木はおどおどとそう答えた。
「信じてくださぁい!もう、許してくださいよぉ…!」

終里や左右田等、雰囲気に流されやすい者や人のいい者は、すでに罪木を庇うモードに入っている。
鈍臭いけど一生懸命で、いつも皆の健康に気を配って、今回の病気も寝ずの看病をしてくれた罪木。
そんな彼女が仲間を殺すはずない。彼女を信じようというのだ。
「…俺だって、信じたい。信じるために、疑うんだ。」
日向はそう言って、罪木犯人説検証の続行を皆に促した。
罪木がやっていないなら、反論してくれればいい。そうやって議論を続ければ、事件の謎は解きほぐされ、彼女の無実が明らかになるだろう。
「私もそう思う。疑うことを放棄した信じるなんて、うそっぱちだよ。」
七海も同意し、裁判が再開されようとした時だった。
「……は?何ですかそれ。結局、そうやって私をいじめるんですね。」
静かで冷たい声だった。発した罪木は、見たことのない冷めた顔をしていた。

「そうやって、自分たちのすることを正当化して、自分たちは悪くないみたいな顔をして。
私にどんなことをしても、それは私の方に問題があるからだって、私が悪いんだってことにして。
もう、そんなのうんざり!うんざりなんですよぉ!
どうして私を許してくれないんですか!?自分たちのすることは、簡単に許しちゃうくせに!!」
罪木は、こちらの話に何の証拠もないことを糾弾してくる。
科学捜査の介入が望むべくもないこの状況では、手持ちの手がかりから罪木が二人を殺したことを照明するのは不可能だ。
よって、罪木があの映像を撮影したのかどうか、日向が見た麻袋の人物が罪木だったかどうかを争点とする。
しかし、日向の記憶だけが頼りの雲を掴むような議論に、中々事態は進展しない。
「罪木と澪田じゃ、体格がずいぶん違うはずだ」
という九頭龍の主張にも、罪木は冷たく反論した。澪田も麻袋の人物もフリーサイズの入院着を着ていたのだ。
「あんなカメラアングルで?ロウソクの灯りだけで?正確な体型なんてわかるはずないじゃないですか。」
日向はその言葉尻を捉えて、攻めの糸口を掴んだ。
「俺はカメラアングルについては、一度も証言していないぞ」と。

一度崩れると、罪木は一気に崩壊し、冷淡と憤怒の間を行きつ戻りつし始めた。
口から迸り出るのは「許して」という強要だ。
自分たちは、決して殺し合いを許す訳にはいかない。皆投票し、罪木が犯人に決定した。
「うふ。うふふふふふふふ…足元が粉々に砕けて、宙に落ちていくようなこの感覚…
知っていますよ、この絶望を……」
罪木は、恍惚の表情で忍び笑いを漏らしている。信じられない。今まで共に戦ってきた罪木は、一体なんだったのか?
「それはね、君達が知っている罪木さんは、もういないからだよ。」
狛枝が、罪木に嫌悪の視線を向けながら、そう答えた。
「罪木さんも、かかっていたんじゃないかな。あの病気にね…。」
日向は、今日の明け方、罪木に抱きつかれ暑くて目覚めたことを思い出した。そうだ、まるで発熱しているように罪木は熱かった。
54 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/09/11(火) 21:21:26.94 ID:/YL3btE+0
狛枝は高熱で錯乱してはいたものの、24時間看病をしてくれた罪木の様子は切れ切れに記憶があった。
そしてそこから、狛枝は彼の忌み嫌う絶望の気配を感じ取ったのだった。
同じ病による精神の錯乱から、罪木は絶望を求めるようになってしまったのだと狛枝は言うが、罪木はそれをあっさり否定した。
「私がこんなことをしたのは、私の“あいするひと”の為です」
彼女は、愛する人とやらへの盲目的で献身的な愛を、頬を染めて語る。
愛しいその人だけが、この世でたった一人罪木を許し、罪木を愛してくれるのだという。
「愛って、すばらしいですよ。他のものなんかどうでもよくなっちゃうくらい素晴らしいんです。
絶望とか希望とか、正直どうでもいいです。」
既にこの世の人ではない愛しい君は、生きていたなら罪木のしたことを褒めてくれるだろうと言う。
…まさか、この口ぶりは…
「そうです。私は、ただ思い出しただけです。」

310 :スーパーダンガンロンパ2 ◆l1l6Ur354A:2012/08/30(木) 21:03:30.13 ID:1Aauh6MY0
各々で効果の違った今回のモノクマの介入。罪木に加えられた精神への干渉は、故意か偶然か彼女の記憶の扉をこじ開けた。
それだけで、罪木は日向達の知っていた罪木ではなくなってしまった。
「一部であれ、記憶を奪われるっていうのは、自分を失うことだと思いませんかぁ?
だって、その人を作ってるのは、その人の記憶なんですから…」
罪木の目には、もはや仲間たちへの友情も信頼も全く残っていない。そこにあるのは軽蔑と無関心だけだった。
「記憶を取り戻した証拠に、少し話をしてあげましょうか?」
皆をここに拉致したのは、「未来機関」と名乗る組織。
「そうですよねぇ?モノミさん。」モノミもまた、未来機関の一員なのだという。
その未来機関は、この世界の破壊者でもある。この中に紛れ込んでいる裏切り者も未来機関の手先であり、それが誰なのかも、罪木にはわかっている。
「まぁ、どうでもいいですね。ゆっくり思い出したらどうですか?
あのカウントダウンが終わるころには、嫌でも分かると思いますよ」
あと10日程に迫った、公園のカウントダウンの意味も、罪木にはわかっているらしい。
罪木は興味なさそうに皆に背を向け、モノクマに処刑を始めるよう要求した。
「やっと、あのお方の元に行ける…。あなたに会えるという希望を抱いて死ぬ私を許してください!」
罪木は、頬を染め笑みを浮かべて、死出の道を曳かれていった。

【罪木蜜柑処刑】
あの人の元に行きたい罪木蜜柑。
彼女を人の腕の形のロケットに跨らせ、空へ向かって発射した。
衝撃波で粉々になってなければ、大気圏を突破して天国へ行けたかもしれない。

中途半端で呆気ない裁判の幕が降りた。
信頼していた仲間が、最後に自分達に敵意を向けて死んでいったこと、それにみんな打ちのめされていた。
ここにいる自分達は、学園生活の記憶を封印されて生まれた仮の自分達でしかないのかもしれない。
これで最後と願いながら、裁判ももう3度目。誰もが疲れ切っていた。

ばかばかしいので詳細は省くが、弐大がここで戻ってくる。
あの後やはり助からなかったらしく、似せる努力が感じられない外見のメカ弐大としての再登場。
どういう技術か知らないが、人格は弐大そのもの。ゴーストがあるのか分からないが、義体のような物と思われる。
モノクマの悪乗りで、2種類のドリンクが出るドリンクバー機能や、胸部に内蔵された電波時計による正確な時報など、お役立ち機能を搭載している。
機械の体により更に頑丈に、更に怪力になったが、首の後ろのスイッチを押されるとスリープモードに入り、
タイマーセットされた時間になるか、再びスイッチオンされるまで起動しなくなる。
こういう萎える非現実的な演出が今回はやたら多い。
モノクマ曰く、メカ弐大を起動不可状態まで破壊すると、「殺人」としてカウントされる。

<CHAPTER3終了> 生存者9名

 

 






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