東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~

東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~

part78~82,94~100,108~113,123~127,129~135,137~146,150~157,159~161,163~165,166~171,173~174


 

78 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/22(土) 14:35:46.11 ID:8r6RUyLI0
東京トワイライトバスターズ ~禁断の生贄帝都地獄変~ を投下します。
どこを削るべきか迷いましたら長くなってしまいました。スマヌ。何日かに分けて投下します。
背景としては大正十二年の帝都 東京が舞台で魔法やゾンビ等が登場します。

【補足】
・二章以降は基本的に祥と由貴以外の協力者を二人同行させる事ができます。
この投稿では戦闘に有利になりそうなサブキャラクタを重視して同行させています。
・二章以降に聞けるランダムな情報はカット(警視庁で鬼瓦と帝日新聞社で三珠記者から琢磨と由貴に関係のありそうな情報)
・探索、鍵開け等は省略化。
・カナンフィーグの書で由貴が魔法を覚える所もカットしてます。

79 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/22(土) 14:36:58.50 ID:8r6RUyLI0
【序章:邂逅】
暗い地下水路の奥の独房に幽閉された少女由貴は自分の名前や何者で、どうしてここにいるのか忘れてしまっていた。
時折、夢の中で自分の事を励ます声だけが生きる支えになっていた。
ある日、考古学者の草薙琢磨が兵士の隙をついて由貴の独房に侵入して連れ出す事に成功する。
その時、由貴は自分の名前を知る事になる。
琢磨は逃げる途中に由貴を幽閉した組織に奪われた写真と想い出が沢山詰まったロケット(首飾り)を見つけ奪い返す。

一方、気絶させられた兵士が目を覚まし組織の頭領である仮面の男へ侵入者が入ったと報告する。
仮面の男は西洋の魔道士の様なローブをまとった人物。仮面の男は犯人の目星はついているし、
地下には忠実な番犬を放ってあり直に死体として見つかると笑みを浮かべる。

琢磨には一人の協力者の男が居た。琢磨と由貴は物陰に隠れて追っ手から見つからないように合流を目指す。
急に由貴が絶望感で足が進まないと言い出し座り込んでしまうと辺りに獣の咆哮が響き渡る。
そこへ仮面の男が現れる。仮面の男と琢磨は旧知の仲だった。
「私達の大切な巫女は返していただきますよ。」
仮面の男は掌より閃光を放つと少女は倒れ込んでしまう。
琢磨が襲いかかろうとした時、背後にはこの世のものとは思えぬ巨大な化物が大きな口を開けて襲い掛かってきた。
辺りには琢磨と由貴の悲鳴と仮面の男の大きな笑い声が響く。

80 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/22(土) 14:37:31.47 ID:8r6RUyLI0
【オープニング】
西暦1923年 大正十二年―――
私はこの年に起こった出来事を、決して忘れる事はないだろう。
懐かしい思い出と狂気に満ちた記憶が同居した、あの時代の事を…
私は今までこの事を伏して生きてきたがここにその事実を貴方に伝えようと思う。
願わくば、この事実を警告として、後世の人々に語り継いでくれる事を祈って…

―――大正十二年の夏。
私が当時十五歳の少年で、イギリスの叔母に預けられてから三年後のことである。
私の元に考古学者である父、草薙琢磨が行方不明になったと書かれた手紙が届いた。

突然のことに驚いた私は身辺整理もほどほどに、空路経路と航海経路を使用して故郷「帝都」へ帰国を果たす。
「父はどこかで必ず生きている」
そうひたすらに祈りながら―――

大正十二年、帝都では謎の変死が相次ぎ、新聞の一面を飾っていた。
解決の糸口も見えず捜査が暗礁に乗り上げる中、少年とその仲間達が事件の裏で蠢くものに敢然と立ち向かう―――

東京TwilightBusters ~禁断の生贄帝都地獄変~

【登場人物】
・草薙 祥(くさなぎ しょう):主人公の少年。イギリスへ留学している。頑固な性格は親譲り。母親とは幼い頃に死別。
・由貴(ゆき):地下施設に捕らえられている記憶を失くした少女。
・草薙 琢磨(くさなぎ たくま):主人公の父親で帝国大学に勤める考古学者。体格も良い。頑固者。
・帯刀 杢念(たてわき もくねん):草薙家に使える執事。老齢ではあるが柔道家で体力には自信がある。
・麻生 沙夜子(あそう さよこ):琢磨の秘書の若い女性。琢磨に淡い思いを抱いている。祖父は琢磨と同じ大学へ勤める教授。
・鬼瓦 権造(おにがわら ごんぞう):警視庁に勤める警部。熱血漢の頑固者で琢磨とは親しい間柄。
・氷室 京一郎(ひむろ きょういちろう):帝国陸軍の少佐。冷静な性格で琢磨とは親しい間柄。
・ヒルデリカ リヒテンシュタイン:ドイツ人の若い女性。見世物一座の座長。口は悪いがお人好しで美男子が好き。
・九条 静(くじょう しずか):祥の幼馴染の少女。父の忠重は警視総監。祥は彼女をお静ちゃんと呼んでいる。
・鈴 麗華(りん れいか):若い女性の中国人。風水法百余派の宗家の鈴家の主。

81 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/22(土) 14:38:30.31 ID:8r6RUyLI0
【第一章:~父の遺言~ 1】
大正十二年、七月末に草薙祥を乗せた定期船が帝都東京の芝浦港に着いた。
船を降りた祥は、代々草薙家の執事を勤めている帯刀杢念と再会し、車で屋敷へと送ってもらう。
移動中、帯刀はこれまでの経緯を祥に説明する。
草薙琢磨が屋敷を出たのは七月一日の深夜『帰りが遅くなる』と電話があり、それから三日経っても連絡がない。
妙な胸騒ぎを覚えた帯刀は、念の為、警察に捜索願いを出すが、捜索が開始されても琢磨は見つからず、
七月十日を以って捜査を打ち切られてしまったらしい。現在警察は動いていない為、今後頼ることは出来ない。
琢磨の人間関係については詳しくないが、元々よく海外で過ごしていたので、日本での友人は少ないと思う。
ただ、友人ではないが二年ほど前から雇った秘書なら何か知っているかもしれない。
今日は遅いから明日会われてはどうかと祥へ提案する。
草薙邸に到着した二人。祥は今日は休みを取って、明日より捜査を開始する事にした。

八月一日 午前七時。祥は帯刀に起こされた後、昨日話していた秘書の居場所である帝国大学にある
琢磨の研究室の事を聞き出し、帯刀に留守番を頼み帝国大学へと向かう。
帝国大学についた祥は琢磨と同じ考古学教授の麻生教授と出会う。琢磨はこの麻生教授の元で学問を学び、
少し前までは同僚であった事、琢磨の秘書を務めている孫娘の沙夜子も心配している事やその居場所を教えてもらう。
祥は麻生教授に礼を述べて、琢磨の研究室へと向かった。
帝国大学研究室。ここは、祥の父である草薙琢磨の私室兼研究室。祥はこの部屋に居た麻生沙夜子と出会う。
琢磨が失踪した手掛かりは以前掴めていないらしい。
祥は琢磨が失踪する前、何をしていたのか教えてもらう。琢磨は十五年前にチベットの研究旅行中に見つけた
未知の遺品を手にした事をきっかけに、未知の超古代文明が存在していた仮説を唱えていた。
発掘した品の一つは、考古学研究所に居る麻生教授が鑑定中だという事だった。
また、陸軍の将校が面会に来た事があったけど用件は掴めていない。
祥は沙夜子に礼を述べて、考古学研究室へ移動。麻生教授と再開する。

祥は麻生教授から、もう何年も前から琢磨に鑑定を依頼された壷の解析資料を代わりに受け取ってもらいたいと渡される。
壷自体は三ヶ月前に琢磨が必要だからと持って行ったそうで、その壷は何故か年代測定ができない代物であり、
どの文明に属する代物なのか全く検討がつかなかった。壷に施されている紋様…いや、文字かもしれないものも
解読が困難で何年も研究時間を費やしてもわからなかったもの。もしかしたら、琢磨が唱えている仮説の代物かもしれないと言う。
祥は麻生教授から二…三ヶ月前に警察の捜査に協力した話を聞く。
琢磨がなぜ警察に協力していたのかはわからないが、最初に「お」がつく警部と協力していたらしい。
また、実はここだけの話、沙夜子は琢磨君に惚れている事を教えられる。
麻生教授は仲介役として琢磨に再婚を勧めたが、琢磨は堅物でそんなつもりは毛頭ないとの事だ。
琢磨と沙夜子の出会いは二年前で元々、琢磨の授業を聞きに来た事が始まりだと言う。

82 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/22(土) 14:39:33.49 ID:8r6RUyLI0
【第一章:~父の遺言~ 2】
麻生教授から聞き取りを終えた祥は自宅へと戻る。
執事の帯刀は琢磨の書斎を整理する最中に封が切られていない手紙を見つけたようだ。
祥は手紙を受け取り封を切って読んでみると、六月一日に鬼瓦権造という警察関係者が、予てよりお尋ねの少女に関して
調査結果報告の為、一度警視庁まで来て欲しいという内容だった。
鬼瓦は琢磨の捜査を担当している殺人捜査課の警部で、琢磨とはかなり親しい間柄だった。
「この人なら父さんの行方を掴んでいるかも知れない…」

祥は警視庁で鬼瓦と面会し、父の事について教えて欲しいと話しだす。
警察が捜査を打ち切ってしまったが、自分一人でも父の行方を探し続けようと思い、
以前まで担当していた警部から何かお話を聞ければと思いと伝えると、鬼瓦は激高し祥を留置所へ連れ出す。

留置所へと連れ込んだ鬼瓦は祥と口論する事になった。
「二度とここに来てはいかん。親父さんの事はきれいさっぱり忘れてしまえ…わかったら帰れ…
この件は警察だけでなく特別高等警察や憲兵隊までもが血眼になって探している。
この件は我々に任せて、家でおとなしくしとれ…決して悪い様にはせん。」
祥は、父と親しかった警部は捜査が打ち切られた後も一人で探してくれてると聞いたからきっとわかってくれると信じて来た事、
一人でも探し出してみせる意気込みを見せると鬼瓦も観念して、できるだけの事は協力すると約束してくれた。
祥は父の書斎の手紙に書いていた女の子の話について尋ねる。琢磨は数年前からある女の子を捜していたらしい。
歳は十五歳くらいで色白で背丈は祥と同じくらいで、なぜ琢磨はその女の子を捜していたのかはわからないそうだ。

警視庁より外へ出た祥は他にも情報が欲しいと思い街の人へ聞き込みを開始する。
秋葉原の通りを歩いて行くと通りの奥の雑貨屋で沙夜子と出会い、聞き込みに協力してくれた。
二人は太平町へと足を運ぶ。この辺りは住宅地のようだ。
琢磨が失踪する二日前この辺りで琢磨を見かけた生徒が何人かいたらしい。
通りの奥の工場のような古く錆び付いていた建物はの前に陸軍の兵隊が三人見張っていた。
本所区には陸軍の駐屯地は無いはずだ。一体、なぜここに居るのだろう?
少し離れた場所で鬼瓦警部も祥と同様に兵士達の様子を伺っていた。
鬼瓦は最近、この工場に帝国陸軍の一部の将校達が集結し始めているという情報を受けて見張っていたそうだ。
上司からの命令で明確な目的は不明だという事だ。もしかしたら反乱分子かもしれない。
あと数分で交代要員が来るから、これから草薙教授の捜索をしようと思っていると祥へ伝えると鬼瓦は去ってしまう。
94 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:01:25.42 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 3】
二人は聞き込みを再開し、麻布十番通り、帝大付属病院、そして乃木邸付近へと足を運ぶ。
琢磨は乃木邸へ来た事があるらしい。聞き込みを行おうとした祥は門前に立っている男性を見つける。
その人は二人の姿を見てやや驚きの表情を見せた後、ゆっくりとした歩調で歩み寄ってきた。
茶色の帝国陸軍の軍服を着込み方には金色の星の階級章…
軍隊の知識の薄い祥でさえ、その男の人が高い地位に居るものだとわかった。
「これは奇遇ですな。麻生沙夜子さん。」
「…そうですわね。ところで、乃木大将の御自宅で何かあったのですか?」
陸軍将校はたまたま立ち寄っただけだと答え、去って行った。
沙夜子は陸軍将校の名前は知らないが以前琢磨の留守中に大学へ訪れた方だと答える。
日が暮れる時間になってしまい二人は研究室へ戻る事にした。沙夜子は琢磨の研究資料を見せたいそうだ。

琢磨の研究室へ入ると麻生教授が出迎える。麻生教授と沙夜子は明日の研究の発表の準備、
琢磨の説いた仮説…超古代文明について失踪する前の資料を元に続きをまとめているらしい。
沙夜子は祥に部屋に置いている本でも読んでおいてと伝えて、
考古学研究室にて麻生教授と二人で研究発表用のレポートの仕上げに取り掛かった。
祥は琢磨の研究室の本棚から目ぼしい本を読みあさる。主な内容として4点あった。
1:ギリシア戦乱記と言う本の古代ギリシア文字の翻訳と、アルカディアの文章の所に印が付いていた。
2:哲学者プラトンが説いたと言われるアトランティス大陸の事について書かれた本。
アトランティス大陸は大西洋にあったとされる幻の大陸だけど幾多の災害や地震で滅亡し大陸は海に没したという…
3:超古代文明追跡録と言う琢磨が超古代文明を追っていた頃の記録。その一節にはこう記されている。
「大正五年、私はついにその先史古代文明の謎を、チベットの古代書物《ラサ記録》から見出す事ができた。
その文明は、私が追い求めてきた先史《超古代文明》の一角に過ぎないが、今後の研究対象として十分役に立つと思われる。」
4:聖書の悪魔と言う書物を発見した。キリスト教やユダヤ教の悪魔に関する資料のようだ。

ひと通り目ぼしい本に目を通した祥の元へレポートの作成が完了した沙夜子が入ってくる。
レポート作成に時間がかかってしまった沙夜子は、今日は一旦帰る事にすると伝える。
明日であれば時間があるから今日と同じように琢磨の捜索を手伝うと約束してくれた。
そこへ麻生教授が血相を変えて入ってくる。
「じ、実はじゃ、先程警視庁から電話があってな…それで…
―――祥君、落ち着いて聞いて欲しい。琢磨君が…亡くなったそうじゃ。」
麻生教授の言葉を聞いた沙夜子はその場で気を失ってしまう。
麻生教授は困惑する祥へ自分達は後から合流するので先に警視庁へ向かって欲しいと伝える。

95 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:02:27.76 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 4】
祥は急いで警視庁へ向った。祥は受付に居た帯刀に本当に琢磨だったのかと尋ねる。
「それが…爺にはわかりかねます。もし、あれが旦那様なら…坊ちゃん、お辛いでしょうが、ご確認くださいませ…」
そこへ麻生教授が沙夜子を連れて現れる。祥はまだ琢磨の遺体の確認は行なっていない事を二人に伝える。
更にそこへ鬼瓦が現れる。
鬼瓦「話の途中すみませんが、祥と麻生沙夜子さんは確認のため、霊安室に来てもらいます。」
祥と沙夜子は鬼瓦に霊安室へ招かれた。
鬼瓦「ここです…事件で人が亡くなった場合、必ず親類による身元確認が行われます。辛いでしょうがお願いします…」
祥は暗い霊安室の奥に安置されていた遺体が本当に琢磨なのか疑っていた。
身体に触れるとまるで氷に触れているかのように冷たかった…勇気を出し、顔に掛けられている白布を取った。
顔は醜く焼け爛れ、そして腐敗していた…
祥は顔をまともに見る事ができなかった。沙夜子からは悲鳴が上げる。
祥は耐え切れず素早く白布を戻し、この遺体は琢磨なのか違う男なのかと葛藤した。
祥「間違いなく…父さんです…」
鬼瓦「そうか……ご苦労だったな祥………これが最後だから、少し側に居るといい。儂は外で待っておるからな。」
沙夜子は祥の頭を抱きしめて二人はしばらくの間、泣き叫んでいた。
―――それから二十分後。
祥は沙夜子に連れられて霊安室から出てきた。

祥は鬼瓦警部の部下に車で家まで送ってもらう事にした。鬼瓦は別れ際に祥へロケットを渡す。
琢磨の内ポケットに隠されていたロケット。ロケットを開けると小さい頃の祥の写真が入っていた。
鬼瓦「本来なら証拠物件として保管される所だが、これだけは持って行くといいだろう。あとは儂がやっておくから心配するな。」

翌日の八月二日、琢磨の葬儀が行われた。親類は、この東京には居なかったが、琢磨に講習を受けていた帝国大生や同僚、
秘書の沙夜子、恩師の麻生教授、鬼瓦警部といった人達が参列し慰霊を弔った。葬儀は夕方の六時で終了した。

葬儀の片付けを終えた帯刀は祥の今後の予定について尋ねる。
祥はイギリスに帰ろうと思っていた事を打ち明ける。学校の方も休学しているし、向こうにいる友達も帰りを待っている。
今からイギリス行きの乗船券と航空券を手配すると明日の定期便に乗ることができる。
帯刀は手続きを行うと伝えた後、祥にこの家の相続を受け継いで貰いたいと切り出すが、
琢磨との思い出に押し潰されそうだから相続したくないと言われてしまう。
帯刀は心苦しく思いながらも祥の意向に従った。

96 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:03:20.27 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 5】
祥は早めの就寝とする事にした。昼間の疲れのためか、ベットに身を委ねた瞬間深い眠りについた。
夢の中で女性らしき声が聞こえてくる。周りは煉瓦造りの暗い部屋には異臭を放つ壷があり、
部屋の奥には異形の神を祀っているのであろう、巨大な像が一体安置されていた。
「ダレ………ソコニイルノハ……ダレナノ…マタ…ワタシヲイジメルノ」
声の主は、異形の神に縛り付けられた少女から発せられていた。
「……タスケテ…ダレカ…ダレカ…ワタシヲコノ地獄カラタスケテ……」
祥は見たことも無い少女と、状況が掴めず君は誰なんだと問いかけるが、再び意識はまどろみに没し始め、視界がぼやけだした。

八月三日、夜の七時を過ぎていた。もうこんな時間か、今日は出港日だったな。
祥は眠りから目覚め部屋を出て執事の帯刀に感謝の言葉をかけて一緒にイギリスに来てくれないかと誘う。
帯刀は勿体無いお言葉ではありますが、代々この家を守って朽ち果てると、そう先代と約束していると断られる。
荷物が揃っている事を確認すると二人は車に乗り込み芝浦港へと向かった。
生まれ育った町、温かい故郷を去る。懐かしい事、辛かった事、そして父さんとの思い出を全て捨てて…

一時間後、二人を乗せた車は芝浦港に着いた。
客船で一旦香港へ渡り、そこからイギリスに向かう旅客機に乗り換える…この国ともしばらくお別れだ。
祥は帯刀から重い旅行鞄を受け取り別れの挨拶を交わした。
その時、祥はふと、誰かが呼んでいるような気がして振り向いた…だが、そこには誰もいない。
急に軽い目眩を感じ、桟橋の手すりに手をついた。軽い頭痛が走っては消え、
ぼやけた視線の中で周りの風景が全て止まって見えた。
そして、目の前に昨日夢で見た少女の姿が浮かび上がった。
祥の声は、少女の耳には届いていないようだ。少女は、ただ哀しい顔をして祥を見つめている。
祥はこの少女を何処かで見たことがあることに気が付いた。
夢ではなく何処かで以前あの少女の哀しげな顔を見た事がある既視感を覚えるがどうしても思い出せない。
遥か昔に、一度だけ会ったような気がする。
「君は一体誰なんだ?なぜ、僕の前に現れるんだ!?君は…僕に何をしろっていうんだ?」

祥が問いかけると後ろから不意に何かがぶつかってきて、よろけて桟橋に倒れそうになった。
小さな女の子が祥にぶつかってきてしまったようだ。祥は夢の中ではなく現実に戻された事を実感する。
祥にぶつかった女の子とその母親は何度も祥へ謝り船へと足を運ぼうとしていた。
女の子は船へ乗る前に、ぶつかった時に祥が落とした物だと祥へロケットを受け渡す。

97 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:04:21.00 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 6】
ロケットの中の硝子が割れていないか確認すると中の写真が少しだけずれて、
その下にはもう一枚写真の様な物がはさまっていた事に気づく。
祥は硝子のカバーを取り出して幼い頃の自分の写真を取り除くと昨日夢と先程の幻覚の中で出会った少女の写真が貼られていた。
「―――!?なぜ、あの少女の写真が!?―――もしかしてこの少女が父さんが探していた少女なのだろうか?」
祥は、なぜかその少女と自分との間の何か不思議な繋がりの様な物を感じていた。
「(もう、イギリスに帰るって決めていたはずなのに…ここにいてももう…父さんは…帰ってこないのに。
だけど……なぜか、あの少女の事が気になる。あの哀しい眼…声…………)」
祥は再びロケットを見た。少女の顔は笑っておらず、ただ…哀しい笑みを浮かべているようだった。
「(…僕は、これからどうすればいいんだろう?
イギリスに戻り、勉強して父さんのように考古学者になって、それで父さんは満足なんだろうか?
―――いや、僕自身本当にそれで満足なのか?今、僕がイギリスに帰るということは父さんの事を忘れるのではなく、
自分から逃げることになるのではないだろうか?それならば…この少女を捜して父さんの死の真相を探ればいいのではないか。
このまま、永遠に後悔し続けるよりも、今全てを解決させた方が…
やってみよう、無駄かもしれないけど後悔しないためにも。)」
乗船を急かす船員に対し、祥は謝りながら乗船を断り桟橋から離れた。

帯刀が祥の姿を見て驚く。祥は帯刀に自分の考えを伝える。
琢磨がなぜ死んだのか、捜していた少女は何者なのか全ての真相を知りたい。
何も知らずこのまま帰ったら、僕は一生後悔する。一週間後にイギリス行きの船が出るから、それまでに掴んでみせる。
帯刀「…………ふぅ…いた仕方ありませんな。わかりました、坊ちゃん。今回の渡英は取り止めに致しましょう。
坊ちゃんの納得がいくまで、爺もお供いたします。それが、執事として当然ですからな。」
祥「じいや、ありがとう、じいや。」

草薙邸へ戻った祥は今後の行動について考える。
鬼瓦の話では、琢磨は何処かで殺された後、芝浦港に流れ着いたそうだ。
せめて当日の行動がわかればと思い、帯刀と共に二階にある琢磨の書斎へと向かった。

98 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:05:56.77 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 7】
書斎の机の中等、未整理の収納物には考古学の書類ばかりが入っているばかりで、失踪に関する情報は得られなかったが、
一枚の開封済みの手紙を見つける。差出人の名前は山神義郎。祥とは面識のない名前だった。
琢磨宛に書かれた手紙の内容は、琢磨の依頼により探していた少女の居場所が判明した為、
詳細を帝日新聞社本部の報道部にて話すといった内容だった。
手紙の発送日は七月一日、琢磨が失踪した日に近いはず。祥は近くにある新聞を取り、帝日新聞社の場所を調べた。
父親の足取りを一刻も早く知りたい祥は応接室に出た所、帯刀と出会い手紙の事や港での幻覚、二日前の夢の事を説明する。
祥は、もしも少女が父さんのように殺されたりしたらと思うと居ても立っても居られなかった。
夜分遅い時間の訪問を宥める帯刀を押しのけようとしたその時、祥は帯刀に投げ飛ばされる。
「申し訳ございませんが、今は休まれた方がよろしいかと思われますぞ?
あの程度の投げをかわせないのは、気力不足だという証拠ですからな。」
主人の健康管理も執事の役目、帯刀は焦らず冷静に行動して欲しいと祥に促す。
祥は帯刀に自室へ連れ戻され布団に入った。祥は帯刀の言っている事は正しい、悪いのは自分だと反省する。
体調を整えて、明日また行動しようと心の中で呟き、まどろみに身を委ねた…

八月四日 祥は帯刀に起こされる。夢も見ずぐっすり眠れたようだ。
祥は一人、帝日新聞社へと向かうが道に迷い彷徨いている所で麻生教授と出くわす。
沙夜子が琢磨の死によって精神的にまいって寝込んで、学会の発表どころではないと言う。
学会の発表も一人では出来ない麻生教授はぶらぶらと東京巡りをしているらしい。
祥なら沙夜子も立ち直らせる事ができるかもしれないから、時間があったら様子を見て欲しいと頼まれる。
麻生教授は帝日新聞社の場所と沙夜子の住所を教え去ってしまう。

祥は帝日新聞社の受付に入り受付の女性に山神さんに用事がある事を伝える。
二階奥の報道部に山神のデスクがあると案内され報道部へ。一番奥に座っていた編集長が祥に経緯を説明してくれた。
山神は考古学者だと言う男の手伝いをしていて…ひと月前のある日、姿を見せなくなってしまった。
連絡も何も無いから不安で、警察には失踪という形で捜してもらったが見つからない。
確か失踪する前に―――数年前に廃棄された睦月精肉工場に行ってその考古学者と二人で少女を捜すと言い出て行き
その日以来、山神君は帰ってきていない。睦月精肉工場は本所区の太平町にあると言う。
父が失踪した時期と同じだと気づいた祥は、考古学者と言うのは琢磨の事ではないかと推測する。
祥は編集長に礼を言い受付へと戻る。
琢磨の足取りについて考えこむ祥に受付の女性が話しかける。編集長から言付けを頼まれたらしい。
『睦月精肉工場跡は帝国陸軍が占拠しているので、侵入するなら気をつけるように。』だそうです。
草薙琢磨はよくこの新聞社を訪ねて山神さんと編集長の門脇さんとは友人だったそうだ。
祥は受付の女性に編集長にも礼を伝えて欲しいと言い新聞社を去る。

99 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:08:04.52 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 8】
陸軍をどうにかしなければならない、祥は考え事をしながら東京駅を横切り警視庁へと足を運んだ。
祥は受付で鬼瓦への面会をお願いするが、警視総監からの呼び出しで今日一日帰ってきそうにないそうだ。
祥は警視庁を出て今後の行動について考えるが、鬼瓦警部不在では睦月精肉工場へ行けそうもないと困り果てる。
鬼瓦以外に協力してくれそうな人と言えば帯刀と沙夜子位しか居ない、とにかく相談してみよう。

沙夜子に相談する為、祥は牛込区(うしごめく)へ足を運んだ。
沙夜子の住まいを見つけた祥は再び麻生教授と再会する。どうやら沙夜子の様子が気になって戻ってきたそうだ。
祥は麻生教授に招かれ応接間へと進み沙夜子と再会する。沙夜子は初めて出逢った時と違い、やつれ果てている様に見えた。
目は赤く充血し、頬もややこけていた。満足に食事も取らず、夜な夜な泣き続けていたのだろう。

祥は麻生教授に沙夜子と二人っきりで話がしたいと願い出る。
麻生教授は了承し話が終わったら声をかけてくれと退室すると沙夜子は祥へ話しかけてきた。
祥や祖父の麻生教授や大学関係者にも迷惑をかけている事はわかっているが、どうしても立ち直れない。
祥は自分も琢磨が死んでから目標を失ったような感覚を覚えた、でもこれ以上泣いたら琢磨に叱られるから泣かない。
いつまでも琢磨との思い出の中に逃げて自分を見失なう訳にはいかないと沙夜子を諭す。
沙夜子は琢磨も慰めてくれる時、祥と同じような事を言ってくれていた事を思い出し自我を取り戻した。
沙夜子は祥の大人みたいな言葉を褒め称えた所で、盗み聞きを立てていた麻生教授が入ってくる。
祥は沙夜子に用件があった事を思い出しこれまでの経過を二人に説明する。信じてくれるかわからないが、事実を素直に伝えた。
全てを話し終えた時、沙夜子の顔が青ざめているのがわかった。
沙夜子も琢磨の死に疑問があり、快く協力してくれる事を約束する。
麻生教授は沙夜子が立ち直った事に安心し研究室に戻る事にする、何かあったら訪ねて来なさいと祥に伝える。

祥と沙夜子は帯刀を説得する為、祥の自宅へと足を運んだ。
祥は帯刀に父の失踪した場所がわかったと伝え協力を依頼する。
帯刀も快く祥に協力すると答える。

三人は本所区太平町にある睦月精肉工場へと向かう。
祥は帝日新聞社の編集長から聞いた工場跡を見渡す。以前、祥や鬼瓦も見た事のある工場跡地だった。
入り口には兵士が見張っていて侵入できそうにもない。中々隙が伺えないまま時間がだけが経過してしまう。
沙夜子は見張りの兵士の様子が何かに操られているようだと言う。確かに何かに怯えているような雰囲気だ。
様子を見続けるも隙ができず、夕方、そして夜を迎えてしまう。このままでは埒があかない。
沙夜子は祥に食べ物を買ってくると言い去ってしまう。
祥と帯刀は何か対策はないか話し合っている所で沙夜子の悲鳴が聞こえてきた。

100 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/23(日) 15:09:07.54 ID:58kULoCM0
【第一章:~父の遺言~ 9】
二人は悲鳴が聞こえた外手町へと急行すると、壁に追い詰められた沙夜子と漆黒の灰色のローブを纏った怪しい集団が居た。
怪奇や幻想小説に登場しそうな魔道士の姿をした者達が僕達の声に反応してこちらを見る。
魔道士達全てが、おぞましく不気味なペルソナ(仮面)を被って僕達を見つめている。
恐怖に押し潰されそうな祥、そこに電撃が走ったような音が鳴ると帯刀が力なく倒れている事に気づく。
魔道士達の内、一人が前へと歩み寄る。その男の頭髪は茶色で、漆黒のマントを羽織っていた。
仮面の男「クククッ、我々の隠れ家を監視していたのが何者かと思えば…こんな子供でしたか。少年、我々に何か用ですかな?」
祥は震え声で父親が死んだ理由を探るためだと答えると背後から衝撃を受け意識が徐々に失われてゆくのを感じる。
なぜ余計な事をしたのか男女のやり取りが聞こえるが、意識が朦朧として姿を見る事ができない。
女は計画通りに進むのであれば指図しないで欲しいと言っていた。そして男女は祥の事を使い道がありそうだと話している。
やがて祥は意識を失う。次の瞬間、一発の銃声が聞こえた。

祥が目を覚ました時、目の前には帯刀と沙夜子の姿があった。どうやら危ない所を少佐が助けてくれたらしい。
辺りを見回すと以前乃木邸で出逢った事のある将校が居た。
その人は帝国陸軍近衛第三連隊連隊長を務めている氷室京一郎少佐だと言う。
帝都内における一部陸軍将校の造反の為、太平町を見張っていた所、部下から不審な集団を目撃したと連絡が入り
駆けつけた所に遭遇したと言う。不審な集団の一人は切り倒したが、残りは睦月精肉工場の中へ逃げこんでしまったそうだ。
祥はあの集団が琢磨を殺した奴等に違いないと直感した。
氷室は琢磨の知り合いで以前共に仕事をした事があり、借りを返す為にもあの者達の処分は任せてくれと祥へ伝える。
祥は氷室に連れて行って欲しいと言うが、死んでしまうぞと拒絶される。
そこへ追い討ちをかけるように帯刀が口を挟む。先程死にかけてしまった祥に命がいくつあっても足りないと涙ながら話しかける。
氷室は祥に冷静になるように促し帯刀、沙夜子にも工場に近づかないよう警告する。
「これより午後十時を期して反乱分子の排除を決行する。近づいて流れ弾に当っても我々は一切関知せん。
また、この事は部外秘である。一般市民を混乱させる訳にはいかないからな。では、失礼。」

八月四日、時計は夜の九時半を回っていた。
祥は少女が殺されてしまうのではないかと居ても立っても居られなかった。
何のために東京に残ったのか一人でも行くと帯刀に言い放つとさすがの帯刀も観念し付いて行く事にした。
表に出た二人の前には、家に帰ったと思われていた沙夜子が待っていた。祥なら工場へ行くに違いないとずっと待っていたそうだ。
108 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:00:10.02 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 10】
三人は危険を承知の上、再び睦月精肉工場前へと足を運んだ。睦月精肉工場は以前とは様子が違い兵士の姿が無かった。
八月四日 午後十一時に三人は睦月精肉工場内へ侵入した。この場所に何か手掛かりが隠されているに違いない。
三人は互いに協力を誓い合い工場の中へと進む。工場奥の床下にある血の跡がただならぬ雰囲気を醸し出していた。
工場2階の一室で見つけた会計資料からこの工場は表向きは精肉工場であるが、内部では武器を生産している事がわかった。

一方とある一室にて兵士が仮面の男に報告をあげていた。
仮面の男の命令で、約10時間後に起爆する時限装置の配置が完了した内容であった。
仮面の男はこの爆発が起きるのが先か少女が目覚めるのが先か大きな賭けに出ていた。
その後、八月五日 午前0時 仮面の男は地下の祭壇へと訪れ少女へ話しかける。
「父王ケルブデルの子にして高潔なる皇子クルテュアよ…遥かなる時空を超えて現し世に転生した我らの皇子よ…
ククククッ、長かった…ようやく昔年の我が本懐が遂げられる時が来たのだ…
あの時の…あの唯一無二の我が過ちを、決して犯しはしない…二度も逃げられるとは思うなよ……
おまえは既に我が掌中でしか生きられぬのだから…今度こそ…今度こそ骨の髄までしゃぶり尽くしてくれるわ。
ククククッ。アーハッハッッハッハ!!」

探索を続ける祥達、三人は工場内で見つけた工場奥にある倉庫から梯子を降りて地下水路へ。
祥達は巡回する兵士の隙をつき兵隊詰所へ入り込み、居眠りしている軍曹をロープで縛り上げ鍵束を盗み更に奥へ。
気味の悪い大きな髑髏の扉を発見するが、今は開けれそうにないと判断し実験室に訪れる。
その部屋は薬品の刺激臭と血の匂いが充満していた。
奥の実験台の死体を調べてみると死体はゾンビとなり襲いかかってきたが、一行はこれを難なく撃退する。
一体何の実験が行われていたのだろうか?
祥達は女性の服、点火棒、アンモニア瓶、水入り瓶、犬の骨を手に入れて、本棚、書架にあった
観察日記、研究報告書に目を通す。
観察日記には、人間の養分だけを吸い取る化け物を番兵として飼っていた事、
性別は分からないが女性と仮定して彼女を「花子」と呼ぶことにした事等が書かれていた。
研究報告書には工場施設、及び地下施設を計画通りすみやかに廃棄せよ。と計八箇所に小型時限式爆薬を設置し、
施設を完全爆破、近隣の民間施設、住宅等に若干の被害が予想されるが、これに関しては一切関与しない。
工場機械の老朽化によって起こった火災事故として扱う事、計画の万全を期すため、爆薬の内1ヶは
完全解除不能型の特殊爆薬を使用する事が書かれていた。
部屋の中の犬の像に犬用の骨を置いてみると仕掛けが動き出し鏡台の鏡が扉のように開いた!
祥達は鏡の奥の秘密の部屋に入り、中の事務机から防毒マスク、テーブルから魔道書を取得する。
魔道書は古い書物の為、所々風化して読めないが、儀式に関する説明が書かれていた。
ページをめくると本の間に「生贄の短剣」が挟まっていた事に気づく。

109 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:00:41.28 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 11】
祥達は髑髏の扉の向こう側へ行く為、地下室の各部屋にある仕掛けを解除する。
点火棒を使い、各部屋にあるろうそくに特定の順番で火をつけると髑髏の扉は開いた。
狭い地下室を抜けると唐突に巨大な空間が広がり一本の細く長い石造りの橋が続いていた。
辺りはねっとりと甘く妖しい不快な霧に包まれて、精神がひきむしられるのを感じた。
祥は防毒マスクを身に着けて必要だと思われる物を持ち出し奥へ進んだ。
奥へ進むとそこには禍々しい石像が並んだ異様な光景が広がり祭壇へと続いていた。
祭壇の中央には邪神をモチーフにした石像があり、その左手に持つ十字架には少女が縛り付けられていた。
少女の肉体は醜悪な像と融合し分離は不可能のように見える。この少女もこの部屋の像も夢で見た光景だ。
祭壇の床には大きな魔法陣が書かれ怪しく光り輝いている。
祥は石像の右手に持つように置かれている香炉をに水を撒き煙を消した。
続いて生贄のナイフで自分の左手を切り、魔方陣に血を垂らす。
魔法陣は光輝き、祥の全身を包み込み大量の血を流した左手は何事も無かったように元に戻っていた。
魔法陣の光に反応して縛り付けられていた少女が突然目の前に現れる。
「お、おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」
祥は邪神像に捕らえられていた少女を抱きかかえると、その頬を軽く叩くと少女は目を覚ました。
「ここ…は…私……どうして……?」
祥は自分の名前を名乗り、少女の事を尋ねる。少女は由貴という名前のようで、名前以外の記憶を無くしてしまったらしい。
我に返った少女は自分が裸である事に気づき、祥は照れながら探索時に見つけた女性用の服を渡す。
服を着込んだ由貴は祥に連れられ工場へと戻ろうと祭壇を後にする。

由貴は祭壇への橋で立ち止まり祥に改めて自分を助けだしてくれた事に対して礼を述べる。
祥はどうして私なんかを助けてくれたのか、おかしな格好をした人に周りを取り囲まれて
暗くて辛くて凄く嫌でやめてって何度も叫んだのに誰も助けてくれなかったと過去を振り返る。
過去を思い出すと頭がおかしくなりそうだけど、喋らないと頭がおかしくなりそうだとも言う。
由貴は一度も会ったことがないのに前から祥の事を知っている気がすると言う。
祥の事を何度も何度も夢で見た。いつか私を助けだしてくれるんだってわかっていたから辛いことも耐えることができた。
祥も由貴を夢で見たと話す。
由貴はぼんやりとしか思い出せないが夢の中で祥に似た優しい人が居たような気がすると言う。
祥は琢磨の事ではないかと取り乱して由貴に詳しい状況を聞き出そうとするが、由貴は思い出せない。
祥は琢磨を殺した奴等を絶対に許せない。見つけ出して罪を償わせてやりたいというが、
由貴はあんな奴等に関わっては駄目だと祥を止めようとする。
由貴は琢磨と暗くて湿った長い長いトンネルみたいな所を走ったと言う。
祥は地下水道の事を言っているのかと推測する。
由貴は、黒くて凄い恐い物に凄い速さで追いかけられて、すぐに追いつかれた。
生き物じゃない、ぬるぬした臭い、薄汚い憎しみのカタマリ…そいつがあの人を襲ったんだと言う。
祥は琢磨が実際に死んでしまっている事を改めて実感し泣き叫んでしまう。
祥と由貴はお互い慰め合い早くここから脱出しようと誓い合う。

110 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:01:26.59 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 12】
由貴は多分出口を知っている。駄目かもしれないけど多分こっちと祥を導く。
そこへ仮面の男が現れ由貴を捕まえる。
「聖なる祭壇を汚した罪と、我らが偉大な神への冒涜行為は見逃すことができない。
武器を捨てなければ由貴がどんな目にあうかわからないぞ。」
由貴は構わず逃げてというが、祥は逃げ出す訳にはいかないと武器を捨てて捕らえられてしまう。

祥は独房へと連れだされた。帯刀、沙夜子も同様に独房に閉じ込められてしまっていた。
仮面の男は祥の名前を言い当てる。今は亡き草薙琢磨教授にそっくりだと言う。
仮面の男はあの一件以来少女が心を閉ざしてしまった事に困っていたそうだ。
そのお礼と言ってはなんですがひとつゲームをしようじゃありませんかと提案してきた。
この地下及び、工場施設は本日廃棄処分する手はずになっている。時限爆破装置が作動して木っ端微塵になる前に
見事ここから脱出する事が出来れば今回だけは見逃して差し上げましょう。
由貴を返せと詰め寄る祥は兵士に殴り倒され仮面の男と兵士達は独房から出ていった。
祥は倒れ込んでいる帯刀と沙夜子を起こし一部始終を二人に話した。

一方仮面の男はもうこの施設を警備する必要はないと巡回している兵たちに退去命令を出す。
由貴を連れ出そうとすると由貴が覚醒してしまい兵士共々魔法を受けてしまう。

祥達三人は独房の扉を破壊して通路へと脱出すると目の前には床下にメモが落ちていた。
メモには仮面の男からのメッセージが書かれていた。
先程言っていたゲームについての情報で、この廃工場の地上と地下に小型爆弾が七個、大型爆弾が一個あるそうだ。
小型爆弾は簡易で運が良ければ解除できるが、大型爆弾は僕達では解除できない特殊なものらしい。
簡易爆弾を一つ解除する毎に大型爆弾の爆破時間を三十分延長する仕組みを組み込んであるそうだ。

祥は以前工場の二階で見つけたダウジング読本を読み、ダウジングロッドを持ち爆弾を探す。
簡易爆弾を見つける一行。簡易爆弾は単純な構造で赤と青の2本のリード線のどちらかを切れば装置が解除される仕組みのようだ。
以前工場内で見つけた紙切れには『赤、青、青、青、赤、青、赤』と走り書きがされていたのは、
この簡易爆弾の事だったのであろう。各所に設置されていた簡易爆弾7個を紙切れの情報を元に解除する事ができた。
爆弾を解除して回る途中、工場の入口の様子を見たが封鎖されて、残された逃げ道は地下水路以外になかった。

更に一行は由貴を助けた祭壇の奥深くへと進む。
奥の部屋はごみの集積地だったのだろうか。部屋には異様な臭気が充満し気分が悪くなりそうだ。
ここはどうやら牢獄として使用されていた…いや現在も使われているようだ。
死体が壊れたおもちゃのように床に放置されていた…
原型を留めないくらいぐずぐずに崩れ、干からびた血と肉の塊と化していたが、確かにそれは人間の死体だった。
もう一方の死体は巨大な爪で引き裂かれたように見える…

111 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:01:57.50 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 13】
更に奥へと進む一行。祥は倒れている由貴を見つけ話しかける。息はあるが意識が戻らない。
祥は以前手に入れたアンモニア水を振りかけ目覚めさせる。
由貴は仮面の男に捕まった後、何処かへ連れていかれそうになり、急な頭痛に襲われ、それ以降の記憶が無いらしい。

祥達四人は更に奥へと進む。水路の床に日記帳が落ちている事に気づく。
日付のない日記帳には自分の臆病さによって大切な友人である琢磨を見捨てて逃げてしまった事を懺悔していた。
見殺しにした琢磨と妻の千恵子に申し訳ない気持ちで一杯になっている事、
一目だけでいい、声だけでもいいから、妻に会いたいと書かれていた。

一行は更に奥へと進む。通路には明かりを灯せば道は開かれると血のメッセージが書かれていた。
開けることが出来ない扉の近くには燈台があり、オイルを流し点火棒で火を灯すと扉が開く。
どうやら、この事を言っているのだろう。行き止まりの通路で写真機を拾う。写真機は錆つき壊れている。
よく見ると名札には『帝日新聞記者 山神義郎』と書いてあった。ケースの中には数枚の写真があった。
殆どが何を写しているのかわからなかったが、その中の一枚だけまともな写真があった。
その写真には、こちらをむいて微笑んでいる若い女性の姿が写っていた。祥達の知らない女性だ。

更に奥へ進む一行。ふと壁を見ると血痕が残っていた。
『失くした思い出を探し出してほしい…』
近くの壊れかけた壁を壊し、壁を抜けると別の空間が拡がっていた。
そこには降りてきた梯子とは別の梯子が架かっている。その手前には男が一人倒れていた。
よく見ると無残に切り刻まれた死体であったが、その表情は穏やかでこの苦しみから開放される、
この世の地獄から逃げ出せる…やっと死ねる…救われた顔だったのだろう…
死体の手には大切そうに紙切れが握りしめられていた。

紙切れには疲れて歩く力も残っていないので最期の力を振り絞ってこれをしたためると書いていた。
自分が帝日新聞の記者の山神である事、巷を騒がす猟奇的事件を追っている内、裏で暗躍している集団の存在を知った事、
陸軍にも絡んでいるようで、兵士達は奴らの言いなりになっているようにも見えた事、
考古学者である友人と共に工場の地下に潜入したが、一介の新聞屋風情が興味本位に首をつっこむ事件ではなかった、
自分の考えが甘かった事。
漆黒のローブを纏い、仮面をつけた得体の知れない連中が、人知れず帝都の地下で行う怪しげな儀式…
人間の身体を使った非人道的な事件の数々…ここに書いてみたところで誰も信じてくれないだろう。
ひと月、下水の暗闇に潜み、奴らの影に脅え暮らしながら、泥水をすする惨めな生活を送って来た。
もはや二度と明るい太陽の下を歩けるとは思っていない…ここで惨めに野垂れ死ぬ運命なのだろう。
ただひとつ心残りは、友人である草薙琢磨君から別れ際に託された手紙を、彼の息子に届けられなかった事だ…
私が血で残したメッセージに導かれ、私の亡骸を見つけた人がいたら、
この手紙をどうか草薙祥君の元へ届けてほしい…それが、せめてもの私の罪滅ぼしなのだ…
千恵子…すまない。今頃、必死に私を探しているのだろうか?こんな所で力尽きる私を、妻は許してくれるだろうか?
あいつが…あの醜い生物が、もう私のすぐそばまで来ている…神よ…愚かなこの私の魂を救いたまえ……

112 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:02:28.73 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 14】
祥はこんな恐ろしい事件が、皆の暮らしているすぐ足元で平然と行われているのに誰も気付かない事に憤りを感じる。
その時、死体がピクリと動き出す。山神記者がゾンビとなって祥達に襲いかかる。
山神と戦いたくない祥達は写真機に入っていた女性の写真を見せる。
「ち……え…こ……」
山神であった男の屍骸は乗っ取られた意識とかつての記憶との激しい葛藤にもがき苦しみ、狂ったように暴れまわる。
やがて、愛妻、千恵子と暮らしていた頃の清浄な魂を取り戻したのか、醜い怪物の顔は人間のそれへと変化していった。
「…あり…が…とう…」
山神は忌まわしい呪力から開放された山神の体は死体へと戻り、その場へぼろぼろと崩れ落ちる…
やがてそこには、カサカサに干からびて腐臭を放つ、打ち捨てられた哀しい男の屍骸だけが残された。

山神の屍骸には草薙教授の遺書が隠されていた。
遺書には、祥と沙夜子、そして杢念(もくねん)の名前と住所がそれぞれ記されている、三通の手紙が入っていた。
その裏面には草薙琢磨よりと記載されている。三通の手紙をそれぞれ読む三人。

祥宛の手紙―我が親愛なる息子、祥へ
琢磨からの遺言として、今一人の少女を追ってこの地下に潜っている事、
その少女は、ある場所から帝都東京へ連れて来た少女で、事情があり匿っていたが、
ある集団に捕らえられてそれ以降、少女を探して帝都中を駆け回ってきた事、
七月一日の今日、新聞記者の山神と共に少女を救出する為に地下に潜ったが
力不足で少女を助ける事ができず、自分自身が不覚にも不気味な何者かに襲われてしまい出血が止まらず、死を覚悟している事、
最期の頼みとして、祥に身寄りも、頼るべき者も居ないその少女を助けて欲しい事、
その少女を助け出しイギリスへ連れ帰って欲しい事が書かれていた。

杢念宛の手紙―我が親愛なる友、帯刀へ
琢磨からの遺言書として自分が死別すると祥には肉親と呼べる者が帝都から居なくなり、
祥はイギリスでしばらくの間、辛い生活となるだろうから、私と私の祖先が残した遺産を全て祥に相続するよう
手続きを行なって欲しい事、祥は相続を嫌がるだろうが、君の力で納得させて欲しい、
そしてこれからも祥の事を宜しく頼むと書かれていた。

沙夜子宛の手紙―沙夜子へ
琢磨の教え子だった時から数えると、もう六年。その後、私の秘書となってくれたおかげで、この2年間、
十分楽しい人生を送ることができたが、その楽しい日々も今日で終わりのようだ…
前から君の気持ちに気付いてはいたが、亡き妻と祥の事もあって、その気持ちに応えることが出来なかった事を詫びたい。
死を目の前に控えた遅すぎる告白だが…私も君を心から愛していると書かれていた。
沙夜子は手紙に添えられていた下水道の鍵を見つける。
上へと続く梯子のマンホールの蓋に付いている頑丈な鍵が付いていたが、その鍵を使い一行は上へと進む事ができた。

113 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/24(月) 20:07:58.88 ID:XpPbq6oH0
【第一章:~父の遺言~ 15】
祥「やった!ついに脱出できたぞ!」
地上へと脱出した一行は山神の手引きに感謝し厚く弔う事を誓う。
また、得体の知れない集団とどう立ち向かうかが今後の課題だ。
鬼瓦警部であれば一連の出来事を信じてくれるだろうか…
工場の爆発から一行は逃れる事ができた。
マンホールの出口は工場からそう遠くない路地裏へと繋がっていた。
四人は、路地裏を一気に駆け抜けると、転がり込むように車に乗り急発進させると、
後方で爆発が起こった。爆発は、閃光と轟音を発しつつ辺りに破壊を撒き散らす。
巨大な火柱は工場ばかりか、周囲の民家をも呑み込んでゆく…家屋は焼け落ち、逃げ惑う人々の悲鳴や怒号が響く。
その凄惨な光景の前に、祥達は為す術もなく、黙してその惨禍を傍観するだけだった。
野次馬と共に警察、消防、憲兵が騒ぎを聞きつけて集まってきた。

悪夢のような太平町から逃げるように車で脱出した祥達だが車中には重苦しい空気さえ漂っていた。
皆、事件の重大さと想像を超える異常さに、喋る気力さえ失っているようだった。
一片の会話もなく、誰もが終始無言のまま俯いている。
一行は草薙邸に辿り着くと屋敷の中へ入った。
祥は由貴を助け出す事ができたが琢磨が関わっていた秘密には何も迫る事が出来ず
工場は爆破され手懸かりを失い、周辺住民を巻き込んでしまった自分の無力さを感じる。
由貴は祥に一人で抱え込もうとするのではなく皆で解決していこうと励ます。

一行は草薙邸の応接間で今後について話し合う。
祥は由貴をしばらくはこの家に置いてあげたいと帯刀に相談する。渡英の件は取り止め、琢磨の死について真相を究明したい。
それが成し得るまでは日本にいる事にすると決意を改めた。
「私達よりも専門の精神科医に診てもらう方が記憶の回復も早いと思うわ。」
沙夜子は記憶喪失した由貴は病院で診てもらう方が良いと提案するが、由貴は病院だけは行きたくないと拒絶する。
それでは仕方がないと沙夜子はあきらめて、明日からも研究室にいるからよろしくねと伝え帰っていった。
祥は客間を由貴の部屋として割り当て家の説明をひと通り行う。
今日はとりあえず休んで、今後の事は明日考えよう。祥は一人、自室で眠ろうとした所にノックの音が聞こえる。
部屋を訪れたのは由貴だった。由貴は今まで一人でずっと居たから一人でいるのが恐い。
「今夜だけでいいから、一緒に居て…お願い。」
祥は戸惑いながらベットを由貴に譲り、自分は床の上に寝る事にした。
由貴は地下施設での捕らえられた生活がトラウマとなり苦しんでいた。
祥は僕に出来ることなら何でもしてあげると由貴を安心させて寝静まるまで見守っていた。
123 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:24:11.34 ID:qVi1HV7J0
【第二章:~見世物小屋の恐怖~ 1】
八月六日 午前七時 祥はもう少し寝過ごしたい思いを抑え起床する。
応接間へと足を運ぶと帯刀、由貴が居た。帯刀は帝都での生活の為、由貴を祥の妹として手続きを行ってくれていた。
祥は今日から再び琢磨の知己をくまなく当たってみようと思っている事を帯刀に伝える。
帯刀に留守番を頼み、出かけようとする祥に由貴もついてくると言う。

浅草区の仲見世(なかみせ)を通る二人。二人の前にピエロの呼び込みが目に入る。
「いらっしゃい、いらっしゃい。異国渡来の万国びっくり人間が集まってる、世にも奇妙な見世物だよ。」
万国びっくり博覧会の宣伝に由貴は興味を示す。面白そうなので二人は立ち寄る事にしたが、
ピエロは準備を行う為、夕方六時頃にもう一度来て欲しいと断られてしまう。

二人は諦めて別の場所を捜査する事にする。神田区を通ると祥は幼馴染の九条 静(くじょう しずか)と再会する。
静は用事があるため挨拶を交わすと過ぎ去ってしまう。
麻布区では鈴 麗華(りん れいか)を見かける。二人は話しかけた訳ではなく遠くから見つめるだけだった。
東洋人だけど日本人ではないみたいだというのが祥の感想で、何かを抱え込んでいるような雰囲気だというのが由貴の感想だった。
祥は帝国大学へ足を運び、琢磨の研究室に居る沙夜子を一行に加える。
警視庁・殺人課に入ると鬼瓦が待ち構えていた。
「…………聞いたぞ、祥。随分と危ない事をやらかしてくれたようだな…あれほど控えろと言ったのに…」
琢磨も相談してくれれば、この命に代えても死なせやしなかったものを…と心相を明かす鬼瓦。
祥は警部がそこまで琢磨の事を思っていてくれていたとは思っていなかった。
鬼瓦は由貴に対する捜索願いが過去出ていないか調べておく事を約束してもらい、一行に加えた。

午後6時になろうとしていた頃、見世物小屋の準備が整う時間になる事を思い出した祥達は浅草区の仲見世へと戻る。
「あれ?変だな、準備中の看板が出てるよ。」
祥が異変に気づいたその時、祥の後ろから突然馬のいななきが聞こえたかと思うと、
見世物小屋の隣の屋敷に停めてあった馬車の馬が興奮して暴走し始め祥達の方へと突進してくる。
祥は馬車に跳ね飛ばされ軽い怪我を負ってしまう。
「あらあら、ごめんあそばせ。」
馬車の中からヒルダ、本名はヒルデリカ・リヒテンシュタインと言う妖艶な女性が現れる。
見世物一座の座長を務めていると言う。美少年好きのヒルダは怪我を治す為、祥を一人自分の屋敷へと連れて行く。
祥を心配する由貴であったが、沙夜子にきっと大丈夫よと声をかけられ、
由貴と沙夜子は祥を信じて見世物を楽しませてもらう事にする。

祥が連れ去られたヒルダ邸は西洋風の美しい装飾が施された素晴らしい屋敷だ。
ヒルダは祥の怪我の手当を行う。妖艶に祥の傷口へカサーナという魔女狩りに使われた媚薬を塗りつける。
自分の事を魔女の数少ない生き残りの末裔で気に入った子を虜にしていると言う。
「坊やは私。あなたのガールフレンドはある人が御所望なのよ。」
薬の効果で祥は意識が朦朧としてその場で眠り込んでしまう。

124 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:26:25.32 ID:qVi1HV7J0
【第二章:~見世物小屋の恐怖~ 2】
一方、祥と別れた由貴達は見世物小屋で観劇することになった。
暗い通路をピエロに導かれる。劇場に入ると多くの観客の待つ大ホールが拡がっていた。
今日は特別に由貴達だけの貸切公演だという。ピエロが舞台へあがると見世物の説明を行う。
「まず最初は、驚天動地、仰天うけあい間違いなしの、びっくり残酷ショーで~す。
お客様の目の前で、見るも無残な血の雨を降らせてご覧に入れましょう。」
趣味の悪い説明を延々と続けるピエロに由貴は帰ると呟くとピエロは豹変し由貴へ話しかける。
「馬鹿め、まだ分からんのか。お前らは罠にはまったんだよ。」
ピエロは笑い出すとライフルを持った兵士達が現れ、由貴達は身動きを取ることができなかった。
「マインドブラストォ~!」
由貴達はピエロの放った魔法を受け床に倒れてしまう。ピエロは兵士達にVIPルームへと連れて行くよう指示を出す。

暗い部屋で目を覚ます由貴。見世物小屋の楽屋のようだ。
由貴は近くに倒れていた沙夜子と鬼瓦を起こしだし脱出をはかる。
奥の入口から外へ抜け出せそうではあるが、祥の行方が気になり探索を続ける事にした。
劇場倉庫の仕掛けを外し、梯子を降りて地下水路を奥へ進むと銃声と共に男の悲鳴が響く。
その先は体中に無数の傷をつけた兵士が倒れ死んでいた。兵士は魔法生物大典を所有していた。
魔法生物大典にはダーラの水で魔法植物を分解する事ができると書いてある。
奥へ進むと緑色の植物のような化け物、餓鬼玉に襲われるが、一行はこれを撃退する。
更に奥へ進むと上へと続く梯子があり、これを上ると先程とは違った別の部屋に出た。

一方ヒルダの寝室ではヒルダのベッドで寝ていた祥が目を覚ます。
部屋の椅子にはヒルダが座っていた。ヒルダは祥に施した魔法と薬が効いている事を確認し、祥を自分好みの下僕へと躾ける。
お茶を持ってくるように命令された祥は朦朧としながら部屋を出て行く。
祥は屋敷のキッチンの流し台からティーポットとポットを手にして、屋敷の奥の番兵に酒を差し出し眠らせると
隠し部屋を開ける。中には由貴達三人が居た。祥の顔を見た鬼瓦は祥の表情の異変に気づく。
祥は鬼瓦の事を知らないと呟く。
「儂じゃ鬼瓦じゃ!しっかりせんか!!」
鬼瓦の怒鳴り声に我に返った祥は、頭痛にうなされながらヒルダ様にお茶をお持ちしなければと再び朦朧とする。
とりあえず一行は行動を共に屋敷を探索する事にした。
バルコニーのゾンビを倒し、丸いテーブルからティーカップを手に入れる。
祥はティーポット、ポット、ティーカップを持ち、由貴達と一旦離れヒルダ待つ寝室へ入る。
「最後は紅茶缶ね。確かどこかの実験室にあったはずよ。鍵はこれね。」
祥はヒルダから実験室の鍵を受け取り寝室を出て再び由貴達と合流する。
実験室の鍵を使って第一実験室へ入ると足に根が人間のような者、「姿を似せし者」が襲い掛かる。
一行は魔法生物大典に書かれていた事を思い出し「姿を似せし者」にダーラの水をぶちまける。
「姿を似せし者」は一瞬で分解される。
化学実験を行う机から紅茶缶を見つける。

125 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:27:11.96 ID:qVi1HV7J0
【第二章:~見世物小屋の恐怖~ 3】
祥はティーセットを組み合わせ紅茶を作りその中に由貴達が屋敷内で拾った睡眠薬を入れる。
ヒルダの寝室には仮面の男とヒルダが話し合っていた。
「それで、籠の中の小鳥は、いつお渡し頂けるのですか?」
「さあ、どうしましょう。」
仮面の男はヒルダの気まぐれな態度に苛立ちを覚えていたが、ヒルダは指図される事を嫌っている。
仮面の男は今はヒルダと争うつもりは無いと身を引き何処かへ消えた。
それと入れ替わるように祥が一人ヒルダの寝室へ入る。
祥は睡眠薬の入った紅茶をヒルダへ差し出すと、ヒルダは紅茶を飲み干すと眠り伏せてしまう。
その瞬間、玄関の扉の封印が解かれたようだ。
祥が上手くやったのを見計らい由貴達も寝室へ入ってくる。由貴は倒れているヒルダから魅惑のナイフを盗み出す。

祥達は入口へ向かい扉を開けると何故か勝手に扉が閉まってしまう。
そこへ背後から仮面の男とヒルダが現れ祥へ傀儡の呪文を放つ。
自力で呪文の力を解くことはできないらしい。
白目をむきながら祥が由貴達に襲いかかってくる。
由貴はヒルダから盗んだ魅惑のナイフを使うとナイフの魔力が祥の精神と肉体を蝕んでゆき祥はその場へ倒れ込んでしまう。
「祥、お願い……眼をあけて……。」
泣き崩れる由貴。その姿を見かねてかヒルダが祥に回復魔法をかける。
「あれ?僕はいったい……。今まで何をしていたんだ?」
正気を取り戻した祥にヒルダは由貴に定められた運命の重さに耐えられるかと意味深な言葉を投げかける。
祥は由貴を救うと固い決心を誓うと、ヒルダは祥を自分のものにしたいという思いが改めて強くなったと呟く。
仮面の男がヒルダに心変わり、我々との約束を反故するつもりかと言い出すと、
ヒルダは約束は無かった事にしてあげるからさっさとどこへでも消えてちょうだい。
約束は、私に祥をくれる。代わりに、由貴を引き渡す内容だったけど、
現時点では何も貰っていなのに何で不公平な約束を履行する必要があると言うの?と言い返す。
「裏切りに対する我らの掟を知らぬとは言わせぬぞ。」
「もちろん知っていてよ。なんなら、今ここで相手してあげたってかまわないのよ!」
ヒルダの力を知っている仮面の男は渋々引き上げる事にした。
ヒルダは祥に戦えば恐らく自分は負けるが、傷つく事を恐れていた、
また目的の由貴が巻き込まれて死んでしまっては困るから今回は引き下がったのだと説明する。
体調の悪いヒルダは祥に付き添うのは明日以降にしてあげると言いふらつきながら去ってしまう。
由貴は祥を救い出す為、ヒルダは精神力を使い果たしてしまったのではないかと説明する。
ヒルダの事が嫌いだけど悪い人ではないと憎めない由貴。
本当は良い人なのになぜ悪ぶっているのだろうかと思う祥。
とにかく今日は帰ろう。祥達はヒルダ邸を後にした。

126 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:33:12.33 ID:qVi1HV7J0
【第三章 ~久遠~ 1】
八月七日 午前七時過ぎ 祥は自室で目覚めの良い朝を迎えた。
迎えに来た由貴と今日も一日がんばろうとお互い誓い合う。

麻布区で二人は中国人の女性である鈴 麗華に話しかけられる。彼女は自分が見つめられている事に気付いて気になったそうだ。
麗華は祥の眼を優しい眼をしている、行方不明になった自分の妹によく似ていると言う。
風水術を会得している麗華はこの辺りは怪しい気配がするのであまり近づかない方が良いと忠告する。
去ろうとする麗華に祥は名前を聞かせて欲しいと要望すると風水法百余派の宗家の鈴家の主「麗華」と答えてくれた。
祥達はヒルダ邸でヒルダを一行に加え捜査を続けた。

午後五時を過ぎ麻布区を訪れる一行は突然の悲鳴を聞く事になる。
祥達は悲鳴が聞こえた場所へ向かうと麗華の後ろ姿を見つけ後を追う。
日付が八月八日へと変わり時刻は0時を過ぎていた。
祥達は麗華が入ったと思われる研究所へ侵入する。鬼瓦はここは帝国陸軍の敷地だと言う。
「北区帝国陸軍研究所。確か生物学の研究施設だと聞いておる。」
ここでは五年前、憲兵隊の間で人体実験が行われているという情報が流れたものの陸軍省によって証拠を潰されたらしい。
不法侵入者になるが、このまま麗華を行かせる訳にもいかない。
鬼瓦は祥に慎重に行動するように忠告する。
一行は各部屋の扉の施錠を拾った鍵で開けながら次々探索を続ける。
一室の机から研究調書が見つかり読んでみると、大正五年十一月十日に
D生命因子による細胞結合により陸軍一個小隊にも勝る生物兵器を作り上げる事ができる
人体実験を行なっていた事、異邦人が犬嶋主任の補佐役に付いた事が書かれていた。
続けて二階へ上がり各部屋を探索すると日記帳とメモを見つけ読んでみた。
日記帳は犬嶋という人の研究日誌だった。
犬嶋は帝国大学で密かに進めていた生物因子Dの研究が陸軍省に認められ研究所長に任命されたらしい。
帝国は生物兵器を欲していた事や研究所を尋ねてきた科学者の異邦人が西洋の童話で出てくる妖術士のような
服装で知識は確かだった事や異邦人に自分の地位を奪われそうになった事、
生物因子Dが暴走して今にも襲われそうになっている事が書かれていた。
メモには大正六年八月に、憲兵隊の調査が予定されている。
全資料を本日七月末日までに地下研究施設へ運ぶ事。
運びきれないものがあれば陸軍省、碌元宗平少佐の指示に従うようにと書かれていた。
二階通路から一階通路へ降り、奥の物置の鉄板の錠を解錠すると下へ続く梯子を見つた。
梯子を降り地下通路を進む祥達の目の前には銃を構えた数十人もの兵士達が現れた。
後方の降りてきた梯子からも兵士が現れ包囲されると一行は頭を殴られ気絶。留置場へと運ばれる。

127 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:44:09.03 ID:qVi1HV7J0
【第三章 ~久遠~ 2】
牢獄の中、祥は眼を覚ますと目の前に知らない少女が居る事に気づく。
少女は喋れないが不思議な力で祥の頭の中へ話しかける事ができるようだ。
少女は幼い頃から使える事ができた不思議な力に目をつけられてここへさらわれて声帯を奪われたらしい。
少女名前は芳蘭(ほうらん)と言い、中国南京の出身で、風水法百余派の宗家の出、つまり華族の娘だという。
今から三年前、謎の男達により、中国から日本に連れてこられたようだ。
はじめは巫女として丁重に扱われていたが巫女の資格が無いとわかると
不思議な力を調べる為の実験が繰り返されるようになったらしい。
祥は由貴と同じような境遇の彼女に涙を流し、芳蘭を連れてみんなと麗華を探し脱出しようと心に誓う。
祥は芳蘭にこの施設について尋ねる。
芳蘭はここの留置場以外に祭壇のような場所があると答えると仮面の男が扉を開けて現れる。
「楽しそうですね、芳蘭。久しぶりですね、草薙祥君。」
「なぜ…なぜ、お前がここに!?」
ここの研究所は仮面の男のアジトとして使っているそうだ。
仮面の男はどうやってこの場所を知ったのかと感心する。
仮面の男は芳蘭の為にパーティを用意したと言うと、嫌がる芳蘭は周りに衝撃波を発して自身は気を失ってしまう。
驚く祥に仮面の男は魔導の力だと教える。
仮面の男は芳蘭を抱きかかえ兵士に引き渡す。
「芳蘭は巫女の資質があっても、我々が必要とする魂はこの娘には宿っていなかった。
芳蘭は祭壇で行う今回のパーティの主賓、祭壇に眠りし我ら魔道士の守護獣、
大いなる獣復活の為のね。それではごきげんよう。」
仮面の男は去ってから祥は牢獄から出る為、鉄格子を壊そうとする。
鉄格子は壊れそうにないが、この音で見張りの兵士が来るはずだ。その時、うまく鍵を盗むしかない。
やがて兵士がやってきた。祥は鍵を盗もうと手を伸ばすが手が宙を描いてしまう。
兵士は祥を脱獄未遂と言い射殺する為、銃を構える。死を覚悟した祥。
銃声が響くと祥には当たらず、背後の壁にめり込んだ事がわかった。
兵士と祥の間に割って入る人の姿があった。素手で兵士を気絶させるとこちらを振り返る。その人は鈴麗華だった。
麗華は祥の鉄格子の鍵を開け解放する。
祥は麗華の行動が気になった事、魔道士達のアジトだと知ったからには捜査が必要だと心中を明かす。
魔道士達の事を知っていそうな麗華に祥は今までの出来事を包み隠さず話した。
脱出を促す麗華に祥は芳蘭を助けるまで出ていく訳には行かないと答える。
驚く麗華、芳蘭は自分の妹で自分が来た理由は魔道士にさらわれた妹を捜し出す為に来たと説明する。
祥は仮面の男に祭壇へ連れられたと教えると麗華は、この研究所はもうじき壊滅から早く逃げ出すようにと言葉を返す。
獣を封じている帝都地下の大地の気流、地脈の力が崩壊されれば研究所は壊滅する。
それでも死を覚悟してついて行くという祥に麗華は理解し協力を依頼する。
祭壇への扉を開ける方法を見つけ、捕らわれた子供を助けて欲しい。麗華はそういうと部屋から出ていった。
129 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 20:57:30.89 ID:qVi1HV7J0
【第三章 ~久遠~ 3】
麗華と入れ違うように仲間達が入ってきた。鬼瓦達も麗華に助けられたそうだ。
鬼瓦も麗華の事を知っていて以前妹の捜索願いを受けたことがあるらしい。
祥達は地下牢獄から十数人もの子供達救い出し、地下通路にて麗華と再会する。
魔道士が張った封印結界は解いたが、祭壇への扉の仕組みはまだ解除できていない。鍵が合わなかったそうだ。
祥はその鍵で開く部屋に何かあるかもしれないと思い、麗華から鍵を受け取り別室を探索する事にした。
梯子で一階に上り二階通路の奥の扉を受け取った鍵で解錠して中へ。
部屋の中の寝台には白布で覆い被され、上から頑丈な紐で括り付けられたものがあった。
それを調べようと紐を解くと白布を引き裂き化け物が姿を現した!
襲い掛かってきた姿を似せし者を倒すと化け物は溶け崩れる。
化け物がいた寝台は重さが無くなり何かの装置が作動したようだ。

祥達が再び地下に戻ると先ほどまで居た麗華が居ない、一人で先へ進んだのだろうか?
奥へ進むと祭壇が現れた。祭壇には麗華と仮面の男と魔道士達に囲まれて巨大なま繭に縛り付けられている芳蘭がいた。
仮面の男は麗華の事を知っているようだ。
「我々の拠点である聖域を次々と潰して回っている、退魔風水術士…」
少しでも魔道士達から麗華への注意をそらす為、対峙している二人に祥は入り込む。
麗華は封魔真言符と遁甲符を使い魔道士達を混乱させる。
祥は襲いかかってきた魔導士を倒すと、麗華隙を突いて芳蘭と接触する。
麗華はそこで芳蘭の声が出なくなった事に気づく。
仮面の男「リカード・シュトラウス!今すぐ大いなる獣を目覚めさせろ!」
リカード「し、しかし…そのような事をなさいますと!」
どっちにしろ失敗と悟った仮面の男は未完成の複製品でもあの娘の中にいる獣を覚醒させて
奴らを葬り研究所を放棄するのだと方針を示した。
リカードは呪文を唱えると芳蘭の身体が変貌し巨大な化け物へと変わる。
だが、大いなる獣は祥達に襲いかかるのではなく、近くにいた魔道士達に大きな鉤爪を振り下ろし引きちぎってゆく。
仮面の男「くっ……やはり生成期間が短すぎたか!まぁいい、そいつはお前達にくれてやる。せいぜい楽しむのだな!」
仮面の男はその場から姿を消した。
襲うべき対象者を失った大いなる獣は、祥達の方へ襲い掛かってくる!!
祥達は襲いかかる大いなる獣に攻撃する訳にはいかず、防御し続けた。
麗華は芳蘭の名前を呟き、自我を失っていた。
戦いの中、芳蘭の心の声が聞こえる。
(おねえ…ちゃん…たすけ…て…)
芳蘭はこの身体から抜けだせれないから殺して欲しいと麗華へ語りかける。
「わかったわ芳蘭…今…助けてあげる。だから…もう……苦しまないで…」
麗華は五業封神を使うので祥に四、五分時間を稼いでほしいと言う。

130 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:01:07.58 ID:qVi1HV7J0
【第三章 ~久遠~ 4】
麗華は芳蘭の姿を見ては術を使う事ができない葛藤から断ち切るために自分の目を指で潰してしまう。
祥達が時間を稼ぐと麗華は術を放ち芳蘭は人の姿へと戻る。
「芳蘭…ごめんなさい…助けて……あげられなくて…ごめんなさい…」
(ううん…ありがとう…おねえちゃん…)
何度も謝る麗華に芳蘭は苦しみから解放してくれた姉に感謝を伝える。
芳蘭は今まで自分の為に辛い思いをしてきたのだろうから、これからは自分自身の為に生きて欲しいと伝える。
(今度は私が…おねえちゃんをずっと…見守ってるから…死んじゃ…駄目だよ……やくそく…よ)
芳蘭は天に召されてしまう。
その時、地震のような揺れが発生する。天井にヒビが入る。
「麗華さん!早く逃げましょう!」
「私は…もう何処にも行かない。芳蘭と共に…ここに残る。」
戦う事に疲れたと言う麗華。必死に説得を繰り返す祥の言葉は届かない。
そこへヒルダが歩み寄り麗華の頬を叩く。
「みっともないわね。あなたはそれでも芳蘭の姉なの?」

ヒルダは麗華を罵ると麗華は怒りを表す。
「そうやって私のような魔術士をあなたの大切な妹を奪った仇だと思って生きなさい、
あなたにはまだやるべきことがある、奴らへの報復が、今以上多くの子供達を犠牲にしてしまうわよ。」
「今回は礼を言うが、もし奴らの仲間に戻ったら、貴様から息の根を止めてやる!」
一行は、芳蘭の亡骸を抱え、急いで研究所を後にした…

八月某日―麻布区で中規模の地震が観測された。
地震の影響で十数世帯が倒壊し、陸軍省管轄であった北区帝国軍研究所もまた火災に見舞われた。
新聞の発表では、地震により研究所内の薬品に引火と書かれていたが、真相は僕達だけしか知らない。
翌日、僕達は麗華さんと共に芳蘭の葬儀を行なった。
そして葬儀を終えた僕達は今、青山墓地に来ている。
麗華は芳蘭の遺骨を中国へ帰さないそうだ。
やるべき事を成し遂げるまではこの墓におさめておきたいと言う。
祥と麗華はお互い今までの礼を述べる。
祥はこれからの予定を尋ね、もし良ければ自分の家へと誘うが、麗華は今までも一人でやってきたので心配は不要だと断る。
麗華はこれからも単独で行動しようと思っているが、
もし自分の力が必要になったら日比谷公園に来て欲しいと祥への協力を誓った。

131 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:09:42.61 ID:qVi1HV7J0
【第四章 ~禁断のアトリエ~ 1】
八月九日 午前七時 祥と由貴は再び情報収集の為、自宅を離れる。
祥は警視庁で鬼瓦、ヒルダ邸でヒルダを仲間に加える。
有力な情報を掴めないまま一日が終わろうとしていた。

祥達は草薙邸へ戻ると電話がかかってくる。
九条静の父、九条忠重と名乗る男からだ。琢磨とは旧知の仲だったらしい。
忠重は娘の静がそちらにお邪魔していないか確認して欲しいと連絡してきたようだ。
「青年画家のアトリエに行くと言って家を出たまま戻らない。心当たりのある人の所へ電話を掛けてるが、皆知らない様子。
もしかしたら幼馴染の君のもとへと思ってたんだが…」
電話を終えた祥は静の事が心配になり、帯刀に忠重の住所を聞き出す。
祥達は早速、忠重の家のある神田区の神保町へと向かう。
祥と同行していた鬼瓦警部も静の事で元々警視総監の忠重に呼ばれていたらしい。
青年画家のアトリエは小石川区の植物園の側にある。
帰りの遅い静が誘拐されたのではと心配し鬼瓦を呼んでいたという事だった。

祥達も鬼瓦に同行し目的のアトリエがある小石川区の植物園へと向かった。
レンガ造りの洋館には木彫の表札に「東雲」(シノノメ)という文字が刻まれている。
直接聞いてみようと一行は扉を開け中に入る。辺りは絵の具特有の匂いが充満していた。
「ごめん下さい!もし、どなたかいらっしゃいませんか?」
大きな声を出してしまった祥は自分の声の大きさに驚くが、何処からも返事は返ってこなかった。
ほどなくして執事と思わしき初老の男性が現れた。
祥は執事に東雲画伯に用事があると伝える。しばらくして主人の確認を取った執事が現れる。
「こちらへどうぞ。旦那様がお会いになられるそうです。」

祥はアトリエに招かれ東雲画伯と出会う。
辺りの絵画、中でも女性の肖像画が異彩を放っており、つい目を奪われてしまう。
巷でも『まるでモデルの魂が封じ込められているようだ』と大変評判の肖像画だ。
東雲「私が当家の主人東雲達也です。」
祥「夜分遅くにお許し下さい。私は草薙祥といいます。行方不明の九条静さんの件でお聞きしたい事が……」
東雲は静は随分前にお帰りになりましたと言うが、何か知っているのではと祥は食いついて話がこじれた。
そこへ扉が開き何かあったのかと東雲の母親、東雲夫人が入ってくる。
画伯の年齢から推測すると、すでに齢五、六十に達しているはずだったが、
驚くほど若く美しく見える。20代といっても十分通用する容姿だ。
屋敷中に香る薔薇の匂いは彼女の趣味によるものだと推測できた。
達也は母に経緯を説明すると、東雲夫人は失礼ですがお帰りくださいと祥を説得し、
このまま居続けるのであれば知り合いの憲兵を呼ぶと半ば強引に追い出す。

132 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:16:29.29 ID:qVi1HV7J0
【第四章 ~禁断のアトリエ~ 2】
祥は玄関で待っていた鬼瓦達と合流する。捜査令状の無い鬼瓦もこの状況では入り込む事はできないと困り果てていた。
このまま帰るかと問う鬼瓦に祥は返って東雲家の人々への疑惑が深まったと答える。
「あの態度、対応はおかしい何か隠している。お静ちゃんの身に何かがあってからでは遅すぎる。
庭の生け垣から無理矢理、屋敷に入り込む」
強気の祥に鬼瓦も渋々ついて行く事にした。

八月九日  午後八時前 中庭入口
屋敷と中庭をつなぐ扉の側には二階のテラスへと繋がる階段があった。
階段を上るとテラスに鍵束が落ちていたので拾い、階段を降りて鍵束を使い屋敷へ潜入する。
一方東雲達、この辺りで停電がよく起きていると心配する東雲夫人。
執事はこの屋敷は中庭から電気を引いているので大丈夫だと夫人を安心させる。
修理道具は倉庫にあり何か起きたら執事が直す事になっている。
祥達は浴室に入り、金属製の洗面器には絵画用の油が残っていた。
棚にあったガラス瓶で回収し、洗面台からは棚にあったガラス瓶で水を手に入れる。
厨房の流し台からは解毒薬を入手する。
アトリエに入ると東雲達也が一人だけ部屋の中に居た。

一方屋敷の何処かでは東雲夫人が捕らわれた少女の生き血を啜る行為を楽しむ為、少女に語りかけていた。
「美しい黒髪、白い肌、真っ赤な血、全てが自分のものになって永遠に生き続ける」
少女は恐怖に怯え逃げ出そうとすると東雲夫人は少女に手を掛ける。
悲鳴が響き渡り、東雲夫人は新鮮な血に満足する。
東雲夫人の前に仮面の男が現れる。他人の生き血から永遠の若さを手に入れる方法を授けたのはこの仮面の男である。
仮面の男はその見返りとして若い娘を東雲夫人から斡旋してもらう約束を交わしていた。
仮面の男は我が神への生贄の数が足りない。東雲夫人が地下に隠している九条静であれば若く血統も申し分ない。
だが、東雲夫人も九条静を気に入っている為、話は膠着する。
「今日の所は引き下がってやろう。だが忘れるな、我が神の加護がなければ、
貴様とて単なる老いさらばえた婆だという事を!それから気をつけるがいい。貴様の身近を嗅ぎ回っている奴らがいるぞ?」
仮面の男は脅しの言葉をかけて消え去るが、東雲夫人は捨て台詞だと余裕を見せていた。

祥達はアトリエに居た東雲達也に話しかける。達也は今度は強盗の真似事かと再び追い返す。
祥は立ち去ろうとした時、達也は絵の具が無くなったと呟く。
さっと絵の具と水を差し出す祥達に達也はキャンバスに描いた絵の出来に酔いしれて、祥にも見て欲しいと話しかけてきた。
キャンバスを見た祥はやはりこの肖像画は九条静だと確信する。
再び達也へ九条静さんについて何か知っているはずだと迫る祥。
「この少女は数多いモデルの一人にすぎない、一々覚えていない。
彼女は最高のモデルで、まさに私が描こうとしている可憐で純真無垢な少女のイメージそのままの女性
私だって彼女の事は心配している!」
心相を明かした達也は祥に銀の鍵を渡して屋敷内を好きに調べればいい、
母親には見つからないように気をつける事だと祥達を陰ながら協力した。

133 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:23:30.71 ID:qVi1HV7J0
【第四章 ~禁断のアトリエ~ 3】
祥達は屋敷内の各部屋より扉を開ける鍵や特製ドライバー、万年筆、のこぎりを手に入れる。
万年筆にインクを補充し、中庭ではのこぎりで電線を切断して停電を引き起こす。
東雲家の3人は停電に気づくと、執事は修繕の為に倉庫の鍵をあける。
執事は道具を持って現場へ移動するのを確認し、祥達は入れ替わる形で倉庫の中へ。
大きな西洋タンスから防毒マスク、スコップを手に入れる。スコップには土がついていた。
執事は停電の原因が断線だと気づくと修繕不可だと判断し東雲夫人へ報告する。
東雲婦人は執事に憲兵を呼ぶように指示を出す。

祥達は中庭でスコップを使い何も植えられていない花壇を掘り返す。
まだ新しい死体、ボロボロに崩れたかなり昔の死体様々な死体が無数埋められている事がわかった。
そのうち、一体の死体がゾンビとして襲い掛かるがこれを撃退する。
ゾンビよりトークンと呼ばれるコインのようなものを拾う。
祥達は再度、屋敷に入り展示場に入り、飾られている風景画を特製ドライバーで外すと
後ろの壁に3センチ程のスリットにトークンを入れると物音を立てて暖炉に秘密の通路が現れた。

通路の奥は秘密の浴室でありアンモニア臭と血の匂いで充満していた。
恐らくここで連れ去られた人達が餌食になっていたのであろう。突然襲いかかった餓鬼玉を倒し辺りを探索する。
薬桶からガラス瓶でアンモニア水を拾う。
鉄の処女と呼ばれる鋼鉄製の巨大な箱を壊すと無数の血で染まった針が現れる。内部よりワイヤーカッターを手に入れる。
回らない鉄製のハンドルに油入り瓶で油を差すと開かなかった冷凍貯蔵庫が開いた。
冷凍貯蔵庫には怪しい葉っぱと死体が入っていた。
怪しい葉っぱを拾うと死体はゾンビへと変化し襲い掛かってくる。
ソンビを撃退した一行は二階へ移動。
二階の寝室を覗くと東雲夫人が居る事が確認できた。
一行は怪しい葉っぱを香炉に詰め込みドアの隙間から煙を炊き、催眠ガスを発生させて東雲夫人を眠らせた。
防毒マスクを身につけた祥は単独で部屋に入り、西洋風の鏡台から地下室の鍵を奪った。

一方玄関では陸軍の氷室京一郎が複数の兵士を連れて現れた。
氷室は執事に暴漢一味の特徴を聞く。
執事は恐らく夕方に訪れた『草薙祥』と名乗る少年で、目的は人探しではないかと推測していると言う。
草薙祥の名前に氷室は驚き、執事は疑いの目で氷室を見るが、
氷室は相手が知り合いだとしても法を犯せし者の処罰に手心はないと執事を安心させる。

134 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:30:03.66 ID:qVi1HV7J0
【第四章 ~禁断のアトリエ~ 4】
祥達は一階倉庫に戻り、地下室の鍵を使い地下へ降りて地下水路を進む。
扉には止め板が2枚打ち付けられて更にワイヤーが貼られていた。
止め板を壊し、ワイヤーカッターでワイヤーを切って扉の中へ入る。

扉の中の独房でベット上に男の死体と幽霊らしきものが見えた。
ベット上に男の死体は白紙の日記帳を持っていた。
明かりを消すと幽霊らしき青白く光る男の姿が見える。
幽霊は何かを訴えたいような表情だが、その幽霊は言葉を発する事はできないようだ。
祥達は機転を利かせてインクを補充した万年筆と白紙の日記帳を幽霊に渡す。
幽霊は取り付かれたようにメッセージを書き込んでいった。
この幽霊の名は東雲英雄子爵で、東雲達也の父親であり、東雲政子の夫であった男。
屋敷の主だった東雲英雄は妻、政子を20年近くも昔に娶った。
彼女は公爵家出身で昔から美貌に異常な執念を持っていた。
私生活はいつ頃からか執事六郎と大勢のメイド達が行うようになった。
メイド達が相次いで失踪し、不快な異臭、真夜中に悲鳴が聞こえる日々が続き、
英雄は妻の後を追って、暖炉裏に隠された部屋で数々の血肉や拷問道具、犠牲者達の屍骸を見てしまい、
妻に脅え暗い牢獄でじっと震えているしかなかった。すでに息子も妻の手の内にあるのかもしれない……
この地下にはもう一つ牢獄があり、そこに一人の少女が捕らえられている。
厳重な扉だが、私の最期の力で鍵を開けよう。どうか助けだしてやってくれ。
そして1枚の呪符を渡す。これで魔物と化した妻の命を断ち切れる事ができるかもしれない。
身勝手な願いだがどうか妻を楽にしてやってくれ。私は今でも妻を心から愛しているのだ……

日記帳を読み終えると東雲英雄から封印の護符を受け取った。
祥達は東雲英雄の独房から出て、もう一つの独房へ向かった。
独房の中には静が気絶して倒れていた。祥はアンモニア瓶を静に使い目覚めさせた。
気が付いた静は捕らえられた時の記憶がフラッシュバックし錯乱してしまう。また体内に毒が回っているようだ。
暴れる静を押さえつけ、強引に口の中に解毒剤を注ぎ込むと解毒が効いたのか、静は正気を取り戻し祥を認識できた。
これまでの出来事に恐怖と安堵を交差する静は涙を流す。

一方、寝室では東雲夫人が眠りから目を覚ます。
同時に仮面の男が現れる。
「どうやら、してやられたようだな。」
逃げられるぞと急かす仮面の男に東雲の母は言われなくても分かっていると返答し祥達の元へ走り出した。

135 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/26(水) 21:37:16.11 ID:qVi1HV7J0
【第四章 ~禁断のアトリエ~ 5】
祥達は地下水路から梯子を登り倉庫へと戻ると目の前に達也が居た。
「よかった……。無事だったのか……。」
静の姿を見た達也に対して、祥は何人もの若い女性を犠牲にしてきた東雲夫人と達也の事が許せなかった。
達也は母親のいいなりになっていた。静にはそれがわかっていたようだ。
達也と静はお互い惹かれ合ったが、達也は一連の犯行をただ見ているしかできなかった。
そこへ東雲夫人が現れる。
自分の事をバケモノ扱いした夫と同じように見るのかと逆上した東雲夫人は達也をナイフで突き刺す。
達也は床へ倒れ、東雲夫人は祥達に襲い掛かる。
祥は封印の御符を東雲夫人に叩きつけた!
「そ、それはぁ……馬鹿な!あの人は私が殺した筈!」
一方、一階通路では仮面の男がまずい雲行きになったと呟き兵士達共々撤収していった。

ナイフに刺されただけの達也は命に別条はなかったが、東雲夫人は若さと美貌を支えていた邪悪な魔力が消滅した為、
絶命し亡骸はたちまち干からびて風化していった。
その直後、屋敷中から爆発が発生する。執事が一行の元へ駆けつける。
「若旦那様、皆様方。急いで、お逃げなされ!」
執事の六郎が屋敷中にガソリンを撒き火をつけたと言う。
「奥様の悪魔の諸行、旦那様の呪詛、殺されたもののうらみつらみ全てを燃やし灰にしてしまうのが一番良い。」
執事は達也に今までの行いを謝罪し、自分も同罪である為、一緒に地獄に堕ちると打ち明けた。
達也も執事と同じ考えであり死を覚悟していた。静と祥は達也を説得するが、達也の意志は固かった。
崩れかけた屋敷に時間は残っていない。一行は渋々走り去り屋敷を後にする。

屋敷を出た時、静は祥に折角帰国したのに何で遊びに来てくれないのかと問いかけた。
祥は詳しい事は説明できないけど、危険な事件に巻き込ませたくなかったと答える。
もうすっかり危険な事件に巻き込まれていると笑う静。
静は達也と自分はいつまでも親のいいなりで自分の殻に閉じこもってしまっていた、
これからは勇気を出して自分の道を歩んでゆくと決意した。

九条邸で静は父と再開する。
「心配掛けて、ごめんなさい……」
「いいんだ、帰ってきてさえくれれば……」
静の父は祥に礼を述べ、何でもするし欲しい物ならなんでも差し上げようと言うが、
祥は幼馴染として当然の事をしたまでと答える。
別れ際に静は、祥にお礼として生命の水晶球※を渡す。 ※ゲーム上探索等で役立つアイテム

 


137 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:13:13.36 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 1】
八月十日~八月十二日
警視庁・殺人課や帝日新聞社で聞きこみを行うが、特に有用な情報は掴めず、本日の捜査は終了
八月十三日 午前七時
警視庁・殺人課や帝日新聞社で聞きこみを行うが特に有用な情報は掴めず、時間は午後五時を過ぎた。
由貴は疲れが出てしまったと祥に打ち明けると、祥はゆっくり家で休もうと提案し帰宅する。
ぐっすり寝ついている由貴を見て安心した祥も自分の部屋で早めの就寝を取る事にする。

八月十四日 午前八時前 まだ眠たい祥を由貴が起こす。
祥は由貴を家で休ますべきか考えたが、由貴も出かけたいと言うので同行してもらう事にした。
今日は雨降りのようだ。とりあえず永田町を歩く二人。由貴は浅草十二階 凌雲閣に行きたいと言ってきた。
行き先を決めていなかった祥は了承し、二人は凌雲閣へ向かった。

由貴は途中でヤクザ風の男に身体をぶつけられてしまう。
男は骨を折ってしまったと言いがかりをつけてきた。
祥はぶつかっただけで骨が折れるものかと間に入るが、ヤクザ風の男に殴り飛ばされてしまう。
ヤクザ風の男は由貴を連れ去ろうとする時、陸軍の氷室京一郎が現れてヤクザ風の男を気絶させる。
氷室は負傷した祥を帝大附属病院に連れて治療を受けさせる。
治療を終えた祥は氷室と話し込んでいると偶然沙夜子が現れる。
それと入れ替わるように氷室は公務の為、病院から出ていった。
沙夜子は病院に居る親友に会っていたそうだ。用件を済ませた沙夜子も去ってゆく。
ろくな事が起きていない祥は散歩でもしたい気分だった。

治療を終えた祥と由貴は病院を出て帝都東京をうろついた。
午後一時半を過ぎた時、由貴は急に体調が悪くなったと祥へ訴える。
頭が割れそうだと言ってすごい熱を発している。
祥は意識のない由貴を抱え自宅へと戻った。由貴の顔は血の気が引いて土色だった。

祥は帯刀に医者を呼んでもらい寝室へ由貴を運んだ。
赤坂赤十字病院から医者が往診に駆けつけてくれた。
「看護が必要であるが命に別条はない。ただ疲れ方が尋常ではない、
疲労が溜まりすぎて高熱を発したと思われる、ゆっくり休ませ栄養を取るように。」
祥と帯刀は由貴の安静を考え外出は控えた。祥は早い就寝につく事にした。

138 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:15:24.64 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 2】
八月十五日 午前0時 祥はどこからともなく聞こえるすすり泣く声に目を覚ます。
応接室に出ると誰もいないし帯刀の所から声は聞こえない。
由貴の部屋へ入ると由貴が床下に座り込みすすり泣いていた。
由貴はすごく怖い夢を見た、何人もの人が私を殺す夢だったと言う。
大丈夫だよと励ます祥は由貴の体が大量の汗で冷えきっている事に気づく。
風呂を沸かすから服を着替えていた方が良い。
祥は風呂を沸かすと由貴について一人考えこんでいた。
「服が雨の中を歩いていたように濡れていた。間違いなく由貴の身に何かが起きている。
多分、由貴自身も気がついていないんだ。」
何をブツブツ言っているの?と祥の様子を見て話しかける由貴。風呂で全身の疲れが取れたと言う。
二人は安心してそれぞれ眠る事にした。

八月十五日 午前七時過ぎ
起床した祥は応接室へ向かうと沙夜子から電話が入る。
琢磨が持っていた壷の事がわかったから研究室へ来て欲しいという内容だった。
祥は大学へ向かう事を由貴と帯刀に伝えると由貴も一緒に行きたいと言い出す。
祥は由貴は疲れが溜まっているから家で休んでいて欲しいと説得すると由貴も渋々了承する。
祥は帯刀に身の回りの世話を頼み帝国大学へ向かう。

大学前で偶然ヒルダと出会った祥は半ば強引に同行する事になった。
研究所では沙夜子が待っていた。沙夜子は一枚のメモを祥へ渡す。分析内容が書かれたメモだ。
「この壷は、チベットのラサ記録にある「彷徨える魂の祈り壷」と言うらしいわ。
信じられないことに、紀元前から存在しているものみたいね。」
更に壷に書かれている文字は今まで解き明かされた文明に何れも該当しないと言う。
その時、ヒルダが口を開く。
「この文字はエルランカ文字だと思う」
イースター島近くで発見された古代ポリネシア語を基とされる象形文字に類似するもの
ドイツの考古学会で発見したもので、軍隊がこれに関するものを全て持っていったらしい。
ヒルダはこの情報を盗んで知ったそうだ。
この壷に書かれている文字は「魂を喰らいて、我が仇なすものを封じん」という意味が書かれているそうだ。
祭儀用か祈願用で使われていたと推測される。
祥は引き続き大学で分析を依頼する。
沙夜子はヒルダにエルランカ文字とその翻訳を教わる事を約束してもらった。

祥は眠りが浅かった為、一度帰宅する事にすると、ヒルダは用事があると言い、去ってゆく。
応接間では由貴と帯刀が祥を待っていた。
由貴は祥がそばに居ないと安心して寝れないと言う。
祥は由貴を安心させ眠りにつかせて、帯刀に大学での分析に関する情報を伝えた。
その後、祥も自室へ入り眠りについた。

139 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:17:38.88 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 3】
早めに眠りについた祥は夜中に目覚めてしまいと応接間で帯刀と出会う。時間は23時40分だと言う。
そこへ玄関よりノックの音が聞こえる。
帯刀に案内されてやってきたのは氷室京一郎だった。
この辺りに凶悪な連続殺人事件が発生しているそうだ。
外出は明日の七時まで控えるように厳戒令が敷かれているので、
出歩いた場合、射殺される恐れがると注意を促し氷室は去ってゆく。

祥は帯刀に今日はもう休んでよと伝え自分の部屋に入る。
つい先程まで眠っていた祥はすぐには眠れないので本を読み出す。
読み始めてしばらくした後、帯刀が血相を変えて祥の部屋に入ってきた。
屋敷の中に由貴の姿が見当たらない。
てっきり寝ているものだとばかり思っていた祥は帯刀に留守番を頼み外へ出た。

つい先程まで由貴が寝ているのを帯刀が確認していたのだからそう遠くへは行っていないはずだ。
乃木坂から青山一丁目へ。道を通り過ぎようとした時に女性の悲鳴が聞こえる。
悲鳴が聞こえた建物へ向かうと殺人犯に襲われたと思われる血を流した女性の死体が横たわっていた。
殺人犯が近くにいる。祥は背後から襲われるような感覚に気づき、身を退けて振り返る。
目の前には焼けただれた皮膚を持つ血に染まったような全身真っ赤な老婆のような女性が立っていた。
祥は何故かこの人物を由貴と確信していた。
姿が変わっても由貴を間違えるはずがない。何らかの力が原因で姿が変わってしまったんだと。
そんな祥の思いとは裏腹に、祥は由貴に首を締め上げられてしまう。
祥は死を覚悟し、由貴を守れなかった事を謝り、好きだったと涙を流す。
その直後、由貴は祥を空に放り出し、のたうち回ってもがき苦しみだす。
みるみるうちに、由貴の顔が若々しい瑞々しさを取り戻してゆく。
元の姿に戻った由貴は祥に怖い、助けてと呟き意識を失う。

そこへ仮面の男が姿を現す。
「ちぃっ!あと少しというところで…」
祥は仮面の男に由貴に何をしたのか問うが、仮面の男は何もしていない、むしろ何かしたのは君だと答える。
「これでこそ、この娘を君に預けておいた甲斐があったというものだ!
その娘には我らの主となるべき方が封印されているのだ。まあ、人間ごときが知る必要はないがね。」
仮面の瞳が怪しく光、掌から衝撃波を放つ。苦しまずに殺してあげようと迫る仮面の男。
その直後、仮面の男に火炎瓶が投げ込まれる。
帯刀「坊ちゃん今のうちです。由貴様と一緒に!」
祥は由貴を抱え帯刀と一緒にその場を逃げてゆく。
仮面の男は思わぬ伏兵に驚き、由貴をもうしばらく預けておく事にすると言い残し消え去る。

140 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:20:23.46 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 4】
家に帰り由貴を応接間の長椅子休ませる祥。
由貴は全身返り血で汚れていたので、祥は血を少しずつ拭っていた。その時、由貴が目を覚ます。
多分由貴は自室で寝た時から後の記憶はないのだろうと祥は思っていたが、由貴には断片的に記憶が残っていた。
「祥…私…あなたを殺そうとしたのよね?…それだけじゃない。
私…何人もの人を殺したんでしょ…何人も…何人も…」
祥は由貴に悪い夢を見ただけだと安心させようとするが由貴は夢じゃなかったと言い返す。
「そうよ!私さえ…居なかったら…」
由貴は祥の腕を振り払い、家を飛び出してしまった。
祥はすぐさま追いかけ由貴の腕を捕まえる。
私なんか死んでしまったらいいと言う由貴に祥は頬を強くはたき、強く抱きしめた。
「僕が由貴を守ってみせるから。僕を信じて…信じてくれるよね。」
由貴は落ち着きを取り戻し、二人は家に帰った。

由貴の部屋に戻った二人。
由貴は眠ってしまうともう一人の自分に身体を支配されてしまいそうでとても怖いから一人にしないでと言う。
由貴は祥に同情してくれてるだけかと問うが、祥は生涯を賭けて由貴を守る、君を一人にはしないよと答える。
祥は一晩中、由貴に付きそう事にした。

八月十六日 七時過ぎ
応接間では帯刀が昨夜の事件について、事情聴取の協力依頼の電話が警視庁よりあった事を伝える。
祥は帯刀に由貴についてどうすべきか相談すると沙夜子に相談するのが良いのではないか助言を貰う。

祥は帯刀に留守番を任せ帝国大学へ向かう。祥はこれまでの出来事を沙夜子に全て話した。
沙夜子は多分、夢遊病に似た症状だから精神科医の診察を受けるべきだと助言する。
「帝大病院に深層心理学を専門としている知り合いの精神科医が居るんだけど、一度診てもらったらどうかしら?」
沙夜子は成滝という医者に話を通しておくから由貴と一緒に帝大病院へ行って欲しいと言う。
また、話は変わるけど、琢磨の書類から地図のようなものが出てきたと祥へ見せる。
祥は自分では分からないだろうから麻生教授に鑑識して欲しいと答える。
祥は改めて沙夜子に礼を述べ、警視庁へ向かう。

警視庁では鬼瓦が待っていた。
「殺人事件の重要参考人として少し話を聞かせてくれ。」
鬼瓦は昨夜の一連の事件について、何も知っていないと思って証言して欲しい。証言内容は調書として残ると祥に伝える。
祥は正直に答えたいが、由貴が容疑者になってしまうかもしれないと悩んだ末、鬼瓦を信じて正直に全てを話した。
証言を終えた後、今日は帰って良いと言われ、不安を感じつつ祥は帰宅する。

帰宅した祥は草薙邸・応接間で由貴に精神科の医師に診断してもらう事を勧めた。
由貴は精神科に対して不安に感じながらも祥を信じて診断してもらう事にした。
祥と由貴は帝大附属病院の精神病棟へ足を運ぶ。
受付でやっぱり帰ろうと言い出す由貴の元へ沙夜子が現れる。
今、精神科の成滝先生に話をしてきたばかりだと言う。
祥は沙夜子に嫌がる由貴を説得してもらい、一行は精神病棟へ足を運ぶ。

141 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:24:12.05 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 5】
由貴は成滝医師へ説明を行うと成滝医師は精神状態の分析をしてみるので少し時間を欲しいと言う。
しばらく時間が経過した後、成滝医師は祥を自分の部屋に呼ぶ。
成滝医師の部屋で成滝医師は由貴さんにはしばらく入院していただきたいと祥へ事態を説明する。
「危険という訳ではないが、二重人格の可能性がある、由貴の場合は自分の意志ではない波長が増幅してしまっている。
過去このような患者は多くの場合、精神障害や精神崩壊を引き起こし廃人同然になってしまった事があり、
精神治療に専念する為には入院が必要だ。」
祥は納得し入院の手続きをお願いする。
外に出た祥は帰宅し少し休むことにした。

八月十七日 午前七時過ぎ
帯刀より警視庁から電話が入っていると起こされる。電話に出た祥は鬼瓦より緊急の用件だと伝えられる。
「落ち着いて聞いてくれ。由貴ちゃんが病院から誘拐された!」
鬼瓦は至急、帝大病院へ来てくれと伝えると荒々しく受話器を戻す。
とにかくすぐ病院に行かなくては!うろたえながらも祥と帯刀は病院へ急行すると受付には鬼瓦が待っていた。
鬼瓦は誘拐されたのは草薙由貴十四歳、君の妹で間違いないな、身代金要求などの電話や手紙等は無かったなと確認する。
「目撃者の証言では犯人は複数、主犯人の一人は仮面を被り、他の者はフード付きのマントで顔を隠していたという。
そしてもう一つ。誘拐された被害者のベッドに君宛の手紙が残されていた。
私は職務権限を行使してこれを見ることができるが、できることなら君の同意のもとに手紙の内容が見たい…」
「わかりました。どうぞ御覧下さい。」
封を切り、手紙の内容を確認する
「娘をかえして欲しくば赤坂区にある青山墓地に、貴様の父親の隠した壷を持ってこい。」
鬼瓦は犯人の犯行目的を知り納得する。
祥は琢磨が何らかの目的で壷を隠しているはずだと思い、
その目的を知るまでの間は事件の捜査を控えて欲しいと鬼瓦へお願いする。
できるだけ協力する。鬼瓦より了承を得た祥は病院を出て手がかりを探す為、帰宅する。

自宅に着くと電話のベルが鳴る。仮面の男かと思いきや、沙夜子からの電話であった。
鑑識に回していたメモが壷のある場所を示しているかもしれないという内容であった。
祥は大学の琢磨の研究室へ向かう。
琢磨の研究室で祥は沙夜子よりメモを受け取る。
帝都に張り巡らされた地下水道の地図だと思われるという事だった。
「建設省が明治二十三年から起工した帝都上下水道完備計画の完成予定図面の一部である可能性が高いわ。」
祥は早速、建設省へ向かい確認する事にした。
祥は麹町区にある建設省に着くと、事情を説明し帝都地下水道の資料を見せて欲しいとお願いする。
しかし、それらはすべて軍事機密として陸軍省の管轄になっており、何の情報も得ることができなかった。
渋々引き下がった祥は、自分の足で壷を探す事を決意する。
祥は帯刀、ヒルダ、鬼瓦を引き連れ探索を続けた。

142 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:27:25.19 ID:4xTGzVxI0
【第五章 消えた少女 6】
午後七時を過ぎた頃、青山一丁目で氷室と出会う。今日は非番らしい。
何か知っているかもしれないと思った祥は思い切って事情を説明し地図を見せた。
「これは帝都改造計画に基いて計画された、秘密の地下道だ。帝国陸軍の機密事項でも、極秘事項に類する物だぞ。」
氷室は必要が無くなればこの地図を破棄する事を祥へ要求し、
約束を交わすと本郷区の駒込動坂付近に行ってみると良いと助言する。

駒込動坂付近に到着した祥は足元のマンホールに違和感を覚える。
マンホールに入ると広大な地下洞窟が広がっていた…
祥「ここに「彷徨える魂の祈り壷」があるのだろうか…」
祥達は道に迷いそうになりながら奥深くへと進み「彷徨える魂の祈り壷」を発見する。
帰ろうとする一行が振り返ると恐ろしい咆哮を上げてゾンビが襲いかかってきた。
ゾンビを倒すと更に別のゾンビ、鎧武者が次々襲いかかってきた。
無事退けた祥達は一度自宅へと戻り体制を整える事にした。
すぐにでも出発しようとする祥に帯刀は体力の回復を勧める。

八月十八日 午前七時過ぎ
祥と帯刀はヒルダ、鬼瓦を加え青山墓地へと向かった。雨が降る青山墓地は一層不気味さが増していた。
仮面の男「クククク…待ってましたよ。」
祥「約束の壷は持ってきた!早く由貴を返せ!」
仮面の男は祥に壷を置いて去る事を要求するが、祥は由貴を返さなければ壷を壊すと要求を跳ね除ける。

仮面の男は赤の魔道士ケフェウスを呼び出し祥達の命を奪うように命令する。
祥達は魔道士ケフェウスを倒すと遠くから眺めていた仮面の男が目を疑っていた。
「し、信じられん。我らの魔力は人間ごときに敗れるものではない…」
「祥――っ!!」
「由貴っ!待ってろ!今行く!」
「な、何!娘には強力な傀儡の術を掛けていたはず…私の魔力までもが弱まっていると言うのか?ムゥ…なぜだ…」
またも仮面の男の予想は覆り様子を伺っていると突如、祥の持つ壷が光り始め、中から謎の石が姿を現した。
「ま、まさかっ!行方知れずとなっていたオーキルスマークが壷と一緒にあったとは…
止むを得ん…今回限りは見逃してやる…次はこうは行かん…覚悟しておくがよい…」
捨て台詞を残し、仮面の男は闇の中に消えた。
「祥っ!恐かった…」
「由貴…無事でよかった…さあ、家に帰ろう…」
由貴は祥達に暖かく迎えられ草薙邸へと帰っていった。

143 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:31:07.41 ID:4xTGzVxI0
【第六章 天衣無縫 1】 ※このシナリオでは最短ルートと遠回りルートの二つのルートが存在します※
八月十九日 午前七時
祥と由貴は眠りから目覚め応接室へ向かうとノックの音が聞こえる。来客者は九条静だった。
今日は相談したい事があって来たらしい。外で歩きながら相談したいと言う静。
祥は留守番を帯刀に任せて外出する。由貴も留守番をしておくそうだ。由貴は早めに帰ってきてと祥へ話しかける。
静は小石川区の植物園に行ってみようと提案する。
静は祥と二人で歩くのは久しぶりだと嬉しそうに微笑み色々な場所に寄り道しようと提案する。

※最短ルート※
永田町から麹町公園へと移動する二人。このような小さな公園も良いものだと二人は語り合う。
神楽坂、飯田橋、小石川町を経由し植物園へと着いた。

※遠回りルート※
乃木坂の急な勾配に普段運動しない静は困惑しつつ、二人は楽しく喋りながら青山一丁目から赤坂離宮へ。
近代洋風建物の見本のような建物の美しさに二人は目を奪われ、少し休憩する事にした。
静はこんな綺麗な場所でお姫様のように過ごしたいと言うと、祥は今でも十分お姫様だと答える。
静は綺麗な衣装と宮殿は諦めるとして私を大切にしてくれる素敵な男の子が居てくれたらいいのになと呟く。
「僕では役者不足かい?」「ん~、そうね。合格かな?」
かなっていうのが引っ掛かる祥に静は微笑み、二人は先へと向かう事にした。
青山一丁目に戻り青山墓地へ。昼間でも人が少なく薄気味悪かった場所へなぜ来たのかと静は尋ねる。
静は子供の頃から霊感が強くて霊が見える事があるらしい。祥は昔から怖がりだった事を思い出し笑い出す。
何かあったら助けてねと言う静に祥は勿論だと答える。
二人は乃木神社に寄りお詣りをして行く事にした。祥は静との恋愛成就を祈る。
静に何をお祈りしたのかと尋ねられるが、祥は願いが叶ったら教えるからと教えてくれなかった。
乃木坂から氷川町へ。祥は街並みを見て、イギリスに行く前はもっと閑散としていたが活気が出てきている事に感動する。
静も最近の帝都の発展ぶりは目を見張るものがあると同意する。
六本木から盛岡町へ。目の前には教会が見える。祥は子供の頃、芝区にある芝公園のすぐ近くの小さな教会に
大きな木があって一緒に遊んでいた事を覚えているかと静へ質問を投げる。
静はサンツーナ・カトリック教会の事でしょうと覚えている事を答える。
幼少の頃に二人は大きな木の根元で将来について話し合っていた。静はそこへ向かおうと提案する。

144 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:35:42.07 ID:4xTGzVxI0
【第六章 天衣無縫 2】
麻布十番通りを通る二人。静は下町は独特の風情があって自分の好みにあっていた。
祥は下町が国の生活水準を表して日本は欧米に比べ高い生活水準である事を誇りに思うと共に、
国が豊かになれば貧富差が激しくなるって言われている事を静へ教える。
静は貧しくても肩肘張らなくていい社会になってほしいと願う。社交界のお付き合いは大変なようだ。
芝公園に着いた二人はサン・ツーナ教会を探す。二人は聖サン・ツーナ教会を見つけるが建物からは物音一つしない。
門は閉ざされ中庭は放置され荒れ栃の巨木だけが時の流れから取り残されたように立っていた。
二人は神父の行方等を気になるけど今回は調べるのは止めて、今日の目的である植物園へ向かう事にする。
夕方六時までに帰らなければいけないと言う静。時間は十二時を回っていた。
道に迷ってか植物園とは正反対の芝浦港へ移動する二人。静は海の風、潮の香りが心地よかった。
大海原を見ていると心が晴れ晴れする。静は今度機会があったら一緒に旅行に行こうと誘う。
どこでもいいからのんびりと紀行なんかを記しながら全てを忘れるような旅がしたいと言う。
祥はそうだね、いつの日か必ず連れて行ってあげる、船で世界一周の旅をするのが夢で
その時は静も連れて行ってあげるからその日まで待ってて欲しいと静と約束する。
静は喜びいつも約束を守ってくれる祥に今度も守って欲しいと願いを託す。
愛宕町、銀座四丁目、銀座三丁目、金座通り、東京駅を通り小川町に着くと三時を回っていた。
二人は急ぎ足で神保町、小石川町を通りようやく植物園へと着く。

※共通内容※
今日は天気が良く木の陰へと座る二人。
静は無理に誘いだした事を詫びるが、祥は気晴らしに出かけたかったから気にしないでと答える。
静は祥に幼馴染の枠を越えた特別な存在だと言う。
相談したい事は何かと尋ねる祥に静はもじもじと話しづらそうに喋り出す。
由貴の事について妹になっているけど本当は違うのではと質問する静に祥は正直に答える。
静は正直に答えてくれた祥に感心する。
静はイギリスでの生活で女の子から言い寄られたりしなかったかと尋ねる。
祥はロンドン周辺は紳士と淑女の礼儀に厳しい所だから言い寄られたりはしなかったけど
男女問わず友達はできたよ、英語が流暢に話せたら違ったかもしれないけどと答える。
「よかった」静は祥に聞こえない位の声の大きさで呟く。

※最短ルート※
二人は三年の空白期間を埋める様に喋々喃々(ちょうちょうなんなん)と語り合った。

145 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:37:54.22 ID:4xTGzVxI0
【第六章 天衣無縫 3】
※共通内容※
日が沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。
静は祥がイギリスに行って、人が変わっていたらどうしようと思っていたが、全然変わっていなかった事に安堵する。
人はそんなに変わらないよと答える祥。そろそろ相談の内容について話して欲しいと言う。
静は今度お見合いをする事になった。祥の事が好きだった静は急にイギリスに行った後、泣き明かした事もあった。
でも私と祥クンは違う世界の人間だから私がどんなに好きになっても二人は一緒になれない。
わかっていても祥クンなら何とかしてくれるんじゃないかって勝手な妄想を抱いていたと打ち明ける。
悔しいけど、祥クンの心は由貴さんの事ばかりで私の方には向いていないみたいと気づいた。
謝って説明をし始める祥に静は十分わかっているから、由貴さんの事を大切にしてあげてと言うと
涙が溢れて抑えきれなくなってしまう。
祥もできることなら、二人で何の悩みもなく笑って過ごしていた、あの日に帰りたいよと胸の内を明かした。
「祥クン、今日はありがとう。ここからなら、私一人で帰れるわ。」
午後九時前になってしまい祥は今日は遅いから家に泊まったらどうかと誘う。
静は帯刀にも迷惑がかかるからと遠慮するが世話になる事にした。
草薙邸へと向かう途中、雨脚が強くなる。
草薙邸に着くと祥は客間が一室開いているはずだからその部屋に休んでよと静へ伝える。

応接間へと進むと由貴が無言で出迎える。
祥が遅くなった事を詫びて話しかけるや否や、ふくれっ面の由貴は無言でフライパンを投げてきた。
「こんな時間まで何やってんのよ!祥のバカ~!!」
由貴は怒って部屋へ閉じこもってしまう。
静は怪我をしていないかと祥を気遣う。祥は自分は大丈夫だけど由貴は一体どうしたのかと理解できなかった。
静は由貴は私と同じで祥の事が本当に好きなんだけど、その表し方が不慣れで激情に流されてしまったんだと思う。
早く仲直りしよう。自分が招いた誤解でケンカしちゃったら耐えられない。と説明し、二人は由貴の部屋の前まで詰め寄った。
祥は由貴の部屋に入り事態を説明しようとするが、話を聞いてくれない。
静は由貴へ祥とは幼馴染で今日は相談にのってもらって連れ回しちゃったけど特別な関係は一切ないと伝える。
由貴は納得し早とちりをしてしまった事を祥に詫びる。
二人が仲直りをした事を確認した静は色んな意味でお邪魔しました、じゃあまたねと言い帰ってしまう。
祥は静に仲直りを取り持ってくれた事に礼を述べる。
由貴は祥が居なくて寂しくて早く帰ってきて欲しかった事を正直に伝える。
祥は心配かけてしまった事を何度も謝ると、今日は少し休もうと安心して眠りにつく事ができた。

146 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/27(木) 22:40:19.00 ID:4xTGzVxI0
【第七章 黒女の憂鬱】
八月二十日 午前七時
由貴「おはよう…私、祥のこと大好きだよ…」 祥「僕も由貴のこと好きだよ…」
由貴「よかった…」 祥「(仲直りできて良かった…)」
二人は東京を散策し家へと帰る。午後五時を過ぎていた。
中には麗華が居た。たまたま近くを通った所を帯刀に呼び止められお茶を御馳走になっていたらしい。
その時、二階の由貴の部屋から地震のような揺れを感じた。
由貴の部屋へ向かうと誰も居なかったが、綺麗な花が届けられていた事に気づく。花と一緒に手紙が添えられていた。
「お父様の件について、お話したい事があります。至急私の屋敷へ来て下さい。親愛なる坊やへ。
ヒルデリカ・リヒテンシュタイン」
祥はヒルダ邸へ向かおうとすると麗華にまた騙されるかもしれないと呼び止められる。
それでも行くと言う祥に麗華は心配なので一緒に付いて行く事にした。

祥、由貴、帯刀、麗華はヒルダ邸玄関へ訪れた。玄関から人を呼んでも出迎えがない違和感を覚える一行。
ヒルダの寝室へ入る一行。中にはヒルダが下着姿で立っていた。
たじろぎ謝り早く服を着て下さいと言う祥にヒルダは別に恥ずかしがる事はないと平然と振る舞う。
ヒルダが服を着ると祥は琢磨に関する物について尋ねる。

ヒルダはその前に祥達に手伝って欲しい事があると言って屋敷の部屋に連れて行く。
そこは第二実験室で異様な匂いが漂っていた。得体の知れない怪物に驚き、一行は部屋を逃げ出す。
廊下で待っていたヒルダにあれは一体何かと尋ねるとモンスターだと答える。
これは罠で、琢磨の手がかりは嘘だったのかと一行は疑うが、その話は本当でその手がかりがあの部屋にあると言う。
ヒルダはあのモンスター、ガンジョビナーラ・トロスヤナみたいにグチャグチャドロドロして
臭くて汚い物を見ると呪文を唱えるところじゃ無くなってしまうらしい。と嘘を付き、祥達の反応を楽しむ。
本当は見かけによらず結構強いから魔力で部屋から出られないようにするのが精一杯だと言う。
ガンジョビナーラ・トロスヤナは”ガルガチェバル”の花を作ろうとして間違って出てきてしまったらしい。
ヒルダの部屋にある『魔法生物大典』と言う本に詳しい情報が載っているはずだと言う。

祥達は魔法生物大典を探しにヒルダの寝室へ向かい、寝室の本棚より魔法生物大全を見つけ出し読んでみた。
ガンジョビナーラ・トロスヤナは魔法調合より作られる古典的魔法生物、特徴として黒い液状の物質で構成され常に悪臭を放つ。
聴覚器官が大きく敏感で巨大な音にさらされると神経崩壊を引き起こしてしまう危険性を持っている
ガルガチェバルの花は『ガルガチェバルの種』『ゴメス石』『ダーラ水』を用いて特定の魔法序列により精製できる。
ガルガチェバルの花弁はごくわずかな衝撃により巨大な音を発して炸裂するので注意と書いてある。
祥達はヒルダの家を駆けずり回り、ゴメス石のかけら、ガルガチェバルの種、ダーラの水を見つける。
通路で待つヒルダに材料を渡してガルガチェバルの花を魔法で作ってもらうと
早速、第二実験室へ移動してガンジョビナーラ・トロスヤナにガルガチェバルの花を使った。
化け物は雄叫びを発し怪物は溶け崩れていった。
感謝の言葉とともにヒルダが現れる。祥は早速、琢磨に関する情報について尋ねるとヒルダは祥へ一冊の古びた手帳を渡す。
手帳の筆跡は間違いなく琢磨のものであり、考古学に関する内容がびっしりと書かれていた。
手帳の内容は古いもので一連の事件とは無関係のようだが貰っていく事にした。
ヒルダは神田の古物屋で見つけて購入したもののしばらく置いていたようで、
ガルガチェバルの花を作っている時に偶然見つけたと言う。
一行は解散する事にした。家についた祥、由貴、帯刀はそれぞれ休みをとる事にした。
150 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 21:40:46.46 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 1】
八月二十一日 午前七時
祥と由貴はいつものように捜査を開始する。
特に有用な情報は掴めず、午後八時を過ぎた頃、雨が降りそうだという事もあって帰宅する。
祥は由貴の体調の異変に気づき早く休ませる事にした。
寒気に身を震わす由貴が眠りにつこうとした時、目の前に突如、仮面の男が現れる。
仮面の男は由貴に自分達の目的を説明する。
予想通り、祥が由貴の心の封印を解いて第一段階が過ぎた事、以前は恐怖による刺激で封印を解こうとしていたが、
時期に本来の姿に戻れそうである事、今の苦しみから解放されるには全てを受け我が弟として目覚める事。
由貴の悲鳴は祥達には届かなかった。

八月二十二日 午前五時
由貴の異変に気づいた帯刀は祥を起こすと発作を診てもらう為、帝国大学附属病院に手配した事を伝える。
祥は異変に苦しむ由貴を抱えて急いで帯刀の待つ車へ向かった。

病院の受付で成滝医師が出迎える。
成滝医師は精神安定剤と解熱鎮痛剤、強心剤を手配し他の医師にも人命に関わるので協力を要請した。
容体はつかめていないが、今までにない発作を起こしている事は間違いない、急がないと心臓に負担がかかる
祥に必ず助けると約束を交わし、しばらくここで待っていて欲しいと伝えると
成滝先生はベットに乗せた由貴と集中治療室へ入っていった。
祥は治療室の前の長椅子で二時間待ち続けた。
治療室より成滝先生が出てくると経過を説明してくれた。
精神安定剤と鎮痛剤を投与して発作を押さえているので、明日にはよくなるようだ。
由貴に会うなら四階にある精神病棟第四病室に行けば良い。
通常は面会謝絶であるが、彼女の場合、祥が安定剤代わりになっている可能性があるので例外として扱ってくれた。
まだ不可解な点が多く早急に解決しないと何が起こるかわからないので明日精神検査の立ち会ってをお願いされた。
成滝先生が帰っていくのと入れ替わって、心配して訪れた帯刀に祥はとりあえずは大丈夫だと言っていたと伝え、
今日はしばらくここに残り夕方には戻る事を伝える。
由貴の病室に入り祥は眠っている由貴を無言で見つめる。
時間の経過と共に鎮痛剤が効いてきたか表情は和らいでいく事がわかる。
何故発作が起きたのか、ここ数日前触れは無かった、ただの発作なのか、成滝先生の言っていた
『気になることがある』とは何なのか、祥は思考をめぐらしつつ由貴が早く元気になる事を祈り
由貴が目覚めるまで側で待ち続けた。

日が沈んだ午後七時となっても目覚める気配すら感じられなかった。
ノックの音と共に入ってきたのは成滝先生ではなく、沙夜子だった。
別件で用事があった所を成滝先生に聞いて心配して見舞いに来てくれた。
祥より沙夜子に由貴の容体について説明を行うと、沙夜子は祥の顔色が悪い事に気づく。
沙夜子は自分が代わりに由貴の様子を見てあげるから一度帰った方が良い気遣ってくれた。
祥は沙夜子の言葉に甘えて一度、帰宅する事にした。

151 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 21:47:55.12 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 2】
草薙邸・応接間では祥の帰りを待っていた帯刀に由貴の体調があまり思わしくない事を伝える。
由貴の看護は沙夜子にお願いしていると言いつつ、祥は目の前にあった帯刀宛の電報の存在に気づく。
『ハハキトクレンラクコウ』
帯刀の娘から母が危篤であるという電報だった。祥はすぐに見舞いに行かなければだめだと言うが、
帯刀としては由貴の事もあり屋敷を空ける訳にはいかないと執事としての道筋を通していた。
祥は沙夜子が手伝ってくれているし、自分で何とかするから早く行ってあげてほしいと帯刀に言うと、
帯刀は深々と礼を述べて出立の準備を取り掛かった。
祥は戻ってこれるようになればすぐに戻ってきて欲しいと帯刀に伝え、不安を感じつつ今日は身体を休める事にした。

八月二十三日 午前七時過ぎ
沙夜子からの電話のベルで目を覚ます。由貴の容体がおかしい。今は安静にしているけどまた悪くなるかもしれないから
一度、祥に来てもらった方が良いかと思って電話してきたと言う。
祥は急いで病院に向かおうと支度を整えていると鬼瓦から電話が入る。
由貴の事で時間があれば今日警視庁に二人で来て欲しいと言う内容であったが、
由貴は体調を崩して病院に居るので無理だと祥は答えると、鬼瓦は重要な話があるから祥だけでも来て欲しいと言う。

嫌な予感がした祥は先に警視庁へ寄ることにした。
鬼瓦は祥に来てもらった内容について説明する。
以前、祥が赤坂区の連続惨殺事件の犯人は由貴だと言っていた事が誰かに漏れたらしく、
再調査依頼が出て殺人課が身柄を拘束すると言っていると言う。
祥は入院している由貴を投獄したら命が持たないのではないかと落胆する。
鬼瓦は今回の捜査から外されて一ヶ月の謹慎処分をくらったらしい。
祥は鬼瓦に迷惑をかけてしまった事を実感して言葉を詰まらせてしまう。
鬼瓦は懲戒免職をくらったわけではないから心配するなと励ます。
鬼瓦は今回の拘束の件は帝国陸軍が関係している為で何かしらの圧力が掛かっている。
指示を出しているのは近衛歩兵第三連隊連隊長の氷室京一郎少佐だと言う。
今まで何度も助けられた祥には信じられなかったが、この情報は警視庁及び知り合いの情報屋を使って集めた確かな情報だと言う。
鬼瓦は氷室には幼少の頃に義父母を日本刀で惨殺した罰歴がある異常性を持ち合わせている事を話し、
彼の言葉に惑わされるなと忠告してくれた。
由貴の拘束は恐らく今日から三日後。出来るだけ警視庁の動きを抑えておくと祥へ伝える。

祥は由貴の居る病院へ急いだ。精神病棟には成滝医師が居た。
どういう事が起きたのか興奮する祥に成滝医師は本当は昨日の内に話しておくべきだったかも知れないと呟く。
成滝医師「実は昨日も治療中に由貴君が錯乱したんだよ。昨日は鎮静剤を投与して寝かせていたんだが…
今朝、由貴君の部屋に来るともの凄い荒れ様だった。幸い沙夜子君は外出して巻き込まれなかったが。数人が怪我をした。
とりあえず警察への通報は控えておいたのだが…どちらにしても、こうする処置しかなかった…
今回は不注意だった…私達の責任だ。精神患者では、こう言うケースが多々あるという事を忘れていた。」
成滝医師は彼女を起こさない事を祥に約束し病室へ連れて行く。

152 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 21:55:21.44 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 3】
由貴の病室には沙夜子が待っていた。今の所、容体は大丈夫だと言う。
祥は寝ている由貴の右手をそっと握ると祥の名前を呟く。由貴は祥の夢を見ているのだろうか。
祥は成滝医師に呼ばれ受付へと足を運んだ。精神鑑定の結果、由貴は紛れもなく二重人格者だと言う。
今日の測定結果ではもはや治せる段階ではなくなってしまい、今朝暴れたのはもう一人の人格であるらしい。
ただ由貴は元に戻らない訳ではなく治療可能な糸口を必ず見つけてみせると医師は意気込みを見せてくれた。
祥は成滝医師にお願いするしかなかった。
丁度話が終わった頃に沙夜子が由貴が目覚めて祥の事を呼んでいると伝えに来る。
病室に入ると、由貴はどうしてここに居るのか理解できていないようだがいつもの由貴であった。
祥は昨日熱を出して倒れたから病院に連れて来たと経緯を説明する。
成滝医師は今日明日は病院で精密検査を受けた方が良いと判断し祥の予定を伺う。
祥は時間の許す限り立ち会う事を約束する。
沙夜子は由貴の様子が良くなったので退出する事にした。
由貴は祥に迷惑をかけたことを謝る。祥は由貴を安心させ眠らせる事にした。
精密検査の準備が整ったのは夜になってからだった。
今夜も沙夜子が立ち会ってくれるらしいので、祥は成滝医師達に由貴の事をお願いし、帰宅する事にした。

雨の中、帰宅する祥。草薙邸の前には氷室が待っていた。
祥は鬼瓦から幼少の頃の彼の行動を聞かされたせいもあって氷室の姿に驚き、言葉をどもらせてしまう。
由貴の姿が見当たらないなと言う氷室に対し、祥は鬼瓦警部の言うとおり少佐が信用できるかどうかわからない
と判断して、由貴は風邪をひき家で寝込んでいると嘘をついた。
氷室は早く元気になる事を祈っていると伝えておいてくれと言うと去って行った。
祥は氷室が本当に悪い人なのか疑問に思いつつ、家に入り疲れを癒すため眠りについた。

八月二十四日 午前一時
祥は何かの物音がした気がして目を覚ます。帯刀は居ないし強盗だろうか。
由貴の部屋に入ると冷たい風が吹いている事に気づく。
倒れたタンス、破壊された鏡、切り刻まれたベッド、部屋は無残に荒らされていた。
祥はまだ家に誰かが居るかもしれないと感じ慎重に足を運ばせた。

一階の執事の部屋と通路は荒らされた形跡は無かったが、
倉庫は一部破壊され紛失していた。ただし、重要な品物への被害は無いようだ。
由貴の部屋と同様に鋭利な物で切り刻まれているようだ。
強盗であれば僕自身を人質にするだろう。犯人の目的は何だ?

二階の父の書斎と父の研究資料室では由貴の部屋と同様に荒らされていた。
考古学資料や数多くの古代文明の遺物等が傷つき破壊されている。
物置には特に変化が無いが犯人から身を護るものがないと危険だと思い鉄パイプを手にする。
二階通路には特に変化は無い。

153 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 22:02:08.95 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 4】
最後に残ったのは琢磨から入るなと言われていた二階の考古学室だったが、今は緊急時だから仕方がないと思い部屋へ入った。
暗闇に目が慣れてきて荒らされていない事がわかったが他の部屋と違いこの部屋は何か不気味な雰囲気が漂っていた。
王族か貴族の一族の肖像画が置いてある。この絵は鮮明且つ現代風で描かれ考古学とは無関係に思える。
国王、王妃、息子二人と思われる四人が描かれている。
絵の人物が今まで祥が出逢ったある人物と重なって見える。最も身近な存在の人物。
その絵が良く見える位置まで近づこうとした…その時、目の前に刃物で切るような残像が見え、祥は咄嗟に身をかわした。
見たこともない褐色の肌の男が血の着いた日本刀を握り乱入してきた。
「ヴェギルドルフ…ヴェダーラ!」
錯乱した男は呪文のような言葉を呟き、日本刀を振りかざし奇声を上げて襲ってくるが、逃げるだけで精一杯だった。
このままでは事態が改善しないと判断した祥は書斎へ逃げ込み扉を閉めると同時に鍵を掛ける。
その直後、扉には日本刀がつき刺してくると、祥は机を扉に押し付けて時間を稼ぐ事にした。
このままでは、いつか扉が破られてしまうと判断した祥は、部屋に武器となるものがないか探し出し
書棚の隅で、鋭く光る銀色の短剣「ヴァルギース短剣」を見つけ握り締める。
それと同時に扉が砕かれ男が侵入してきた。
短剣を鞘から抜くと刀身から白銀の光が放たれやがて太陽のような炎の輝きへと変わっていった。
祥は渾身の力を振り絞って男の腹部にヴァルギース短剣を突き刺した。
それと同時に、先程の光が辺りを覆い尽くす…男の絶叫は短剣の輝きにかき消されていた。
そして光がおさまったとき、男の姿は消滅していた。ただ、床に残る黒い影のような形を残して…
その時、不意に不気味な声が僕の耳に届く。声の主は仮面の男であった。
「まさか、ヴァルギースの短剣がそこにあったとは…これは計算違いでした。まぁいいでしょう。
目的の物がここに無かった以上ここは引きましょう。どちらにしろ、巫女は連れ戻しますがね…フフフッ……」
祥はヴァルギースの短剣を仮面の男へ投げるがかわされてしまう。
仮面の男は壁に刺さった短剣を抜き取り姿を消した。
なぜ仮面の男が現れたのか、あの短剣は何なのかわからない事が多すぎた。
部屋に戻ろうとした祥は頭痛と身体の異変に気づく。
短剣を使ったせいなのだろうか?痛みに耐え切れず気絶してしまう。

祥が気づいた頃は朝を迎えていた。あの短剣は所有者の力を吸い取るのか?疑問に思う祥に電話のベルが鳴り響く。
麻生教授から以前、祥に頼まれていた《彷徨える魂の祈り壷》の解析が終わったから来て欲しいという電話だった。
帝国大学の構内に入り声をかけるが、返事が帰ってこない。
突然、何かが壊れたような音と麻生教授の悲鳴が研究室の中から聞こえてきた。
考古学研究室の中に入ると《彷徨える魂の祈り壷》を抱えた魔道士が消え去っていく姿を目撃する。
部屋には胸を槍で貫かれて大量に血を流している麻生教授が居た。
麻生教授は最後の力を振り絞り、部屋にある時計について指をさして何か伝えようとするが力尽きてしまう。
この騒動に学生が気づき数十分後、警官達がやって来て祥は第一発見者として事情聴取される事になった。
三十分程で事情聴取から解放され、その間、教授の遺体は警視庁へ運ばれていた。
鬼瓦が祥に釈放された理由を説明する。
今回の件は学生達が祥は犯人ではないと証言してくれたし、凶器に使われた槍から誰の指紋も検出されなかったらしい。
鬼瓦は由貴が今日の午後三時に軍の意向により警視庁の留置所へ護送される事になった事を伝える。
三時以降に由貴に会いたい場合は警視庁へ来いと祥に伝えると鬼瓦は本庁へ戻った。

154 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 22:11:22.29 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 5】
祥は麻生教授が言っていた時計について気掛かりになり、辺りを見渡すが部屋に時計は無いように思える。
部屋の机、書庫、戸棚、考古学倉庫を調べるが《時計》は見つからない。
再度、机を調べてみる。机の上にある写真には大きな石柱が円形に並んで建っている姿、ストーン・ヘンジが写っていた。
祥は昔、琢磨より時計代わりになると聞いたことがあった。
写真立ての後ろを開けると手紙が出てきた。
手紙は祥宛のもので自分の犯した罪を償う行為と祥への今後の道標を示す事を兼ねた遺書であった。

麻生教授は嫌々ながら仮面の男の間者となって祥を騙していた事、
命令を無視した場合は沙夜子の命を奪うと脅されていた事について祥へ謝罪していた。
《壷》と《文様》の事について記述ので、沙夜子を守って欲しいと書かれていた。
・《彷徨える魂の祈り壷》は元々、祭儀用に使われていた物の一つで、《魂》の封印に使われるもの。
いかなる生物の魂をも吸い込んでしまうらしい。使用方法は壷の口を対象者に向けてある呪文を唱える。
但し、《蓋》がないと完全に魂を封じる事はできない。おそらく蓋は一緒に発見された《円形の石》の事だろう。
呪文については現在は不明である。
・《円形の石》には古代の文様とされる《オーキルスマーク》と呼ばれるものが刻まれている。
この石には《この世のものでないもの》《不浄な魂を持つもの》に対して絶大な力を有しているらしい。
仮面の男自身、この石に対してかなりの恐怖心を持っている。
《彷徨える魂の祈り壷》の蓋として使った場合、開ける事になれば封じていた魂が解き放たれるそうだ。
・文様についてはヒルデリカ殿が提示してくれた《エルランカ文字》で解読できるようになった。
解読の結果、やはりこの壷は《魂を封じ込める容器》だという事がわかったものの、
特殊な配列のようなものの意味が掴めていない。
祥は手紙を読み終えると麻生教授へ深い感謝を込めて黙祷を捧げた。

午後一時に祥が病院にたどり着いた時、大勢の人だかりが入り口を囲んでいた。
大衆の視線の先には病院から由貴が連れだされようとしていた。由貴の腕には何か銀色の物が光っている。
祥は必死で近づこうとするが護衛の男や氷室に阻まれる。氷室の判断で護送を早めたと言う。
祥は惨殺事件の犯人は《魔道士》達の仕業だと説明するが、氷室は祥に対して狂言を言っていると言い聞く耳を持たなかった。
氷室は何者かかが由貴を狙っていると情報を掴んだ為、警視庁の留置所へ護送する事にしたと説明し、
祥へ退くように要求する。何としてでも由貴を救い出したい祥は気絶さられてしまう。

祥は目を覚ますと病院内に連れ込まれていた事に気づく。
目の前には沙夜子が居た。多分、由貴は氷室達に警視庁へ連れ込まれたと説明する。
祥は沙夜子に麻生教授が今朝、胸を貫かれて大量出血で亡くなった事を伝えると遺書である手紙を受渡した。
手紙を読んだ沙夜子は泣き崩れてしまい、祥は付き添うくらいしかできなかった。
しばらく時間が経過して祥は眠ってしまっていた。今日の出来事は衝撃が大きすぎて疲れてしまっていたようだ。
目覚めると沙夜子の姿は無かった。

155 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 22:22:16.23 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 6】
祥は病院を出て警視庁へ向かった。受付で鬼瓦と出会い、留置所にいる由貴へ面会の手続きを行なってもらった。
鬼瓦は監視員に面会を要求すると申し訳ないが、氷室少佐から囚人には誰も近づけるなと命令を受けていると言われる。
鬼瓦は一通の礼状を見せると警官は態度を改め面会の許可を下した。
祥は礼状を見せてもらう。この礼状を持っているものは他の全ての公務より優先する警視総監直筆のものであり、
今回の件を知った静が父親の警視総監へ頼んで書いてもらったものだった。
鬼瓦は牢屋の前で待機し、祥は一人由貴の前に立つ。由貴は眠っていた。手ひどく尋問されたに違いない。
「由貴、必ず…必ず助けるよ。そして、いつか……」
祥の言葉に由貴は目覚めると、祥は震えている由貴を抱きしめた。
祥は泣いている由貴を見て生涯を賭けて守ると心に誓った。
厳しい尋問を受けたが体罰は氷室が禁じてくれていたので怪我はないと言う。
由貴は疲れて眠っていたら不思議な夢を見たとらしい。
黒髪の少年と洋風造りの家の前の花壇で《いつかまた会おうね》って約束を交わした夢。
祥は過去の記憶ではないかと尋ねるが由貴には判断がつかなかった。
祥は由貴に事態を説明し鬼瓦に協力してもらったと説明する。
祥は鬼瓦に由貴を連れ出せれないかと尋ねるが、特別礼状とは言え軍部の圧力を和らげる位にしか効果は
期待できないし警視総監にも迷惑をかける事になるので無理だと言われる。
祥は由貴にお守りとして大事に持っていたロケットを渡す。
必ず助けに来るからもう少し辛抱して欲しいと伝え外へ向かった。

祥は受付で氷室と出会う。特別礼状を持って留置所に入った者がいると聞いて来たと言う。
中に入れたのは自分だと鬼瓦は前に出る。
氷室は、今回は目をつぶるが次は容赦しないと鬼瓦へ釘を刺すと外へ戻っていった。
鬼瓦は祥に氷室は何か隠しているので後をつけると言う。
疲労が溜まっていた祥は家に戻り、部屋で休みを取ることにした。

156 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 22:34:14.40 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 7】
八月二十五日 午前七時過ぎ
電話のベルが鳴り響く。沙夜子が電話では言えない大事な話があるから今から琢磨の研究室に来て欲しい、
ここも危ないかもしれないと言うと一方的に電話を切られてしまう。
祥は急いで大学の琢磨の研究室へ向かうとイシューという魔道士が椅子に座っていた。
イシューは名を名乗り、沙夜子は残念ながら逃がしてしまったが部下がもうすぐ見つけるだろうと言う。
本来は自分で相手をしたいところだが女性の捕獲を優先するように言われているので
兵士に襲わせる事にした、兵士には術をかけて爆弾をセットしている、祥には死んでもらうと言い霞の如く姿を消す。
逃げられそうに無い祥は兵士と戦い倒した後に即、帝国大学から外へ走り去ると後ろから大爆発が起きた事がわかった。
旧校舎だから人は居なかったと思いたい、しばらくすると警察、救急車、消防団が駆けつけて消火作業に入った。
祥はそれを見届けると急いで警視庁へ向かった。

受付で鬼瓦に出会う。お互い大変な事になったと言う。まず祥は沙夜子が行方不明になった事を伝える。
鬼瓦は由貴が逃亡を計ったった言う。留置所で何らかの手段で警備員二人に重症を負わせた。今から探しに出ようとしてると言う。
祥はどちらを追うべきか悩んだ末、沙夜子を追う事にした。鬼瓦は部下の一人を祥と同様に沙夜子を探すよう手配してくれた。
由貴の事は鬼瓦に頼み祥は沙夜子を探す為、大学に近い植物園から駒込動坂へ向かった。
そこに魔道士に包囲された沙夜子が居た。祥の声に反応した魔道士が襲いかかる。
祥は何とか魔道士を倒し沙夜子を救い出すと道に倒れてしまう。

八月二十五日 午後七時
警視庁に運び込まれた祥は目を覚ますと目の前に鬼瓦と沙夜子がいた。
由貴は残念ながら逃げられたらしい。由貴の居場所は鬼瓦の読み通り、小石川区の大塚町にある大塚精神病院に入ったと言う。
鬼瓦は氷室を追跡したら、その病院に結びついたと言う。どうも最近の氷室の行動には不審な点が目立つ。

祥、沙夜子、鬼瓦の三人は大塚精神病院へ向かった。
この病院は第一次世界大戦の前まで軍の精神操作に関する研究所として使われていたが、戦後に民間に払い下げられた。
設備はそのまま現在では精神病院として利用されていると言う。
施錠してあったはずの鍵は破壊され扉は開いていた。

157 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/28(金) 22:48:17.98 ID:NTtyMvvn0
【第八章 破滅の序曲 8】
祥達は受付に入り、病室、診察室、治療室、調剤室で武器や回復アイテム、霊安室の鍵を手に入れる。
受付をよく調べるとカウンターに霊安室へ繋がる扉がある事に気づく。
霊安室の鍵を使い霊安室へ入り、襲い掛かってきたゾンビを倒し、一行は奥にあった梯子を降りる。
奥に進むと仮面の男と漆黒の法衣をまとった魔道士達が由貴を連れていた。
「巫女の覚醒が始まった今、存在価値すらありません。早々にこの場で消えていただきましょう。」
仮面の男は魔道士デュトア、魔道士イシューに祥達を倒すよう命令を下すが、祥達はこれを退ける。
今までになく手強い二人の魔道士を三人は倒すとさすがに仮面の男も同様を隠せない。
仮面の男は祥になぜ由貴にこだわるのかと問う。
祥は由貴は自分の妹だから必ず助けだすと答える。
仮面の男は我々の仲間にならないか、由貴には手荒な真似はしない良い取引だと思うがと言い出す。
無論、祥は取引に応じないと答えると仮面の男はマントの裾を払い魔道士達が一斉に詠唱を始める。
絶体絶命の祥の前に沙夜子が庇いでて呪文を受け悲鳴を上げる。
仮面の男「ちぃ、愚かな事を…この期に及んで我々を裏切るような真似をするとは…どう言う事だイリスフィアよ!
草薙琢磨に心奪われ、我らの悲願を忘れるとは。所詮、貴様も琢磨と同じくただの人ということか。
まぁいい。貴様は我々にとって使い捨ての駒に過ぎん。我らの魔力なしで生きていけぬ人形風情が…
せいぜい琢磨の…貴様が愛した男の忘れ形見の最後を見届けるが良いわ!!今度こそ、冥府へ旅立て!草薙祥!!」
そこに帯刀が乱入して詠唱の邪魔をする。帯刀は警視庁で話を聞いて飛んできたと言う。
仮面の男は日本刀を構え帯刀を襲うが、帯刀はその太刀をかわし拳を仮面に叩きこむ。
仮面は剥がれ落ち、氷室の顔が現れた。
「何者だ、死体の数が足りないと思っていたら貴様は琢磨か」
帯刀と思っていた男は死んだと思っていた琢磨だった。
琢磨は帯刀の姿から元の姿へと戻る。
この状況では退くしかないと感じた琢磨は沙夜子を抱え祥を説得し逃げ出した。
逃げる一行に氷室が呪文を詠唱する。
その時、琢磨が火炎瓶を投げ込み周囲に飛散し呪文を防いでくれた。
氷室「まあ良い、巫女は我が手にあるのだ…」

大塚精神病院を脱出した一行。
外に出ると沙夜子が琢磨と祥に裏切っていた事を謝る。
琢磨は裏切っている事も内心悩んでいる事もわかっていた。
二人はお互い自分の不徳を詫びる。
琢磨は祥に沙夜子を恨まないでやってくれと言う。
祥は沙夜子は大切な人で恨むなんてとんでもないと言う。

八月二十五日 十九時四十五分
沙夜子は琢磨の腕の中で息を引き取った。沙夜子にとって今まで求められなかった最後の幸せだったのだろう。
祥は死なせたくない人が死んでいく現実に深く傷つき自分の無力さと氷室を憎んみ、沙夜子の亡骸に由貴は必ず護ると誓った。
沙夜子の亡骸は近くの社まで運び、大樹の根元に埋葬した。
悲しみに包まれつつ祥は父と家に帰った。
159 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 09:36:18.77 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 1】
家に帰ると帯刀が戻っていた。疲れていた祥と琢磨はとりあえず休む事にした。
八月二十六日 午前0時半
祥はしばらく休んだものの気持ちが高まって目覚めてしまった。応接間から琢磨と帯刀の声が聞こえる。
琢磨は帯刀に最後の頼みを聞き届けてほしいと言っているが、何の内容なのかはわからなかった。
琢磨は祥の存在に気づくと丁度話をする機会だからと屋根の上へと誘う。

夜空には美しい三日月が出ていた。祥は三年前同じようにここで話をしたのを覚えていた。
琢磨は祥に由貴の事をどう思っているのか尋ねる。
祥は好きだと答えると琢磨は優しくしてやるんだぞと二人の関係を認めてくれた。
祥は琢磨の様子がおかしい事を気にしながらも、由貴を含めて皆で過ごせれるよねと琢磨へ問いかける。
琢磨は全てが終わったらきっと過ごせれるはずだと答え二人は自分達の部屋に戻った。
祥は起床後の体調を考え眠りにつく事にした。

八月二十六日 午前七時
応接間には鬼瓦、麗華、ヒルダ、静が訪ねてきていた。
皆の前で琢磨は今回の事件の全てについて説明を行う。
「皆が気づいているように今回の事件は由貴が中心になっている事、多発する少女誘拐事件、帝都周辺で起こる様々な怪事件は
全て由貴の覚醒の為に魔道士達が恣意的(しいてき)に引き起こしたものである。
全てを知るには由貴の誕生から話さなければならない。
今から十五年前、イギリス考古学会に所属して多くの文明調査を行なっていた頃に
偶然にも超古代文明に関する手掛かりを得ることができた。
生まれて間もない祥を残してチベットのラサへ向かい、超古代文明の記述を記した石碑を見つけだし、
その石碑を調べて魔道士達の正体は超古代文明の末裔である事を知った。
由貴は生贄ではなく、生まれながら魔道士達の崇拝する神の巫女としての器を持っていた故に執拗に追われていたようだ。」

「何年も前にも由貴を救出した事があり、十年近く監視を逃れながら遺跡を発掘していたが、三年前に由貴の居所が
魔道士達に知れてしまい、由貴を守っていた友人は殺され誘拐されてしまった。由貴は帝都東京へ連れ去られた。
祥をイギリスに留学させたのは魔道士から守るためでもあった。
帝日新聞の山神義郎や鬼瓦警部と手を組み情報を収集し捜査しやすいように努力を重ねたが、そんな時、魔道士達が
帝都の陸軍を掌握し政治的な行動に出始めてしまった。
帝都を一つの巨大な制御装置として魔道士達が住んでいた大陸を浮上させるという計画。
帝都改造計画は表向きは陸軍が提示した富国強兵に伴い、帝都を要塞都市へと改造する計画だが、
本当の目的は魔道士達の環境に合わせた地下大都市建設と消失した大陸浮上であり、その為の魔法陣を地下に建設している。
祥が以前、由貴を救い出した睦月精肉工場から続く地下設備も帝都改造計画の一環だった。」

160 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 09:46:40.61 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 2】
更に琢磨の話が続く。内容をまとめると次のような経緯であった。
琢磨は計画を止める為、あえて氷室の策に乗った。沙夜子が魔道士達の仲間である事も知っていた。
氷室は遺跡内での事故を装いながら琢磨を殺害しようとしていた。
由貴の居場所がわかった琢磨は山神と共に睦月精肉工場へ向かったが、山神は凶悪な怪物に襲われ死なせてしまった。
琢磨は捜査を容易に行えるようにする為、背丈の似た別の男の死体に愛用のジャンパーを着せて自分の死を偽装したが、
氷室が機転を利かし、祥に帰国するように手紙を出してしまい計算が狂ってしまった。
氷室は由貴の覚醒を促す役目を祥に与える為、あえて祥に由貴を救出させる事が目的だったようだ。
祥は由貴を儀式の前に救出したと思っているだろうが、実際には儀式が終わっている。
既に奴らが望むものは由貴の身体に宿っている超古代文明の王族の魂。
由貴は自制心と孤独によって二つの魂を安定させていたが、祥と出逢ってバランスが崩れてしまった。
氷室はそうなる事を計算して接触させたのだろう。
由貴のもう一つの魂が覚醒する事により魔道士達、いや、人類発祥の大陸が浮上すれば、
帝都はおろか太平洋周辺の国に被害が及ぶ。場合によっては数百万か数千万の人間が死ぬかもしれん。
超古代文明は太古の昔に太平洋に沈んだ大陸故に浮上すれば海に面している国は津波によって大被害を受ける。
もし由貴が覚醒して暴走してしまうのであれば殺してしまうか、この地で果てるか、その時は祥が判断するんだ。
琢磨が帯刀と入れ替わっていたのは自分が死んだことにしつつ祥の行動の援助を行う為であった。
魔道士達は不老型と転生型がいる。不老型は各地方で神や悪魔と呼ばれ知恵と力を授けてきた者。
転生型は氷室がそうである。超古代文明崩壊で死を迎え、時を越えて現世にたどり着き人の子に宿った
外見は普通の人間だが知識や記憶は古代人のままだ。強力な力を操ることができるが不老ではない為、寿命により死を迎える。
不老型は魔力は協力だが、それを支える肉体を持っていない。転生型はその弱点は無いので戦うには厄介だ。
氷室は元々戦災孤児で乃木大将に拾われ育てられたが、恐ろしい程に凶悪な精神を持っている。
おそらく前世からの転生に失敗している為なのだろう。
氷室達は四方結界という遥か前に考案された帝都守護封陣の一つにより護られている。
東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武を設置し霊的に帝都を守護している。魔法の威力が半分以下に落ちているのはその為。
由貴を探すにはこの結界が霊的、肉体的に邪魔になる。
東の青龍は日本橋、西の白虎は乃木神社、南の朱雀は芝公園、北の玄武は上野公園だ。

琢磨は知っている事を全て語り、改めて皆に由貴救出の協力を要請する。
琢磨は祥を書斎へ連れ出し用事を済ますまで、皆に少し待っていて欲しいと伝える。
二人は書斎に入ると琢磨は書棚の奥に隠された扉を開け地下水路へとしばらく無言で歩き続けた。
琢磨が案内した場所は約二十年前に起工した帝都改造計画の予定区画の一画。
琢磨は帝都の地図を取り出し、地下水道と改造計画の区画を線で結んでいく。
すると帝都東京に巨大な六芒星の魔法陣が出来上がっている事がわかる。
琢磨「召喚を行うには魔力と供物が必要だ。地図にマークした所は連続殺人事件が起きている場所で今も殺人事件は続いている。
全ての殺人事件を阻止する事は無理だが、我々は奴らの陰謀を阻止しなければならない。
召喚の儀式の準備が整うのは恐らく月末、魔道士達が一斉に何時間もかけて詠唱を行うはずだ。」

161 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 09:58:06.74 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 3】
二人は更に奥へ進み祭壇に訪れた。そこに一冊の書物が安置されていた。
琢磨「この本はカナンフィーグの書という滅び去った古代帝国における禁断の書物。
人知を越えた闇の知識を得る禁書。常人が読むと膨大な知識の濁流に呑まれ死に至る。
これを克服する事ができれば悪魔や魔王を自在に操ることができる。」
琢磨は祥に試練を受ける覚悟があるか確認すると書物を開いた。
祥は意識が肉体を離れていくような感覚にとらわれる。
やがて目の前には異世界の光景が広がっていった。太平洋の古代文明の遺跡ような建物。
祥の意識は人々のざわめきに呼応してコロシアムのアリーナへ向かう。
アリーナの中心には巨大な石像がそびえ立ち、多くの生け贄が現れて殺されていった。
人が殺される度に観客は諸手を上げて歓喜の声を挙げる。
「こんなのはおかしい」祥の声に反応して琢磨の声が聞こえる。
「彼らは精神的霊的に現代人よりも進化している為、万物の平衡が保たれるのであれば喜んで命を捧げているのだ。
現在でも誰かの為に命を投げ出しても良いと感じるのはこの風習の名残だ。」

琢磨は祥にとある四人の人物が描かれた絵を見せて説明する。 ※第八章 破滅の序曲で錯乱した男に襲われた時の絵
中年の男は現世の琢磨で、前世では魔道士達を統べる国王、青年の男は現世の氷室で、前世では皇太子、
中年の女は現世の沙夜子で、前世では皇妃、少年は現世の由貴で、前世では第二皇子。
四人は輪廻転生により現世に生まれ変わった。琢磨がそう説明すると今まで見えていた光景が崩れ暗闇に包まれる。

古代帝国の王宮の様な光景が広がる。その光景の中、先程描かれていた皇太子と第二皇子が口論していた。
第二皇子は大切な友人の命を神に生贄として捧げる事の必要性に疑問を感じ、
皇太子へこの風習を考えなおして欲しいと要求していた。
帝国の強大な力、富も多くの生け贄によって支えられているが、それは本当の力や富では無い幻影に過ぎないというのが
第二皇子の主張だった。皇太子は第二皇子の意見は一切聞く耳を持たず、この場を去れと追い返そうとしていた。
確かに第二皇子の言う事は正しいかもしれないが、公人としての責務を全うするのみというのが皇太子の主張だった。
皇太子「信仰を捨てれば今の儀式とは比較にならない程血が流れる帝国は滅ぶだろう。」
第二皇子「だからといってこのまま衰退を続けるのは嫌だ。私は戦って力は無くとも慎ましくも幸のある生活を望む。」
口論は続くが二人は分かり合う事は無かった。第二皇子は帝国、父、兄に対して剣を向ける事になっても
構わない覚悟だと言いその場を去って行く。

やがて時は流れ、帝国は戦乱の時代を迎える。帝国辺境に武力蜂起した第二皇子率いる義勇軍は、皇太子を総帥とする
正規軍とやむなき戦いを強いられる。折しも兄弟の戦いが苛烈を極める頃、病床にあった父王は失意の内に永遠の眠りについた。
王の死と共に義勇軍への加勢は勢いを増していった。戦いは三年続き両軍は疲弊し戦線は膠着した。
この戦争は国土の大部分が戦禍に呑まれ焦土と化し、総人口の半数を死に至らしめた。
両軍の首脳会談によって戦争を終わらそうとしていた。

163 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 10:13:50.48 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 4】
二人は五年前に行った生贄の是非に関する口論を同じように繰り返す。
今回もわかってもらえそうにないと悟った第二皇子は剣を抜き皇太子と剣を交え火花を散らすが、
皇太子には敵わず、第二皇子は殺されてしまう。本当は殺したくなかった皇太子は弟の死に男泣きに泣いた。
その時、笑い声と共に邪神の思念が現れる。愛する者通しの殺し合いに愉快で大いに満足した褒美として更なる力を与える故、
弟の魂を我に捧げよと言い残し邪神の思念は消えていった。
皇太子は側近の魔道士コーディアスに我が弟の魂を救ってくれ、邪神から守ってくれと頼んだ。
「我が魂は邪神に弄ばれむさぼられようともよいが、弟の魂は神の意志に反しても守ってくれ。」
コーディアスはノルディスの丘に国王、二人の皇子、コーディアスを除いた帝国十支柱の魔道士の六人を待機させていた。
第二皇子の亡骸を丘の魔法陣へ移し、六人は輪廻転生の呪文詠唱を始めると第二皇子の魂は時空を越え、
人知れぬ遥か未来へと飛び去る。
その異変に気づいた邪神は、我が与えし力をもって意に反する行為を行う皇太子や魔道士達へ永遠の呪縛の中で
無限の闇を彷徨う呪いをかける。
帝国は二日を経たずして魔力均衡が崩壊し、膨大な魔力が一気に放たれ、山のような津波が押し寄せ全ての火山が噴火し
大陸と共に深い海底へ沈没した。

祥の意識は大正の日本へ戻ってきた。琢磨は祥へその後の事の成り行きについて説明してくれた。
皇太子より転生した氷室は邪神の呪いに蝕まれ邪悪な精神を持つに至った。
大陸の沈没を乗り越えた者も邪神の呪いを受けた者ばかりで、この帝都に暗躍する魔道士はコーディアスを中心とした
古代帝国の亡霊である。古代帝国の復活の為、第二皇子を目覚めさせ沈んだ大陸を浮上させようとしているが、
彼らの行いは過去の過ちを繰り返そうとしている行為であり、止めなければならない。
琢磨自身、息子たちを苦しめさせてしまった前世の償いをしなければならなかった。
「祥には由貴を守って欲しい、現世ではお前の手で幸せに導いてやってほしい。」

祥と琢磨は草薙邸・応接間へ戻ると仲間達が待っていた。琢磨が作戦の説明を行う。
四方結界を破壊する必要があるが、結界は四聖獣を象った像の中に封じられているので像を破壊すれば良い。
鬼瓦には日本橋にある青龍の像、麗華には乃木神社にある白虎の像、ヒルダには上野公園にある玄武の像、
静と帯刀は祥に同行し力になってあげて欲しい、琢磨は芝公園の朱雀の像を破壊する、
祥達三人は各方面を回って欲しいと伝え解散した。

上野公園で玄武像を守っていた魔道士メネラオス、日本橋で青龍像を守っていた魔道士アガメムノン、
乃木神社で白虎像を守っていた魔道士パラメデス、芝公園で朱雀像を守っていた魔道士オイアクスを倒しそれぞれの像を破壊する。
琢磨や祥達は全て破壊した事を確認し一度家に戻った。一行は一旦解散し体力を回復させる。
祥は一刻でも由貴を助けたいが、はやる気持ちを理性で押さえつけ明日へ備え眠りについた。

164 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 10:24:12.89 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 5】
夢の中、古代帝国に由貴の姿が見える。「祥…寂しいよ…」
祥は夢の中で由貴に居場所を尋ねる。場所は分からないけど何か高い塔のような所に閉じ込められているみたいだと言う。
祥は早く行くから待っていてと由貴に語りかけた所で目を覚ます。
手には何故か由貴に渡した筈のロケットが握りしめられていた。

その日から祥と琢磨、そしてその仲間達は由貴の所在を求めて帝都東京をさまようように歩き続けた。
由貴の中に眠る第二皇子の意思を覚醒させるには相応の儀式と生贄が必要であった。
由貴がそれを望むにせよ望まないにせよ一定の儀式にはそれなりの時間が必要であり、
そのときは満ちてはいないようであったが確実に時は迫りつつある。

祥たちの心に焦燥感が漂い始めるころになっても由貴がいずこかに監禁されているのか見当さえ知ることができなかった。
焦るほどに空回りする由貴の捜索に絶望しかけたその時、祥の胸中に閃くように思い出された由貴の言葉があった…
『とても寂しいところ…何か高い塔のような所に閉じ込められているみたい…』
塔のような高い建物…そのような構造物は広い帝都東京にも数えるほどしかない。
夢の中で聞いた不確かな言葉ではあったが今は些細な情報でもいいから欲しかった。
祥はこの事を皆にうちあける事にした。
魔道士の隠れ家たる邪神の神殿は、これまでの例から地下に存在すると思い込んでいた仲間は驚きを隠せない様子であったが
座して手をこまねいていることはできないという共通した意識の一致から手分けしてそれらしい建物を探索することになる。
…すでに時は八月も晦日に近づいた三十一日であった…

八月三十一日 午前七時
祥は帯刀に起こされ応接間に皆が待っている事を伝える。
琢磨は皆に協力してもらった事に礼を述べ由貴の居場所がわかったと言う。
由貴は浅草にある凌雲閣の最上階に幽閉されている。
仲間達は各々の家や居場所へ戻るので力が必要なら寄って欲しいと祥へ伝え去って行く。
琢磨は別行動をとるので準備を行うよう凌雲閣で午後六時頃に会おうと祥へ伝え去って行く。

祥は帯刀、ヒルダ、鬼瓦を仲間に加えた。
午後六時 祥達は凌雲閣に突入すると待っていた琢磨と合流する。
琢磨はやるべき事があると言い一人凌雲閣へ入っていった。

凌雲閣の中央にはエレベートル(エレベータ)が存在し、それを囲うように通路や小部屋が存在していた。
通路にはエレベートルの技師がいた。公にはエレベートルは安全に問題があった為、使用禁止と言われていたが、
技師の話によると軍の規制と停電による為に使えないという話であり、直るまでは階段を登っていくしか無いようだ。

祥達は逃げ遅れた観光客達を導き避難させながら、上へ上へと進んでいった。
琢磨に工具を渡して階段を修理してもらい、魔道士、錯乱した男、化け物等を倒し、毒ガスや精神攻撃を切り抜けて上を目指した。
戦いの中で鬼瓦は、異形なる者の触手にやられてしまい肋骨を数本折られてしまう。
鬼瓦は自分の事はいいから、先へ進むんだと祥へ頼みを託す。

165 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 10:37:06.56 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 6】
九階に上ると辺りが急に物々しい異次元回廊に変わっている事に気づいた。
生あるもののごとく蠢き、ねばねばとした粘液を分泌しながら脈動する床や壁。
部屋全体をつつみこんだ、あまりにも異質で堪え難い程の狂気…これはまるで生物の体内だ。
異次元回廊では祥達の精神力が徐々に削られていった。
祥達は奥へ進むと壁と融合している少女を見つけると少女が話しかけてきた。
「あなたは誰、私は來琳、数年前に中国から連れてこられ魔物に捧げられたもの、この先の魔物の維持の為に存在している。」
助けだそうと意気込む祥に少女は感謝するが半分融合して離れられないから殺して欲しいと言う。
下の階にいる魔道士達が持っている邪神の像を使ってこの先の結界を破り奥にいる魔物を倒して欲しい。
魔法陣の上に邪神の像を置いて、この短剣を使って像を血で染めれば結界は破られる。
祥達は祭壇短剣を受け取り異次元回廊の奥へと進んでいった。

一方、氷室はもはや陸軍の将校ではなく、皇太子ヨルドとなっていた。
リカードは何者かが侵入してきた事を報告するとヨルドは指示を出す。
「子供は魔物が始末するので放っておいても良い。リカードは頂上で他の侵入者を見張り、危険と思われるものが来たら殺せ。」
四方結界、巫女の結界で対策は万全、ヨルドは弟の目覚めを確信する。

異次元回廊の通路奥の二箇所にはそれぞれ床に魔法陣が描かれていた。
祥はそれぞれ邪神像『陰』、邪神像『陽』を魔法陣に置き、掌を祭壇短剣で切り裂き像を血で染めると
二つの像の力により今まで結界が解かれて奥へ進めるようになった。
祥達はその奥へ通り抜けようとした時、ヒルダが精神に限界を感じてこれ以上先へ進めないと突然の別れを告げる。
別れ際に祥はヒルダから選別として雷炎の指輪※を貰う。 ※攻撃用アイテム
祥が先へ進んだ直後、裏切り者を抹殺すべくヒルダの元へ魔道士が現れる。
魔道士は暗黒の加護を受けた我々の魔力は古代の魔女であるヒルダを遥かに超えていると自負する。
魔道士とヒルダはお互い魔法を打ち合う。

祥達は睦月精肉工場等で飼われていた化け物のパーフェクト花子を倒し、更に奥へ進むと辺りは凌雲閣の空間が広がっていた。
祥達は凌雲閣十一階の螺旋階段を上がっていった。
一方、仮面の男ヨルドは化け物パーフェクト花子が倒された報告を受ける。
草薙祥の力は侮りがたいが仲間達は傷つき、戦力は激減している事が手に取るようにわかっていた。

凌雲閣十二階である最上階には魔道士リカードが祥達を待ち構えていた。
地下聖域で巫女の覚醒の儀式が行われている。覚醒するまで私が相手をすると言い襲いかかってくる。
魔道士リカードを倒すとリカードは邪神の生贄として自分の肉体が消えていく事を確信する。
リカードは死に際に祥を道連れにすべく魔法を放つ。そこへ帯刀が庇い前へ出る。
帯刀は命に別条はないが負傷して動けないと言う。祥は由貴を連れて必ず戻ると誓い別れる事にした。
167 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 10:49:04.00 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 7】
祥は事務室から出てくる琢磨と再会する。
琢磨は祥が一人でいる事に気づき問いかけると祥は自分を庇い助けてくれたと答えた。
展望台には由貴は居ないが凌雲閣には何かが隠されているはずだ。琢磨は祥を励まし再び一人何処かへ消えていった。

祥は何か手掛かりを掴む為、事務室を探しエレベートルの配電室に関する道具類を手に入れる。
偶然見つけた迷子の母親である錠前屋夫人に配電室の鍵を複製してもらうと、一階の配電室を開ける事ができた。
修理を行うべくエレベートル技師が中へ入って行くと中からピエロが出てきて祥を突き倒し去って行く。
祥はピエロを追いかけるが足が早く追いつきそうにない。
祥は拾ったバナナを食べてバナナの皮を床へ置き、再度ピエロを追いかける。
追いかけ続けぐるっと廊下を一周した所でピエロはバナナの皮に足を滑らせ倒れてしまう。
祥はピエロを調べようとすると襲い掛かってくるが、これを倒し配電盤の鍵を手に入れる。
配電室の中ではエレベートル技師が修理をしていた。
配電盤の鍵で配電盤の蓋を開けるとエレベートルは落雷で停電したわけではなく、
配電盤を壊されていた事で動かなかった事がわかった。
エレベートル技師も祥もエレベートルに何かが隠されているに違いないと確信する。
配電盤に銅線を2セット使用し修復を終えると館内に電気が灯された。
エレベートル技師に様子を聞いてみるとエレベートルはシャフトが抜かれているので
地下室から予備を取ってくる必要があると言われ地下室の鍵を手渡される。

祥は一階通路で一部が扉になっている床に地下室の鍵を使い梯子を下った。
地下室を奥へ進み倉庫のコンテナからシャフト、ダンボールから点火棒を手に入れる。
祥は戻ろうときた道を引き返す途中、閉まっていたはずの通路の鉄格子が開いていた。誰かが通ったのだろうか?
鉄格子をくぐり抜け、仕掛けのある部屋を抜け奥の部屋に足を踏みれると琢磨が異形なる者と戦っていた。
祥は単独で異形なる者に打ち勝つと、琢磨は見せたいものがあると祥を更に奥へと連れていく。

琢磨は部屋の中央にある棺桶らしきもの精神増幅装置を祥に見せて説明する。
この機械は恐らく仮面の男、前世の息子ヨルド皇子が使用していた物。
琢磨は自分も由貴も前世の記憶はあったとしてもただの人間に過ぎない。由貴もクルテュア皇子の能力はないはずだ。
ヨルドとその眷属の魔道士は転生することにより失われるはずの魔力を取り戻す方法を見つけ出した。
その魔力で何百年もかけてクルテュア皇子の魂を探し続けてきた。
この塔の十二階は祭儀場にあたるこの塔を破壊すれば、残すは南の孤島にある本拠地しかなくなる。
孤島は奴らが目覚めた場所であり、古代遺跡が残っている。そこで邪神復活の最後の仕上げを行うつもりだろう。
「祥と自分のどちらか生き残った方が必ず本拠地へ乗り込み野望を打ち砕き由貴を助け出すんだと誓って欲しい。
お互い地下の祭壇室で会おう。」

祥は一階の配電室に戻りエレベートル技師にシャフトを取り付けてもらう。
修理中二階から女性の悲鳴が聞こえるが、祥は配電室から離れなかった。
しばらく待つとピエロが入ってきた。
ピエロは祥が悲鳴に釣られて出ていったと思い込んでいたが、出くわした祥に倒されてしまう。
エレベートルの修理が終わったと思われたので祥は技師に話を伺う。
修理は終わったが、応急処置で何度も使用すると思わぬ事故が発生するかもしれない状態だと言う。
修理を終えた技師はその場から去っていった。

168 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 11:00:27.46 ID:z8mTyln70
【第九章 滅びし帝都 8】
一方ヨルドは部下の魔道士よりコーディアスからの連絡があったと伝達を受ける。
大陸側の儀式の準備は完了したが、クルテュアの儀式は止めて欲しいという内容だった。
ヨルドは予定通り続けると伝えておけと伝達係の魔道士へ命令する。大陸を蘇らせるにはクルテュアの命が必要なのだ。
このような態度を示すコーディアスに神は許さないだろう、惜しい人物だが消えてもらうしか無いと心に誓う。

祥はエレベートルに秘密が隠されていないか、実際に乗って確かめてみた所、落雷のせいか箱ごと地下へ落下してしまう。
エレベートルを降りた地下は血の池が広がり奥にはレンガ造りの祭壇が続いていた。
祭壇の入り口には邪神門固く閉ざされ、門の手前の鎧兜が宙へ浮かび上がり声を発っした。
「我は、須賀沢道孝なり。我、汝と手合わせを願う。」
鎧武者を倒し、背徳の十字架を手に入れる。邪神門のレリーフに背徳の十字架をはめ込むと門が開いた。
奥へ進むと邪神祭壇に辿り着く。邪神像の前に魔法陣が描かれ由貴が倒れこんでいた。
祥と由貴はお互い名前を呼び合うとヨルドが現れた。

ヨルドは由貴をここまで覚醒させてくれた褒美として一思いに殺してやろうと詰め寄る。
そこへ光が差し込み、ヨルドの右手の甲へ突き刺さる。複雑な紋様が描かれた白銀のナイフ、ヴァルギース短剣だった。
短剣を投げたのは琢磨であった。他の地下聖域を守っていた化け物をヴァルギース短剣で倒し、この場所へ辿ってきたと言う。
琢磨が見つけたヴァルギース短剣は一本だけでは無かった。
祥は琢磨からヴァルギース短剣を受け取り仮面の男であるヨルドへ斬りかかる。
斬りつけられたヨルドは不敵な笑いを浮かべると周りの魔道士共々黒い霧へと包まれていく。
その時、由貴が悲鳴をあげ覚醒してしまうと同時に何処かへ消えいった。
ヨルドはコーディアスが由貴を助けたに違いないと確信する。やがて地震のような揺れが発生する。
琢磨は由貴は上にいるに違いない、黄金の門が開かれる前に連れ戻すんだと祥へ頼みを託す。
ヨルドは琢磨へ行ってもどうせ間に合わんと話しかける。
琢磨はこの帝都は救われないかもしれないが、他の地域はこの祭壇を破壊すれば防げるはずだと
身にまとっていた上着を開く。琢磨は腹の回りに大量のダイナマイトを巻いていた。
「前世でお前と由貴を苦しめたのは私だ。その責任は取らねばならん。」

祥はエレベートルを使って十二階へ移動する。
エレベートルを降りると目の前の上空には覚醒した由貴が浮かんでいた。
由貴に話しかけた祥に返事を返したのは由貴ではなく第二皇子クルテュアだった。
クルテュアは由貴の心を通じて祥の事を知っていると言う。
祥はクルテュアに由貴を返して欲しいと頼むが、由貴の魂は邪神を現世に降臨させる鍵だからそれはできないと答える。
闇と現世をつなぐ門が開かれたので、クルテュアは同胞が犯した過ちをこの由貴の身体を使って修正する。
由貴は滅びることになるが、由貴も望んでいると言う。
祥は由貴との約束の為にも自分も連れて行って欲しいと懇願する。
由貴の身体から一瞬由貴の声が聞こえ、祥への感謝の言葉を伝えると上空に浮かんでいた由貴の身体が消える。
やがて祥も光に包まれる。祥は上空へ導かれていく際、凌雲閣が爆発と共に崩れていく様を見届け意識を失ってしまう。

169 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 11:13:45.40 ID:z8mTyln70
【最終章 そして黄昏へ 1】
祥は森の中に転送された。意識を取り戻すと由貴を探して古代の森を一人さまよう。
一方、クルテュアは祥より先行して森を抜け遺跡の奥、棺の間の棺より地下遺跡へと降り、
魔法の力で次々仕掛けを解除し進んでいく。やがて魔道士コーディアスと再会する。
コーディアスは邪神に従っていたが、同時にクルテュアにも敬意を払っていた。
クルテュアには生贄として奥へ進んでもらわなければならない。
また、クルテュアを転送する際に誤って一人の少年を連れて来たのでどう対応すべきか判断を仰ぐ。
クルテュアは私の元に送り届けてほしいと答える。
コーディアスはクルテュアの前から消え、クルテュアは更に奥へ進んでいく。

祥は道中、毒煙の発生源を塞ぎ、草むらから木の棒を拾い、森の奥へ進んでいった。
森を抜けると遺跡へと続いていた。琢磨が見せてくれた幻覚で見たことがある光景。
ここは仮面の男が言っていた消失大陸の遺跡なのだろうか。
遺跡の奥にある棺の間に設置されている棺に対して、木の棒を使いこじ開け、襲いかかってきた闇に吼えるものを倒し、
祥は棺の中の梯子を下る。由貴はこの中にいると直感した。
梯子の下の風景は一転して現代文明による建物の地下室が広がっていた。

祥は遺跡地下通路を鍵や指輪を手に入れ仕掛けを解除しながら奥に進んだ。
途中見つけた部屋の一室で魔道士のペルソナを手に入れる。魔道士のペルソナは仮面の男が着けていたような形をしていた。
魔道士のペルソナを身につけ魔道士コーディアスの日記を読んでみると魔道士のペルソナを通してエルランカ文字が解読できた。
琢磨に見せてもらったヨルドとクルテュアの王位継承の争いについて書かれていた。
クルテュアはヨルドへ王位を譲った事にコーディアスは敬意を払っていたようだ。
ヨルドもクルテュアも人々の多くの血を求める神への疑念を抱いているように見えるという内容が書かれていた。
祥は更に奥へ進み遺跡地下二階へ降りる。
祥は道中で得た情報を元にレバーを操作して複数の鉄格子や罠等を解除して進んで行く。
祭壇通路で魔道士コーディアスに出会う。戦いを挑んできた魔道士コーディアスを倒すとオーキルスマークを手に入れる。
コーディアスは祥ならばクルテュア様を救ってくれるかもしれないと信じてみたくなったと言い、
死に際に見える黒い霧は邪神の呪詛である事、邪神を封じるには時限爆弾をしかけるしかない事、
地下一階の火薬庫内部に取り付けて爆発させればガスチェンバーが爆発を引き起こしこの島は永遠に海中に没する事になる事、
クルテュア様を救ったら森の魔法陣でクルテュア様の力を使い門を開ければ元の世界に戻れる事を伝え息を引き取る。

祥は更に奥へと進む中、一室でコーディアスの日記を見つける。
クルテュアの挙兵とヨルドやコーディアスが崇めていた神が邪神である事に気づいた事、
邪神を倒す術が見つからないヨルドはクルテュアの魂を未来へ逃したのかもしれないと書き綴られていた。
祥は本棚から欠損した頁を見つけ、引き裂かれた書と欠損した頁3セット分を組み合わせて聖なる霊感の書を手に入れる。
聖なる霊感の書には、壷に呪文を唱えると力を与えると書いてある。
壷とは彷徨える魂の祈り壷の事ではないだろうかと祥は直感した。
更に奥へと進み梯子を降りて地下三階へ。
祥は更に奥へと進み仕掛けを解除、レバーを操作して複数の鉄格子や罠等を解除して進んで行く。
倉庫の木箱からは時限式爆弾を見つける。

170 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 11:25:18.80 ID:z8mTyln70
【最終章 そして黄昏へ 2】
遺跡地下通路にある色の違う壁を壊し、姿を現したボタンを四ヶ所押した時、通路の奥の床下より
玄武岩でできた奇妙な石碑であるモノリスが姿を現す。
祥はモノリスへ手を伸ばすと身体が吸い込まれ遺跡最深部へと転移された。
遺跡最深部の奥に進む為、古代人の証であるオーキルスマークを掲げると道が現れた。
遺跡最深部・奥の部屋には中央にある台座の上に壷が保管されていた。
祥はその壷「彷徨える魂の祈り壷」を道中で手に入れた古代の壷と入れ替えて罠を回避した。
彷徨える魂の祈り壷を手に入れた祥はモノリスで転移し遺跡地下へと戻る。
遺跡地下の火薬庫に立ち寄ると、手に入れた鍵で扉を開けて、時限式爆弾を見つからないような場所に設置し、
二時間後に作動するように設定した。
地下三階の奥に進み邪神聖殿に辿り着く。剣を持った巨大な邪神像の左右にはそれぞれ入り口が見える。
祥は邪神像手前側より中へ入る。邪神像胎内は凌雲閣の九階から十一階を歩いた時のような空間が広がっていた。
邪神像胎内で女神の守りを手に入れ、魔法陣による転移を繰り返し奥へと進んだ。

部屋の中、邪神祭壇ではクルテュアと邪神が対峙していた。
クルテュア「神とは言え二万年も人の力を吸収していなければ力は衰えている」
邪神「人は弱く我を崇めることで心が安定する。人々が我を必要とする時、再び覚醒の時は訪れる。
例え汝が我を封じ込めたとしても人は支配者という神を崇める。」
クルテュアは邪神を封印しようとした時、祥が現れ隙ができてしまう。
邪神の攻撃をクルテュアは庇い封印する事はできなくなった。
邪神は祥へとどめを刺そうとした時、火薬庫の爆弾が爆発を起こす。
邪神はまたしても野望を実現できない悔しさに祥達を道連れにしようと下僕「闇を覆いし影」へ襲いかからせる。
クルテュアはヘキサグラムの力を解放する為に時間を稼いで欲しいと祥へ頼みを託す。
女神の守りの力により闇を覆いし影の攻撃を全て跳ね除け続けるとクルテュアが体制を整え祥へ退いてくれと言ってきた。
クルテュアは邪神を封印する。邪神は必ず後悔する時が来るぞと言い残し断末魔の雄叫びを上げる。
祥が気がつくと側にはクルテュアではなく由貴が居た。
由貴はクルテュアと同化したと思うと言う。クルテュアだった前世の記憶が今はあると言う。
二人は外へ向かおうと歩き出した直後、邪神は貴様等も道連れだと言い黒い霧を撒き散らす。
封印の力が弱かったようだが、今は逃げるしかない。
黒い霧から逃れつつ邪神像胎内から遺跡、地上へと戻り、古代の森の祥が転送されてきた所まで戻る。
地面の魔法陣へ二人は歩み寄り、由貴は門を開く魔法を唱える途中に邪神に隙をつかれて乗っ取られてしまう。
祥はクルテュアの姿の邪神へ戦いを挑んだ。

171 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 11:38:38.38 ID:z8mTyln70
【最終章 そして黄昏へ 3】
※BAD END※ 武器等でクルテュアを倒した場合
クルテュアとなった邪神を祥は力で封じる。
クルテュアは由貴の姿に戻るが血が流れて眼が見えなくなっていた。傷薬がまるで効かない。
「私はもう駄目みたいでもいいの祥といままで一緒に居れたから」
二人で東京へ帰ると言い続ける祥に由貴は強引に結界を仕掛けて転送を始める。
「私達いつかまた逢える。必ず。ごめんね…祥…でも…私…楽しかったよ。
祥に出逢えて…皆と会って…優しくしてもらった事を…私…忘れない…ありがとう…祥…祥…………」
やがて大陸は連続地震により沈下を繰り返す。全ては黄昏へと消えていったのだ…
祥は長い時間気を失っていたようだ。気がつくと黄昏時を迎えようとしていた。
祥は帰ってきた安堵感より由貴を救う事ができなかった事を思うと涙が出ていた。
そして違和感のようなものを感じ帝都を見るとそこには
一九二三年 九月一日 午前十一時五十八分
この日局地的大地震が帝都東京を襲った。後に伝えられる関東大震災である。
関東大震災から一年後、帝都東京が復興の活気に沸く夏の日、祥は一人芝浦港へ向かっていた。
由貴を失ったという深い心の傷は今だ癒えておらず帝都で過ごした由貴との懐かしい記憶が私を苦しめていたからだ。
あの事件で共に戦った多くの仲間は傷つき、道半ばにして斃れた。
そして愛する父も由貴も還らぬ人となった。この傷がいつか癒える時が来ても、私にはもう帝都に残る勇気はないだろう。
だから私は帝都を離れる事にした。
今までの出来事を忘れるため、そして狂気に満ちた記憶を拭い去るために。だが、私は全てに絶望した訳ではない。
いつの日か出会う由貴のために、由貴と交わした最後の約束を守るために。
私はその約束が果たされるまで、これからも生き続けるだろう。
記 一九八三年八月一日 草薙 祥

173 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 11:49:29.80 ID:z8mTyln70
【最終章 そして黄昏へ 4】
※NOMAL END、GOOD END共通※ 彷徨える魂の祈り壷を使った場合
彷徨える魂の祈り壷の力を引き出すには呪文を唱えなければならない
「我に集え、数多の力よ!天に精神、地に力を!彼の者よ、この壷に集え!
魔の刻、来たり滅魔の力!彼の者を封じん事を願う!封滅せよ、邪悪な魂よ!!」
壷に邪神の力は吸い取られクルテュアの姿から由貴の姿へ戻る。
意識を取り戻した由貴は邪神とクルテュアの魂は壷へ吸い取られた事を祥へ説明する。
クルテュアは祥に今まで一緒に戦ってくれた事を感謝し私の片割れを頼むと言っていったと言う。
暗闇から逃れるべく二人は魔法陣へ。由貴は黄金の門を開く。
やがて大陸は連続地震により沈下を繰り返す。全ては黄昏へと消えていったのだ…
祥は長い時間気を失っていた中で由貴が呼ぶ声に呼応するように目を覚ます。
目の前には涙を浮かべた由貴の姿があった。気がつくと黄昏時を迎えようとしていた。
祥は自分たちの世界に戻ってきた事を由貴と分かち合う。
そして違和感のようなものを感じ帝都を見るとそこには
一九二三年 九月一日 午前十一時五十八分
この日局地的大地震が帝都東京を襲った。後に伝えられる関東大震災である。
関東大震災から一年後、帝都東京が復興の活気に沸く夏の日、由貴の罪が明るみに出てしまった私達は、
果てのない逃亡の日々を送っていた。赤坂連続殺人事件。帝都を崩壊へと導いた魔道士達によって引き起こされた悲劇。
無意識とはいえ由貴が人を殺めた事実は消せない。
私は自分を攻め続ける由貴を必死に勇気づけた。「由貴、君は何も悪くないんだ。」
後に鬼瓦警部の部下達に保護された私達は、彼らの協力により、なんとか国外へ脱出する事ができた。
日本を後にした私達はイギリスの叔母を頼り、今は一緒に暮らしている。
帝都での辛い思い出、失ってしまった仲間達への想い、そして狂気に満ちたあの出来事は、
いまだに私達の心に大きな傷跡として残っている。だがいつの日にかその傷も癒されるだろう。
なぜなら私達は今幸せに暮らしているのだから。

※NOMAL END※ クリア時間が一定時間より超過した場合
スタッフロール 終劇

※GOOD END※
そしてイギリスに渡ってから二年の歳月が流れ、私が十七歳、由貴が十六歳を迎えた秋、私達二人は結ばれた。
母方の親類縁者と、イギリスの学生仲間達が私達の門出を祝ってくれた。
チャペルを出た私達は多くの人々に迎えられ、由貴は深紅のバラのブーケを、青空高く投げた。
ふと私は人波の中に見知った男の人がいる事に気が付いた。
「どうしたの祥?」「・・・・・」由貴がそう尋ねた時、すでに男の姿はなかった。
「いや、なんでもない。」私はそう告げると新妻の手をとり、ゆっくりと車に乗り込んだ。
「ありがとう、父さん。」私は万感の想いを込め、そう心の中で呟く。
そして私と由貴を乗せた車は新しい人生へと向って走り出した。
それから数年後、私は父の遺志を継いでイギリス考古学会の一員となり、由貴と共に世界中の遺跡調査をしている。
そんな旅の途中で私は、アメリカの自称トレジャーハンターの青年と出逢い、友情を深め、危険な冒険を共にする事もあった。
目まぐるしく過ぎる生活の中で、もうすぐ私達にも子供が生まれる。
この子が成人した時、私はこの物語を聞かせようと思っている。全ては私の父が導いてくれたのだという事を。
記 一九二九年八月一日 草薙 祥
スタッフロール 終劇

174 :東京トワイライトバスターズ:2012/09/29(土) 12:00:05.91 ID:z8mTyln70
以上で東京トワイライトバスターズは終了です。長文連投失礼しました。
申し訳ございませんが、誤字脱字が含まれていると思われます。
【補足】
・エンディングの文章は若干中略したもののほぼ引用です。
・仲間の後日談は作中では触れられていません。
・GOOD ENDで出てくるアメリカの自称トレジャーハンターの青年というのは、同社(ウルフチーム)の
アーネストエバンス(1991年に発売したメガCDのアクションゲーム)の事を指す演出でしょうね。

ご支援いただきありがとうございました。
最終更新:2012年11月30日 21:22