ソウルサクリファイス
part66-369~372  part67-5~11・35~40


369 :ソウルサクリファイス:2014/01/20(月) 21:39:07.91 ID:9IIF0WP2O
埋めがてら、未解決にあったPSvita/SOUL SACRIFICE(ソウルサクリファイス)投下します。
 

先に文中の語を補足すると
人型→人間が魔物になったもの。魔法使いの主な仕事はこれの排除だが、「人殺し」扱い。
生贄→動植物、上記の人型などの魂を右腕(魔法を使う腕)に取り込むこと。相手は死ぬ。
聖杯→大事なものと引き換えに何でも願いを叶えてくれる、(一応)伝説上の代物。だいたいの人型はこれのせいで魔物化する。



主人公はひとりの奴隷である。
世界は滅びかけており、その原因である魔法使い「マーリン」の生贄になる順番を待つだけの存在だった。
しかしある日、「リブロム」と名乗る生きた本を手に入れる。
なんでもリブロムは、かつてマーリンの相棒だった「ある魔法使い」が遺した日記帳であり、その記述を追体験できる魔導書らしい。
他の奴隷たちはリブロムを読み終わる前に生贄にされてしまったが、
追体験から知識と魔法を身に着けマーリンの正体を知れば、奴を倒して生き延びることも可能だという。
わずかな可能性に賭け、主人公はリブロムを読み始める。……


魔法使いを束ねる組織「アヴァロン」、彼はその加入試験を受けていた。
同時期に受験を志願した魔法使いと二人で目標の魔物を倒し、その上であるものを生贄にすれば
合格だというその試験は、受験者の半数以上が死に至る過酷なものである。
合格すれば一人前とみなされ、公式に人型の討伐を請け負うことになる。
彼のパートナーはニミュエという女だった。
自制できないほどの殺戮衝動に苦しみながら悪態ばかりつくニミュエだったが
ある晩、涙を零したニミュエの背を彼がさすってやったことをきっかけに彼らは打ち解ける。
その後も旅は続き、ついに目標の人型を生贄にした。激戦の末、彼らは生き残ったのだ。
しかしこの試験において、死亡者が半数を下回ることはない。
何故ならば、最後に生贄にしなければいけないのは同行者の命だからである。
葛藤しながらも彼らは戦い、そして勝ったのは彼だった。
ニミュエを生贄にすると、ニミュエの記憶や思い、彼女を苦しめていた殺戮衝動までもが右腕に流れ込んできた。
その中には、「オマエと違うかたちで出会えていたら……」「今までありがとう」という素直な気持ちがあった。
「殺戮衝動は、自分の出生の秘密からくるものだ」「引き継がせて申し訳ない」という謝罪もあった。
彼はこれ以降、仲間を手に掛けた罪悪感と、ニミュエから受け継いだ殺戮衝動に苦しむこととなる。



370 :ソウルサクリファイス:2014/01/20(月) 21:42:45.67 ID:9IIF0WP2O
――時は流れ、彼は次の相棒であるマーリンと旅をしていた。出会いは数年前に遡る。
予知能力を持つマーリンが、「呪われた魔法使い(=彼)が世界を滅ぼす」という未来を阻止しようと、つまり彼を殺そうと、彼を訪ねてきたのだ。
しかし、「気が変わった」のだという。
マーリンは予知能力の代償として、「異様に早く老いる体」を持っていた。
生贄を取り込むことで若返るが、三日と持たずにまた生贄が必要になる。
難儀な体を持つもの同士相棒になろうと、右腕の殺戮衝動に悩む彼を誘ってきたのだ。そして彼もそれを受け入た。
それからは、相応の代償を捧げればどんな願いも叶うという「聖杯」を探す旅をしている。
彼らは切に「普通の体」を欲していた。殺戮衝動から解き放たれ、終末を防ぐためにも。
周囲からするとマーリンはひどく気まぐれな人間であるという。旅の最中にも、マーリンは突然「息子」に会いたいと言い出した。
時に、生贄にした(元)人間の記憶が自分のものと混ざり合うことがある。マーリンに息子はいない。
以前生贄にした人間は「息子」がよほど大事だったのだろう。その「息子」のいた村も、既に別の魔物に滅ぼされていたのだが……。


彼らは聖杯の手がかりを得るために、人型ばかりを狙っていた。人間の魔物化には聖杯が関わると言われているからだ。
また、人型を倒せば彼の殺戮衝動も鎮まる。倒した魔物は、マーリンが生きるための生贄になる。
彼らの利害は一致していた。ただ、聖杯探しは難航していた。


ある時取り込んだ生贄は、ひどく妻を愛していた。その記憶に従いたどり着いた妻のもとには、ある女がいた。
はじめに取り込んだ「夫」自体が彼らをおびきだす罠だったのだ。
その女は「モルガン・ル・フェ」、自称マーリンの元相棒だ。
「隣にいるから」という理由で彼を妬み、繰り返し彼らに襲いかかっては、マーリンに心中をねだる。
マーリンのみならず、彼もまたモルガンを嫌っていた。容貌がニミュエに瓜二つなのだ。
マーリンはモルガンを「ばあさん」呼ばわりするが……。
おまけにモルガンの過去は彼の母親と一致している。そして、彼は母親の顔を思い出すことができない――。


モルガンは逃がしてしまったが、夫の死により魔物化した妻をも、彼らは生贄として取り込んだ。
「魂だけでも、腕の中で再会させたい」と願いながら。



371 :ゲーム好き名無しさん:2014/01/20(月) 21:46:53.50 ID:9IIF0WP2O
聖杯は見つからず、彼は徐々に魔物に近付いていく。アヴァロンが始末に乗り出す程に。
魔物化する前に彼を殺すのが、相棒であるマーリンの役割だった。早く殺せとつっかかる彼とマーリンはついに決別し、戦い始める。
そんな事態をモルガンが見逃すはずがない。楽しくてたまらない様子の彼女に、彼らは詰め寄った
二人の諍いは、その「芝居」は、見事にモルガンを釣り上げたのだ。
この女が「母親」だ、と確信する彼に、「私の"娘"はオマエなんかじゃない!!」と激昂し魔物化するモルガン。


モルガンの顔がニミュエに見えたのは、「母親」の記憶がモルガンと一致したのは、モルガンが「ニミュエの母親」であるためだった。
自分自身で気付けたものの、彼の記憶もまた混濁していたのだ。
ニミュエの狂気の根源は出生理由にあった。ならば母親を殺せばこの衝動は収まるのではないか――彼はそう読んだのだ。
戦闘の末、息も絶え絶えになったモルガンは「自分を生贄にしてほしい」と頼んできた。


モルガンの魂を得て、ニミュエの殺戮衝動は収まった。右腕のニミュエに、彼はおやすみを告げる。
「彼が世界を滅ぼす未来」は、ここにようやく阻止されたのだ。
そして、モルガンの記憶はマーリンを狂わせた。


……昔、「マーリン」という悪の魔法使いがいた。
年老いては生贄を用いて若返る、不死の禁術を使っていた。
予知能力さえあった。あまたの生贄のうちの誰かから引き継いだのだろう。
そのマーリンを倒し、世界を救った「無名の魔法使い」がいた。彼は現れた「聖杯」に世界の再生を願い、マーリンの体を生贄にした。
しかし無名の魔法使いの記憶は次第に乱れ始め、自分をマーリンだと思い込むようになった。
引き継いだ禁術と予知能力も、生まれ付きであると。
モルガンはその「無名の魔法使い」の相棒だったのだ。
相棒を失ったモルガンは孤独に打ちのめされ、聖杯にすがり、ニミュエという分身を生み出した。
しかし、ニミュエもモルガンを捨てる。モルガンは、生きる意味を見失った。
最後くらいは誰かと一緒にいたい……そんな思いから相棒を追っていたのだ。


彼とマーリンの出会いも、モルガン=ニミュエの宿った右腕と「無名の魔法使い」の記憶が作り出したものだったのだろうか?
様々なショックから失踪したマーリンを彼は見つけ出した。
そして、かつてニミュエに言えなかった、素直な思いを告げる。
お前が誰だろうと知ったこっちゃない、分身も記憶も関係ない、お前は自分の大事な相棒だ、と。
沈黙の後、ありがとう、と呟いたマーリン。真相を乗り越え、彼らは真の絆を手に入れた。


聖杯が現れたのは、その瞬間だった。



372 :ソウルサクリファイス:2014/01/20(月) 21:51:21.69 ID:9IIF0WP2O
正確に言うと、マーリンにだけ聖杯が見え始めたのだ。
狂ったように笑うマーリン。
欲望に見合った代償ができれば聖杯は勝手に現れる。それだけのことだった。
彼を生贄にすれば、マーリンの願いが叶う。そこに葛藤はあっただろうか。あったならば救いはある、と彼は思う。
……芝居などではない殺し合いが、始まった。


戦いが終わってみれば、跪いているのはマーリンの方だった。
だが、二人も相棒は殺せないと悟った彼は生贄になることを決めた。自分に右腕をかざすマーリンの涙を見届け、眼を閉じる……
しかし、マーリンは結局彼を生贄にせずその場を去った。


再び追った彼が見つけたのは、マーリンの面影すらない化物だった。
相棒にせめて人間らしい死を与え、自分も後を追おうと彼は決める。
圧倒的な力の前に、千切れ、壊れた体が肉塊と化す。が、驚いたことに、化物はそこに自らの血をそそいだ。
彼の体は蘇った。
混乱しながらもまた襲いかかり、殺されかけては蘇る。なぜ情けをかける?あれはまだ相棒なのか?戦いを繰り返せというのか?
何回も、何日も、何年も、何年も何年もそれが続いた。


……不死の血のせいで彼は死ねなくなったが、体はもはや人の形をとれなくなった。
やがてマーリンの周りは、生贄用の人間と檻で埋め尽くされた。
彼は考えた。「この人間たちに思いを託したい」。残った力が彼の体を、思いを伝える「本」へと変えていく。
……「ある魔法使い」とは、リブロム自身だったのだ。



すべてを知った主人公は、リブロムの意志を継ぎマーリンに挑むことを決意する。リブロムは生贄となり、すべての力を主人公に託した。
現れた「ある魔法使い」を目にしたマーリンは驚く。マーリンも、今なおリブロムを大切に思っていたからだ。


……やがて戦いも終わった。マーリンと、マーリンが使えなかった聖杯を前に主人公は気がつく。これは、「マーリン」と「無名の魔法使い」の逸話と同じではないのか……?
 



6 :ソウルサクリファイス:2014/01/20(月) 21:57:44.03 ID:9IIF0WP2O
(※前スレが埋まったのでその続きです)


→(マーリンを生贄にする)
右腕の中で、リブロムとマーリンは再会する。
「リブロムなのか?」「久しぶりだな、相棒」
「ここまで、長かった…」「すまない。もっと早く楽にしてやりたかった」
「"最後くらいは、誰かと一緒にいたい"」「ああ。そのために、オレは生きてきたんだ……」


世界は蘇った。人々が行き帰り、草木は緑を取り戻す。
主人公もまた、マーリンと同じ道を辿るかもしれない。でもきっと大丈夫だ。
何かを犠牲にできるくらいの強い意志があれば、未来は変えられると知っているから。


→(マーリンを救済する)
倒れたマーリンを抱き起こすリブロム。
「リブロム、なのか?」「久しぶりだな、相棒」
再会。リブロムと主人公に、もはや境目は存在しない。
しかし、マーリンの正気も長くは持たなかった。また戦って、救済して、戦って……リブロムは「マーリンの側にいてやりたい」という。
やがて体が保たなくなり、主人公もまた「本」となった。また誰かが、自分の意志を繋いでくれるだろう。
「日記」はあったことしか書けないが、未来は白紙だ。何かを犠牲にできるくらいの強い意志があれば、未来は変えられる。
(セーブしたデータは牢獄の中に本が増えます)


9 :ゲーム好き名無しさん:2014/01/21(火) 01:39:07.80 ID:MqeszdAj0
ソウルサクリファイス乙です。
ゲーム中の文献を読み込むとマーリンと主人公の戦いはループの一環に過ぎない…
という解釈もできて何とも切ないんだよな
あと特定の同行者達のエピソードも世界観感じさせて好きだったな

 

35 :ソウルサクリファイス:2014/01/25(土) 18:40:54.66 ID:iV30SRNsO
SOUL SACRIFICEのサブストーリー、「魔法使いの仲間」投下します。


・悪徳魔法使い/ボーマン
「美味いから食べてみろ」
そんなことを言いながら、その男はこちらへ近付いてきた。なんのことはない。ただ目が合っただけだ。
差し出された果物を言われるがままに食べると、男は豹変した。
果物の代金を払えと言うのだ。城が二、三立つとんでもない額である。当然自分は無視した。
しかし相手もしつこい。三日三晩つきまとわれ、ついに自分は根負けした。
結局、相手に同行しながら、働いて払うことになった。そうなってから聞いた相手の名前は、魔法使いの中でも悪名高いボーマン。
金欲にまつわる魔物ばかりを狙い、仲間であろうと報酬の山分けなどしない……そんながめつい魔法使いであった。
日々命懸けで戦っているからか、富に執着する魔法使いは多くない。しかしボーマンにとってはいくらあっても足りないのだという。
魔法使いならば、稼ぎようなど、それこそいくらでもある。それでもなおボーマンは言う。
「全然満たされない」、と。
道々金品を集めながら、我々は標的の魔物に辿り着いた。
金色のゼリー体に数多の財宝を埋め込んだ姿を「イカした格好してるじゃねえか」とボーマンが茶化す。
代償をもたぬ貧しい人間が魔物化した場合、自身の内臓や周囲の物質を
求める物――金欲ならば金銀財宝、食欲ならば山のようなご馳走――に変え、その身に取り込むことが多い。
そうして生まれた魔物は、まとめてスライムと呼ばれる。
どうやらボーマンはそのスライムを知っているらしい。人間時代に借金で首が回らなくなり、金欲にとらわれ魔物となったのだとという。
そもそものきっかけは、家族にひもじい思いをさせたくないという愛情だったそうだ。
「金欲は人を狂わせる。オレみたいな金欲バカは存在しない方がいい」としみじみ言うボーマン。
この旅がどこに行き着くのか、自分は気になり始めていた。


その魔物を退けた後で、ボーマンはある家を訪ねた。地図にもないさびれた街の一軒である。
出迎えてくれた親子は、先ほどのスライム退治の依頼者で、スライスの家族なのだという。
子供の手にはあの日食べさせられた果物があった。
そしてボーマンは、果物の礼だと言い、道中で集めた金品をすべて渡してしまった。
「お前の親父はもうすぐ帰ってくるぞ」
魔物となった人間が同じ過ちを繰り返さないよう、アヴァロンは救済を禁じている。
しかしボーマンは、あの時スライムを救済していたのだ。人間に戻ったあの男は、いずれここへ帰ってくるだろう。


魔物に身を落とす人間は、貧しい地域に多い。恵まれない環境が彼らを追いつめるのだろう。
「世界中の人間が金持ちだったら、魔物は生まれない」
依頼者の家へ向かいながら、ボーマンはそんな信条を語った。施しによって魔物の発生を未然に防ぐ。それがボーマンなりの魔物退治なのだ。
彼は今日もどこかで金を稼いでいるだろう。



36 :ソウルサクリファイス:2014/01/25(土) 18:44:01.61 ID:iV30SRNsO
・「魔物の子供」パーシヴァル
気がつくと、見知らぬ若者がついてきていた。右腕を見るに魔法使いのようだ。
「いっしょに、いこう」「ひょーてき、おなじだから」
たどたどしい喋り方だ。
同行を許した後も、自分はどこか違和感を感じていた。
彼の振る舞いや戦い方には、どこか、感情が欠落しているような様子があるのだ。
もうひとつ気になる点があった。常に胸を、血が出るほどかきむしっている。
何故そんなことをするのか?胸の「びょーきなんだ」と彼は言う。
それらに対して抱いた疑問も、彼の生い立ちを聞き氷解した。彼は、人間に育てられたのではない。
森に置き去りにされた彼を、魔物が拾い、育てあげたのだ。


戦闘において、パーシヴァルは危機らしい危機に陥ったことが無いという。ただ一度を除いては。
その一度が、母親を生贄にした時だ。
魔物の母親は、ある日、突如として彼に襲いかかった。
しかし彼の両親も魔法使いだったのだろう。誰に教わった訳でもなく、パーシヴァルは母親を生贄にし生き延びた。そうするしかなかったのだ。
母親は、大切に育てた子供を何故殺そうとしたのだろう。彼の「病気」も、その時から始まった。


その経験から、パーシヴァルは魔物に敵対心を抱くようになった。
しかし、魔物化した人間に対してはそればかりでもないようだ。
標的が近いことを知り、彼は「かぞくいたら、やだな」と呟いた。
残される家族のことを心配してしまう。失うつらさを知っているからだ。


おそらく、と自分は考えた。
母親は、息子を人間として育てたかったのではないだろうか。
そのために、身をもって二つのことを教えようとした。
ひとつは、魔物は人間とは相容れないのだということ。そしてもうひとつは、命を奪う行為への罪悪感。
どちらの感情も人間に必要なものだ。そして、多くの魔法使いが、それらのために葛藤する。
その気持ちを失ってしまえば、もはや魔物と変わりはない。
パーシヴァルの胸の痛みや苦しみ、「病気」の正体もおそらくはこの葛藤だ。いつかは理解できる日が来るだろう。


この推測を、自分は伝えてみた。
「かーさんも、よろこんでいるのかな」
魔物の母親が望んだ通り、パーシヴァルは人の心を学びつつある。子供の成長を喜ばない母親はいない。
「そうか。それなら、うれしい」
パーシヴァルは無邪気に笑う。彼が成長した時、またこうして笑いあえたなら、言うことはない。


補足:パーシヴァルを育てた魔物は動く樹木であるコボルト。知識を蓄えながら移動するだけの無害な魔物で
ゲーム中でもプレイヤーに対して攻撃・反撃は一切行わない。



37 :ソウルサクリファイス:2014/01/25(土) 18:49:15.13 ID:iV30SRNsO
・「狼男の苦悩」ガウェイン
ワーウルフという魔物がいる。ひどく凶暴で、幾多の魔法使いが返り討ちに遭っている。その中には顔見知りも何人かいた。
そういった事情もあり、自分は次の目標をワーウルフに定めた。
ガウェインという隻眼の魔物使いが同行を願い出てきた。ワーウルフを追い、もう十年になるという。
ワーウルフはいつもガウェインの側に現れるらしい。そのせいで彼の知り合いは何人も犠牲になっていた。


彼がいない時、ラグネルという女魔法使いが訪ねてきた。ガウェインの知り合いらしいが、彼抜きで話がしたかったという。
これまでガウェインはワーウルフに一度も遭遇できずにいる。十年も追っているのに。
「おかしいと思いませんか?」……語られた彼女の「仮説」は筋が通っていた。


翌日。ワーウルフが現れたとの情報が入ったが、到着した時にはもう立ち去っていた。
またも取り逃がしてしまったようだ。
本当にワーウルフなんて魔物は存在するのだろうか、と、ガウェインは呟いた。
ワーウルフを探し求める中で、彼は「自分の右目」を代償にささげている。そうまでしても会えないのだ。
一度でも姿を見たことはあるのか、と自分は尋ねた。
……動揺した彼は打ち明けた。時折、知らぬ場所で目覚めることがあると。
出会えないはずだ。ワーウルフはガウェイン自身なのだから。彼も薄々は感づいていたのかもしれない。
自分はガウェインに頼まれ、しばらく彼を見張ることになった。魔物へ変わる瞬間を見届けねばならない。


それから三日目のことだ。離れた場所にワーウルフが現れたというのだ。
もちろん、目を離すような真似はしていない。自分たちはすぐさまその場にかけつけ、ワーウルフを倒した。
ワーウルフの巨体が崩れていく。これで元の人間が現れるだろう。
だが、そこに残ったのは人間ではなく、ひとつの眼球だった。
ガウェインは叫んだ。「ワーウルフとあいまみえたい」という彼の願いは、代償を元に、ある意味叶えられたのだ。
彼は本当に、事実に気付いていなかったのだろうか……?


錯乱したワーウルフ――ガウェイン――が各地で暴れている。
ラグネルには殺さないよう頼まれたが、見逃せば、またワーウルフとして暴れ出すかもしれない。
自分は元の姿に戻った彼にとどめを刺そうとした。
「待って!殺さないで!」
割り込んでくるラグネル。
十年前、ラグネルが駆け出しの魔法使いだったころだ。
ある魔物を倒したところ、全身に獣のような毛が生える、奇妙な代償を負ってしまった。
ガウェインはそれを治療と称して引き受けたのだという。ラグネルにとっては命の恩人なのだ。
「私が、元の醜い姿に戻ればいい」そう言ってラグネルは、ガウェインが肩代わりしていた代償を再び取り込んだ。そして……


数日後、傷の癒えたガウェインが自分を訪ねてきた。
ラグネルは、かつて死に別れた相棒の妹らしい。親友に代わって彼女を守ろうと決めていたそうだ。
もう自分の影を追う必要もなくなったからな、と表情をゆるめたガウェイン。
代償からラグネルを救うべく、彼は今もどこかで躍動しているだろう。



38 :ソウルサクリファイス:2014/01/25(土) 18:58:46.74 ID:iV30SRNsO
・「復讐の騎士」ランスロット
魔物に身を落としたとは言え、元が人間であったことに変わりはない。
そういった意味からも、魔物を殺す魔法使いたちは嫌悪と忌避の対象である。
それでも魔物は各地で生まれる。魔法使いは、疎まれながらも必要とされていた。


ある日、魔法使い嫌いで有名なレオデ王から魔物の討伐を依頼された。
魔物を倒し終わると、ひとりの魔法使いが声をかけてきた。その男は、魔法使いの間でも噂になっている。
やむを得ない需要を狙ってレオデ王に取り入った側近、ランスロット。
手が回らなくてね、などと言うところを見るに今回の依頼は彼の手伝いだったようだ。
彼はもうひとつ依頼をしてきた。山奥の屋敷に密書を届けろと言うのだ。
怪訝に思いつつ向かった屋敷には、魔法使いが集まっていた。
国王はその権力の下、魔法使いに激しい弾圧を加えている。ランスロットとこの者たちはその渦中で家族を失った。
それ以来、蜂起の機会を窺っているらしい。
王の側近とはいえランスロットは魔法使いだ。彼に対する城内の目は冷たい。魔法使いからも、王の腰巾着だ犬だと揶揄される。
ランスロットはこのために城に入り込んでいたのだ。復讐を果たし、国を変えるために。
そして秘密を打ち明けることで、自分をも仲間に引き入れようとしている。
今回の密書の内容は「今しばらく待機するように」との指示だった。
ひとりの女がその密書を握り潰した。長すぎる「待て」に、痺れを切らしているようだった。


ある日、相談があるとのことでランスロットに呼び出された。
王妃グウィネビアが懐妊したそうだ。
なんでも、計略のために近付いた王妃と、気が付けば本気で恋に落ちていたのだという。
つまり子供の父親はランスロットだ。そのことが明らかになれば、もちろん大変なことになる。
屋敷を抜け出した王妃と落ち合うランスロット。
彼はすべてを打ち明けた。始めは計略のための嘘だったが、いつしか真実になったこと。
復讐よりも、今は彼女とお腹の子供を大切に思ってしまっていること……。
二人は駆け落ちを決意した。
旅慣れないグウィネビアを背負うランスロット。自分は最後に、国境までの護衛を引き受けた。


――突然、彼の動きが止まった。グウィネビアの後頭部に、氷の矢が突き刺さっていた。
背後には、あの屋敷にいた女魔法使いがいた。
裏切り者とわめく彼女を退けることには成功したが、グウィネビアが生き返ることはない。
ランスロットは三日三晩泣き通したのち、最愛の人を湖に葬った。


しばらくしてランスロットに再会した。今は罪人として、追っ手から逃れる日々だという。
運命を呪って生きていくこともできるが、彼はそうしないことを選んだ。
グウィネビアと二人で生きると決めた瞬間の満ち足りた想いや、彼女への気持ちを憎しみで塗りつぶしてしまわないように。
いつか自分の運命を受け入れられる日が来ることを、ランスロット自身も信じていた。



39 :ソウルサクリファイス:2014/01/25(土) 19:03:12.76 ID:iV30SRNsO
・「異端の救済者」エレイン
サンクチュアリという組織がある。ゴルロイスなる魔法使いを中心とした、すべての命の救済を目指す団体だ。
その理念ゆえ、生贄を原則とするアヴァロンとは対立している。
しかし、アヴァロンから鞍替えする魔法使いも少なくない。人材の流出を危険視したアヴァロンがゴルロイスの殺害要請を出すほどだ。
ゴルロイスの出自や来歴はおろか、顔すら誰も知らないと言うのに。
自分はそのサンクチュアリの加入試験を受けていた。
女魔法使いと二人組になり魔物を追うという"あの時"とよく似た状況。ただし、今回の目的は生贄ではなく救済だ。
エレインというのが今回のパートナーの名である。彼女もかつては普通の魔法使いであった。信頼できる相棒もいたらしい。
とある要請中、その相棒は、傷ついたエレインを生贄に捧げようとした。
他人の命を捧げれば、その者の死と引き換えに強大な魔法を使うことができるからだ。
命からがら逃げ出したエレインは、その裏切りを通し魔法使いという生き方を憎むようになった。
そうして正反対の教えを掲げるサンクチュアリに傾倒したという訳だ。
サンクチュアリは救済活動を通し、生贄を行う"汚らわしい人間"を排除した理想国家を作ろうとしている。
サンクチュアリのメンバーや賛同者は皆、ゴルロイスの著した本を持っている。
自分もエレインの持っていたそれを読んだが、生贄という行為の汚らわしさと救済の必要性を説いたその本は、純粋すぎて気味が悪いほどだった。
エレインから見れば、今の自分は同士だ。しかし違う。自分は仲間を殺して生き延びた。
もしニミュエが生きていたなら、エレインのようになっていたのだろうか……。


いよいよ標的が近い。これを乗り越えれば、サンクチュアリへの加入が認められる。
そうなれば、自分もきっとゴルロイスに会うだろう。
ゴルロイスを殺せるだろう。
自分がサンクチュアリの門を叩いたのは、内に入りゴルロイスを暗殺するためなのだから。
と、物陰から飛び出した魔物がエレインを跳ね飛ばした。続いて、魔物の殺気が自分へ突き刺さる。
オマエには死なれたくない――瀕死の体でそんなことを言うエレイン。
「オマエは生きろ。私を踏み台にして」
そんなことはできない。自分は即答し、最後の魔物に立ち向かった。ニミュエの時と同じ思いを味わうのはごめんだ。


魔物を倒し息を切らす自分に、合格だ、と声がかけられた。エレインだ。
とても重傷には見えない。どうやらあれは演技で、自分は試されたらしい。
エレインこそが、サンクチュアリの首謀者ゴルロイスだった。その目で志願者を見極めにきたのだろう。
さらに「さあ、どうする?私を殺すか?」などと尋ねてくる。暗殺者など、もう珍しくもないという。
ニミュエとダブってしまった時点で、自分に彼女は殺せない。やめておくと答えた自分を、エレインは不思議そうに笑った。
「気に入ったよ。いつかゆっくり話をしよう」
差し出された手を握る。
今回の旅は、あの時とは違う、穏やかな終わりを迎えた。



40 :ゲーム好き名無しさん:2014/01/25(土) 19:15:25.74 ID:iV30SRNsO
ソウルサクリファイスのサブストーリー、以上五人で終了です。
ついでに>>9を説明しとくと
ソルサク世界には「永劫回帰」なる説がある
平和な世界に悪い魔法使いが現れて長い長い間世界を牛耳るが
神が無名のある魔法使いを送り込むことにより、世界は再び平和になる
それが繰り返されているという考え方
作中でも「古い文献によると世界は何度か聖杯により蘇っているらしい」と言われている
つまり「マーリン」と無名の魔法使い、マーリンと主人公は…ということ

 






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