ゼノサーガ エピソードI 力への意志

 

・要約版(ゼノサーガシリーズ全体の要約):要約スレpart3-23,112,114~118

 

・詳細版:part12-594~610,>>14-32~41


23 :ゲーム好き名無しさん:2008/12/26(金) 19:41:05 ID:j1iAV0OwO
ゼノサーガシリーズ

人々の拒絶し合う精神や、ウ・ドゥと呼ばれる高次元の波動とかの影響で
宇宙は一般人の知らないところで徐々に崩壊しており
そのうち滅亡を迎えるのがほぼ確実になっていた。

有史以前から生きてる超人ヴィルヘルムは、宇宙の滅亡は不可避だと結論し
アンドロイドKOS-MOSを造って古代に居た「マリア」という能力者を復活再現しようとする
マリアの能力を利用すれば滅びかけた宇宙を原初までリセットすることができるのだ。
リセットしても記憶を失った人類は同じ歴史を辿ってまた滅亡に向かうのだが
滅びそうになるたびに再びリセットする「永劫回帰」という無限ループにすることで
未来が無いかわりに宇宙を延命できるのだという。
あるいは既にこの宇宙も、
何回も、ひょっとすると何千回以上もループした後の宇宙なのかも知れなかった。

冒険の中でKOS-MOSは覚醒を果たすが、今までのループとわずかに違い、
単なるマリアのよりしろでもプログラムに縛られた機械でもなく、
自分の意思を持ったKOS-MOSという一存在として成長する。
KOS-MOSはヴィルヘルムの意図に反し、閉じたループではなく、
仲間達と共に未来に進み崩壊を避ける道を模索することを選ぶ。

KOS-MOSが離反したことで暴走した強制リセット装置(ラスボス)を叩いて止めて
崩壊の中心を宇宙の僻地に隔離封印する事で滅亡までの時間を引き延ばすことに。
ワープ封印には成功するがKOS-MOSは大破し、いつか仲間と再開することを信じて
ワープ先で長い長いスリープモードに…。

生還した仲間達はそれぞれのやり方で崩壊を阻止するために行動を開始。
幾人かはKOS-MOSのワープ先の星…
かつて「地球」と呼ばれた星を探す果てしない航海に旅立つのだった。

…KOS-MOS関係とラストバトル周り「だけ」でこれだよ
各キャラ各勢力各設定とかちゃんと説明したらどうなるんだ…

112 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 17:15:47 ID:j2QXEqlJ0
>>23のゼノサーガを書いた者なんだが、これ一応、事の真相ではあるんだけど
これが明らかになるのがEP3の終盤なんで「あらすじ」っていうのとは違う気がしてきた。
EP1の前半だけ見てからこれを読むと
「この展開からどうやってこんなのに繋がるんだ・・・」って気分になるかもしれないと思った。

一応ゲーム展開のあらすじという方向でも纏めてみたんだが、要ります?
できるかぎり要約した割にかなり長くなってしまったんだけど

114 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21:55:07 ID:j2QXEqlJ0
んじゃ行きます

ゼノサーガ パイドパイパー (携帯アプリ)
人類が、とある災厄に見舞われて地球を脱出して数千年(本編の約百年前)
情報送信だけでなく物質の転送や仮想空間の構築、超光速航法も可能にした超空間ネット
「ウーヌス・ムンドゥス・ネットワーク(略称U.M.N.)」の恩恵を受け人類は暮らしていた。
だがアブラクサスという惑星で、U.M.N.仮想空間内で人が連続して殺される怪事件が発生。
星団連邦警察の対テロ隊長ジャンは「ヴォイジャー」を名乗るテロリストの犯行と見て調査を進める。

ついにヴォイジャーの正体を突き止めるがそれはジャンの身近な人物だった。
ヴォイジャーは様々な超常現象を起こす無限エネルギー物体「ゾハル」を使うために
ゾハルにアクセスできる因子を持った人間の脳内情報を集めていたのだ。

目論見それ自体は失敗するが、ヴィルヘルムに資質を見出され
物理的に死なない不滅の存在テスタメントの一体に変貌するヴォイジャー。
逃げ場も勝ち目も失い家族も殺されたジャンに、ヴォイジャーは自分の仲間になるか、
それとも戦って死んで今までの被害者のように精神をコレクションされるか、という選択を迫る。
だがジャンは第3の選択として、自棄でも逃避でもなく、
自分の意思と人間としての尊厳を守るために自らの命を絶つのだった。

しかし後に、優秀な能力を持つジャンの遺体は
サイボーグ体「ジグラット8(通称ジギー)」として意に沿わぬ形で目覚める・・・
本編に続く。

本編中でのジギーは、大切なものを守れぬまま死も許されず存在し続ける苦痛に、意識をも機械化することを望むが
新たな仲間達との触れ合いにより人としての意思の在り様を再び見つけ出す。
そして犠牲を払いながらもついにヴォイジャーとの決着をつけ、
今度こそ大切なものを守り続けて生きていく事を誓うのだった。

115 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21:56:13 ID:j2QXEqlJ0
ゼノサーガ EP1
ヴィルヘルムがCEOを務める大企業ヴェクター、化粧品から戦艦まで扱う世界規模の一大コングロマリット・・・
そこに所属する若き女技術者シオンは、今は亡き恋人の天才科学者ケビンの研究を引き継ぎ、
人類を襲う謎の敵「グノーシス」に対抗するアンドロイドKOS-MOSを開発していた。
しかし乗っていた宇宙船が襲われ、グノーシスに接触され死にかけるシオン。
だが起動命令も出していないのに何故かひとりでに目覚めたKOS-MOSによって助けられる。

船を脱出したシオン達は、成り行きで(・・・に見えるが実は運命に仕組まれて)
モモというレアリエン(労働用人造人間、アンドロイドと違いナマの生物で、明確な感情がある)達と出会い、
そのモモの脳内に封印された、ゾハルや超技術について記された「Y資料」というデータを狙う宗教結社オルムス
(の一部であるU-TIC機関)や狂気の不死人アルベドとの戦いに巻き込まれていく。

感情を見せず、時に残酷な振る舞いをしたり、稀に仕様書には無い奇跡のような謎の力を発揮するKOS-MOS。
それらの行動や、KOS-MOSデータ内面世界に不可思議な領域があるのを垣間見て、KOS-MOSへの不安を抱くシオン。
だがKOS-MOSに幾度と無く助けられたこと、創り手としての愛情、亡きケビンとの絆を確認したい、との思いなどから、
シオンはKOS-MOSのことをもっと知りたい、共に生きたいという思いを強くするのだった。
116 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21:57:00 ID:j2QXEqlJ0
ゼノサーガ EP2
グノーシスを打破するため、U-TIC機関にゾハルを渡さず確保するためにも、モモ内部のY資料を解析しようとする。
だがアルベドによって仕掛けられた論理トラップによってY資料は流出してしまう。
ゾハルが封印された惑星ミルチアへのルートが明らかになり、各陣営は一斉に動き、
ミルチア宙域では熾烈な戦闘が展開されるが、
最終的にゾハルはオルムスの教皇セルギウスの手に落ちる。

神の遺物と呼ばれる超技術で造られた、破壊兵器プロトオメガをゾハルの力で起動させ、
圧倒的な力を振るうセルギウス。だがセルギウスには高邁な理想は無く、矮小な我欲しかなかった。
その意思の小ささに、ヴィルヘルムはテスタメント達を遣わしセルギウスを処分する。
そこを横からかっさらうようにアルベドがゾハルを手に入れる。

シオン達の仲間の一人、ルベド(通称Jr.)はかつて、
特殊能力を持った兵器という役割で遺伝子操作されアルベドと共に産まれた。
兵器として死ぬことから逃れようとしたJr.は結果的に兄弟達を見捨てることになってしまったことを悔やみ続け、
アルベドとJr.は互いに愛憎入り混じる複雑な感情を抱いていた。
Jr.はゾハルの力で変容したアルベドの元に単身乗り込み、因縁の戦いに終止符を打つ。
実はアルベドの望みはJr.の手で死ぬことだった。今際の際に和解する二人。
だがゾハルは何処かへと消えた。ヴィルヘルムが笑みを漏らす・・・

117 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21:58:01 ID:j2QXEqlJ0
ゼノサーガ ミッシングイヤー
今までとは違うパターンのグノーシス被害が出始める。
本来なら群れても統率はされていないはずのグノーシスが秩序だった動きを見せ、
都市部に被害が集中し、そして短時間急襲した後にはすぐ消えてしまうのだ。

グノーシス・テロと呼ばれる一連の現象の裏にはグリモアという数千年前に死んだはずの男の存在があった。
グリモアはまだ人類がロスト・エルサレム(地球)に居た頃に人間を使ってゾハルを操る実験をしていた研究者であり、
その実験で娘を消滅させてしまっていた。
実験で使われたゾハル制御プログラム「レメゲトン」を復元すれば娘を復活させられると信じたグリモアは、
精神データとなってヴェクターの最重要データ区画に潜み、数千年の時を経て行動を開始したのだ。

レメゲトンが発する波動「ネピリムの歌声」に引き寄せられるグノーシス達を誘導し、
断片化してU.M.N.内に四散してしまったレメゲトンを集めていたグリモア。
だが世界をグノーシスの危機に陥れかねないその暴挙はシオン達によって止められる。
しかしシオンは自分の所属するヴェクターの上層部がグリモアを援助していたこと、
この事件の一因となった14年前の非道な人体実験に自分の父が関っていたこと等を知ってしまい、
やがて不信と苦悩からヴェクターを退社して独自の調査を始める事になる。

118 :ゲーム好き名無しさん:2009/02/24(火) 21:58:49 ID:j2QXEqlJ0
ゼノサーガ EP3
自覚はなかったが、シオンは無意識の内にゾハルにアクセスする強い能力を持っていた。
テスタメント達は過去の惨劇を目の前で再現する精神攻撃を仕掛け、無理矢理シオンの能力を引き出す。
シオンの悲鳴に誘われ、ゾハルが姿を現す。
グノーシス、オルムス、Jr.達の親のユーリエフ・・・ゾハルを求める各勢力が集結し終末的な争いを繰り広げる。
戦いの中で一人ひとり過去を清算し、因縁に決着をつける仲間達。
だがそれらは全てヴィルヘルムの手の上の出来事だった。

ゾハルの稼動で加速度的に被害を増すグノーシス現象。
グノーシスの正体はゾハルの波動を受け、恐怖から他者や世界を拒絶した生命の成れの果てだという。
拒絶し合う意識はグノーシスとなって人類を殺すだけではなく、やがて宇宙の構造そのものを散逸・崩壊させる。
そうなる前に全てを始まりに戻す「永劫回帰」に必要な因子を、ヴィルヘルムは漁夫の利で集めていた。

シオンの能力は「マリアの巫女」と呼ばれた女性の再来であり、マリアの力を引き出す触媒だった。
シオンがKOS-MOSの開発を引き継いだのは、KOS-MOSをマリアとして目覚めさせるために全て仕組まれたことだったのだ。
目の前で両親や親友が惨殺される光景を再び見せられたり、能力の副作用で死ぬと宣告されたり
宇宙の崩壊の一因は自分にあると突きつけられたり、死んだはずの元恋人ケビンがテスタメントになって敵側に居たり、と
精神的にボロボロになったシオンは誘導されるがままKOS-MOSを目覚めさせ、ヴィルヘルムやケビンに操られかける。
果たして宇宙はどうなるのか。人々の魂すら失われる完全な崩壊を迎えるのか、
それとも同じ歴史・同じ日々を延々と繰り返す世界になるのか・・・

あとは>>23に続く



594 名無しさん@お腹いっぱい。 sage05/02/2802:46:14ID:cMIoi3AX
すいません、いっぺんにのせてくれるとありがたい。
と意見がありましたが、凶悪的なほど長文になる恐れになってきまして、
分けて載せていくことにします。ご期待に沿えず申し訳ございません。
できるだけ短くしよう、短くしようと頑張っているのですが、
ゼノサーガは物語の伏線が多すぎて、最初を詳しくしないとさっぱり意味がわからないのです。
ですので、最初は詳しく、後半は簡潔に行こうと思います。
ゼノサーガ特有の意味がわからない用語は出来るだけ省き、わかりやすい用語に差し替えました。
何度も出てくる難しい用語はそのままにしてあります。長文になることをご了承ください。


595 Xenosaga Episode1 sage 05/02/28 02:47:35 ID:cMIoi3AX
Xenosaga Episode 1 ~Der Wille Zur Macht~

時にAD20××年。
ケニア北部、トゥカルナ湖で古代遺跡の発掘が行われていた。
発掘員隊長、マスダは、現代の全ての事象の根源であるゾハルを発掘した。
ゾハルは光を放ち、その光は雲を貫き、空へと向かっていった。

全てはここから始まる。


 

596 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:48:57 ID:cMIoi3AX

~4000年後~

ゾハルの発掘のあと、大規模な人の消失事件が発生した。
生き残った人々は移民船に乗り、宇宙へ旅に出た。
移民先を見出す数百年かかり、最初の移民惑星を「セカンド・イェルサレム」と名付けた。
だがしかし、人はそこで戦争を繰り広げ、過ちを犯し続け、いくつかの主星を失い続けた。
現在の主星はフィフス・イェルサレム。この星に、ようやくひとつの国家的統合を達成する。

星団連邦政府所属、巡洋艦ヴォークリンデ。館内のKOS-MOS研究室では、研究員たちが慌しく働いていた。
KOS-MOS(以下、コスモスと呼ぶ)・・対グノーシスヒト型掃討兵器である彼女・・・。
その彼女を開発している部署の主任であるシオン=ウヅキは起動実験を始めた。
シオンは技術開発者としてのプライドと、主任としての立場。
そして、コスモスが兵器として使われることへ悲しさを持っていた。

「これより起動実験を開始します。インターコネクション、始めてください」
シオンは起動実験をするための装置に座った。
その起動実験とは、仮想空間にシオンを送りこみ、そこでコスモスのデータを取るというものだった。

「ゲージパーテイションを解放します。解放まであと60秒。59,58,57・・・。」
「各モニタリング正常。」
「パーテイション解放。コスモス、素体形態に入ります。」


 

597 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:50:24 ID:cMIoi3AX

シオンが仮想世界に入った。ただ少々視界が悪い。
「アレン君、視覚の接続状態が悪いみたいなんだけど・・・。」
「あぁ、すいません。ちょっと待ってください。今、補正します。どうです?主任。」
コスモス開発局副主任であるアレンが答えた。
アレンはシオンに淡い恋心を抱いていて、毎回のこの実験ではソワソワしている。
なぜかというと、この実験中に事故がおこると、シオンが仮想世界から帰ってこれなくなってしまうからだ。

世界が一瞬光に包まれ、コスモスが仮想世界に降り立った。
「おはよう、コスモス。調子はどう?」
「おはようございます、シオン。すべて非常に順調です。」
機械的な、無感情な返事が響く。
「せっかく起きてもらって悪いんだけど、今回も起動実験なの。一連のチェックを終了したら、
あなたにはまた眠ってもらうことになるわ。」
「そうですか」
「悲しいとか・・・感じる?」
その機械的な対応に少し寂しさを感じたのか、シオンは親しみを込めて話しかけた。

「私の寛恕言うプログラムは、創造主である人間が使いやすいように作られています。
今回の場合は、あなた・・・。すなわち、ヴェクター第一開発局、コスモス開発計画担当主幹技師、シオン=ウヅキとの
関係を円滑に保つために、「悲しい」という感情を表現する必要がある。と私のプログラムが判断した場合に限り、
そのように振舞います。ですが、現在、その必要はない。と判断します。」

「ははは・・・そうよね、それは私が一番知っていることなのよね。」
複雑な表情を浮かべた。
「ご理解いただけて幸いです。」
コスモスの機械的な言葉が仮想空間に響く。
シオンは、再度複雑な表情を浮かべた。


 

598 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:52:42 ID:cMIoi3AX
今回の実験は、仮想世界におかれた仮想の敵を倒し、コスモスの戦闘データを取るというものだった。
「ねぇ、アレン君。今回は手順400を初めてみないかしら?」
「よ、400って、主任、先月のことを忘れたわけではないでしょう?
あと10秒対応が遅れてたらそこから戻ってこれないような状態じゃなかったですか。」
シオンのことを心配するアレンは、声を荒げた。

「大丈夫、いざとなったら自力で脱出するから、それに、あなただって試したいでしょう?
この実験のために、徹夜でいろいろ取り組んでたじゃない。」
「それはそうですが・・。」
「じゃ、決まり。始めて。」
シオンに興奮の色が隠せない。これから起こることに何かを期待しているかのように。
「知りませんよ?万が一の時にはこっちで強制的に切りますからね。」
「了解、了解。」
「あと、メニューにないことするのなしですよ?」
「わかってるってば。」

「んったく、気軽にいってくれちゃて。そのたびに寿命をちじめられるこっちの身にもなってほしいよ」
アレンは頭をかきむしりながら、シオンに聞こえないように、ぼやいた。
「副主任、ウヅキ主任のことになると、特に気を使われますからね。もう余命幾ばくもないんじゃないですか?」
研究員がアレンをからかった。皆、アレンの恋心に気づいているようだ。
「う、うるさい、余計なこといってないで、用意できてるのか?少しでも異常があったら、即刻強制終了するからな。」

手順400が始まった。状況は順調で、研究員たちも安堵の表情をうかべた。
「特に変わったことは見わたりません。状況、安定しています。こりゃあ行けますよ。先月の汚名、返上だ」
「だといいがな・・。」
不安げに、アレンがつぶやいた。

「コスモス、クリアポイントに到着。ターゲットモンスター、G型へ変換。表示、始めます。」
コスモスの前に、巨大なモンスターが現れた。コスモスが戦闘態勢に入る。


599 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:54:30 ID:cMIoi3AX
そのとき、プログラムに異常が発生した。コスモスの戦闘能力が過剰に上昇し、暴走しかけているのだ。
だが、シオンはそのような状況をものともしなかった。
「アレン君、これからターゲットとの戦闘態勢に入ります。データ取りよろしく。」
「そんな!?主任、こんな不安定な状況で戦闘なんて危険すぎます!」
アレンは声を荒げた。
「大丈夫、まだいけるわ。ヒルベルトを試します。」
「しゅ、主任、メニューに無い行為はしないって・・・!!」
シオンはその言葉を無視するかのように、コスモスに話しかけた。
「コスモス、ヒルベルト発動。」
「了解しました。ヒルベルトエフェクト発動します。」

プログラムが暴走し、シオンの脳が危険な状態になってきた。
アレンはプログラムを強制停止させ、シオンを引き戻そうとした。
だがしかし、シオンがそれを拒絶し、プログラムが作動しなかった。

「限界です!崩壊まであと10秒・・・。」
「クソったれ!」
アレンは悲痛ともとれる叫び声をあげた。
「主任・・・。・・・そうだ・・・。」

仮想空間にいるシオン。
彼女の前に、光が集まってきた。その光はやがて少女のような人影へと変わっていった。
少女はゆっくりと顔をあげ、シオンと視線を交わした。

そのとき、仮想空間へダイブしたアレンがシオンの手を掴み、仮想世界から引き戻した。
仮想空間は光に包まれていく・・・。


 

600 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:56:17 ID:cMIoi3AX
「主任はっ!?」
目覚めたアレンは、シオンの元へ急いで駆けつけた。
「えぇ、ありがとう、少し、粘り過ぎちゃった・・かな?」
あの仮想空間で見た少女は何だったのか。シオンは夢見心地だった。
・・・あの少女とは・・どこかで・・。

「??何かあったんですか?」
「ううん・・・何でもないの。さぁ、急いでデータ解析を始めましょう。そろそろ上から催促がくる頃だわ。」


「本艦は3分後にゲートアウトします。非常時に備えてください。」
突然、艦内アナウンスが鳴り響いた。


601 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 02:58:04 ID:cMIoi3AX

「全艦、ゲートアウト完了。」
「次のゲートジャンプができるまで7時間36分。それまでジャンプは不可能になります。」

「次で最後か・・・。」
艦長と思える人物が虚空を目上げた。目に落ち着きが無い。
「はい。次のゲートジャンプとなります。あと少しの辛抱です。」
艦長の横に立っている男が言った。
見た目は普通のマジメそうな30後半の男だ。その鋭い眼光を除いて。

「大丈夫ですよ。ここまでくれば接触率低いですし。それに小惑星も多いですから、”ヤツラ”から
身を隠すには都合が良いものです。」
「ふん、気楽なものだな。小惑星なぞ、気休め程度にしかならんぞ。」
男は、声を沈めオペレーターを睨んだ。

「厳しいな、アンドリュー中佐。何かあったのか?」
「いえ・・・別に・・・。」
アンドリューという名の男は下にうつむきいた。

「例の物体を回収してから緊張の連続でしたからね。中佐のお気持ち、わかります。」
その”例の物体”に疑問点を持っていたのか、一人のオペレーターが質問した。
「艦長、差し支えない範囲で結構なので教えていただけないでしょうか?
当初の作戦の目的は、惑星消滅事件の調和および調査隊の護衛であったはずです。
それが、”あの物体”を回収してから様相がいっぺんしたように感じられます。
いったいなんなのですか?あれは。」

「さて、調査隊からは何の報告は受け取らんよ。ただ、先日伝えた”ヤツら”もあの物体を狙っているらしい。
という情報だけはえている。もちろん非公式だがね。」
艦長は、私もよくわかっていない。という表情をしている。
「回収のさい、何名かの犠牲者が出たという噂がありますが。」
「それが事実だとしても、われわれに知る権利がない。もともと調査隊も我々とは別の命令系統で動いているし、
我々に与えられた命令書にも『当該宙域にて何らかの”回収物”が存在した場合、全ての事象よりもその確保を最優先す』
と書かれているだけだ。」

「全ての事象・・・といいますと?」
「我々の命よりも。というわけだ。」
アンドリューが言い捨てた。
「そう脅すな。まぁ、星団連邦政府にしても今回の任務はそれだけ重要な作戦ということだろう。
気を引き締めて頼むぞ。」
艦長が微笑みながら皆に言った。
「そうですね。本艦には”有事の際の切り札”も配備されていることですし。」
「おぉ、そうだ。切り札のことなんだが、すまんが中尉、ウヅキ主任に報告データが整い次第、
ブリッジに来るように伝えてくれ。それと、これまでのデータも提出するように・・と。」
「了解しました。」


602 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:00:04 ID:cMIoi3AX

コスモス研究室に電話がかかってきた。
「・・・・了解しました。30分後にそちらに出頭します。」
「早速きましたね。出頭命令」
「でしょ?私の勘って、結構当たるんだから。」
シオンが得意気に答える。
「では、これは提出するデータです。」
「ありがとう。これだけでいいわ。」
最近入ったばかりの新人研究員がシオンに声をかけた。
「主任・・あの・・・よろしいですか?」
「なに?」
「軍はコスモスの実働データを求めています。いいのですか?いつまでもシミュレートデータだけで。」
「うーん、、それ言われると痛いんだけどね、、。でも、出来ることならコスモスには
いつまでも素敵な夢を見ていてほしいんだ。」
シオンは困ったような表情をしている。目も下にうつむいている。
「シミュレートではあれほど無茶をされるのに、なぜ実働となるとあれほど慎重になるのですか?
自分はコスモスが稼動している姿が見たいのです。現状で十分いけるはずです。」
シオンの困った表情を見て、アレンが口を挟んだ。
シオンは、2年前の事故があってから、実働には慎重になっているのだ。
アレンはそのことを知っているし、何より、彼女の困った顔を見たくなかった。
「現状でわざわざお姫様を起こさす必要はないよ。はいこれ、コスモスの装備要項。
連中を納得させる一助にはなるでしょ?
「サンキュー。気が利くね。」
アレンの助け舟にありがたく思ったのか、シオンはアレンに微笑んだ。
「じゃ、いってきまーす。」
笑顔で研究室を出て行くシオン、それを見るアレンの顔は、どこから見てもほころんでいる。
「世話女房ぶりも板についてきたんじゃないですか?副主任。」
同僚のトガシがにやつきながら研究所の後片付けをしている。
「な、何にやついてるんだよ、トガシ。」
顔を赤らめながら、アレンはシオンのデスクの片付けを始めた。
そこには肝心のデータフォルダが忘れられておいてあった。
「はぁ、、またか・・しかたないな・・。」
だが、アレンは少し喜んだ。二人きりになる口実が出来たからだ。
その感情が顔に出たのか、トガシがからかう。
「よかったですね。二人きりになれる口実ができて。ついでに食事でも誘って見ちゃどうです?
こっちは僕らでやっときますから。」
「行くとき行かなきゃ、ダメですよ、副主任。」
「そ、そんなつもりじゃないって言ってるだろう!じ、じゃ、ちょっと渡してくるよ。」
舌をかみながら、アレンは言った。

「がんばってー。」
同僚たち一同の声が聞こえる。アレンはその声を聞きながら研究室を出た。
彼は奥手だ。シオンのことは愛しているはずなのに、言うことができない。
そんな彼はぼやく。
「僕だって・・行けるもんなら、行きたいさ・・。」と。


603 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:01:52 ID:cMIoi3AX

シオンはブリッジへの道を歩いていた。その途中にある格納庫。そこにはゾハルがあった。
彼女は格納庫を通りながら、考えていた。やはり、みんな稼動してるコスモスを見たいのか。
2年前の、彼もそういっていた・・・。

<<2年前のコスモス開発局>>
シオンは残って残業をしていた。あしたまでにまとめておくデータがあったからだ。
パソコンに向かう彼女の後ろに、男性の姿があった。
「まだ残っていたのかい?無理して体壊しちゃ、何にもならないぞ?」
微笑みながらシオンに話しかけた。手には手包みをぶらさげている。
「あ、お疲れ様です。明日までにどうしてもまとめておくデータがあったものですから。
ゲビン先輩こそ、こんな時間までどうなされたんですか?」
「はい、差し入れ。」
ケビンは彼女の横に手包みを置いた。そして、コスモスの眠っている特殊な装置のほうへ歩いていった。
シオンもその後に続く。何も警戒しないということは、彼女は彼に心を許しているということだろう。
ケビンはその装置を見ながら、つぶやいた。
「実は、ある悩み事があってね、寝付けないんだ。」
「悩み事?」
「明日、いよいよ彼女は目覚める。その姿を見るのはとても楽しみなんだけど。目覚めた彼女になんと声をかけたらいいのか
それで悩んでいたんだ。おかしいだろう?」
「おはよう・・・でいいんじゃないですか?」
シオンは微笑んだ。そしてコスモスの眠っている装置を触った。
「おはようかい?」
「朝起きたら、やっぱりおはよう、ですよ。」
「そうか・・・これでぐっする眠れそうだよ。ありがとう。」
ケビンは彼女の肩に手を乗せ、微笑んだ。

・・・・そうだよね。みんなも早く見たいよね・・・。
シオンは彼との会話を思い出ながら、ゾハルを見上げた。
その瞬間、鈴のような音が鳴り響くと同時に、シオン以外の周りすべてが動きを止めた。
静寂・・・その静寂の中に、再び鈴の音のような金属音が響く。
その音が鳴り響いている源に、彼女は仮想空間で見た少女を見つけ出した。
少女はシオンに何かを伝えようとしているようだが、彼女にはその言葉は届かない。
少女は話し終えると、ゾハルの中に吸い込まれていく。シオンはその後を追い、ゾハルに触れた。
するとゾハルの表面に、水面のように波紋が広がった。
シオンは気がついたら、ゾハルの前に倒れこんでいた。
シオンは手を眺める。ゾハルに触れたことは、幻だったのだろうか・・。


 

604 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:03:24 ID:cMIoi3AX

さっきのことは何だったのだろうか?彼女は考え込んでいた。
後ろから声が聞こえる。聞いたような声だ。誰だろう。彼女は振り向いた。
「アレン君!?」
「アレン君、じゃないですよ主任。肝心のデータ忘れていったでしょ?
危ないですよ、ぼーっとしながら歩いてると。」
「うん、ごめんね、ちょっと考え事してたから。」
そのとき、再び鈴の音がした。彼女はあたりを見渡す。だが、少女の姿はない。
「どうかしましたか?主任。」
「ん?うん・・気のせいよね。きっと。」
シオンは気に留めず格納庫を後にした。
しかし、彼女の後ろには二人を見つめる少女の姿があった。

アレンに先ほどのコスモスの件について感謝を言っていると、彼女に突然呼び出しがなった。

レアリエンの調整の呼び出しだ。
レアリエン・・合成人間といわれる彼らは、人間が過酷な環境を克服し、人間のリスクを削減するために
人によって作られた亜人間。彼らは使い捨て可能な労働力として社会に浸透し、
人間によって消費されていた。すなわち、奴隷である。

奴隷としての立場は14年前のミルチア戦争まで続き、その後社会的な権利を有する存在となった。
だが、レアリエンは工業製品であるというのには変わりが無い。彼らは生産されるのである。消費されるために。
そのレアリエンも調整(ケア)される必要がある。自身の自意識が芽生えたり、精神が不安定になることがある。
それをケアするのが、シオンは好きだった。なぜかというと、不安定なままのレアリエンは、廃棄されるからだ。


605 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:05:15 ID:cMIoi3AX

シオンはレアリエン調整室へと向かった。
「どうも、シオンです。」
「あぁ、どうもウヅキさん、すみません、いつもいつも。」
人のよさそうで、髪をオールバックにしたカスパーゼが話しかけてきた。
目には疲れの色が浮かんでいる。人員不足だろう。
「いいんですよ、カスパーゼ大尉。みんな(レアリエン)にはいつも元気でいてほしいから・・。」
カスパーゼはシオンに今回のトラブルを話した。シオンは着々とトラブルを解決していく。
「一応調整しておきましたけど、また何かありましたらヴェクター本社までご連絡ください。
そちらで本格的なケアをされたほうが良いと思いますから」
「わかりました。ありがとうございます。
しかし、すごいですね。コスモスの開発だけでなく、レアリエンたちのメンタルケアまでこなすとは・・・。」
「そんな、全部上司の受け売りです。それに、私は最初、この部署が志望だったんです。
実は、今の仕事が終わったらこっちに転属願いを出そうかと思っているんですよ。」
シオンは眠っているレアリエンを見つめた。その表情は、眠っている我が子を見る表情に似ている。
「第一開発局は、エリート中のエリートが配属されるところでしょう?それなのに転属願いなのですか?」
「ええ、家族からもよく言われるんですよ。何かの書類ミスに違いない。ってよく言われますし。
私もそう思います。それに、、彼らのこと、もっと知りたいんですよ。」

「そんな連中のことを知る必要もなかろう!?」
声の方向に振り返ると、眼光の鋭い金髪の男がいた。
背が高く、物腰が明らかに軍人と思わせる。彼の顔右頬の皮膚は、色が変わり、硬くなっている。やけどのように・・。
「バージル中尉!?」
カスパーゼが、この突然の来訪客に驚いたようだ。声の調子からも、あまり好ましい客ではないらしい。
「匂いだ・・この匂い。なぁ、あんたも感じないか、この匂い。吐き気を催す匂いだ・・。」
バージルはまるで汚い物を見るかのように、あたりを見回した。
シオンは絶句している。言葉も出ない。


606 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:06:21 ID:cMIoi3AX
バージルは毎回来ては、何かとレアリエンを罵っているのだろう。
カスパーゼは、声を荒げ、バージルに食って掛かった。
「いい加減にしないか!少佐から事前に指示はあったろう?今回の作戦はA.G.W.Sと
新型レアリエンとの相互支援も目的としているんじゃなかったのか?それをお前は・・・。」
「相互支援だ!?はん!ヤツら相手に、実戦で使える保障なんてない、
”戦闘用レアリエン”との相互支援なんざ、俺は願い下げだぜ!」

「お言葉ですけど・・・彼ら戦闘用レアリエンは優秀な兵士・・・。」
正気を取り戻したシオンも、バージルへ反論した。
「彼らぁ?たかが備品を人間扱いかい。」
シオンの抗議も、バージルは聞く耳をもたない。
「あ、それ問題発言ですよ。彼らは私たちと同様、知性も感情も備わっているし、
それにレアリエンの基本的人権は4763年に制定されたミルチア懸賞で謳われているはずです。」
「お為ごかしか。反吐が出るぜ。表面上いくら人道主義とっても、お前たちヴェクターの人間にとっちゃ
備品は備品だろうに。否、”商品”か」
バージルは小バカにするようにシオンを見つめた。

「私たちは彼らを備品扱いも、商品扱いもしてません!」
「ならなぜ、”戦闘用レアリエン”なんて、分類ワケがされているんだ?
それこそ商品扱いしてる証だろう?何をいったところで所詮は戦の道具。それに知っているぜ。
お前たちヴェクターの人間たちは、”商品管理用の緊急制御コード”があるってな。」
シオンは絶句した。確かに・・ある・・。だが、それは・・・。

そのとき、レアリエンの一人が立ち上がり、バージルを見つめた。
「な、何だよ?」
バージルも突然のレアリエンの行動に驚いたのか、たじろいだ。
「中尉のおっしゃるとおり、確かに我々は”商品”として製造され、そのための教育を施されました。
ですが、私は今のこの”仕事に”誇りを持っています。
それは誰にも強制されない”私自信の意志”なのです」


607 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:09:20 ID:cMIoi3AX
<<以下、余談>>
すいません、余談です、読み飛ばしていただいても結構です。
このゲームの副題が、力への意思。知ってる人は知ってると思いますが、これはニーチェの本です。
ドイツの哲学者である、フリードリヒ・ニーチェ。
彼は自分自身でたっている人間こそがもっとも美しく、すばらしい人間と考え、
キリスト教を弱者の宗教と言い、「神は死んだ。」という、有名な言葉も残っています。
たぶんこのゲームの作者はレアリエンという人ではない生物をポイントとして、ニーチェ哲学を語ってみたかったのではないでしょうか。
このレアリエンのセリフでもある”私自身の意思”という言葉。人間は弱い存在で、その弱い存在を認めた上で、
自分は過去にも、未来にも存在してはいない。現在にも自分と同じ人は一人もいないし、これからもいない。
「何か。」を成すためにこの世に連れてこられたと、考えた・・はずです。
だからニーチェは、自分の意思で、その目標への苦難の旅へと向かっている人の、なんて美しいことか!とも言っています。
これが俺自身へのニーチェの全体的な感想です。といっても、ニーチェの著者では、私は若き人々への言葉、力への意思しか読んでませんし、
まったくのど素人の解釈ですから、鵜呑みにすると困ります。たぶん解釈も間違ってる気もしますし・・・。
余談が長引きました。本編の続きを書きます。失礼しました。


608 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:14:52 ID:cMIoi3AX
「ふん、自由意志ってわけか・・。まあいい、今のうちに享受しておけ。
そのうちわかるときがくるさ。この俺のようにな・・・。」
そう言い捨て、バージルは調整室を出て行った。

「すみませんでした、ウヅキさん。昔はあんな奴じゃなかったのですが、あることがきっかけで・・・ね。」
カスパーゼは申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。
「いえ・・彼とは、お知り合い・・何ですか?」
「あいつとは士官学校の同期でね。腐れ縁ってやつです。・・・ミルチアです。」
「そうですか、それで・・・。あ、いけない。ブリッジに出頭しなければならないのです。
それでは失礼します。レアリエンたちはまた後で見ますから。」
「いや、どうもありがとうございます。すいません、嫌な思いを・・。」
そう言い、再びカスパーゼは頭を下げた。

「すいません、遅れてしまって。」
「10分の遅刻ですね。通りで開発も遅れるわけだ。」
アンドリューが、シオンをにらみながら言った。そして、それからアンドリューのシオンに対しての説教が始まった。
コスモスの稼動データがないこと、ここが軍艦であるということに自覚がないシオンに苛立ったのであろう。
途中で、アンドリューに呼び出しがあった。顔が緊張した表情に変わり、そそくさと退室していった。
「ご期待にそえなくて申し訳ありません。」
シオンは艦長に謝った。
「なに、謝ることはないよ。今日は自室に戻って休みなさい。」


609 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:17:49 ID:cMIoi3AX

アンドリューは、焦っていた。まさか、いきなり呼び出しがあるとは思ってもいなかったからだ。
急ぎ足で通信室に行き、通信をつなげた。画面に、顔が映った。司令の顔だ。
右目の上から下にかけての切り傷、冷たい目。
「失態だな・・・。アンドリュー。回収には細心の注意を払えと前もって忠告してあった筈だ。」
「はい、”機関員”に犠牲者が出たことは弁解の余地がありません。ですが、我々も・・・。」
アンドリューは苦い顔をした。機関員に犠牲者が出たのは明らかな失態で、弁解の余地がないからだ。
このことを攻められると思い、下をうつむいた。
「些末な事象など、どうでもよい。問題なのはゾハルに人が接触し、人が”消えた”ということ。
そしてその後、”通常空間に晒した状態”で移送していることだ。そして・・・。
貴様の艦隊にヤツラが接触する推定予測時間は5時間と22分後だ。」
「まさか!?やつらが!?」
驚きを通り越して絶句した。奴らがきたとしたら、このような艦隊では耐えられるわけがないのだからだ。
「だから失態といった。1時間前に増設艦隊を差し向けた。それまでの間、なんとしても保たせろ。」
「ま、間に合うのですか?」
「保たせろ。といっている。幸いにして、貴様の艦には”例の兵器”が搭載されているだろう。」
「お、お言葉ですが、あれはまだ実働試験にさえ写ってないのです!危険すぎます!」
「あれの力は、”貴様が一番良く知っている”だろう?多少不安定でもかまわん。急がせろ。」
「で、ですが・・・。」
「以上だ。」
通信が切れる。
「お待ちください、司令!マーグリス司令!」


610 XenosagaEpisode1 sage 05/02/28 03:19:20 ID:cMIoi3AX

自室に戻り、休んだシオンは夢を見た。
遺跡のような場所にたつシオン。あたりには霧が立ち込めている。
鈴の音が静寂を破る。音のした方を見ると、そこにはあの少女の姿が・・・。

二人は視線を交わすが、少女はふと別の方向に目を向ける。
少女の視線の先には、少年のような人影があった。

「う、、うん・・・。」
夢にうなされるシオン。そのシオンの枕元に立つ少女。
そして少女は何かに気づいたかのように、船の外に目を向ける。


32 名無しさん@お腹いっぱい。 sage2005/03/24(木)01:24:31ID:9P5lIrk+
ゼノサーガep1、行きます。

文章構成上、ストーリー展開が前後したり、
結構話に絡んでるのに文中に出てこないキャラ(アレン、キルシュバ等)が
いたりしますが、ご容赦下さい。


33 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:25:18 ID:9P5lIrk+
星団連邦に所属する惑星アリアドネが、突如として謎の消失を遂げた。
その調査に赴いた巡洋艦ヴォークリンデは、本来の目的である調査もそこそこに、
当該宙域に浮遊していた謎の物体ゾハルエミュレーターを収容し、帰還することになった。
その収容作業中、ゾハルに触れた作業員が消滅すると言う事故が起こっていた。

この巡洋艦ヴォークリンデには、14年前より突如として現れ人類の脅威となった、
グノーシスと言う怪物群に対抗する為のヒト型アンドロイド、コスモスが配備されていた。
しかしながらそのコスモスは、未だ実働試験すら行われておらず、
仮想空間(エンセフェロン)におけるテストをしている段階であった。

ヴェクターインダストリー1局所属のシオン・ウヅキは、そのコスモスの開発主任だ。
彼女は、コスモスに対して、母親や姉のような感情を持っていたが、一方で恐れてもいた。
数年前の実験中、コスモスが暴走し、同僚や愛する人を殺されてしまったからだ。
そのせいか、シオンは実働試験に対して二の足を踏んでいる状態だった。

対グノーシスの切り札として配備されたコスモスが、起き上がる事すら出来ない。
調査に同行した軍関係者からは、その事を毎日のように責められていた。
この日も、試験を終えたシオンは、ブリッヂから呼び出しを受け、開発室を出た。
ブリッヂへ向かう途上、ゾハル格納庫を通った彼女は、そこで少女の幻影を見た。
少女は、何か言いたげな、哀しみを裡に秘めた表情でシオンを見つめていた。
シオンが歩み寄ると少女の幻影は消え、そこには金色に光るゾハルがあるだけだった。

不思議な感覚に囚われながらも、彼女はレアリエン調整室へ向かった。
レアリエン。それは、様々な用途に応じて造られた人造人間のことだ。
シオンは、このレアリエンとの交流を好み、エリート中のエリートが集まる1局から、
レアリエンを扱う3局に転属願いを出しているほどだった。

彼女がレアリエンの調整を手伝っていると、バージルと言う中尉が現れた。
彼はレアリエンを極度に嫌っており、この時も居丈高に見下し、罵った。
現在、レアリエンには人権が認められていると反論するシオンだったが、
それを商品としている事を指摘されると、彼女は言葉を詰まらせた。
「お為ごかしは反吐が出る」そう吐き捨て、中尉は立ち去った。

いい加減寄り道が過ぎたので、かなり遅刻してブリッヂに着いたシオン。
アンドリュー中佐は、それも含めて毎度の如くネチネチと小言を繰り返すが、
緊急呼び出しの通信が入ったため途中で切り上げ、ブリッジを出て行った。
運良く開放されたシオンは、艦長に労われ、自室で休む事にした。


アンドリュー中佐は、画面の向こうのマーグリスに叱責されていた。
U-TIC機関。ゾハル研究の為に創設された政府直属の機関であったが、14年前の
ミルチア紛争を機に、反政府武装集団の色を強め、各方面に工作員を潜入させていた。
マーグリスはそのU-TIC機関の司令であり、アンドリューは工作員の一人だった。
惑星アリアドネの消失も、この組織がゾハルの起動実験をその地で行った結果であり、
調査隊が事件の調査もそこそこに帰還したのも、連邦軍に潜入していたアンドリュー達
の目的が、ゾハルの回収であったからなのだ。

ゾハル。それは、局所事象変異を引き起こし、グノーシスを呼び寄せる。
その危険性から、それを確保して封印しようとする者と、兵力として利用しようとする
者との間で激しい争奪戦が繰り広げられていた。
この非常に危険な物体の取り扱いには、細心にも細心を重ねた注意が必要だった。

しかし、アンドリューたちはその扱いを間違った。
ヴォークリンデには、すでにグノーシスが迫ろうとしていたのだ。
コスモスを使え。その命令に狼狽する中佐を無視し、マーグリスは通信を切った。


34 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:26:16 ID:9P5lIrk+
ブリッヂに警報が鳴り響いた。艦隊前方にグノーシスが出現したのだ。
母船タイプのグノーシスから射出された怪物たちが、次々と艦内に侵入してくる。
対グノーシス用兵器エイグスが出撃するが、通常兵器の効果は無く、撃破されてゆく。
グノーシスに掴まれた人間は白化し、砕け散った。
有効な対抗手段も無いまま、ついにヴォークリンデのブリッヂが沈黙した。

アンドリュー中佐は、宇宙服を着込み、ゾハル格納庫へ向かっていた。
格納庫ごとパージし、ワープさせる。無謀な作戦だったが、中佐にとっては、
コスモスを起動させるよりも遥かにマシな作戦だった。
なぜならば、中佐も、コスモスの暴走事故に立ち会っており、その恐ろしさを
身をもって知っていたからだ。
そもそも、実験中のコスモスを起動させたのも、彼らだった。
コスモスの強奪を目論み、内通者から起動用ギアを受け取ってラボを襲撃した彼らは、
しかしコスモスの暴走により惨殺され、唯一アンドリューだけが生き残った。
今、中佐は死を覚悟しながら、格納庫に向かっていた。

その中佐の覚悟も、無駄となりそうだった。コスモスが自律モードで起動を始めたのだ。
開発室のメンバーが恐怖で凍りつく中、ゆっくりと身を起したコスモスは、シオンを
保護するために動き出した。

その頃シオンは、グノーシスに追われた所をエイグスに乗ったバージルに助けられていた。
しかし彼の攻撃は効果が無く、逆に反撃を受け仲間を失ってしまった。
なにか手段が無いものかと考えた彼は、シオンの携帯端末を奪い、レアリエンを
自爆させる緊急制御コードを起動させた。
爆風が晴れると、彼は歯噛みした。仕留め切れなかったのだ。
反撃を受け、倒れこむバージル。そして、グノーシスはシオンに襲い掛かった。
足元から白化してゆくシオン。彼女が死を覚悟した時、閃光がグノーシスを貫いた。
コスモスの攻撃だった。グノーシスを実数空間に固着するヒルベルトエフェクトを展開
した彼女は、その圧倒的な戦闘能力でグノーシスを掃討した。

ゾハルの格納庫では、アンドリュー中佐が必死で乱れたシステムと格闘していた。
そこへ、脱出艇に乗るためにシオンたちが駆け込んできた。
グノーシスは途切れなく襲い掛かり、抗戦を続けるシオンたち。その中で、
コスモスがバージルごと敵を撃った。バージル、「フェブ…」とうわ言を言いながら即死。
シオンは、コスモスの非道な行動に怒りを露わにしたが、コスモスのプログラムでは、
ヴェクター関係者の保護>敵勢力の殲滅>>>>>それ以外の人間の保護であったため、
コスモスはそのプログラム通り、確実な方法を選択しただけなのだ。
「私は人間ではありません。ただの兵器です」
その言葉にショックを受けるシオンは、鬱然として脱出艇に乗り込んだ。

シオンたちと中佐の乗った脱出艇を見送ったコスモスは、もう一つの目的である
ゾハルの確保の為、周辺に群がるグノーシスを除去しようとした。
しかし、いかにも多勢に無勢であり、結局はゾハルを持ち去られてしまう。
彼女はゾハルが収容されたグノーシス母船にマーキングを施し、その事を本社に報告、
次の司令を受け、第二ミルチアへ向かう事とした。

ヴェクターCEOのヴィルヘルムは、赤の外套者からその報告を受けていた。
「全ての事象は、この"秩序の羅針盤"の示すとおりに動く……」
そう、彼はつぶやき、デスクの上の構造物に目をやった。


35 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:27:52 ID:9P5lIrk+
クーカイ・ファウンデーション所属の不定期貨客船エルザが、ヴォークリンデの
遭難現場に向かっていた。だが、目的は救助ではない。艦の残骸を回収し、
それを売って船長の借金返済の足しにするためだ。
そんなエルザに、コスモスが襲い掛かった。キャノピーにパンチでヒビを入れられ、
第二ミルチアまで乗せてけと脅迫された船長はしぶしぶ承諾した。

ブリッヂにコスモスが入ってくると、脱出艇で漂流していたシオンから通信が入った。
エルザに収容しろと言うシオン。そのまま漂流していれば助けが来ると言うコスモス。
二人が押し問答していると、エルザの乗組員ケイオスが仲裁に入った。
彼は船長の信頼も篤く、その彼の取り成しでシオンたちもエルザに収容され、
第二ミルチアへ向かう事になった。

収容された後、ブリッヂへと挨拶に訪れたシオンたち。そこへ、グノーシスが現れた。
アンドリューが掴まれ、白化して行く。慌てふためくシオンたち。だが、ケイオスが
グノーシスに手をかざすと、グノーシスは霧のように消えてしまった。
これが、ケイオスが船長に信頼されている理由だった。

騒ぎが落ち着いた頃、そのケイオスが、ヴォークリンデでの戦闘で不具合が出たため
エルザの設備で調整をしていたコスモスに近づいていった。
機能を停止して眠っているコスモスに、彼はそっと呟いた。
「やっと会えたね……本当の君はどこに眠っているんだい……?」


プロジェクト・ゾハル。ゾハルの研究を進める事により、全ての事象を論理的に解明し、
また、人類の悲願であるロスト・エルサレム(地球)への帰還を目的とした研究である。
そのプロジェクトを推進する接触小委員会の会議が、連邦主星フィフス・エルサレムの
衛星軌道上のコロニーで開かれていた。

オリジナル・ゾハルが眠る、閉ざされた旧ミルチアへの道。その道を開くための鍵となる
Y資料がU-TIC機関に奪われた。
U-TIC機関の責任者であり、彼以外にゾハルを解明する事は不可能とさえ言われた
天才ヨアキム・ミズラヒ。彼が遺したY資料なくしてもまた、ゾハルの研究は進まない。

その奪還の為、U-TIC機関の拠点への潜入を命令されたのは、ジグラット8と言う
型式番号のついたサイボーグだった。彼が見せられたのは一人の少女の写真。
百式観測用レアリエン。ヨアキムの最後の発明であり、対グノーシス用の索敵能力と
ヒルベルトエフェクト展開能力を付与されたレアリエンだ。
百式は、彼と、その元妻であり現接触小委員会委員であるユリ・ミズラヒの亡児サクラを
モデルとして創られ、そのプロトタイプであるモモには、Y資料が封印されていた。

成功の報酬として、ジグラット8は、自らの生体脳を人工部品に換装する事を望んだ。
彼は生前、ある男に妻子を殺され、それを苦に自殺を遂げていた。
サイボーグとして蘇ってからも、その記憶が彼を苦しめ続けていたのだ。

小惑星プレロマ。古代宗教の聖堂だったこの場所に、U-TIC機関は拠点を構えていた。
そこへ潜入し、モモを見つけ出したジグラット8は、モモに「ジギー」などと愛称を
つけられたり、マーグリスと一戦交えたりしながら脱出。作戦を成功させた。

追っ手を撒いた後、モモは早速フィフス・エルサレムへ船を向けようとした。
だがユリの指令では移送先は第二ミルチアとなっていた。その事をジギーから告げられ
ると、モモは寂しそうな顔をした。彼女は「ママ」に会うのを楽しみにしていたのだ。

その頃エルザではシオン特製のカレーが振舞われ、皆、ひと時の休息を取っていた。
そんな中、アンドリュー中佐は、未だ機能を停止したままのコスモスに見入っていた。
彼女に銃を向けるが、恐怖で手が震え撃つ事ができなかった。


36 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:28:44 ID:9P5lIrk+
シオンは、本社への連絡の中で、局長に対して声を張り上げた。
第二ミルチア到着後、コスモスを2局に引き渡すと言われたのだ。
シオンは、コスモスが何の命令も無く独自に稼動しており、実戦配備は時期尚早と説明、
コスモスの監察を続ける事を局長に認めさせた。

エルザが第二ミルチアへ向けてハイパースペース内を航行していた時、同じくジギー達も
その中にいた。しかも、U-TICの無人兵器に張り付かれている状態だった。
ジギー達からエルザに向けて救難信号が発せられた。
初めは日和見を決め込んでいた船長だったが、エルザが被害を受けるや一変、
ジギーたちを援護して敵勢力を掃討、彼らを船内に収容した。

落ち着いた所で話を聞くと、ジギー達も第二ミルチアに行くというので相乗りする事に。
だが、先の戦闘でダメージを受けた船を修復する為、まず手近なコロニーに向かった。

その途上、アンドリューはプレロマに通信を入れていた。百式を確保したと。
だが、マーグリスは帰還命令を伝えただけで、早々に通信を切った。
そのマーグリスの下に、謎の男アルベドが現れた。彼はモモを連れ戻すと言い残し、
狂ったような笑い声を上げながら立ち去った。
「……モモ…か……。可愛いペシェめ……」
マーグリスの副官ペレグリーは、アルベドに任せることの危惧を口にしたが、
利用価値はあると、マーグリスは言う。目的は違うが、必要な物は同じなのだと。


惑星アリアドネのあった座標に、クーカイ・ファウンデーションの武装艦デュランダルが
停泊している。この宙域の調査をするためだ。
クーカイ・ファウンデーション。14年前のミルチア紛争の事後処理の為に設立された、
財団法人である。紛争後の武力衝突に対抗するために備えた武装は、連邦艦隊にも
匹敵するとまで言われているが、現在は副業として始めた事業展開を中心としている。
しかしながら、ゾハル・エミュレーターの回収もその役割としている為、ゾハルの影響と
思われるアリアドネ消失事件の調査に赴いたのだった。

ファウンデーション理事ガイナン・クーカイの養子であり、副理事でもあるJr.は、
現場を見て唖然とした。そこに惑星があったと言うあらゆる痕跡がなくなっていたのだ。
さらに調査を進めるため、次に彼らは、ヴォークリンデの遭難現場に向かった。
そこでようやく、ゾハルの残滓を発見する事が出来た彼らだったが、現場に潜伏していた
U-TICの戦艦から攻撃を受けてしまう。
反撃に転じ、戦艦内部を制圧。U-TICの情報を得るために艦のマザーフレームに
アクセスしたJr.だったが、敵残存勢力に阻まれ、結局徒労に終わった。


一方その頃、シオンたちを乗せたエルザは、ドックコロニーに入渠していた。
修理が終わるまで、船外へ出て休息を取る一行。しかし、このドックコロニーは、
ミルチア紛争の頃から軍関係者への反感が根強く残っている場所だった。
住民の話から、地元の青年達にアンドリュー中佐が連れて行かれたと知り、後を追った
シオン達は、人間業とは思えぬほど無残に惨殺されている青年達を発見した。
一方の中佐は既にエルザに戻り、傷の手当てを受けていた。
結局、事件はうやむやのまま、エルザはコロニーを離れた。

この一件以来、中佐に変調が表われ始めた。人知れず体を苦痛に悶えさせ、その度に
薬剤を注射して抑える。彼の脳裏に、エルザでグノーシスに襲われた時の記憶が
フラッシュバックする。彼の発作は時間を追うごとに悪化しているようだった。

シオンは夢を見ていた。ヴォークリンデで見た幻影の少女が、彼女に語りかける。
「彼の最後の気持ちを理解できるのは貴方だけ。それが彼の安らぎ……」


37 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:29:41 ID:9P5lIrk+
不可解な夢から目覚めたシオンは、突然の振動に襲われた。
エルザが、ハイパースペース外から干渉を受け、引き寄せられていたのだ。
通常空間に引きずりだされたエルザは、周囲を莫大な数のグノーシスに囲まれていた。
さらに引き寄せられたエルザは、巨大なグノーシスに飲み込まれていった。

この異変は、デュランダルも察知していた。艦内に保管されている11機のゾハル・
エミュレーターが共鳴を始めたのだ。デュランダルは、波動の発生元へと急行した。

気がつくと、シオン達は生身でグノーシス内部に放り出されていた。
はぐれてしまったエルザと中佐を探すために移動を始めた彼女達は、その途上、明らかに
人工的な看板や、自動車の残骸を発見した。

シオン達とはぐれ、一人さまよっていた中佐は、それらに見覚えがあった。
そこは、彼らがゾハルの実験をしたアリアドネの市街そのままだった。
悪夢を見ているような気持ちで彼はさまよい続けた。

グノーシスの中心部まで到達したシオン達は、そこでゾハルと、前後不覚になった中佐を
発見した。中佐は、ゾハルを背にするとグノーシスと化した。
「同じだ……あの時と……」ジギーが呟いた。
襲い掛かる中佐を、やむを得ず撃退したシオン達。
中佐が断末魔の叫びを上げる中、シオンは彼の心に触れていた。

戦争の道具としてこの世に生を受けた彼は、戦後の社会に適応できなかった。
社会に受け入れられない孤独から、彼は凶悪犯罪を重ね、その度に人格矯正処置を受けた。
そして最後には収容所の職員と連邦軍三個小隊を一人で壊滅させてしまった。
そこでマーグリスに拾われた彼は、マーグリスの信頼を受け心酔し、忠実な部下となった。

今、彼は虚無の浜辺に佇み、安らいだ顔をしていた。
「ここは良い…、怒りも悲しみも、喜びも未来も…俺以外のものは何も存在しない……。
その俺自身もやがて消える…。……シオン、遠からずお前もここに来る……きっと……」
そう言って、彼は消えていった。

アンドリュー中佐を殺してしまった事にショックを受けるシオン。
だが、感傷に浸る間もなく、その場所が崩壊を始めた。
逃げ出したシオン達は、エルザに救出され、その場を離脱した。

グノーシスの包囲網を抜けようと全力で航行するエルザ。それを、駆けつけた
デュランダルが援護する。しかし、そのデュランダルも包囲されつつあった。
その時、コスモスがたった一人で船外へ出ようとしていた。
無謀だと止めようとするシオン。だが、コスモスはそれを聞き入れなかった。
「シオン、痛みは……私を満たしてくれますか……?」

今まさに迫らんとしているグノーシス群の前に立ちはだかったコスモス。
腹部から拡散ビームを発射し、一瞬のうちにグノーシスを吸収してしまった。
自分の知らない兵装が搭載されている事に呆然とするシオン。
「ケヴィン先輩……これが貴方の望んだ、本当のコスモスの姿なんですか……?」

彼女の戸惑いをよそに、エルザとゾハル・エミュレーターはデュランダルに収容された。
そして、エルザの補修の為、一行はクーカイ・ファウンデーションに帰港する事になった。

ワープするデュランダル。その後姿を、シメオンに乗ったアルベドが見ていた。


38 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:30:23 ID:9P5lIrk+
デュランダル内の隔離格納庫。そこに、シオン達は案内された。そこには、ゾハル・
エミュレーターが保管されていた。さらには、グノーシス変容体となり生命活動を
停止した人達も。グノーシスに接触された人間は、ほぼ例外なく変容体となる。
シオンはヴォークリンデでの出来事とアンドリューの最期を思い出し、背筋を凍らせた。

一方モモは、そのグノーシスをこの世界に呼び寄せた元凶が、当時U-TICに所属し、
ゾハル研究の途上で暴走したヨアキム・ミズラヒである事を知り、ショックを受けた。
彼女にとってヨアキムは、自分の誕生を心待ちにしてくれていた優しい「パパ」であり、
世間一般が評価する「狂人」とは程遠いものだったからだ。
暗く俯くモモ。しかしシオンは、ヨアキムの全てが否定される訳ではないとモモを慰めた。

ファウンデーションに入港するデュランダル。Jr.と良く似た理事がシオン達を迎える。
彼、ガイナンは、シオンに奇妙な感覚を覚え、執務室に戻った後、Jr.にそう告げた。
プロジェクト・ゾハル。その最重要機密であるコスモスの開発に携わるシオンが、
何らかの特殊な素質を持っているのではないか。ガイナンはそう考えたのだ。


プレロマ。マーグリスが、セラーズと言う男と通信している。
U.M.N.。その非局所性を利用して、全宇宙を時間的空間的束縛に囚われず結ぶ
ネットワークシステム。その特性により、現在のワープ航法が可能となっている。
オリジナル・ゾハルの眠る旧ミルチアは、14年前の紛争時にU.M.Nの転移コードが
消失しており、Y資料にはそのコードが記録されている。
「いずれにせよ"総帥"をお待たせする訳にはいかん。プラン401を発動する」
マーグリスは、強攻策をとる決断をした。

その事は、アルベドにも伝えられた。
「場合によっては、ネピリムの歌声……使うやも知れん」
その言葉に、アルベドは笑い声で答えた。


デュランダル。先ほどイヤな話を聞かせたお詫びにと、Jr.がモモにペンダントを贈る。
二人の間に、気恥ずかしい空気が漂ったその時、衝撃が彼らを襲った。
ファウンデーションが、連邦艦隊に包囲されていたのだ。

連邦政府議会では、先のヴォークリンデ遭難が、デュランダルの攻撃によるものだとして、
ファウンデーションの強制捜査、及び既得権益の剥奪が議論されていた。
政府内に入り込んだU-TICの工作であった。証拠として、デュランダルがヴォーク
リンデを攻撃する映像が映されたが、それは、U-TIC戦艦と戦った時の映像を
たくみに合成したものであった。

デュランダル内に入り込んできた連邦兵士に拘束されるシオン達。だが、その兵士達は、
ファウンデーションと繋がりのある政府関係者が送り込んだ者達だった。
彼らの手引きを受け、シオン達は、嫌疑を晴らすために行動を始めた。
ヴォークリンデでの戦闘を記録しているコスモスのメモリーを回収し、反論の材料とする。
そのために彼女達は、コスモスのメモリー内にエンセフェロンダイブした。


39 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:31:06 ID:9P5lIrk+
気がつくと、Jr.は銃弾の飛び交う戦場に立っていた。彼は、そこがどこか知っていた。
14年前のミルチア。彼と同じ顔をした少年達が、銃を乱射し虐殺を行っている。
彼は、悪夢を見ている気分になりながら、そばにいたモモに話し始めた。

Jr.やガイナン、アルベドは、U.R.T.V.と呼ばれる生体兵器だった。
彼らは、U.M.N.のオペレーションシステムであり、局所事象変異の源である
ウ・ドゥに対する反存在として生み出された。
14年前、彼らは暴走したウ・ドゥを抑える作戦に就いていたが、U.R.T.V.達の
精神リンクの中心であったJr.は、ウ・ドゥに恐怖し、リンクを拒絶してしまった。
結果、Jr.とガイナンを除いた者たちはウ・ドゥに汚染され、暴走を始めたのだ。
この時の事を、彼は今でもトラウマとして心の裡に持っていたのだ。


気がつくと、シオンは14年前のミルチアの公園に居た。幼いシオンが、父に連れられて
行く。彼女が、父と過ごした最後の日の記憶だった。
重篤神経症治療施設。そこにシオンの母は入院していた。そして、そこで悲劇が起こった。
しかし、それはシオンとって心の奥にしまい込んだ、思い出したくない記憶だった。


気がつくと、シオン達は古びた教会に居た。祭壇の前に立つレアリエンを見て、シオンは、
再びトラウマを思い出した。フェブロニア。彼女が無残に食い殺される様を、シオンは
目の前で見ていた。

フェブロニアに促され、奥へ進んだシオン達は、幻影の少女ネピリムと出会った。
虚数世界と現実世界の狭間に住み、現実世界には僅かな時間しか干渉できない彼女達は、
その僅かな時間を使い、シオン達を導き、この仮想空間で会える時を待っていたのだ。

シオン達は、未来のビジョンを見せられた。くびきを離れ、暴走するウ・ドゥ。そして、
それに対抗する、本来の姿となったコスモス。二者の激突は銀河をも消滅させる。
しかし、未来は変えられる、シオン達に変えてほしい。ネピリムはそう言う。
グノーシスに触れられながら、グノーシス化しないシオンにはその力がある。
だが、心に弱さを持つ彼女達に、過去のトラウマを乗り越える強さを持って貰いたかった。
ネピリムが、シオンとJr.に過去を追体験させたのは、その為だったのだ。

別れ際、フェブロニアがもう一つ、彼女達に願いを託した。
フェブロニアの二人の妹、セシリーとキャス。ゾハル制御の媒体として、旧ミルチアで
今も呪縛に囚われている彼女達を開放して欲しい。フェブロニアはそう訴えた。
「ミルチアへ行けば全て分かるわ……」
ネピリムが最後にそう言って、彼女達は消えた。

エンセフェロン最奥部でコスモスの記録を回収したシオン達は、現実世界へ戻って行った。
その中で、ネピリムがケイオスに語りかけた。
「本当にこれで良かったの……? もう後戻りはできないのよ……?」
「分かってる……でも、"彼女"にはシオンが必要なんだ……」


シオン達の持ち帰った記録は議会で審議にかけられ、デュランダルの嫌疑は晴れた。
その事をマーグリスはアルベドに伝えた。ネピリムの歌声を使う時が来た、と。


40 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:31:56 ID:9P5lIrk+
ファウンデーションが艦隊と共に第二ミルチア上空まで達したとき、ケイオスが、
狼狽えて叫んだ。歌声が聞こえたのだ。その歌声は、グノーシスを引き寄せ、聞く者を
狂わせる。14年前のミルチア紛争でも、この歌声が人々を狂気へと駆り立てた。
歌声は、ヴェクターCEOのヴィルヘルムの元にも届いていた。
「……始まったね……」彼はそう呟いた。

そして、ファウンデーションがグノーシスに包囲され、市街地が襲撃を受けた。
迎撃態勢を取った連邦艦隊も、アルベドのシメオンによって壊滅させられていく。
混乱を極める市街地に飛び出し、住民の避難と敵の掃討にシオン達が奔走する中、
モモがアルベドに連れ去られ、その居城であるネピリムの歌声に囚われた。

ネピリムの歌声。元はヨアキムの研究施設であり、14年前はミルチアにあった物だ。
シオンも、当時母親の病室から見たことがあった。
それが、アルベドの手によってこの宙域まで持ち込まれていた。

モモの助けを求める声を感じ取ったJr.は、すぐさまシオン達と共に歌声へ向かった。
哄笑をもって彼らを出迎えるアルベド。14年の時を経て自らの分身と対峙したとき、
Jr.は冷静ではいられなかった。
激昂するJr.を挑発しながら、アルベドはモモの意識を侵食して行った。
最後のプロテクトに到達した時、彼にヨアキムのイメージが流れ込んできた。
「もう私には、これから起こる事を止められない。だからせめて、お前に託そう……。
時は交差する……。いずれお前は、彼女達と出会う……その時の為に……」
それは、モモが誕生する直前、ヨアキムが彼女に語ったメッセージだった。

Jr.の放った衝撃波と、Y資料のプロテクトがアルベドを弾き飛ばした。
アルベドはさも愉快そうに笑った。彼がプロテクトに触れた時、そこにコスモスと
シオンのイメージがあった。ヨアキムが最後に残したY資料のプロテクトに、彼女達が
現れる意味。それを知って彼は笑っていたのだ。

アルベドの笑い声に激昂し、ポテンシャルを開放して挑みかかるJr.。彼の本質を
知っているケイオスが、顔色を無して止めようとする程のエネルギーが弾けようとした時、
突然の乱入者が二人の間に割って入った。

青の外套者。この時は正体を隠していたが、彼はヴォークリンデでコスモスに殺された
筈のバージル中尉だった。
彼は、アルベドにその役割を指摘して退去させると、後を追おうとするJr.を攻撃した。
その物理法則を無視した力に、なす術もなく膝を付くJr.達。
「無駄だな。貴様らと俺とは、この世界に存在する法則が違う。そうだろ、"大将"?」
ケイオスに向かってそう言い残し、彼は消えた。

歌声の機能が完全に停止している事を確認し、シオン達はデュランダルへ戻った。
歌声を破壊するため、デュランダルの主砲が向けられたとき、異変が起こった。
残存していたグノーシスが、歌声に集まっていく。その中心には、アルベドのシメオン。
「なんだか遊び足りなくてな……戻ってきたぜ」
シメオンから莫大なエネルギーが発せられ、歌声の下に遥かに大きな建造物が出現した。

天の車。元々は宇宙の真理の解明の為に作り出された施設だったが、ヨアキムによって
モモを生み出すためのプラントとして使われていた。この施設と歌声、そしてゾハルが
一体となった時、ミルチア紛争以上の悲劇が起こる。そのため、この施設は旧ミルチアが
封じられている二重ブラックホールへと廃棄されたはずだった。
アルベドは、先にY資料に接触した時、この天の車の存在と使い方を知ったのだ。

その天の車が青い光を放ち、グノーシスを吸収し始めた。それは、以前コスモスが
腹部から発射したビームと同質のものだった。
グノーシスをエネルギーとした天の車は、主砲の発射準備に入った。目標は第二ミルチア。

それを阻止するため、シオン達はエルザと共に天の車へと向かった。


41 ゼノサーガep1 sage 2005/03/24(木) 01:33:11 ID:9P5lIrk+
「遅ぉい! 待ちくたびれたぞ」
天の車の動力炉で、アルベドは彼女達を出迎えた。
なぜこんな事を。Jr.のその問いに、アルベドは憎憎しげに答えた。
14年前の作戦の時、Jr.が心を閉ざした事で、歌声の浸食に身を任せるしかなかった
U.R.T.V。消えていった仲間達の為にも、貴様を断罪してやる。そう言いながら、
彼はこうも言った。
「だが、俺は感謝してるんだ。おかげで俺だけは新たなる世界への道を見つけられた」
コスモスとシオンに目をやり、彼は笑い声を上げた。
「ついさっき、それを確信した。これはそれを確かめる為の余興さ。精々楽しんでくれ」

アルベドが姿を消した直後、動力炉と直結した巨大なグノーシスが姿を現した。
死力を尽くして動力炉とグノーシスを破壊したシオン達。
爆発が始まり、彼女達が脱出を始めたその時、天の車がミルチアに向けて降下を始めた。

地上への被害を最小限に食い止める。その為に、天の車を最小ブロックにまで分解する
方法を探し出した彼女達だったが、システムを起動してから脱出までの猶予が、わずか
1分しかない事が分かった。
これでは脱出できない。一同に絶望感が漂ったとき、コスモスが残ると言い出した。
コスモスの能力ならば1分で脱出できる。そう信じて、シオン達はその場を彼女に任せた。

天の車が崩壊を始めた。ギリギリまで内部で待ち続けるエルザ。しかし、崩壊はエルザの
直上まで及び、苦渋の決断をするJr.。エルザは離岸した。
ハッチ上で待っていたシオンは取り乱し、戻るように懇願した。
その時彼女にネピリムの声が届き、走るコスモスのイメージが流れ込んできた。
左舷前方400メートル。シオンがエルザを誘導した先に、コスモスが飛び出してきた。

コスモスを収容し、最高速で離脱を図るエルザ。そのままミルチアの大気圏へ突入する。
しかし、先の脱出でダメージを受けていたエルザは姿勢制御にトラブルが発生。
大気との摩擦で船が炎に包まれた。このままでは、エルザは消し炭になってしまう。

そんな状況の中、ケイオスは一人、悩んでいた。
「あなたは、どうするの……?」ネピリムの声が、彼の脳裏に響いた。
その時、コスモスが彼の前を通り過ぎた。
「"君"が……? 待って!」慌てて止めようとするケイオス。しかし、
「あなたの痛みを、私に下さい」そう言って、コスモスはハッチに向かった。

コスモスが、エルザを守るように船首に立った。彼女の瞳が青く輝いた時、ケイオスの
腕が光を放ち、ネピリムが空を仰ぎ、アベルが振り返り、秩序の羅針盤が共鳴した。
そしてエルザの船体を6枚の光り輝く翼が包み込み、船は大気圏を突破した。


「いい見物だった。あとは、ペシェとU.M.Nがリンクすれば……」
そう言って、狂った笑い声を上げながら、アルベドは去った。

その情報は、ヴィルヘルムにも伝えられた。外套者は、彼を自由にする事を危惧した。
「アベルの方舟へと至る扉を開けるのは、彼だけだからね。しばらくは……」
「ウ・ドゥと再びリンクする可能性が残りますが」
「彼にそこまでの力はないよ。あとは鍵の役割だけ……。まぁ、局所事象変異ぐらいは
覚悟しないといけないけど、その為に"君達"がいるわけだし……ね。……でも、彼を
このまま端役にしておくのは惜しい……。彼の意思は素晴らしい輝きを持っている……」

ミルチアの海に、日が沈もうとしている。その夕日を傷ついた船体に浴びながら飛行する
エルザのブリッヂで待つシオン。彼女の下に、コスモスが戻ってきた。

「任務完了しました、シオン」
「…………お帰りなさい」

Xenosaga Episode1 END






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