流行り神 警視庁怪異事件ファイル

流行り神 警視庁怪異事件ファイル

・第零話「チェーンメール」:part17-26,27

・本編:part47-313,338~345,372~379,382、part48-48~53

・追加シナリオ/霧崎編『さとるくん』:part48-73~77

・追加シナリオ/人見編『カシマレイコ』:part48-113~116

・追加シナリオ/ゆうか編『神隠し』:part48-124~127

・退魔師・犬童蘭子編:part44-92~96


26流行り神sage2005/07/18(月) 22:53:47 ID:OUpqXmLE
リベンジの方を買ってきた、一話まで投下

「友達の友達から聞いた話なんだけど…」
そんな口上で始まる噂、都市伝説を誰もが聞いたことがあるだろう。
実際にその話が嘘か本当かわからない。その友達を探そうとしても
話の出所は友達から友達へと連鎖し、決して体験者にたどり着くことはできないのである
怪談と違い「いつ」「どこで」「だれが」という信憑性を与える項目が曖昧…
何故なら、都市伝説においては「いかに面白いか」というのが重要なのである。
更に噂は人から人へ伝えられるうちに尾ひれがつき、形を変え広がっていく…
まるで、その伝説自体がいきているかのように…

「F.O.A.F.という言葉を知っているかね?」…フレンド オブ ア フレンドの頭文字
あなたに声が問いかける謎の声。彼は都市伝説の中には決して表には出ない真実の一端が
隠されていると告げる…そして、あなたは行方不明になった刑事風見純也として
それに関わることになる…

風見純也…元・キャリア組?
小暮宗一郎…経歴は長いのに主人公を先輩と呼ぶ部下。体育会系。おばけ大嫌い
犬童蘭子…上司、仕事をしているのを見たことがない。関西弁のねーちゃん

第一話 チェーンメール
不幸の手紙…稚拙で誰も信じない内容でも受け取った人は精神的圧迫を受ける…
そして被害者は加速度的に増えていく。時代と共に変化し現代ではチェーンメールと
いう形で今も行われている…これは一つのチェーンメールが生んだ悲劇である。

警視庁地下5階…警視庁には地下4階までしか存在しないはず…そこが職場だ。
巷では若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が起きていた。
眉をひそめる風見の元にメールが届く。(いつもは電波が届かないはずなのにだ
「私は都内で起こっている連続殺人犯の犯人を目撃しました。
メールでは詳しいことは話せません。けど、何とか犯人を止めたいと思っています。
協力していただける方は、電話番号を返信してください。なお、協力が難しい方は、
このメールを3日以内に10人の友達に送ってください。
もし送らなかったら、連続殺人事件の次の犠牲者はあなたになるかもしれません…END」
返信しないと…数日後殺される…というようなデジャブを覚えたので返信する。
すると送り主からホントに連絡がはいる、犯人は「はっとりえりさ」だと言われ調べると
人気アイドル川原ミユキの本名と同じだとわかる。

27流行り神sage2005/07/18(月) 22:55:03 ID:OUpqXmLE
林奈緒ルート
送り主は林奈緒、メークの仕事をしている女性だった。彼女は川原ミユキと新人時代からの
付き合いだったという、しかし彼女はある心霊番組に出てから変わり始めた…
独り言を呟いたりナイフを持ち歩いたり…そして彼女は殺人の現場を目撃したというのだ。
彼女の証言を信じ、殺害現場に案内してもらう…廃ビルの地下には黒魔術を思わせる
祭壇があった…。そこに現れた川原ミユキは血を浴び外国語のような呪文を唱える…
「被疑者確保だ!」だが、小暮は気絶していた。首を絞められ気絶した風見…
「はよ、起きんかい!」蘭子に起こされると既に川原ミユキは逮捕されていた。
「なるほどなぁ…」壁に掛けられた肖像画を見て蘭子は呟く。
エリザベート・パートリ。自らの美しさを保つため3百人以上を殺した女吸血鬼…
川原ミユキも永遠の美しさを求め血を求めたのだろうか…
そして事件解決から姿を消した林奈緒、彼女は4ヶ月も前に殺されていたのだ…

川原ミユキルート
送り主は川原ミユキ本人だった。半年前から楽屋が荒らされたりバッグにナイフが入っていたり…
そして、いつも誰かが近くにいるような感覚がしていたという
そして一週間前、彼女は殺人現場を目撃することになる。あなたは誰なのという問いに
殺人鬼ははっとりえりさ…そう名乗ったというのだ。幻覚、妄想、二重人格。
彼女は自分を疑い検査を受けたが精神状態は正常という判定を受けたそうだ。
警察にも訴えたがまともに取り合ってはくれなかったのだという。
1、彼女の話を信じ保護を行う。
急によそよそしい態度になる川原ミユキ、仕事現場に行くといいつつ廃ビルへと姿を消す
追いかけた風見の前には黒魔術の祭壇があった。襲撃する殺人鬼
人間とは思えない力で襲ってくるが小暮の着メロに拒絶反応を起こし倒れる。
殺人鬼の正体は川原ミユキ本人だった。自らの罪を知ったミユキは屋上から飛び降りる…
それから2週間彼女は一命を取り留めたものの眠り続けている…
「風見、あんた生まれ変わりを信じるか?古の亡霊に取り付かれた悲劇の歌手…単なる妄想や」
あの時の着信は川原ミユキの携帯からだった。あれは彼女の抵抗だったに違いない
曲名は彼女の新曲ファントム(幽霊)、それは悲しいエンディングテーマに聞こえた…
2、彼女の話を信じない
その日の夜、川原ミユキは心臓麻痺で死亡した。この日を境に連続殺人事件は止まる…
これを見てください…小暮が見せてくれた2つのサイン。あの日もらったものと懸賞であたった
サインは明らかに別物だった…。2重人格。ドッペルゲンガー。
謎は解けないまま事件は闇へと消えていった…。

密室の中、風見純也の関わる事件を聞かされる「あなた」
声は言う我々人間が見聞きする自称すべてを不可思議なものと認めてしまえば、迷いはなくなる
友達の友達が流布する噂話に隠された真実を見極められるようになるだろう…と。
「ところで君は聴いたことがあるか?これは私の友人の友人から聞いた話なのだが…」


313 :ゲーム好き名無しさん:2009/10/08(木) 18:38:32 ID:psoFP1Em0
「流行り神(ポータブル)」の穴埋め投下予約。

このゲームのオリジナルはPS版だけど、筋は同じらしい。
なので、Wikiにあるオリジナルの「第零話」と「犬童編」を除いた、
本編3本とおまけ3本を1話ごと近日中に上げます。


338 :流行り神:2009/10/14(水) 11:01:14 ID:nAiukjAT0

流行り神PORTABLE:第一話『コックリさん』

【主な登場人物】

式部人見(しきぶ・ひとみ)…鴨根医大に所属し、助教授と監察医を兼務する才女。
 オカルト否定派だが、霧崎の数少ない友人でもある。
霧崎水明(きりさき・すいめい)…須末乃大学で民俗学を教えている。
 オカルト肯定派だが、否定派の式部とも交友がある。
 中学のころに両親と死別し、それ以降は主人公の両親に育てられた。
 このため、主人公とは、兄・弟と呼び合う仲である。


【前置き】
 この話は、主人公と小暮が初めて顔を合わせた事件であり、
 編纂室に配属するきっかけとなったものです。
 つまり、時系列では第零話よりもかなり以前の話となります。

1)前半部

 私立花峯高校の校内にて、在校生が相次いで自殺する事件が起きる。
 警視庁捜査一課の新人警部補・風海警部は、所轄署の小暮巡査長と組んで捜査に当たる。
 場所が学校というデリケートな場所では、捜査はおもうように進まなかった。
 証拠も、現場にあった「紙切れ」とコックリさん用の「ウイジャ盤」しか見つからなかった。

 二人目の被害者を検死した式部は、「死因は自殺」と断定した。
 それと同時に、体内に残った血液が極端に少ないことに首をひねる。
 自殺を正確に予知した人物が二人の遺体から血液を抜き取ったとしか、考えられない。
 式部は、コックリさんがらみのことは霧崎に聞いてみたらいい、と二人にすすめる。

 霧崎を訪ねる途中で、被害者のクラスメイト・神山由佳が声をかけてきた。
 「本当に自殺したんですか?」
 風海が質問の意味を問いただすが、神山は答えずに駆け出した。
 そのとき、暴走車が神山めがけて突っ込んできた!
 「危ない!」とっさに小暮が神山を突き飛ばしたため、大事には至らなかった。
 驚いたことに、暴走車は無人で、運転席に奇妙な「紙切れ」が貼ってあるだけだった。
 神山は、迎えに来た家族とともに帰宅。けっきょく、彼女の話は聞けなかった。

 二人は、霧崎にあい、コックリさんの話を聞く。
 そのとき、現場の「紙切れ」と暴走車の「紙切れ(の写し)」を見せた。
 霧崎によると、前者は『狐憑き』除けの札、後者は『狐憑き』退散の札だという。
 どうやら、誰かが事件がらみで狐憑きを退治しようとしているようだ。

 事件は、なにやら奇妙な事態になっていた。風海は、どういう捜査方針でいこうか思い悩む。

/* ここで、ルート分岐。取り上げる順番は、式部ルート、霧崎ルートの順になります。
/* 途中の小見出しは、見やすいようにつけたもので、公式なものではありません。


339 :流行り神:2009/10/14(水) 11:07:13 ID:nAiukjAT0
2-1)式部ルート
 風海は、人為的に引き起こされた事件と断定した。……心にしこりを感じながら。

★狐塚の由来

 翌日、二人は学校長から「狐塚」の話を聞きだした。

 学校創立以前から、学校裏手の雑木林に小さなふるい塚がある。
 二年前、一年生の崎田美佐が、交通事故で死亡した。
 事故後、校内に「彼女はコックリさんの呪いで死んだ」という噂が広がり、
 彼女の幽霊騒ぎまで起きてしまう。
 故人が生前コックリさんをやっていたから、が噂の根拠だった。
 学校側は、雑木林の塚を供養塔に仕立て、お祓いをすることで事態を収拾させた。
 そして、学校側は校則に「コックリさん禁止」を盛り込んだ。
 供養塔になった塚は、生徒からいつの間にか「狐塚」と呼ばれるようになった。
 崎田の幼馴染である男子生徒・野沢翔太は、毎日その塚へ祈りを捧げているという。

 狐塚の話を聞いたあと、二人は、校内で野沢に神山が詰め寄っているところを目撃する。
 「まだ、美佐のことが忘れられないの!」
 「……お前には関係ねえ。」
 神山を諌めたのは、そばに居た堀川だった。
 「帰りなさい、神山さん。」
 「……言うことを聞けば、うまくいくって言ったくせに!」
 神山が堀川に突っかかるが、堀川は冷静に切り返す。
 「そうよ。だから、今までどおり私の言うとおりしてなさい。」
 「……!!」
 今にも何かが爆発しそうな神山。と、その時、とてつもない大きな雷鳴が響いた。

★傷ついた狐塚(式部ルート限定イベント)

 狐塚の雑木林から、煙がのぼっている。「火事か?」駆け出す刑事二人。
 雷が落ちたのは、狐塚だった。塚を狙い撃ちしたような落ち方に、二人は戦慄した。
 校内へ引き返したが、さっきの三人は帰宅したらしく姿が見えなかった。

★影で暗躍する者

 真夜中に、風海に電話がかかってきた。聞いたことがない男の声だ。
 「キミたちに助っ人を用意した。わたしか? 『ある組織』の人間とだけ言っておこう。」
 そう告げると、電話の男は一方的に電話を切ってしまった。

 翌日、学校前でなぜか式部と霧崎が待っていた。
 何者かが、彼らに捜査協力を要請し、高校へもその話を通していた。
 校長によると、軽薄な若い刑事が令状を見せて、協力を要請したという。

(式部ルート、続く)

340 :流行り神:2009/10/14(水) 11:09:46 ID:nAiukjAT0
★式部、激怒する(式部ルート限定イベント)

 捜査した結果、二つのことが判明する。
 神山と自殺した二人は、二年前に死んだ崎田と同じクラスに在籍していたこと。
 狐塚から狐退治の経文が見つかった。霧崎は、これが落雷の原因だと思っているようだ。

 校内探索中に、女子高生三人組がコックリさんを行っている現場をおさえた。
 神山と堀川、そして妙におびえている山野恵子。
 風海は、神山と山野が死んだ崎田のコックリさん仲間であることを聞き出した。
 神山と堀川は、更に物騒なことを言い出した。
 自分たちは、コックリさんが願いを叶えてくれたら血をささげる約束をした。
 死んだ二人は、その約束を破ったからコックリさんに殺されたのだ、と。

 二人の言い分を聞いた式部は激怒して、実践でコックリさんのカラクリを暴いた。
 「コックリさんは、参加者の無意識な筋肉の収縮で動いているだけ。
 だから、人を殺す力なんてない。」
 コックリさんを否定されても、神山と堀川は静かに沈黙していた。
 それは、オカルト肯定派でもある霧崎も同じであった。

★警察庁の中の廃屋

 三度目の悲劇を防ぐため、神山・堀川・山野を所轄署の刑事が護衛することになった。
 しかし、翌朝、校内で山野の遺体が発見された。
 コックリさんを行った教室で、パジャマ姿のまま体中を切り刻まれていた。
 家族も、護衛の刑事も、山野が家を抜け出したことを知らなかった。

 風海が途方にくれているとき、風海の携帯がなった。相手は、例の謎の男だった。
 「ヒントをあげよう。……警察史編纂室へ行きたまえ……。」

 地下五階にあった警察史編纂室は、廃屋も同然の部屋だった。
 年単位で積もった埃、『紫煙』と印刷された煙草の吸いさしも散乱している。
 レトロな電話が鳴った。電話の相手は、例の男だった。
 「右手にあるファイルを見たまえ。」更に男は話を続けた。
 「事件を解決したければ、常識を捨てることだ。」男は、一方的に通話を切った。

 ファイルは、死んだ崎田の日記だった。
 親しい友人だった神山が、野沢を紹介してから変わっていく様が克明に記されていた。
 崎田の事故は、嫉妬に狂った神山から追い詰められて起きた悲劇だったのだ。

(式部ルート、続く)

341 :流行り神:2009/10/14(水) 11:11:36 ID:nAiukjAT0
★二人の推理(式部ルート編)

 日記を読んだ二人は、事件を推理した。

 犯人は、崎田を追い詰めた四人を自殺させる計画を立てた。
 先ず、コックリさんが願いを叶える見返りに血を欲しがっていると、犯人は四人に吹きこむ。
 次に、犯人はそのコックリさんが崎田の霊であると信じ込ませた。
 「崎田の霊が、虐めた自分たちの血を欲しがっている。」
 封じていた罪悪感と崎田のたたりで、四人は精神的に追い詰められていった。
 そして、最初の犠牲者が校内で飛び降り自殺を遂げた。
 その際、遺体から血を抜くことで「崎田が血を欲しがっている」事実を強調したのだろう。

 では、その犯人とは?
 野沢は、イジメの事実を知らないし、コックリさんにも関わりがない。
 堀川は、つい最近転入してきたばかりだが、積極的にコックリさんをやっていた。
 堀川と崎田の間に何らかの関係があると仮定すると、合理的に説明できる。

★暴かれた真実

 今は神山を保護しなければ! だが、神山も堀川も、姿をくらませていた。
 「学校だ!」二人は、迷いなく狐塚に向かう。

 狐塚では、野沢、神山、堀川が集まっていた。
 堀川は、野沢の面前で神山の崎田イジメを暴露する。
 更に、堀川は、神山に持ちかけた話「コックリさんによる恋愛成就」は、
 全くのでたらめ、野沢の気持ちが神山に傾くことはないと嘲笑った。
 「何のために、人が死んだの?!」裏切られて呆然する神山。
 「さあ? あなたのせいじゃないの?」平然と言い放つ堀川。
      う わ ぁ ぁ ぁ ぁ っ !!
 理性を失った神山は、絶叫した。獣と化した神山は、堀川に襲いかかる。
 風海と小暮が神山を押さえ込もうとするが、いとも簡単に振り払われた。

(式部ルート、続く)

342 :流行り神:2009/10/14(水) 11:13:10 ID:nAiukjAT0
★終局(式部ルート編)

 「神山!」我に返った野沢の呼びかけに、神山が反応した時――
 堀川が隙をついて、神山の脇腹に木片を突き立てた。
 うずくまる神山。止めを刺そうとする堀川を、野沢が止めにはいった。
 自分のせいで悲劇が起こった。いつかは罪悪感に押し潰されて、自殺するかもしれない。
 それならば、神山の代わりに自分を殺してくれ、と。
 「今でも、彼女のことが好きなの?」
 「ああ、これからもずっと。」堀川の問いに、野沢ははっきりと答えた。
 「ずっとじゃなくてもいいのよ。時々思い出してくれるだけで……」
 堀川は、涙を浮かべながら微笑むと、その場に倒れてしまった。続いて、野沢も。
 倒れた三人は、風海らの手配によって救急車で搬送された。

 数日後。
 事件はゴシップ誌にすら報道されることなく、学校も平穏を取り戻していた。
 野沢は無罪放免となったが、自室に閉じこもり、ふさぎ込んでしまったという。
 堀川は、一命を取り留めたが、数ヶ月間の記憶を失っていた。
 神山は、搬送中に救急車ごと消息を絶った。
 全国に緊急手配をして行方を追っているが、未だに所在がつかめていない。

 堀川と崎田の関係は、警察の調査では判らなかったが、式部が秘密裏に漏らしてくれた。
 二年前に堀川は心臓を移植したのだが、このときの臓器提供者が崎田だったのだ。
 風海は、崎田の遺志が心臓を通して堀川に届けられたのではないだろうか、
 と考えるようになった。

★警察史編纂室

 風海は、クビ覚悟で自分の考えをそのまま報告書にした。
 その報告書を提出する前に、課長から辞令を受け取った。
 「本日付で警察史編纂室に配属す」
 地下五階に行くと、小暮が部屋の前に居た。彼もまた、編纂室へ配属されたのだ。
 意を決して扉を開けると――、埃も煙草の吸いさしも消えた、普通の部屋だった。
 現職の警部が競馬中継に耳を傾けている光景を除いて。
 警部の名は、犬童蘭子。彼女は、二人を前にして「ガキを寄越して」とぼやくのだった。

★「密室」にて
 「さて、キミの心にどう響いたかな?」
 男の巧みな話術によって、「あなた」は自分が事件当事者のように錯覚した。
 怪異を生み出すのは人間の心……男の言葉が、真実を言い当てているように思えてきた。
 「ところで、キミはこんな話を聞いたことがないか?
 友人の友人から聞いた話なんだが……。」

(式部ルート終了、次は霧崎ルートです)

343 :流行り神:2009/10/14(水) 11:20:22 ID:nAiukjAT0
/* 話の内容は、式部ルートとかなりダブってます。
/* ダブっている部分は、先の式部ルートを参照してください。

2-1)霧崎ルート
 風海は、「コックリさんの呪い」で引き起こされた事件と断定した。
 ……心にしこりを感じながら。

★狐塚の由来
 /* ここは、先の式部ルートとほぼ同じなので割愛します。

★神山、錯乱!?(霧崎ルート限定イベント)

 途轍もない雷鳴が轟いた。外を見ると、狐塚の雑木林から煙がのぼっている。
 その時、神山が奇声を発して錯乱してしまった。
 口からヨダレをたらし目は狂気を宿らせ、暴れる様子は、まさに獣だった。
 「神山!」
 「みないで……みないで……」
 野沢の呼びかけに、神山は正気を取り戻して気を失う。
 式部が神山をの診察したが、異常は見つからなかった。
 風海は、捜査の行き詰まりを強く感じた。

★影で暗躍する者
 /* 助っ人が霧崎しか出てこない点を除けば、式部ルートと同じ。

★コックリさんと血の儀式(霧崎ルート限定)

 狐塚を調べると、焼け焦げた経文――狐憑き退治の経文が見つかった。
 校長に話では、この塚はもともと源平の時代に狐憑きとして惨殺された娘の霊を鎮める
 ものだったという。今回の事件は、その娘の怨霊のせいなのか?
 風海の問いに、霧崎は答えた。
 「何らかのきっかけがなければ、そういうことにはならないさ。」

 校内探索中に、女子高生三人組がコックリさんを行っている現場をおさえた。
 神山と堀川、そして妙におびえている山野恵子。
 彼女たちによると、コックリさんを提案したのは、転校生の堀川だった。
 その後、コックリさんから「血を捧げれば、願い事を叶える」というお告げがあったらしい。
 自殺した二人は血の儀式を拒んだからコックリさんに殺されたのだと、彼女たちは断言した。

 話を聞いた霧崎が「血の儀式の仕組みを解明してやろう。」と言いだす。
 「コックリさんは、参加者の潜在意識を写しているにすぎない。
 つまり、血を欲しているのは参加者の一人。その人物こそが犯人であり……狐憑きだ。」
 周囲の視線は神山に集まるが、彼女は不敵な笑みを浮かべるだけだった。

(霧崎ルート、続く)

344 :流行り神:2009/10/14(水) 11:22:07 ID:nAiukjAT0
★警察庁の中の廃屋
/* 話の流れは、式部ルートとほぼ同じなので割愛します。

★二人の推理(霧崎ルート編)

 日記を読んだ二人は、事件を推理した。

 死んだ崎田は、コックリさんを通じて自分をいじめた三人を殺したのだ。
 事件の黒幕が崎田なら、次の標的は神山しかいない。

★暴かれた真実
 /* 式部ルートとほぼ同じなので割愛します。

★終局(霧崎ルート編)

 《どうれ、誰から血を啜ってやろうか?》神山から、普段とは違う声が漏れた。
 《決めた……お前の血をわらわに》そういうと、神山は野沢に襲い掛かった。
 野沢の喉に食いつこうとしたとき、神山は辛うじて正気に戻った。
 「ごめんね……私はただ野沢君のことが好きだっただけなのに……」
 その時! 堀川が隙をついて、神山の脇腹に木片を突き立てた。
 《おのれぇぇ、人間どもめ》
 風海は、人ならざる影が苦しんでいる様を見たような気がした。

 数日後。
 事件はゴシップ誌にすら報道されることなく、学校も平穏を取り戻していた。
 堀川は、一命を取り留めたが、数ヶ月間の記憶を失っていた。
 これにより、堀川が神山を刺した理由も、崎田のことを知った経緯も判らなくなった。
 神山は、搬送中に救急車ごと消息を絶った。
 全国に緊急手配をして行方を追っているが、未だに所在がつかめていない。
 これで、呪いの存在を証明できる証拠は何も残らなかった。

 神山が抱いていた恋情は純粋なものだった。だが、その思いが歪んだとき、悲劇が始まった。
 人間なら、誰にでも起きうる事件だった。
 風海は、犠牲者への手向けとして、この事件で見聞きしたことを正直に記すことにした。

(霧崎ルート、続く)

345 :流行り神:2009/10/14(水) 11:23:33 ID:nAiukjAT0
★警察史編纂室
★「密室」にて
 /* 式部ルートとほぼ同じなので割愛します。


【余談】
・霧崎ルートの〆では堀川の心臓や野沢のその後には触れてませんが、
 実際の本編でも触れられていません。
 霧崎ルートでは、崎田が堀川に憑依していたということなのでしょう。
 野沢も引き篭もりになるほどふさぎ込んでないってところなのかな、個人的にと思ってます。

・このシナリオは、最後の隠しシナリオ「退魔師・犬童蘭子」と対をなしています。
 つまり、影で狐憑き退治に動いていた人物は……。
 ちなみに、式部ルートにて霧崎がその人物を「(術に関して)相当無節操なやつ」
 と評しています。

(以上で、第一話は終わり。第二話は、近日中にアップします。)

372 :流行り神:2009/10/20(火) 10:40:51 ID:+lIODfw+0
流行り神PORTABLE:第二話『鬼』
【主な登場人物】
間宮ゆうか(まみや・――)
 風海の義兄・霧崎の教え子で助手。
 自称・オカルト専門ジャーナリスト(見習い)だが、霊感はない。
 海外出張中の霧崎に代わって、風海の捜査を手伝うことになる。
道明寺秋彦(どうみょうじ・あきひこ)
 警視庁捜査一課の刑事。印南警視の部下で、極秘裏に協力している。
 見た目ヘラヘラした軽薄な青年だが、被害者救出に関しては真摯な態度を見せる。
 「小暮と同期」(道明寺談)だが、小暮は覚えてない。

【前置き】
 この事件は二人が配属後に初めて手がけたもので、
 時系列で言うと第一話のあと、第零話の前となります。


1)前半部
 配属後十日目。謎の男から、児童誘拐の捜査に参加するように頼まれる。
 ところが、担当の印南警部から二人を呼んだ覚えはないと追いだされてしまう。
 結局、彼の部下・道明寺巡査長の協力により、調査を極秘裏に行うことになった。

 被害者は斉藤裕介、小学二年の八歳。両親は離婚、家族は母親の由香利のみ。
 母親の由香利は、レストランを経営する女性実業家だった。
 犯人は、身代金ではなく「由香利が〔柘榴の実〕に一人で来ること。」
 という変わった要求を出してから、沈黙を保っている
 〔柘榴の実〕について、由香利は心当たりがないと言う。
 誘拐の現場を見た少年は、「鬼が連れて行った」と言い張っていた。
 印南は作り話だと切り捨てたが、二人が調べると実在した可能性が高くなった。

 奇妙なファックスが斎藤宅に届いた。
 「鬼」の天辺の「ノ」が取れた字が一文字だけ、大きく印字されているという代物。
 これも、由香利は判らないという。

 その後の聞き込みで、他の家二軒に似たような脅迫状が郵送されたことが判明する。
 この二軒と斎藤家をつなぐ線上に、斎藤家の隣人・安西聡子が浮かんだ。
 安西が脅迫状を出したのか? 安西を密かにマークする二人。

 しかし、安西を巡って騒ぎがおき、その余波で印南に極秘調査がばれてしまった。
 これを機に、風海は脅迫状の件を印南に託す。
 その上、二人が安西を疑っていることを、安西本人に悟られてしまう。
 笑みを浮かべた安西は、とんでもない爆弾を二人に投下した。
 「あの母親は、息子が居なくなって、せいせいしている……。」

(続く)

373 :流行り神:2009/10/20(火) 10:43:17 ID:+lIODfw+0
/* 前半部最後の安西の一言をどう扱うかで、2ルートに分岐します。
/* 先に取り上げなかった場合、次に取り上げた場合の順に投下します。

2)-1 安西ルート(安西の証言を取り上げなかった場合)

 安西は、捜査の目を逸らそうとしてるのかもしれない。
 そう判断した二人は、安西のサークル仲間に安西の人となりを聞きいてまわる。

 サークル仲間は、ほとんどが“セレブ”と呼ばれる婦人たちだった。
 その中で、庶民で借金に追われている未亡人の安西は、
 彼女たちから優越感を滲ませた同情心で「可哀想な人」と見られていたようだ。
 これは、安西にとって屈辱であり、苦痛だったのではないだろうか。
 そんな安西だったが、最近になって生き別れていた妹と再会したらしい。
 そして、妹から贈られたガーネットのブレスレットを肌身離さずつけているという証言も得た。

 聞き込みのまとめをしているとき、道明寺から安西の経歴が送られてきた。
 そのなかの記述に、全員が唖然とした。
   妹の名は、雪村恭子。「グラナダ・マタニティクリニック」副院長だったが、
   夫の無理心中に巻き込まれ、二年前に死亡。

 と、その時、一緒に居たゆうかがひらめく。
 ガーネットの和名は柘榴石。柘榴は、スペイン語で「グラナダ」!
 〔柘榴の実〕とは、この病院のことを指していたのではないだろうか。
 由香利に、もう一度〔柘榴の実〕を問いただす必要がありそうだ。

 ゆうかは、グラナダ・マタニティクリニックを調べるといって飛びだしていった。
 ゆうかの身を案じつつ斎藤家へ向かう風海。その家の前で、道成寺と出くわした。
 彼によると、印南が安西の逮捕状を取って、彼女の行方を追っているという。
 鑑定の結果、安西が例の脅迫状を出したと判ったからだ。

 由香利の頑な態度は、『グラナダ・マタニティクリニック』の一言で切り崩された。
 「どうして、放っておいてくれないの?」
 由香利は、最初から子供を見捨てるつもりだったのだ。
 「子供には何の罪もないのですよ?」思わず問い返す風海。
 「でも、あの子は……」何かを言い出そうとして口をつぐむ由香利。
 「いいでしょう、〔柘榴の実〕へご案内します。」
 一行は、小暮の車で目的地に向かった。辺りは、夜になっていた。

 移動中、由香利は誰ともなく語りだした。
 思い描いた「幸せな家庭」のために、由香利は子供が欲しかった。
 でも、裕介が生まれた時にできた借金で、夫婦は押し潰され、離婚してしまう。
 うちつづく不幸の中で、由香利が抱いていた息子への愛情が揺らぎはじめた。
 (この子さえ居なければ……。)この考えが、由香利を折檻に走らせたのだ。
 息子が誘拐されとき、一旦は息子を見捨てようと考えたが、やはり出来なかった。
 「私は『ママ』と呼ばれるのがつらかった。……あの子はね……。」
 そのあとに続く言葉は、由香利の口から紡がれることはなかった。

(安西ルート、続く)

374 :流行り神:2009/10/20(火) 10:46:22 ID:+lIODfw+0
 目的に着いて、風海が降りたときだった。
 ゆうかが声をかけてきた。どうやら情報をたどって、ここまで来たらしい。
 ゆうかの身を案じて、思わず叱責する風海。ゆうかも、予想外の叱責に素直に謝った。
 しかたなく、風海は、小暮に建物の外でゆうかを護衛するように頼んだ。

 由香利は、廃墟の前の看板を指差した。
 「産婦人科 グラナダ・マタニティクリニック」――その脇に柘榴の実の絵。
 「ここで生まれたんです。」由香利は、そうつぶやいた。
 由香利のあとを追いながら、風海は引っかかるものを感じた。
 (“産んだ”のでなく“生まれた”? どういう意味なんだ?)

 廃病院を進むなか、由香利は、風海の呟きから隣人の安西が犯人だったことを知る。
 「安西さんが「鬼」のファックスを送りつけたのは、
 息子を虐待する自分を嘲笑うためなのでしょうね。」
 「いまなら、安西さんのその気持ちがわかる気がします。」

 かつて、由香利は安西を『可哀想な人』と思った。それは優越感からきている同情だった。
 今度は自分が周囲から『可哀想な人』と言われて、由香利はそのことに気がついた。
 同情される自分が恥ずかしくなり、心が他者を受け入れられなくなっていった。
 そして、自己嫌悪と自己否定に陥り、由香利は、他人、つまり息子を攻撃することでしか
 自分を守れなくなっていったのだ。

 病室の一室に、裕介少年は寝かされていた。
 たどたどしい足つきで近づいた由香利は、息子を抱きかかえると涙を浮かべた。
 あとは、ここから逃げるだけだ。――と、その時、不快な冷気を感じた。
 「由香利さん!」風海が振り返ると、横たわる少年の前にうずくまる由香利の姿だった。
 まわりを黒いドロドロした靄が取り囲まれた状態で、由香利は何かを抑えようとしていた。
 そして、風海の面前で由香利の目は白目ごと真っ赤に染まっていった。
 その目は――まさに鬼。

 「ふふふふ……」地の底から響く、くぐもった笑い声。安西がいつの間にか立っていた。
 髪はふり乱れ、衣服もボロボロ、眼は赤い狂気に満ちていた。
 安西は、うずくまる由香利を凝視したまま話しだした。
 「アンタも可哀想な女だよ。アンタは息子を愛せない。違うかい!」
 「ちが…う。」由香利は必死に抵抗を試みるが、安西は容赦しなかった。
 「子供を愛せないから、今こうして苦しんでいるんだろ?
 無理することはないよ。あたしと一緒におなりよ。」
 妖しい魅力を含んだ呼びかけに、風海の意識まで朦朧としはじめた。

(安西ルート、続く)

375 :流行り神:2009/10/20(火) 10:48:36 ID:+lIODfw+0
 由香利の中の「何か」が弾けようとした時――
 「ママ……ママ」裕介の寝言が漏れた。
 「ゆう…すけ?」由香利の赤い目から、涙が溢れ出していた。
 鬼になりかけた彼女は、息子の寝言で救われたのだった。
 その様子を見ていた安西が、呻いた。
 「アンタなら……わかってくれると思ったのに……」
    ナ ゼ ダ ァ ァ ァ ァ ァ ァ
 最後の叫びは、鬼の咆哮だった。それと同時に、安西の姿が大きく変容する。
 猛獣の牙、狂気に満ちた深紅の瞳、額から生えた角。まさに――鬼。

 安西だったモノは、腕一振りで風海をなぎ払って弾き飛ばした。
 どこかで照明用のランプが割れる音がして、部屋に火の手が上がった。
 「ソノコヲ、コロセ! コロセ! コロセ!」呪文のように言葉を繰りかえす鬼。
 その言葉に苦しみながらも、由香利ははっきりと言い放つ。
 「自分の息子を愛している!」
 拒絶された鬼は、裕介を殺そうと襲い掛かる。鬼の前に、由香利が立ちはだかった。
 「安西さん、もう止めて。」その言葉には、鬼と化した安西への悲しみが篭っていた。
 同じ苦しさを経験したものだからこそ、紡がれた言葉だった。

 その言葉に、鬼の動きが止まった。泣いているのか?
 風海は、母子を逃がすために鬼に取りついた。
 燃え盛る炎の中、鬼は風海を剥がそうと壁に叩きつけるが、風海は必死にしがみついていた。
 そして、建物から逃げる母子を見たとき、彼の身体は宙に舞い、落ちていった。

 風海は、右足骨折などで入院を余儀なくされた。あの状況では、軽傷と言っていいだろう。
 見舞いに来たゆうかの話では、裕介少年は病院に運ばれるとき、
 しきりに『お姉ちゃんはどこ?』と聞いていたという。
 安西なら『隣のおばちゃん』と言うはずだ。安西のほかにも、誘拐犯はいたのか?

 今度は小暮が見舞いがてら報告にやってきた。
 母子はほとんど無傷で助かり、由香利は自ら進んでカウンセリングに通いだしたという。
 ただ、安西のほうはケリがつきそうになかった。
 斎藤宅に送られたファックスは、鑑定した結果、安西以外の人物が送ったと断定された。
 また、廃病院の焼け跡からは安西のブレスレットしか見つからず、
 捜査陣の間から「本当に安西がいたのか」という声すらあるらしい。
 それともう一つ不可解なことがあった。
 捜査一課の名簿には、『道明寺秋彦』なる人物はいなかったのだ。
 道明寺は、何者で何のために現れたのだろうか?

 安西は普通の人間だった。彼女を鬼にしたのは、周囲の心ない同情心だった。
 何の自覚もなく、他者を追いつめる人間。風海は、無性に人間が怖くなった。

(安西ルート終わり、続いて雪村ルートです。)

376 :流行り神:2009/10/20(火) 10:50:07 ID:+lIODfw+0
2)-2 雪村ルート

 思い返せば、由香利の態度は子供を誘拐された親とは思えないところがある。
 風海は、道明寺を通じて令状を取り、斎藤家の家宅捜索をおこなう。
 しかし、解決につながる手がかりはなく、息子への虐待が判明しただけだった。

 二人は、別の観点から犯人像を洗い出し、雪村恭子に行き当たる。
 彼女の留守宅から、祐介少年の教科書が見つかる。
 風海は、道明寺に雪村のことを伝えて留守宅を出た。

 彼女の日記には、雪村と少年の出会いと交友が記されていた。
 世間に絶望して引き篭もっていた雪村は、偶然であった裕介に生きる希望を見出していった。
 それと同時に、彼の傷から彼が虐待されていることを察知し、
 彼の母に義憤を感じていたこともわかった。

 道明寺が、雪村宅の家宅捜査の結果を知らせてきた。
 雪村宅から、ファックスされた文字と同じ奇妙な文字が書かれたお札が見つかったという。
 風海は、小暮とゆうかと一緒に発行元の鬼哭寺(おになきでら)へ向かった。

 住職にお札のことを尋ねると、祭っている鬼子母神に由来するものだという。
   鬼子母神は、子煩悩な神だったが、人間の子をさらって食べる神でもあった。
   釈迦は、彼女の子を一人隠すことで、彼女に子を失った親の悲しみを実感させた。
   悪行を悔いて改心した鬼子母神は、子供を守る神となった。

 お札の変形「鬼」は、「改心して神になった」=「角がない」ことを示しているという。
 柘榴も鬼子母神とは縁が深く、釈迦が鬼子母神へ人肉代わりにと渡した果実が柘榴だった。

 「予想外の要求」「鬼子母神のお札」――風海は、誘拐犯・雪村の真の狙いに気づいた。
 彼女は、由香利に「自分の子を愛せ」と言いたかったのだ。

 寺の聞き込み後、ゆうかは調べごとがあるといって別れた。
 警視庁では、道明寺が二人を待っていた。
 一時間ほど前、斎藤家に少年本人から助けを求める電話がかかってきたという。
 これを機に、捜査本部は雪村を全国指名手配するつもりらしい。
 腹を決めた風海は、斎藤宅へと向かった。

(雪村ルート、続く)

377 :流行り神:2009/10/20(火) 10:52:21 ID:+lIODfw+0
 風海は、印南の制止を振り切り、由香利を説得し始めた。
 「犯人は、鬼子母神のように改心して欲しいと願っているんです。」
 「あの子は私を捨てて別の女に走った男の子供よ、居なくなってせいせいしたわ。」
 風海は、口調とは裏腹に、彼女の様子から子供への愛情がまだ残っていることを確信する。
 「〔柘榴の実〕で、裕介君が待っています。そして、犯人の雪村恭子も。」
 「――――!!」
 「雪村恭子」に異常な反応をした由香利は、唐突に〔柘榴の実〕へ一人で行くと言いだす。
 風海と印南は、一人か二人の護衛をつけるように説得する。
 彼女は、逡巡のあとで風海だけを護衛に指名した。
 風海は、印南警部にバックアップを頼み、彼女の車に乗り込んだ。

 暗い夜道を、由香利は迷うことなく目的地まできた。
 ここはどこだ? 風海が降りたとき、ゆうかが声をかけてきた。
 どうやら別口の情報をたどって、ここまで来たらしい。
 ゆうかの身を案じて、思わず叱責する風海。ゆうかも、予想外の叱責に素直に謝った。
 ゆうかには後から来る応援を待つように言って、彼は由香利のほうへ急いだ。

 由香利は、廃墟の前の看板を指差した。
 「産婦人科 グラナダ・マタニティクリニック」――その脇に柘榴の実の絵。
 由香利が言うには、グラナダは柘榴という意味があるらしい。
 彼女は、ポツリポツリと語りだした。

 この病院は、極秘裏に代理母出産を請け負っていた。
 産めない由香利は、ここに借金をしてまで代理出産を依頼した。
 希望どおりに裕介が生まれたが、その時の借金がその後の人生を変えてしまう。
 潰れかかるレストラン経営、すれ違う夫婦、調停離婚。
 借金は、二年前に焼死した両親が残した死亡保険金でようやく返済できた。
 離婚、両親の急死と不幸が続く中、由香利の心に恐ろしい考えが芽吹く。
 (息子さえ居なければ。息子は、他人が生んだ他人の子。)
 この子は自分の子ではない――だから、たたいても心は痛まなかった。
 そう告白する彼女の頬には、一筋の涙が流れていた。本人も気づかなかった涙だった。
 風海に指摘されて、はっとする由香利。
 気持ちが吹っ切れた由香利は、廃病院へ入っていった。

 二人は、ようやく光が漏れる病室にたどりついた。
 そこには、凄まじい形相の中年女が、裕介に鎌を突きつけていた。その様は、まさに鬼。
 雪村は、すぐに迎えに来なかった由香利に母の資格はないと断罪し、
 裕介を出産した自分こそが母親だと言い放つ。
 息子に一番知らせたくなかったことを暴露されて、由香利は絶望に打ちひしがれる。
 その姿を嘲笑う雪村に、裕介が反論した。
 「ぼくのママは、一人だけだもん!」
 「……ゆ、裕介っ……っ!」涙を浮かべる由香利。

(雪村ルート、続く)

378 :流行り神:2009/10/20(火) 10:55:15 ID:+lIODfw+0
 その瞬間、雪村が甲高い悲鳴を上げる。
 「どうして! みんな、私を存在してはいけないものとしか見ない! 夫もそうだった!」
 「どうして、あんな女をママと呼ぶのよ!」
 裕介に向かって振り下ろされる鎌。間一髪、風海が少年を助ける。
 今度は、由香利に襲いかかった。風海は何度も雪村を羽交い絞めにするが、
 そのたびに華奢な中年女性とは思えない力で振り解かれてしまう。

 「ママを放して!」裕介は、近くにあったランプを雪村に投げつけた。
 雪村に弾きかえされたランプは壁に激突して割れ、炎がとび散った。
 火の粉を浴びた雪村は、狂ったように暴れ、取りついていた風海を投げ出した。
 病室の窓から放り出された風海は、植え込みの上に墜落。
 植え込みのおかげで、九死に一生を得ることになる。

 廃病院に火の手が上がったとき、由香利は裕介と離ればなれになっていた。
   ひどい仕打ちをした母親。失うことに怯え、我が子を見捨てた母親。
   それなのに、あの子はママといってくれた。
 「私は、裕介の母親!」由香利は、身体の痛みや炎を省みずに走った。
 裕介と再会したとき、由香利は泣きながら抱きしめた。
 「ぼくが悪い子だから、泣いているの?」
 「違うのよ。あなたが私の子でよかったって、泣いているの。」

 逃げる母子の前に、鬼――釜を持った雪村が立ちふさがる。
 「裕介は、私の子よ!」
 「……」
 しばらくして雪村は幽霊のように業火の中に消え、母子の前に道が現れた。
 「最後に……お姉ちゃん……笑ってたね。」裕介が小さくつぶやいた。
 母子が外に飛び出したとき、廃病院は崩れ去った。

(雪村ルート、続く)

379 :流行り神:2009/10/20(火) 10:56:12 ID:+lIODfw+0
 右足骨折で入院した風海に、小暮が報告を兼ねて見舞いにやってきた。

 あの晩、印南たちは、風海の発信機がすり替えられていたためフォロー出来なかった。
 いつすり替わったのかは、全く判らない。
 それより不可思議なのは、道明寺秋彦。捜査一課の名簿には、彼の名はなかったのだ。
 実在しない刑事。彼は、謎の男の関係者だったのか?

 送られた二通の脅迫状は、鑑定により安西が出したものと判明。
 それ以上のことは、安西が失踪したので判らないという。
 最後に、小暮が裕介の手紙を見せた。雪村に渡して欲しいと頼まれたのだ。
 便箋には、雪村“お姉ちゃん”を気遣い、また遊びたいと綴られていた。
 読み終えた風海は、小暮に焼け跡に埋めて欲しいと頼んだ。

 そこへ、犬童警部がやってきた。
 彼女は、印南から“無断持出し”した雪村の履歴書を出してきた。
   二十年前、夫ともに産婦人科を開業。
   不妊治療の限界を感じた彼女は、自ら代理母となった。
   二年前、夫がいきなり病院を廃業し焼身自殺する。動機は不明。
   自殺する際には、恭子までまきこもうとしたようだ。
   焼身自殺の数日前に由香利の実家が焼失したが、
   この二つに因果関係は見出されなかったようだ。

 「雪村の遺体な、見つからへんかったみたいやで。
 もしかしたら、二年前の時に死んどったんかもしれんなぁ」
 言いたいことだけをいって、警部は帰っていった。

 鬼の目撃談、人並みはずれた力――導き出された結論に、
 刑事二人は沈黙するだけだった。

【余談】
・まとめではほとんど良いところがなかった間宮嬢ですが、
 本編ではきっちりと働いています。
 題名にもなっている「鬼」について学問的に分析したり、
 編纂室の“三人目”として聞き込みに従事したりしています。
 ただし、思い込みは人一倍強く、本編で主人公が頭をかかる
 場面が何度もあったりします(笑)。
・これもまとめでは削除しましたが、ゆうかを叱責する主人公をみた
 由香利が笑みを浮かべて「あの子は彼女なの?」と軽く突っ込む場面が、
 両ルートにあったりします。もちろん、主人公は慌てて否定してますが。

・雪村ルートで出てきた鬼哭寺とその好々爺の住職は、隠しシナリオの
 「退魔師・犬童蘭子」で再登場します。

(第二話『鬼』終了。第三話『名前の無い駅』は近日中に投下します。)



48 :流行り神:2009/11/03(火) 20:23:51 ID:2jN9edTS0
遅くなりましたが、流行り神の本編最後のシナリオを投下します。

流行り神Portable:最終話『名前の無い駅』

【前書き】
 この事件は、誘拐事件以降に起きたもので、
 時系列でいうと一番最後におきたものとなります。

1)前半部
 「あなた」は、まだ暗いコンクリートの密室にいた。
 「これが、風海警部補が得たひとつの結論だ。」
 部屋のなかで男の声に耳を傾けているうちに、
 「あなた」は次第に怪奇現象を否定できなくなっていた。
 (なぜだ! 実際に体験したのならまだしも、ぼくはただ普通の……!??)
 そのとき、「あなた」の思い出せなかった記憶がよみがえった。
 霧崎、小暮たちの姿が、「あなた」の脳裏に浮かんでは消えた。
 そう、「あなた」こそ、風海純也警部補だったのだ。

 風海が“密室”から目をさますと、そこは病室だった。
 ベッドの脇には、小暮、霧崎、そして式部が付き添っていた。
 担当医の式部によると、四日まえ病院入り口で保護されたらしい。
 身体は健康なのに、自分が誰かも判ってない状態だった。
 記憶を呼び戻すために、霧崎の指示で逆行催眠をかけていたところだった。
 どうやら、あの“密室”で風海に呼びかけていた声は、霧崎だったようだ。

 事件当日、何があったのか。 風海は、問われるままに語りだした。


 久しぶりの非番だったその日、ゆうかの電話で呼び出された。
 「付き合って。」という誘いに、風海は二つ返事で了承した。
 (ひょっとしてデートかな?) いそいそと出かける風海。

 ゆうかは目的地を伏せたまま、風海を連れて地下鉄へ乗り込んだ。
 いつの間にか電車は、誰もいない駅に停車していた。
 ゆうかは、風海を急かしてうす暗い駅に降りた。
 そして、電車は二人を残して発車した。

 降りた駅は、建設中に放棄された廃墟のようだった。
 「やっぱり、〔名前の無い駅〕はあったのね!」
 ゆうかによると、ここが都市伝説でささやかれていた
 「最初から名前がない駅」だというのだ。

 「デートじゃなかったんだ。」少なからず落胆する風海。
 「それ、絶対ありえないから!」ゆうかは、デート説を完全否定した。
 薄暗いなか、彼女の顔が少し赤らんだように思えたのは、風海の勘違いだろうか?

(前半部、続く)

49 :流行り神:2009/11/03(火) 20:26:29 ID:2jN9edTS0
 ゆうかの話では、本当の目的地はこの駅の先らしい。
 「この先には『……』があるはず。」
 風海の記憶は、ここで途切れた。


 話を終えた後で、風海はゆうかがまだ戻ってないことを知らされた。
 ゆうか捜索に参加したい風海は、式部に退院させてくれるように頼む。
 式部は、自分を同行させることで許可を出した。
 こうして、風海は部下の小暮、ゆうか関係者の霧崎、主治医の式部の
 三人とともに探索に向かうこととなった。


 一行は、事件当時に乗った路線の終着駅からさらに奥へと続く線路を見つける。
 唯一の手がかりとみて徒歩で奥へと歩き始める。

 奥へと進む途中で、内臓をくりぬかれた遺体を発見する。
 遺体の状態から、性別は男性、年単位で放置されていたことがわかる。
 一行は、ゆうか救出を優先させるため、遺体をそのままにして先を急いだ。

 とうとう建設途中で放棄されたと思しき地下鉄の駅にたどり着く。
 間違いなく、事件当日に二人が降り立った駅だった。その先に怪しいトンネルも見つかった。

 トンネルを抜けた先は、墓場となっていた。
 この墓場のために、地下鉄工事が中断されたようだ。
 先の遺体を祭ったらしい粗末な墓石もみつかった。日付は昭和二十年前後と古かった。
 墓場を調べたい霧崎を残し、ほかの三人は更に奥へ進んだ。

 墓場の先に、昭和二十年代に作られたと思われる研究施設が見つかった。
 その通路を歩いていると、男連れの犬童警部に出会った。
 白い総髪の男は、歴戦の兵士の風格を漂わせていた。
 その男こそ、電話で助言してきた“謎の男”であった。

 男は名を告げないまま、自分の要件を明かした。
 この施設は、彼が所属する“組織”が放棄した研究施設だった。
 最近、ここで行われていた悪魔の実験を再開させる計画が持ち上がった。
 再開反対派の彼は、仕事仲間の犬童に頼み、
 竜脈の力でここを破壊しようとしていたのだ。

 カルト否定派の式部は、龍脈の話に反発し、
 さらに「悪魔の実験」について男に詰め寄った。
 だが、男は「知らないほうがいい。」と交わしただけだった。

 「ここは一時間後に崩壊する。避難したまえ。」
 「ここに女性が一人、迷い込んでいます! ご存知ありませんか」
 風海の問いに、犬童らの顔色が変わった。
 二人は、制限時間は延ばせないこと、別件で手が貸せないことを告げて、去っていった。

(前半部、続く)

50 :流行り神:2009/11/03(火) 20:27:47 ID:2jN9edTS0
 二人と入れ替わるように、霧崎が三人と合流した。墓からは何も手がかりはなかったという。
 薄暗い施設の中を歩き回って、四人はようやくゆうかを見つけた。

 ゆうかと合流したとき、ポルターガイスト現象がおきる。
 実は、東京の某所で「死者の霊魂を人為的に操作する」研究が
 行われていたという噂が流れていた。
 彼女は、この地下施設がその場所だと当たりをつけて、
 噂を検証する目的でここに来たのだった。

 再び、式部はそれを聞いて反論した。
 「この現象は、不審者排除の仕掛けよ。」
 発言直後、癇癪を起こした子供のように部屋が荒れだした。
 ここに長居は無用。風海はゆうかの手を引いて、脱出を促した。

 誰かが追ってくる気配を感じつつ、駅を目指す一行。
 しかし、疲労していたゆうかを連れた風海は、ほかの三人とはぐれてしまった。
 風海は、手近な部屋に飛び込んで、謎の追跡者をかわした。
 一息ついている間、二人はこれまでのことを確認しあった。
 風海がゆうかと別れたのは、ゆうかを逃がすために囮になったためらしい。
 自分だけで逃げ出したのではないと知って、風海は安堵した。

 程なくして、部屋の外で何かが徘徊している気配がした。
 なんとかやり過ごして、時間内に脱出しなければ。
 風海は、ポルターガイストを抑える方法を探そうとした。

/* ここで、ポルターガイストをどう捉えるかで、ルートが分岐します。
/* まずは科学ルート、次にオカルトルートの順に投下します。
/* バッドエンドの分岐箇所は、該当する所に印をつけてあとで解説します。

2)-1 科学派

 ポルターガイストの原因は、やっぱり何かの仕掛けに違いない。
 風海は、ゆうかの反発を覚悟して自分の考えを正直に言った。
 しかし、ゆうかは即座にいくつかの事例を挙げて、あり得ないことではないと返答した。
 彼女の目標は、オカルト現象を科学的に捉えること。
 その為に、ゆうかは科学知識を蓄えていたのだ。

 部屋を出た二人は、廊下を這っているケーブルをたどって機械室を目指した。
 途中から人外の白い影に追いかけられつつ、二人は目的の部屋に駆け込んだ。(*1)
 (白い影も作られた現象なのか?)一抹の不安を抱きつつも、
 風海は機械にイスを叩きつけ、完全に破壊した。
 壊しているあいだ「電気よりもおぞましいもの」(ゆうか談)が部屋の外で
 暴れていたが、機械の沈黙とともにおさまっていった。

(科学ルート、続く)

51 :流行り神:2009/11/03(火) 20:29:56 ID:2jN9edTS0

 ほっとしたのもつかの間、今度は建物が地震のように揺れた。
 気を取り直して部屋を出たとき、風海は狼狽した。
 電力は供給されていないのに、二人を誘導するように廊下の電気が点っていたのだ。
 「あのポルターガイストは、ここに呪縛されていた魂だったのかも。
 機械が壊れたおかげで解放されたんじゃない? 電灯はそのお礼なのかな。」
 ゆうかはそう結論づけたが、風海は信じられなかった。

 不思議な道しるべを頼りに、二人は出口までたどり着いた。
 出口付近で三人と合流して出たとき、見計らったように地下世界は崩壊した。

 「お前たちは、あの施設で何を見たんだ?」
 脱出した後で、霧崎に問われた二人は、見聞きしたことを話した。
 「なるほど。霊的なものを人為的に作り出して制御することを目的とした、
 実験場だったのだろうな。」
 霧崎の結論に、ゆうかは反論しようとしたが口をつぐんだ。
 さすがの彼女も、いま話す気にはなれないのだろう。
 小暮は、完全に理解できずにいる。
 「今回は、現代の科学で完全に否定できるものでもないみたいね。」
 そう言った式部は、昔を振り返るように「あの時と同じ思い……」と呟いた。

 そこへ、犬童が労をねぎらいに一人でやって来た。総髪の男はどこかへ言ったという。
 「細かいところを気にしてたら、身が持たんで。」
 これからもっときつくなるかも知れない。警部はそう警告した。

 警部の言葉に、風海は配属後の事件を振り返った。
 そのまま、テーマソング『ファントム』をバックにスタッフロールへ。

 (*1)
  「ふり返りたい」欲求に負けて後ろを向くと、
   二人とも亡霊に身体を引き裂かれてゲーム・オーバー。


2)-2 オカルト派

 やはり、これは幽霊の仕業ではないのか? 風海は、自分の考えを正直に言った。
 その話に対して、ゆうかは、(風海からみてぶっ飛んだ)提案をしてきた。
 「幽霊と交渉しましょう!」
 こちらに害意はないことを彼らに伝えて、見逃してくれるように頼もうと言うのだ。
 交渉方法は、こちらの質問に対してノックの数で「はい」か「いいえ」かを
 答えてもらうという簡単なもの。

(オカルトルート、続く)

52 :流行り神:2009/11/03(火) 20:35:18 ID:2jN9edTS0
 ゆうかから強引に交渉役を押しつけられた風海は、半信半疑で交渉を始めた。(*2)
 見逃してもらう約束を取りつけて外に出ると、部屋の前から子供の白い足跡が続いていた。
 足跡をたどった先には、子供を監禁していたと思われる小部屋に行きついた。
 二人を連れてきた幽霊とのやりとりで、この施設が何らかの実験施設であること、
 途中の墓はその実験の被験者のものであることが判った。
 ただ、実験の内容については、幽霊自身が知らないのか返答はなかった。
 例の男が言った“悪魔の実験”、被験者たちの墓場……。
 二人は、しばしやり切れなさにため息をついた。
 と、その時、部屋全体が地震のように揺れた。
 二人が部屋を出ると、通路の先で男の子の白い影が見え、誘うように通路の電灯が点った。
 「ありがとう。」二人は、精一杯のお礼を込めて呟いた。

 不思議な道しるべを頼りに、二人は出口までたどり着いた。
 出口付近で三人と合流して出たとき、見計らったように地下世界は崩壊した。

 「お前たちは、あの施設で何を見たんだ?」
 脱出した後で、霧崎に問われた二人は、見聞きしたことを話した。
 「信じられん。何かの間違いではないのか。」
 小暮の反論に、ゆうかは反論しようとしたが口をつぐんだ。
 さすがの彼女も、いま話す気にはなれないのだろう。
 「今回は、現代の科学で完全に否定できるものでもないみたいね。」
 そう言った式部は、昔を振り返るように「あの時と同じ思い……」と呟いた。

 そこへ、犬童が労をねぎらいに一人でやって来た。総髪の男はどこかへ言ったという。
 「細かいところを気にしてたら、身が持たんで。」
 これからもっときつくなるかも知れない。警部はそう警告した。

 警部の言葉に、風海は配属後の事件を振り返った。
 そのまま、テーマソング『ファントム』をバックにスタッフロールへ。

 (*2)
   質問する内容を一つでも間違えると、
   二人とも亡霊に身体を引き裂かれてゲーム・オーバー。

【余談】
・ここで出てきた謎の男は、おまけシナリオ『退魔師・犬童蘭子』に
 しっかりと出てきます。そして、別のおまけシナリオにも、
 それらしき人物の気配が……。

――――――
*これで、<流行り神>本編シナリオは終わります。
 次からは、おまけシナリオをゲームのリスト順に投下する予定です。

(流行り神:最終話、おわり)

 

73 :流行り神:2009/11/07(土) 11:19:28 ID:zuxE8hYl0
流行り神Portable:追加シナリオ/霧崎編『さとるくん』


【主な登場人物】
霧崎 水明(きりさき・すいめい)
 今回の話は、彼の両親がまだ健在だった中学生の思い出話。
 今でこそオカルト肯定派の水明だが、
 中学時代は「科学で説明できないものは、全て嘘である」という
 ガチガチの科学万能主義者であった。

霧崎 道明(きりさき・どうめい)
 水明の父。〔さとるくん〕に拘る息子に、再三警告を発していた。
 イラストでは常にタバコを燻らしているところからすると、チェインスモーカーらしい。


【前置き】
 この話は、両親の命日に水明が過去を回想する形で進行します。


1)前半部

 水明は、両親の命日にはある銘柄の煙草『紫煙』を燻らすことにしていた。
 そして、中学生時代に初めて遭遇したオカルトにまつわる思い出に浸るのだった。


 一学期終業式、水明は同級生のオカルトマニア田井野少年から、〔さとるくん〕の話を聞く。

  校区内の公園にある電話ボックスから特定の番号に電話をかけると、
  〔さとるくん〕という人物が電話に出てくる。
  その人物に自分の知りたい「未来の情報」について尋ねると、答えがかえってくる

 話の真偽を確かめるため、同級生の美久が電話をかける。
 美久は、電話は繋がったが、機械音だけしか聞こえなかったと告げる。

 美久と彼女の親友・敦子、水明の三人は、話は嘘だと結論をだすが、田井野は認めなかった。
 田井野の醜態に嫌気が差した三人は、それぞれ家路につく。

 それから数時間後、霧崎家に「公園の電話ボックスで美久が殺された。」という凶報が届く。
 夜の公園を散歩していた敦子が、美久の遺体を見つけたという。
 話によると、美久は夜になって「電話をかける」と言って家を飛び出したらしい。

 一夜明けた翌日。水明は、美久の葬儀に参列していた。
 水明が焼香しようとした時、自分を見つめる、粘りつくような視線を感じた。
 見つめられる心当たりがない彼は、いぶかしむ。

(前半部、続く)

74 :流行り神:2009/11/07(土) 11:20:28 ID:zuxE8hYl0

 葬儀後、敦子の提案で公園に集まることになり、水明は一旦帰宅する。
 水明が家に戻ると、道明から〔さとるくん〕に関わるなと言われた。
 「絶対に電話をかけるな。そうすれば、最悪の事態は防げる。」
 「判ったよ。」水明は、そう返事をして公園へ向かった。

 公園で、水明は、体育教師の桜井と学級担当の響子に声をかけられた。
 反抗的な水明の態度に腹をたてた桜井が拳を振りあげたとき、
 水明を庇った響子が尻餅をついた。
 その時――「そんな目で……見ないで。」異常に怯える響子に、桜井や水明は唖然とする。
 響子は走り去り、続いて桜井もその場を立ち去る。

 友人と合流した水明は、田井野の主張を挫こうと〔さとるくん〕に電話をかけてしまう。
 受話器から流れてきたのは、留守番電話のメッセージだった。
 「わたしはさとる。……わたしを見ないで。」
 ぎょっとしたとき、電話ボックスで〔さとるくん〕の電話番号を記したチラシを見つける。
 どうやら、〔さとるくん〕の噂はイタズラ電話に加担させようとする誰かの仕業のようだ。
 水明はそう断定するが、田井野は自説を曲げなかった。

 その後、なりゆきで三人は道明とともに美久の家を訪ねることになった。
 そこで、美久の遺体が消えたことを聞く。
 美久の家を辞したあと、道明は三人に口止めと〔さとるくん〕に近づくなと言いわたす。
 自宅で水明は、道明に事件について聞いてみたが、その時期ではないと断られる。
 釈然としないまま、水明は、田井野の呼び出しに応じて公園に出かける。

 公園に来た敦子の虚ろな様子に、水明は一抹の不安を感じる。
 田井野と合流後、三人は、逆さ吊りにされた美久の遺体を発見する。
 現場に関係者が集まっているとき、青ざめた顔の敦子は、水明に話があると言ってきた。
 水明は、離れた場所にあるベンチに敦子を誘う。

 敦子は、美久が殺された日に〔さとるくん〕へ電話をかけたことを告白する。
 ただし、どんなやり取りをしたのかは覚えてないという。
 「わたしも、何も言われなかったのかな?」
 水明は、葬儀から何度も感じている視線をまた感じた。
 公園のそばにある空き家から、少年がこちらを見ていた。
 水明は敦子を連れ、少年のあとを追いに空き家へ入り込む。
 二人が空き家で少年を追っているときに、女性を連れた道明と出くわした。
 女性は、呪文のようなものを唱え続けていた。
 気がつくと、先ほどの男の子はどこかへ消えてしまった。

(前半部、続く)

75 :流行り神:2009/11/07(土) 11:22:40 ID:zuxE8hYl0

 少年が消えた後、道明はようやく〔さとるくん〕について語りだした。
 「〔さとるくん〕は“忌み名”を集めていた。それが、父さんの心配ごとだったんだ。」
 「忌み名?」聞きなれない言葉に、水明は聞き返した。
 「モノのホンマの名前のことや。」先ほどの女性が答えた。
 かつて日本では、本当の名前を言うと相手を自由に操ることができる、と信じられていた。
 そこで、本名は“忌み名”として秘密にし、普段は別の名前を使っていた。
 いまでは廃れた風習だが、水明が住んでいる地域ではまだ残っていた。

 道明と女性がここまで説明したとき、敦子が急に倒れる。三人は慌てて空き家を出る。
 そとで敦子を寝かしているとき、道明が美久の遺体失踪について触れた。
 「美久ちゃんは自分であそこまで来たらしい。現場に彼女の足跡があったんだ。」
 絶句する水明。その時、敦子が意識を取り戻し、つぶやいた。
 「思い出したの……わたし……本当の名前を知られちゃった。」

 電話のチラシは、イタズラではなく忌み名蒐集の罠だったのか。
 その時、担任の響子の電話番号と〔さとるくん〕の電話番号が同じであることに気づく。
 ――尻餅をついたときの異様な怯え様、留守番電話の女性のメッセージ。
 度重なるイタズラ電話で、担任の女性教諭の心は蝕まれてしまったのか?
 水明は、道明と連れの女性に電話番号の話をした。
 「仕事ができた。」道明と女性は、その場を水明に任せて足早に立ち去った。

 二人がさったあと、敦子は急に公園に行くと言い出す。
 公園に着いたとき、水明はまた粘りつくような視線を感じた。
 推理を巡らした水明は、視線の主は担任の響子だと結論づける。
 彼は、真実を確かめるために視線の主が潜んでいると思われる茂みへと近づいていった。

/* ここまでのプレイの進め方で、エンディングが二つに分かれる。

2)-1 エンディング~その1

 茂みから飛び出したのは、やはり響子教諭だった。彼女の言葉は既に人間の言葉でなかった。
 響子は手にした棒切れで敦子の頭を殴り、次に水明も殴り倒した。
 「すまない……水明……」薄れる意識の中で、駆けつける父の姿を見つけた。
 響子は道明に拘束される直前、持っていたナイフで両目をきりつける。
 その後、水明は意識を失った。

 響子は美久殺害を認めた。自ら傷つけた両目の視力は戻らなかったらしい。
 水明は無事に意識を取り戻したが、敦子は未だ目が覚めていない。
 敦子の病室で、田井野は敦子を思いやるような都市伝説を披露した。
 彼なりの配慮に、水明はちょっとだけ彼を見直す。
 と、その時、敦子の意識が戻った。喜ぶ水明だったが……。
 「大丈夫だよ……私は平穏無事に生きるから……ね、さとるくん。」
 ぼんやりとした彼女の様子に、少年二人はただ絶句するのみだった。

(エンディング~その1、続く)

76 :流行り神:2009/11/07(土) 11:26:54 ID:zuxE8hYl0
 (*1)
 事件後、敦子はどこかへ引っ越してしまい、連絡が取れなくなった。
 そして二ヵ月後、水明の両親は他界する――水明に一冊のファイルを残して。
 〔さとるくん〕と両親の死、この二つの出来事で、水明少年は科学至上主義をやめ、
 彼なりにオカルトを研究するようになった。
 いつの日か、残されたファイルの謎を解く。
 水明は、そんな思いを抱きつつ、命日に父が吸っていた『紫煙』を燻らすのだった。

                                  ~終わり~

2)-2 エンディング~その2

 茂みから飛び出したのは、やはり響子教諭だった。彼女の言葉は既に人間の言葉でなかった。
 響子は手にした棒切れで敦子の頭を殴り、次に水明も殴り倒した。
 「すまない……水明……」駆けつける父の姿を見ながら、水明は意識を失った。

 (*2)
 気がつくと、水明は病室にいた。心配そうな両親がそばにいる。
 彼は三日間も眠っていたのだ。父は、水明に事件のその後について話した。
 「最悪の解決になった……〔さとるくん〕の事件は解決し、犯人は逮捕されたよ。
 でも、敦子ちゃんは……。」敦子はまだ意識が戻らないという。肩を落とす父親。
 両親と入れ違いに、田井野が見舞いに訪れた。さすがの田井野も大人しい。
 と、その時。隣りのベッドで寝ていた敦子の意識が戻った。喜ぶ水明だったが……。
 「大丈夫だよ……私は平穏無事に生きるから……ね、さとるくん。」
 ぼんやりとした彼女の様子に、少年二人はただ絶句するのみだった。

/* 以下、「エンディング~その1」の(*1)と同じなので、割愛。

(このあと、ゲーム・オーバー+αあり)

77 :流行り神:2009/11/07(土) 11:28:54 ID:zuxE8hYl0
3)ゲーム・オーバー

/* 話の真相にたどり着く前に選択を誤ると、水明が視線の主に気絶させられる。
/* それ以降は、「エンディング~その2」の(*2)と同じなので、割愛。


【余談】
・まとめでは影が薄い田井野少年ですが、本編では自説を曲げない嫌らしさを爆発させています。
 実際にプレイして味わって欲しいですね。
・途中で関西訛りの女性が出てきますが、本編でも名前は名乗りません。
 でも、あの言葉遣いをする関係者は一人しかいないわけで……。
 イラストからして、同一人物であることは間違いないでしょう。
・水明の父親・道明。顔の輪郭や煙草のくわえ方など、
 『名前の無い駅』に出てきた人物に良く似ています(笑)。

(以上で、霧崎編『さとるくん』終了。次の式部編『レイコ』編は後日に投下します。)

113 :流行り神:2009/11/16(月) 10:28:08 ID:chs/NH5d0

流行り神Portable:追加シナリオ/人見編『カシマレイコ』


【主な登場人物】
式部 人見(しきぶ・ひとみ)
 今回の話は、彼女が医者になった頃に起きた事件である。
 この頃から、頑なにオカルトを否定していた。
高田 幸造(たかだ・こうぞう)
 事件当時、鴨根医大病院に勤務していた医師で、式部の上司。
 人格・技術ともに優れた医師として、周囲の信頼を集めていた。
 式部も、一人の男性としての憧れも抱いていた。

【前置き】
 この話は、式部が過去を回想する形で進行します。


1)前半部

 式部の愛用するバイクのエンジンタンクに、ある落書きがされている。
 その落書きは、ある「事件」の記念でもあった。


 彼女が新人だったころ、病院に有名なモデル・鏑木輝充が救急で運び込まれた。
 彼の右腕は、高濃度の酸で焼かれたような状態だった。鏑木は息を引きとる。
 モデルを看取った高田と式部の前に、スポーツ新聞記者・落合圭三が現れる。
 落合は、鏑木よりも一般人の福岡篤文少年に興味を示した。
 追い払おうとした高田を、落合は意味ありげな言葉『素材』で黙らせた。
 式部は、少年の面会に向かった落合の後を追う。

 式部が少年の個室に入ると、少年は落合と談笑していた。
   〔カシマレイコ〕の名前を聞いてから三日以内に、両足が無い女が夢の中に現れる。
   その女〔カシマレイコ〕に「右足はいるか?」と質問されたら、
   「いる。」と答えないと彼女に右足を取られてしまう。
 少年は、落合が話した〔カシマレイコ〕の都市伝説にはしゃいでいた。
 有無も言わさずに病室から、式部は落合を追い出した。

 それ以降、彼女の周りでオカルトじみた出来事が起き、眠れぬ一夜を明かした。
 (オカルトを認めるということは、過去のあの“事件”を認めることになる)
 (だから、認めるわけにはいかない……)

 翌日、鏑木の検視は高田によって行われた。
 検視結果は、予想通り「右手を薬品で焼かれた時のショック症状」であった。
 それ以外にも、鏑木の婚約者・希樹比佐子が高田の患者だったこと、
 鏑木は搬送中しきりに「カシマレイコ」とつぶやいていたこと、
 鏑木と彼女、そして看護士の穂積の三人が小学校の同級生だったこともわかった。

(前半部、続く)

114 :流行り神:2009/11/16(月) 10:29:21 ID:chs/NH5d0

 霊安室に向かう途中、式部は少年に張りついていた落合に捕まる。
 彼は、少年の病気は「未承認の薬品」による副作用ではないのかと、と問いかけて来た。
 しかも、その薬は冷戦時代の人体実験で用いられた物だというのだ。
 戸惑う式部を残し、落合は仄めかすだけ仄めかして去っていった。

 いつもより冷えている霊安室で、鏑木の遺体を見てみると――右腕がない!
 しかも扉が開かなくなり、更に室内の温度が下がっていることに気づいた。
 このままでは危ない――幸いにも、式部は異変に気づいた高田によって救い出された。
 高田とともに霊安室を出たところで、希樹と出会う。
 「道に迷ってしまって……。」
 建物の構造上、一般人が迷うはずがない。式部は、彼女の弁解に内心首をかしげる。

 高田の研究室で、式部は希樹についてたずねて見た。
 希樹は、小学生のころに列車事故で右手を負傷。
 マスコミが事故を「カシマレイコ」に絡めて報道したため、彼女は同級生からイジメられた。
 高田はその時の担当医であり、彼女から相談を受けていたという。
 高田の話から、式部の心に希樹への疑念がわき始めた。

 その時、式部は卓上の見慣れないアンプルに気づく。
 式部がアンプルについて聞くと、高田は慌ててアンプルをしまい、
 パソコンのファイルを閉じた。ファイルに「福岡篤文」の名前がちらりと見えた。
 式部の追及に、高田はいきなり食事の誘いを振ってきた。
 「明日の晩……詳しく話すよ。ごめん。」
 心残りだったが、高田よりも希樹の件を優先させて、式部は希樹の家へとバイクを走らせた。

 右腕を持ち去った犯人はあなたではないか、と式部は切り出した。
 白を切っていた希樹だったが、逃げられずに本音をあらわにした。
 鏑木に硫酸をかけたのはいじめの仕返しで、右手を持ち帰ったのも彼女だった。
 事件後に式部の周りで起こった奇怪な出来事も、彼女が引き起こしたことだった。
 穂積が式部に好意を抱いていると気づき、自分の復讐ために利用しようとしたのだ。
 「最終的には、誤解した貴女が穂積を殺すように仕向けるつもりだったわ……」
 静かに笑う希樹に、式部は自首をすすめて立ち去った。


/* ランクによって、エンディングが違ってきます。


2)-1 エンディング~その1
 自首を進めた次の晩。高田と約束した店で、式部は待っていた。
 だが、三十分遅れで店に来たのは高田ではなく落合だった。
 式部の横に腰を下ろすと、落合は自分が追っていたネタについて語りだした。

(エンディング~その1、続く)

115 :流行り神:2009/11/16(月) 10:31:23 ID:chs/NH5d0

 福岡少年に投与されていた薬は、冷戦時代のソ連での体実験に用いられたものだった。
 薬は人為的に超能力者を作るもので、
 ある「組織」が福岡少年を使って新薬実験を行っていた。
 落合が追っていたのはこの組織であり、少年の主治医・高田はその組織の手先だった。
 少年の謎めいた病気は、この薬の副作用が原因だったのだ。
 そして今、医師とその患者は姿を消した。
 「何らかの研究結果が出たのか……その逆か……。」

 落合の話を聞いた式部は、病院へ引き返した。
 彼の話の通り、医師と少年は姿を消し、記録もきれいに抹消されていた。
 ――高田のパソコンにあったテキストファイル『hitomi.txt』を除いて。
 しかし、このファイルも文字化けして読めなかった。


 (*1)
 それから数年たつが、二人の行方はようとして知れなかった。高田との再会は、
 風海たちの活躍で叶うのではないのかという予感めいたものも感じ始めていた。
 読めない『hitomi.txt』も、式部はいつか読める日を夢見て保存していた。
 これが読めたとき、自分自身が過去の事件から解放されることを信じて。

                          ~終わり~


2)-2 エンディング~その2
 自首を進めた次の晩。高田と約束した店で、式部は待っていた。
 だが、三十分遅れで店に来たのは高田ではなく落合だった。
 式部の横に腰を下ろすと、落合は自分が追っていたネタについて語りだした。
/* 落合の話はエンディング~その1と同じなので、割愛

 二人が話しているとき、穂積が近づいてきた。彼は、落合の話が本当で、
 自分が高田の指示で少年に新薬を投与していたことを告白した。
 更に、希樹も薬の被験者だったことと、
 高田が姿を消したのも実験が失敗したためらしいことも明かした。

(エンディング~その2、続く)

116 :流行り神:2009/11/16(月) 10:32:14 ID:chs/NH5d0

 二人の話を聞いた式部は、病院へ引きかえした。
 高田は、少年の退院手続きを済ませ、その後に辞職届を出したという。
 高田の研究室は、誰もいなかったようにパソコン以外きれいに片付けられていた。
 パソコンには、式部が見てしまったファイルが開いたままだった。
 ファイルの内容は、落合の話を裏付けるのに十分なものだった。
 そして、パソコンにはもう一つのテキストファイル『hitomi.txt』があった。
 パスワード設定のファイルだったため開けられず、式部は諦めて作業を切り上げた。

 病院の駐車場でバイクにまたがったとき、彼女はタンクのいたずら書きに気づいた。
   『kashima reiko』
 式部は引き返し、『hitomi.txt』のパスワード入力欄に『カシマレイコ』と打ち込んだ。
 ファイルは開いたが、内容は文字化けして読めなかった。何者かが故意に消したらしい。
 式部は、『kashima reiko』をフロッピーに落として部屋をあとにした。

/* 以下、エンディング~その1の(*1)と同じなので、割愛

                          ~終わり~

3)ゲーム・オーバー

3)-1 硫酸にやかれて死亡
 希樹を問い詰める場面で選択肢を間違うと、希樹に硫酸をかけられて死亡。

3)-2 穂積とセカンドステージへ
 前半部の選択によって、新人看護士の穂積と人生の「セカンドステージ」に進むというもの。
/* 心の重しが取れ、新たな伴侶とともに人生を歩む――ハッピーエンドかもしれません(笑)


【余談】
・この事件は、公式の人物紹介で触れられていた
 式部が過去に体験したオカルト事件ではありません。
・ただ、過去の事件にこだわって目の前の現象を頑なに拒む態度で、
 式部にとってその事件は大きな枷となっていることは見て取れます。

(追加シナリオ/人見編『カシマレイコ』終わり、次は『神隠し』です。)

124 :流行り神:2009/11/17(火) 15:51:44 ID:0F3/Q7GB0

流行り神Portable:追加シナリオ/ゆうか編『神隠し』


【主な登場人物】
間宮 ゆうか(まみや・――)
 今回の話は、彼女が高校生に遭遇した事件である。
 当時、東京から引っ越して日が浅かったため、地元の事情に疎かった。
羽黒 薫(はぐろ・かおる)
 地元生まれの地元育ちで、ゆうかが最初に親しくなったクラスメイト。
 ゆうかの人生に大きな影響を与えた人物。


【前置き】
 この話は、ゆうかが過去を回想する形で進行します。


1)前半部
 ゆうかが高校生だった頃、彼女は、両親の都合で東京から神奈川の地方へと転校した。
 この事件は、そのころに体験したものである。


 冬休みを数日後に控えたある日、ゆうかは先輩・佐倉からある企みに強制参加させられた。
 冬休みの夜に、〔ホルマリン漬けの女生徒〕の噂を確かめようというのだ。
 佐倉は、四十年前に男性教師と女生徒が失踪した事件がこの噂の元ネタだと考えているらしい。

 冬休みの初日の夕刻。ゆうかは、学校近くで佐倉、薫と落ちあう。
 押しかけてきた下橋ミキに佐倉が不機嫌になったり、
 老母を連れた男性教師・小松と会ったりと、ごたごたを経て学校へ忍び込んだ。
 四人は、封印されていた教室から失踪した教師の日誌を発見する。
 ゆうかは、その日記から事件の二人が恋仲にあったことを知り、
 四十年前の真相は駆け落ちだったと確信する。
 そのとき薫が倒れてしまい、佐倉の指示で宿直室へ向かう。

 宿直室へたどり着いたとき、ゆうかと下橋は室内にさっきまで誰かがいた痕跡に気づく。
 外は猛吹雪で、宿直室の電話は不通、携帯も圏外で使えなかった。
 この状況下、佐倉はゆうかに一人でさっきの教室を詳しく調べるように強要する。
 途中で足を挫いた下橋は、渋々と出て行くゆうかをすまなそうに見送った。

 ゆうかは、先ほどの日記から、女生徒が多々良家、教師が羽黒家の人間だったことを知る。
 宿直室へ戻る途中、ゆうかは佐倉と合流し、佐倉のトイレに付き合うことになった。
 ゆうかは、トイレで緑色をした天狗の顔を見た直後、意識が朦朧とする。
 意識が戻ると、トイレの個室に閉じ込められていた。自力で脱出し、宿直室へ急ぐゆうか。

(前半部、続く)

125 :流行り神:2009/11/17(火) 15:53:46 ID:0F3/Q7GB0
 たどり着いた宿直室では、佐倉と下橋はおらず、薫が殴り殺されていた。
 呆然として外に出ると、外で下橋が立っていた。
 下橋によれば、佐倉は助けを求めて激しい吹雪の中を出て行ったという。
 寒さと時おり聞こえる羽音に下橋は怯え、宿直室に戻ろうと提案してくる。
 ゆうかも部屋に入るが、なぜか薫の遺体が消えていた。
 首をかしげているゆうかを、天井を見上げていた下橋が強引に外へ連れ出した。

 外にでた下橋は、連れ出した理由を明かした。
 天井裏の窓から赤い影がこちらを覗いていたので、怖くなって逃げ出した、と。
 二人を追ってきたらしい影から逃げる途中、二人は点々と続く血痕を見つける。
 追っ手から逃げながら、二人は事の真相を推理し始めた。

 天狗信仰が根付いてるこの村で、天狗を祀る多々良家は、ながらく強い力を保ってきた。
 しかし、天狗の天誅・〔神隠し〕が四十年前に起きたことで状況は一変する。
 天狗を祀っていた多々良の威光は地に落ち、代わって台頭してきたのが羽黒であった。
 小松教師も、このせいで生家の多々良から親戚の小松へ養子に出された。
 最初に多々良を非難しだしたのは羽黒だったことを考えると、
 〔神隠し〕は「羽黒が駆け落ちを利用してでっち上げた」と考えられる。

 薫は多々良と羽黒の因縁に巻き込まれて殺されたとすると、誰が薫を殺したか?
 話を持ってきたのは、佐倉だ。
 佐倉が下橋のおしかけに不機嫌になったのは、計画が狂うからではないか。
 しかし、易々と薫の遺体を運べるとは考えにくい。誰か共犯者がいるはずだ。
 小松先生だ! 佐倉が彼に協力しているとするなら、話のつじつまは合う。
 下橋は、近くにある滝・「天狗の祠」に遺体が投げ込まれるかもしれない、と気づく。
 そこは落ちると二度と浮き上がらない場所なのだ。
 ゆうかは、下橋を安全な場所に避難させて単身「天狗の祠」へと向かう。

 祠に向かう途中、ゆうかは空を飛ぶ怪しい影に襲われた。
 「天狗!?」じりじりと後じさりするうちに、ゆうかは崖から転落してしまう。
 東の空が明るくなるのを感じながら、ゆうかは気を失った。

 気がつくと、病院のベッドに寝かされていた。下橋の知らせで救助されたらしい。
 軽薄そうな若い刑事・佐藤が、その後のあらましを話してくれた。
 四十年前の失踪は、駆け落ちではなく心中だった。それを裏付ける証拠品も出たという。
 しかし、死んだのは多々良イサミだけで、羽黒亮二は生き延びて娘をもうけたという。
 刑事は、その娘が薫だとみているようだ。その薫の遺体は、まだ見つかってない。
 イサミの弟だった小松教師は、事件を引き起こした亮二親子に復讐しようとしたらしい。
 佐倉は、小松と恋仲だったため計画に巻き込まれた模様。
 ただし、小松は姿を消し、佐倉は錯乱状態の現状では、はっきりしたことは判らないという。

 その後、佐倉は正気に戻ったものの事件当時のことは覚えてなかった。
 ゆうかも転校してしまい、それからのことは判らなくなった。

/* ここでエンディングが分岐する。

(前半部、終わり。エンディング~その1へ)

126 :流行り神:2009/11/17(火) 15:55:52 ID:0F3/Q7GB0

2)-1 エンディング~その1
 霧崎の研究室で、ゆうかは風海に自分のオカルト体験を話し終えた。
 感想を求められた風海は、ある点を指摘する。
 〔神隠し〕に見立てる計画だったら、血が残る殺害方法は取らないはずだ。
 実際に薫を殺したのは、天井裏に潜んでいた天狗ではないだろうか。
 小松と佐倉は、天狗に振り回されただけではないのか。
 と、そこへ現れたのは霧崎。彼はかるく風海をからかう。
 そんな義兄弟のやりとりをみながら、ゆうかは薫に思いをはせた。

   薫は死んだのではなく、本当に〔神隠し〕にあったのかもしれない。
   そして、いまも生きているのかもしれない、と。


                              ~終わり~
2)-2 エンディング~その2
 ゆうかのオカルト体験を聞いた風海は、自分の推理を語った。
 だが、それはゆうかを納得させるものではなかった。

   いつか、自分の手で真相に近づいてみせる――ゆうかは心にそう誓った。
                              ~終わり~

(エンディング~その2、終わり。ゲーム・オーバー+αに続く)

127 :流行り神:2009/11/17(火) 15:57:36 ID:0F3/Q7GB0

3)ゲーム・オーバー
/* ゲーム・オーバーに至るルートは複数あるので、どういう終わり方になるかだけを表記する。

3)-1 薫が死なずに生き残る
 この場合、小松は行方不明となり、佐倉は三年たっても正気に戻らない。
 下橋とはまだ連絡を取っているが、薫は卒業後に一族揃って転居し連絡が取れなくなる。
 大学生になったゆうかは、薫との再会を願いながら、オカルト三昧の日々を堪能している。

3)-2 ゆうかだけ生き残る
 エンディングと同様に崖から落ちるが、小松の老母に発見されて助かる。
 佐藤刑事から小松を含む四人の行方が判らなくなっていると告げられ、
 老母に「なぜお前だけが〔神隠し〕に遭わずにいるのか!」と詰め寄られる。
 もし、あの時に違う判断を下していたら、みんなは助かっただろうか、
 いや、じぶんもまた消えてしまったのではないか……。三年後も、ゆうかは忘れられずにいる。

3)-3 崖から転落死
 エンディングと同様に崖から落ちるが、ゆうかは救助される前に息を引き取る。
 その後、ゆうかは幽体となり、三年のあいだ現世を漂うことになる。
 行きたかった大学の一室で講師が刑事と話しているのを見ながら、ゆうかの幽体は消滅する。

3)-4 〔ホルマリン漬けの女生徒〕にとりこまれる
 死んだ多々良イサミは、二人を死に追いやった周囲を怨み、
 ホルマリン臭を漂わせた異形のモノとして夜の校内を徘徊していた。
 ゆうかは、このモノに取り込まれて幽体の状態になり、三年のあいだ現世を漂うことになる。
 行きたかった大学の一室で講師が刑事と話しているのを見ながら、ゆうかの幽体は消滅する。


【余談】
・最後の最後に出てくる佐藤刑事について。顔全体のイラストはありませんが、
 口元のイラストといい、人物描写といい、本編に出てきた“あの人物”そのものでした(笑)。
・ゲーム・オーバーは以上の四つだけだと思いますが、抜けがあったら補完をお願いします。

(ゆうか編/『神隠し』、終わり。流行り神の穴埋め作業も完了)


92 :流行り神 退魔師・犬童蘭子編:2009/02/14(土) 13:30:56 ID:KHZiYnGO0
未解決一覧から「流行り神 退魔師・犬童蘭子編」投下します
…といっても犬童蘭子編が番外編の為、本編をやってないと理解しづらいかもしれません。
wikiには第零話「チェーンメール」の解説がありますが、時間的には犬童編はチェーンメールより前の話になっています。


93 :流行り神 退魔師・犬童蘭子編:2009/02/14(土) 13:31:59 ID:KHZiYnGO0
犬童蘭子編は、同ゲームの本編第1話「コックリさん」のオカルトルートを犬童の視点から描いたもの。
この事件で本編の主人公である刑事・風海純也とその相棒・小暮宗介は初めてオカルト的存在に触れる事になる。


本編ではギャンブル好きで全く仕事をしないグータラ上司として描かれている蘭子だが、その正体は魔を憎み滅する事に命を懸ける「退魔師」。
彼女はある組織に属し、魔を滅する為に風海達には隠れて活動している。
ある日蘭子は志を同じくする男(霧崎水明の父・霧崎道明と思われる)に、都内の高校の敷地内にある「殺生石」の怨念を封じるよう依頼される。
殺生石とは、平たく言えば怨念の篭った石の事。しかし高校にあるような殺生石の欠片ならその力は微力であり、封じる必要まではない。
首を傾げる蘭子に、男はその高校で2日前に女子生徒の自殺があった事と、その原因が恐らく殺生石にある事を告げる。

94 :流行り神 退魔師・犬童蘭子編:2009/02/14(土) 13:33:27 ID:KHZiYnGO0
さっそく件の高校に向かい、調査を開始する蘭子。
同様に女子生徒の自殺について調べる風海や小暮とニアミスしながらも、殺生石に力を与えているのは、とある女子生徒の抱いている強い恋心と、恋敵に対する激しい憎しみだという事を突き止める。
しかしいくら触媒となっていても女子生徒自体をとっちめるわけにも行かない。
そこで蘭子は殺生石のある敷地内の森へ向かい、経文を殺生石に捧げる事でその暴走を止めようとする。
だが蘭子の予想以上に女子生徒の想いは強く、彼女が激昂した際に経文は破れ、落雷により殺生石に封じられていた怨念が復活してしまう。
仕方なく蘭子は殺生石に封じられていた怨念「九尾の狐(の破片)」と対峙する事に。
苦戦しながらも蘭子は九尾の狐を追い込み、瀕死の状態に持ち込む。
しかし九尾の狐は殺生石の様子を伺いに来た風海達の気配を察し、これ以上攻撃を加えたら断末魔の苦しみを奴らにも分ける(要するにメガンテして風海達も殺す)と蘭子を脅
した為、仕方なく蘭子は一旦退く事に。

95 :流行り神 退魔師・犬童蘭子編:2009/02/14(土) 13:35:12 ID:KHZiYnGO0
そして翌日。蘭子は自分に退魔師となる術を教えた住職の下に行き、新たな退魔具を持って再び九尾の狐に挑む。
九尾の狐は触媒たる女子生徒が負の感情に流されつつある為か、刻一刻と力を増している。
対する蘭子は昨日の傷を癒えておらず、その結果徐々に追い詰められていく。
九尾の狐はそんな蘭子を嘲笑い、また自分達の近くで想いを叫び、感情を爆発させている触媒とその恋敵の言い争い(本編の1シーン)を見せつけ、人間の憎しみは美味だと哄笑する。(結界が張ってある為、向こうから蘭子達は見えない)
蘭子にはもはや反論する力さえも残っていない。
もはやここまでか、とあきらめかけた時、突然九尾の狐が苦しみ出した。
何が起きたのかわからずに周りを見回すと、先ほどの言い争いの末、恋敵が鋭い枝で触媒となっていた女子生徒の腹部を刺しているのが見えた。
これほどのチャンスはない。蘭子は最後の力を振り絞り九尾の狐に一撃を加え、これを打ち破る事に成功する。

数日後、編纂室には「コックリさん」事件の功績を認められ、「組織」によって異動させられた風海と小暮がやってくる。
いくら人手不足でも、こんなひよっ子送ってこられても困る…などと口では毒づく蘭子だが、内心では風海達に期待していると告げるのだった。


96 :流行り神 退魔師・犬童蘭子編:2009/02/14(土) 13:41:55 ID:KHZiYnGO0
すみません、書き忘れていましたが以上で終わりです。

最終更新:2009年11月29日 15:38