ゼノギアス (Part1? > 2)

ゼノギアス(Part1/2) ページ容量上限の都合で2分割されています。

要約版1:part3-302

要約版2:要約スレpart1-183

要約版3:要約スレpart1-184

要約版4:要約スレpart2-657,660,664,665

詳細版:part5-536の人による詳細なまとめ(元となった書き込みはpart5-536~538・574~578、part6-15~17・64~68・102~104・143~145・229~231、part7-21)

 


 

302名無しさん@お腹いっぱい。sage04/01/2621:59ID:Vq5WRRH1

これよく分かるので、「ストーリーがよく分からなかったRPG」のスレッドからコピペ

345名前:名無しさん@お腹いっぱい。メェル:sage投稿日:03/11/1713:17ID:aNUi2LI3
ゼノギアス簡略
OPは1万年前の舞台。人類は超高度な科学力をもちいて銀河系とかで繁栄していた。
(微妙にパラレルっぽいがこのあたりの話はゼノサーガで語られている)
しかし宇宙間では星間戦争と呼ばれる惑星同士の対立とかでいろいろ紛争だらけ。
そこで20XX年に発見した「ゾハル」をメインとする最終兵器デウスを製作し、戦争終結をはかる。
しかしデウス暴走し、惑星1つ破壊。こりゃアカンということで起動停止。運搬中。
運搬中にまたデウス暴走。乗組員およびたまたま乗船していた民間人全滅。船大破。
生き残ったのはアベルのみ(のちに転生してフェイ)
船はデウスごとゲームの舞台となる星に墜落。

348 名前:つづき メェル:sage投稿日:03/11/1713:28ID:aNUi2LI3
デウスはプログラム復活のために壮大な再生計画を実行。
システムからミァンを分離して「原初の母」とする。
ミァンは天帝およびガゼル法院を生む。またデウスの部品となるヒトを大量増産。
世界を影から支配してヒトの進化を促す(デウスに取り込むため)
そして4000年前のゼボイム文明時代にはヒトが生殖能力を欠くという欠陥が生じたため
ミァンが核兵器を使ってほぼ全滅させる(ヒトのリセット)
500年前のソラリス戦役時代には、ヒトは進化の頂点に来たとガゼルやミァンたちは判断し、
デウス復活に向けて表舞台で行動開始。
ソラリスから全人類の支配をもくろむが地上人(特にアニムス)のギア・バーラーにより大苦戦。
さらにミァンが地上人のゾハルにコネクトできる技術(エーテル)に興味を持ち出す。
ガゼル法院をメイン部品として組み込むのより、アニムスの地上人組み込んだ方が良いと判断。
ミァンはラカン(フェイ)の前世と接触。ソフィアの不幸で落ち込んでるラカンに付け込む。
世界の破壊を暗に促す。ラカンはゾハルと不完全接触を果たしディアボロスを使い世界崩壊。
ミァンのヒトのリセット計画またもや成功。

349名前:つづき2メェル:sage投稿日:03/11/1714:08ID:Nat4hRFU
ギア・バーラーとディアボロスの攻撃でガゼル法院はびびりまくり。
そこで地上人の遺伝子だかに直接リミッターを施して反乱しないように操作。
ラカンの肉体は滅びても魂はグラーフとして生存。全ての元凶であるデウス破壊のために
自らの肉体の転生を待ち続ける。
カレルレンは現実の戦争と悲劇に絶望し、ある意味では神ともいえる(ヒトがデウスの部品であり、分化体だから)デウスに対し救いを求め、デウス再生計画に手をかす。
そしてゲームの舞台へ。
ミァンの目的は取り合えずはデウス復活だが、ガゼル法院はその後の宇宙制覇に固執している。
カレルレンは完全なミァン(ミァンとエリィの再統合体)と一緒に仲良くデウスの部品になろうと考えている。
フェイの運命はゾハルから波動存在(宇宙の根源・あるいは創造主・真の神ともいえる無に揺らぐ存在)を解放すること。
理由はアベルが運搬船でたまたまゾハルに接触したためだが、詳しい経緯は不明(ゼノサーガで語られるかもしれない)
フェイは仲間たちと共に、デウスやガゼル法院の支配に反乱を起こす。
最終的にはデウスの破壊に成功、デウスのメインフレームの一部だったエリィも救出。波動存在も解放され、
ようやくヒトがデウスの支配(いずれデウスに帰還しなければならないと運命)から解放されました。



183名無しさん@お腹いっぱい。sage2005/04/06(水)03:02:49 ID:Yh18XVju
あれの評価が高いのは広げた風呂敷たたみきったことが大きいから、
要約見ても・・と言う気がするが。

要するに管理された世界からの脱却って言う、メガテンや棄てプリとか良くある話なんだ。
それに色々くっつけて複雑になってる。

ばっさりと切って要約すると、
デウスというシステムが破壊され、とある惑星に落下した。
デウスは自分を復活させる為に人間を作り出した。
で、最後に人間がデウスを破壊、独り立ちしてEND

 


 

184ゼノギアスsage2005/04/06(水)03:12:41 ID:uh1/Q2E6
巨大植民宇宙船が航行中、輸送していた超兵器「デウス」が暴走して惑星に墜落。
生存者はアベルという男の子一名のみ。
デウスの特殊な動力源「ゾハル」には神のようなものである異次元存在
「波動存在」が閉じ込められているが、アベルがゾハルに接触した時に
アベルの母を求める心に波動存在が反応して、ゾハルのパーツから女の人が発生。

その女の人は未来にデウスの修復材料にするために新たに人間を作り出してから、
アベルを愛して守る母性愛係のエリィと、人間社会を操ってデウスを修復させる
デウスのパーツとしての係のミァンに分離した。
アベルもエリィもミァンも転生を繰り返す仕組だが、記憶を保つのはミァンのみ。
しかもなぜかエリィの転生体は毎回アベルの転生体を守る為に死んでいく。

墜落から一万年程経ち、女の人に作られた人間達は十分繁栄、進化していた。
ミァンとそれに操られている国ソラリスはとうとう人間を
デウスのパーツにしちゃう計画を秘密裏に本格始動しはじめる。
一般人はそんな事知らないが、ソラリスの元老達はデウスを神みたいに
思っておりそこに同化できて共に宇宙進攻できるなら本望なのだ。

その上、アベルのある回の転生体のエリィを守れなかったという怨念が
生霊になったものである、全てを破壊しようとする怪人グラーフや、
グラーフが発生する原因になったその回のエリィに惚れてたのに死なれて絶望し、
もうデウスを復活させて神の御元に至りたくなったカレルレンという
男の思惑まで重なってかなりヤバい状況に。

このままでは人間はデウスの部品になるかグラーフに蹂躙されるかでどっちにしろ滅亡。
現在のアベルの転生体である主人公、フェイは、今回の転生でも出会ったエリィや
さまざまな仲間とともに、ソラリスやグラーフと戦っていく事になる。

フェイはミァンやグラーフのせいで多重人格や記憶喪失などを抱えているが
それを乗り越え、さらに今回の人生でも出会ったエリィと共に、
今までの全ての転生体の記憶も知る。
人間的に成長したフェイはついにグラーフを討つとともにゾハルに接触。
波動存在に「閉じ込められてるの嫌だからデウスとゾハルぶっこわしてくれ」と
頼まれ、力を分けてもらう。
一方、エリィはミァンに統合されてしまい復活しかけのデウスに取り込まれてしまう。

フェイや仲間達はエリィを取り戻し人類も救うためデウスに突入し、
ついにデウスの中核を破壊する。
エリィはミァンから解放されてフェイと再会、カレルレンはそんな二人に
「お前たちがうらやましいよ…」と告げ、ゾハルから解放された
波動存在の御元へと旅立った。

フェイとエリィは仲間達の元に無事帰還し、人類は救われた。
滅びの神や母、運命から解き放たれたこの惑星の人々は
これからどんな道を歩むのだろうか?

 


 

657 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/29(土) 10:57:41 ID:vdps7HLW0
ゼノギアス要約(世界設定重視版)

宇宙戦争とかやってるSFな時代。
宇宙戦争用に作られた超兵器の動力として、人類誕生前の地層から掘り出されたらしいよくわからない謎の板を使ってみようとしたら
なんか高次元の世界とつながっちゃって、その高次元の世界から神様みたいなのが呼び出されてその謎の板に閉じ込められた。

そんな変なことになったせいか、超兵器と謎の板を連結させて動かしてみたら暴走して惑星を一つ丸ごと消滅させた。
こりゃいかん、と超兵器を分解してバカでかい宇宙船に載せて輸送してたけど
超兵器とか謎の板の統合制御を行う生体コンピュータが目覚めて宇宙船を乗っ取ろうとした。

これはヤバイと思った艦長が宇宙船を自爆させたため乗っ取りは失敗、宇宙船はたまたま近くにあった惑星に墜落。
宇宙船に乗ってた人は男の子一人を除いて全員死んだし、超兵器もぶっ壊れた。
しかし謎の板と生体コンピュータは健在だった。

生体コンピュータは超兵器を復活させてまた宇宙戦争するために、ヒトを道具にすることを思いつく。
生体コンピュータである自分からヒトを新しく創りだして長い時間かけて繁栄させ、
そいつらをうまく使って超兵器の補修したりすればいい。最後はヒトたちも部品として取り込んじゃえばいいじゃん!
生体コンピュータはそんな素晴らしい思いつきを早速実行。

それから一万年くらい経過。ヒトは十分繁栄してて、そろそろいい感じです。
生体コンピュータはじゃあそろそろヒトには部品になってもらっちゃおうかな、と仕上げにかかりはじめる。

でも、ヒトたちにとってはいいように使われたすえに超兵器の部品にされるなんてたまったもんじゃないわけで、
あの宇宙船墜落でただ一人生き延びた男の子の生まれ変わりの青年(主人公)を中心として
集まったヒトたちががんばって超兵器とか生体コンピュータを倒しました。

こうしてこの星のヒトは、滅びの運命から解き放たれました。
謎の板に閉じ込められていた神様みたいなものも、超兵器が壊されたので解放されて高次元に帰ることができました。

660 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/29(土) 21:30:18 ID:V0Wn/zV40
>657
乙。俺もプレイ当時を思い出したが、確かにその通りの内容だった。
世界設定重視なら、物語上のラスボスでありながら一度も直接対決しなかった
カレルレンについても言及せずに済むし、うまく1レスにまとめてくれたな。

664 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/30(日) 00:02:04 ID:pjlhcFZF0
ゼノギアス要約(主人公視点版)

世界観設定としては、文化は中世っぽいのだが、機械文明は人型兵器「ギア」があったりするほど進んでいる。

主人公であるフェイは、記憶喪失で経歴不明だったものの田舎の村で楽しく暮らしていた。
しかしある日、戦争によりギアが村に不時着してきて、それを追ってきたギア部隊が村を蹂躙。
フェイは不時着してきたギアに乗って応戦するが、そのギアが暴走してしまいそれに巻き込まれた多くの村人が犠牲になった。

村を追い出されたフェイは状況に流されて色々な土地を点々とするが、
たびたび天空にある国家「ソラリス」と衝突することになる。ソラリスは地上人を道具か家畜としか見ていないのだ。
その過程で仲間たちも増えていった。ソラリスの女軍人エリィもフェイの説得によりソラリスを離れ、ともに歩んでくれる。
また、フェイとエリィは何回も転生して出逢っている特別な存在であるらしいこともわかる。
フェイは「接触者」の転生体、エリィはその接触者と対を成す者「対存在」の転生体であるらしい。

 ソラリスを実質支配する元老たち「ガゼル法院」たちは「神」を復活させその「神」に同化して宇宙侵攻する目的を持つ。
 彼らの言う「神」とは星間戦争用の超兵器システム「デウス」だった。
 この星の人類はおよそ一万年前にこの星に墜落した「デウス」が復活するために創られた、「神」の下僕となる者たちにすぎない。
 「デウス」とその動力源の謎の機関「ゾハル」は生体コンピュータによって統合制御されていたが、
 墜落で破壊されたデウスの修復を図ったその生体コンピュータによって生み出された存在なのだ。
 「ガゼル法院」たちは最も初期に生み出された者たち、この星の「ヒト」の始祖たちであった。

ガゼル法院は、人類が神に還るべき時が来たとして遂にデウスを呼び起こした。
それにより、人類の大半はデウスの兵器の素材としての異形へ変質していく。
しかしその後ガゼル法院は、ソラリスの幹部である謎の男「カレルレン」により消されてしまう。
彼もまた「神との合一」を望んでいる者だった。だがそれに対する考え方はガゼル法院のものとは異なっていたのだ。

 カレルレンは元々、500年前にソラリスと戦っていた地上人たちの反乱軍の一員で、
 当時のフェイの前世やエリィの前世の大切な仲間でもあった。
 しかし反乱軍は味方のはずの勢力の汚い裏切りによりソラリス軍に包囲され、エリィの前世は仲間たちを救うために命を落とした。
 それによって、祈りに応えて人々を救済してくれる神が不在であることに絶望した彼は、神について考え始める。

カレルレンはエリィを連れ去り、彼女とともにデウスに向かった。

 エリィはデウスにとって必要なパーツだった。
 「対存在」とは、そもそもあのヒトを創った生体コンピュータの部品でもあったのだ。
 そして「接触者」とは、ゾハルとデウスの最初の機動実験に居合わせた少年のことであった。
 その実験において高次元からゾハルへ降臨して閉じ込められたもの、「波動存在」、
 それに接触してしまいその力を受け継いだ「接触者」の少年の転生体がフェイだった。

フェイや仲間たちはこの星を救うため、そしてエリィを救いだすため、デウス内部へと乗り込む。
そして激しい戦いの末、ついにデウスとゾハルを破壊した。
そしてフェイはエリィを救うため、危険なデウスの残骸内部へと突入した。

そこでフェイは、カレルレンと対話する。
カレルレンは人に対して絶望していた。ヒトとヒトとは決して解りあえず、傷つけあっていくしかないと考えていた。
そして、誰よりも人を愛するあまり、神の元にすべてのヒトが還り、一つとなるべきだと考えるようになった。
フェイは、人は不完全だからこそ補い合おうとするのだと、それが解りあうと言うことだと、
神のもとで一つにならずとも解りあえる存在なのだと訴えかける。
神のもとから巣立とうとする人の力を見せてくれたフェイに対し、カレルレンはエリィを解放する。
そしてカレルレンの助けもあり、フェイとエリィは仲間たちの待つところへ帰還を果たすことができた。

こうしてこの星の人は、神への回帰という滅びの運命から解き放たれたのでした。

665 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/30(日) 00:07:22 ID:vdps7HLW0
>>660
主人公であるフェイ中心にストーリーを追うと、

ラストのシメだからカレルレンについて書かないわけにいかないし、
カレルレンについて書くなら500年前の戦争にも少しは触れないといけないし、
あとフェイとエリィが特別な存在であることも書かないといけないし、
どう特別なのか書くにはデウスやゾハルやカドモニや波動存在について書かなくちゃいけないし……

と、どんどん膨らんでしまって短くまとまらないんだよね……

これでも、

フェイとエリィ以外の仲間キャラについて
アヴェやキスレブについて
シェバトについて
ミァンについて
ラムサスについて
フェイが多重人格であることについて
グラーフについて

などの重要要素をごっそりと落としたんだけどな。

 

 



 

ここからpart5の>>536の人によるまとめ(スレに投稿された内容を投稿者本人がさらにまとめなおしたもの)

XENOGEARS 前半

目次(序説1序説2序説3OP・アヴェ編キスレブ編アクヴィ編

序説1

ゼノギの物語を一言で言うと、人が神の呪縛(運命)から開放されて自立するお話、と成りましょうか。
その辺りを頭の片隅に置きつつ、まずはざっくりと大枠的なところから解説なんぞを。
3スレの>>302さんの書き込みと併せてお読み下さい。


ゼノギアスは、宇宙の始まりから終焉までを描く一大叙事詩だそうで、
ストーリーは大きく分けて六つのエピソード(時代)に分かれます。


まず、ワープ航法を使って恒星間を自由に行き来できるほどに文明が発達した星間戦争時代(EP1)
このEP1は、ゲームのOPにアニメーションで流れる程度で、ゲーム中ではあまり細かくは描写されません。
とは言うものの、この時代の船が未開の惑星に墜落した(しかも最新の戦略兵器と一緒に)事が、
ゼノギのストーリーの中核をなしているので(3スレの>>302参照)、無視は出来ませんが。


EP2は、原初の時代。船が墜落した直後からあまり年代が経っていない時期のお話。
文明レベルとしては、古代ローマ帝国とか、その辺りの時代の雰囲気。
これもゲーム中ではあまり詳しくは語られません。


次にEP3。墜落から約6000年ほど経った頃のゼボイムと名付けられた時代。文明レベルは近未来的。
この頃のヒトは、生殖能力に欠陥があるなど、種として弱いものでした。
最終的に、この時代の人間は、核戦争によってほぼ全滅します。
これもゲーム中では(以下略


EP3より3500年ばかし経った頃の話がEP4。ソラリス戦役時代です。
世界支配をたくらむソラリスと、それに抗うシェバトを中心とする勢力との戦乱の時代。
ゲームのメインとなるEP5と年代的にも近いため、中盤以降この時代の話が色々と絡んで来ます。
この戦争は最終的に、突如現れた謎の第三勢力の破壊活動により、全人口の90%以上が失われるに至り、
生き残った人々が結託して第三勢力を打ち倒すことで終結します。


EP5。ゲームのメインとなる時代です。EP4より500年ほど後の時代。
墜落から実に一万年。この時代に至り、未開の惑星を舞台にした神とヒトの因縁に終止符が打たれます。
詳しいストーリーは後々……。
EP6。ゲームのエンディング後の時代。
これはゲーム中では一切触れられません。


てなわけで、大枠的なゼノギのストーリーの概観でした。
続いては、ゼノギのストーリーの大元、EP1ついて、少し詳しく。
引き続き3スレの>>302と併せてお読み下さい。


◆序説2


西暦20XX年の地球、40億年程前の地層から後にゾハルと呼ばれる明らかに人工的な物体が発掘された。
解析の結果、それは約150億年前、すなわち、宇宙誕生の瞬間には既に存在していたことが分かった。
このありえない結果を受け、ゾハルの研究は一時凍結、研究再開には5000年の時を要した。


その間、人類は宇宙への進出を続け、2500年ごろには宇宙への移民計画が発動された。
計画により年号が西暦からT.C.に改められてからおよそ300年後、人類は移民可能な惑星を見つけ、
そこを新たな母星とすることに。


それからおよそ4500年後、各宙域で紛争が起こる星間戦争時代。
5000年の放置の後、再開された研究により、ゾハルによって事象変異が引き起こされることが分かり、
それを有効利用すべく研究する「プロジェクト・ゾハル」が立ち上がる。


やがて制御システムである生体電脳カドモニとの連結によって制御が可能になったゾハルは、
無限のエネルギーを生み出す事象変異機関として、かねてより激化していた紛争を解決すべく
開発中であった生体兵器デウスの動力源として組み込まれ、星間戦略兵器デウスシステムが誕生した。
しかしながら、その起動実験の際、デウスシステムは原因不明の暴走を起こし、周辺宙域のコロニーに
次々と侵攻。軍により強制停止される。


その後、デウスシステムは凍結されたまま、原因調査のために恒星間移民船エルドリッジに収容された。
デウスシステムによって被害を受けたコロニーの住民らも収容して出航したエルドリッジだったが、途上、
デウスシステムの突然の再起動によって船は制御を奪われ、本星(地球)へとワープを始める。
エルドリッジの艦長はそれを阻止するべく自爆を決断。実行する。
ワープ中に自爆したエルドリッジは、どことも知れぬ宙域に投げ出され、とある惑星へと墜落していった。


ようやくOPにつながった……orz
次は、ストーリーを理解するうえで絶対避けて通れないデウスシステムについて解説します。
ちょっと設定厨っぽくなりますが、ご容赦。
引き続き3スレの>>302と併せてお読み下さい。


◆序説3


デウスシステムは、実質的な攻撃兵器であるデウスと、動力源であるゾハル、ゾハルを制御する
生体電脳カドモニの三つの要素で構成されているのだが、このカドモニに予期せぬトラブルが
起こったことが全ての始まり。


ゾハルとデウスの連結実験の最中、ゾハルの発するエネルギーのためか、はたまた、
事象変異と言う現象自体が原因なのか、次元の境目に歪みが生じ、三次元世界よりもっと高位の次元との
通路のようなものが開いてしまった。
高次元から降臨した波のような存在は、三次元世界では物質化できないために、カドモニの
メインフレームである生体素子ペルソナを一時的な拠り代とした(註1)。
さらにその時、試験場になぜか偶然、アベルと言う少年が紛れ込んでいた。
三次元世界に降臨して間もなく、定義づけがなされていなかった高次元存在は、アベル少年の
回帰願望を感じ取って母親と定義づけられ(註2)、生体素子ペルソナを女性の姿に進化させて
オリジナル・エレハイムを作り出した。


アベルの定義づけによって三次元世界において物質の檻に閉じ込められてしまった高次元存在は、
高次元への回帰を願い、肉体であるデウスを破壊し自身を解放する接触者としてアベルを運命付ける(註3)。
その運命によりアベルは、肉体が滅んでも魂(語弊があるかも)に記憶が刻まれ転生を繰り返す事になった。


その後、エルドリッジの墜落により多くの構成物質を失ったデウスシステムは、
自身を復旧させる計画を実行する。
復旧に必要なものは、生体兵器であるデウスの部品を構成するための生体。
墜落時に各地に散らばったカドモニの部品であるアニマ。


まずデウスシステムは、生体素子ペルソナから始祖の女性ミァン・ハッワーを作った。
ミァン・ハッワーはカドモニの構成部品アニムスから始祖の人間、天帝カインと12人のガゼルの法院を
作り、その後、人間の管理者として自らの分身、エレハイムとミァンを作った。
カインとガゼルの法院はデウスの部品としてのヒトの原型を量産し、以後、ヒトは進化を続けながら
増えていく。


《オリジナル・エレハイムとミァン・ハッワーとエレハイムとミァン》
アベルによって高次元存在が定義づけられ、結果オリジナル・エレハイムが出来た。
ミァン・ハッワーとは、オリジナル・エレハイムがカドモニのプログラム「SystemHAWWA」によって
変容した時の名称であり、基本的にオリジナル・エレハイムと同一人物。
ミァン・ハッワーが分化した片割れのエレハイムは、高次元存在の(より正確に言うならば、
アベルの意思を受けとった高次元存在の)意思によって母としての役割を持って生み出された。
もう片一方のミァンは、純粋に管理者としての役割を持って生み出された。


註1・・・この辺り、ちょっと曖昧です。大枠的には間違ってないと思いますが。
註2・・・能動主体による主観的な観測による定義づけ、とかゲーム中では言っていたような。
    ようは、お母さんに会いたいとか言う思いが高次元存在に投影されてしまったと言う事かな?
註3・・・高次元存在の解放は、接触者にしか出来ないらしいです。
    自分のケツは自分で拭けって事でしょうか。アベル君も災難です。


これでバックグラウンドは一通り。初っ端から話のケツ割りまくりですがorz
ともあれ、デウスの復活が全ての話の根本に流れている事がご理解いただけたでしょうか?
ただ、デウス本体と高次元存在の目的が微妙に食い違っているから話が複雑になっていくのですなぁ。


次回からは、ゲーム本編の進行に沿ってあらすじを書いてみます。
 

OP・アヴェ編

目次(オープニング スタート~ラハン出奔 黒月の森~輸送船 バルト登場~マルー救出 ニサン~)


◆オープニング

I am Alpha and Omega,
   the beginning and the end,
the first and the last.


宇宙空間を航行する恒星間移民船エルドリッジ。そのブリッジに警報が鳴り響いた。
移送中だったデウスシステムが突如再起動したのだ。
デウスに次々とハッキングされるエルドリッジのシステム。
乗客は逃げ惑い、オペレーターは危機回避に追われる。
やがて、機関室すらも制圧された事を知った艦長は、退鑑命令を出す。
しかし、デウスに火器管制を奪われたエルドリッジの砲は、脱出艇を次々と撃墜していった。
艦長はその光景を見てエルドリッジの自爆装置を起動させた。
爆発、分解したエルドリッジは、やがて一つの惑星の重力に捕まり、その大気圏に突入した。


無数のエルドリッジの破片が空に流星を描く中、比較的原型をとどめたパーツが海岸で炎を上げていた。
その黒煙が潮風で吹き払われたとき、そこにミァン・ハッワーがいた。
彼女はインディゴブルーの長い髪を風に翻しながらゆっくり立ち上がると、無感情に海を見つめた。
そのインディゴブルーの瞳に、空に走る流星が映り込んでいた。


それから約一万年の時が流れた……


中心に砂漠が広がるイグニス大陸では、アヴェ王国とキスレブ帝国が数百年にも渡って戦争を続けていた。
長い時間の中で戦う理由も忘れられ、その戦争はただ冗長に続けられていった。
そんな時、二国の関係に重大な変化をもたらす発見があった。
過去の遺跡からギア・アーサー(以下ギア)と呼ばれる高機動ロボットが発見されたのだ。
ギアは、それまでの戦争の戦い方を根底から変える程の重大な発見となった。
アヴェ、キスレブの両国はこぞって遺跡の発掘を行い、続々とこの新兵器を戦力としていった。


遺跡資源の量で勝っていたキスレブは、アヴェの領土を次々と侵攻。
そのままキスレブ側の勝利で戦争が終結するかと思われた。
だが、突如現れた援軍がアヴェに勢いを与えた。
神聖ソラリス帝国帝室特設外務庁(通称、ゲブラー)。
一切が謎に包まれたソラリス帝国からの支援を受け、アヴェはキスレブとの兵力差を縮小、反撃に転じ、
領土と遺跡資源の奪回を始めた。


物語は、激化する遺跡資源であるギアの争奪戦とは無縁の、国境付近にある小さな農村、
ラハンから始まる……。


◆はじまりは、山奥の村ラハン

ある嵐の夜、ラハンに大怪我をしたフェイが運び込まれた。
仮面をつけた不気味な男に抱きかかえられたフェイは、うわ言でその男のことを父さんと呼んでいた。
仮面の男は、フェイをラハンの村長に預け、いずこかへ消えていった。


それから三年の月日が流れた。
フェイは、あの時の怪我が原因か、それ以前の記憶を失っていた。
しかし彼は、優しい村長や村人、親友のティモシーとアルルに囲まれ、絵を描いたり子供達に拳法を
教えたりしながら穏やかに暮らしていた。


そのアルルとティモシーの結婚式を明日に控えた日、フェイはアルルの弟、ダンに呼び出された。
アルルが本当に好きなのはフェイだとダンに聞かされ、フェイは彼女に会いに行った。
アルルは明日身につける花嫁衣装を縫い終わったばかりだった。
それを眺めながら彼女は、フェイがもし生まれた時からこの村にいれば、とつぶやいた。
その言葉を無理やり茶化した彼女は、フェイに山の上で医院を開いているシタン先生から、
明日使うカメラを借りてきて欲しいと頼んだ。
フェイは複雑な思いを抱えたまま、山道に足を踏み出した。


◆谷をこえ、ひとり山道をゆけば/つかのまの平穏 山頂の家にて

あらゆる学問に精通した学者であるシタンは、数年ほど前から、妻のユイ、娘のミドリと共に
山の頂上に住んでいた。
そのシタンの家に着いたフェイは、ユイに教えられて裏庭に向かった。
シタンは、裏庭でアヴェ軍の残していった小型飛行輸送機ランドクラブをいじっていた。
先に輸送機の修理をしてしまいたいと言うシタンを待つ間、フェイは倉庫の中にある、
遺跡から発掘された音響装置(オルゴール)を見に行った。
あちこちいじっていたフェイは、台座に書かれたこのようなメッセージを見つけた。


"わが娘のたんじょうを祝して・・・・
    世界中の夢と勇気と 愛を
      きみに・・・・"


やがて装置が動き出し、美しい音楽が流れ始めた。
その音楽を聴いて理由も無く切ない気持ちになったフェイは、困惑し、
修理を終えたシタンにその気持ちを打ち明けた。
シタンは、この曲を好きだった昔の誰かがフェイの中で生きているからかも知れない、
と意味深な事を口にした。
やがて、シタンに促されたフェイが夕食を食べに倉庫を出ると、シタンは一人に思案にくれた。
そのとき、オルゴールが突然砕け散った。
それを見たシタンは「始まるのか?」と呟いた。


◆夜道で見た! 闇にふるもの

夜。シタンの家で夕食を取ったフェイは、村に帰るためにシタン家を後にして暗い山道を戻り始めた。
彼が谷間にかかる橋を渡ろうとしたとき、突然谷底から数機のギアが現れ、飛び去った。
その飛行音に気づいたシタンが山道を駆け、フェイに追いついた時、ラハン村の方角から爆発音が響いた。


二人がラハン村に着くと、そこでは数機のギアが戦闘をしており、ラハン村は火の海となっていた。
村人が逃げ惑う中、ティモシーとアルルからダンが行方不明になったと聞いたフェイとシタンは、
二人を避難させて探し始めた。
ダンを探して駆け回るフェイの前に、敵機の攻撃を受けたギアがうずくまった。
パイロットが転がり落ちてきたコックピットを見上げたフェイは、そこに年端も行かぬ少年の姿を認めた。
ニタリと笑った少年にハッとしたフェイは、魅入られたようにそのギアに乗り込み、
操縦の難しい軍用ギアをまるで自分の手足のように操って戦い始めた。
フェイの戦いぶりを見たシタンは「彼が目覚めては……」とつぶやき、を必死に止めようとした。
そのとき、アルルの家からダンが飛び出してきた。彼は、アルルの花嫁装束をとりに戻っていたのだった。
シタンがダンを連れて逃げようとすると、ティモシーが戻ってきた。
そのティモシーに、一機のギアが銃口を向けた。
止めようとするフェイだったが、突然現れた黒い翼のギアに邪魔され、ティモシーを助けられなかった。
弾丸に貫かれ倒れるティモシーを見てうめき声を上げるフェイ。
彼の脳裏には、血を浴びた幼い頃の自分が浮かんだ。
その自分が、あの少年と同じようにニタリと笑ったとき、フェイもその笑いを口元に浮かべていた。
次の瞬間、彼の乗るギアは青い閃光を放ち、それによってティモシーやアルル、村人たちは消滅し、
ラハン村は壊滅した。


◆旅立ち 樹海にのがれて…

フェイが目覚めると、あたりは一面焼け野原になっていた。
そこここには、焼け出された村人が力なく座り込んでいる。
フェイは訳が分からず、そばにいたシタンに事情を聞こうとした。
すると、ダンがフェイを激しく罵り始めた。彼の指差す先には、フェイが操縦したギアが
静かに佇立していた。
村人の恐れおののく声がフェイの耳に届く。
シタンは激昂するダンを、ギアのシステム暴走では…となだめようとしたが、
彼はその手を振り払って走り去ってしまう。
フェイは呆然としながらも、一旦村を離れてはどうかと言うシタンの言葉に頷き、
彼に教えられてアヴェへ向かうことにした。
俯いて歩く彼の耳にダンの罵声が蘇り、彼はそれを振り払うように、草原に向かって走り出した。


◆出会い 緑の森の少女

ラハン村を後にし、草原を抜け、フェイは迷いの森とも呼ばれる黒月の森に入っていった。
沈うつな表情で森を行く彼の背中に、突然異国の言葉で声がかかった。
振り向くと、オレンジの髪を長く垂らした少女が銃を突きつけていた。
彼女はフェイを脅迫し、森の出口を教えるよう言ったが、強気な言葉とは裏腹にその銃口は震えていた。
フェイは撃つなら早く撃てと少女に迫っていった。
その行動に動じた少女は思わず引き金を引くが、弾は外れてしまう。
発砲にもひるまないフェイに恐怖する少女に、突如怪物が襲い掛かった。
「やめろーっ! "エリィ"に手を出すなーっ!」
フェイはそう口走り、怪物を打ち倒した。


夜。目を覚ました少女に話しかけるフェイだが、彼女は地上人<ラムズ>に素性は明かせないと警戒する。
しかし、手当てをされたことに気づいた彼女は、森を出るまで共に行動しようと言うフェイの提案を
受け入れ、エリィと名乗った。
「ああ、そうか。そうだったよな、"確か"」
「??」
彼らは夜が明けるのを待つ事にした。


◆緑の静寂をやぶるもの

フェイは夢を見ていた。砂漠の真ん中で幼い彼が泣いている。
そんな彼にエリィに良く似た女性が手を差し伸べた。
「ひとりじゃ、寂しいものね…」
彼女の優しい微笑みに、幼いフェイは泣き止んで手をとろうとした。
そこで彼はエリィに起こされた。
二人は、念のためメモリーキューブ(註1)に記録し、森の出口を探し始めた。


道すがら、エリィはフェイに自殺志願のような昨日の行動について尋ねた。
フェイはラハン村で起こった出来事を話し、最初のギアさえ村に来なければと吐き捨てた。
それを聞いたエリィは、その夜の事を思い出していた。
キスレブから最新型のギアを奪取した彼女は、帰還途中、追撃機の弾丸を受け、
ラハン村に小隊と共に不時着したのだった。
そんな彼女の行動など露知らず、フェイは奴らさえ来なければと罵り続けた。
耐え切れなくなったエリィは、責任転嫁していると彼を断じ、激しく責めた。
血が騒いでどうしようも無かったと嘆いたフェイは、親しい人達を自ら殺めた悲しみと苦しみを
吐き出してへたり込んだ。
そんな彼にかける言葉が見つからず、エリィは一人で歩き出した。


彼女は彼を責めた事を悔やんだ。
彼女の脳裏に、数人の死体に囲まれ、返り血を浴びて呆然とする自分の姿が浮かんだ。
俯きながら歩く彼女の前に、突然巨大な地竜が現れた。


うずくまっていたフェイは、エリィの悲鳴を聞いて駆け出した。
彼は地竜の前で気を失っている彼女を見つけると、無謀にも地竜に挑みかかっていった。
そこへ、シタンが現れた。彼はランドクラブであのギアを運んできたのだ。
フェイはエリィを助けるためにやむなくそのギアに乗り、地竜を撃退した。
彼はそのヴェルトールと言うギアを持ってきたシタンを責め、もう乗りたくないと話を切り上げて
エリィの介抱に向かった。


夜。ヴェルトールの整備をしていたシタンは、眠らずにいるエリィにソラリスの言葉で語りかけた。
シタンは、彼女がゲブラーの士官だと分かっている事を仄めかし、
フェイが眠っているうちに去って欲しいと彼女に告げた。
彼は、フェイを不毛な争いに巻き込みたくないのだ。
エリィは、フェイに謝っておいて欲しいと彼に伝言を頼んだ。
シタンは、選民思想のソラリスの人間らしくないと疑問を口にした。
『牧羊者<アバル>は地上人<ラムズ>を管理統制し、その生殺与奪の権利も持つ……』
彼女は、フェイを見て、地上人がソラリスの人間となんら変わりないと言う事に気づいたのだ。
エリィは、隊に復帰した後、どうするか悩みながら、夜の中へ去って行った。


註1・・・メモリーキューブとは、ゲーム中のセーブポイントの事です。


◆森を抜けて、王国アヴェ領土へ

翌朝。昨夜の話を途中から聞いていたフェイは、エリィを責めたことを恥じた。
シタンはそんな彼を励まし、森を出るように促した。
そのとき、森に轟音が響いた。
空を見上げた二人は、アヴェへ向かうゲブラーの巨大な空中戦艦を見た。
シタンは大きな戦闘が始まるのではないかと不安を口にした。


◆とまどい 砂漠の街ダジル

森を抜けたフェイとシタンは、ヴェルトールの補修パーツを手に入れるために、
遺跡発掘の拠点となっている街ダジルに向かった。
砂漠の中のダジルについた二人は、早速『教会』(註1)の工房に向かったが、
そこにはヴェルトールのような軍用ギアのパーツは置いてなかった。
その事を受け、ヴェルトールにいい感情を持っていないフェイは、放置しようと言う。
しかし、このままではいずれキスレブとアヴェの争奪戦が始まり、ラハン村にも被害が及ぶと危惧する
シタンは、何とか修理できないだろうかと思案をめぐらせた。
やがて彼は、砂漠で遺跡を巡る小競り合いがある事に思い至り、スクラップから部品を回収するべく、
フェイを残してサンドバギーに乗って砂漠に向かった。
一人残ったフェイだったが、砂漠に海賊が出る事を知って心配になり、シタン追って徒歩で町を出た。


シタンを探して砂漠を駆けるフェイは、巨大な空飛ぶ円盤を目撃。その後を追うように通り過ぎる
アヴェ軍のギアが気になり、彼はバイクを盗んで走り出した。
日も暮れ、ギアも円盤も見失って途方に暮れていたフェイを、アヴェのギアが取り囲んだ。
間一髪の所でシタンの操縦するヴェルトールに助けられたフェイだったが、新手に囲まれ、
やむにやまれず操縦を代わって敵ギアを撃退した。


その時、野太い笑い声と共に黒衣を纏った仮面の男が現れた。
フェイ「誰だっ! 誰?……そうだ、俺はお前を知っている……お前は…あの人を殺した……
    あの人……? いや、殺したのは……」
フェイの脳裏に血を浴びた幼い自分が浮かぶ。やがて幼い彼は光の中でうずくまった。
幼フェイ「違う…僕じゃない…… 殺したのは……」
??「臆病者……」
幼いフェイが声に振り向くと、そこに少年のシルエットが立っていた。
少年「お前だよ」


われに返ったフェイは、その男と共に現れた黒い翼を持つギアが、あの夜ラハンに現れたギアだと気づいた。
男はグラーフと名乗り、フェイの力を見るためにラハンの騒動を画策したと語った。
彼は、破壊を求めるフェイの本質と父親の最期を仄めかし、「神を滅ぼす」ためにフェイの力を求めた。
しかしいまだ力不足と切り捨て、試練を与えると言ってグラーフは去った。
困惑するフェイの前に怪物が現れた。彼は差し当たって怪物を撃退し、故障したヴェルトールから降りた。
心配するシタンと暗く考え込むフェイをアヴェ軍のギアが取り囲んだ。
二人は抵抗するすべも無く、捕らえられた。


註1・・・この世界に於ける『教会』は、単なる宗教団体にあらず、過去の歴史を管理統制し、
    その一環として遺跡資源(ギアなど)を修復する技術を独占している。


◆襲撃! 熱砂のシャチ

フェイは夢を見ていた。グラーフと拳法家が睨み合っている。そのそばには赤い長髪の男。
「われらが一つとなれば……」
そう言うグラーフに、拳法家は「こやつは渡さん」と長髪の男を庇った。


フェイは、アヴェの護送船の中で目を覚ました。彼は昨夜の出来事に思いを巡らせ、
そばにいたシタンに自分が何者なのか知りたいと漏らした。
なんにせよ囚われの身では如何ともしがたく、フェイはまた眠りに付いた。
彼が寝入った後、シタンは一人、天帝カインとの密談を思い返していた。
『福音の劫<とき>』。神の眠りと共に楽園から追放されたヒトが、再び楽園へと回帰する約束の刻。
それまでに天帝以下ガゼルが神を復活出来ねば、原初からの定めどおり滅亡しよう。
カインはそう、シタンに語った。その福音の劫が近づいている。シタンは確信した。


その頃、二人の収容して砂漠を行く護送船を、海賊の潜砂艦ユグドラシルが狙っていた。
甲板のヴェルトールを狙う海賊に砲撃され、護送船は沈没寸前になった。
その混乱に乗じて抜け出し、ヴェルトールで脱出したフェイとシタンだったが、
息つくヒマもなく、海賊の親玉、片目のバルトの駆る赤いギア、ブリガンディアに襲われる。
アヴェ軍と思い込み問答無用で襲い掛かるバルトを、やむなくシタンを下ろして迎え撃つフェイ。
だが、二人の決着は、流砂が二人を飲み込んだ事で、付かないまま持ち越される事になった。


◆脱出、大鍾乳洞! 地底の隠者


地底の鍾乳洞に落ちた二人は、とりあえず誤解を晴らして休戦し、出口を探す事にした。


その頃、地上ではユグドラシル乗員が護送船乗員の救助を行っていた。
甲板で、シタンはユグドラシルの副長、バルトとは逆の目に眼帯をしたシグルドと話していた。
シグルド「偶然とはいえ、よりによってお前に会うとはな」
シタン「偶然ではありません、恐らくは必然……」
シグルド「……何が始まるのだ……ヒュウガ……」


鍾乳洞の中を、調子の悪くなったギアをなだめつつ進むフェイとバルトは、ポツンと建つ人家を発見した。
そこには、足音を聞いただけでギアの調子を見抜く、バルタザールという老人(以下バル爺)が住んでいた。
バル爺はここで物探しをしていると言い、その一部である化石を見せた。
老人は、一万年前を境に人骨が出土しなくなる事から、教会の唱える進化論よりも、伝承を信じると言った。
「神の楽園から追放された人間は、神を憎み、巨人を作って神に挑んだ。結果、善き心を持った一部の
人間を除いて人は滅ぼされ、神自身も傷ついて楽園と共に海中で永い眠りについた。」
話を終えた後、バルトはバル爺に、太古の昔に作られた全てのギアを超越する『ギア・バーラー』について
何か知らないかと尋ねたが、老人は「"そんなもの"は存在せん」と一蹴し、フェイたちのギアを修理する
ために出て行ってしまった。
部屋の二人がギア・バーラーについて話していると、ヴェルトールをいじっていたバル爺が声を上げた。
二人が様子を見に行くと、バル爺は呻いて言った。
「こいつは……神を滅ぼす者の拠り代……」
その言葉について問いただそうとするフェイ達だったが、けんもほろろに追い出されてしまった。


バル爺に追い出され、教えられた出口に向かう二人は、途上、自律行動型のギア、カラミティに襲われた。
隙をつかれて袋叩きにされたヴェルトールだったが、突然暗黒の波動を伴った拳でカラミティを消し去る。
なぜそんな技が出せたのか分からず困惑しつつ、フェイはバルトと共にその場を後にした。
その後、鍾乳洞を脱出した二人は、バルトの案内でユグドラシルとの合流地点に向かった。


◆海賊アジト 戦う理由、死ぬ理由

ユグドラシルに合流し、シタンと再会したフェイは、そのままバルト達のアジトまで同乗する事に。
アジトに到着した後、フェイとシタンは、バルトの教育役である執事のメイソン卿に案内され、食堂へ。
そこで二人は卿から、バルトがアヴェ王国の王子バルトロメイ・ファティマその人である事、先代王亡き後、
宰相のシャーカーンに幽閉されていた所をシグルドらが救出した事、その後、王権奪還の兵力を養うために
海賊行為をしていた事を聞かされた。
さらに、バルトの従妹であり、ニサン法皇府の教母マルーが、『ファティマの至宝』入手を狙う
シャーカーンに囚われている事を聞かされた。マルーは、ファティマの至宝の在り処を記した
『ファティマの碧玉』の半片を持っているのだ。
ファティマの至宝とは何か、と言うところまで話が及んだとき、バルトが食堂に現れ、至宝について
書かれた絵巻物を見せると言ってフェイたちを作戦室に連れて行った。
スクリーンに映し出された500年ほど前の絵巻には、炎を纏った巨人の力を借りてアヴェを建国した
ファティマ一世が、巨人をとある場所に眠らせた事が書かれていた。その巨人が至宝なのだと言う。
そこまで話し、バルトはマルー救出の助力を願い出たが、これまでの出来事に頭がパンク寸前だった
フェイは、付き合ってられんとブチギレて部屋を飛び出した。
シタンに事情を聞いたバルトが後を追ったが、フェイは戦う理由も無く、また、戦うのも誰かを傷つける
のもイヤだとバルトを突き放した。バルトは、ラハンのような悲劇を繰り返さないためにも戦争を
なくすために戦わなければいけない、それが戦う理由ってヤツではないか? と問いかけ、去った。
暫く佇んでいたフェイは、シグルドに呼ばれ甲板に連れて行かれた。艦首でポエムっているバルトを
見ながらシグルドは、フェイにはバルトと共有できるものがある、バルトを助けてくれと頼んだ。


その夜、アジトに侵入警報が鳴り響いた。ランクを隊長とするゲブラー特殊部隊のギアだった。
バルトたちが迎撃に向かう中、混乱を極める状況をみながら、自分は何をするべきか何をしたいのかと
苦悩フェイの姿があった。
一方、格納庫から出力未調整のじゃじゃ馬ギア、ヘイムダルに乗って出撃したシタンは、
特殊部隊のタフさから、戦意高揚剤『ドライブ』を服用している事に気づいた。
その頃、特殊部隊のフランツのギアが子供達に迫っていた。だが、間一髪の所でヴェルトールが駆けつける。
フェイの加勢もあって特殊部隊は撤退、アジトを守りきった。


アジトの混乱も落ち着いた頃、フェイは、自分にできる事をやりながら自分の道を見つける、そう言って
バルトたちに協力すると告げた。
その後、彼らはマルー救出のため、ユグドラシルに乗って王都ブレイダブリクに向かった。


◆潜入、王都アヴェ! 偽りの王

ユグドラシルがアヴェ王都ブレイダブリクに向かっている頃、同じく王都に、ゲブラー総司令官ラムサスを
艦長とする空中戦艦が、国境付近のキスレブ軍の掃討作戦を終え帰還した。
前任の指揮官であり大鑑巨砲主義の筋肉脳ヴァンダーカムと傀儡政権の宰相シャーカーンに迎えられ、
副官のミァンを伴って艦を降りたラムサスは、シャーカーンの案内で王城内のマルーに会いに行った。
ラムサスは、一人称"ボク"娘のマルーから至宝の事を聞き出そうとするが、彼女は知らないという。
それを見ていたシャーカーンは、『本国』にも報告していないマルー確保の情報が漏れた事を訝かった。


一方その頃、フェイ、シタン、バルトの三人はブレイダブリクに入り、マルー救出の為に情報収集していた。
その結果、街の地下水道が城につながっている事、国を挙げての祭りである大武会が翌日開催される事を
知り、フェイが大武会に出場し、盛り上げて兵士の目を惹きつけ、その間にバルトが地下から城に潜入して
マルーを救出する作戦を立てた。


◆王都アヴェ 嵐を呼ぶ大武会

翌日、作戦決行の時。フェイは会場に向かい、偽名を使って大会に参加した。
参加者控え室で、フェイはラハンのダンと再会する。ダンは、村の恨みを晴らすと言って控え室を出た。
困惑するフェイに、仮面の男ワイズマンが話しかけた。彼は、フェイがどう戦うか興味があると言った。
「まぁ、楽しみにしているぞ、"フェイ"」
「(なぜ俺の名前を……? 偽名で参加しているのに)」


開会の演説を終えたシャーカーンを、ラムラスとミァンが訪れた。立ち寄っただけと立ち去るラムサスを
尻目に、ミァンは一回戦の舞台に上ったフェイを見て一言。
「まぁ、素敵な子……」


一回戦、二回戦、三回戦と精一杯会場を沸かせて勝ち上がったフェイは、準決勝でダンと戦う事に。
アルルの、ティモシーの、村人の恨みだと叫びながら戦うダンだったが、反撃してこないフェイにいらだち、
彼にアルルの花嫁衣装を叩きつけて走り去った。
鬱りながらも決勝に望んだフェイは、そこでワイズマンと当たった。軽々と攻撃をかわすワイズマンに
フェイは焦り、必殺の武技雷迅を仕掛けるが、それすらかわされてしまう。
戦いの最中、ワイズマンはフェイに戦う理由を問いかけ、自分の事しか見ていないと断じた。そして、
「よくあの怪我から回復したものだ。フェイよ……」
と、謎の言葉を残し、彼は姿を消した。結局、うやむやのままフェイは大武会の優勝者となった。


◆再会マルー ファティマ城脱出

一方、地下水道から城内に入ったバルトは、天守閣でマルーとの再会を果たしていた。
マルーお気に入りのぬいぐるみと共に部屋を出たバルトは、そこでラムサスとミァンに見つかってしまう。
バルトがラムサスと戦っている最中、大武会を終えたフェイが追いつき、加勢した。
武技雷迅を受けたラムサスは、エルルの悪夢(註1)を思い出していた。
赤い長髪の男が素手でソラリスのギアを次々と撃破する。その男が武技雷迅を使っていたのだ。
さらにラムサスは、"フェイ"と言う名前にも聞き覚えがあった。
??「フェイ……それが私の子の名前……」
ラムサスがひるんだ一瞬の隙をつき、フェイたちはその場を離脱した。
ラムサス「(やはり奴なのか……奴であるならば……俺は……塵<ごみ>……)」
兵士に追跡を命じ、ラムサスはそう考えていた。


註1・・・数年前にソラリスが行ったエルルという国の大粛清。その最中、グラーフと赤い長髪の男の
    突然の乱入により、ソラリス軍は壊滅。ラムサスは指揮官として参戦していた。


◆マルー救出! 一路ニサンへ/やすらぎの都 ニサンの聖母

ラムサスから逃げおおせたフェイたちは、ゲブラー基地内に入り込んでしまい、そこでエリィと鉢あった。
彼女は、追っ手が迫るフェイたちを自分の宿舎に連れて行きかくまった。
追っ手の気配が消えた後、自分の素性を語るエリィに、フェイは森での事を謝った。
フェイたちがマルー救出に来たと知ったエリィは、彼らをギアの射出口に案内し、脱出させようとする。
脱出間際、フェイは一緒に行こうとエリィに言うが、彼女はここが自分の居場所だと悲しげに言った。
「今度会うときは……敵同士ね」


一方、フェイたちを追おうとしていたラムサスは、予想もしない訪問客に驚いた。
伝令「(閣下……ヒュ……様が)」
ラムサス「……奴め…今時分何用でここに」


無事フェイたちが帰還したユグドラシルは、マルーが教母を務めるニサン法皇府へ向かった。
その途上、フェイは様々な話を聞くことになる。
マルーがアヴェに捕らえられた事の顛末。以前、バルトとマルーが王城から逃げ出した時に、王国の
主力兵器であるユグドラシルをも奪ってきた事。ユグドラやギアの動力源、スレイブジェネレーターについて。
ゲブラー総司令のラムサスが着任した事により、ゲブラーの目的が遺跡発掘だけではない事。マルーの
持ってきたぬいぐるみが、実はチュチュという妙な生物で、フェイに一目ぼれした事などなど……。
さらにフェイは、バーで話し合うシグルドとシタンの不可解な話を、バルトと盗み聞きしてしまう。


様々な思惑を乗せたままユグドラはニサンに到着し、フェイたちは修道院へマルーを連れて行った。
そこでひとしきり修道女達と再会を喜び合ったマルーは、フェイたちを肖像画の間へと案内する。
ニサン建国の母でありニサンの教義を創った初代大教母ソフィア。描きかけの肖像画以外の記録は
残されていない彼女は、言い伝えでは500年前に人々の為に自らを犠牲にし、神の下に召されたという。
その肖像を見て、フェイはエリィにそっくりだと言い、シタンは筆運びがフェイに似ていると言った。
肖像画に見入るフェイの脳裏に、遠い日の記憶が蘇った。
この部屋でソフィアの肖像を描く自分。ソフィアは彼の事をラカンと呼んでいた。


修道院を後にした彼らは、アヴェのニサン侵攻の情報を聞き、作戦を練るために宿屋へ向かった。
そこでバルトは、ゲブラーに詳しすぎるシグルドに説明を求めた。
シグルドとシタンは自らの経歴やソラリスについて語り始めた。


天空にあるソラリスは、地上人をラムズと呼び、労働力として地上から拉致したのち洗脳している事。
シグルドもそうしてソラリスへ行き、政府の一員として活動していたが、出奔して戻ってきたという。
純粋なソラリス人は人口のおよそ1/4しかおらず、多くが地上から連れ去られたラムズと、下層市民街に住む
ラムズの間に生まれた人間であると言う。シタンとラムサスも、下層市民街の生まれだった。
だが、卓絶した能力を持っていたラムサスは異例の速さで出世し、それまで身分重視だった体制を能力重視の
体制に変えようとした。シタンとシグルドはその理想に同調し、共に助けあった。
しかし、軍の要職に付いた二人はそこでソラリスと地上との関係を知った。単なる労働力だけではなく、
『ドライブ』に代表される薬の実験体として地上人が使われている事も。
フェイ「ドライブってのは、ソラリスの軍人なら誰でも使うのか?」
バルト「お前、エリィの事が気になるんだろ。あったぜ、あいつの部屋に」
フェイ「(´・ω・`)ショボーン」


フェイに軽く嫌がらせした後、バルトは一息つくために外へ。
信頼していたシグルドの、予想を超えた過去を知ってショックを受けたバルトは、後を追ってきたシタンに
もっと早く教えてほしかったとこぼした。
シグルドの事を良く知っているシタンは、アヴェの平定を成し遂げるまで余計な心配はかけないようにと
気を回していたのだとフォローし、まずは王権奪還に集中するよう諭した。


◆アヴェ奪回作戦! 決死の反撃

宿屋での話の後、彼らは議事堂へ集まり、王都奪還の作戦を次のように立てた。
アヴェに常駐しているゲブラーを王都から引き離すために、バルトらが以前拿捕していたキスレブ製の
ギアでニサン国境の西方警備隊を急襲、キスレブの侵攻と見せかけゲブラーを誘い出し、その間にバルトら
主力部隊が王都奪還へ向かう。さらにフェイを含む別働隊が、国境付近の前線部隊に配備された戦艦
キファインゼルを旗艦とする無敵艦隊を足止めし、王都への撤退を阻止する。
この奪還作戦は明朝決行と決まった。


翌朝、彼らを乗せたユグドラシルは、マルーと修道女達に見送られ、王都に向かった。
途上、フェイたち別働隊は国境に向かうためユグドラシルを離艦した。その直前、バルトはフェイに、
「俺がもしもの時はマルーを頼む」と言って彼を見送った。


その夜。ユグドラの甲板でバルトがシグルドと語り合っていた。
バルト「王様ってのは、誰でもいいんだろうな……希望の象徴であれば、俺じゃなくても」
シグルド「私がソラリスの洗脳から逃れられたのは、『帰らねば』と言う強い思いがあったからです。
     その時に思い出したのは、一国の王子ではないただの子供の若とマルー様でした。私は、

     王権などどうでもいい。若の家だから取り戻したいのです……」


ラムサスは夢を見ていた。エルルの粛清に赴いたソラリスのギア隊が、たった一人の生身の男に次々と
撃破されてゆく。やがて男は真紅のギアに乗り込み、ラムサスに向かって来た。彼は叫び声を上げた。
目を覚ましたラムサスは、心配するミァンを生返事を返し、寝室から出て行った。
一人残ったミァンの所に、突如グラーフが現れた。彼はミァンに余計な手出しをするなと釘を差した。
ミァン「心配しないで……。貴方の大事な物を奪ったりはしないわ。だって貴方は私を……」


翌朝。ラムサスの空中戦艦にエリィと特殊部隊のランクたちがいた。エリィは、今回の任務でランクたちの
隊長に任命されたのだ。彼らに意地悪く茶化されながら、彼女は仕官専用ギア、ヴィエルジェに乗り込んだ。


その頃、フェイたち別働隊は国境前線部隊の裏をかくべく、岩山を登っていた。
頂上にたどり着き、峰を越えようとしたとき、彼らのレーダーがゲブラーのギア部隊の接近を感知した。
ゲブラーのギアを一手に引き受け、他の隊員を先行させることにしたフェイの前に現れたのは、エリィの
率いる特殊部隊の面々だった。
ランクらは海賊アジトでの雪辱に燃え、エリィを無視してヴェルトールに挑みかかるが、あっさり撃破。
二度の敗戦が信じられないフランツはさらにドライブをキメて戦おうとする。
その最中、エリィは苦悩していた。命令とはいえフェイとは戦えない、後はドライブを使うしかない、と。
彼女の脳裏に苦い記憶が蘇る。


軍の要職にある父を持つエリィは、他の兵士から疎まれていた。ある日、ドライブをキメた同僚達に追われ、
無理やりにドライブを打たれてしまう。その結果、力が暴走して同僚達を殺してしまったのだ。
死体が散乱する血の海にうずくまり呆然としていた所を拘束された彼女だったが、上層部は暴走した力に
耐えられなかった同僚が愚かなのだとお咎めなしとした。しかし、彼女にはトラウマとなってしまった。


苦悩するエリィをよそに、精神が壊れるとのランクの制止も聞かずドライブを打とうとするフランツ。
フランツ「どうせボクは元から壊れてるんだァァーーーッ!!」
エリィ「やめなさいフランツ。私が……やるわ……」


ドライブを打ち、まるで人が変わったかのようなエリィがフェイに襲い掛かる。
エリィ「ははは、もがけ! 踊れ!ここで朽ち果てるのよ!」
彼女はエアッド(註1)を使ってフェイを追い込んでいく。
エリィに攻撃できず、防戦一方のフェイだったが、やがてドライブの切れ掛かった彼女が苦しみ始めた隙を
つき、ヴィエルジェを押さえ込んだ。そして、フェイの呼びかけに応えるように彼女は自分を取り戻す。


落ち着きを取り戻した後、ヴィエルジェを降りたエリィはフェイに語った。
自分では認めたくない、制御できない力が自分の中に潜んでいる。それに支配されてしまう。しかし、仲間を
助けるためにはこうするよりほかに無かったのだ、と。
お互いに似た境遇にあることに気づき、フェイはエリィの力になろうとするが……。
フェイ「変えられないのか……?」
エリィ「そんな顔しないで。私には選ぶ事なんて出来ない。私の唯一の居場所だから……」
彼女に、できる事なら軍を抜けろ、そう言ってフェイは先行した隊員を追った。


その頃、王城でバルトたちはシャーカーンの兵に囲まれていた。彼らの前にはシャーカーンとミァンが。
ラムサスのいない事に気づいたシタンは、作戦の失敗に気づいた。
ラムサスはバルトらの作戦を見破り、西方警備隊の援護に向かっていたのだった。
バルトたちに兵の銃弾が撃ちこまれようとしたその時、いち早く異変に気づいたメイソン卿がランドクラブで
駆けつけ、バルトたちを収容してその場を離脱した。


註1・・・精神波<エーテル>(註2)感応誘導式モジュール。エーテルによって無線誘導するビーム兵器。
    これを使えるのはごく限られたエレメンツ(註3)クラスの者だけらしい。(ランク談)
註2・・・ゲーム中では魔法のような位置づけ。超能力のようなもの。
註3・・・元来はラムサスがユーゲント(註4)時代に設立した精鋭集団。現在ではラムサス直属の近衛部隊。
註4・・・ソラリスの指揮官養成学校。シタン、シグルド、ミァン、エリィも所属していた。


◆緋の鬼神 悲しみは熱砂の海に

国境の前線部隊の裏を付いたフェイたちは一気に旗艦キファインゼルを目指した。
彼らを迎え撃つ司令官は、筋肉脳ヴァンダーカム。彼は迎撃のギアを下がらせ、主砲による決着を図った。
しかし、機動力で遥かに上回るヴェルトール以下ギア部隊は、砲弾を回避しつつ着実に進撃。
キファインゼルに取り付いて主砲を破壊した。
退艦命令が発令され、乗員がヴァンダーカムを無視して退避する中、彼は巨大ギア、ドーラに乗り出撃する。
通常の数倍はあろうかと言う巨体とその装甲の厚さに手を焼きつつ、それでもフェイらはこれを撃破した。
度重なる敗戦に呆然とするヴァンダーカムの前に、グラーフのギアが現れた。
グラーフ「我が拳は神の息吹。"堕ちたる種子"を開花させ、秘めたる力を紡ぎだす。美しき滅びの母の力を」
グラーフのギアの右腕から発せられた波動がドーラに注がれた。


その頃、王都を離脱し、ニサンに向かっていたユグドラシルは、ラムサスの駆る潜砂艦の攻撃を受けていた。
推進器にダメージを受け浮上するユグドラシルを前に、ラムサスは逡巡した。
ミァン「あら、お迷いになるなんて珍しい」
ラムサス「古い友人と約束してな。手加減せねばならん」
彼は、シグルドがソラリスを出奔するときの事を思い出していた。裏切り者!彼はシグルドにそう叫んだ。


グラーフのギアが去った後、ドーラは突然再起動して襲い掛かってきた。それまでとは桁違いの破壊力に、
ヴェルトール以外のギアが次々と大破していく。その光景を前に、フェイは次第に壊れていった。


ユグドラシルを取り囲んだ艦隊に、異常事態が起こった。
突然現れた真紅のギアに次々と艦が沈められて行く。ラムサスがエルルの悪夢と呼ぶ、あの時のギアだった。
そのギアを見止めたラムサスは、目の色を変えて飛び出した。
ブリガンディアに迫らんとする真紅のギア。そこへラムサスの駆る専用ギア、ワイバーンが割り込んだ。
だが、ワイバーンは一撃の下に腕を飛ばされてしまう。「ぐわっ! そんなバカなっ!」(ラムサス談)
ラムサスがあっさりと退場した後、真紅のギアは再びブリガンディアに迫った。
真紅のギア「モーターのコイルもいい塩梅にあたたまった。そろそろメインイベントと行こうか」
その時、ユグドラシルが全速で突っ走り、砂丘のクレストを利用してジャンプ、真紅のギアにのしかかった。
しかし、真紅のギアはユグドラシルを片手で受け止め、そのままブリガンディアに放り投げた。
地面に叩きつけられた艦は壊滅的なダメージを受けた。艦内が混乱を極める中、シグルドはシタンを
ヘイムダルと共に脱出させた。そして、ユグドラシルは砂の海に沈んで行った。


ヘイムダルを乗せた脱出ポッドは風に流され、国境付近に不時着した。
そこでシタンの見たのは、見るも無残に破壊されたドーラの残骸だった。
シタン「この有様……やはり同じですね……」

キスレブ編
目次(スタート~バトリング優勝 ヴェルトール奪回~ゴリアテ撃墜)


◆とらわれの鳥 キスレブ帝都

キスレブ帝都ノアトゥン中央に位置する総統府。その総統室で、キスレブ総統ジークムントがアヴェ国境
付近での戦闘に関する報告を聞いていた。報告によると、以前強奪されたヴェルトールを戦闘地域で発見、
パイロットともども確保したと言う。
さらに、訪問客があると聞いたジークムントは、ドックへと赴いた。ドックには、ツボのような形の戦艦が
入渠しており、その戦艦から、厳重に梱包された荷物が降ろされていた。
戦艦から降りてきた覆面の女はジークムントに、アレがあれば障壁を越えられると言い、それを渡す見返り
として、ヴェルトールとフェイをD区画に移す事を頼み、戦艦と共に去っていった。


フェイは夢を見ていた。幼い自分が母親とキャッチボールをしている場面が、繰り返し繰り返し流れている。
それが大きなスクリーンに映し出されたものだと気が付いたとき、スクリーンの前に立つ彼の前に、画面を
食い入るように見つめる幼い自分が現れた。困惑フェイに、もう一人の幼い自分が声をかけた。
「ここはお前のくる所じゃない……」


帝都犯罪者収容区画、通称D区画。その囚人宿舎の医務室で、フェイは目覚めた。
そばにいた女医のディアナから事情を聞かされていたフェイの下に、四人の男達が現れて彼を連れ出した。
彼らは、D区での序列を決めるための『洗礼の儀式』をするため、フェイを、D区でキングと呼ばれている
亜人のリコの下に連れて行った。
その儀式で、リコ配下の四人、レオナルド、ハインリヒ、バルガス、スザーンと戦って勝ったフェイだったが、
リコにはまったく歯が立たず負けてしまう。


再び医務室で目を覚ましたフェイはディアナから、儀式の結果ランクAになった事、囚人の首につけられる
首輪爆弾のせいで脱獄は不可能な事、困ったときは調達屋のハマーを訪ねるといい事を聞かされる。
ラハンを出て以来不可解な事が続いた上にいつの間にか監獄に入れられ脱出=即死な状況に置かれたフェイは、
なんかもうどうでもいいやと半ヤケになりながら、差し当たってやることも無いのでハマーに会いに行く事に。


酒場で会った底抜けに明るい亜人のハマーにフェイが兄貴とか持ち上げられていると、バトリング管理委員会
の人間がやってきて、フェイにバトリング(註1)への参加を要請した。
本来は自らギアを用意せねばならない所を特別に委員会が用意するなどと言って、彼らはフェイを説得
しようとするが、ギアを嫌っているフェイは頑として首を縦には振らなかった。
委員会が去り、宿舎に戻ろうとするフェイに、今度はハマーがまとわり付く。うるさくバトリングへの出場を
促す彼をいなしながら宿舎に戻ったフェイは、そこでシタンと再会する。
シタンはキスレブの無線を傍受していてヴェルトールが回収されたのを知り、追ってきたのだった。
彼からユグドラシルの沈没と国境艦隊の壊滅を知らされたフェイは、ラハンの時と同じように、また自分が
やってしまったのではないかと気に病んだ。
シタンに励まされ、マルーを守ると言うバルトとの約束を果たすべくキスレブ脱出を決意する。
差し当たって首輪爆弾を外そうと考えた彼は、シタンに分解を頼むが、危うく失敗しそうになり断念する。
そんな二人を見ていたハマーは、首輪爆弾を外すもう一つの方法を教えた。
それは、ジークムントが観戦するバトリングの御前試合で優勝する事。そうすれば、特赦されると言うのだ。
しかし、優勝するためには現在三連覇中のリコに勝たねばならないため、不可能に近いと言う。
それでもフェイは、約束を果たすためにバトリングに参加することを決意するのだった。


註1・・・ギア対ギア、もしくは対モンスターと言ったカードで行われる娯楽競技。


◆目指せ、バトリングの勇者

巨大な球体に埋め込まれたスクリーンに映ったガゼルの法院が議論している。
「予想より早かったな……触れえざる者の目覚め……」
「あれから三年。メモリーキューブの情報に拠れば、今はノアトゥンだ」
「500年前、ヤツさえ現れなければ、ラムズを"アニムス"とすることも無かった」
「各エリアでの"アニマの器"の発掘は順調だ。ゲートキーパーの起動、もっけの幸いだったな……」
「イグニスの均衡、破るわけにはいかん。それにあれは不浄の地だ。カインも異存はあるまい」
「粛清だ。だが、第三艦隊の兵力で足りるか?"ゲーティアの小鍵"は来るべき時まで使えん」
「あそこには旧文明の原子炉がある。あそこにはもう得るべきものもない。直撃ならば……」
「では、裁決を下そう……」


ノアトゥン。バトリング出場を決めたフェイは、恩赦目当てでマネージャー兼メカマンを買って出たハマーに
出場登録をしてもらい、早速参戦するためにシタン、ハマーと共に闘技場へ向かった。
闘技場で委員会に迎えられたフェイは、用意されたギアに登場するため、パドックへ向かった。そこには
あのヴェルトールがあった。
驚くフェイにシタンは、キスレブの軍事プランの一環としてバトリングのデータが収集されている事から、
フェイとヴェルトールのデータを取ろうとしているのではないかとの推測を語った。
キスレブの思惑はどうあれ、乗りなれたヴェルトールでフェイは緒戦に挑んだ。
緒戦の相手は、フェイと洗礼の儀式で戦ったリコ配下のレオナルド。フェイは試合を有利に進めたが、後一歩
の所で機体に異変が。レオナルドがヴェルトールに爆弾を仕掛けていたのだ。その爆発によってヴェルトールは
戦闘不能に陥ってしまった。


その夜、D区画の地下下水道に、レオナルドとハインリヒの姿があった。この地下下水道はモンスターが
住み着いており、そのモンスター退治が囚人達の最大の収入源なのだ。
突然、ハインリヒの悲鳴が響き渡った。彼の元へ駆けつけようとしたレオナルドに何かが襲い掛かる。


翌朝、医務室で目覚めたフェイは、心配するシタンに嫌な夢を見たと語った。
いぶかるシタンに手を振り、彼は闘技場へ向かった。彼は昨日の緒戦で既に負けてしまっていたが、本選
出場権を持っていたレオナルドとハインリヒが棄権したため、フェイは繰り上げ進出となったのだ。
その後、フェイは二日目、三日目と順調に勝ち進んで行った。


◆地下水道の悪夢 闇にはうもの

三日目の試合が終わり、フェイが宿舎に帰ると、そこにリコが待っていた。
彼は、地下下水道で起きている連続殺人事件について調べていると言う。地下下水道で殺されたのは、
リコ配下のあの四人を含む五人。リコはその事から、洗礼の儀式や緒戦の爆弾事件をうらんだフェイが、
モンスターの仕業と見せかけて殺したのではないかと考えたのだ。
これから下水道に調査に行くというリコに、フェイは潔白を証明するために付いていく事にした。
シタンも加えて現場に赴いた三人は、そこで不可解なゲル状の物質と「赤い化け物」というダイイング
メッセージを発見。何者かの鈴の音に緊張しつつ、下水処理施設に向かった彼らは、そこで鈴を発見する。
その鈴が化け物の持ち物だと推測した三人は、鈴を鳴らして化け物をおびき出した。
灼熱の雨を降らせる化け物と戦った三人は、激しい戦闘の末これを打ち倒した。
リコ「こいつは一体なんなんだ……。なんで鈴なんか……」
シタン「人並みの知能があったようですね。……いや、残っていた、と言うべきですか……」
とにもかくにも、事件は解決した。しかし、この戦闘でリコは腕に怪我を負ってしまっていた。
それを心配するフェイだったが、リコは手加減など無用と言い放って去っていった。


その頃、ゲブラーのブリーフィングルームで、エリィ以下特殊部隊の面々が上官から任務の説明を受けていた。
大質量爆弾での飽和爆撃。その旗艦の護衛だった。ブリーフィングの後、エリィは作戦に難色を示した。
ランク「粛清だろ? ラムズの」
エリィ「彼らだって私達と同じ人間なのよ。それを一方的に粛清なんて……」
ランク「あんたみたいな一級市民がそんな考えを持っているとはね、意外だよ」


◆倒せ、無敵のバトラーキング

殺人事件を解決した後も、フェイはバトリングで順調に勝ち上がっていた。
そして、リコとの決戦前夜。シタンとハマーを伴って、フェイはヴェルトールのメンテナンスをしていた。
しかし、委員会からパーツの供給を受けているリコのシューティアとの性能差は歴然としていた。
もっといいパーツはないのかと焦るフェイの前に、突然ワイズマンが現れ、そして戦いを挑んできた。
相変わらずワイズマンに手も足も出ないフェイ。やがて武技雷迅を叩き込まれてしまう。
ワイズマンは倒れたフェイに、能力差を埋めるためには隙を突く事が重要だと教えた。
去ろうとする彼を呼びとめ、フェイはなぜ自分を知っているのか聞こうとした。記憶を失っている事をつげ、
少しでも情報が欲しいと訴えるフェイに、ワイズマンは語り始めた。
ワイズマンとフェイの父、ウォン・カーンが同門の徒である事、共にカレンと言う名の女性に恋をし、
カーンが彼女を娶りフェイを生んだ事、その後修行の旅に出たワイズマンの下にカーンから、グラーフという
男がフェイをさらったと手紙を受け取った事、そして三年前、フェイを探していたワイズマンは、カーンから
息子の居場所を突き止めたと知らせを受け、急行したその場所で大怪我をしたカーンとフェイを見つけた事、
その後、カーンはグラーフを追って旅立ち、ワイズマンもフェイをラハンに預けてカーンを追った事。
最後に彼は、カーンが武官をしていたのが空に浮かぶシェバトだと告げ、姿を消した。
ワイズマンが去った後、フェイは彼の教えから一縷の勝機を見出した。


翌日、ついにリコとの決戦。フェイは力で押してくるリコに対し、ヒットアンドアウェイで翻弄、途中
幾度か押し切られそうになるも、リコの姿勢が乱れた一瞬の隙を突き、見事勝利を収めた。
決勝の直後、敗れたリコは、ある覚悟を持って団体戦に向かった。


その頃、アヴェ国内ゲブラー基地では、エリィたちが、出撃のために格納庫に来ていた。
格納庫から見えるドックには、8艦の爆撃艦が待機していたが、その内コントロール艦はわずか1艦。その他は
全てエーテル誘導による艦だった。
彼らがその編成に驚いていると、そこへラムサス直属の精鋭部隊エレメンツの一員ドミニアがあらわれた。
ユーゲント時代彼女と同期だったエリィは、彼女にこの作戦の目標を尋ねた。
エリィにコンプレックスをもつドミニアは切り口上で、元来ラムズを隔離するために設置したゲートを越える
事ができるゲートキーパーをキスレブが入手したための粛清として、原子炉を爆破する事を伝えた。
無差別に人々を殺す事になる子の作戦を非道と非難するエリィに、ドミニアはいらだちを隠さなかった。
ドミニア「気でも違ったか。過ぎた知識は家畜には不要なのだ。ラムズは我々が管理せねばならん」
エリィ「あなたももとは地上の人間でしょう?それなのに……」
ドミニア「私はラムサス閣下に選ばれた人間だ! ユーゲント時代、せっかくの素養がありながら

     その責任を放棄して逃げ出した貴様に言われる筋合いはない!」


◆侵入ギアドック 地に落ちた英雄

D区画。バトリングで優勝したフェイは、キングの称号とランクSの特権を与えられ、首輪も取れた。
彼は委員会に案内されてキングに与えられる部屋に入ると、リコの消息を尋ねた。
リコはフェイとの試合の後に行われた団体戦で総統の観覧席に突入、行方不明との事だった。
委員会は、ジークムントがフェイに会いたがっている旨を伝え、去っていった。
リコの消息を心配しながらも、とりあえず行動を起す事にしたフェイたちは、まずヴェルトールを回収する
べく、ハマーに情報収集を頼み、その間にジークムントに会いに行ってみることにした。


キスレブ総統府。門番の兵士達に案内され、フェイとシタンは総統府の中に入っていった。その、門番が
いなくなった一瞬の隙をついて、リコが総統府へ侵入した。
そうとは知らないフェイたちは兵士に案内されて、作戦司令室や艦橋など各所を見て回った後、総統室へ。
そこで総統とフェイが話を始めた直後、天井からリコが落ちてきた。彼は慌てて部屋を逃げ出し、今は住む
ものも無く、遺伝子ロックで閉ざされたままの総統の妻の部屋に逃げ込んだ。
部屋に残された残り香が、リコの記憶を呼び起こした。
普通の人間となんら代わりのない、幼い頃のリコと母親。病弱な母親は幼いリコに、離れて暮らす立派な
父親の話をしていた。時が経ち、二人の生活は次第に変化していった。リコの爪と耳が長く伸び始め、リコと
母親は周囲の人間から亜人の親子と非難され始めた。やがて母親は寝たきりになってしまい、そしてリコは
一人、亜人として生きていかなくてはならなくなった。
本人ですら忘れていたその記憶。それを呼び起こしたこの部屋の匂いに困惑しながら、彼は鏡台に置かれて
いたペンダントを手に取った。
その時、フェイたちが扉を叩いた。彼らと共に部屋を出たリコは、そこに現れた総統の兵士によって捕らえられた。


どうする事も出来ずに総統府を後にしたフェイとシタンは、ハマーからの情報で、ヴェルトールがD区エリアの
地下ドックに移送された事を知った。そこへの侵入ルートは闘技場内と輸送列車トンネルの二つ。闘技場内
からの侵入は不可能と判断したフェイは、残る輸送列車の通過時間の調査をハマーに依頼し、D区に戻った。


キングの部屋に戻ると、リコ配下の者達が待っていた。彼らは、リコを助けて欲しいと言う。
リコは今夜、総統ジークムント暗殺未遂の罪で、闘技場で公開処刑に処されるというのだ。
事情はこうだ。そもそも、バトリング管理委員会は『協会』の人間で構成され、以前は政府の一大勢力だった。
しかし、ジークムントによりそのほとんどが放逐され、バトリングすらも自らも管理しようとする総統が邪魔
になった。そこで委員会は一計を案じた。ジークムントの推進した亜人排斥運動により虐げられたリコを利用
し、総統を事故に見せかけて暗殺しようとした。しかし、それも失敗してしまった。
リコを真のキングと仰いでいた彼らは、委員会に操られたリコを何とか助けたいと語った。
フェイは、戻ってきたハマーから今夜輸送列車が通ると聞き、ヴェルトール奪回の後、そのまま闘技場へ侵入、
リコを救出するという作戦を立てた。


夜。作戦決行の時。準備を終え、仮眠を取ったフェイとシタンは、輸送列車に忍び込んだ。列車がトンネルに
入ったところで列車から通風孔へ飛び移り、迷路のような通風孔を通ってギアドックへ。無事ヴェルトールを
回収し、闘技場に向かった。


◆粛清! 暗夜に舞う死の影は

闘技場。生身のリコに、地竜が襲いかかろうとしていた。間一髪、飛来したヴェルトールに撃破される地竜。
フェイ「俺は帝都を脱出する。あんたはどうするんだ? やり残した事があるはずだろ」
リコ「黙れ! 二度もこの俺の…。行くならさっさと行け。俺はたとえここで死んだとしても帝都は離れん」
その時、帝都に空襲警報が鳴り響いた。ゲブラーの爆撃艦が上空に達したのだ。
艦の行方を見ていたシタンは、一艦が原子炉への直撃コースを取っているのに気づいた。それを聞いた
フェイは、艦の針路を帰るために向かって行った。一方、シタンはハマーを伴って市民を避難させ始める。
爆撃によって方々から火の手が上がる町を見ながら、リコはフェイの言葉を思い出していた。
リコ「俺の町……? クソッタレの町……。俺も……クソッタレだ……な」


艦隊護衛の特殊部隊のランクたちは、飛来するヴェルトールに気づき、エリィの制止も聞かず迎撃に出た。
ランク「スマンな隊長。だが、俺達は武人として、ヤツと決着をつけたいのだ」
一斉に掛かってくる彼らに苦戦するフェイに、突如飛来したシューティアが加勢した。
リコ「気に食わねぇ奴らをぶっ飛ばすのに理由はいらねぇ。お前も含めてな」
フェイ「……それも一つの理由だ」
リコの助けをえてランクたちを撃破したフェイの前に、エリィが立ちはだかった。
その事に驚きながらも、フェイはリコを先行させ、彼女と対峙した。
フェイ「軍を抜けろと言ったのに、どうして……」
エリィ「できるならとっくにやってるわ! でも変えられないの。貴方のように自由に自分の道を

    選べない。これが私の居場所……お願い、解って」
フェイ「俺も…居場所は無いよ。バルトたちは艦ごと行方不明になってしまった。俺に居場所は

   もう無いんだ」
エリィ「そんな……じゃあ、なんの為に戦ってるの……?」
フェイ「お前は戦うのがそんなに好きなのか? 人が死ぬのを見るのがそんなに好きか!?」
エリィ「バカな事言わないで! 好きなわけないじゃない」
フェイ「だったら来い!」
ギアからエリィを降ろし、高台に連れて行くフェイ。町は今にも火の海に飲み込まれんとしている。
フェイ「似合わない事するなよ。無理して居場所作らなくてもいいじゃないか。
    俺が何のために戦っているのか、自分でもよく分からない。けど、戦う事が自分や、

    自分を必要としてくれる人に少しでもプラスになるなら、なにもしないでいるより遥かにいい。

    それだけさ。今、先生もハマーも、必死で住民を避難させてる。リコはこの町を憎んでいる

    はずなのに協力してくれている。だから、俺は行くよ……」
そう言って、フェイはリコの後を追った。残されたエリィは、燃え盛る町を見つめ続けた。


艦隊のコントロール艦ヘヒト。そのコントロールユニットを操るドミニアに挑みかかっていたリコは、
追いついたフェイと共に、ドミニアのエアッドに手を焼きながらもこれを撃破、艦首に回り込んだ。
艦の針路を変えようと最大出力で艦首を押す二人だったが、あまりの質量に思うように針路が変わらない。
そこへ、エリィのヴィエルジェが加勢。三機が力をあわせ、原子炉直撃コースからは外れた。さらに被害の
少ない針路に変更しようとする三機だったが、シューティア、ヴェルトールが相次いでオーバーヒート。
フェイの止めるのも聞かず一人残ってギリギリまで艦首に取り付いていたエリィだったが、ヴィエルジェの
エネルギーが尽き、退避することも出来ずに墜落してしまう。
ヘヒトの墜落と共に大質量爆弾が爆発した。その爆風にヴィエルジェが巻き込まれようとしたその時、彼方
からグラーフのギアが凄まじい速さで飛来し、ヴィエルジェを庇った。爆風が収まり、エリィの無事を確認
すると、彼は何も言わずに飛び去った。エリィは、彼に誰かの面影を見ていた。


◆キスレブ脱出 秘密兵器を奪え!

空襲の混乱がひと段落ついた頃、フェイ、シタン、エリィの三人は、ハマーが掴んできたキスレブを脱出
する為の情報を聞いていた。キスレブの新造空中戦艦ゴリアテ。単独でブレイダブリクを壊滅させられる
ほどの巨大戦艦が、キスレブの北の山脈の地下にあると言うのだ。そこは、以前エリィがヴェルトール強奪の
ために潜入した基地だった。一行は、キスレブが報復として出撃させる前にこの戦艦を奪って脱出する事に。
早速帝都を出ようとした彼らだったが、警備兵に呼び止められてしまう。フェイは指名手配されていたのだ。
逃げるか戦うか彼が迷っていると、リコが嵐のように現れ、警備兵を叩きのめしてしまった。
リコは、自分もキスレブを脱出するため、手を貸すという。心強い味方を得て、彼らは北へ向かった。


ゴリアテ工場。基地に入った彼らは、警備のギアを撃破しつつ、エリィの案内で進んでいった。
最深部でゴリアテを守るギア「への6号」を撃破した彼らは、首尾よくゴリアテに乗り込み、離陸した。


◆脱出イグニス めざせ新天地

シタンの操縦で海上を行くゴリアテの前に、突如グラーフのギアが立ちはだかった。
フェイ、エリィ、リコが迎撃に出るも、生身のグラーフにヴェルトール、シューティアが撃破されてしまう。
しかし、グラーフが攻撃しないヴィエルジェが隙を作り、シタンの機転によってグラーフ機は撃墜された。
なぜ自分を攻撃しなかったのか。エリィの疑問を乗せて、ゴリアテは海上を飛び続けた。


そのゴリアテを狙っている目があった。潜水艦ユグドラシル。その発令所で、バルトはゴリアテを見ていた。
キスレブが報復に打って出たと考えた彼は、撃墜すべく、ゴリアテに向け巡航ミサイルを発射した。
ミサイルは見事命中。そして、制御不能に陥ったゴリアテはユグドラシル目掛けて墜落、見事命中。
大爆発を起した。


ゴリアテには、ゲートキーパーが装備されていた。ソラリス側にしかないはずのその機械は、その作動時、
時空震という揺れを発生させる。
ブレイダブリクのラムサスは、自らの空中戦艦内で、先に発生した時空震について調査させていた。その
結果、ゴリアテがその震源である事を突き止め、彼はキスレブの粛清が失敗した事を確信した。
そのラムサスの下に、突如グラーフが現れた。彼は、ゴリアテに乗っていたフェイが、転移によりアクヴィに
いると伝え、去った。それを聞いたラムサスは、目の色を変え、アクヴィへ針路を取った。
その直後、グラーフはミァンと会っていた。小細工は無用と言うグラーフにミァンは、
ミァン「結果的に枷が外れやすくなったのだから、いいじゃない。それに、"器"は定められた者にしか

    反応しない。これはあの子達も知らない事なの。でも、カール(ラムサス)に彼は必要ね。

    カールの存在意義そのものだから。それよりお礼しなくちゃ。助けてくれたんでしょ? 

    私の為? 彼の為? それとも、自分自身の為かしら……?」
アクヴィへ向かうラムサス艦に、ドミニアが回収され、先んじてアクヴィへ向かったと報告が入った。


ゴリアテ墜落の場面をスクリーンで見ながら、ガゼルの法院が議論している。
「メモリーキューブの情報だと、"奴"の周囲にはM計画対象者<スファラディー>ではなく、"アニムス"の因子
 を持つ者たちが集まっているらしい。……"奴"に引き寄せられたか? 図らずも500年前と同じだな」
「転送先はアクヴィ。カレルレンが直々に向かうらしい。ゼボイムの遺産が見つかったのだそうだ」
「遺産……ということは、以前ヤツが話していた技術か?」
そこへ、天帝カインが加わった。
カイン「そうだ。ナノテクノロジー創生の地、ゼボイムの首都が海底下に眠っていたのだ。

    19年もの間、その存在は『教会』によって隠されていたがな。ところで、お前達……

    "消すつもり"であったのか?」
「なに、偶然だよ。それにあの程度で消せるとは思っておらん。粛清も失敗に終わった。今後は無い。
 "アニムス"が集まっているのならなおさらな」
「しかし、なぜそこまで"奴"にこだわる。"アーネンエルベ"……未だに信じているわけではあるまい」
「あれは幻想だよ。理想ですらない。結果はこの姿。見ての通りだ」
「カイン、我等が"神"なのだ……」

アクヴィ編
目次(漂流~ビリー加入 本部襲撃~ストーン撃破)


◆漂流 星空の海にただよえば

ゴリアテが撃墜された後、シタン、リコ、ハマーは潜水艦ユグドラシルに収容された。
撃墜から意識を失い、ユグドラの船室で目覚めたリコは、バルトがミサイルを撃ったこととは知らず、
シタンに促されて礼を言いに行ったが、そこで事実をしるや、バルトをボコ殴りしたのだった。


一方その頃、フェイとエリィはゴリアテの残骸に乗って海を漂流していた。その残骸の下には、ヴェルトール
とヴィエルジェがあったが、隔壁に隔てられ、動かすことは出来なかった。当面の食料を確保しようと、魚を
追い掛け回していたフェイは、アヴェの砂漠で見た空飛ぶ円盤を再び目撃した。エリィによると、それが
シェバトだという。砂漠に現れたのは、特別な目的があったのだろうと。


ユグドラシル。ゴリアテ撃墜の件を謝るため、バルトはまずシタンに会いに行った。そこで彼は、この艦が
元々はシェバトの技術によって造られたものであろうと聞かされた。その後、ギアハンガーのリコに会いに
行くと、リコはブリガンディアとヘイムダルの性能に感じ入っており、今後も行動を共にすると言った。


夜。漂流しているフェイとエリィは、星空を見上げながら語り合っていた。
フェイ「俺はダメな奴さ。誰かに必要とされるために今まで行動していた気がする。そうやって

    癒されている自分がいるんだ。確かにそれはゼロじゃない。けど、1でもないんだよ」
エリィ「私、なぜ自分が今ここにいるか考えてみたの。それは多分フェイが、何もしないでいるより

    何かしている方が良いって言ったから。1じゃなくても良いじゃない。たとえそれが

    ごくわずかでも、何度も繰り返せば1になるでしょ。
    …そんなに思いつめる事ないと思う。誰もそうやって見返りを求めて何かを分け与えてるのよ。
    私だってそう。さっきの非常食、おいしくないのに無理して食べてくれたんでしょ? 自分だけ
    生き残ろうと思ったら、独り占めした方がいいのに。でも、無理して食べてくれるのを見て、

    分けてあげてよかったなぁって、癒されたもの。
    それは独善的なものだけど、そうやって分け与える喜びを学んでいけば、

    いつか自分の大切なものも分け与える事が出来るようになると思うの……」
そう語りながら、エリィは以前もフェイに同じように言ったようなデジャヴを感じていた。


◆大海原のタムズ、海の男の心意気/再会 昨日の友は今日の……

翌朝、フェイとエリィは、海上都市タムズに遭遇、救助された。
タムズの副長であると言うハンスの出迎えを受けた二人は、ヴェルトールとヴィエルジェを修理に回したと、
聞き、救助の事とあわせて礼を言うため、タムズを見学しながら艦長に会いに行った。
大海を回遊しながら海中資源のサルベージを生業としているタムズは、さながら巨大な洋上艦といった
ところで、広い甲板では、住民によって市場も開かれているほどであった。
この艦長と言うのがまた実に豪放磊落な男で、ガッハガッハと笑いながら、歓迎の宴まで開いてくれると言う。
そのあまりの親切さに警戒するフェイから理由を尋ねられても、
艦長「それはな…… 俺が! 海の! 男だからだ!!(バァァァァァーン!!)」
という一言で済ませてしまうほどであった。
その艦長に案内されてビアホールに向かったフェイたちは、料理を食べながらこの艦について聞いていた。
海底のお宝は、最近では少なくなったものの、代わりに『教会』からの大仕事が入ったと艦長は語った。


その頃、エレメンツのケルビナが操縦する水中用ギア、ハイシャオに収容されたドミニアは、ゴリアテ捜索中、
ユグドラシルを発見。その時点の指揮官であるケルビナを説得し、ユグドラシルの撃沈に向かった。
その戦闘で起こった振動と水柱は、遠くタムズまで届き、それを確認したフェイはユグドラシルが戦闘に
巻き込まれている事を知るや、修理が終わったばかりのヴェルトールで出撃し、エリィもこれに続いた。
ユグドラシル甲板でシタンらと再会したフェイとエリィは、迎撃に出たバルトの加勢に海中へもぐった。
ドミニアは、フェイと現れたエリィを見て逆賊と断じ、襲い掛かった。だが、ユグドラシルの爆雷を受けて
ハイシャオはダメージを負い、ケルビナは撤退を決めた。しかし、諦めきれないドミニアは、ヴィエルジェを
確保し、エリィを連れ去ってしまった。


◆敵の手に落ちて 裏切りの代償/ねらわれた艦 ラムサス急襲!

ソラリス製の、しかも水中用のギアに追いつけるはずも無く、フェイは追撃をあきらめざるを得なかった。
ユグドラシルに戻ったフェイは、被弾したユグドラの寄港先としてタムズに向かうように言った。
タムズに向かう間、彼はバルトからこれまでの話を聞いた。
真っ赤なギアにやられて砂の海に沈没したユグドラシル。しかし、沈没した地下には巨大な空洞があり、
そこにユグドラそっくりの潜水艦が眠っていたという、嘘のようなホントの話。その後、ユグドラから使える
所を移植したユグドラII世で、バルトは真っ先にニサンへ向かい、マルーを連れてきたのだという。
そんな話をしているうちにユグドラはタムズへ到着。早速艦長に会いに行ったバルトは、案の定艦長と意気投合。
ビアホールに招かれたのだった。


その頃、ラムサス艦に収容されたエリィがドミニアに激しく叱責されていた。ひるまず反論するエリィに、
ドミニアはついに剣を抜いた。そこへミァンが現れ、エリィを庇った。エリィを連れて行こうとするミァンに
詰め寄ったドミニアだったが、ミァンの眼力に気おされ、口を閉ざしてしまった。
ラムサス艦居住区の一室で事情の説明を受けたミァンは、他課員への示しのため、暫く謹慎しているように
言い、エリィの目を見つめた。ミァンの目が奇妙な光を発した。


タムズ。ビアホールで飲んだくれていたバルトたちに、エリィ帰還の報が伝えられた。彼女はフェイたちに
迎えられると、疲れていると言って一足先にユグドラシルに乗り込んだ。一人になった彼女は、ふらふらと
機関室へ向かい、スレイブジェネレーターのコントロールパネルを操作して機関を暴走させ、倒れこんだ。
突然の事に技師やフェイらが困惑する中、ひとり落ち着き払ったシタンが機関の暴走を止めた。彼によると、
エリィは強力な催眠術に操られていたとの事だった。
ともかくエリィを医務室へ運んだものの、機関は大ダメージを受け、修理に時間を要するとの事だった。
医務室で彼女が目を覚ますと、事情を聞く暇も無く、発令所より敵機の接近が伝えられた。
エリィは自らの潔白を証明するため、バルト、フェイと共に迎撃に出た。
まず襲ってきたのは、ドミニアの専用ギア、ブレードガッシュだった。エーテル剣で激しい攻撃を仕掛ける
ブレードガッシュを何とか退けると、水中から爆撃があった。即座に水中へもぐった彼女らは、ハイシャオ
を操るラムサスと対峙した。
ラムサスの狙いはフェイただ一人。ハイシャオの集中攻撃を受けたヴェルトールの装甲は破損、コックピットに
海水が浸入し、フェイは意識を失ってしまう。ラムサスが止めを差そうとしたその時、エリィがエアッドを
起動、間一髪のところでラムサスを退けた。


◆少年司祭 我らがために祈り給え

タムズの医務室。意識不明のままのフェイの傍らで、エリィは責任を感じて落ち込んでいた。その姿を見かねた
タムズの医師は、『教会』本部の医局ならば、治療の手立てがあるかも知れないと言い、現在タムズに来ている
教会のエトーン<罪をあがなう者>(註1)に話してみれば、もしかすると紹介してもらえるかもしれないと教えた。
早速そのエトーンを探しに向かったエリィは、甲板広場でちょっとしたトラブルに出くわした。銀髪の少女が
悪漢にかどわかされようとしていたのだ。それを助けるエリィ。しかし、そこに現れた少女の父親は、エリィが
ソラリスの軍服を着ているのを見て、彼女に銃口を向けた。
そこへ、シタンが仲裁に入った。少女の父親はジェサイアと言い、ユーゲント時代のシタンの先輩だったのだ。
ジェサイア、通称ジェシーは、非礼を詫び、口の利けない娘のプリメーラに代わって礼を言った。
シタンとジェシーが互いの近況を語っていると、タムズの医師がエトーンを連れてやってきた。そのエトーンは
ジェシーの息子のビリーと言う少年だった。ジェシーは『教会』からはテロリストと目されており、ビリー
とはそれも含めて確執があって、この時も口論になりかけた。しかし、妹が助けられた事を知ると、ビリーは
エリィに礼を言い、フェイを『教会』の医局へ紹介する事を約束した。


註1・・・アクヴィに出没する死霊<ウェルス>(註2)を浄化する役目を持った聖職者。武器、ギアの扱いに長ける。
註2・・・人以上の知能を持つものもいる、謎の生物。


◆安らぎ 海流のなかの孤児たちと

『教会』本部。荘厳な礼拝堂とは打って変わって近代的な施設に、医局はあった。そこでフェイを診察した
医師は、単に疲労がたまった為の昏睡であり、時間が経てばめを覚ますだろうと診断した。
安心したエリィたちは、フェイをユグドラシルに移し、ビリーに礼を言うため、孤島の孤児院へ向かった。


孤児院。そこでは、ビリーが身寄りのない子供達と共に暮らしていた。
そこでビリーに会い、エリィたちが礼を言っていると、シグルドが追ってきて巨大な艦影を補足したと報せた。
すわゲブラーかとユグドラに彼らが戻ろうとした所にジェシーが現れ、シグルドを見止めるや、声をかけた。
シグルドはユーゲント時代、ジェシーの家に下宿しており、ビリーとも旧知の間柄であったのだ。
久々の再会に喜んだジェシーは、シタンとシグルドを(半ば強引に)連れ、ユグドラのバーに飲みに行った。
あっけに取られていたエリィたちがわれに帰り、ユグドラに戻ろうと孤児院を出ると、そこにビリーの上司
であるストーン司教が現れた。
司教によると、以前から行方がわからなくなっていた教会の輸送船が発見されたのだが、通信で呼びかけても
応答が無く、ウェルスに襲われ占領されている恐れがあると言う。その調査をビリーに頼みに来たのだ。
フェイの事もあって、エリィたちはその仕事の手伝いを申し出、早速出発するためにユグドラに戻った。
しかし、ユグドラではジェシーが飲んだくれており、それに付き合って飲めない酒を飲まされていたシグルドが
ダウン。結局出発は明日になった。


その夜。孤児院に戻ったジェシーはビリーと口論になった。『教会』を否定し、仕事を辞めろと言うジェシーに、
ビリー「僕の生き方に口をはさまないでくれ。僕はまだ貴方を父親だと信じているわけじゃない」
そう言って話を切り上げた。


◆波よ聞け、死霊のわらう船

翌朝。ユグドラに乗艦したビリーは、エリィにエトーンとなった理由を聞かれ、自分の身の上を語り始めた。
ビリーがまだ小さかった頃、ジェシーが突然蒸発、母ラケルとプリメーラ、ビリーの三人で暮らす事になった。
彼が12歳の時、家が死霊に襲われた。死霊はラケルにジェシーの居場所を聞いたが、ラケルは口を割らず、
殺された。ビリーたちは間一髪の所でストーン司教に助けられたが、プリメーラはその時から喋らなくなったの
だという。
その後、ビリーはストーン司教に憧れ、『教会』に入ってエトーンの修行を積んだ。何年かして家に戻った
ビリーとプリメーラの元に、ジェシーが現れた。しかし、人相が変わっており、今でも本当の父親か信じられ
ないという。だが、プリメーラは懐いていて父親が必要だし、ビリーも心の底では父親であって欲しいと思って
いるのだ。


ビリーの話が終わった頃、ユグドラシルは輸送船を発見、接近した。
輸送船は予想通り死霊に占領されていた。襲い掛かる死霊を掃討しつつ、船内を進んだビリーたちは、艦橋で
最後の死霊を倒した。その死霊が巨大ウェルスを呼んだ事を知ったビリーは、艦橋の通信設備で孤児院に連絡。
孤児院では子供達が協力してビリーのギア、レンマーツォをオートパイロットに設定、発進させた。
間一髪、巨大ウェルスの襲撃に間に合ったレンマーツォに乗り込み、ビリーはこれを撃破した。


◆信仰 炎の海で焼かれよ、我が魂

輸送船を後にした一行は、報告の為、『教会』本部へと戻った。
一歩建物に入った途端、彼らは異変に気づいた。何者かが『教会』関係者を虐殺していたのだ。
粛清!と叫びながら襲い掛かる侵入者を排除しながら施設を回ると、教皇すらも殺されていた。
「神の裁きが下される…」と言う教皇の最後の言葉に困惑しながらも、ビリーたちは奥へ向かった。
途中で監禁され衰弱していたシェバトの工作員を助けつつ、地下に進んだ彼らは、大聖堂の真下に位置する
施設を発見した。そこはソラリス製の最新設備が整っており、データベースからは以下の情報が得られた。
教皇であるシャーカーンから定期的に連絡が入っている事、教会が資源をソラリスに送っていた事。
さらに暗号化されたデータから、衝撃的な事実が判明する。
500年前に起こったソラリスと地上との戦争後、地上人が再び造反する事を恐れたソラリスは『ゲート』と
呼ばれる障壁を開発。その障壁に囲まれた地域に、地上人を種族別に住まわせ、それを管理する組織として
『教会』を設立。『教会』はその後、資源や人材などをソラリスへ送る窓口にもなった。
また、近年『教会』が独自に進める計画があった事もわかった。『第44次サルベージ計画』。タムズの艦長
が言っていた「大仕事」だった。アクヴィの地下にあるゼボイムの遺跡の発掘。そこからは、生物兵器や
反応兵器などが見つかっている。シタンは、これらの情報から、『教会』がソラリスから独立し、世界支配を
画策していたのではないかと推測した。


自分の信じる『教会』がソラリスの下部組織であり、救済を求めてきた人々がソラリスに送り込まれている事を
知って、愕然としながら部屋を出たビリーを、親友のベルレーヌとその従者が待ち構えていた。
ビリーに銃口を向けるベルレーヌ。そこへジェシーが現れ、ベルレーヌがソラリスの工作員で、ストーン司教
配下の暗殺部隊だと暴いた。
ベルレーヌは不気味に笑いながら「穢れた者を浄化したのさ、司教の指示でね」
ビリー「僕たちには勝手に人を裁く権利はない! 審判は神が下されるものだ!」
ベルレーヌ「神だって?そんなものどこにいるんだい? 君の信じた『教会』は、ソラリスが地上の情勢を
   操作するために作られた組織だ。操作された衆愚は戦争を繰り返した。そうした戦争の心理的軋轢を
   解消するための信仰と救済。そういう『システム』だったんだ。神なんて"最初からいなかった"のさ。
   それに君だって断罪を下していたんだよ。君が日ごろその手にかけていた……グハッ!」
銃声がして、ベルレーヌが倒れた。ビリーが後ろを振り返ると、そこにストーン司教がいた。
司教を問い詰めるビリー。
司教「私はソラリスの粛清官。私の創った組織エトーンは、表向きはウェルスの浄化、しかし実際は有能な
   人材を選別し、『教会』内の不穏分子の監視と処分を実行していたのです。それと、君が魂の救済と
   信じて行っているウェルスの浄化……それは……」
さらに喋り続けようとする司教をジェシーが遮った。
ジェシー「そこまでだ、スタイン。答えろ、なぜ"こんなまだるっこしいやり方"をする?」
司教「これは"生き甲斐"なのだ。今ここで貴様のハラワタを引きずり出したい衝動に駆られるが、暇がない」
そう言うと、司教はビリーたちに従者をけしかけて立ち去った。
ビリーたちは従者を倒して司教を追ったが、司教は巨大な機動ギア、アルカンシェルで逃げ出してしまった。


アルカンシェルが向かった先にタムズがあると知ったバルトたちは、いち早くユグドラシルに戻り、追撃した。
その頃、タムズは他の船と隊列を組み、発掘現場へと向かっていた。そのタムズの上空に、突然、キスレブに
現れたツボのような形の戦艦が出現し、ビーム砲を斉射した。それによってタムズ艦隊はほぼ壊滅した。
戦艦の指揮官は、カレルレンと言う男だった。彼は部下にウェルスの射出を下命した。ウェルスに襲われ、
防戦に追われるタムズを尻目に、カレルレン艦は発掘現場へと向かっていった。


 

 

最終更新:2011年04月10日 20:19